説明

車両用空調装置

【課題】シートが前後3列に並ぶ車両の3列目シートの快適性を向上させる。
【解決手段】第1〜第3列のシート1,2,3が前後3列に並ぶミニバン等の車両に搭載される車両用空調装置である。空調ユニット20に連なるリアベントダクト21aから分岐ダクト21bを分岐させ、これらそれぞれに連通する第1吹出口15およびこれの上側に位置する第2吹出口16をセンターコンソール12の後端部12aに設ける。空調ユニット20で生成された空調風を、第1吹出口15からは第2列シート2に向けて吹き出させる一方、第2吹出口16からは第2列シート2の上方を通過して第3列シート3に向かうように吹き出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートが前後3列に並ぶ車両に設けられる車両用空調装置に関し、とくに、3列目のシートの快適性を向上させる空調技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より空調装置の配置や空調風の吹出口を工夫して、乗員の快適性を向上させる試みは、例えば特許文献1〜3に見られるように広く一般に行われている。
【0003】
特許文献1では、インストルメントパネルに設けられた空調風の吹出口(アッパーベント)を車両の前後方向に延びる長孔に形成し、空調風の吹き出し時に吹出口の内壁が邪魔にならないようにして、空調風が車室後方に円滑に吹き出るようにしている。
【0004】
特許文献2では、最前列のシートの間から後方に臨むセンターコンソールの後端部に、2列目のシートに着座する乗員に向けて送風方向が異なる冷風用の第1の吹出口と温風用の第2の吹出口(リアベント)とを設け、冷風と温風とを選択的に切り替えて吹き出せるようにしている。
【0005】
特許文献3では、車両の前部に配設されるフロント空調ユニットとは別に、車両の後部にリア空調ユニット(リアエアコン)を設置し、車室の後方から後側のシートに着座する乗員に向けて空調風が吹き出せるようにしている。
【特許文献1】特開2005−289148号公報
【特許文献2】特許第3855849号公報
【特許文献3】特開2006−240403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最近では3列のシート(前方から順に第1、第2、第3列シートと呼ぶ)を備えた、いわゆるミニバンタイプの車両が人気である。この種の車両は、シートが多い分、室内空間が大きくて室内に吹き出される空調風が偏り易い。例えば先の特許文献1のようなアッパーベントから空調風を吹き出す場合には、風量を下げると第3列シートまでは届かないし、第3列シートにまで届くように風量を上げると、その影響で第1列シートに着座する乗員の快適性を損なうおそれがある。
【0007】
また、特許文献2のように第2列シートに向けて吹出口を向けたリアベントでは、空調風の温度に合わせてその吹き出し方向を切り替えたとしても、第2列シートやこれに着座する乗員に遮られてしまうため、その後方の第3列シートにまで空調風を十分に行き渡らせるのは難しく、第2列シートの乗員と第3列シートの乗員との間で快適性に差が生じる。
【0008】
その点、特許文献3のように別途リアエアコンを設けて、後方からも空調風を吹き出すようにすれば大幅な改善も可能であるが、設置コストが高くつくうえ車重の増加を招く決定的な不利がある。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、リヤエアコンを設置することもなく、簡素な構造でありながら、第3列シートに着座する乗員の快適性を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、センターコンソールの後端部に、第2列シート用の吹出口に加えて別途、第3列シート専用の吹出口を設けた。
【0011】
具体的には、請求項1の発明は、運転席および助手席からなる第1列シートと、搭乗者席からなる第2列シートおよび第3列シートと、が前後3列に並ぶ車両に搭載される車両用空調装置であって、空気を導入して空調風を生成する空調ユニットと、上記第1列シートの運転席および助手席の間から第2列シートに臨むセンターコンソールの後端部に開口し、上記空調ユニットに連なる第1ダクトを通じて送給される空調風を第2列シートに向けて吹き出す第1吹出口と、上記センターコンソールの第1吹出口よりも上側に開口し、第1ダクトから分岐する第2ダクトを通じて送給される空調風を、第2列シートの上方を通過して第3列シートに向かうように吹き出す第2吹出口と、を備えている構成とする。
【0012】
この構成によれば、空調ユニットで生成される空調風の一部は、第1ダクトを通じて第1吹出口へ送給され、第1吹出口から第2列シートに向けて吹き出される。一方、空調ユニットで生成される空調風の残りは、第1ダクトから分岐する第2ダクトを通じて第2吹出口へ送給される。第2吹出口は第1吹出口の上側に開口し、第2吹出口から吹き出される空調風は第2列シートの上方を通過して第3列シートに向かうようになるから、第2列シートやその乗員に遮られることなく、また、第1吹出口から第2列シートに向かう空調風と干渉することなく、安定して第3シートへ送給されるようになる。
【0013】
請求項2の発明では、請求項1の車両用空調装置において、第1ダクト内の流路に臨む第2ダクトの分岐開口部を開閉する開閉ドアが設けられており、上記開閉ドアは、上記分岐開口部を開くときには、第1ダクト内の流路に突出して、第1吹出口に向かう空調風の一部を第2ダクトへ導く構成とする。
【0014】
この構成によれば、開閉ドアの開け閉めによって第3列シートへの空調風の送給を選択して利用できる。すなわち、開閉ドアを閉止しておけば、空調ユニットで生成される空調風の全部を第1吹出口に送給して、通常よく利用される第2列シートに向けて吹き出すことができる。一方、乗員が増えて第3列シートを利用する場合には、開閉ドアを開いて第2ダクトに空調風の一部を導入する。このとき、開閉ドアは第1ダクト内の流路に突出するため、第1ダクト内を流れる空調風を効率よく第2ダクトに導くことができる。
【0015】
請求項3の発明では、請求項2の車両用空調装置において、第1ダクトは、その後端において上側に屈曲して立ち上がる立設部と、この立設部の上端から後方へ屈曲して突き出る突出部と、を備え、第2ダクトは、上記立設部から突出部への屈曲部位近傍の第1ダクトから上方斜め後方に向かって分岐しており、上記開閉ドアは、分岐開口部の下流側周縁に揺動可能に軸支されいる構成とする。
【0016】
この構成によれば、第2ダクトへ空調風が効率的かつ円滑に導入される。すなわち、第1ダクト内を流れる空調風は、屈曲部位で上方から後方へとその流れ方向が変えられることになるが、その屈曲部位の近傍から上方斜め後方に向かうように第2ダクトを分岐させるとともに、その分岐開口部の下流側に設けた開閉ドアを第1ダクト内に突出させれば、多量の空調風が効率的かつ円滑に第2ダクトに取り込まれるようになる。
【0017】
請求項4の発明では、請求項3の車両用空調装置において、第2吹出口の開口面積が、第1吹出口の開口面積よりも小さく設定されている構成とする。
【0018】
この構成によれば、第2吹出口からは流速の高い空調風が吹き出される。すなわち、第2ダクトに効率的かつ円滑に空調風を取り込むようにしたことで、第1吹出口の開口面積より第2吹出口の開口面積を小さくして流路を絞っても、第2ダクトへ導入される空調風を第1ダクトに大きく奪われずに済むため、第2吹出口からは流速の高い空調風が吹き出される。
【0019】
請求項5の発明では、請求項2ないし請求項4のいずれか一つの車両用空調装置において、第3列シートに着座する乗員の有無を検出する乗員検出手段と、この乗員検出手段が、第3列シートに着座する乗員がいないことを検出した場合に、開閉ドアを閉じる第2ダクト開閉手段とを備えている構成とする。
【0020】
この構成によれば、第3列シートの乗員の有無に応じて自動的に開閉ドアを開閉することができるので、いちいち開閉ドアを開閉する手間を省くことができる。第3列シートに乗員がいない場合には、確実に空調風の全てを第2列シートに向けて吹き出させることができ、無駄がない。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明によれば、空調ユニットで生成される空調風を第1吹出口から第2列シートに向けて吹き出すとともに、その第1吹出口の上側の第2吹出口から第2列シートの上方を通過して第3列シートに向かうように、斜め上方に向けて吹き出すようにしたので、各空調風は干渉せず、それぞれ安定して送給することができ、第3列シートの快適性を確保することができる。また、第1ダクトから分岐する第2ダクトおよび第2吹出口を設けるだけの簡素な構造であるため、低コストで実施でき、殆ど重量増加を招かない。
【0022】
請求項2の発明によれば、開閉ドアを閉じることにより、通常よく利用する第2列シートに向けて空調風を効率的に利用できる一方、開閉ドアを開いて第1ダクト内の流路に突出させれば、空調風を効率よく第2吹出口に導くことができる。
【0023】
請求項3の発明によれば、第1ダクトを流れる空調風を第2ダクトへ効率的かつ円滑に導入することができ、第3列シートに安定して空調風を送給できる。
【0024】
請求項4の発明によれば、第2吹出口から流速の高い空調風を十二分に吹き出すことができるので、第2列シートを越えて第3列シートまで効率よく送給することができ、第2列シートと第3列シートとの快適性の差を解消できる。
【0025】
請求項5の発明によれば、第3列シートの乗員の有無に応じて自動的に開閉ドアを開閉することができるので、いちいち開閉ドアを開閉する手間を省くことができ、より簡便に快適性を享受することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0027】
図1は、本発明にかかる車両用空調装置(以下、単に空調装置という)が搭載された自動車の車室内を示している。その車室内には、最前列に配設された運転席1aおよび助手席1bからなる第1列シート1と、その後方に配設された搭乗者席からなる第2列シート2と、そのさらに後方に配設された最後列の搭乗者席からなる第3列シート3とが車両の前後方向に3列並んでいる。なお、以下の説明では特に説明しない限り、「前」及び「後」はそれぞれ「車両前後方向前」(図1において左側)及び「車両前後方向後」を意味しており、「左」及び「右」は、それぞれ車体を基準とした「車幅方向左」及び「車幅方向右」を意味する。
【0028】
図1に示すように、第1列シート1の前方には、フロントウインド4とその下側にインストルメントパネル5とが配設され、車室前面を区画している。運転席1aの前方に位置するインストルメントパネル5の右側部位には、速度メータ等を収容するクラスター6が配設されており、これと運転席1aとの間にはステアリングホイール7が配置されている。助手席1bの前方に位置するインストルメントパネル5の左側部位には、グローブボックス8が配設されており、インストルメントパネル5の左右方向の中央部位には、オーディオ機器や空調装置を操作するための操作部10が配設されている。なお、空調装置は、この操作部10を操作することにより図示しないコントローラによって制御される。
【0029】
インストルメントパネル5の中央部位の操作部10の左右両側には、これらに近接して左右一対のベンチレータ11,11が設けられており、インストルメントパネル5の左右両端部にも、それぞれベンチレータ11、11が設けられている。インストルメントパネル5の中央部位の操作部10の下側からは車室内を後方に向かって延びるセンターコンソール12が連設されている。
【0030】
センターコンソール12は、図2に示すように、第1列シート1の運転席1aと助手席1bとの間を通って第1列シート1の後方に突き出していて、その後端部12aは第2列シート2の乗員の居住空間に臨んでいる。インストルメントパネル5から続くセンターコンソール12の前方部位の上面には、シフトレバーの延びる変速操作部13が設置されており、その後方部位には、物品を収容するための収容ボックス14が設置されている。
【0031】
この収容ボックス14に続くセンターコンソール12の後端部12aの末端上部には、上下縦並びに横長のリアベント(吹出口)15,16が2つ、開口している。下側のリアベント15は、第2列シート2に向けて空調風を吹き出す、いわば第2列シート2専用の吹出口であり(以下、第1吹出口15)、上側のリアベント16は、第3列シート3に向けて空調風を吹き出す、いわば第3列シート3専用の吹出口である(以下、第2吹出口16)。
【0032】
第1、第2の各吹出口15,16には、左右別々に角度調整が可能な横ルーバー17が取り付けてある。これら吹出口15,16の詳細については後述する。
【0033】
両吹出口15,16から吹き出される空調風は、インストルメントパネル5の内部に収容されている空調ユニット20で生成され、その空調ユニット20からセンターコンソール12の内部に設置されたリア送給ダクト21を通じて送給される。その具体的構成を図3の空調装置の要部を示した側面断面図を参照して説明する。
【0034】
空調ユニット20は、車外または車室内から空気を吸い込んで、先の操作部10で設定された温度や湿度に適宜調整した後、空調風として車室内に吹き出す機能を備えている。かかる機能は、図示しない空調ユニット20に組み込まれている各種装置、例えば送風ファンや、エバポレータ、ヒータコアなどがコントローラによって制御されることにより実現される。
【0035】
空調風が通る通風路(図示せず)を空調ユニット20内に形成するケース20aには、上述の各ベンチレータ11,11,・・・に連通するベントダクト20b,20b,・・・が接続されて通風路と各ベントダクト20bとが連通しており、空調ユニット20で生成された空調風の一部はこれらベントダクト20b,20b,・・・を介して各ベンチレータ11,11,・・・から第1列シート1の乗員の居住空間に吹き出される。
【0036】
また、これらとは別に上記ケース20aにはリヤ送給ダクト21が接続されて通風路とリヤ送給ダクト21とが連通しており、このリア送給ダクト21を通じて空調ユニット20で生成された空調風の一部が第1および第2吹出口15,16に送給される。
【0037】
具体的には、リア送給ダクト21は、その上流端が空調ユニット20に接続されて、下流端が第1吹出口15に連通するリアベントダクト21a(第1ダクト)と、このリアベントダクト21aから分岐する分岐ダクト21b(第2ダクト)などで構成されている。
【0038】
リアベントダクト21aは、図3に示すように、空調ユニット20のケース20a下部に形成された連通口20cを介して空調ユニット20内の通風路に連通しており、この連通口20cにはこれを開閉するリア空調用ドア22が取り付けてある。このリア空調用ドア22は、コントローラによって制御されており、リアベントダクト21aに空調風を送給するときには開き位置に保持され、空調ユニット20内の通風路とリアベントダクト21a内とが連通する。一方、リアベントダクト21aに空調風を送給しないときには閉じ位置に保持され、上記連通状態が遮断される。
【0039】
リアベントダクト21aの前後方向の中途部には、空調ユニット20内の送風ファンを補完するリア用送風ファン24が設置されている。このリア用送風ファン24は、各吹出口15,16に送給する空調風の流れを加速するためのものであり、これが駆動すると、リアベントダクト21aの上流から流れてくる空調風は動圧が付加されて、流速を高めた状態で下流側に送給される。但し、リア用送風ファン24は必ずしも必須ではない。
【0040】
リアベントダクト21aは、インストルメントパネル5内からセンターコンソール12内に亘って配設されている。リア用送風ファン24から後方に続いて延びるリアベントダクト21aは、車体フロア上を這うようにしてセンターコンソール12の後端部12aまで延びており、その形状は左右方向に長い長方形状をした流路断面(流路方向に直交する断面)を有する筒箱形状をしている。
【0041】
図4に示すように、リアベントダクト21aの後端側の部位は、上側に折れ曲がって立ち上がる立設部210と、この立設部210の上端から後方へ折れ曲がって略水平に突き出た突出部211とを備える。そして、この突出部211の先端が、センターコンソール12の後端部12aに開口する第1吹出口15に接続され、リアベントダクト21aと第1吹出口15とが連通している。
【0042】
リアベントダクト21aの突出部211から立設部210へ折れ曲がる部位ないしその下流近傍(屈曲部位近傍)の突出部211の上壁面には、左右方向に長い長方形状をした分岐開口部212が設けられており、リアベントダクト21a内に形成された空調風の流路に臨んでいる。そして、この分岐開口部212に分岐ダクト21bが接続されている。
【0043】
分岐ダクト21bは、分岐開口部212とほぼ同形の左右方向に長い長方形状の流路断面をした筒箱形状をしており、リアベントダクト21aとの接続端から後方に向かい上方に傾斜して突き出すように形成されている。分岐ダクト21bの先端は、センターコンソール12の後端部12aに開口する第2吹出口16に接続され、分岐ダクト21bと第2吹出口16とが連通している。
【0044】
少なくともリアベントダクト21aの立設部210から突出部211に至る部位の流路断面、および分岐ダクト21bの接続端から先端に至る部位の流路断面は、いずれもそれぞれ略同一形状に形成されており、リアベントダクト21aと分岐ダクト21bの左右方向の横幅寸法は略同一であるが、上下方向の縦幅寸法は分岐ダクト21bの方が半分程度小さく形成、つまり扁平に形成されているため、その流路断面の面積は、分岐ダクト21bの方が小さくなっている。
【0045】
そして、第1吹出口15は、リアベントダクト21aの流路断面の面積と略同一の開口面積を有し、左右方向に長い長方形状をしている。一方、第2吹出口16は、分岐ダクト21bの流路断面の面積と略同一の開口面積を有し、第2吹出口16よりも上下方向の縦幅寸法が小さい、左右方向に長い長方形状をしている。
【0046】
すなわち、両者21a,21bともその流入端から各吹出口15,16の開口に連なる流出端に至るまで流路断面が略同一に形成されており、空調風の流速を下げることなく吹き出すことができる。また、各吹出口15,16から吹き出される空調風は左右方向に広がる帯状に吹き出されるため、車幅方向の空調風の偏りが小さくなる効果がある。なお、各吹出口15,16に取り付けられた横ルーバー17は、それぞれリアベントダクト21aの突出部211および分岐ダクト21bの長手方向(流路方向)に沿って所定範囲を揺動可能に取り付けられ、流速を妨げずに空調風を整流して吹き出す機能を発揮する。
【0047】
分岐開口部212には、図4に示すように、これを開閉するための開閉ドア214が設けられている。この開閉ドア214は、分岐開口部212の開口とほぼ同寸同形状をした、左右方向に長い長方形板状をしており、その左右方向の片側の両端部が、分岐開口部212の下流側端の部位、換言すれば、リアベントダクト21aから分岐ダクト21bが分岐する部位(分岐点)に揺動可能に軸支されている。
【0048】
具体的には、開閉ドア214は、図示しないアクチュエータにより切り替え制御されており、リアベントダクト21aの上壁面と面一状になって分岐開口部212を閉止する閉止位置(図4において仮想線で示す)と、揺動端を上流側に向けた状態でリアベントダクト21a内の流路に突出して、流路内を流れる空調風の一部を分岐ダクト21b内に導く導入位置(図4において実線で示す)とにそれぞれ揺動変位する。
【0049】
この導入位置では、開閉ドア214の揺動端の部分は、リアベントダクト21aの立設部210と突出部211との間の折れ曲がった屈曲部位に臨んでいる。そして、その屈曲部位に臨む揺動端の部分は、その屈曲部位を流れる空調風の流線の延びる方向に合致するように設定されている。
【0050】
ところで、リアベントダクト21aの立設部210から突出部211を流れる空調風は、その折れ曲がる屈曲部位で上向き(垂直方向)から後向き(水平方向)へとその流れ方向が変えられる。その際、空調風の主流はこの折れ曲がり変化する流れの外周側に偏って形成され易い。従って、その外周側にあたる屈曲部位近傍の突出部の上壁面に分岐開口部212を形成するとともに、この分岐開口部212の下流側の分岐点に軸支した開閉ドア214の揺動端を屈曲部位に臨ませ、その屈曲部位に臨む揺動端の部分とそこを流れる空調風の流線の延びる方向とを合致させることで、多量の空調風を効率的かつ円滑に分岐ダクト21bに取り込むことができる。
【0051】
その結果、第1吹出口15よりも第2吹出口16の開口面積が小さく設定されて流路が絞られても、分岐ダクト21bへ導入される空調風の風量が大きく減ることがなく、第2吹出口16から流速の高い空調風を吹き出すことができるのである。
【0052】
このような開閉ドア214の切り替え制御は、赤外線センサー100(乗員検出手段)と切り替えコントローラ101(第2ダクト開閉手段)とによって行うのが好ましい。
【0053】
具体的には、図1に示すように、例えば車室後方の天井壁内面に赤外線センサー100を設置する。赤外線センサー100は、第3列シート3に乗員が着座しているか否かを検出するためのものであり、エンジンキーがオンの間は常時作動させておく。赤外線センサー100としては、例えば指向性を有する熱型センサーが好適に利用できる。なお、赤外線センサー100は、車室前方の天井壁内面に設置してもよく、要は、第3列シート3の乗員の有無が精度高く検出できればよい。
【0054】
切り替えコントローラ101は、CPUや記憶装置などで構成されて車両の所定箇所に搭載されている。そして、切り替えコントローラ101は、図3に示すように、赤外線センサー100に接続されるとともに、開閉ドア214を切り替え制御するアクチュエータに接続され、赤外線センサー100からの入力信号に基づいて開閉ドア214の開閉を制御する機能を備えている。
【0055】
詳しくは、図5のフローチャートに示すように、赤外線センサー100は、第3列シート3に乗員がいるか否かを検出してその信号を切り替えコントローラ101に出力する(ステップS1)。乗員がいずに赤外線センサー100が反応しない場合には、切り替えコントローラ101は、開閉ドア214を閉止位置に設定し、その状態を保持する(ステップS2)。一方、第3列シート3に乗員が着座して赤外線センサー100が反応した場合には、切り替えコントローラ101は、出力されたその検出信号に基づいて開閉ドア214を導入位置に設定し、その状態に保持する(ステップS3)。
【0056】
このように、開閉ドア214は第3列シート3への乗員の有無に応じて自動的に開閉制御されるため、いちいち操作せずに済むうえ、乗員のいない第3列シート3に無駄に空調風を送給することがない。
【0057】
各吹出口15,16に送給される空調風は、図1の風向を示す矢印線のように、第1吹出口15からは第2列シート2に向けて吹き出され、第2吹出口16からは第2列シート2の上方を通過して第3列シート3に向かうように吹き出される。
【0058】
すなわち、第1吹出口15は、後方に向かって略水平方向、例えば第2列シート2の座部の上面から背もたれ部の上端に至る上下の範囲に向けて空調風を吹き出すように構成されている。一方、第2吹出口16は、第1吹出口15の上側から、例えば、第2列シート2の背もたれ部およびヘッドレストを含む最上端(背もたれ部は後方へ倒されていない状態)と、車室の上面を区画する天井壁の内面と、車室の左右側面を区画する車両の側壁内面とで区画された、左右横長の長方形をした送風領域S(図1に概略的に示す)に向けて吹き出すように構成されている。
【0059】
なお、この送風領域Sに関しては、例えば第2吹出口16をこの送風領域Sと略相似形状に形成し、両者の縦横寸法の比が合致するようにしておくとよい。空調風がこの送風領域Sを通過する際、第2列シート2等への衝突を避けて効率よく第3列シート3に送給できるからである。
【0060】
次に上記のように構成された空調装置の動作について説明する。
【0061】
インストルメントパネル5に設けられた操作部10の操作により空調装置が作動すると、空調ユニット20で温度や湿度が調整された空調風が生成され、その一部は、ベントダクト20bを通じてインストルメントパネル5に設けられた各ベンチレータ11から第1列シート1前方の居住空間に送給される。これらベンチレータ11から吹き出される空調風により、運転者等の第1列シート1の乗員の快適性が確保される。
【0062】
一方、第2列シート2に搭乗する乗員があり、第2列シート2前方の居住空間への空調風の送給が要求された場合、コントローラの制御によって空調ユニット20下部の連通口20cが開き位置に保持され、空調ユニット20内の通風路とリアベントダクト21aとが連通してリアベントダクト21aにも空調風が導入される。
【0063】
リアベントダクト21aに導入された空調風は、その内部を後方の各吹出口15,16に向かって流れ、その途中に介設されたリア用送風ファン24を通過するときに流速が高められる。
【0064】
リア用送風ファン24で増速された空調風は、リアベントダクト21aの後端部位に至ると、その立設部210から突出部211を経て第1吹出口15に至り、第1吹出口15から第2列シート2に向けて空調風が吹き出される。ここでは、第3列シート3には乗員がいないため、赤外線センサー100は反応せず、開閉ドア214は分岐開口部212を閉じた閉止位置に保持されており(図5のステップS2)、空調風の全てが第1吹出口15から吹き出される。これにより、空調ユニット20で生成される空調風を第2列シート2の乗員の居住空間に効率よく送給することができる。
【0065】
一方、乗員が増えて、第3列シート3にも乗員が着座すると、赤外線センサー100が反応し、その旨の信号を切り替えコントローラ101に出力する。かかる信号を受けて切り替えコントローラ101は開閉ドア214を開いて導入位置に設定、保持する(図5のステップS3)。
【0066】
開閉ドア214が導入位置に設定、保持されると、開閉ドア214は両ダクト21a,21bの分岐点から上流側の屈曲部位に臨んで突き出た状態となり、この屈曲部位の空調風の流れ方向の変化を利用して、空調風の流速を妨げずに効率よくリアベントダクト21a内を流れる空調風の一部を分岐ダクト21bに導くことができる。このとき、開閉ドア214は空調風の流線に沿って風圧を受け難くくなっているため、軸部への負荷を回避できるメリットもある。
【0067】
また、開閉ドア214は、リアベントダクト21aの流路を略等分する位置、つまり流路の縦幅方向の中央部位にその揺動端が保持されるように設定しているので、分岐ダクト21bの方にやや多目の空調風が導入される。
【0068】
もちろん、開閉ドア214の導入位置を変えて、各吹出口15,16への空調風の導入量を調整可能にしてもよい。
【0069】
第1吹出口15からは、比較的弱い空調風が後方に向かって略水平に吹き出され、第2列シート2の乗員の居住空間に送給される。一方、その上側に設けられた第2吹出口16からは、比較的強い空調風が後方に向かって斜め上方へ吹き出され、第2列シート2の上方の送風領域Sを通過して第3列シート3の乗員の居住空間に送給される。その際、両吹出口15,16から吹き出される空調風は交わることがないため、第2列シート2への送給とともに第3列シート3に対しても効率よく送給でき、第3列シート3の乗員の快適性を確保することができる。
【0070】
以上説明した通り、本発明の空調装置によれば、リアエアコンを設けることなく、簡素な構成でありながら、一つの空調ユニット20で生成される空調風を最前列の第1列シート1から最後列の第3列シート3にまで満遍なく送給することができ、着座するシートによって生じる乗員の快適性の差を効果的に解消することができる。特に第2列シート2と第3列シート3との間の快適性の差が解消できて効果的である。
【0071】
なお、本発明にかかる空調装置の構成は、前記の実施の形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。例えば、開閉ドア214は赤外線センサー100や切り替えコントローラ101で自動制御するのではなく、例えば第2吹出口16近傍に操作摘み等を設けて手動で操作できるようにしてもよい。
【0072】
第3列シート3は、必ずしも常設されている必要はなく、座席を折り畳む等により荷室と切り替え可能に設けられていてもよい。
【0073】
開閉ドア214の制御は、リア用送風ファン24の制御と連動させてもよい。すなわち、赤外線センサー100が第3列シートに乗員がいることを検出して開閉ドア214を導入位置に設定、保持する際、リア用送風ファン24の出力をその動作に連動させて相対的に大きくし、各吹出口15,16から吹き出される空調風の風速が急に減少しないようにする。そして、開閉ドア214を閉止位置に設定、保持する際には、リア用送風ファン24の出力をその動作に連動させて相対的に小さくし、第1吹出口15から吹き出される空調風の風速が急に増大しないようにするのである。かかる構成によれば、空調風をより効率よく利用でき、空調風の風当たりの急変を避けてより快適性が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の空調装置を搭載した車両の車室内を側方から見た概略図である。
【図2】センターコンソールの要部を示す斜視図である。
【図3】車両用空調装置の要部を示した側面断面図である。
【図4】車両用空調装置の吹出口近傍を示した側面断面図である。
【図5】開閉ドアの制御の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
1 第1列シート
2 第2列シート
3 第3列シート
12 センターコンソール
15 第1吹出口
16 第2吹出口
20 空調ユニット
21a リアベントダクト(第1ダクト)
21b 分岐ダクト(第2ダクト)
100 赤外線センサー(乗員検出手段)
101 切り替えコントローラ(第2ダクト開閉手段)
212 分岐開口部
214 開閉ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席および助手席からなる第1列シートと、搭乗者席からなる第2列シートおよび第3列シートと、が前後3列に並ぶ車両に搭載される車両用空調装置であって、
空気を導入して空調風を生成する空調ユニットと、
上記第1列シートの運転席および助手席の間から第2列シートに臨むセンターコンソールの後端部に開口し、上記空調ユニットに連なる第1ダクトを通じて送給される空調風を、第2列シートに向けて吹き出す第1吹出口と、
上記センターコンソールの第1吹出口よりも上側に開口し、第1ダクトから分岐する第2ダクトを通じて送給される空調風を、第2列シートの上方を通過して第3列シートに向かうように吹き出す第2吹出口と、を備えていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1の車両用空調装置において、
第1ダクト内の流路に臨む第2ダクトの分岐開口部を開閉する開閉ドアが設けられており、
上記開閉ドアは、上記分岐開口部を開くときには、第1ダクト内の流路に突出して、第1吹出口に向かう空調風の一部を第2ダクトへ導くように構成されている、車両用空調装置。
【請求項3】
請求項2の車両用空調装置において、
第1ダクトは、その後端において上側に屈曲して立ち上がる立設部と、この立設部の上端から後方へ屈曲して突き出る突出部と、を備え、
第2ダクトは、上記立設部から突出部への屈曲部位近傍の第1ダクトから上方斜め後方に向かって分岐しており、
上記開閉ドアは、分岐開口部の下流側周縁に揺動可能に軸支されいる、車両用空調装置。
【請求項4】
請求項3の車両用空調装置において、
第2吹出口の開口面積が、第1吹出口の開口面積よりも小さく設定されている、車両用空調装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれか一つの車両用空調装置において、
第3列シートに着座する乗員の有無を検出する乗員検出手段と、
この乗員検出手段が、第3列シートに着座する乗員がいないことを検出した場合に、開閉ドアを閉じる第2ダクト開閉手段と、を備えている、車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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