説明

車両用灯具

【課題】 ミリ波レーダを搭載した車両用灯具において、専用の遮蔽部材を設けることなく、ミリ波レーダを見栄えよく遮蔽する。
【解決手段】 前照灯11の灯具ボディ12に2つの光源ユニット16,17を設置し、前面カバー13にレンズ部21を設ける。光源ユニット16,17の間において、樹脂製光源カバー15の裏面にミリ波レーダ22を伝熱性接着シート24で取り付け、光源カバー15の前面に不透明な意匠部23を突設する。意匠部23の表面を多面カットし、アルミ蒸着膜25で被覆して光輝性意匠面26を形成する。意匠部23によりミリ波レーダ22を遮蔽し、光輝性装飾面26をレンズ部21から車体の外観に表して、灯具デザインの一部として機能させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周辺の物体を検知するミリ波レーダを搭載した車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミリ波を透過する樹脂製の遮蔽部材でミリ波レーダを隠す技術が知られている。例えば、特許文献1には、ミリ波レーダを灯室内に設置し、ミリ波レーダの前方に樹脂製の導光プレートを取り付け、導光プレートでミリ波レーダを遮蔽するとともに、導光プレートを光源の光で発光させる車両用灯具が記載されている。
【特許文献1】特開2008−186741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の車両用灯具によると、ミリ波レーダを隠すために専用の遮蔽部材を設ける必要があり、灯具部品の点数が増えるという不都合があった。また、透明な遮蔽部材は、車体の外観に表れにくいため、灯具デザインの一部として機能させることができなかった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、専用の遮蔽部材を設けることなく、ミリ波レーダを見栄えよく遮蔽できる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の車両用灯具は、光源ユニットとミリ波レーダを搭載し、車体の外観に表れる樹脂カバーを備え、樹脂カバーの一部に不透明な意匠部を設け、意匠部によってミリ波レーダを遮蔽したことを特徴とする。
【0006】
ここで、樹脂カバーとしては、例えば、光源ユニットを保持する光源カバー、光源ユニットを車体の外側から覆う前面カバー、前面カバーとの間に灯室を形成する灯具ボディ、灯室内に広がるエクステンションリフレクタ、灯具ボディの外部に設けられる灯具洗浄装置のノズルカバーなど、車体の外観に表れ、かつミリ波を透過させる合成樹脂製のカバー類を使用できる。意匠部には、着色、アルミ蒸着、多面カット、光輝性装飾面、再帰性反射面など、一つまたは複数の装飾加工により灯具の設置部位や車種に適ったデザインを与えることができる。
【0007】
また、本発明の車両用灯具は、ミリ波レーダを樹脂カバーに取り付け、樹脂カバーの一部に不透明な意匠部を設け、意匠部によってミリ波レーダを遮蔽することを特徴とする。この構成によれば、光源カバー、前面カバー、灯具ボディなど、車両用灯具に既設の樹脂カバーを利用して、ミリ波レーダを取り付けかつ遮蔽できるという効果が得られる。
【0008】
複数の光源ユニットが装備された車両用灯具では、ミリ波レーダおよび意匠部を隣接する光源ユニットの間に配置するのが好ましい。こうすれば、光源カバーやエクステンションリフレクタや前面カバーの空スペースを有効に利用できるうえ、空スペースを意匠部によって装飾できるという利点がある。
【0009】
灯具洗浄装置を装備した車両用灯具では、洗浄液噴射ノズルを覆うノズルカバーによってミリ波レーダを遮蔽することができる。ノズルカバーは比較的小さな面積で車体の外観に表れるため、望ましくは、ノズルカバーにミリ波レーダのアンテナ部を内装し、ノズルカバーの表面に意匠部を設けるとよい。
【0010】
また、ミリ波レーダの取り付けにあたっては、取付手段として伝熱性接着シートを用い、伝熱性接着シートの延長部を車体の一部に接着することで、ミリ波レーダの熱を車体に効率よく放散させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両用灯具によれば、車体の外観に表れる樹脂カバーに不透明な意匠部を設けたので、専用の遮蔽部材を設けることなく、ミリ波レーダを遮蔽できるとともに、遮蔽した部分を灯具デザインの一部として機能させることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は実施例1,2の車両用前照灯が装備された車体の外観を示す。図2は実施例1の前照灯におけて、ミリ波レーダの設置形態を示す。図3は実施例2の前照灯において、ミリ波レーダの設置形態を示す。図4(a)は実施例3の前照灯の前面カバーを示し、図4(b)はミリ波レーダの設置形態を示す。図5(a)は実施例4の前照灯の前面カバーを示し、図5(b)はミリ波レーダの設置形態を示す。図6は実施例5,6の前照灯が装備された車体の外観を示す。図7は実施例5の前照灯において、ミリ波レーダの設置形態を示す。図8は実施例6の前照灯において、ミリ波レーダの設置形態を示す。図9は実施例7の車両用リアランプの外観を示す。図10は実施例1〜7の灯具に適用可能なミリ波レーダの取付および放熱構造を示す。
【実施例1】
【0013】
図1、図2に示すように、実施例1の車両用前照灯11は灯具ボディ12と前面カバー13とを備え、双方間に灯室14が形成されている。灯具ボディ12は車体1のパネル2に取り付けられ、前面カバー13が灯具ボディ12に着脱可能に装着されている。灯具ボディ12の内側には光源カバー15が設置され、光源カバー15に投射型のロービーム用光源ユニット16とハイビーム用光源ユニット17とが組み付けられている。光源ユニット16,17には、それぞれ光源18とリフレクタ19と投影レンズ20とが配設され、前面カバー13に光源ユニット16,17からの光を透過させるレンズ部21が設けられている。
【0014】
光源カバー15は、PES(ポリエーテルサルフォン)等の合成樹脂材料で成形され、前面がレンズ部21を通して車体1の外側に表れるようになっている。2つの光源ユニット16,17の間において、光源カバー15には、車両前方の物体を検知するミリ波レーダ22と、ミリ波レーダ22を車体1の前方から遮蔽する不透明な意匠部23とが配設されている。ミリ波レーダ22は光源カバー15の裏面に伝熱性接着シート24で取り付けられ、意匠部23が光源カバー15の前面から突出する半球形に形成されている。そして、光源カバー15の前面全体がアルミ蒸着膜25で被覆され、意匠部23がアルミ蒸着膜25と多面カットを組み合わせた光輝性装飾面26を形成するようになっている。
【0015】
したがって、実施例1の車両用前照灯11によれば、ミリ波レーダ22と意匠部23の両方を光源カバー15に設けたので、専用の取付部材や遮蔽部材を不要にし、前照灯11の部品点数を削減できる。また、意匠部23を車体1の外観に表れる光源カバー15上に形成したので、ミリ波レーダ22を光輝性装飾面26によって見栄えよく遮蔽できるうえ、光輝性装飾面26を灯具デザインの一部として機能させることができる。特に、ミリ波レーダ21と意匠部23を2つの光源ユニット16,17の間に配置したので、光源カバー15の空スペースをミリ波レーダ22の設置スペースとして有効利用できるとともに、デザイン上の空白部を光輝性装飾面26によって補完できるという利点がある。
【実施例2】
【0016】
図3に示すように、実施例2の車両用前照灯31では、パラボラ型の2つの光源ユニット32,33の間にミリ波レーダ34が配置されている。光源ユニット32,33のリフレクタ19はエクステンションリフレクタ38の一部に一体的に形成され、ミリ波レーダ34がエクステンションリフレクタ38の中央部裏面に伝熱性接着シート24で取り付けられている。エクステンションリフレクタ38は合成樹脂で形成され、その中央部前面がミリ波レーダ34を遮蔽する意匠部となっている。
【0017】
そして、意匠部に設けられた光輝面やロゴマークなどのデザインが車体1の外観に表れ、灯具デザインの一部として機能するようになっている(図1参照)。したがって、実施例2の車両用前照灯31によっても、実施例1と同様の作用効果が得られ、前照灯31に既設のエクステンションリフレクタ38を利用し、その一部を適宜に装飾して、ミリ波レーダ34を見栄えよく覆い隠すことができる。なお、実施例1と同一または類似する部材には、図面に同一の符号が付されている。
【実施例3】
【0018】
図4に示すように、実施例3の車両用前照灯41では、意匠部43が車体の外観に表れる前面カバー13に設けられている。前面カバー13には、2つの光源ユニット44からの光を別々に透過させるレンズ部45と、どちらからの光も透過させない不透明部46(図4aにハッチングで示す部分)とが設けられている。ミリ波レーダ42は、光源ユニット44の中間位置において、エクステンションリフレクタ38の裏面に伝熱性接着シート24で取り付けられている。意匠部43は、ミリ波レーダ42の前方で不透明部46の一部に含まれ、不透明部46と共に車体パネル2と同じ色の着色樹脂で形成されている。
【0019】
したがって、実施例3の車両用前照灯41によれば、意匠部43を前面カバー13に設け、実施例1と同様に、専用の取付部材や遮蔽部材を不要にし、前照灯41の部品点数を削減できる。また、不透明部46で前面カバー13に斬新なデザインを創出し、不透明部46に含まれる意匠部43によってミリ波レーダ42を前方から見栄えよく遮蔽できる。特に、意匠部43は着色によりミリ波レーダ42を遮蔽しているので、前面カバー13に特別な装飾形状を与える必要がなく、実施例1,2と比較して、より安価に製作でき、また、エクステンションリフレクタ38にミリ波レーダ42の前面アンテナ部を開放する開口部47を形成することもできる。
【実施例4】
【0020】
図5に示すように、実施例4の車両用前照灯51では、ミリ波レーダ52と意匠部53が多眼式の前面カバー13に設けられている。灯具ボディ12の内側には3つの光源ユニット54が配設され、前面カバー13に光源ユニット54と同数のレンズ部55が配列されている。ミリ波レーダ52は、レンズ部55の側方または間に位置するように、前面カバー13の裏面に伝熱性接着シート24で取り付けられている。意匠部53は、レンズ部55と同じ形状で形成され(図5a参照)、内面側の再帰性反射面56によって不透明となっている。したがって、この実施例4によれば、特に、前面カバー13に複数の同一形状部を配列して、多眼式前照灯51に適したデザインを創作でき、そのうち一つの意匠部53によってミリ波レーダ52を見栄えよく遮蔽できるという効果が得られる。
【実施例5】
【0021】
図6、図7に示すように、実施例5の車両用前照灯61では、ミリ波レーダ62と意匠部63がクリアランスランプ64(図6参照)に設けられている。クリアランスランプ64はメイン光源ユニット65の下側にLED光源ユニット(図示略)を装備し、前面カバー13の下縁部にレンズ部66が形成されている。ミリ波レーダ62は光源カバー15の下部前面に伝熱性接着シート24で取り付けられ、意匠部63がレンズ部66の一部に設けられ、意匠部63およびレンズ部66が再帰性反射面67(図7参照)によって不透明となっている。したがって、実施例5の前照灯61によれば、特に、クリアランスランプ64に既設のレンズ部66を利用して、ミリ波レーダ62を見栄えよく遮蔽できる。
【実施例6】
【0022】
図8に示すように、実施例6の車両用前照灯71では、ミリ波レーダ72と意匠部73が灯具洗浄装置74(図6参照)に設けられている。灯具洗浄装置74は、灯具ボディ12の下部に可動パイプ75を備え、可動パイプ75の先端に洗浄液を前面カバー13に噴射するノズル76と、ノズル76を車体の外側から覆うノズルカバー77とが設けられている。ミリ波レーダ72は灯具ボディ12の下面に伝熱性接着シート24で取り付けられ、ミリ波レーダ72のアンテナ部78がノズルカバー77の内側に装着されている。意匠部73は、不透明樹脂からなるノズルカバー77の前面に設けられ、アンテナ部78を遮蔽するとともに、前面カバー13の下側で灯具デザインの一部を構成している。
【0023】
したがって、実施例6の前照灯71によれば、灯具洗浄装置74に既設のノズルカバー77を利用して、ミリ波レーダ72のアンテナ部78を見栄えよく遮蔽できる。また、ミリ波レーダ72は、灯室14の外部に設置されているため、光源ユニット79の発熱による影響を受けにくくなるうえ、レーダ自体の発熱を車両走行時に空冷できて、検知精度を安定させることもできる。
【実施例7】
【0024】
図9に示すように、実施例7の車両用リアコンビネーションランプ81は、灯具ボディ82と前面カバー83を備えている。灯具ボディ82の内側には、例えばテール・ストップランプ、ターンシグナルランプ、バックアップランプなど、複数の光源ユニット(図示略)が設置されている。前面カバー83には、各光源ユニットからの光を別々に透過する複数のレンズ部84が配設され、レンズ部84と異なる領域にミリ波レーダ85と意匠部86とが設けられている。そして、意匠部86が再帰性反射面87により不透明に形成され、ミリ波レーダ85を遮蔽し、前面カバー83を装飾するようになっている。したがって、実施例7によれば、リアコンビネーションランプ81に既設の前面カバー83を利用して、ミリ波レーダ85を取り付け、意匠部86で見栄えよく遮蔽することができる。
【実施例8】
【0025】
図10に示す実施例8では、伝熱性接着シート24によるミリ波レーダ91の取付および放熱構造について説明する。伝熱性接着シート24は、基材の表裏両面に伝熱性ゲル(例えば、シリコーンゲルを主成分とし、熱伝導性フィラーを含むゲル)を被着した両面接着シートまたはテープであり、ミリ波レーダ91の大きさと設置部位に応じた形状に切断して使用される。伝熱性接着シート24には主体部92と延長部93とが設けられ、主体部92によってミリ波レーダ91が灯具ボディ94(図10参照)、光源カバー15(図2参照)または前面カバー13(図4参照)に取り付けられる。延長部93は、主体部92から所要の長さで延びるように形成され、車体パネル2(図7参照)やラジエータサポート(図示略)など、車体1の一部に接着される。
【0026】
ミリ波レーダ91を取り付けた状態では、伝熱性接着シート24がミリ波レーダ91の熱を主体部92で奪い、延長部93に伝えて車体1に放散させる。したがって、レーダ取付手段を利用した簡単な放熱構造により、光源ユニット95からの伝熱を含むミリ波レーダ91の熱を効率よく逃がし、内部の電子部品を保護することができる。また、伝熱性接着シート24は、延長部93を所要の長さで形成できるため、上記実施例1,2,3,4,5,7に示したように、ミリ波レーダ91を灯室14内に既設の光源カバー15、エクステンションリフレクタ38、前面カバー13などに取り付ける場合の放熱構造として、特に好ましく採用できる。
【0027】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、ミリ波レーダの設置部位や意匠部の形状を適宜に変更して実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例1,2を示す車体の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施例1を示す前照灯の横断面図である。
【図3】本発明の実施例2を示す前照灯の横断面図である。
【図4】本発明の実施例3を示す前照灯の正面図と横断面図である。
【図5】本発明の実施例4を示す前照灯の正面図と横断面図である。
【図6】本発明の実施例5,6を示す車体の外観斜視図である。
【図7】本発明の実施例5を示す前照灯の縦断面図である。
【図8】本発明の実施例6を示す前照灯の縦断面図である。
【図9】本発明の実施例7を示す車両用リアランプの外観斜視図である。
【図10】本発明の実施例8を示すレーダ取付、放熱構造の斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 車体
2 パネル
11 車両用前照灯
12 灯具ボディ
13 前面カバー
15 光源カバー
16,17 光源ユニット
22 ミリ波レーダ
23 意匠部
24 伝熱性接着シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源ユニットとミリ波レーダを搭載した車両用灯具において、車体の外観に表れる樹脂カバーを備え、樹脂カバーの一部に不透明な意匠部を設け、意匠部によってミリ波レーダを遮蔽したことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記ミリ波レーダを樹脂カバーに取り付け、前記意匠部により遮蔽した請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記ミリ波レーダと意匠部を複数の光源ユニットの間に配置した請求項1又は2記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記樹脂カバーが灯具洗浄装置のノズルカバーを含み、ノズルカバーにミリ波レーダのアンテナ部と前記意匠部とを設けた請求項1記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記ミリ波レーダを取り付けるための伝熱性接着シートを備え、伝熱性接着シートの延長部を車体の一部に接着した請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−137758(P2010−137758A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317058(P2008−317058)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】