説明

車両用空調装置

【課題】ワイヤレスキーから空調運転の開始を指示したにもかかわらず、空調感が得られずにバッテリの充電量が低下してしまうのを防止する。
【解決手段】エアコンECUは、ワイヤレスキーの操作によってプレ空調の開始が指示されると、バッテリの使用可能な電力量Paを読込み、この電力量Paが、最少運転時間Tminが経過するまで空調運転が可能な最少充電量Pminを超えていると、プレ空調を開始する(ステップ100〜108)。このとき、エアコンECUでは、少なくとも最少運転時間Tminが経過するまで空調運転が継続されるように空調能力を選択し(ステップ110)、選択した空調能力での空調運転を行う(ステップ112)。これにより、乗員が乗車するか、乗車する直前まで空調運転が行われるので、乗員が乗車したときに、確実に空調感を与えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用の駆動源として電気モータを備え、蓄電池に蓄積された電力によって電気モータを駆動して走行可能なハイブリッド車、電気自動車などの車両に係り、詳細には、停車中に蓄電池に蓄積された電力によってコンプレッサなどが駆動されて車室内の空調を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、走行用の駆動源として電気モータを備え、バッテリなどの蓄電池(以下、バッテリとする)に蓄積された電力によって電気モータが駆動されて走行するハイブリッド車、電気自動車などがある。このような車両に設けられる空調装置(以下、エアコンとする)では、バッテリの電力によってコンプレッサ等が駆動されるようになっており、これにより、車両駐車中に車室内を空調して、乗員の乗車時に車室内を所望の空調状態とするプレ空調が提案されている。
【0003】
一方、バッテリに蓄積された電力の残量を考えずにプレ空調を行うと、バッテリに蓄積されている電力が不足して、車両走行を開始することができなくなってしまう可能性がある。ここから、バッテリに蓄積された電力と熱負荷等に応じて空調モード、換気モード又はプレ空調禁止の切り換えを行う提案がなされている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0004】
また、バッテリの残存容量が暖気走行を実行するのに必要な容量よりも大きくないときに、プレ空調を禁止する提案もなされている(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
ところで、車両との間で片方向通信を行うことにより、遠隔操作によってドアロック/アンロックなどが可能となる所謂ワイヤレスキーが普及している。このワイヤレスキーは、片方向通信機能のみであることにより、コンパクト化が可能であると共に、遠隔操作のためのコスト上昇が抑えられている。
【0006】
プレ空調が可能なエアコンの遠隔操作に、このワイヤレスキーを用いることにより、乗員が乗車に先立って遠隔操作により空調運転(プレ空調)を行い、乗車時に、車室内を所望の空調状態とすることが可能となる。
【特許文献1】特開2004−338673号公報
【特許文献2】特開2006−298262号公報
【特許文献3】特開2006−57583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ワイヤレスキーを用いた遠隔操作によってプレ空調が開始されたときに、バッテリの残容量が少ないと、空調運転が途中で停止してしまう。このために、乗員が乗車したときに、プレ空調が行われたにもかかわらず、車室内が空調されていないために不快感を生じさせてしまうのみならず、バッテリの残容量だけが低下しまうことになってしまう。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、特に、ワイヤレスキーなどを用いた遠隔操作によってプレ空調が開始されたにもかかわらず、バッテリの電力不足によって空調運転が運転途中で中止されたために、バッテリの残容量だけが低下して、乗車した乗員に違和感や不快感を生じさせてしまうのを防止した車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、蓄電池から供給される電力を用いて車室内の空調が可能な車両用空調装置であって、車両駐車中に車外から空調運転の開始を指示可能な遠隔操作手段と、前記蓄電池の残容量である充電量を検出する容量検出手段と、前記遠隔操作手段によって空調運転の開始が指示されたときに、前記容量検出手段によって検出される前記充電量が、予め最低確保容量として設定されえいる最少充電量を超えているか否かを判定すると共に、肯定判定されたときに前記充電量と前記最少充電量から空調運転に使用可能な電力量を算出する電力判定手段と、前記電力判定手段によって肯定判定されたときに、前記使用可能電力量が、予め設定している最少運転時間が経過するまで最少空調能力で空調運転が可能な最少電力量を超えているか否かを判定する空調判定手段と、前記空調判定手段によって肯定判定されたときに、前記使用可能電力量に基づいて少なくとも前記最少運転時間が経過するまで空調運転を可能とする空調能力を設定する設定手段と、前記設定手段の設定に基づいた空調能力で車室内を空調する空調制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、遠隔操作手段によって駐車中の車両の空調運転の開始が指示されると、蓄電池の充電量を検出し、この充電量が最少充電量を超えているか否かを確認する。また、最少充電量を超えているときには、充電量と最少充電量から空調運転に使用可能な使用可能電力を算出し、この使用可能電力が、最少電力量を超えているか否かを確認し、最少電力量を超えているときに、使用可能電力量に基づいた空調能力で空調運転を開始する。
【0011】
これにより、最少運転時間が経過するまでは、空調運転を行うことができるので、この最少運転時間を適正に設定することにより、蓄電池の充電量が少ない状態で空調運転が開始されたために、空調効果が得られずに、充電量だけが低下してしまうのを防止することができる。
【0012】
また、最少運転時間が経過するまでは、空調運転が継続されるので、乗員が乗車したときに、乗員に空調感を与えることができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記第最少充電量が、車両走行開始に必要として設定されている充電量であることを特徴とし、これにより、乗員が車両への乗車に先立って空調運転を行ったために、蓄電池の充電量が低下して、車両走行が開始できなくなってしまうのを確実に防止することができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、前記設定手段が、前記使用可能電力量で前記最少運転時間が経過するまでの空調運転を開始するときの第1の消費電力と、車室内を設定温度とするように空調運転を開始するときの第2の消費電力とを比較し、何れか少ない消費電力で空調運転が開始されるように空調能力を設定する、ことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、使用可能電力量が少ないときには、空調能力を落として空調運転を行うが、使用可能電力量が比較的多い時には、車室内を設定温度とするように空調運転を行う。これにより、蓄電池の充電量に基づいた効率的な空調が可能となるようにしている。
【0016】
請求項4に係る発明は、前記最少運転時間が、前記遠隔操作手段によって前記空調運転の開始を指示可能な遠隔操作手段と車両との距離に基づいて設定されることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、最少運転時間を遠隔操作手段による遠隔操作可能な距離に基づいて設定する。これにより、乗員が車両に乗車するタイミングに合わせた効率的な空調運転が可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、予め設定した最少運転時間が経過するまでは、空調運転が継続されるので、乗員が乗車したときに空調感を与えることができると共、蓄電池の残容量が少ない状態で空調運転が開始されたために、空調感が得られないのみでなく、蓄電池の充電量を低下させてしまうのを確実に防止することができるという優れた効果が得られる。
【0019】
また、本発明は、蓄電池の充電量が不足したために、車両が走行開始できなくなってしまうのを防止でき、さらに、蓄電池の充電量に応じた適正な空調が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。図2には、本実施の形態にかかる車両用空調装置(以下、エアコン10とする)の概略構成を示している。
【0021】
このエアコン10が設けられる車両は、走行用の駆動源としてガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどの内燃機関に加えて電気モータ(何れも図示省略)が設けられた所謂ハイブリッド車となっている。
【0022】
このエアコン10は、コンプレッサ(圧縮機)12、コンデンサ(凝縮器)14、エキスパンションバルブ(減圧器)16及び、エバポレータ(蒸発器)18等を含む冷媒の循環路によって冷凍サイクルが形成されている。
【0023】
エアコン10では、コンプレッサ12の回転駆動によって圧縮されて高温高圧となった冷媒がコンデンサ14へ送られることにより冷却されて液化される。コンデンサ14で液化された冷媒は、エキスパンションバルブ16を介してエバポレータ18へ送られ、液化された冷媒がエバポレータ18で気化され、このときに、エバポレータ18を通過する空気の冷却及び除湿が行われる。エキスパンションバルブ16は、液化された冷媒を急激に減圧することにより霧状にしてエバポレータ18へ送り込むことにより、エバポレータ18での冷媒の気化効率、すなわち、エバポレータ18での空気の冷却効率の向上が図られるようにしている。
【0024】
このエアコン10には、エアコンユニット20が設けられている。エアコンユニット20内には、エバポレータ18が配設され、このエバポレータ18を通過する空気の流路が形成されている。また、エアコンユニット20には、空気の流路の一端側(上流側)に、導入箱22が設けられ、エバポレータ18とこの導入箱22との間に、ブロワファン24が配設されている。
【0025】
導入箱22には、車室内に開口された内気導入口26Aと、車外に開口された外気導入口26Bが形成され、切換ドア28が設けられている。エアコン10では、空調風を生成する空気の導入モードとして、車室内の空気(内気)を用いる内気導入モードと、車外の空気(外気)を用いて外気導入モードが設定されて折り、空気の導入モードに応じて切換ドア28が作動されて、内気導入口26Aと外気導入口26Bとが選択的に開閉される。
【0026】
エアコン10では、ブロワモータ30によってブロワファン24が回転駆動されることにより、導入箱22内に、車室内の空気ないし外気が吸引され、吸引された空気がエバポレータ18へ送り込まれ、空調風が生成される。なお、導入モードとしては、内気循環モード、外気導入モードに加えて内外気導入モードが設けられていても良く、このときには、切換ドア28によって内気導入口26A及び外気導入口26Bが半開されるものであれば良い。
【0027】
一方、エアコン10には、空調風の吹出し口として、車両の図示しないウインドガラスへ向けて開口されたデフロスタ吹出し口(以下、DEF吹出し口32とする)、前席に着座した乗員へ向けて開口されたレジスタ吹出し口(以下、FACE吹出し口34とする)及び、乗員の足元へ向けて開口された足元吹出し口(以下、FOOT吹出し口36とする)が形成されている。また、エアコンユニット20には、DEF吹出し口32、FACE吹出し口34及びFOOT吹出し口36を選択的に開閉するモード切換ドア38が設けられている。
【0028】
エアコン10では、空調風の吹出しモードとして、DEF吹出し口32が選択されるDEFモード、FACE吹出し口34が選択されるFACEモード、FOOT吹出し口36が選択されるFACEモード、FACE吹出し口34とFOOT吹出し口36が選択されるBI−LEVELモード及び、DEF吹出し口32とFOOT吹出し口36が選択されるFOOT/DEFモードが設定されており、空調風の吹出しモードに応じてモード切換ドア38が作動される。
【0029】
エアコンユニット20内には、エバポレータ18の下流側にヒータコア40及びエアミックスドア42が設けられている。ヒータコア40には、車両の図示しないエンジンとの間でエンジン冷却液(例えば、エンジン冷却水)が循環されるようになっており、これにより、ヒータコア40では、ヒータコア40を通過する空気とエンジン冷却液との間で熱交換が行われ、ヒータコア40を通過する空気がエンジン冷却液によって加熱される。
【0030】
エアコン10では、エバポレータ18を通過した空気が、エアミックスドア42によってヒータコア40を通過する空気と、ヒータコア40をバイパスする空気とに分けられる。また、エアコンユニット20では、ヒータコア40の下流側でヒータコア40を通過した空気とヒータコア40をバイパスした空気とが混合され、これにより、エアコン10では、エアミックスドア42の開度に応じた温度の空調風が生成される。エアコン10では、このエアミックスドア42の開度を制御することにより所望の温度(目標吹出し温度)の空調風が生成される。
【0031】
また、エアコン10には、ヒータコア40の下流側にPCTヒータなどの電気ヒータ(以下、PCTヒータ54とする)が設けられており、これにより、エアコン10では、駐車中などにおいてエンジン冷却液の温度が低いときにも、車室内の暖房が可能となっている。
【0032】
一方、図1に示されるように、エアコン10が設けられている車両には、走行用の駆動源として電気モータ(図示省略)を備え、この電気モータへ供給する電力を蓄積する蓄電池(以下、バッテリ44とする)が設けられている。また、この車両には、バッテリ44の残量量を含む動作状態を検出するバッテリECU46及び、バッテリ44の充放電を制御するHVECU48が設けられている。
【0033】
バッテリ44は、回生発電によって発電された電力、エンジンの駆動力によって発電された電力ないし車外から供給される電力によって充電され、充電電力が電気モータや各種の補機等の負荷へ供給される。バッテリECU46は、容量検出手段として設けられバッテリ44のバッテリ電圧、バッテリ電流等を検出して、バッテリ44に蓄積された電力量(残容量)の演算等を行うと共に、バッテリ44の動作状態を検出する。
【0034】
HVECU48は、バッテリECU46によって演算されるバッテリ44の残容量(以下、充電量SOCとする)等に基づいて、バッテリ44の動作状態を監視しながら、バッテリ44の充放電を制御する。
【0035】
例えば、HVECU48には、バッテリ44に蓄積されている電力量である充電量SOCの下限値(充電量C)と上限値(充電量C)が設定されている。ここで、充電量Cは、バッテリ44が過放電状態とならないと共に、駐車中の車両が走行開始するのに必要な電力(例えば、エンジンの始動及び暖気に必要な電力)が確保された電力量となっている。
【0036】
HVECU48は、バッテリECU46によって演算されたバッテリ44の充電量SOCが、充電量Cから充電量Cの範囲(C≦SOC≦C)となるようにバッテリ44の充放電を制御している。このときに、HVECU48は、例えば、充電量Cから充電量Cの範囲で目標充電量Cを設定し(C<C<C)、バッテリ44の充電量SOCが目標充電量Cとなるように充放電を制御する。これにより、バッテリ44の過放電及び過充電が防止されると共に、常に車両の走行開始が可能な充電状態が確保される。なお、バッテリ44の充放電制御は、常に充電量Cが確保されるものであれば、公知の制御方法を適用することができる。
【0037】
図3に示されるように、エアコン10には、エアコン10の作動を制御する制御手段としてエアコンECU50が設けられている。エアコンECU50は、CPU、ROM、RAM等がバスによって接続されたマイクロコンピュータ、各種の入出力回路及び駆動回路(何れも図示省略)を備えた一般的構成となっている。
【0038】
エアコン10は、コンプレッサ12を回転駆動するコンプレッサモータ52を備えており、コンプレッサモータ52がエアコンECU50に接続されている。また、図1に示されるように、エアコンECU50には、バッテリ44に蓄積された電力が供給されるようになっている。
【0039】
これにより、図3に示されるエアコンECU50は、バッテリ44から供給される電力によってコンプレッサモータ52を回転駆動して、コンプレッサ12の駆動/停止及び駆動時の回転数(冷房能力)を制御する。なお、コンプレッサ12は、エンジン駆動時に、エンジンの駆動力によって回転駆動されるものであっても良い。
【0040】
また、エアコン10に加熱手段としてPCTヒータ54が設けられているときには、このPCTヒータ54がエアコンECU50に接続される。エアコンECU50は、エンジン冷却液の液温が低く、ヒータコア40による暖房能力が無いか少ないときに、バッテリ44から供給される電力によってPCTヒータ54を作動して暖房能力が得られるようにしている。
【0041】
エアコンECU50には、ブロワファン24を駆動するブロワモータ30、切換ドア28を駆動するアクチュエータ56A、モード切換ドア38を駆動するアクチュエータ56B及び、エアミックスドア42を駆動するアクチュエータ56Cが接続されている。これにより、エアコンECU50は、ブロワファン24の運転/停止及びブロワ風量の制御、空気の導入モードに応じて切換ドア28の作動、吹出しモードに応じたモード切換ドア38の作動及び、エアミックスドア42の開度制御を行う。
【0042】
エアコンECU50には、車室内の温度(室温)を検出する室温センサ58、車外の温度(外気温)を検出する外気温センサ60、日射量の検出する日射センサ62、エバポレータ18を通過した空気の温度(エバポレータ後温度)を検出するエバポレータ後温度センサ64、ヒータコア40へ供給されるエンジン冷却液の温度(液温)を検出する液温センサ66等の環境状態、作動状態を検出する各種のセンサが接続されている。
【0043】
また、エアコン10には、例えば、インストルメントパネル(図示省略)に設けられて、運転/停止、運転モード、設定温度などの運転条件の入力、運転状態の表示等を行なう操作パネル68が設けられ、この操作パネル68がエアコンECU50に接続されている。
【0044】
エアコンECU50は、操作パネル68のスイッチ操作によって運転モード、設定温度等の運転条件が入力されて空調運転の開始が指示されると、入力された運転条件と、各種のセンサによって検出される環境条件等に基づいて、車室内を設定温度とするように空調運転を行う。
【0045】
例えば、エアコンECU50は、設定温度TSETに基づいて空調風の目標吹出し温度TAOを設定し、この目標吹出し温度TAOと運転条件からエアミックスドア42の開度等を設定する。このときの目標吹出し温度TAOは、設定温度TSET、室温Tr、外気温Ta、日射量STから、一般的演算式によって得られる。
【0046】
AO=K・TSET−K・Ta−K・Tr−K・ST+C
(ただし、K〜K及びCは、予め設定された定数)
また、エアコンECU50は、オートモードでの空調運転に設定されていると、目標吹出し温度TAOに基づいて、ブロワ風量Vaを設定する。また、エアコンECU50は、目標吹出し温度TAO、ブロワ風量Va等からエアミックスドア42の開度Sを設定する。なお、エアミックスドア42の開度Sは、ブロワ風量Va、エバポレータ後温度Te、ヒータコア40に供給されるエンジン冷却液の液温Tw、図示しないウォータポンプの回転数によって定まるエンジン冷却液の流量、ヒータコアごとに定まる熱効率等から演算するなどの公知の方法で設定することができる。
【0047】
エアコンECU50は、目標吹出し温度TAO、ブロワ風量Va、エアミックスドア42の開度S等を設定すると、これらの設定に基づいてコンプレッサモータ52、ブロワモータ30、アクチュエータ54A〜54C等を駆動し、車室内を設定温度とするように空調運転を行うようになっている。なお、このようなエアコンECU50による空調制御の基本的構成は、公知の一般的構成を適用することができる。
【0048】
このように構成されているエアコン10は、コンプレッサ12等がバッテリ44から供給される電力によって駆動されることより、車両駐車中においても、乗員の乗車に先立って車室内を空調するプレ空調運転が可能となっている。また、エアコン10では、操作パネル66のスイッチ操作によってプレ空調運転の設定が可能となっている。
【0049】
操作パネル68上でのプレ空調運転の設定は、例えば、乗車予定時刻、設定温度等の運転条件を入力する。エアコン10では、乗車予定時刻に車室内が設定温度となるように、乗車時刻、空調負荷などに基づいた所定の時刻に、プレ空調運転が開始される。これにより、駐車中の車両に乗員が乗車したときに、車室内が所望の空調状態となるようにすることができる。
【0050】
ところで、図1に示されるように、エアコン10が設けられている車両は、遠隔操作手段としてワイヤレスキーシステム70を備えている。このワイヤレスキーシステム70は、乗員が携帯するワイヤレスキー72と、ワイヤレスキー72から送信される信号を受信する受信ユニット74を含んで形成されている。
【0051】
ワイヤレスキー72には、例えば、車両の図示しないドアのロック/アンロックを行うドアロックスイッチ、ドアアンロックスイッチが設けられており、車外からドアロックスイッチ、ドアアンロックスイッチを操作することにより、操作信号がワイヤレスキー72から送信される。
【0052】
受信ユニット74は、ワイヤレスキー72が送信した操作信号を受信すると、受信した操作信号に応じた制御信号を、ドアのロック/アンロック制御を行うECUへ出力し、該当ECUが、この制御信号に基づいてドアロック/アンロックを行う。これにより、ワイヤレスキーを用いた遠隔操作によって、車両のドアロック/アンロックが行われる。
【0053】
ワイヤレスキーシステム70としては、双方向通信を行うものであっても良いが、本実施の形態では、ワイヤレスキーシステム70を、ワイヤレスキー72から操作信号を送信する片方向通信を行うものとしている。これにより、遠隔操作を行うシステムの低コスト化を図ると共に、乗員が携帯するワイヤレスキー72の小型化を図っている。すなわち、ワイヤレスキー72は、受信手段や受信手段に基づいた表示などを行なう機能を含まずに、送信手段のみを備えていることにより、小型化、低コスト化が図られている。
【0054】
このワイヤレスキー72には、プレ空調スイッチ76が設けられている。ワイヤレスキー72では、このプレ空調スイッチ76が操作されると、プレ空調スイッチ76が操作されたことを示す操作信号を送信する。
【0055】
受信ユニット74は、エアコンECU50に接続されている。この受信ユニット74は、ワイヤレスキー72から送信されたプレ空調スイッチ76の操作信号を受信すると、エアコンECU50へプレ空調開始を示す制御信号を出力する。エアコンECU50は、受信ユニット74からこの制御信号を受信すると、プレ空調を開始する。
【0056】
エアコンECU50では、操作パネル68上のスイッチ操作又はイグニッションスイッチがオフされて空調運転が停止したときに、その時点での設定温度などの運転条件が記憶され、ワイヤレスキー72によってプレ空調が指示されたときに、この記憶されている設定温度等に基づいた空調運転が可能となるようにしている。
【0057】
なお、エアコンECU50は、ワイヤレスキー72によってプレ空調が指示されたときの設定温度などの運転条件を、予め操作パネル68のスイッチ操作によって入力されるものであっても良い。すなわち、エアコンECU50では、ワイヤレスキー72からの入力に基づいてプレ空調を開始するときの設定温度等を、予め操作パネル68のスイッチ操作によって入力しておくことができ、このときには、エアコンECU50は、予め設定されている設定温度等に基づいたプレ空調が可能となっている。
【0058】
エアコンECU50では、プレ空調を行うときに、バッテリECU46によって演算されるバッテリ44の充電量SOCをHVECU48から読込み、この充電量SOCが、最少充電量として設定している充電量Cまで低下しないように空調運転を行う。これにより、車両駐車中にプレ空調を行ったためにバッテリ44の残容量(充電量SOC)が少なくなり過ぎて(例えばSOC<C)、車両が走行できなくなってしまうのを防止するようにしている。
【0059】
ここで、エアコンECU50は、ワイヤレスキー72からプレ空調の開始が指示されると、バッテリECU46からバッテリ44の残容量となる充電量SOCを読み出して、充電量SOCと充電量Cとを比較することにより、空調運転に利用可能な電力量(以下、電力量Paとする)を確認する。
【0060】
また、エアコンECU50では、電力量Paが、予め設定された時間(以下、最少運転時間Tminとする)だけ空調運転を行うことができる最少電力量を超えているか否かを確認する。これにより、電力量Paが最少電力量より多く、最少運転時間Tmin以上の空調運転が可能であるときに、プレ空調を開始するようにしている。
【0061】
一般に、エアコン10では、例えば冷房モードで空調運転を行うときに、コンプレッサ12の回転数に応じて空調能力(冷房能力)が変化する。また、コンプレッサ12の回転数によってコンプレッサモータ52の消費電力が変化する。また、エアコンECU50では、コンプレッサ12の回転数の上限値と下限値が設定されており、回転数が上限値と下限値の間に所望の空調能力(冷房能力)が得られるようにコンプレッサモータ12の回転駆動を制御している。したがって、エアコン10では、空調能力に応じて消費電力が変化し、空調能力が低いときには、消費電力も低くなる。
【0062】
エアコンECU50には、例えば冷房モードで空調運転を行うときに、空調能力が最も低い状態(例えばコンプレッサモータ52の最低回転数)を、プレ空調を行うときの最少空調能力として設定され、この最少空調能力で最少運転時間Tminだけ空調運転を行ったときに消費される電力量を、プレ空調を行うときの最少電力量Pminとして記憶している。なお、以下では、冷房モードを例に説明し、暖房モードでの説明を省略する。
【0063】
一般に、空調運転(例えば、冷房運転)を開始したときに、開始直後は、吹出し口から吹き出される空調風が冷却されていないが、10秒から15秒程度(車両によって異なる)経過すると、冷却された空調風が吹き出されて、冷房感が得られる。
【0064】
また、ワイヤレスキー72は、送信電力が少なく、例えば数十メートルから百数十メートル程度の比較的車両に近い距離で操作される。このために、ワイヤレスキー72のプレ空調スイッチ76が操作されてから、乗員が車両に乗車するまでの時間は、数十秒から数分程度の時間とすることができる。
【0065】
ここから、ワイヤレスキー72の操作によってプレ空調を行うときの最少運転時間Tminは、約20秒〜数分程度とすることができ、例えば、この最少運転時間Tminは、30秒(Tmin=30sec)程度に設定することができ、最少空調能力で空調運転を行うときの消費電力と最少運転時間Tminから、最少電力量Pminが算出される。
【0066】
エアコンECU50は、使用可能な電力量Paを読み込むと、この電力量paと最少電力量Pminを比較することにより、プレ空調を行うか否かを判断する。このときに、最少電力量Pminよりも電力量Paが多いとき(Pa>Pmin)にプレ空調を実行する。すなわち、エアコンECU50は、最少の空調能力であっても、最少運転時間Tmin以上の空調運転が可能であるときにプレ空調を実行する。
【0067】
また、エアコンECU50では、電力量Paに基づいて空調能力を設定して、プレ空調を行う。このときの空調能力は、設定温度に基づいて空調運転を開始するときの消費電力Waと、電力量Paを用いて最少運転時間Tminだけ空調運転を行うときの消費電力Wtを比較する。
【0068】
このときに、消費電力Waが少なければ、設定温度等の運転条件に基づいて空調能力を設定して空調運転(能力優先運転)を行うように選択する。また、消費電力Wtが少なければ、消費電力Wtとなる空調能力で空調運転(時間優先運転)を開始するように選択する。
【0069】
次に、本実施の形態の作用として、ワイヤレスキー72の操作に基づいたエアコン10でのプレ空調運転を説明する。
【0070】
エアコン10が設けられている車両では、走行中にバッテリ44の充放電が行なわれる。このときに、HVECU48は、バッテリECU46によって検出されるバッテリ44の充電量SOC及び動作状態等に基づいてバッテリ44の充電量SOCが充電量C以上となるように充放電を制御している。これにより、車両が駐車されるときに、バッテリ44は、次に走行を開始するのに必要な充電量SOCが確保される。
【0071】
一方、エアコン10は、イグニッションスイッチのオン状態では、操作パネル68のスイッチ操作によって設定された運転条件に基づいた車室内の空調運転を実行する。
【0072】
エアコン10では、操作パネル68のスイッチ操作又は、イグニッションスイッチがオフされることにより空調運転を停止する。このときに、エアコンECU50は、空調運転を停止したときの設定温度などの運転条件が、プレ空調を含む次回の空調運転を行うときの運転条件として記憶される。
【0073】
また、エアコン10では、操作パネル68のスイッチ操作によってプレ空調を行うときの設定温度などの運転条件が設定可能であり、エアコンECU50には、操作パネル68のスイッチ操作によってプレ空調を行うときの設定温度などの運転条件が入力されると、入力された運転条件がプレ空調を行うときの運転条件として記憶される。
【0074】
エアコン10では、イグニッションスイッチがオフされていると、ワイヤレスキー72のスイッチ操作によってプレ空調の開始が指示されると、プレ空調を開始する。
【0075】
ここで、図4乃至図6に示されるフローチャートを参照しながら、エアコン10のプレ空調を説明する。図4に示されるフローチャートは、イグニッションスイッチがオフされた状態(車両の駐車状態)でかつ、乗車予定時刻に合わせたプレ空調が設定されていない状態で実行され、最初のステップ100でワイヤレスキー72の操作によるプレ空調の開始が指示されたか否かを確認している。
【0076】
ここで、ワイヤレスキー72から発する信号が車両に届く位置で、乗員が乗車に先立って車室内を空調するプレ空調を行うようにワイヤレスキー72のプレ空調スイッチ76を操作すると、ワイヤレスキー72からプレ空調スイッチ76の操作信号が発信される。
【0077】
受信ユニット74は、ワイヤレスキー72から発信された操作信号を受信すると、この操作信号が、プレ空調スイッチ76が操作されたことを示す操作信号であると、プレ空調の開始を要求する制御信号がエアコンECU50へ出力される。
【0078】
エアコンECU50は、受信ユニット74からワイヤレスキー72のプレ空調スイッチ76の操作に基づいた制御信号が入力されると、ステップ100で肯定判定してステップ102へ移行する。
【0079】
このステップ102では、バッテリECU46によって算出されたバッテリ44の充電量SOCを、HVECU48を介して読み込み、次のステップ104では、空調運転(プレ空調)に利用可能な電力量Paを算出する。
【0080】
この後、ステップ106では、電力量Paからプレ空調に使用可能な電力があるか否かを確認し、ステップ108では、少なくとも最少運転時間Tmin以上の間、プレ空調運転を行うことができるか否かを確認する。
【0081】
このときに、充電量SOCが充電量Cより多く(SOC>C、すなわち、Pa>0)であり、かつ、算出された電力量Paが最少電力量Pminにより多いとき(Pa≧Pmin)には、ステップ106及びステップ108で肯定判定されてステップ110へ移行し、プレ空調を開始する。
【0082】
ここで、充電量SOCが充電量C以下(SOC≦C、すなわち、Pa≦0)である時には、ステップ106で否定判定されて、プレ空調が中止される。これにより、エアコン10では、プレ空調を行ったために、車両が走行開始不能となってしまうのを防止される。
【0083】
また、充電量SOCが充電量Cよりも多く(Pa>0)、ステップ106で肯定判定されたときにおいても、電力量Paが最少電力量Pminに満たないとき(Pa<Pmin)には、ステップ108で否定判定されてプレ空調が中止される。これにより、プレ空調が開始されたにもかかわらず、充電量Cを確保するために、乗員の乗車前にプレ空調が停止されて、バッテリ44の充電量SOCだけが低くなってしまうのを防止されるようにしている。
【0084】
一方、プレ空調を行うときには、先ず、ステップ110で空調能力の選択を行う。図5には、空調能力の選択を行うときの一例とする処理の流れを示している。
【0085】
このフローチャートは、図4でステップ110へ移行することにより実行され、最初のステップ130では、車室内を設定温度とするように空調運転を開始するときに必要な空調能力を得るための第2の消費電力となる消費電力Waを演算する。すなわち、空調能力を優先する空調運転を行うときの消費電力Waを演算する。
【0086】
また、ステップ132では、空調運転に使用可能な電力量Paで、最少運転時間Tminだけ空調運転を行うときの第1の消費電力となる消費電力Wtを演算する。すなわち、少なくとも最少運転時間Taが経過するまで空調運転を行うと仮定したときの消費電力Wtを演算する。
【0087】
この後、ステップ134では、演算した消費電力Wa、Wtを比較し、消費電力Waが消費電力Wtより少ないか否かを判断する。すなわち、電力量Paが、空調能力を優先することができる量であるか否かを確認する。
【0088】
ここで、電力量Paが比較的多く、電力量Paに基づいた消費電力Wtが消費電力Waより多いとき(消費電力Waが消費電力Wt以下となっているとき、(Wa≦Wt)には、ステップ134で肯定判定してステップ136へ移行する。このステップ136では、車室内を目標温度とするように空調運転を行うように設定する。
【0089】
また、電力量Paが少なく、電力量Paに基づいた消費電力Wtが消費電力Waより少ないとき(Wa>Wt)には、ステップ134で否定判定してステップ138へ移行する。このステップ138では、空調運転を行ったときの消費電力Wが消費電力Wtとなる空調能力で空調運転を行うように設定する。
【0090】
このようにして空調能力を設定することにより、少なくとも最少運転時間Tminが経過するまでは空調運転が行われるように空調能力を設定することができる。
【0091】
図4に示されるフローチャートでは、ステップ110で空調能力の選択が行われると、ステップ112へ移行して、選択された空調能力での空調運転(プレ空調運転)を開始する。
【0092】
このようにしてプレ空調運転が開始されると、ステップ114では、乗員が乗車してイグニッションスイッチがオンされたか否かを確認し、ステップ116では、操作パネル68のスイッチ操作によって通常の空調運転を行うように操作されるなどして、プレ空調運転の停止操作がなされたか否かを確認する。すなわち、ステップ114、116では、乗員が乗車して車両の運転操作を行う状態となったか否かを確認する。
【0093】
ここで、まだ、乗員の乗車が確認されなければ、ステップ114、116で否定判定してステップ118へ移行し、バッテリ44の充電量SOCを読込み、ステップ120では、プレ空調に使用可能な残りの電力量である電力量Paを演算する。この後、ステップ122では、電力量Paの残りがあるか否かを確認する。
【0094】
このときに、使用可能な電力が残っており、電力量Pa>0であれば、ステップ122で肯定判定してステップ124へ移行する。このステップ124では、残っている電力量Pa等に基づいた空調能力の更新を行う。
【0095】
図6には、プレ空調を行っているときのプレ空調の更新処理の一例が示されている。このフローチャートは、図4でステップ124へ移行することにより実行され、最初のステップ140では、プレ空調を開始してからの経過時間が最少運転時間Tminに達したか否かを確認している。
【0096】
ここで、エアコン10では、最少運転時間Tminが経過するまではプレ空調が行われるようにしており、エアコンECU50は、図示しないタイマーによってプレ空調を開始してからの経過時間Tを計測し、この経過時間Tが時間Tminに達していないとき(T≦Tmin)には、ステップ140で否定判定されてステップ142へ移行し、現在の空調能力での空調運転を継続するように設定する。
【0097】
一方、経過時間Tが最少運転時間Tminを経過する(T>Tmin)と、ステップ140で否定判定されて空調能力の更新を行う。なお、ステップ140で否定判定された後に実行される空調能力の更新は、数秒間隔から十数秒間隔などの予め設定した時間間隔で行い、空調能力が頻繁に更新されるのが抑えられるようにしている。
【0098】
この空調能力の更新は、ステップ144で、現在の空調能力での消費電力Wを演算する。また、ステップ146では、現状の環境状態で車室内を設定温度とするように空調運転を行うときの消費電力Waを演算し、ステップ148では、消費電力Waと消費電力Wとを比較する。
【0099】
ここで、消費電力Waが消費電力W以下(Wa≦W)であれば、ステップ148で肯定判定して、ステップ150へ移行し、車室内を目標温度とする空調運転を行うように設定する。
【0100】
これに対して、消費電力Waが消費電力Wを超えているとき(Wa>W)には、ステップ148で否定判定して、ステップ152へ移行する。このステップ152では、現在の空調能力が、最少空調能力であるか否かを確認する。
【0101】
このときに、現在の空調能力が最少空調能力であれば、ステップ152で肯定判定してステップ142へ移行し、現状の空調能力での空調運転を継続するように設定する。すなわち、最少空調能力で空調運転が継続されるように設定する。
【0102】
また、現状の空調能力が、最少空調能力に達していなければ、ステップ152で否定判定してステップ154へ移行する。このステップ154では、現状の空調能力から、空調能力を下げるように設定する。なお、ステップ154で空調能力を設定するときには、消費電力が予め設定された量だけ下げた空調能力とするようにしても良く、また、予め空調能力を複数段階に設定し、段階的に空調能力を下げるようにしても良い。
【0103】
このように、最少運転時間Tminが経過した後は、電力消費を抑えるように空調能力を設定することにより、バッテリ44の放電を抑えることができる。なお、空調能力の更新は、空調運転に使用可能な電力量Paに基づいて設定するようにしても良い。
【0104】
空調能力が更新されると、図4のフローチャートでは、ステップ124からステップ112へ移行し、更新された空調能力での空調運転が行われる。
【0105】
一方、乗員が乗車したときに、プレ空調が行われているときには、乗員が操作パネル68のスイッチ操作によって通常の空調運転に設定するか、プレ空調を停止するように操作する。これにより、ステップ116で肯定判定されてステップ126へ移行することにより、プレ空調運転が停止される。
【0106】
また、乗員がプレ空調運転の停止操作を行わないときであっても、車両走行のためにイグニッションスイッチがオンされると、ステップ114で肯定判定されてステップ126へ移行し、プレ空調運転が停止される。
【0107】
このようにエアコン10では、少なくとも予め設定している最少運転時間Tminが経過するまでは、プレ空調運転が行われるように空調能力が設定される。このときの、バッテリ44の充電量SOCが少なければ、空調能力を最少能力として空調運転を行うようにしている。また、最少空調能力であっても、空調運転が可能となる時間が、最少運転時間Tminに満たないときには、プレ空調運転を中止する。
【0108】
ここで、最少運転時間Tminは、乗員がワイヤレスキー72のプレ空調スイッチ76を操作してから、実際に車両に乗車するまでの時間を予測して設定される。これにより、ワイヤレスキー72のプレ空調スイッチ76を操作した乗員が、乗車するタイミングでは、エアコン10がプレ空調運転を行っているか、または、バッテリ44の充電量SOCが低下したためにプレ空調運転を停止した直後となる。
【0109】
したがって、プレ空調を行うようにワイヤレスキー72を操作することにより、プレ空調が開始されたにもかかわらず、バッテリ44の充電量SOCが少ないために空調運転が停止してしまい、乗員が乗車したときに、車室内の空調感が得られずに、単にバッテリ44の充電量SOCが低下しただけという事態が生じてしまうのを防止することができる。
【0110】
特に、空調能力が最少能力であっても、吹出し口からは温調された空気が吹き出されるので、車室内が十分に空調されていない状態であっても、乗車した乗員に空調感を与えることができる。
【0111】
一方、本実施の形態では、乗員の乗車を、イグニッションスイッチのオン操作又は、操作パネル68のスイッチ操作によって判定するようにしたが、これに限らず、例えば、乗員が乗車したときに着座するシートスイッチのオン/オフ、乗員が乗車するときに開閉するドアのドアスイッチのオン/オフなどを適用することができる。
【0112】
例えば、乗員が座席に着座したときにオンするシートスイッチを用いて乗車を判定するときには、図4のフローチャートのステップ114、116に換えて、シートスイッチがオンしたか否かを判定するステップを設ければよい。このときには、シートスイッチがオンしたときに、ステップ126へ移行して、プレ空調運転を停止する。これにより、乗員が座席に着座するまでは、吹出し口から空調風が吹き出されるので、空調能力が低くても、十分な空調感を乗員に与えることができる。
【0113】
また、乗員がドアを開いたときにオンするドアスイッチを用いて乗車を判定するときには、図4のフローチャートのステップ114、116に換えて、ドアスイッチがオンしたか否かを判定するステップを設ければよい。このときには、ドアスイッチがオンしたときに、ステップ126へ移行して、プレ空調運転を停止する。これにより、乗員が車両に乗り込む寸前までプレ空調運転が行われているために、乗員が、プレ空調が行われなかったと感じてしまうのを防止できると共に、バッテリ44に蓄積された電力の消費を抑えることができる。
【0114】
また、ドアスイッチを用いるときには、ドアを開けることによりオンしたドアスイッチが、ドアの閉止操作によってオフするタイミングでプレ空調を停止させるようにしても良く、これにより、シートスイッチを用いたときと略同等の効果を得ることができる。
【0115】
なお、以上説明した本実施の形態は、本発明の構成を限定するものではない。本実施の形態では、ワイヤレスキー72を用いてプレ空調の開始を指示するようにしたが、遠隔操作手段はこれに限るものではない。例えば、携帯電話やパーソナルコンピュータと車両を接続するネットワークを用いて、このネットワークを介して、携帯電話やパーソナルコンピュータなどの通信端末から、プレ空調の開始を指示するようにしても良く、このときには、通信端末に応じて最少運転時間Tminを設定するようにすれば良い。
【0116】
また、本実施の形態では、ハイブリッド車に設けたエアコン10を例に説明したが、本発明は、これに限らず、走行用の駆動源として設けられた電気モータを、蓄電手段に蓄積した電力によって駆動する電気自動車などに設けられて、駐車中も空調運転が可能な任意の構成の車両用空調装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本実施の形態に係るエアコンECUとワイヤレスリモコン及びバッテリの接続を示す概略図である。
【図2】本実施の形態に係るエアコンを示す概略構成図である。
【図3】エアコンの制御部を示す概略構成図である。
【図4】ワイヤレスキーを用いたプレ空調処理の概略を示す流れ図である。
【図5】プレ空調開始時の空調能力の設定の一例を示す流れ図である。
【図6】プレ空調運転中の空調能力の更新の一例を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0118】
10 エアコン(車両用空調装置)
12 コンプレッサ
18 エバポレータ
40 ヒータコア
42 エアミックスドア
44 バッテリ(蓄電池)
46 バッテリECU(容量検出手段)
48 HVECU
50 エアコンECU(容量判定手段、空調判定手段、設定手段、空調制御手段)
52 コンプレッサモータ
70 ワイヤレスキーシステム(遠隔操作手段)
72 ワイヤレスキー(遠隔操作手段)
74 受信ユニット(遠隔操作手段)
76 プレ空調スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池から供給される電力を用いて車室内の空調が可能な車両用空調装置であって、
車両駐車中に車外から空調運転の開始を指示可能な遠隔操作手段と、
前記蓄電池の残容量である充電量を検出する容量検出手段と、
前記遠隔操作手段によって空調運転の開始が指示されたときに、前記容量検出手段によって検出される前記充電量が、予め最低確保容量として設定されえいる最少充電量を超えているか否かを判定すると共に、肯定判定されたときに前記充電量と前記最少充電量から空調運転に使用可能な電力量を算出する電力判定手段と、
前記電力判定手段によって肯定判定されたときに、前記使用可能電力量が、予め設定している最少運転時間が経過するまで最少空調能力で空調運転が可能な最少電力量を超えているか否かを判定する空調判定手段と、
前記空調判定手段によって肯定判定されたときに、前記使用可能電力量に基づいて少なくとも前記最少運転時間が経過するまで空調運転を可能とする空調能力を設定する設定手段と、
前記設定手段の設定に基づいた空調能力で車室内を空調する空調制御手段と、
を含むことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記第最少充電量が、車両走行開始に必要として設定されている充電量であることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記設定手段が、前記使用可能電力量で前記最少運転時間が経過するまでの空調運転を開始するときの第1の消費電力と、車室内を設定温度とするように空調運転を開始するときの第2の消費電力とを比較し、何れか少ない消費電力で空調運転が開始されるように空調能力を設定する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記最少運転時間が、前記遠隔操作手段によって前記空調運転の開始を指示可能な遠隔操作手段と車両との距離に基づいて設定されることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−107548(P2009−107548A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283871(P2007−283871)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】