説明

車両用無線通信端末及び無線車両制御システム

【課題】車両用無線通信端末が、車両の遠隔制御と車両以外の装置の遠隔制御とに兼用される場合に、車両用無線通信端末において、車両の遠隔制御に必要な操作部以外の操作部の追加を必要とせず、かつ、遠隔制御の対象に応じて異なる操作を行う必要がないこと。
【解決手段】車両用無線通信端末10は、当該端末が車両内及び車両外のいずれに存在するかを識別する端末位置情報を車両側から受信回路15を通じて取得する。さらに、車両用無線通信端末10は、操作ボタン11に対する操作が検知されたときに、端末位置情報の内容に応じて、車両用制御信号及び車両以外の車庫ゲート駆動装置30の遠隔制御のための車庫用制御信号のうちの一方を選択し、選択した制御信号を送信回路13を通じて外部へ送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の遠隔制御に用いられる車両用無線通信端末、及びその車両用無線通信端末と車両制御装置とを含む無線車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、車両の典型例である自動車において、車両に搭載された車両制御装置と、利用者が所持する車両用無線通信端末と含むキーレスエントリシステムが採用されることが多い。キーレスエントリシステムは、特許文献1に示されるように、ハンズフリーで車両のドアの施錠及び開錠を自動的に行うシステムである。また、キーエントリシステムは、車両用無線通信端末に設けられた「開ボタン」及び「閉ボタン」などの操作部に対する操作に応じて、電動式のドアの開閉の制御を行う遠隔制御機能を兼ね備えることが多い。
【0003】
車両用のキーエントリシステムにおいては、車両制御装置が、車内、車両のドアの周辺及びその他の場所のうちのいずれに車両用無線通信端末が存在するのかを認識する必要がある。そのため、車両用のキーエントリシステムにおいて、車両制御装置から車両用無線通信端末への信号送信は、電界強度の調整による通信可能領域の微調整が容易なLF(Low Frequency:30KHz〜300KHz程度)波を用いて行われることが多い。一方、車両用無線通信端末から車両制御装置への信号送信は、300MHz〜3GHz程度の周波数の電波であるUHF(Ultra High Frequency)波を用いて行われることが多い。
【0004】
即ち、車両用制御装置は、車両の内側及び車両の外側におけるドアの周辺の各々を個別に通信領域とする複数の送信アンテナのうちの一部を順次選択し、選択した送信アンテナを通じて車両用無線通信端末へLF波の信号を順次送信する。また、車両制御装置は、車両用無線通信端末からの応答として、受信アンテナを通じてUHF波の信号を受信する。そして、車両用制御装置は、車両用無線通信端末との通信を行ったときのその通信の成立の状況及び送信アンテナの選択状況に応じて、車両用無線通信端末が車両内、車両の外側におけるドアの周辺及びその他の場所(LF波の届かない場所)のいずれに存在するかを判定する。
【0005】
例えば、特許文献1には、ECU(Electric Control Unit)が、車両の内側及び外側の各々を個別に通信領域とする複数の送信アンテナのうちの一部を順次選択し、選択した送信アンテナを通じて車両用無線通信端末へ信号を送信することについて示されている。また、特許文献1には、複数の送信アンテナの中から選択された送信アンテナが、複数の送信アンテナに対して共通に設けられた1つのLF(Low Frequency)駆動回路により駆動することについても示されている。LF駆動回路は、低周波数の電波を出力するためにアンテナに対して30KHz〜300KHz程度の周波数の駆動信号を供給する回路である。
【0006】
ところで、車両用無線通信端末が、車両の遠隔制御と、車両に関連する車両以外の装置の遠隔制御とに兼用されれば、利用者が、複数の無線端末を所持する必要がなくなり利便性が高い。例えば、車両用無線通信端末が、駐車場(車庫を含む)の門を駆動する装置の遠隔制御、又は駐車場に設けられた昇降式の車輪止めを駆動する装置の遠隔制御などに兼用されれば好適である。
【0007】
例えば、特許文献2には、車両用無線通信端末が、車両のドアの施錠及び解錠のための遠隔制御と、住宅のドアの施錠及び解錠のための遠隔制御とに兼用されることについて示されている。また、特許文献2には、車両用無線通信端末が、操作スイッチ(操作部)に対する操作に応じて、車両用の制御信号及び住宅用の制御信号のいずれを送信するかを選択するための構成の例として、複数の例が示されている。第1の例は、車両用無線通信端末が、車両用の制御信号に対応した操作スイッチと、住宅用の制御信号に対応した操作スイッチとを個別に備える例である。第2の例は、車両用無線通信端末が、制御の内容(施錠又は解錠)に対応した操作スイッチと、車両用及び住宅用の用途を選択するための操作スイッチとを個別に備える例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−21830号公報
【特許文献2】特開平9−287330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に示されるシステムによれば、車両の遠隔制御に必要な操作部に加え、住宅用の制御信号の送信を選択するための操作部が、車両用無線通信端末に設けられることが必要である。このことは、車両用無線通信端末の大型化及び高コスト化につながるという問題点を有している。さらに、特許文献2に示されるシステムは、遠隔制御の対象が車両及び車両以外の装置のいずれであるかによって異なる操作を行うことことが煩わしいという問題点も有している。
【0010】
本発明は、車両用無線通信端末が、車両の遠隔制御と車両以外の装置の遠隔制御とに兼用される場合に、車両用無線通信端末において、車両の遠隔制御に必要な操作部以外の操作部の追加を必要とせず、かつ、遠隔制御の対象に応じて異なる操作を行う必要がないシステムの実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る車両用無線通信端末は、以下に示す各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、車両の遠隔制御のために操作される操作部である。
(2)第2の構成要素は、車両側から無線により信号を受信する端末側無線受信部である。
(3)第3の構成要素は、外部に対して無線により信号を送信する端末側無線送信部である。
(4)第4の構成要素は、当該車両用無線通信端末が車両内及び車両外のいずれに存在するかを識別する位置情報を車両側から端末側無線受信部を通じて取得する位置情報取得部である。
(5)第5の構成要素は、操作部に対する操作が検知されたときに、位置情報取得部により取得された位置情報の内容に応じて、車両の遠隔制御のための車両用制御信号及び車両以外の装置の遠隔制御のための非車両用制御信号のうちの一方を選択し、選択した制御信号を端末側無線送信部を通じて外部へ送出する信号選択部である。
【0012】
また、本発明に係る車両用無線通信端末が、情報の書き換えが可能な記憶部をさらに備えることが考えられる。この場合、位置情報取得部は、車両側から端末側無線受信部を通じて位置情報を取得したときにその位置情報を記憶部に記録する。また、信号選択部は、操作部に対する操作が検知されたときに、記憶部に記録されている位置情報の内容に応じて制御信号を選択する。
【0013】
また、本発明に係る車両用無線通信端末が、操作部に対する操作が検知されたときに、端末側無線送信部を通じて位置情報を要求する信号を外部へ送出する位置情報要求部をさらに備えることが考えられる。この場合、位置情報取得部は、位置情報要求部の処理に応じて車両側から送信される位置情報を取得する。
【0014】
また、本発明に係る車両用無線通信端末において、位置情報取得部が、位置情報要求部の処理に応じて車両側から位置情報を取得できなかった場合に、信号選択部は、車両用制御信号を選択することが考えられる。
【0015】
また、本発明に係る車両用無線通信端末において、非車両用制御信号は、駐車場に対する車両の出入りを制御する装置の遠隔制御のための制御信号であれば好適である。駐車場に対する車両の出入りを制御する装置は、例えば、駐車場(車庫を含む)の門を駆動する装置、又は駐車場に設けられた昇降式の車輪止めを駆動する装置などである。
【0016】
また、本発明を、車両用無線通信端末と車両制御装置とを含む無線車両制御システムとして捉えることもできる。本発明に係る無線車両制御システムは、以下に示す各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、車両の遠隔制御のために操作される操作部である。これは、車両用無線通信端末に設けられる。
(2)第2の構成要素は、車両側から無線により信号を受信する端末側無線受信部である。これは、車両用無線通信端末に設けられる。
(3)第3の構成要素は、外部に対して無線により信号を送信する端末側無線送信部である。これは、車両用無線通信端末に設けられる。
(4)第4の構成要素は、車両の内側及び外側の各々を個別に通信領域とする複数の送信アンテナのうちの一部を選択するアンテナ選択部である。これは、車両制御装置に設けられる。
(5)第5の構成要素は、アンテナ選択部により選択された送信アンテナを通じて無線により信号を送信する車両側無線送信部である。これは、車両制御装置に設けられる。
(6)第6の構成要素は、受信アンテナを通じて無線により信号を受信する車両側無線受信部である。これは、車両制御装置に設けられる。
(7)第7の構成要素は、車両側無線受信部により車両の遠隔制御のための車両用制御信号が受信されたときに車両用制御信号に対応した制御を行う制御部である。これは、車両制御装置に設けられる。
(8)第8の構成要素は、車両側無線送信部及び車両側無線受信部を通じた車両用無線通信端末との通信が行われたときの通信の成立の状況及び送信アンテナの選択状況に応じて車両用無線通信端末が車両内及び車両外のいずれに存在するかを判定する端末位置判定部である。これは、車両制御装置に設けられる。
(9)第9の構成要素は、端末位置判定部の判定結果を表す位置情報を、車両側無線送信部を通じて車両用無線通信端末へ送信する位置情報送出部である。これは、車両制御装置に設けられる。
(10)第10の構成要素は、位置情報を車両側無線送信部から端末側無線受信部を通じて取得する位置情報取得部である。これは、車両用無線通信端末に設けられる。
(11)第11の構成要素は、操作部に対する操作が検知されたときに、位置情報取得部により取得された位置情報の内容に応じて、車両用制御信号及び車両以外の装置の遠隔制御のための非車両用制御信号のうちの一方を選択し、選択した制御信号を端末側無線送信部を通じて外部へ送出する信号選択部である。これは、車両用無線通信端末に設けられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車両用無線通信端末は、車両の遠隔制御と車両以外の装置の遠隔制御とに兼用されることが可能である。また、本発明において、車両用無線通信端末は、操作部に対する操作が検知されたときに、当該端末が車両内及び車両外のいずれに存在するかを自動的に認識し、認識した結果に応じて遠隔制御の対象(車両又は車両以外の装置)を自動的に切り替える。従って、本発明によれば、車両用無線通信端末において、車両の遠隔制御に必要な操作部以外の操作部の追加を必要とせず、かつ、遠隔制御の対象が、車両であるか車両以外の装置であるかに応じて異なる操作を行う必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る無線車両制御システム1の主要部の構成を示すブロック図である。
【図2】無線車両制御システム1が適用された車両及び車庫の模式図である。
【図3】無線車両制御システム1における端末位置判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】無線車両制御システム1における遠隔制御の手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る無線車両制御システムにおける端末位置判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態に係る無線車両制御システムにおける遠隔制御の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0020】
<第1実施形態>
まず、図1に示されるブロック図及び図2に示される模式図を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る無線車両制御システム1の主要な構成について説明する。図1に示されるように、無線車両制御システム1は、本発明の第1実施形態に係る車両用無線通信端末10と、車両9に搭載された車両制御装置であるECU20と、車庫ゲート駆動装置30とを含む。車両用無線通信端末10は、利用者により携帯される可搬型の無線端末である。以下、車両用無線通信端末10のことを無線端末10と略称する。
【0021】
<無線端末10>
図1に示されるように、無線端末10は、複数の操作ボタン11、端末制御回路12、送信回路13、送信アンテナ14、受信回路15、受信アンテナ16及び不揮発性の書き換え可能なメモリ17とを備える。操作ボタン11は、例えば、車両9が備えるドアロック装置を開錠するために操作される「開ボタン」、及びドアロック装置を施錠するために操作される「閉ボタン」を含む。なお、操作ボタン11は、車両9の遠隔制御のために操作される操作部の一例である。また、メモリ17は、例えば、フラッシュメモリ又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)などである。
【0022】
無線端末10における送信回路13は、外部の装置に対して無線信号を送信する回路である。ここで、送信回路13による無線送信の相手となる外部の装置には、車両9に搭載されたECU20と、車両9以外の装置の一例である車庫ゲート駆動装置30とが含まれる。無線端末10における送信回路13は、信号伝送用の電波としてUHF波を用いる。即ち、送信回路13は、300MHz〜3GHz程度の周波数の基準信号(搬送波)に対し、端末制御回路12の送信信号に応じた変調が施されたアンテナ駆動信号を生成し、そのアンテナ駆動信号を端末側の送信アンテナ14へ供給する回路である。
【0023】
また、無線端末10における受信回路15は、端末側の受信アンテナ16を通じて、車両9側から送信される無線信号を受信する回路である。無線端末10における受信回路15は、信号伝送用の電波としてLF波を用いる。即ち、受信回路15は、端末側の受信アンテナ16を通じて入力される信号から、30KHz〜300KHz程度の搬送波の成分を除去して受信信号を抽出し、その受信信号を端末制御回路12へ出力する回路である。
【0024】
端末制御回路12は、操作ボタン11に対する操作に対応した制御信号(送信信号)を、送信回路13を通じて外部へ送信する信号送信処理、及び受信回路15を通じて入力される受信信号の内容に応じた処理を実行する回路である。
【0025】
例えば、端末制御回路12は、操作ボタン11に対する操作を検知し、検知した操作に応じた制御信号(送信信号)を送信回路13に供給することにより、制御信号を送信回路13を通じて外部へ出力する。また、操作ボタン11に対する操作に応じて送信される制御信号としては、車両9の遠隔制御のための車両用制御信号と車庫ゲート駆動装置30の遠隔制御のための車庫用制御信号とが存在する。
【0026】
そして、端末制御回路12は、操作ボタン11に対する操作が検知されたときに、車両用制御信号及び車庫用制御信号のうちの一方を選択して外部へ送出する。例えば、端末制御回路12は、操作ボタン11における「開ボタン」の操作を検知した場合、状況に応じて、車両9におけるドアロック装置の開錠を要求する車両用制御信号、又は車庫の門40を開くことを要求する車庫用制御信号を送出する。また、端末制御回路12は、操作ボタン11における「閉ボタン」の操作を検知した場合、状況に応じて、車両9におけるドアロック装置の施錠を要求する車両用制御信号、又は車庫の門40を閉じることを要求する車庫用制御信号を送出する。制御信号の選択方法の詳細については後述する。
【0027】
また、端末制御回路12は、車両9ごとに固有の識別情報であるIDコードを、送信回路13を通じて外部へ送信する処理も行う。IDコードは、無線端末10が備えるメモリ、例えば、メモリ17に予め記録されている。端末制御回路12は、受信回路15を通じてECU20からIDコードを要求する制御信号を受信した場合に、その応答処理として、IDコードを送信する。また、端末制御回路12は、車両用制御信号又は車庫用制御信号を送信する際に、制御信号とともにIDコードも送信する。
【0028】
さらに、端末制御回路12は、端末位置情報を車両9側から受信回路15を通じて取得し、取得した端末位置情報をメモリ17に記録する処理も実行する。端末位置情報は、当該無線端末10が車両9の中(車両内)及び車両9の外のいずれに存在するかを識別する情報である。端末位置情報の取得に関する処理の詳細は後述する。
【0029】
<ECU20>
図1に示されるように、車両9に搭載されたECU20は、受信回路21、送信回路22、車両制御回路23及び不揮発性の書き換え可能なメモリ24とを備える。メモリ17は、例えば、フラッシュメモリ又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)などである。
【0030】
また、ECU20が搭載された車両9には、複数の送信アンテナ8、受信アンテナ6、複数の検出スイッチ5、車速検出器4及び車両9のドアを駆動するドアロックモータ3などが設けられている。検出スイッチ5には、例えば、車両9が備える複数のドア各々が開状態であるか閉状態であるかを検出するドアスイッチ、車両9のエンジンを始動するための押しボタン式の操作スイッチである始動スイッチなどが含まれる。
【0031】
ECU20の受信回路21は、受信アンテナ6を通じて、無線端末10から送信される信号を無線により受信する回路である。即ち、車両9の受信回路21は、車両9の受信アンテナ6を通じて入力される信号から、300MHz〜3GHz程度の搬送波(UHF波)の成分を除去して受信信号を抽出し、その受信信号を車両制御回路23へ出力する回路である。
【0032】
ECU20の送信回路22は、複数の送信アンテナ8の中から車両制御回路23によって選択された一部の送信アンテナ8を通じて、無線端末10に対して無線により信号を送信する回路である。ECU20における送信回路22は、信号伝送用の電波としてLF波を用いる。即ち、送信回路22は、30KHz〜300KHz程度の周波数の基準信号(搬送波)に対し、車両制御回路23の送信信号に応じた変調が施されたアンテナ駆動信号を生成し、そのアンテナ駆動信号を車両9の送信アンテナ8へ供給する回路である。
【0033】
車両制御回路23は、受信回路21により車両9の遠隔制御のための車両用制御信号が受信されたときに、その車両用制御信号に対応した制御を行う。例えば、車両9のドアロック装置の開錠を要求する車両用制御信号が受信された場合、車両制御回路23は、ドアロックモータ3に対する給電を制御することにより、ドアロック装置が開錠状態となるようにドアロックモータ3を駆動させる。また、車両9のドアロック装置の施錠を要求する車両用制御信号が受信された場合、車両制御回路23は、ドアロックモータ3に対する給電を制御することにより、ドアロック装置が施錠状態となるようにドアロックモータ3を駆動させる。
【0034】
また、車両制御回路23は、送信回路22による信号の送信先として、複数の送信アンテナ8のうちの一部を選択する機能を備えている。例えば、図1に示されるように、ECU20が、複数の送信アンテナ8各々に対応する複数のスイッチ25を備える場合がある。この場合、車両制御回路23は、複数のスイッチ25各々に対して個別に制御信号を出力することにより、複数の送信アンテナ8のうちの一部を選択するアンテナ選択処理を実行する。複数のスイッチ25は、例えばFETである。各スイッチ25は、入力される制御信号(ON信号/OFF信号)に従って、対応する送信アンテナ8の信号伝送ラインを接続状態又は遮断状態に切り替える。これにより、送信回路22から出力されるアンテナ駆動信号は、接続状態のスイッチ25に対応する送信アンテナ8に対してのみ供給される。また、スイッチ25が設けられず、車両制御回路23が、複数の送信アンテナ8各々に対応する複数の信号出力ポートを備える場合もある。この場合、車両制御回路23は、送信回路22を通じてアンテナ駆動信号を出力する信号出力ポートを選択するソフトウェアの処理により、アンテナ選択処理を実行する。
【0035】
図2に示されるように、複数の送信アンテナ8は、車両9の外側におけるドアの周辺の通信領域81Aを主な通信領域とする複数の外側アンテナ8Aと、車両9の内側(居室内)を主な通信領域81Bとする1つ又は複数の内側アンテナ8Bとを含む。このように、複数の送信アンテナ8は、車両9の外側及び内側の各々を個別に通信領域81(81A,81B)とするアンテナである。
【0036】
また、車両制御回路23は、無線端末10から受信回路21を通じてIDコードを受信し、受信したIDコードが、ECU20が備えるメモリ(例えば、メモリ24)に予め記録されたIDコードと一致するか否かを判定するIDコード照合処理を行う。そして、車両制御回路23は、IDコードの照合が成功した場合にのみ、即ち、受信したIDコードと予め記録されたIDコードとが一致した場合にのみ、IDコードに対応して受信した制御信号に従った制御を実行する。
【0037】
また、車両制御回路23は、無線端末10が車両内、車両外におけるドアの周辺及び車両外におけるその他の場所のいずれに存在するかを判定する端末位置判定処理を実行する。ここで、IDコードの照合が成功したことは、無線端末10との通信が成立したことを意味する。端末位置判定処理の詳細については後述する。
【0038】
また、車両制御回路23は、端末位置判定処理の判定結果を表す端末位置情報を、送信回路22を通じて無線端末10へ送信する処理も実行する。
【0039】
<車庫ゲート駆動装置30>
車庫ゲート駆動装置30は、駐車場に対する車両9の出入りを制御する装置の一例であり、図2に示されるように、駐車場の一例である車庫の出入り口に設けられた門40を駆動し、門40の開閉を制御する。
【0040】
図1に示されるように、車庫ゲート駆動装置30は、受信アンテナ31、受信回路32、操作ボタン33、ゲートモータ34及び車庫制御回路35などを備える。操作ボタン33は、車庫ゲート駆動装置30における電動式の門40を開くために操作される「開ボタン」、電動式の門40を閉じるために操作される「閉ボタン」、電動式の門40の停止のために操作される「停止ボタン」などを含む。また、ゲートモータ34は、車庫の門40を駆動するモータである。
【0041】
車庫ゲート駆動装置30における受信アンテナ31及び受信回路32は、それぞれ車両9における受信アンテナ6及び受信回路21と同等の部品である。即ち、車庫ゲート駆動装置30の受信回路32は、受信アンテナ31を通じて入力される信号から、搬送波(UHF波)の成分を除去して受信信号を抽出し、その受信信号を車庫制御回路35へ出力する回路である。
【0042】
車庫制御回路35は、受信回路32により車庫ゲート駆動装置30の遠隔制御のための車庫用制御信号が受信されたときに、その車庫用制御信号に対応した制御を行う。例えば、車庫の門40を開くことを要求する車庫用制御信号が受信された場合、車庫制御回路35は、ゲートモータ34に対する給電を制御することにより、門40が開くようにゲートモータ34を駆動させる。また、門40を閉じることを要求する車庫用制御信号が受信された場合、車庫制御回路35は、ゲートモータ34に対する給電を制御することにより、門40が閉じるようにゲートモータ34を駆動させる。
【0043】
また、車庫制御回路35は、操作ボタン33に対する操作を検知し、操作された操作ボタン33に対応する制御を行う。即ち、車庫制御回路35は、操作ボタン33における「開ボタン」、「閉ボタン」及び「停止ボタン」の各々の操作が検知された場合に、ゲートモータ34に対する給電を制御することにより、門40の開動作、閉動作及び停止動作を制御する。
【0044】
また、車庫制御回路35は、無線端末10から受信回路32を通じてIDコードを受信し、受信したIDコードが、当該車庫制御回路35のメモリに予め記録されたIDコードと一致するか否かを判定するIDコード照合処理を行う。そして、車庫制御回路35は、IDコードの照合が成功した場合にのみ、即ち、受信したIDコードと予め記録されたIDコードとが一致した場合にのみ、IDコードに対応して受信した制御信号に従った制御を実行する。
【0045】
<端末位置判定処理>
次に、図3に示されるフローチャートを参照しつつ、無線車両制御システム1において実行される端末位置判定処理の一例について説明する。なお、以下に示されるS11〜S76は、端末制御回路12、車両制御回路23又は車庫制御回路35によって実行される手順の識別符号である。
【0046】
端末位置判定処理において、まず、ECU20の車両制御回路23は、無線端末10に対して信号送信を開始するトリガとなる送信開始イベントが発生したか否かを監視する(S11)。送信開始イベントは、例えば、車両9のドアについているリクエストスイッチが押されたもしくはタッチセンサに手が触れたこと、車両9におけるドアを開くもしくは閉じる操作が行われたこと、着座していることが検出されたこと、エンジン始動の操作が行われたこと、車両9の速度が予め設定された速度を超えたもしくは下回ったこと、受信回路21を通じて予め定められた制御信号が受信されたこと、などである。
【0047】
車両9のドアの開閉の操作は、検出スイッチ5におけるドアスイッチにより検出され、エンジン始動の操作は、検出スイッチ5におけるエンジン始動スイッチにより検出される。なお、検出スイッチ5には、車両9のリクエストスイッチ、タッチセンサ及び着座センサなども含まれる。また、車両9の速度は、車速検出器4により検出される。
【0048】
そして、車両制御回路23は、送信開始イベントが発生したことを検知すると、送信回路22を通じて無線端末10に対する応答要求信号を送信する処理と、受信回路21を通じて無線端末10からの応答信号を受信する処理とを実行する(S12)。その際、車両制御回路23は、送信アンテナ8の選択状況を順次切り替えつつ、選択された送信アンテナ8を通じて応答要求信号を送信する。なお、ステップS12の処理を実行する車両制御回路23が、アンテナ選択部の一例である。
【0049】
また、車両制御回路23は、応答要求信号に、その応答要求信号の送信に用いられた送信アンテナ8を識別するアンテナコードを含める。また、応答信号には、IDコード及びアンテナコードが含まれる。これにより、車両制御回路23は、応答要求信号が送信されたときの送信アンテナ8の選択状況と応答信号との対応関係を把握することができる。なお、以下の場合には、応答要求信号にアンテナコードを含めないことも考えられる。例えば、送信アンテナ8の選択の切り替え周期が、応答信号の受信に要する時間に対して十分に長い場合には、応答信号を送信した送信アンテナ8を区別できる。また、応答要求信号が送信された後における各送信アンテナ8による応答信号の送信タイミングが予め決まっている場合も、応答信号の受信タイミングによって送信アンテナ8を区別できる。これらの場合には、応答要求信号にアンテナコードを含めないことも考えられる。
【0050】
そして、車両制御回路23は、応答信号を受信できた場合には、処理を次のステップS14へ移行させる(S13)。一方、車両制御回路23は、ステップS12の処理において、応答要求信号を送信してから一定時間内に対応する応答信号を受信できなかった場合、処理を後述するステップS17へ移行させる(S13)。
【0051】
次に、車両制御回路23は、ステップS13で受信されたIDコードと、ECU20が予め記憶するIDコードとを照合するIDコード照合処理を行う(S14)。そして、車両制御回路23は、2つのIDコードが一致しなかった場合、即ち、無線端末10との正規の通信が成立しなかった場合、処理を前述したステップS11へ戻す(S15)。
【0052】
一方、車両制御回路23は、2つのIDコードが一致した場合、即ち、無線端末10との正規の通信が成立した場合、必要に応じて、ステップS11で検知された送信開始イベントに対応する処理を実行する(S16)。
【0053】
例えば、ステップS11で検知された送信開始イベントが、エンジン始動の操作である場合、車両制御回路23は、エンジンを始動する処理を実行する。なお、ステップS11で検知された送信開始イベントが、車両9のドアの開閉の操作など、特に対応する処理が定められていないイベントである場合、ステップS15の処理はスキップされる。
【0054】
次に、車両制御回路23は、端末位置判定処理を実行し、その処理結果である端末位置情報をメモリ24に記録する(S17)。端末位置判定処理は、送信回路22及び受信回路21を通じて行われたIDコードの要求及び受信(S12)と、その通信が行われたときの通信の成立の状況(IDコード照合処理(S14)の結果)とに応じて、無線端末10が車両内、車両外におけるドアの周辺及び車両外におけるその他の場所のいずれに存在するかを判定する処理である。
【0055】
無線端末10が車両内、車両外におけるドアの周辺及び車両外におけるその他の場所のいずれに存在するかを判定する処理の一例として、車両制御回路23は、IDコードの照合(S14)が成功したIDコードとともに応答信号に含まれていたアンテナコードに基づいて無線端末10の位置を判定する。以下、そのアンテナコードのことを受信アンテナコードと称する。車両制御回路23は、受信アンテナコードが、内側アンテナ8Bに対応するアンテナコードである場合、無線端末10が車両内に存在すると判定する(S17)。また、車両制御回路23は、受信アンテナコードが、外側アンテナ8Aに対応するアンテナコードである場合、無線端末10が車両外におけるドアの周辺、即ち、外側アンテナ8Aの通信領域81A内に存在すると判定する(S17)。
【0056】
また、車両制御回路23は、ステップS12において応答要求信号の送信に応じた応答信号を受信できなかった場合、無線端末10が車両外におけるドアの周辺以外の場所、即ち、車両外における外側アンテナ8Aの通信領域81A以外の場所に存在すると判定する(S17)。なお、ステップS17の処理を実行する車両制御回路23は、端末位置判定部の一例である。
【0057】
次に、車両制御回路23は、ステップS17での判定結果に相当する端末位置情報を、送信回路22を通じて無線端末10へ送信する(S18)。ここで、無線端末10へ送信される端末位置情報は、少なくとも無線端末10が車両内又は車両外のいずれに存在するかを示す情報であればよい。例えば、ステップS17において、無線端末10が車両外におけるドアの周辺又はそれ以外の場所に存在すると判定された場合、端末位置情報は、それらの判定結果が集約された情報、即ち、単に車両外であることを示す情報であってもよい。なお、ステップS18の処理を実行する車両制御回路23は、位置情報送出部の一例である。なお、車両制御回路23は、ステップS18の処理の実行後、処理を前述したステップS11へ戻す。
【0058】
一方、端末位置判定処理において、無線端末10における端末制御回路12は、まず、ステップS12において車両制御回路23から送信される応答要求信号が、受信回路15を通じて受信されるか否かを監視する(S21)。
【0059】
そして、端末制御回路12は、応答要求信号が受信されると、その応答要求信号に含まれるアンテナコードと、予めメモリに記憶されたIDコードとを含む応答信号を、送信回路13を通じて送信する(S22)。
【0060】
さらに、端末制御回路12は、応答信号の送信に応じて車両制御回路23からステップS18の処理によって送信される端末位置情報を、受信回路15を通じて受信し、受信した端末位置情報をメモリ17に記録する(S23)。なお、端末制御回路12は、ステップS23の処理の実行後、処理を前述したステップS21へ戻す。
【0061】
図3に示される端末位置判定処理が行われることにより、無線端末10が車両内又は車両外のいずれに存在するかが随時判定され(S17)、その判定結果である端末位置情報が、ECU20と無線端末10とに記録される(S17,S23)。
【0062】
<遠隔制御>
次に、図4に示されるフローチャートを参照しつつ、無線車両制御システム1により実行される遠隔制御の手順の一例について説明する。
【0063】
遠隔制御の処理において、まず、無線端末10の端末制御回路12は、操作ボタン11に対する操作が行われたか否かを監視する(S31)。
【0064】
そして、端末制御回路12は、操作ボタン11に対する操作を検知したときに、ステップS23の処理によってメモリ17に予め記録された端末位置情報を参照する(S32)。さらに、端末制御回路12は、メモリ17に記録されている端末位置情報の内容に応じて、操作された操作ボタン11に対応する車両用制御信号及び車庫用制御信号のうちの一方を選択し、選択した制御信号を送信回路13を通じて外部へ送出する(S32〜S34)。
【0065】
より具体的には、メモリ17に記録されている端末位置情報が、無線端末10が車両外に存在することを示す場合、端末制御回路12は、操作が検知された操作ボタン11に対応する車両用制御信号を送信する(S33)。一方、メモリ17に記録されている端末位置情報が、無線端末10が車両内に存在することを示す場合、端末制御回路12は、操作が検知された操作ボタン11に対応する車庫用制御信号を送信する(S34)。
【0066】
また、端末制御回路12は、ステップS33,S34において送信する制御信号に、無線端末10に予め記録されているIDコードを含める。
【0067】
そして、端末制御回路12は、ステップS32〜S34の処理の終了後、処理を前述したステップS31へ戻す。なお、ステップS32〜S34の処理を実行する端末制御回路12が、信号選択部の一例である。
【0068】
一方、遠隔制御の処理において、ECU20の車両制御回路23は、まず、ステップS33において端末制御回路12から送信される車両用制御信号が、受信回路21を通じて受信されるか否かを監視する(S41)。
【0069】
そして、車両用制御信号の受信が検知されたときに、車両制御回路23は、車両用制御信号に含まれるIDコードとECU20が予め記憶するIDコードとに基づいて、ステップS14の処理と同様にIDコード照合処理を行う(S42)。そして、車両制御回路23は、2つのIDコードが一致しなかった場合、即ち、無線端末10との正規の通信が成立しなかった場合、処理を前述したステップS41へ戻す(S43)。
【0070】
一方、車両制御回路23は、2つのIDコードが一致した場合、即ち、無線端末10との正規の通信が成立した場合、ステップS41で受信した制御信号に対応する処理を実行する(S44)。例えば、車両制御回路23は、車両用制御信号が示すドアロック装置の解錠・施錠要求に応じて、ドアロックモータ3の駆動を制御する。その後、車両制御回路23は、処理を前述したステップS41へ戻す。
【0071】
また、遠隔制御の処理において、車庫ゲート駆動装置30の車庫制御回路35は、まず、ステップS34において端末制御回路12から送信される車庫用制御信号が、受信回路32を通じて受信されるか否かを監視する(S51)。
【0072】
そして、車庫用制御信号の受信が検知されたときに、車庫制御回路35は、車庫用制御信号に含まれるIDコードと車庫ゲート駆動装置30が予め記憶するIDコードとに基づいて、ステップS14の処理と同様にIDコード照合処理を行う(S52)。そして、車庫制御回路35は、2つのIDコードが一致しなかった場合、即ち、無線端末10との正規の通信が成立しなかった場合、処理を前述したステップS51へ戻す(S53)。
【0073】
一方、車庫制御回路35は、2つのIDコードが一致した場合、即ち、無線端末10との正規の通信が成立した場合、ステップS51で受信した制御信号に対応する処理を実行する(S54)。例えば、車庫制御回路35は、車庫制御信号が示す車庫の門40の開要求又は閉要求に応じて、ゲートモータ34の駆動を制御する。その後、車庫制御回路35は、処理を前述したステップS51へ戻す。
【0074】
以上に示した無線車両制御システム1において、無線端末10は、車両9の遠隔制御と車庫ゲート駆動装置30の遠隔制御とに兼用される。また、無線端末10は、操作ボタン11に対する操作が検知されたときに、当該無線端末10が車両内及び車両外のいずれに存在するかを自動的に認識し(S17,S23)、認識した結果に応じて遠隔制御の対象(車両9又は車庫ゲート駆動装置30)を自動的に切り替える(S32〜S34)。
【0075】
従って、無線車両制御システム1によれば、無線端末10において、車両9の遠隔制御に必要な操作ボタン11以外の操作スイッチの追加を必要とせず、かつ、遠隔制御の対象が、車両9であるか車庫ゲート駆動装置30であるかに応じて異なる操作を行う必要がない。
【0076】
即ち、無線端末10を携帯する利用者が車両外に存在するときには、無線端末10は、操作ボタン11に対する操作に応じて自動的に車両用制御信号を出力する。これにより、利用者が車両9に乗車する前、即ち、駐車場(車庫)に対する車両9の出入りが行われない状況下において、車庫の門40が不必要に開閉されることが回避される。なお、利用者が車両9に乗車する前においては、車庫ゲート駆動装置30の操作ボタン33に対する操作に応じて、車庫の門40が制御される。
【0077】
一方、無線端末10を携帯する利用者が車両内に存在するときには、無線端末10は、操作ボタン11に対する操作に応じて自動的に車庫用制御信号を出力する。これにより、利用者が車両9に乗車しているとき、即ち、駐車場(車庫)に対する車両9の出入りが行われる状況下においては、無線端末10は、車庫ゲート駆動装置30を遠隔制御するための端末として機能する。その際、利用者は、車庫ゲート駆動装置30の遠隔制御のための操作として、車両9のドアの遠隔制御のための操作と同じ操作を行えばよく、操作性が良い。
【0078】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る無線車両制御システム2について説明する。この無線車両制御システム2は、図1に示された無線車両制御システム1と比較して、一部の構成要素が削除された構成を有しており、図示は省略されている。即ち、無線車両制御システム2は、図1に示される無線車両制御システム1の構成から、無線端末10のメモリ17のみが除かれた構成を有している。以下、無線車両制御システム2における無線車両制御システム1と異なる点についてのみ説明する。
【0079】
<端末位置判定処理>
まず、図5に示されるフローチャートを参照しつつ、無線車両制御システム2において実行される端末位置判定処理の一例について説明する。図5に示される端末位置判定処理は、図3に示される端末位置判定処理から、車両制御回路23が端末位置情報を端末制御回路12へ送信する処理(S18)と、端末制御回路12がその端末位置情報を受信及び記録する処理(S23)とが除かれた処理である。従って、無線車両制御システム2においては、端末位置情報は、無線端末10には記録されない。
【0080】
<遠隔制御>
次に、図6に示されるフローチャートを参照しつつ、無線車両制御システム2により実行される遠隔制御の手順の一例について説明する。
【0081】
無線車両制御システム2における遠隔制御の処理において、無線端末10の端末制御回路12は、操作ボタン11に対する操作が行われたか否かを監視する(S61)。
【0082】
そして、端末制御回路12は、操作ボタン11に対する操作を検知したときに、送信回路13を通じて、端末位置情報を要求する第1車両用制御信号をECU20に対して送信する(S62)。この第1車両用制御信号には、無線端末10に記録されているIDコードが含められる。なお、ステップS62の処理を実行する端末制御回路12が、位置情報要求部の一例である。
【0083】
さらに、端末制御回路12は、第1車両用制御信号の送信に応じて車両制御回路23から返信される端末位置情報を、受信回路15を通じて信号の有無を監視する(S63)。一定時間内に信号が受信された場合、端末制御回路12は、ステップS64の処理を行う。一方、一定時間内に信号が受信されない場合は、端末制御回路12は、無線端末10が外にあるとみなし、ステップS65の処理を行う。これらステップS62及びS63の処理は、無線車両制御システム1におけるステップS23の処理の代わりに実行される処理である。なお、ステップS62及びS63の各々処理を実行する端末制御回路12が、位置情報要求部及び位置情報取得部の一例である。
【0084】
そして、端末制御回路12は、ステップS63で得た端末位置情報に基づいて、無線車両制御システム1におけるステップS32〜S34の処理と同様に、端末位置情報の内容に応じた制御信号の送信処理を実行する(S64〜S66)。ここで、端末制御回路12は、ステップS65,S66において送信する制御信号に、無線端末10に予め記録されているIDコードを含める。なお、便宜上、図6において、第2車両用制御信号との記載(S65)は、ステップS61において操作が検知された操作ボタン11に対応する車両用制御信号のことを意味する。
【0085】
端末制御回路12は、ステップS64〜S66の処理の後、処理を前述したステップS61へ戻す。なお、ステップS64〜S66の処理を実行する端末制御回路12が、信号選択部の一例である。
【0086】
一方、無線車両制御システム2における遠隔制御の処理において、ECU20の車両制御回路23は、まず、ステップS62又はステップS65において端末制御回路12から送信される車両用制御信号が、受信回路21を通じて受信されるか否かを監視する(S71)。
【0087】
そして、車両用制御信号の受信が検知されたときに、車両制御回路23は、車両用制御信号に含まれるIDコードとECU20が予め記憶するIDコードとに基づいて、ステップS14,S42の処理と同様にIDコード照合処理を行う(S72)。そして、車両制御回路23は、2つのIDコードが一致しなかった場合、即ち、無線端末10との正規の通信が成立しなかった場合、処理を前述したステップS71へ戻す(S73)。
【0088】
一方、車両制御回路23は、2つのIDコードが一致した場合、即ち、無線端末10との正規の通信が成立した場合、ステップS71で受信した制御信号が、端末位置情報を要求する第1車両用制御信号であるか、或いは操作ボタン11に対応する第2車両用制御信号であるかを判別する(S74)。
【0089】
そして、受信した制御信号が第1車両用制御信号である場合、車両制御回路23は、端末制御回路12の要求に応じて、図5のステップS17の処理によってECU20のメモリ24に記録された端末位置情報を、送信回路22を通じて無線端末10へ送信する(S75)。なお、ステップS75の処理を実行する車両制御回路23が、位置情報送出部の一例である。なお、車両制御回路23は、ステップS75の処理の後、処理を前述したステップS71へ戻す。
【0090】
一方、受信した制御信号が第2車両用制御信号、即ち、無線端末10の操作ボタン11に対応した車両用制御信号である場合、車両制御回路23は、その第2車両用制御信号に対応する処理を実行する(S76)。例えば、車両制御回路23は、第2車両用制御信号が示すドアロック装置の解錠要求又は施錠要求に応じて、ドアロックモータ3の駆動を制御する。その後、車両制御回路23は、処理を前述したステップS71へ戻す。
【0091】
また、遠隔制御の処理において、車庫ゲート駆動装置30の車庫制御回路35は、まず、ステップS66において端末制御回路12から送信される車庫用制御信号が、受信回路32を通じて受信されるか否かを監視する(S51)。
【0092】
そして、車庫用制御信号の受信が検知されたときに、車庫制御回路35は、車庫用制御信号に含まれるIDコードと車庫ゲート駆動装置30が予め記憶するIDコードとに基づいて、ステップS14の処理と同様にIDコード照合処理を行う(S52)。そして、車庫制御回路35は、2つのIDコードが一致しなかった場合、即ち、無線端末10との正規の通信が成立しなかった場合、処理を前述したステップS51へ戻す(S53)。
【0093】
また、無線車両制御システム2においても、車庫制御回路35は、無線車両制御システム1における車庫制御回路35の処理と同じ処理(S51〜S54)を実行する。
【0094】
以上に示した無線車両制御システム2においても、無線端末10は、車両9の遠隔制御と車庫ゲート駆動装置30の遠隔制御とに兼用される。また、無線端末10は、操作ボタン11に対する操作が検知されたときに、当該無線端末10が車両内及び車両外のいずれに存在するかを自動的に認識し(S17,S63)、認識した結果に応じて遠隔制御の対象(車両9又は車庫ゲート駆動装置30)を自動的に切り替える(S64〜S66)。
【0095】
従って、無線車両制御システム2が採用された場合でも、無線端末10において、車両9の遠隔制御に必要な操作ボタン11以外の操作スイッチの追加を必要とせず、かつ、遠隔制御の対象が、車両9であるか車庫ゲート駆動装置30であるかに応じて異なる操作を行う必要がない。
【0096】
以上に示した実施形態は、無線端末10による遠隔制御の対象となる車両9以外の装置が、駐車場(車庫)の門40を駆動する車庫ゲート駆動装置30である例である。しかしながら、無線端末10による遠隔制御の対象となる車両9以外の装置は、駐車場に対する車両の出入りを制御する他の装置であってもよい。
【0097】
例えば、無線端末10による遠隔制御の対象となる車両9以外の装置が、駐車場に設けられた昇降式の車輪止めを駆動する装置などである。このような装置は、コイン式パーキングなどにおいて広く採用されている。この場合、無線端末10の端末制御回路12は、車両用制御信号以外の制御信号(非車両用制御信号)として、昇降式の車輪止めを上げる又は下げるための制御信号を送信する。
【符号の説明】
【0098】
1 無線車両制御システム
3 ドアロックモータ
4 車速検出器
5 検出スイッチ
6 受信アンテナ
8 送信アンテナ
8A 外側アンテナ
8B 内側アンテナ
9 車両
10 車両用無線通信端末(無線端末)
11 操作ボタン
12 端末制御回路
13 送信回路(端末側)
14 送信アンテナ(端末側)
15 受信回路(端末側)
16 受信アンテナ(端末側)
17 メモリ(端末側)
21 受信回路(車両側)
22 送信回路(車両側)
23 車両制御回路
24 メモリ(車両側)
25 スイッチ
30 車庫ゲート駆動装置
31 受信アンテナ
32 受信回路
33 操作ボタン
34 ゲートモータ
35 車庫制御回路
40 門
81,81A,81B 通信領域
S11〜S76 処理手順の識別符号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の遠隔制御のために操作される操作部と、
前記車両側から無線により信号を受信する端末側無線受信部と、
外部に対して無線により信号を送信する端末側無線送信部と、を備えた車両用無線通信端末であって、
当該車両用無線通信端末が車両内及び車両外のいずれに存在するかを識別する位置情報を前記車両側から前記端末側無線受信部を通じて取得する位置情報取得部と、
前記操作部に対する操作が検知されたときに、前記位置情報取得部により取得された前記位置情報の内容に応じて、前記車両の遠隔制御のための車両用制御信号及び前記車両以外の装置の遠隔制御のための非車両用制御信号のうちの一方を選択し、選択した制御信号を前記端末側無線送信部を通じて外部へ送出する信号選択部と、を備えることを特徴とする車両用無線通信端末。
【請求項2】
情報の書き換えが可能な記憶部をさらに備え、
前記位置情報取得部は、前記車両側から前記端末側無線受信部を通じて前記位置情報を取得したときに該位置情報を前記記憶部に記録し、
前記信号選択部は、前記操作部に対する操作が検知されたときに、前記記憶部に記録されている前記位置情報の内容に応じて制御信号を選択する、請求項1に記載の車両用無線通信端末。
【請求項3】
前記操作部に対する操作が検知されたときに、前記端末側無線送信部を通じて前記位置情報を要求する信号を外部へ送出する位置情報要求部をさらに備え、
前記位置情報取得部は、前記位置情報要求部の処理に応じて前記車両側から送信される前記位置情報を取得する、請求項1に記載の車両用無線通信端末。
【請求項4】
前記位置情報取得部が、前記位置情報要求部の処理に応じて前記車両側から前記位置情報を取得できなかった場合に、前記信号選択部は、前記車両用制御信号を選択する、請求項3に記載の車両用無線通信端末。
【請求項5】
前記非車両用制御信号は、駐車場に対する前記車両の出入りを制御する装置の遠隔制御のための制御信号である、請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両用無線通信端末。
【請求項6】
車両の遠隔制御のために操作される操作部と、
前記車両側から無線により信号を受信する端末側無線受信部と、
外部に対して無線により信号を送信する端末側無線送信部と、を備えた車両用無線通信端末と、
前記車両の内側及び外側の各々を個別に通信領域とする複数の送信アンテナのうちの一部を選択するアンテナ選択部と、
前記アンテナ選択部により選択された前記送信アンテナを通じて無線により信号を送信する車両側無線送信部と、
受信アンテナを通じて無線により信号を受信する車両側無線受信部と、
前記車両側無線受信部により前記車両の遠隔制御のための車両用制御信号が受信されたときに前記車両用制御信号に対応した制御を行う制御部と、を備えた車両制御装置と、
を含む無線車両制御システムであって、
前記車両制御装置は、
前記車両側無線送信部及び前記車両側無線受信部を通じた前記車両用無線通信端末との通信が行われたときの通信の成立の状況及び前記送信アンテナの選択状況に応じて前記車両用無線通信端末が車両内及び車両外のいずれに存在するかを判定する端末位置判定部と、
前記端末位置判定部の判定結果を表す位置情報を、前記車両側無線送信部を通じて前記車両用無線通信端末へ送信する位置情報送出部と、をさらに備え、
前記車両用無線通信端末は、
前記位置情報を前記車両側無線送信部から前記端末側無線受信部を通じて取得する位置情報取得部と、
前記操作部に対する操作が検知されたときに、前記位置情報取得部により取得された前記位置情報の内容に応じて、前記車両用制御信号及び前記車両以外の装置の遠隔制御のための非車両用制御信号のうちの一方を選択し、選択した制御信号を前記端末側無線送信部を通じて外部へ送出する信号選択部と、をさらに備えることを特徴とする無線車両制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−132222(P2012−132222A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285776(P2010−285776)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】