説明

車両用空調装置およびその吹出し温度制御方法

【課題】クロストークを抑制できるとともに、乗員に違和感を与えることのない快適な温調を実現できるマルチゾーンタイプの車両用空調装置を提供することを目的とする。
【解決手段】複数のエアミックスダンパが、対応する空調ゾーン40Aないし40Dの設定温度と各種温度情報検出手段からの温度情報とに基づいて、対応する空調ゾーン40Aないし40Dに対する目標吹出し温度とそれに対応する目標エアミックスダンパ開度とを演算し、制御する第1の制御系41Aないし41Dに加え、複数のエアミックスダンパの目標エアミックスダンパ開度と複数空調ゾーン40Aないし40Dに対する吹出しモードとから、対応する空調ゾーン40Aないし40Dに吹出される温調風の吹出し温度が目標吹出し温度となるようにエアミックスダンパ開度を補正演算し、その開度を決定する第2の制御系54Aないし54Dを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の空調ゾーンを独立して温調することができるマルチゾーンタイプの車両用空調装置およびその吹出し温度制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前席側の運転席および助手席、後席側の右席および左席等の複数の座席(空調ゾーン)を独立して温調することができるマルチゾーンタイプの車両用空調装置(HVAC;Heating Ventilation and Air Conditioning Unit)の1つに、HVACのエバポレータ下流側の空気流路を仕切板により複数の流路に仕切り、各々の流路に独立して駆動されるエアミックスダンパを設け、個別に温調された空調風を、前席側のフェイス吹出し流路およびフット吹出し流路と後席側のフェイス吹出し流路およびフット吹出し流路とに各々ダクトを介して導くようにしたものが、例えば特許文献1,2等により提示されている。
【0003】
一方、マルチゾーンタイプの車両用空調装置では、1つの空調ゾーンの設定温度を変更した時、それが他の空調ゾーンの吹出し風温度にも影響を及ぼす現象(このような現象をクロストークという。)が発生する。このクロストークによる温度ズレを考慮して各空調ゾーンを設定温度に保つため、第1の空調ゾーンの設定温度を変更した時、その影響により設定温度を変更していない第2の空調ゾーンの吹出し風温度が急変するのを防ぎ、自然に温度変化するように制御するとともに、設定温度を変更していない定常状態では、各々の空調ゾーンを設定温度近傍の温度に制御できるようにした車両用空調装置が、例えば特許文献3により提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−211228号公報
【特許文献2】特開2008−100630号公報
【特許文献3】特許第2936882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3に示されるものは、或る空調ゾーンの設定温度変更時、当該ゾーンの設定温度を変更後の温度に徐々に近づくように算出し、吹出し温度を徐々に変化させることにより、他の空調ゾーンの吹出し温度が徐々に変化されるようにし、吹出し温度の急変を防止するようにしている。このため、設定温度を変更していない空調ゾーンの吹出し温度が急変されることはない。然るに、吹出し温度は徐々に変化されるので、乗員に対して、違和感を与えてしまうことがあるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、クロストークを抑制できるとともに、乗員に違和感を与えることのない快適な温調を実現できるマルチゾーンタイプの車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明の車両用空調装置およびその吹出し温度制御方法は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる車両用空調装置は、エバポレータ下流側の仕切板により仕切られた複数の空気流路中に、ヒータコアをバイパスする流路と該ヒータコアを経る加熱流路とに流通される空気流量の割合を調整する互いに独立して駆動される複数のエアミックスダンパが設けられ、前記複数のエアミックスダンパにより対応する複数の空調ゾーンに吹出される温調風の吹出し温度を個別に制御し、前記複数の空調ゾーンを独立して温調可能としたマルチゾーンタイプの車両用空調装置において、前記複数のエアミックスダンパは、対応する前記空調ゾーンの設定温度と各種温度情報検出手段からの温度情報とに基づいて、対応する前記空調ゾーンに対する目標吹出し温度とそれに対応する目標エアミックスダンパ開度とを演算し、制御する第1の制御系と、前記複数のエアミックスダンパの前記目標エアミックスダンパ開度と前記複数空調ゾーンに対する吹出しモードとから、対応する前記空調ゾーンに吹出される温調風の吹出し温度が前記目標吹出し温度となるようにエアミックスダンパ開度を補正演算し、その開度を決定する第2の制御系とを備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、複数のエアミックスダンパが、対応する空調ゾーンの設定温度と各種温度情報検出手段からの温度情報とに基づいて、対応する空調ゾーンに対する目標吹出し温度とそれに対応する目標エアミックスダンパ開度とを演算し、制御する第1の制御系に加え、複数のエアミックスダンパの目標エアミックスダンパ開度と複数空調ゾーンに対する吹出しモードとから、対応する空調ゾーンに吹出される温調風の吹出し温度が目標吹出し温度となるようにエアミックスダンパ開度を補正演算し、その開度を決定する第2の制御系を備えているため、何れかの空調ゾーンの設定温度が変更されたこと等に伴うクロストークに対して、第2の制御系が複数のエアミックスダンパの目標エアミックスダンパ開度と複数空調ゾーンに対する吹出しモードとから、対応する空調ゾーンの吹出し温度が目標吹出し温度となるようにエアミックスダンパ開度を補正演算してその開度を決定し、クロストークを打ち消すように吹出し温度を制御する。これによって、吹出し温度を目標温度に制御することができ、マルチゾーンタイプの車両用空調装置において、大なり小なり発生してしまうクロストークを抑制し、乗員に違和感を与えることのない快適な温調を実現することができる。
【0009】
さらに、本発明の車両用空調装置は、上記の車両用空調装置において、前記第2の制御系での前記エアミックスダンパ開度の補正演算は、予め取得されたクロストークデータに基づいて定められたマップまたは関数より演算されることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、第2の制御系でのエアミックスダンパ開度の補正演算が、予め取得されたクロストークデータに基づいて定められたマップまたは関数より演算されるため、第2の制御系でのエアミックスダンパ開度の補正演算を、各空調ゾーンの吹出しモードおよびエアミックスダンパ開度の様々な組み合わせにおいて予め取得したクロストークデータを解析(例えば、多変量解析)して作成したマップまたは関数を用いて演算することができる。従って、クロストークを確実に低減することができるとともに、複数の空調ゾーン毎の温調制御性を高めることができる。
【0011】
さらに、本発明の車両用空調装置は、上述のいずれかの車両用空調装置において、前記空気流路が左右2流路に仕切られ、各流路に設けられている前記エアミックスダンパによって対応する運転席ゾーンおよび助手席ゾーンのデュアルゾーンが独立して温調可能とされていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、空気流路が左右2流路に仕切られ、各流路に設けられているエアミックスダンパによって対応する運転席ゾーンおよび助手席ゾーンのデュアルゾーンが独立して温調可能とされているため、運転席ゾーンと助手席ゾーンとが左右独立して温調可能とされているデュアルゾーンタイプの車両用空調装置において、運転席側と助手席側との間でのクロストークを抑制し、各ゾーンの吹出し温度をそれぞれ目標温度に制御することができる。従って、運転席ゾーンおよび助手席ゾーンをそれぞれ設定温度近傍の温度に温調し、快適な空調を実現することができる。
【0013】
さらに、本発明の車両用空調装置は、上述のいずれかの車両用空調装置において、前記空気流路が幅方向に4流路に仕切られ、各々の流路に設けられている前記エアミックスダンパによって対応する前席側の運転席ゾーンと助手席ゾーンおよび後席側の右席ゾーンと左席ゾーンの4ゾーンが独立して温調可能とされていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、空気流路が幅方向に4流路に仕切られ、各々の流路に設けられているエアミックスダンパによって対応する前席側の運転席ゾーンと助手席ゾーンおよび後席側の右席ゾーンと左席ゾーンの4ゾーンが独立して温調可能とされているため、前席側の運転席ゾーンおよび助手席ゾーンと後席側の右席ゾーンおよび左席ゾーンとの4ゾーンが各々独立して温調可能とされているマルチゾーンタイプの車両用空調装置において、4つのゾーン間でのクロストークを抑制し、各ゾーンの吹出し温度をそれぞれ目標温度に制御することができる。従って、運転席ゾーン、助手席ゾーン、後席側の右席ゾーンおよび左席ゾーンをそれぞれ設定温度近傍の温度に温調し、快適な空調を実現することができる。
【0015】
さらに、本発明にかかる車両用空調装置の吹出し温度制御方法は、エバポレータ下流側の仕切板により仕切られた複数の空気流路中に、ヒータコアをバイパスする流路と該ヒータコアを経る加熱流路とに流通される空気流量の割合を調整する互いに独立して駆動される複数のエアミックスダンパが設けられ、前記複数のエアミックスダンパにより対応する複数の空調ゾーンに吹出される温調風の吹出し温度を個別に制御し、前記複数の空調ゾーンを独立して温調可能としたマルチゾーンタイプの車両用空調装置の吹出し温度制御方法において、前記複数空調ゾーンは、各々の設定温度と各種温度情報検出手段からの温度情報とに基づいて演算された各空調ゾーンに対する目標吹出し温度およびそれに対応した目標エアミックスダンパ開度によって温調制御され、前記複数空調ゾーンの少なくとも1つの設定温度が変更されたとき、他の空調ゾーンに対応するエアミックスダンパの開度は、前記複数のエアミックスダンパの目標エアミックスダンパ開度および前記複数空調ゾーンに対する吹出しモードに基づいて補正演算された開度に補正され、前記他の空調ゾーンに吹出される温調風の吹出し温度が前記目標吹出し温度となるように制御されることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、複数の空調ゾーンが、各々の設定温度と各種温度情報検出手段からの温度情報とに基づいて演算された各空調ゾーンに対する目標吹出し温度およびそれに対応した目標エアミックスダンパ開度によって温調制御されるのみならず、複数空調ゾーンの少なくとも1つの設定温度が変更されたとき、他の空調ゾーンに対応するエアミックスダンパの開度が、複数のエアミックスダンパの目標エアミックスダンパ開度および複数空調ゾーンに対する吹出しモードに基づいて補正演算された開度に補正され、他の空調ゾーンに吹出される温調風の吹出し温度が目標吹出し温度となるように制御されるため、複数空調ゾーンの少なくとも1つの設定温度が変更された場合、他の空調ゾーンに対応するエアミックスダンパの開度を、複数のエアミックスダンパの目標エアミックスダンパ開度および複数空調ゾーンに対する吹出しモードに基づいて補正演算された開度に補正し、他の空調ゾーンに吹出される温調風の吹出し温度を目標吹出し温度に制御することにより、クロストークを打ち消すようにしている。これによって、吹出し温度を目標温度に制御することができ、マルチゾーンタイプの車両用空調装置において、大なり小なり発生してしまうクロストークを抑制し、乗員に違和感を与えることのない快適な温調を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車両用空調装置およびその吹出し温度制御方法によると、複数空調ゾーンのいずれかの設定温度が変更されたとき、他の空調ゾーンに対応するエアミックスダンパの開度を、複数のエアミックスダンパの目標エアミックスダンパ開度および複数空調ゾーンに対する吹出しモードに基づいて補正演算された開度に補正し、他の空調ゾーンに吹出される温調風の吹出し温度を目標吹出し温度に制御することにより、クロストークを打ち消すようにしているため、各空調ゾーンの吹出し温度を目標温度に制御することができ、マルチゾーンタイプの車両用空調装置において、大なり小なり発生してしまうクロストークを抑制し、乗員に違和感を与えることのない快適な温調を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用空調装置の斜視図である。
【図2】図1に示す車両用空調装置の一部を透視して示す斜視図である。
【図3】図1に示す車両用空調装置のユニット本体の分解斜視図である。
【図4】図1に示す車両用空調装置の空気流方向に沿う内部構造図である。
【図5】図1に示す車両用空調装置の空気流方向と直交する方向のエアミックスダンパ駆動軸位置での縦断面図である。
【図6】図5に示すエアミックスダンパの駆動機構の一例を示す斜視図(A)ないし(D)である。
【図7】図1に示す車両用空調装置の制御系をデュアルゾーン(例えば、運転席と助手席の2ゾーン)とした場合のフロー図である。
【図8】図1に示す車両用空調装置の制御系をマルチゾーン(例えば、運転席、助手席、後席右および後席左の4ゾーン)とした場合の1ゾーンのみのフロー図である。
【図9】図8に示すマルチゾーン(4ゾーン)のクロストークのデータの一例を図である。
【図10】図7に示すデュアルゾーンの制御系で、設定温度を変更した場合のエアミックスダンパ開度補正についての時系列変化を説明するイメージ図である。
【図11】図10に示す時系列変化を説明するイメージ図において、エアミックスダンパ開度を補正しない場合の時系列変化を説明する参考図である。
【図12】図7に示すデュアルゾーンの制御系で、吹出しモードを変更した場合のエアミックスダンパ開度補正についての時系列変化を説明するイメージ図である。
【図13】図12に示す時系列変化を説明するイメージ図において、エアミックスダンパ開度を補正しない場合の時系列変化を説明する参考図である。
【図14】図8に示すマルチゾーンタイプの場合の独立温調のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態について、図1ないし図12を参照して説明する。
図1,2には、本実施形態に係る車両用空調装置の斜視図が示されている。
本実施形態の車両用空調装置(HVAC;Heating Ventilation and Air Conditioning Unit)1は、車室内前方のインストルメントパネル内の略中央部に車両の前後方向に空気流を流通するように配設されている。HVAC1の上流側には、外気または車室内の空気を取り込んでHVAC1に供給するブロアユニット2が接続されている。ブロアユニット2は通常助手席側(右ハンドル車の場合は、HVAC1の左側、左ハンドル車の場合は、HVAC1の右側)に配設され、HVAC1に対して側方から空気を送風している。
【0020】
HVAC1は、複数に分割して成形されたケースを一体に組み付けて構成されるユニットケース3を備えている。図4に示されるように、ユニットケース3の上流部には、ブロアユニット2が接続される開口部4が形成され、その内部には、ユニットケース3の下流部に形成されているデフ吹出し流路6、フェイス吹出し流路7およびフット吹出し流路8に連なる空気流路5が形成されている。空気流路5には、開口部4の直後に図示省略の冷凍サイクルを構成し、冷媒が循環されるエバポレータ9が配設され、ブロアユニット2から送られてくる空気を冷媒との熱交換により冷却できるように構成されている。
【0021】
エバポレータ9の下流側で空気流路5は、エンジン冷却水が循環されるヒータコア10が配設されている加熱流路11と、ヒータコア10をバイパスするバイパス流路12とに分かれており、これらの流路11,12には、分岐部に設けられているエアミックスダンパ13により調整された流量割合の空気流が流通されるように構成されている。加熱流路11とバイパス流路12は、エアミックスダンパ13下流のエアミックス域14で合流された後、エアミックス域14を経てその下流側のデフ吹出し流路6、フェイス吹出し流路7およびフット吹出し流路8に連なっている。
【0022】
デフ吹出し流路6およびフェイス吹出し流路7の間には、デフ吹出し流路6とフェイス吹出し流路7とを開閉するデフ/フェイスダンパ15が回動自在に設けられ、フット吹出し流路8の入り口部には、フット吹出し流路8とデフ吹出し流路6およびフェイス吹出し流路7への流路とを開閉するフットダンパ16が回動自在に設けられている。以上の構成は、前席側(運転席と助手席)を空調する一般的なシングルゾーンタイプのHVACと略同等とされており、特に変わっている点はない。
【0023】
本実施形態では、空気流路5のエバポレータ9下流側に、空気の流通方向に沿って縦方向に3枚の仕切板17A,17B,17C(図5参照)が設置され、エバポレータ9下流側の空気流路5が、4つの空気流路5A,5B,5C,5Dに仕切られている。これによって、空気流路5のエバポレータ9下流側に形成されている加熱流路11、バイパス流路12、エアミックス域14、フェイス吹出し流路7およびフット吹出し流路8も各々4つの流路、すなわち加熱流路11Aないし11D、バイパス流路12Aないし12D、エアミックス域14Aないし14D、フェイス吹出し流路7Aないし7Dおよびフット吹出し流路8Aないし8Dに仕切られている。なお、デフ流路6は、特に4つの流路に仕切る必要はなく、ここでは左右2つの流路6A,6Bに仕切られている。
【0024】
4つの空気流路5A,5B,5C,5Dに仕切られた空気流路5は、中央部の2つの流路5A,5Bが後席側の右席および左席用の流路とされ、両側部の2つの流路5C,5Dが前席側の運転席および助手席用の流路とされている。空気流路5A,5B,5C,5Dの下流側は、4流路に仕切られてフェイス吹出し流路7Aないし7Dおよびフット吹出し流路8Aないし8Dに連なっている。ここでは、これら4流路において、運転席および助手席に対応して設けられている吹出し口に連なる空気流路の開口をA、後席側の右席および左席に対応して設けられている吹出し口に連なる空気流路の開口をBとしたとき、その大きさは、A>Bとされている(図3および図5参照)。
【0025】
具体的には、4流路に仕切られているフェイス吹出し流路7Aないし7Dおよびフット吹出し流路8Aないし8Dの流路開口A,Bの大きさを、流路断面積比により比較したとき、その比は概ねA:B=6:4とされている。また、空気流の流量配分比により比較したとき、その比は概ねA:B=7:3とされており、後席の右席および左席に比べ、前席側の運転席および助手席に対してより多くの量の空気流を流すことができるように構成されている。
【0026】
エバポレータ9の下流側で空気流路5が4流路に仕切られることにより、エアミックスダンパ13、デフ/フェイスダンパ15およびフットダンパ16も各流路に対応して各々エアミックスダンパ13Aないし13D、デフ/フェイスダンパ15Aないし15Dおよびフットダンパ16Aないし16Dの4つに分割されて配設されている。デフ/フェイスダンパ15Aないし15Dおよびフットダンパ16Aないし16Dは、公知の如く互いに連動して開閉され、デフモード、フェイスモード、フットモード、バイレベルモードおよびデフ/フットモード等のいずれかの吹出しモードが選択可能とされている。なお、フットダンパ16Aないし16Dについては、4流路について独自にフェイスモード、バイレベルモードおよびフットモードが選択可能とされている。
【0027】
また、4つの空気流路5Aないし5Dに設けられたエアミックスダンパ13は、後述の駆動機構を介して各々が独立して駆動可能とされており、これによって、4つの流路を経て前後左右の4席に対応して設けられている後述のフェイス吹出し口22A,22B,22C,22D,24A,24Bおよびフット吹出し口26A,26B,28A,28Bから車室内へと吹出される空気流の温度が個別に調整できるように構成されている。
【0028】
HVAC1のデフ吹出し流路6A,6B、フェイス吹出し流路7Aないし7Dおよびフット吹出し流路8Aないし8Dには、図1および図2に示されるように、それぞれダクトが接続されており、このダクトを介して以下に説明の如く、車室内に設けられている吹出し口に連通されている。デフ吹出し流路6A,6Bには、デフダクト18A,18Bが接続されており、このデフダクト18A,18Bは、左右2箇所に設けられているフロントガラスに対応した2つの吹出し口19A,19Bと、サイドウインドガラスに対応した2つの吹出し口20A,20Bに連通されている。
【0029】
4つのフェイス吹出し流路7Aないし7Dの中の両側部に配置されている前席側のフェイス吹出し流路7C,7Dには、フロントフェイスダクト21A,21Bが接続され、このフロントフェイスダクト21A,21Bは、運転席用の中央およびサイドフェイス吹出し口22A,22Bと助手席用の中央およびサイドフェイス吹出し口22C,22Dとに連通されている。また、4つのフェイス吹出し流路7Aないし7Dの中の中央部に配置されている後席側のフェイス吹出し流路7A,7Bには、リアフェイスダクト23A,23Bが接続され、このリアフェイスダクト23A,23Bは、後席側の右席および左席用フェイス吹出し口24A,24Bに連通されている。
【0030】
同様に、フット吹出し流路8Aないし8Dの中の両側部に配置されている前席側のフット吹出し流路8C,8Dには、フロントフットダクト25A,25Bが接続され、このフロントフットダクト25A,25Bは、運転席用のフット吹出し口26Aおよび助手席用のフット吹出し口26Bに連通されている。また、フット吹出し流路8Aないし8Dの中の中央部に配置されている後席側のフット吹出し流路8A,8Bには、リアフットダクト27A,27Bが接続され、このリアフットダクト27A,27Bは、後席側の右席および左席用フット吹出し口28A,28Bに連通されている。
【0031】
上記フロントフェイスダクト21A,21Bおよびフロントフットダクト25A,25Bは、HVAC1の両側部に配置されているフェイス吹出し流路7C,7Dおよびフット吹出し流路8Aないし8Dから、そのまま左右方向および上下方向に延長されるように配設されている。そして、その中間において、中央部に配置されているフェイス吹出し流路7A,7Bおよびフット吹出し流路8A,8Bから、リアフェイスダクト23A,23Bおよびリアフットダクト27A,27Bが前後および上下に積層状態とされて上下方向および前後方向に延長され、後席側の右席および左席へと配設されている。
【0032】
さらに、4つの流路に対応して設けられているエアミックスダンパ13Aないし13Dは、図5に示されるように、同一軸線上で各々独立して駆動可能に設置されている。該エアミックスダンパ13Aないし13Dは、図6に示されるように、4つの流路に仕切られている右側の2つの空気流路5A,5Cに対応して設けられているエアミックスダンパ13A,13Cが、ユニットケース3の右側面に設置されているアクチュエータ(駆動源)30A,30Cにより駆動され、左側の2つの空気流路5B,5Dに対応して設けられているエアミックスダンパ13B,13Dが、ユニットケース3の左側面に設置されているアクチュエータ(駆動源)30B,30Dにより駆動されるように構成されている。
【0033】
これらエアミックスダンパ13A,13Cおよびエアミックスダンパ13B,13Dを駆動する駆動軸は、以下に説明の如く二重軸構造とされている。つまり、エアミックスダンパ13Aないし13Dのうち、外側の2つのエアミックスダンパ13C,13Dの駆動軸は、中空駆動軸31C,31Dとされ、この中空駆動軸31C,31Dの内部に、中央側の2つのエアミックスダンパ13A,13Bの中実駆動軸31A,31Bが貫通された構成とされている。なお、本発明において、中実駆動軸31A,31Bとは、中空駆動軸31C,31Dの中空部に貫通されている軸を意味し、該軸自体は、中実軸であっても中空軸であってもよい。
【0034】
これら中実駆動軸31A,31Bおよび中空駆動軸31C,31Dは、図5に示されるように、ユニットケース3の左右側面と仕切板17A,17B,17Cとにより回転自在に支持されており、各々の外側軸端はユニットケース3の左右側面から外方に突出されている。中実駆動軸31A,31Bおよび中空駆動軸31C,31Dの外側軸端には、図6に示されるように、各々歯車32A,32B,32C,32Dが設けられており、この歯車32Aないし32Dに対して、ユニットケース3の左右側面に設置されているアクチュエータ30Aないし30Dの出力軸33Aないし33Dに設けられている歯車34Aないし34Dが噛合わされている。これによって、中実駆動軸31A,31Bおよび中空駆動軸31C,31Dが各々独立して駆動可能とされている。
【0035】
次に、上記HVAC1の吹出し温度制御方法を図7ないし図14を用いて説明する。
HVAC1は、一般に、外気温センサ、車室内温度センサ、日射センサ等の各種温度情報検出手段により検出された外気温、車室内温度、日射量等と、各席での設定温度とからそれぞれ目標温度を演算し、その演算値とエンジン冷却水温度センサ、エバポレータ後温度センサ等により検出されたエンジン冷却水温度およびエバポレータ後温度とに基づいて目標吹出し温度およびそれに対応したエアミックスダンパ開度を算出し、該開度となるようにエアミックスダンパ13Aないし13Dを駆動することにより温調制御されるようになっている。
【0036】
ここで、本実施形態の吹出し温度制御方法を運転席と助手席の2つのゾーンを独立して温調するデュアルゾーンタイプに適用した場合の例について、図7を用いて説明する。
運転席に対応したゾーンを第1の空調ゾーン40A、助手席に対応したゾーンを第2の空調ゾーン40Bとすると、各々の空調ゾーン40A,40Bの第1の制御系41A,41Bは、各空調ゾーン40A,40Bに設けられている温度設定手段により設定された第1の設定温度42A、第2の設定温度42Bと、外気温センサ、車室内温度センサ、日射センサ等の各種温度情報検出手段により検出された外気温43、車室内温度44、日射量45とから第1の目標温度46A、第2の目標温度46Bをそれぞれ演算し、その演算値46A,46Bと、エンジン冷却水温度センサ、エバポレータ後温度センサ等により検出されたエンジン冷却水温度47、エバポレータ後温度48と、に基づいて第1の目標吹出し温度49A、第2の目標吹出し温度49Bおよびそれに対応した第1の目標エアミックスダンパ開度50A、第2の目標エアミックスダンパ開度50Bを算出し、第1のエアミックスダンパ開度51A、第2のエアミックスダンパ開度51Bを決定するとともに、第1の吹出しモード52A、第2の吹出しモード52Bを決定するように構成されている。
【0037】
しかし、そのままでは、第1の空調ゾーン40Aまたは第2の空調ゾーン40Bのいずれかの設定温度42A,42Bを変更したとき、他の空調ゾーンの吹出し温度にも影響を及ぼすクロストークが発生し、温度ズレが生ずるため、エアミックスダンパ13A,13Bの第1の目標エアミックスダンパ開度50A、第2の目標エアミックスダンパ開度50Bと第1の吹出しモード52A、第2の吹出しモード52Bとから、対応する第1、第2の空調ゾーン40A,40Bに吹出される温調風の吹出し温度が第1の目標吹出し温度49Aまたは第2の目標吹出し温度49Bとなるようにエアミックスダンパ13A,13Bの開度を、予め取得されたクロストークデータに基づいて定められたマップまたは関数を用いて補正演算53し、第1のエアミックスダンパ開度51A’または第2のエアミックスダンパ51B’を決定する第2の制御系54A,54Bを設けることにより、温調風の吹出し温度を目標吹出し温度に制御し、クロストークを打ち消すようにしている。
【0038】
図8には、図1ないし図6に示した運転席、助手席、後席右および後席左の4つのゾーンを独立して温調するマルチゾーンタイプのHVAC1に適用した場合の制御系が示されている。ここでの制御系は、運転席に対応したゾーンを第1の空調ゾーン40Aとした場合の第1の制御系41Aおよび第2の制御系54Aのみが図示されているが、助手席に対応した第2の空調ゾーン40B、後席右に対応した第3の空調ゾーン40C、後席左に対応した第4の空調ゾーン40Dの第1の制御系41Bないし41Dおよび第2の制御系54Bないし54Dも同様に設けられることはもちろんである。
【0039】
第1ないし第4の目標吹出し温度(TTO)49Aないし49Dおよび第1ないし第4の目標エアミックスダンパ開度(TDA)50Aないし50Dは、上記と同様、各空調ゾーン40Aないし40Dの設定温度42Aないし42Dと、外気温43、車室内温度44および日射量45とから第1ないし第4の目標温度46Aないし46Dを演算し、その演算値46Aないし46Dと、エンジン冷却水温度47およびエバポレータ後温度48とに基づいて算出されるようになっており、これによって、第1の制御系41Aないし41Dが構成されている。
【0040】
これに加え、各空調ゾーン40Aないし40Dの吹出しモード52Aないし52Dおよびエアミックスダンパ開度51Aないし51Dの様々な組み合わせにおいて、予め取得したクロストークデータを解析(例えば、多変量解析)して作成したマップまたは関数を用い、第1ないし第4の目標エアミックスダンパ開度(TDA)50Aないし50Dと、第1ないし第4の吹出しモード52Aないし52Dとから、対応する空調ゾーン40Aないし40Dに吹出される温調風の吹出し温度が、上記した第1ないし第4の目標吹出し温度(TTO)49Aないし49Dとなるようにエアミックスダンパ13Aないし13Dの開度を補正演算53し、第1ないし第4のエアミックスダンパ開度(TDA’)51A’ないし51D’を決定する第2の制御系54Aないし54Dを備えている。
【0041】
上記第1ないし第4のエアミックスダンパ開度(TDA’)51A’ないし51D’の補正演算53に用いるマップまたは関数は、図9に示されるように、各空調ゾーン40Aないし40Dの吹出しモード52Aないし52Dおよびエアミックスダンパ開度51Aないし51Dの様々な組み合わせにおいて、クロストークデータを取得し、その取得データに基づき、多変量解析等を行って補正温度を求めるための温度補正式を作成する(入力変数を各空調ゾーンのモードとエアミックスダンパ開度とする)か、または取得したデータをマップにする。なお、温度補正式は、補正温度をCTとしたとき、例えば、
CT_Dr=F(TDA_Dr,MODE_Dr,TDA_Pa,MODE_Pa,TDA_Rr,MODE_Rr,TDA_Rl,MODE_Rl)
とすることができる。
【0042】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
ブロアユニット2からHVAC1に送風された空気は、ユニットケース3内の空気流路5を流通される間にエバポレータ9および/またはヒータコア10により冷却および/または加熱され、更にはその割合がエアミックスダンパ13Aないし13Dを介して調整されることにより目標吹出し温度に温調される。
【0043】
この温調風は、吹出しモードに応じて開閉されるデフ/フェイスダンパ15Aないし15Dおよびフットダンパ16Aないし16Dによって、デフ吹出し流路6A,6B、フェイス吹出し流路7Aないし7D、およびフット吹出し流路8Aないし8Dのいずれかに選択的に流通され、各流路に接続されているダクト18A,18B,21A,21B,23A,23B,25A,25B,27A,27Bを介して車室内への吹出し口19A,19B,20A,20B,22A,22B,22C,22D,24A,24B,26A,26B,28A,28Bのいずれかから車室内へと吹出される。
【0044】
すなわち、デフモード時、温調風はダクト18A,18Bを経て吹出し口19A,19B,20A,20Bからフロントガラス、サイドウインドガラスに向けて吹出され、フェイスモード時、温調風はフロントフェイスダクト21A,21Bを介してフェイス吹出し口22A,22B,22C,22Dから運転席および助手席の乗員に向けて吹出されるとともに、リアフェイスダクト23A,23Bを介してフェイス吹出し口24A,24Bから後席側の右席および左席の乗員に向けて吹出される。また、フットモード時、温調風はフロントフットダクト25A,25Bを介してフット吹出し口26A,26Bから運転席および助手席の乗員の足元に向けて吹出されるとともに、リアフットダクト27A,27Bを介してフット吹出し口28A,28Bから後席側の右席および左席の乗員の足元に向けて吹出される。
【0045】
さらに、バイレベルモード時、温調風は各ダクトを介して前席側のフェイス吹出し口22A,22B,22C,22Dおよびフット吹出し口26A,26Bの双方から吹出されるとともに、後席側のフェイス吹出し口24A,24Bおよびフット吹出し口28A,28Bの双方から吹出される。また、デフ/フットモード時、温調風はフロントガラスおよびサイドウインドガラスに向けた吹出し口19A,19B,20A,20Bと、乗員の足元に向けたフット吹出し口26A,26B,28A,28Bとの双方から吹出される。
【0046】
このように、前席側の運転席および助手席と後席側の右席および左席の4つの空調ゾーン40Aないし40Dに対応して設けられているフェイス吹出し口22Aないし22Dおよび24A,24Bとフット吹出し口26A,26Bおよび28A,28Bから車室内へと温調風を吹出すことによって、図14に示されるように、4つの空調ゾーン40Aないし40Dを個別に独立して温調することができる。
【0047】
この際、4つのエアミックスダンパ13Aないし13Dは、ダンパ駆動用アクチュエータ30Aないし30Dにより個別に駆動され、演算された開度位置へと回動される。エアミックスダンパ13Aないし13Dの開度は、図7に示されるように、第1の制御系41A(41Bないし41D)により、空調ゾーン40A(40Bないし40D)の設定温度42A(42Bないし42D)と、外気温43、車室内温度44および日射量45とから目標温度46A(46Bないし46D)を演算し、その演算値46A(46Bないし46D)と、エンジン冷却水温度47およびエバポレータ後温度48とに基づいて目標吹出し温度49A(49Bないし49D)を算出することによって算定される。つまり、図8中の右上方部に示されるように、目標吹出し温度(TTO)49A(49Bないし49D)が算出されると、対応する一次関数式から目標エアミックスダンパ開度(TDA)50A(50Bないし50D)が導かれるようになっている。
【0048】
ところが、複数の空調ゾーンを個別に温調する独立温調方式のHVAC1では、他ゾーンでの温調制御による影響を受けるため、各ゾーンにおいて、目標吹出し温度=吹出し温度とはならず、図8中の右上方部に示されるように、クロストークによって温度ズレが発生する。そこで、第2の制御系54A(54Bないし54D)により、予め取得されたクロストークデータに基づいて定められたマップまたは関数を用いてエアミックスダンパ13A(13Bないし13D)の開度を補正演算し、吹出し温度=目標吹出し温度となるようにエアミックスダンパ13A(13Bないし13D)の開度(TDA’)51A’(51B’ないし51D’)を制御している。
【0049】
このエアミックスダンパ13Aないし13Dの開度補正についての時系列変化を、図10ないし図13のイメージ図に基づいて詳しく説明する。なお、このイメージ図は、運転席に対応した第1の空調ゾーン40Aと、助手席に対応した第2の空調ゾーン40Bとを独立して温調するデュアルゾーンタイプのものを例にしている。
【0050】
まず、図10および図11により、設定温度を変更した場合の変化について説明する。
第1の空調ゾーン40Aの設定温度(TSS_dr)42Aおよび第2の空調ゾーン40Bの設定温度(TSS_pa)が共に25℃の状態から、TSS_dr=28℃、TSS_pa=25℃に変更されて独立温調が開始されたとき、上記演算によって、第1の目標吹出し温度(TTO_dr)46Aは、TTO_dr=50℃、第2の目標吹出し温度(TTO_pa)46Bは、TTO_pa=35℃となり、これによって、第1の目標エアミックスダンパ開度(TDA_dr)50Aは、TDA_dr=80、第2の目標エアミックスダンパ開度(TDA_pa)50Bは、TDA_pa=50となる。
【0051】
この状態で、エアミックスダンパ13Aおよび13Bの開度を補正しないと、図11に示されるように、第1の空調ゾーン40Aの吹出し温度(TO_dr)は、第1の目標吹出し温度(TTO_dr=50℃)と同じ温度(TO_dr=50℃)となるのに対して、第2の空調ゾーン40Bの吹出し温度(TO_pa)は、TO_pa=40℃となり、第2の目標吹出し温度(TTO_pa=35℃)に対して温度ズレを生じてしまう。
【0052】
そこで、第2の制御系54Bにより、予め設定されているマップまたは関数を用いてエアミックスダンパ13Bの開度(TDA)51Bを補正すると、図10に示されているように、エアミックスダンパ13Bの開度(TDA’)51B’は、TDA’_pa=45となる。これにより、第2空調ゾーン40Bの吹出し温度(TO’_pa)を、TO’_pa=35℃とし、第2の目標吹出し温度(TTO_pa=35℃)と同一にすることが可能となり、設定温度の変更に伴うクロストークを打ち消すことができる。
【0053】
続いて、図12および図13により、吹出しモードを変更した場合の時系列変化について説明する。
第1の空調ゾーン40Aの吹出しモード(MODE_dr)52Aおよび第2の空調ゾーン40Bの吹出しモード(MODE_pa)が共にバイレベル(B/L)の状態から、MODE_dr=フェイス(FACE)、MODE_pa=バイレベル(B/L)に変更されて独立モードが開始されたとき、設定温度が共に25℃で各種温度情報が同一とすると、上記演算により、第1および第2の目標吹出し温度(TTO_dr,TTO_pa)46A,46Bは、TTO_dr=35℃、TTO_pa=35℃となり、これによって、第1および第2の目標エアミックスダンパ開度(TDA_dr,TDA_pa)50A,50Bは、同じくTDA_dr=50、TDA_pa=50となる。
【0054】
この状態で、エアミックスダンパ13Aおよび13Bの開度補正をしないと、図13に示されるように、第1の空調ゾーン40Aの吹出し温度(TO_dr)は、第1の目標吹出し温度(TTO_dr=35℃)と同じ温度(TO_dr=35℃)となるのに対して、第2の空調ゾーン40Bの吹出し温度(TO_pa)は、TO_pa=40℃となり、第2の目標吹出し温度(TTO_pa=35℃)に対して同じ温度(TO_pa=35℃)にはならず、温度ズレを生じてしまう。
【0055】
そこで、第2の制御系54Bにより、予め設定されているマップまたは関数を用いてエアミックスダンパ13Bの開度(TDA)51Bを補正すると、図12に示されているように、エアミックスダンパ13Bの開度(TDA’)51B’は、TDA’_pa=45となる。これにより、第2空調ゾーン40Bの吹出し温度(TO’_pa)を、TO’_pa=35℃とし、第2の目標吹出し温度(TTO_pa=35℃)と同一にすることが可能となり、吹出しモードの変更に伴うクロストークを打ち消すことができる。
【0056】
以上に詳述したように、本実施形態では、目標吹出し温度49Aないし49Dとそれに対応する目標エアミックスダンパ開度50Aないし50Dとを演算する第1の制御系41Aないし41Dに加えて、複数のエアミックスダンパ13Aないし13Dの目標エアミックスダンパ開度50Aないし50Dと複数空調ゾーンに対する吹出しモード52Aないし52Dとから、対応する運転席、助手席、後席右、後席左等の複数の空調ゾーン40Aないし40Dに吹出される温調風の吹出し温度(TO)が目標吹出し温度(TTO)49Aないし49Dとなるようにエアミックスダンパ開度(TDA)50Aないし50Dを補正演算し、エアミックスダンパ開度(TDA’)51A’ないし51D’を決定する第2の制御系54Aないし54Dを備えている。
【0057】
このため、何れかの空調ゾーン40Aないし40Dの設定温度が変更されたこと等に伴うクロストークに対し、第2の制御系54Aないし54Dが複数のエアミックスダンパ13Aないし13Dの目標エアミックスダンパ開度(TDA)50Aないし50Dと複数空調ゾーン40Aないし40Dに対する吹出しモード52Aないし52Dとから、対応する空調ゾーン40Aないし40Dの吹出し温度(TO)が、目標吹出し温度(TTO)49Aないし49Dとなるようにエアミックスダンパの開度(TDA)50Aないし50Dを補正し、その開度(TDA’)51A’ないし51D’を設定することにより、クロストークを打ち消すように吹出し温度(TO)を制御することができる。
従って、吹出し温度(TO)を目標温度(TTO)に制御することができ、マルチゾーンタイプのHVAC1において、大なり小なり発生してしまうクロストークを抑制し、乗員に違和感を与えることのない快適な温調を実現することができる。
【0058】
また、第2の制御系54Aないし54Dでのエアミックスダンパ開度(TDA)50Aないし50Dの補正演算が、予め取得されたクロストークデータに基づいて定められたマップまたは関数より演算されるため、第2の制御系54Aないし54Dでのエアミックスダンパ開度(TDA)50Aないし50Dの補正演算を、複数の空調ゾーン40Aないし40Dの吹出しモード52Aないし52Dおよびエアミックスダンパ開度(TDA)50Aないし50Dの様々な組み合わせにおいて予め取得したクロストークデータを解析(例えば、多変量解析)して作成したマップまたは関数を用いて演算することができる。従って、クロストークを確実に低減することができるとともに、複数の空調ゾーン40Aないし40D毎の温調制御性を高めることができる。
【0059】
さらに、空気流路5を左右2流路または4流路に仕切ることにより、運転席ゾーンと助手席ゾーンとが左右独立して温調可能とされているデュアルゾーンタイプのHVAC1または運転席ゾーン、助手席ゾーン、後席右ゾーンおよび後席左ゾーンの4ゾーンが各々独立して温調可能とされているマルチゾーンタイプのHVAC1の何れに対しても簡単に適用でき、各ゾーン40Aないし40D間でのクロストークを抑制し、各ゾーンの吹出し温度をそれぞれ目標温度に制御することができる。従って、各々の空調ゾーン40Aないし40Dをそれぞれ設定温度近傍の温度に温調し、快適な空調を実現することができる。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、4席独立温調方式の車両用空調装置について説明したが、運転席側と助手席側のみの左右独立温調方式の車両用空調装置にも同様に適用できることは云うまでもない。また、上記実施形態では、運転席および助手席に対応した流路開口の大きさをA、後席側の右席および左席に対応した流路開口の大きさをBとしたとき、A>Bとされた例について説明したが、これに限定されるものではなく、4流路を同じ大きさ、あるいは4流路を各々別の大きさとしてもよいことはもちろんである。
【0061】
さらに、上記実施形態では、設定温度、目標吹出し温度、吹出し温度、目標エアミックスダンパ開度、エアミックスダンパ開度等について、具体的数値を挙げているが、これらの数値は、あくまでも一例として示したものにすぎず、本発明は、これに制約されるものでないことは云うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
1 車両用空調装置(HVAC)
5,5A,5B,5C,5D 空気流路
9 エバポレータ
10 ヒータコア
11,11A,11B,11C,11D 加熱流路
12,12A,12B,12C,12D バイパス流路
13,13A,13B.13C,13D エアミックスダンパ
17A,17B,17C 仕切板
40A,40B,40C,40D 空調ゾーン
41A,41B,41C,41D 第1の制御系
42A,42B,42C,42D 設定温度
43 外気温
44 車室内温度
45 日射量
47 エンジン冷却水温度
48 エバポレータ後温度
49A,49B,49C,49D 目標吹出し温度
50A,50B,50C,50D 目標エアミックスダンパ開度
51A,51B,51C,51D エアミックスダンパ開度
51A’,51B’,51C’,51D’ エアミックスダンパ開度
52A,52B,52C,52D 吹出しモード
53 補正演算
54A,54B,54C,54D 第2の制御系


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エバポレータ下流側の仕切板により仕切られた複数の空気流路中に、ヒータコアをバイパスする流路と該ヒータコアを経る加熱流路とに流通される空気流量の割合を調整する互いに独立して駆動される複数のエアミックスダンパが設けられ、
前記複数のエアミックスダンパにより対応する複数の空調ゾーンに吹出される温調風の吹出し温度を個別に制御し、前記複数の空調ゾーンを独立して温調可能としたマルチゾーンタイプの車両用空調装置において、
前記複数のエアミックスダンパは、対応する前記空調ゾーンの設定温度と各種温度情報検出手段からの温度情報とに基づいて、対応する前記空調ゾーンに対する目標吹出し温度とそれに対応する目標エアミックスダンパ開度とを演算し、制御する第1の制御系と、
前記複数のエアミックスダンパの前記目標エアミックスダンパ開度と前記複数空調ゾーンに対する吹出しモードとから、対応する前記空調ゾーンに吹出される温調風の吹出し温度が前記目標吹出し温度となるようにエアミックスダンパ開度を補正演算し、その開度を決定する第2の制御系とを備えていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記第2の制御系での前記エアミックスダンパ開度の補正演算は、予め取得されたクロストークデータに基づいて定められたマップまたは関数より演算されることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空気流路が左右2流路に仕切られ、各流路に設けられている前記エアミックスダンパによって対応する運転席ゾーンおよび助手席ゾーンのデュアルゾーンが独立して温調可能とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記空気流路が幅方向に4流路に仕切られ、各々の流路に設けられている前記エアミックスダンパによって対応する前席側の運転席ゾーンと助手席ゾーンおよび後席側の右席ゾーンと左席ゾーンの4ゾーンが独立して温調可能とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
エバポレータ下流側の仕切板により仕切られた複数の空気流路中に、ヒータコアをバイパスする流路と該ヒータコアを経る加熱流路とに流通される空気流量の割合を調整する互いに独立して駆動される複数のエアミックスダンパが設けられ、
前記複数のエアミックスダンパにより対応する複数の空調ゾーンに吹出される温調風の吹出し温度を個別に制御し、前記複数の空調ゾーンを独立して温調可能としたマルチゾーンタイプの車両用空調装置の吹出し温度制御方法において、
前記複数空調ゾーンは、各々の設定温度と各種温度情報検出手段からの温度情報とに基づいて演算された各空調ゾーンに対する目標吹出し温度およびそれに対応した目標エアミックスダンパ開度によって温調制御され、
前記複数空調ゾーンの少なくとも1つの設定温度が変更されたとき、他の空調ゾーンに対応するエアミックスダンパの開度は、前記複数のエアミックスダンパの目標エアミックスダンパ開度および前記複数空調ゾーンに対する吹出しモードに基づいて補正演算された開度に補正され、前記他の空調ゾーンに吹出される温調風の吹出し温度が前記目標吹出し温度となるように制御されることを特徴とする車両用空調装置の吹出し温度制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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