説明

車両用灯具

【課題】開口形状を有する部品に設けられる係合形状であって当該部品とその開口を覆う他の部品とを係合させるものを、スライド型を用いることなく成型する。
【解決手段】車両用灯具1は、ハウジング2と、前方に開口する形状に形成されてハウジング2の嵌合部21に嵌合されるリフレクタ3と、リフレクタ3の開口を覆うレンズ4とを備える。ハウジング2は、前方に開口する凹部24を嵌合部21の周縁部に有する。リフレクタ3は、上下方向に延在するよう外周面から延出されるとともに凹部24内の右内側面側に配置される延在部31を有し、底部でハウジング2と締結固定される。レンズ4は、後方に向けて突設されて外側面に係止凹部41aが形成された突設部41を有する。突設部41は、係止凹部41aが延在部31に前後方向に係止された状態で、凹部24の左内側面と延在部31とで挟持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用ヘッドライトなどの車両用灯具では、レンズとハウジング(又はエクステンション等)とが複数の係合部によって互いに固定されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一般に、この係合部は、図4に示すように、部品A(例えばハウジング)に形成された凹部80と、部品B(例えばレンズ)に形成された凸部90とを、係合方向Xに沿って互いに係合させる構造となっている。これら凹部80及び凸部90は、係合方向Xと略直交する方向に形成された係止孔81及び係止突起91を有しており、係合時にこれら係止孔81及び係止突起91を互いに係止させることにより、脱落が防止されるようになっている。
【0004】
凹部80及び凸部90は、各部品と一体的に樹脂成型される。この成型に用いられる主型は、型抜き方向を係合方向Xにほぼ沿った方向としているが、このような主型では、係合方向Xと略直交する方向への係止孔81及び係止突起91を成型することができない。そのため、係止孔81及び係止突起91の成型には、主型に対して係合方向Xと略直交する方向へ移動可能なスライド型が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−272332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記係合部の構造では、例えば開口形状を有する部品Bに複数の凸部90を成型しようとすると、部品Bのサイズによっては、複数の係止突起91を成型するための複数のスライド型の移動範囲が重複してしまう場合がある。つまり、サイズの小さい部品Bに内側への係止突起91を複数成型しようとすると、複数のスライド型が互いに干渉してしまうため、成型可能な凸部90の数量が限定されてしまい、固定に必要な数量の係合部を設けることができない。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、開口形状を有する部品に設けられる係合形状であって当該部品とその開口を覆う他の部品とを係合させるものを、スライド型を用いることなく成型することができる車両用灯具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両用灯具において、
前方に開口する嵌合部を有する第一の部品と、
前方に開口する形状に形成されて前記嵌合部に嵌合される第二の部品と、
前記第二の部品の開口を覆う第三の部品と、
を備え、
前記第一の部品は、前方に開口する凹部を前記嵌合部の周縁部に有し、
前記第二の部品は、前後方向に直交する方向に延在するように当該第二の部品の外周面から延出されるとともに、前記凹部内の一方の内側面側に配置される延在部を有し、底部で前記第一の部品と締結固定され、
前記第三の部品は、当該第三の部品の周縁部に後方に向けて突設されるとともに、側方に開口する係止凹部が外側面に形成された突設部を有し、
前記突設部は、前記係止凹部が前記延在部に前後方向に係止された状態で、前記凹部の他方の内側面と前記延在部とで挟持されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用灯具において、
前記凹部の他方の内側面は、後方に向かうに連れて前記突設部に近接するように傾斜していることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用灯具において、
前記第一の部品はハウジングであり、
前記第二の部品はリフレクタであり、
前記第三の部品はレンズであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第二の部品が第一の部品と締結固定されるとともに、第二の部品の外周面から延出された延在部が第三の部品に突設された突設部の係止凹部に前後方向に係止された状態で、第一の部品に形成された凹部の内側面と延在部とで突設部が挟持されている。つまり、第一の部品,第二の部品及び第三の部品を前後方向に嵌め合わせることにより、突設部が凹部の内側面と延在部とで挟持されて、第三の部品が第一の部品及び第二の部品に係合される。これにより、前方に開口する形状に形成された第二の部品に、係合方向(前後方向)に直交する方向への係止孔又は係止突起を設けることなく、当該第二の部品と第三の部品とを係合させることができる。したがって、第三の部品を係合させるために第二の部品に設けられる係合形状を、スライド型を用いることなく成型することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態における車両用灯具の要部を示す分解斜視図である。
【図2】実施形態における車両用灯具の係合部を示す断面図である。
【図3】実施形態における車両用灯具の他の係合部を示す断面図である。
【図4】従来の車両用灯具の係合部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施形態における車両用灯具1の要部を示す分解斜視図である。
なお、以下の説明では、特に断らない限り、「上」「下」「前」「後」「左」「右」との記載を、車両用灯具1から見た方向を指すものとして、図面の記載と対応させて用いることとする。
【0015】
図1に示すように、車両用灯具1は、図示しない車両の後端部に配置されるリヤコンビネーションランプであり、ハウジング2と、リフレクタ3と、レンズ4とを備えている。
【0016】
ハウジング2は、前面が開口した形状に形成され、ターンランプを構成するための窪み部20を下半部に有するとともに、テールランプ及びストップランプを構成するための嵌合部21を上半部に有している。嵌合部21は、前方に開口する略円筒状に形成され、その周縁部の右端部に切欠き部22を有している。嵌合部21の底面のうち、切欠き部22のやや中央寄りに位置する部分には、突起壁23が立設されている。突起壁23の右外側面は、基端側(後方)に向かって右側へ傾斜するテーパー状に形成されている(図2参照)。この突起壁23の右外側面と、切欠き部22の後方に位置する嵌合部21の内側面及び底面とにより、前方に開口する凹部24が形成されている。また、嵌合部21の底面には、挿通孔25が形成されている。
【0017】
リフレクタ3は、前方に開口する略円筒状に形成され、ハウジング2の嵌合部21に嵌合されている。このリフレクタ3は、底面が反射面となっており、嵌合部21の底部を通じて後方から挿入される光源(図示せず)からの光を前方へ反射させる。リフレクタ3の右外周部には、上下方向に延在する延在部31が外周面から延出されている。この延在部31は、ハウジング2の凹部24内の右内側面側に配置されるように形成されている(図2参照)。リフレクタ3の内周面には、2つの突起部32,32が形成されている。この突起部32,32は、延在部31を含めた3つで周上3等配となるようにそれぞれ配置されている。
また、リフレクタ3の底部(後面)には、図2に示すように、ねじ孔33が穿設されている。当該ねじ孔33に、ハウジング2の挿通孔25に挿通させた締結ねじ5が螺合されることにより、リフレクタ3がハウジング2に締結固定されている。
【0018】
レンズ4は、図1に示すように、リフレクタ3の前面開口と同サイズの略円板状に形成され、リフレクタ3の前面開口を覆うように配置されている。レンズ4の周縁部の右端には、後方に向けて突設された突設部41が形成されている。突設部41の先端部の外側面には、右側方に開口する係止凹部41aが形成されている。この係止凹部41aは、リフレクタ3の延在部31の左半部が嵌まるような上面視略コ字状に形成されている(図2参照)。また、レンズ4の周縁部には、図3に示すように、リフレクタ3の内周面に沿って後方へ延出する延出部42が形成されている。この延出部42は、リフレクタ3の突起部32,32と対応する2箇所に設けられるとともに、当該突起部32と係合する係合孔42aが外側面に形成されている。
【0019】
このレンズ4は、リフレクタ3と小組みした状態で、ハウジング2に前方から嵌め合わせることにより、これらリフレクタ3及びハウジング4に固定される。
具体的には、まず、レンズ4の2つの延出部42,42の係合孔42aがリフレクタの突起部32,32と係合される。また同時に、図2に示すように、レンズ4の突設部41が、リフレクタ3の延在部31を係止凹部41aに前後方向に係止させた状態で、ハウジング2の凹部24内に挿入されることにより、延在部31と凹部24の左内側面(突起壁23の右外側面)とで突設部41が挟持される。このとき、凹部24の左内側面が後方に向かって右側へ傾斜している、つまり、後方に向かうに連れて突設部41に近接するように傾斜しているので、突設部41は、凹部24内へ深く挿入されるに連れて延在部31に押し付けられる。これにより、突設部41の係止凹部41aは延在部31に確実に係止され、当該延在部31からの脱落を防止することができる。
そして、ハウジング2の挿通孔25に挿通させた締結ねじ5をリフレクタ3のねじ孔33に螺合させることにより、リフレクタ3がハウジング2に締結固定される。
こうして、レンズ4は、周上3箇所でハウジング2及びリフレクタ3に固定される。
【0020】
以上のように、車両用灯具1によれば、ハウジング2,リフレクタ3及びレンズ4を前後方向に嵌め合わせることにより、突設部41が凹部24の左内側面と延在部31とで挟持されて、レンズ4がハウジング2及びリフレクタ3に係合される。これにより、前方に開口する形状に形成されたリフレクタ3に、係合方向(前後方向)に直交する方向への係止孔又は係止突起を設けることなく、当該リフレクタ3とレンズ4とを係合させることができる。したがって、レンズ4を係合させるためにリフレクタ3に設けられる係合形状の1つを、スライド型を用いることなく成型することができる。
【0021】
このように、リフレクタ3に設けられる係合形状の1つをスライド型が不要な形状とすることにより、スライド型が必要な突起部32,32を含む全ての係合形状を、レンズ4の固定に必要な数量だけ(本実施形態では3つ)成型することができる。なお、成型にスライド型が不要な係合形状(延在部31)は1つに限定されず、2つ以上設けられていてもよい。
【0022】
また、凹部24の左内側面が、後方に向かうに連れて突設部41に近接するように傾斜しているので、突設部41は、凹部24内へ深く挿入されるに連れて延在部31に押し付けられる。これにより、突設部41の係止凹部41aが延在部31から脱落することを防止でき、ひいてはレンズ4の脱落を防止することができる。
【0023】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 車両用灯具
2 ハウジング(第一の部品)
21 嵌合部
24 凹部
3 リフレクタ(第二の部品)
31 延在部
32 突起部
4 レンズ(第三の部品)
41 突設部
41a 係止凹部
42 延出部
42a 係合孔
5 締結ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に開口する嵌合部を有する第一の部品と、
前方に開口する形状に形成されて前記嵌合部に嵌合される第二の部品と、
前記第二の部品の開口を覆う第三の部品と、
を備え、
前記第一の部品は、前方に開口する凹部を前記嵌合部の周縁部に有し、
前記第二の部品は、前後方向に直交する方向に延在するように当該第二の部品の外周面から延出されるとともに、前記凹部内の一方の内側面側に配置される延在部を有し、底部で前記第一の部品と締結固定され、
前記第三の部品は、当該第三の部品の周縁部に後方に向けて突設されるとともに、側方に開口する係止凹部が外側面に形成された突設部を有し、
前記突設部は、前記係止凹部が前記延在部に前後方向に係止された状態で、前記凹部の他方の内側面と前記延在部とで挟持されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記凹部の他方の内側面は、後方に向かうに連れて前記突設部に近接するように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第一の部品はハウジングであり、
前記第二の部品はリフレクタであり、
前記第三の部品はレンズであることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−169043(P2012−169043A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26632(P2011−26632)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】