説明

車両用空調装置

【課題】冷媒として二酸化炭素を用いる車両用空調装置において、送風機の停止後においても、二酸化炭素濃度が基準値を超えた場合にそれを検知可能にする。
【解決手段】送風機3が停止されてから所定時間が経過したときにCO2センサ10への通電を開始して、CO2センサ10にて検出した二酸化炭素の濃度が基準値を超えているか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒として用いられる二酸化炭素の洩れの有無を判定する機能を備える車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空調装置は、冷凍サイクル装置の冷媒としての二酸化炭素の洩れの有無を判定するために、車室内に二酸化炭素の濃度を検出するCO2センサを設け、このCO2センサによって測定された測定値が基準値を超えたときに冷媒が洩れていると判定して警報を発するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、イグニッションスイッチがオン状態であっても、内気または外気を車室内に向けて送風する送風機が停止されると、冷媒の洩れ判定を行わないようにしている。また、イグニッションスイッチがオフ状態になって送風機が停止された場合も、特にCO2センサの消費電力の問題(すなわち、CO2センサの電力消費によるバッテリ上がりの問題)から、冷媒の洩れ判定を行わないようにしている。
【特許文献1】特開2004−148989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、イグニッションスイッチがオン状態かオフ状態であるかに拘わらず、送風機が停止されると換気が行われ難いため、冷媒の洩れや乗員の呼気により二酸化炭素濃度が上昇する。しかしながら、従来の車両用空調装置は、イグニッションスイッチがオン状態かオフ状態であるかに拘わらず送風機が停止された状態では冷媒の洩れ判定を行わないため、二酸化炭素濃度が基準値を超えてもそれを検知することができないという問題があった。
【0005】
また、通常、車両用空調装置の運転中に冷媒が漏れる場合、急激に漏れるか、室内に少しずつ漏れるかの2パターンがある。急激に漏れる場合は、ある程度車室内の二酸化炭素濃度が高くなるため、イグニッションスイッチがオン状態のとき(すなわち、エンジン運転中)にCO2センサにより冷媒の洩れを検知することができる。
【0006】
一方、室内に少しずつ漏れる場合、すぐには冷媒の洩れを検知することができず、イグニッションスイッチがオフ状態のとき(すなわち、エンジン停止後)に二酸化炭素濃度が基準値を超えることがある。そして、イグニッションスイッチがオフ状態のときにも乗員が乗車している場合があり、したがって、乗員の安全性を確保するためにイグニッションスイッチがオフ状態のときにも冷媒の洩れ判定を行うことが望ましい。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、送風機の停止後においても、二酸化炭素濃度が基準値を超えた場合にそれを検知可能にすることを主目的とする。また、イグニッションスイッチがオフ状態のときにも、CO2センサの消費電力の問題を回避しつつ、二酸化炭素濃度が基準値を超えた場合にそれを検知可能にすることを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の特徴では、冷媒として二酸化炭素を用いる車両用空調装置であって、送風機(3)が停止されてから所定時間が経過したときにCO2センサ(10)への通電を開始して、二酸化炭素の濃度を判定するようにしている。
【0009】
これによると、送風機(3)が停止された後においても、冷媒の洩れや乗員の呼気により二酸化炭素濃度が基準値を超えた場合にそれを検知することができる。
【0010】
本発明の第2の特徴では、冷媒として二酸化炭素を用いる車両用空調装置であって、送風機(3)が停止されてから所定時間が経過するまではCO2センサ(10)への通電を継続するとともに二酸化炭素の濃度判定を継続し、所定時間が経過すると前記CO2センサ(10)への通電を停止して二酸化炭素の濃度判定を中止するようにしている。
【0011】
これによると、送風機(3)が停止された後においても、冷媒の洩れや乗員の呼気により二酸化炭素濃度が基準値を超えた場合にそれを検知することができる。
【0012】
本発明の第3の特徴では、冷媒として二酸化炭素を用いる車両用空調装置であって、車両のイグニッションスイッチ(14)がオフ状態になるとCO2センサ(10)への通電を停止し、イグニッションスイッチ(14)がオフ状態になってから所定時間が経過したときにCO2センサ(10)への通電を開始して二酸化炭素の濃度を判定するようにしている。
【0013】
これによると、イグニッションスイッチ(14)がオフ状態のときには二酸化炭素の濃度判定を行うときのみCO2センサ(10)へ通電するため、イグニッションスイッチ(14)がオフ状態のときにも、CO2センサ(10)の消費電力の問題を回避しつつ、二酸化炭素濃度が基準値を超えた場合にそれを検知することができる。
【0014】
この場合、イグニッションスイッチ(14)がオフ状態になってから次にオン状態になるまでの間は、所定時間が経過したときの1回のみ二酸化炭素の濃度判定を行うようにすれば、CO2センサ(10)の消費電力の問題を確実に回避することができる。なお、空調装置停止後10分程度で冷凍サイクルが安定して二酸化炭素の濃度が最大となるため、二酸化炭素の濃度が最大となるタイミングを考慮して所定時間を設定すれば、イグニッションスイッチ(14)がオフ状態になってから次にオン状態になるまでの間に1回のみ濃度判定を行えば十分である。
【0015】
また、この場合、イグニッションスイッチ(14)がオフ状態になってから次にオン状態になるまでの間は、間欠的に二酸化炭素の濃度判定を行うようにしてもよい。
【0016】
これによると、イグニッションスイッチ(14)がオフ状態のときにも、CO2センサ(10)の消費電力の問題を回避しつつ、二酸化炭素濃度が基準値を超えた場合にそれをより確実に検知することができる。
【0017】
本発明の第4の特徴では、冷媒として二酸化炭素を用いる車両用空調装置であって、車両のイグニッションスイッチ(14)がオフ状態になってから所定時間が経過するまではCO2センサ(10)への通電を継続するとともに二酸化炭素の濃度判定を継続し、所定時間が経過するとCO2センサ(10)への通電を停止して二酸化炭素の濃度判定を中止するようにしている。
【0018】
これによると、イグニッションスイッチ(14)がオフ状態になってから所定時間が経過するとCO2センサ(10)への通電を停止するため、イグニッションスイッチ(14)がオフ状態のときにも、CO2センサ(10)の消費電力の問題を回避しつつ、二酸化濃度が基準値を超えた場合にそれを検知することができる。
【0019】
第1〜第4の特徴において、二酸化炭素の濃度が高い旨を乗員に知らせる警報装置(11)と、二酸化炭素の濃度が基準値を超えていると判定されたときに警報装置(11)を作動させる警報制御手段(S105)とを備えることができる。
【0020】
このようにすれば、二酸化炭素の濃度が高い旨を乗員に知らせて、乗車している乗員の安全性を確保することができる。
【0021】
この場合、二酸化炭素の濃度が基準値を超えていると判定されたときに外気モードにするとともに送風機(3)を作動させるようにすることができる。
【0022】
このようにすれば、車室内の換気により二酸化炭素濃度が低下し、乗車している乗員の安全性を確保することができる。
【0023】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は第1実施形態に係る車両用空調装置の構成を示す図、図2は第1実施形態に係る車両用空調装置の電気回路を示す図である。
【0025】
図1、図2に示すように、車両用空調装置は、空調用空気を流通させるための空気通路を形成する空調ケーシング1を備え、この空調ケーシング1における空気流れ最上流部には、内気を導入する内気導入口2aおよび外気を導入する外気導入口2bが設けられている。この内気導入口2aおよび外気導入口2bは、内外気切替手段としての内外気切替ドア2により選択的に開閉される。内外気切替ドア2は、リンク機構を介してサーボモータ2cによって駆動される。
【0026】
なお、本明細書では、内外気切替ドア2により内気導入口2cを全開しかつ外気導入口2bを全閉して内気を車室内で循環させるモードを、内気モードという。また、内外気切替ドア2により内気導入口2cを全閉しかつ外気導入口2bを全開して外気を車室内に導入するモードを、外気モードという。
【0027】
内気導入口2cおよび外気導入口2bの空気流れ下流側には、内気導入口2cおよび外気導入口2bのうち一方から吸入した空気を車室内に向けて送風する送風機3が配置されている。送風機3は、ブロワモータ3aと、ブロワモータ3aによって回転駆動される羽根車3bとを備えている。
【0028】
送風機3の空気流れ下流側には、送風機3から送風された空気を冷却する冷房用熱交換器4が配置されている。冷房用熱交換器4は、圧縮機
4a、凝縮器4b、減圧器4cとともに冷媒を循環させる周知の冷凍サイクル装置を構成するもので、冷媒の蒸発により送風空気と熱交換して送風空気を冷却する。冷媒としては、二酸化炭素が用いられる。
【0029】
冷房用熱交換器4の空気流れ下流側には、冷房用熱交換器4を通過した送風空気を加熱する暖房用熱交換器5が配置されている。暖房用熱交換器5は、走行用エンジン5aからのエンジン冷却水(温水)を循環させることにより送風空気を加熱するものである。
【0030】
空調ケーシング1内には、暖房用熱交換器5をバイパスして送風空気を流す冷風バイパス通路1aが、暖房用熱交換器5に並列に設けられている。そして、冷風バイパス通路1aおよび暖房用熱交換器5の空気流れ上流側には、冷風バイパス通路1aに流す空気の量と暖房用熱交換器5に流す空気の量との割合を調整して車室内へ吹き出す空気の温度を調整するエアミックスドア6が設けられている。エアミックスドア6は、リンク機構を介してサーボモータ(図示せず)によって駆動される。
【0031】
冷風バイパス通路1aおよび暖房用熱交換器5の空気下流側には、冷風バイパス通路1aからの冷風と暖房用熱交換器5からの温風とを混合する混合室7が形成されている。混合室7で混合された空気は、フェイス吹出口8a、フット吹出口8b、デフ吹出口8cのいずれかから車室内に向けて吹き出される。吹出口8a、8b、8cにはそれぞれを開閉するためのモードドア9a、9b、9cがそれぞれ設けられている。モードドア9a、9b、9cは、リンク機構を介してサーボモータ(図示せず)によって駆動される。
【0032】
空調ケーシング1内および車室内のうち少なくとも一方に、二酸化炭素の濃度を検出するためのCO2センサ10が配置されている。より詳細には、CO2センサ10は、空調ケーシング1内における冷房用熱交換器4の空気流れ下流側、あるいは、車室内における助手席乗員の足下近傍部位ないしは助手席シート下に配置される。
【0033】
車室内のインストルメントパネルには、冷媒の洩れや乗員の呼気により二酸化炭素濃度が異常に高くなっていることを乗員に知らせる警報装置11が設けられている。具体的には、警報装置11は、ランプおよびスピーカを用いる。警報装置11には、エアコンECU12を介して駆動信号が供給されるようになっている。また、車室内のインストルメントパネルには、送風機3の運転・停止を乗員が選択するためのブロワスイッチ20が設けられている。
【0034】
エアコンECU12は、マイクロコンピュータ、メモリ等から構成され、周知のように必要吹出温度を算出してサーボモータ2cやブロワモータ3a等を制御するとともに、CO2センサ10の出力信号に基づいて二酸化炭素濃度が基準値を超えているか否かを判定し、二酸化炭素濃度が異常に高くなっている場合には、警報装置11、サーボモータ2cおよびブロワモータ3aを制御する。
【0035】
エアコンECU12は、バッテリ13の正極に常時接続されている。サーボモータ2c、ブロワモータ3a、およびCO2センサ10は、イグニッションスイッチ14またはリレー15を介してバッテリ13の正極に接続されている。リレー15はイグニッションスイッチ14に並列に設けられ、エアコンECU12によって制御される。そして、CO2センサ10は、イグニッションスイッチ14がオン(閉成)状態またはリレー15がオン状態のときには、バッテリ13から電力が供給されて起動し、二酸化炭素の濃度に応じた電気信号をエアコンECU12に出力するようになっている。
【0036】
次に、二酸化炭素濃度が基準値を超えているか否かを判定する処理について説明する。図3は、エアコンECU12にて実行される二酸化炭素濃度判定処理のうち、イグニッションスイッチ14がオフ(開成)状態になって送風機3が停止された後の二酸化炭素濃度判定処理の手順を示すフローチャートである。
【0037】
エアコンECU12は、イグニッションスイッチ14がオンになったときにこの処理を開始し、イグニッションスイッチ14がオンの間は(S100がYES)、ステップS100の判定を繰り返す。
【0038】
そして、イグニッションスイッチ14がオフになると(S100がNO)、すなわち、イグニッションスイッチ14がオンからオフに切り替わると、タイマをスタートさせてステップS101以降の処理を実行する。なお、この時点ではリレー15はオフ状態であり、サーボモータ2c、ブロワモータ3a、およびCO2センサ10には、電力は供給されない。
【0039】
イグニッションスイッチ14がオンからオフに切り替わってから所定時間(例えば、10分)が経過するまでは(S101がNO)、ステップS100、S101の判定を繰り返す。
【0040】
そして、所定時間が経過すると(S101がYES)、リレー15をオン状態にする(S102)。これにより、バッテリ13からCO2センサ10に電力が供給されて、CO2センサ10は二酸化炭素の濃度を検出する。また、サーボモータ2cおよびブロワモータ3aは、リレー15を介してバッテリ13の正極に接続されて作動可能な状態になる。
【0041】
次いで、濃度判定手段としてのステップS103では、CO2センサ10にて検出した二酸化炭素の濃度が基準値を超えているか否かを判定する。そして、二酸化炭素の濃度が基準値(例えば、1%)以下であれば(S103がNO)、冷媒の洩れや乗員の呼気による二酸化炭素濃度の異常上昇はないと判断する。この場合は、ステップS104にてリレー15をオフ状態にした後に、処理を終了する。
【0042】
ここで、空調装置停止後10分程度で冷凍サイクルが安定するため、その時点で冷房用熱交換器4内の冷媒圧力が最大になり、空調ケーシング1内や車室内の二酸化炭素の濃度も最大となる。したがって、二酸化炭素の濃度が最大となるタイミングを考慮してステップS101の所定時間を設定すれば、イグニッションスイッチ14がオフ状態になってから次にオン状態になるまでの間に1回のみ、二酸化炭素の濃度判定を行えば十分である。なお、空調装置停止後冷凍サイクルが安定するまでの時間は外気温によって変化するため、ステップS101の所定時間を外気温に応じて変更してもよい。
【0043】
また、イグニッションスイッチ14がオン状態の間の二酸化炭素濃度の最小値に応じて、ステップS103の基準値を変更してもよい。
【0044】
ステップS103において、CO2センサ10にて検出した二酸化炭素の濃度が基準値を超えていれば、冷媒の洩れや乗員の呼気により二酸化炭素濃度が異常上昇したものと判断する(S103がYES)。この場合は、警報制御手段および換気制御手段としてのステップS105に進み、警報を発するとともに車室内の換気を行う。
【0045】
具体的には、警報装置11のランプを点滅させるとともにスピーカから音を発して、二酸化炭素濃度が異常に高くなっていることを乗員に報知する。また、サーボモータ2cにて内外気切替ドア2を駆動して外気モードにするとともに、ブロワモータ3aにて羽根車3bを回転駆動することにより、車室内に外気を導入して車室内の換気を行う。また、乗員が降車している場合もあるため、運転者などにインターネット通知、携帯電話などへの通知を行ってもよい。
【0046】
そして、警報および換気を終了する条件が成立するまでは(S106がNOの間)、ステップS105の処理が継続して実行される。なお、警報および換気を終了する条件、すなわち、ステップS106がYESとなる条件としては、ステップS105の処理が所定時間実行されたとき、または、車両の乗降ドアや窓が開かれたとき、あるいは、乗員検知手段により乗員が降車したと判断されたとき、とすることができる。因みに、乗員検知手段としては、乗員が着座しているか否かを検出するシートスイッチや、シートベルトの使用状態を検出するシートベルトスイッチを用いることができる。
【0047】
本実施形態では、イグニッションスイッチ14がオフ状態のときには二酸化炭素の濃度判定を行うときのみCO2センサ10へ通電するため、イグニッションスイッチ14がオフ状態のときにも、CO2センサ10の消費電力の問題を回避しつつ、二酸化炭素濃度が基準値を超えた場合にそれを検知することができる。したがって、イグニッションスイッチ14がオフ状態のときに乗車している乗員の安全性を確保することができる。
【0048】
また、イグニッションスイッチ14がオフ状態になってから次にオン状態になるまでの間は、二酸化炭素の濃度判定を1回しか行わないため、CO2センサの消費電力の問題を確実に回避することができる。
【0049】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図4は、第2実施形態に係る車両用空調装置のエアコンECUにて実行される二酸化炭素濃度判定処理のうち、イグニッションスイッチ14がオン状態のときの二酸化炭素濃度判定処理の手順を示すフローチャートである。
【0050】
エアコンECU12は、イグニッションスイッチ14がオンの状態で、且つ送風機3のブロワモータ3aへの通電が開始されて送風機3の運転が開始されると、図4に示す処理を開始する。
【0051】
まず、ステップS200において送風機3が運転中であるか否かを判定する。送風機3が運転中であれば(S200がYES)、S200の判定を繰り返す。
【0052】
そして、送風機3が停止されるとステップS200で否定判定し、タイマをスタートさせてステップS201に進む。なお、乗員がブロワスイッチ20を操作して送風機3の停止を選択したときに、送風機3が停止されたと判定する。
【0053】
ステップS201では、ステップS200で否定判定してから所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過するまでは否定判定し、ステップS200、S201の判定を繰り返す。なお、冷媒が急激に漏れる場合に対応できるようにするためには、所定時間は1〜2分に設定するのが望ましい。また、走行速度によっては内気モードでも換気が行われると考えられため、走行速度が高くなるほど所定時間が長くなるように補正してもよい。
【0054】
そして、所定時間が経過すると(S201がYES)、ステップS202に進んでCO2センサ10により二酸化炭素の濃度を検出する。
【0055】
次いで、濃度判定手段としてのステップS203では、CO2センサ10にて検出した二酸化炭素の濃度が基準値を超えているか否かを判定する。そして、二酸化炭素の濃度が基準値(例えば、1%)以下であれば(S203がNO)、冷媒の洩れや乗員の呼気による二酸化炭素濃度の異常上昇はないと判断し、処理を終了する。
【0056】
ステップS203において、CO2センサ10にて検出した二酸化炭素の濃度が基準値を超えていれば、冷媒の洩れや乗員の呼気により二酸化炭素濃度が異常上昇したものと判断する(S203がYES)。この場合は、警報制御手段および換気制御手段としてのステップS204に進み、警報を発するとともに車室内の換気を行う。
【0057】
具体的には、警報装置11のランプを点滅させるとともにスピーカから音を発して、二酸化炭素濃度が異常に高くなっていることを乗員に報知する。また、サーボモータ2cにて内外気切替ドア2を駆動して外気モードにするとともに、ブロワモータ3aにて羽根車3bを回転駆動することにより、車室内に外気を導入して車室内の換気を行う。
【0058】
そして、警報および換気を終了する条件が成立するまでは(S205がNOの間)、ステップS204の処理が継続して実行される。なお、警報および換気を終了する条件、すなわち、ステップS205がYESとなる条件としては、ステップS204の処理が所定時間実行されたとき、または、車両の乗降ドアや窓が開かれたとき、あるいは、乗員検知手段により乗員が降車したと判断されたとき、とすることができる。
【0059】
本実施形態では、イグニッションスイッチ14がオンの状態で送風機3が停止された後においても、冷媒の洩れや乗員の呼気により二酸化炭素濃度が基準値を超えた場合にそれを検知することができるため、乗員の安全性を確保することができる。
(他の実施形態)
上記第1実施形態では、イグニッションスイッチ14がオフ状態になってから次にオン状態になるまでの間に、二酸化炭素の濃度判定を1回しか行わないようにしたが、イグニッションスイッチ14がオフ状態になってから次にオン状態になるまでの間に、間欠的に(例えば、10分毎に)二酸化炭素の濃度判定を行うようにしてもよい。このようにすれば、イグニッションスイッチ14がオフ状態のときにも、CO2センサ10の消費電力の問題を回避しつつ、二酸化炭素濃度が基準値を超えた場合にそれをより確実に検知することができる。
【0060】
また、イグニッションスイッチ14がオフ状態になってから次にオン状態になるまでの間に、間欠的に二酸化炭素の濃度判定を行う場合において、二酸化炭素濃度とイグニッションスイッチオフからの経過時間との関係から、二酸化炭素濃度上昇が乗員の呼気によるもので乗員の安全上の問題がない状況であると判断したときには、次回の二酸化炭素の濃度判定までの時間を長くするか、あるいはそれ以降の二酸化炭素の濃度判定を中止するようにしてもよい。
【0061】
また、イグニッションスイッチ14がオフ状態になってから次にオン状態になるまでの間に、間欠的に二酸化炭素の濃度判定を行う場合において、乗員が降車したと判断したときには、それ以降の二酸化炭素の濃度判定を中止するようにしてもよい。なお、車両の乗降ドアが開かれたとき、イグニッションキーが抜かれたとき、シートスイッチの信号により乗員が着座していないと判定されたとき、赤外線センサの信号により乗員が車室内にいないと判定されたとき、車室内の温度が例えば60℃以上の高温になったとき、車室内の温度が例えば0℃以下の低温になったとき等に、乗員が降車したと判断することができる。
【0062】
また、イグニッションスイッチ14がオフ状態になってから次にオン状態になるまでの間に、間欠的に二酸化炭素の濃度判定を行う場合において、二酸化炭素の濃度が基準値を超えていると判定したときには、自動で車両の窓やサンルーフを開けて換気を行うとともに、それ以降の二酸化炭素の濃度判定を中止するようにしてもよい。
【0063】
また、イグニッションスイッチ14がオフ状態になってから次にオン状態になるまでの間に、間欠的に二酸化炭素の濃度判定を行う場合において、二酸化炭素の濃度が基準値を超えていると判定したときには、運転者などにインターネット通知、携帯電話などへの通知を行うとともに、それ以降の二酸化炭素の濃度判定を中止するようにしてもよい。
【0064】
また、上記第1実施形態では、イグニッションスイッチ14がオフ状態になってから所定時間が経過するまでは二酸化炭素の濃度判定を行わないようにしたが、イグニッションスイッチ14がオフ状態になってから所定時間(例えば、10分)が経過するまでは二酸化炭素の濃度判定を連続して行い、所定時間が経過するとCO2センサ10への通電を停止して二酸化炭素の濃度判定を中止するようにしてもよい。このようにすれば、イグニッションスイッチ14がオフ状態になってから所定時間が経過するとCO2センサ10への通電を停止するため、グニッションスイッチ14がオフ状態のときにも、CO2センサ10の消費電力の問題を回避しつつ、二酸化炭素濃度が基準値を超えた場合にそれを検知することができる。
【0065】
上記第2実施形態では、送風機3が停止されてから次に送風機3の運転が開始されるまでの間に、二酸化炭素の濃度判定を1回しか行わないようにしたが、送風機3が停止されてから次に運転が開始されるまでの間に、間欠的に二酸化炭素の濃度判定を行うようにしてもよい。このようにすれば、送風機3が停止されているときに二酸化炭素濃度が基準値を超えた場合にそれをより確実に検知することができる。
【0066】
また、送風機3が停止されてから次に運転が開始されるまでの間に、間欠的に二酸化炭素の濃度判定を行う場合において、二酸化炭素濃度とイグニッションスイッチオフからの経過時間との関係から、二酸化炭素濃度上昇が乗員の呼気によるもので乗員の安全上の問題がない状況であると判断したときには、次回の二酸化炭素の濃度判定までの時間を長くするか、あるいはそれ以降の二酸化炭素の濃度判定を中止するようにしてもよい。
【0067】
また、送風機3が停止されてから次に運転が開始されるまでの間に、間欠的に二酸化炭素の濃度判定を行う場合において、乗員が降車したと判断したときには、それ以降の二酸化炭素の濃度判定を中止するようにしてもよい。なお、車両の乗降ドアが開かれたとき、シートスイッチの信号により乗員が着座していないと判定されたとき、赤外線センサの信号により乗員が車室内にいないと判定されたとき等に、乗員が降車したと判断することができる。
【0068】
また、送風機3が停止されてから次に運転が開始されるまでの間に、間欠的に二酸化炭素の濃度判定を行う場合において、二酸化炭素の濃度が基準値を超えていると判定したときには、自動で車両の窓やサンルーフを開けて換気を行うとともに、それ以降の二酸化炭素の濃度判定を中止するようにしてもよい。
【0069】
また、送風機3が停止されてから次に運転が開始されるまでの間に、間欠的に二酸化炭素の濃度判定を行う場合において、走行速度によっては内気モードでも換気が行われると考えられため、走行速度が高くなるほど次回の二酸化炭素の濃度判定までの時間が長くなるように補正してもよい。
【0070】
上記第2実施形態において、二酸化炭素の濃度が基準値を超えていると判定した場合は、自動で車両の窓やサンルーフを開けて換気を行うとともに、それ以降の二酸化炭素の濃度判定を中止するようにしてもよい。
【0071】
また、上記第2実施形態では、送風機3が停止されてから所定時間が経過するまでは二酸化炭素の濃度判定を行わないようにしたが、送風機3が停止されてから所定時間(例えば、10分)が経過するまでは二酸化炭素の濃度判定を連続して行い、所定時間が経過するとCO2センサ10への通電を停止して二酸化炭素の濃度判定を中止するようにしてもよい。このようにすれば、送風機3が停止されているときに二酸化炭素濃度が基準値を超えた場合にそれを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る車両用空調装置の電気回路を示す図である。
【図3】図1のエアコンECU12にて実行される二酸化炭素濃度判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態に係る車両用空調装置のエアコンECUにて実行される二酸化炭素濃度判定処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
1…空調ケーシング、10…CO2センサ、14…イグニッションスイッチ、S103…濃度判定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒として二酸化炭素を用いる車両用空調装置であって、
内気または外気を車室内に向けて送風する送風機(3)と、
空調ケーシング(1)内および前記車室内のうち少なくとも一方の二酸化炭素の濃度を検出するCO2センサ(10)と、
前記CO2センサ(10)にて検出した二酸化炭素の濃度が基準値を超えているか否かを判定する濃度判定手段(S103、S203)とを備え、
前記送風機(3)が停止されてから所定時間が経過したときに前記CO2センサ(10)への通電を開始して前記濃度判定手段(S103、S203)による判定を行うことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
冷媒として二酸化炭素を用いる車両用空調装置であって、
内気または外気を車室内に向けて送風する送風機(3)と、
空調ケーシング(1)内および前記車室内のうち少なくとも一方の二酸化炭素の濃度を検出するCO2センサ(10)と、
前記CO2センサ(10)にて検出した二酸化炭素の濃度が基準値を超えているか否かを判定する濃度判定手段(S103、S203)とを備え、
前記送風機(3)が停止されてから所定時間が経過するまでは前記CO2センサ(10)への通電を継続するとともに前記濃度判定手段(S103、S203)による判定を継続し、前記所定時間が経過すると前記CO2センサ(10)への通電を停止して前記濃度判定手段(S103、S203)による判定を中止することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
冷媒として二酸化炭素を用いる車両用空調装置であって、
空調ケーシング(1)内および車室内のうち少なくとも一方の二酸化炭素の濃度を検出するCO2センサ(10)と、
前記CO2センサ(10)にて検出した二酸化炭素の濃度が基準値を超えているか否かを判定する濃度判定手段(S103)とを備え、
車両のイグニッションスイッチ(14)がオフ状態になると前記CO2センサ(10)への通電を停止し、前記イグニッションスイッチ(14)がオフ状態になってから所定時間が経過したときに前記CO2センサ(10)への通電を開始して前記濃度判定手段(S103)による判定を行うことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
前記イグニッションスイッチ(14)がオフ状態になってから次にオン状態になるまでの間は、前記所定時間が経過したときの1回のみ前記濃度判定手段(S103)による判定を行うことを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記イグニッションスイッチ(14)がオフ状態になってから次にオン状態になるまでの間は、間欠的に前記濃度判定手段(S103)による判定を行うことを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
冷媒として二酸化炭素を用いる車両用空調装置であって、
空調ケーシング(1)内および車室内のうち少なくとも一方の二酸化炭素の濃度を検出するCO2センサ(10)と、
前記CO2センサ(10)にて検出した二酸化炭素の濃度が基準値を超えているか否かを判定する濃度判定手段(S103)とを備え、
車両のイグニッションスイッチ(14)がオフ状態になってから所定時間が経過するまでは前記CO2センサ(10)への通電を継続するとともに前記濃度判定手段(S103)による判定を継続し、前記所定時間が経過すると前記CO2センサ(10)への通電を停止して前記濃度判定手段(S103)による判定を中止することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項7】
二酸化炭素の濃度が高い旨を乗員に知らせる警報装置(11)と、
前記濃度判定手段(S103、S203)にて二酸化炭素の濃度が基準値を超えていると判定されたときに前記警報装置(11)を作動させる警報制御手段(S105、S204)とを備えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項8】
内気を循環させる内気モードと外気を車室内に導入する外気モードとを切り替える内外気切替手段(2)と、
内気または外気を車室内に向けて送風する送風機(3)と、
前記濃度判定手段(S103、S203)にて二酸化炭素の濃度が基準値を超えていると判定されたときに、前記内外気切替手段(2)の作動状態を外気モードにするとともに前記送風機(3)を作動させる換気制御手段(S105、S204)を備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−290701(P2008−290701A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321667(P2007−321667)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】