説明

車両用空気調和機

【課題】第1の目的は、鉛直方向にコンパクトな車両用空気調和機を提供することである。第2の目的は、車両用空気調和機の熱交換効率を改善することである。
【解決手段】圧縮機と第1熱交換器と絞り装置と第2熱交換器と、を備え、これらが冷媒配管7を介して環状に接続され冷媒サイクルを構成する冷媒回路を備えた車両用空気調和機100において、冷媒回路の高圧部で超臨界状態となる冷媒を用い、第1熱交換器2aは、複数の平板フィンが平行に配置された放熱部材9と、放熱部材9に貫通して設けられ、被熱伝達媒体の流れ方向である列方向に複数列設けられると共に、列方向に直交する方向である段方向に複数設けられた伝熱管8と、を備え、伝熱管8は、段方向の本数が列方向の本数より少なくなるようにし、且つ、第1熱交換器は、伝熱管8内を流れる冷媒と前記被熱伝達媒体の流れ方向が対向するように設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道等の車両に搭載される車両用空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、第1熱交換器と、圧縮機と、第2熱交換器と、膨張弁と、を順次に配管で環状に接続した冷媒回路を備えている車両用空気調和機が提案されている。その中に、独立した冷媒回路を併設する形態が存在する。そのようなものとして、車両の外部に、第1熱交換器に向けて風を送り込む放出ファンが、車幅方向の略中央に配置され、排気ファンに対して車両の車幅方向の両脇に二つの第1熱交換器がそれぞれ配置され、また、第2熱交換器に向けて風を送り込む吸気ファンが、車幅方向の略中央に配置され、吸気ファンに対して車両の車幅方向の両脇に2つの第2熱交換器がそれぞれ配置されるという形態が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、高圧状態で相変化を伴わない二酸化炭素を冷媒とする蒸気圧縮式冷凍装置の熱交換器が各種提案されている。その中に、熱交換器の伝熱性能を向上させるために、放熱器出口側の冷媒温度を下げるような改良を施して、蒸気圧縮式冷凍装置の熱効率を向上させるものがある。この熱交換器は、複数列から構成される熱交換器で、各列の熱交換器を連通させる冷媒パスの数が、熱交換器の冷媒の入口側から出口側に向かうほど少なくなるようにし、また熱交換器の冷媒パスの出口側及び入口側の数を変えることにより、冷媒の温度レベルに伴う冷媒密度の増大に応じて、熱交換器内を流動する冷媒を熱交換に適した流速に保つようにすることで熱交換効率を良好にできるというものである(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−116981号公報(第1図)
【特許文献2】特開2000−304380号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両用空気調和機の熱交換器内に設けられている伝熱管の鉛直上方向である段方向の本数は、段方向に直交する方向である列方向の本数より多くなるように設置されているため、上記車両用空気調和機に二酸化炭素のような高圧側で超臨界状態となる冷媒を用いる場合においては冷媒配管の肉厚化が必要となり、上記車両用空気調和機の鉛直方向のコンパクト性を損ねてしまうおそれがあった。
また、従来の車両用空気調和機は、上記伝熱管内を流れる上記冷媒の流れ方向と上記伝熱管の外部を流れる被熱伝達媒体の流れ方向が、対向するように設置されていないことにより、熱交換効率が悪くなってしまうおそれがあった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、第1の目的は、コンパクトな車両用空気調和機を提供することである。第2の目的は、車両用空気調和機の熱交換効率を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用空気調和機は、圧縮機と第1熱交換器と絞り装置と第2熱交換器と、を備え、これらが冷媒配管を介して環状に接続され冷凍サイクルを構成する冷媒回路を備えた車両用空気調和機において、前記冷媒回路の高圧部で超臨界状態となる冷媒を用い、前記第1熱交換器は、複数の平板フィンが平行に配置された放熱部材と、前記平板フィンに貫通して設けられ、被熱伝達媒体の流れ方向である列方向に複数列設けられると共に、前記列方向に直交する方向である段方向に複数設けられた伝熱管と、を備え、前記伝熱管は、前記段方向の本数が前記列方向の本数より少なくなるようにし、且つ、前記第1熱交換器は、前記伝熱管内を流れる前記冷媒と前記被熱伝達媒体の流れ方向が対向するように設置される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両用空気調和機は、コンパクト性に優れ、且つ、熱交換効率を改善することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態における車両用空気調和機の概略図である。
【図2】図1で示した車両用空気調和機の点線A−Aにおける断面図である。
【図3】本発明の実施の形態における車両用空気調和機内に設けられている伝熱管と放熱部材の斜視図である。
【図4】図3で示した伝熱管を流れる冷媒の方向と、被熱伝達媒体(空気)の流れる方向を説明した図である。
【図5】図2で示した断面図において、熱交換器(放熱器)に散水する場所を表す図である。
【図6】本発明の実施の形態における、熱交換器(放熱器)の冷媒温度変化を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態における車両用空気調和機100の概略図である。図1に示すように、本実施の形態における車両用空気調和機100は、少なくとも冷媒回路100aと、冷媒回路100bと、排気ファン5と、吸気ファン6から構成されており、それらが一つの筐体に収納されて車室外に設置される。
【0011】
冷媒回路100aは、圧縮機1aと、第1熱交換器2aと、絞り装置3aと、第2熱交換器4aと、が冷媒配管を介して環状に接続され冷凍サイクルを構成している。
また、冷媒回路100bは、圧縮機1bと、第1熱交換器2bと、絞り装置3bと、第2熱交換器4bと、が冷媒配管を介して環状に接続され冷凍サイクルを構成している。
【0012】
第1熱交換器2aは、車幅方向の右の脇に設置され、第1熱交換器2bは、左の端部に設置される(左右が逆でもよい)。
第1熱交換器2aは、2本の冷媒配管7と連結しており、その内の一方の冷媒配管7は、圧縮機1aと連結し、もう一方は絞り装置3aと連結している。
同様に、第1熱交換器2bは、2本の冷媒配管7と連結しており、その内の一方の冷媒配管7は、圧縮機1bと連結し、もう一方は絞り装置3bと連結している。
【0013】
第2熱交換器4aは、図1に示すように、車幅方向の右の脇に設置され、第1熱交換器4bは、左の端部に設置される(左右が逆でもよい)。また、第2熱交換器4aは、第1熱交換器2aに対して車両の長手方向の前方または後方に設置される。同様に、第2熱交換器4bは、第2熱交換器1bに対して、車両の長手方向の前方または後方に設置される。
第2熱交換器4bは、2本の冷媒配管7と連結しており、その内の一方の冷媒配管7は、圧縮機1aと連結し、もう一方は絞り装置3aと連結している。
同様に、第1熱交換器2bは、2本の冷媒配管7と連結しており、その内の一方の冷媒配管7は、圧縮機1bと連結し、もう一方は絞り装置3bと連結している。
【0014】
圧縮機1aは、図1に示すように、2本の冷媒配管7と連結しており、そのうち一方の冷媒配管7は第1熱交換器2aと連結し、もう一方の冷媒配管7は第2熱交換器4aと連結している。
同様に、圧縮機1bは、図1に示すとおり、2本の冷媒配管7と連結しており、そのうち一方の冷媒配管7は第1熱交換器2bと連結し、もう一方の冷媒配管7は第2熱交換器4bと連結している。
【0015】
絞り装置3aは、図1に示すように、2本の冷媒配管7と連結しており、その内の一方の冷媒配管7は第1熱交換器2aと連結し、もう一方の冷媒配管7は第2熱交換器4aと連結している。
同様に、絞り装置3bは2本の冷媒配管と連結しており、その内の一方の冷媒配管7は第1熱交換器2aと連結し、もう一方の冷媒配管7は第2熱交換器4bと連結している。
【0016】
以上のように、冷媒回路100aと冷媒回路100bは、それぞれ独立した環状構成を形成している。
【0017】
排気ファン5は、第1熱交換機1aと第1熱交換機1bの間(車幅方向の中央部)に設けられている。
【0018】
吸気ファン6は、第2熱交換器4bと第2熱交換器4bの間(車幅方向の中央部)で、且つ、排気ファン5の車両の長手方向前方または後方に設置されている。
【0019】
本実施の形態において、冷媒回路100aまたは冷媒回路100bの内部を循環する冷媒としては、例えば高圧側(冷媒回路100aまたは冷媒回路100b内部のいずれか位置で冷媒が高圧となる部分)において臨界圧力(約7.3MPa)以上の超臨界状態となる二酸化炭素を用いる。
【0020】
図2は、図1で示した車両用空気調和機の点線A−Aにおける断面図である。図2に基づいて、第1熱交換器2aと第1熱交換器2bについて説明する。図2に示すように、第1熱交換器2aと第1熱交換器2bは、排気ファン5の両側に設けられている。排気ファン5によって吸い込まれ、排気される空気の流れは、矢印AR1と矢印AR2で表される。空気は、車両側面部分から取り入れて、排気ファン5に向かって放出される。その後、排気ファン5に吸い寄せられた空気は、排気ファン5の上部に排出される。
【0021】
図3は、本発明の実施の形態における車両用空気調和機内に設けられている伝熱管と放熱部材の斜視図である。図3に示すように、本実施の形態における第1熱交換器2a及び第1熱交換器2bは、複数の平板状の放熱部材9(プレートフィン)に挿通した伝熱管8で構成されている。図3においては、放熱部材9の形状は円板形状をしているが、それに限定されるものではない。
【0022】
図3に示すように、本実施の形態において、第1熱交換器2a及び第1熱交換器2b内に設けられている伝熱管8は、被熱伝達媒体(空気)の流れ方向である列方向AX2に複数列設けられると共に、列方向AX2に直交する方向である段方向AX1に複数設けられている。そして、第1熱交換器2a及び第1熱交換器2bは、段方向AX2の本数が列方向AX1の本数より少なくなるように車両に設置される。
【0023】
これにより、例えば鉄道車両のように、鉛直方向に電線があるために高さ制限があるような場合に有効である。このようにして、第1熱交換器2a及び第1熱交換器2bは、鉛直方向にコンパクトになり、従来の筐体サイズのままでも車両に容易に設置することが可能となっている。
【0024】
以下に、本実施の形態における車両用空気調和機100の熱交換効率を改善する方法について説明する。
図4は、図3で示した伝熱管を流れる冷媒の方向と、被熱伝達媒体(空気)の流れる方向を説明した図である。第1熱交換器2a及び第1熱交換器は1bは、矢印FL1で示した伝熱管8内を流れる冷媒の方向と、矢印FL2で示した被熱伝達媒体(空気)の流れる方向と対向するように車両に設置される。これによって、対向流効果を得ることが可能となり、冷媒と被熱伝達媒体(空気)の熱伝達効率が改善される。これにより、より効率的な車両用空気調和機とすることができる。
【0025】
次に、熱交換効率の改善について説明する。なお、以下の説明では、第2熱交換器4aと第2熱交換器4bを蒸発器として機能させているものとする。
第2熱交換器4a(または第2熱交換器4b)を通過する空気中に含まれる水分が凝縮して生成される結露水(ドレン水)は、第1熱交換器2aと絞り装置3a(または第1熱交換器2bと絞り装置3b)を連結している冷媒配管7(図1の点線PA3で表される)に直接散水することで、車両用空気調和機100の熱交換効率を改善することができる。これにより、第1熱交換器2aから絞り装置に向かう冷媒の温度は更に下がる。こうして、第2熱交換器4a(または第2熱交換器4b)内に流れている冷媒と、外部から取り込まれる空気との温度差が大きくなり(エンタルピー差が大きくなる)、車両用空気調和機100の熱交換効率を改善することが可能となる(冷却性能が向上する)。
【0026】
図5は、図2で示した断面図において、第1熱交換器2a及び第1熱交換器2b(放熱器)のそれぞれに散水する箇所(散水箇所PA1、散水箇所PA2)を表す図である。本実施の形態において、第2熱交換器4a(または第2熱交換器4b)を通過する空気中に含まれる水分が凝縮して生成される結露水(ドレン水)は、第2熱交換器4a(または、第2熱交換器4b)の車両幅方向の長さを1と定義したとき、前記第2熱交換器の内、吸気ファン側の端部から車両側面に向かう方向で0.6〜0.8の範囲に供給可能としている。これにより、図6で後述するように、熱交換効率を改善することができる。
【0027】
図6は、本発明の実施の形態における、熱交換器(放熱器)の冷媒温度変化を表す図である。図6は、第1熱交換器2a(または第1熱交換器2b)の車両幅方向の長さを1と定義したとき、前記第1熱交換器の内、吸気ファン側の端部から車両側面に向かう方向で0.6〜0.8の範囲では冷媒の比熱が大きく、温度変化が小さくなっている。この部分に低温となっている結露水を供給し、冷却を促進することで冷媒温度を低下させる。これにより、冷媒と被熱伝達媒体の温度差はより大きくなる。従って、より大きな対向流効果を得ることができ、熱交換効率を改善することが可能となる。
【0028】
本実施の形態において、結露水は、第1熱交換器2a(または第1熱交換器2b)全体に供給できることが望ましい。しかし、車両用空気調和機100は結露水量を確保しづらいことがある。そこで、上記の水供給方法によって最も効果的である箇所(冷媒の比熱が高い箇所)へ集中的に水を供給することとし、少量の結露水であっても効率的に冷媒温度を低下させることを可能としている。
【0029】
以上に述べたように、本実施の形態において、矢印AX1方向より矢印AX2方向により多くの伝熱管8が並ぶように熱交換器を配置することで、鉛直方向がコンパクト化された車両用空気調和機100とすることが可能となる。また、伝熱管8を流れる冷媒と被熱伝達媒体とを対向流とすることで、熱交換効率を改善することができる。また、第2熱交換器4a及び第2熱交換器4bを蒸発器として機能させるとき、第2熱交換器4a及び第2熱交換器4bで生成される結露水を、第1熱交換器2a(または第1熱交換器2b)と絞り装置3a(または絞り装置3b)のいずれかの位置に供給すること、または、第1熱交換器2a及び第1熱交換器2bの所定の位置に供給することで、車両用空気調和機100の熱交換効率を改善することが可能となっている。
【0030】
なお、上記の車両用空気調和機100の説明は、冷房運転をするものとして説明した(第2熱交換器4aと第2熱交換器4bが、蒸発器として機能したとき)。
しかし、車両用空気調和機100は、四方弁によって冷媒配管7の流れを切り替えることによって、第2熱交換器4a及び第2熱交換器4bを放熱器として機能させて、暖房運転を行うことが可能となることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
1a 圧縮機、1b 圧縮機、2a 第1熱交換器、2b 第1熱交換器、3a 絞り装置、3b 絞り装置、4a 第2熱交換器、4b 第2熱交換器 5 排気ファン、6 吸気ファン、7 冷媒配管、8 伝熱管、9 放熱部材、A−A 点線、AR1 矢印、AR2 矢印、PA1 散水箇所、PA2 散水箇所、PA3 点線、AX1 矢印、AX2 矢印、FL1 矢印、FL2 矢印。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と第1熱交換器と絞り装置と第2熱交換器と、を備え、これらが冷媒配管を介して環状に接続され冷凍サイクルを構成する冷媒回路を備えた車両用空気調和機において、
前記冷媒回路の高圧部で超臨界状態となる冷媒を用い、
前記第1熱交換器は、
複数の平板フィンが平行に配置された放熱部材と、
前記平板フィンに貫通して設けられ、被熱伝達媒体の流れ方向である列方向に複数列設けられると共に、前記列方向に直交する方向である段方向に複数設けられた伝熱管と、を備え、
前記伝熱管は、前記段方向の本数が前記列方向の本数より少なくなるようにし、且つ、前記第1熱交換器は、前記伝熱管内を流れる前記冷媒と前記被熱伝達媒体の流れ方向が対向するように設置される
ことを特徴とする車両用空気調和機。
【請求項2】
車両幅方向の中央部に設けられた排気ファンと2組の前記冷媒回路と、を備え、
2組の前記冷媒回路の前記第1熱交換器は、
車幅方向に前記排気ファンを介して併設され、車両側面側から前記被熱伝達媒体を吸い込む
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用空気調和機。
【請求項3】
前記第2熱交換器を蒸発器として機能させるとき、
前記第2熱交換器の表面に生成される結露水を、
前記第1熱交換器と前記絞り装置の間を接続する前記冷媒配管の表面に供給可能にしている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用空気調和機。
【請求項4】
前記第2熱交換器を蒸発器として機能させるとき、
前記第2熱交換器の表面に生成される結露水を、
前記第1熱交換器の車両幅方向の長さを1と定義したとき、前記第1熱交換器の内、前記排気ファン側の端部から車両側面に向かう方向で0.6〜0.8の範囲に供給可能にしている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−194972(P2011−194972A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62590(P2010−62590)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】