説明

車両用空調装置

【課題】空調装置の停止後に蒸発器の表面を容易に自然乾燥させることができ、活性酸素の無駄な発生を抑制できるようにする。
【解決手段】水と接触すると活性酸素を発生する被膜を有する第2蒸発器4の空気流れ上流側に第1蒸発器3を配置する。空調運転時に、第1、第2蒸発器3、4の両方に冷媒が流れる状態とすることで、第1蒸発器3によって除湿された空気A2を第2蒸発器4に供給する。これにより、第2蒸発器4の表面温度を露点以下として第2蒸発器4に凝縮水を生成させても、生成する凝縮水が多くなりすぎることを抑制できる。また、第2蒸発器4の表面に生成させた凝縮水の量が、空調運転停止後に第2蒸発器4の表面が自然乾燥できない程度に達しそうな場合には、第2蒸発器4を流れる冷媒の流量を調整して、第2蒸発器4の表面温度を露点よりも高くすることで、第2蒸発器4の表面での凝縮水の生成を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用空調装置は、空気を冷却する蒸発器を備えており、蒸発器で空気を冷却すると、空気内に含まれた水分が結露して蒸発器に付着するため、蒸発器には細菌やカビが発生しやすく、この細菌やカビが空調装置の始動時に不快な臭いとなる。
【0003】
そこで、特許文献1に記載の技術では、蒸発器の表面上に、ポリアニリン等の電子供与重合体で構成され、水と接触すると活性酸素を発生する被膜を形成しておくことで、蒸発器の表面に発生した凝縮水により活性酸素を発生させて、凝縮水中に存在する細菌やカビ等の異臭の発生源となる臭い成分を分解することで、異臭防止を図っている。
【特許文献1】特開2002−71296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した活性酸素は、電子供与重合体を成分とする被膜に凝縮水が接触すると、電子供与重合体から凝縮水中の溶存酸素に電子が供与されることで発生するが、電子供与重合体が供与可能な電子の量には限度がある。このため、被膜に凝縮水が常に接触した状態であると、凝縮水中の溶存酸素に供与する電子が不足して活性酸素が発生しなくなってしまうという問題が生じる。
【0005】
この問題に対して、特許文献1の段落0043に記載のように、空調装置の停止時に蒸発器の表面を自然乾燥させることができれば、活性酸素の発生を自動的に停止できるので、活性酸素を無駄に発生させることを防止でき、活性酸素の発生能力を維持することができる。
【0006】
しかし、夏場のように、湿度の高い空気が蒸発器に供給されて、蒸発器の表面に大量の凝縮水が発生する場合では、空調装置の停止後に蒸発器表面を自然乾燥させるのは困難である。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、空調装置の停止後に蒸発器の表面を容易に自然乾燥させることができ、活性酸素の無駄な発生を抑制できる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、第2蒸発器(4)の表面には水と接触すると活性酸素を発生する被膜が形成されており、制御手段(21)は、送風機(2)および圧縮機(7)の運転時に第1、第2膨張弁(13、14)を開状態とし、第1、第2膨張弁(13、14)が開状態のときに、第1温湿度測定手段(18)の測定結果に基づいて第1蒸発器(3)から第2蒸発器(4)に供給される空気(A2)の露点を算出して、表面温度測定手段(17)による測定温度が露点以下となるように第2膨張弁(14)の開度を調整し、さらに、露点以下となるように第2膨張弁(14)の開度を調整したことによって第2蒸発器(4)の表面に生成する凝縮水の量を、表面温度測定手段(17)、第2温湿度測定手段(19)および風量測定手段(20)の測定結果から算出し、算出した凝縮水の量が所定量を超える場合に、表面温度測定手段(17)による測定温度が露点以下から露点よりも高い温度に変更されるように第2膨張弁(14)の開度を調整するようになっていることを特徴としている。
【0009】
これによれば、第1蒸発器によって除湿された空気を第2蒸発器に供給しているので、第2蒸発器の表面温度を露点以下として第2蒸発器に凝縮水を生成させても、生成する凝縮水が多くなりすぎることを抑制できる。
【0010】
さらに、第2蒸発器の表面に生成する凝縮水の量が所定量を超える場合では、第2蒸発器の表面温度を露点以下から露点よりも高い温度に変更しているので、第2蒸発器の表面での凝縮水の生成を停止させて、凝縮水の量が多くなりすぎることを抑制できる。さらに、このとき、第1蒸発器によって除湿された空気によって第2蒸発器の表面の凝縮水を蒸発させることができるので、第2蒸発器表面に存在する凝縮水の量を減少させることができる。
【0011】
したがって、本発明によれば、空調装置の停止後に第2蒸発器の表面を自然乾燥させることが容易となり、活性酸素の無駄な発生を抑制できる。
【0012】
請求項1に記載の発明においては、請求項2に記載のように、第1蒸発器(3)から第2蒸発器(4)に供給される空気(A2)の風量を測定する風量測定手段(20)を備え、制御手段(21)は、露点以下となるように第2膨張弁(14)の開度を調整したことによって第2蒸発器(4)の表面に生成する凝縮水の量を、表面温度測定手段(17)、第2温湿度測定手段(19)および風量測定手段(20)の測定結果と露点とに基づいて算出することが好ましい。
【0013】
請求項3に記載の発明では、第2蒸発器(4)の表面には水と接触すると活性酸素を発生する被膜が形成されており、制御手段(21)は、送風機(2)および圧縮機(7)の運転時に、第1、第2膨張弁(13、14)を開状態とし、第1、第2膨張弁(13、14)が開状態の場合に、温湿度測定手段(18)の測定結果に基づいて第1蒸発器(3)から第2蒸発器(4)に供給される空気(A2)の露点を算出して、表面温度測定手段(17)による測定温度が露点以下となるように第2膨張弁(14)の開度を調整し、さらに、第2膨張弁(14)の開度を調整してから所定時間経過した後、表面温度測定手段(17)による測定温度が露点よりも高くなるように第2膨張弁(14)の開度を調整するようになっていることを特徴としている。
【0014】
これによっても、請求項1に記載の発明と同様の効果が得られる。なお、請求項3に記載の発明が請求項1と異なる点は、第2膨張弁(14)の開度を調整してから所定時間経過した後に、表面温度測定手段(17)による測定温度が露点よりも高くなるように第2膨張弁(14)の開度を調整する点であり、請求項3に記載の発明のその他の構成は請求項1に記載の発明と同じである。
【0015】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。本実施形態の車両用空調装置は、送風機2と、第1蒸発器3と、第2蒸発器4と、ヒータコア5と、エアミックスドア6と、これらを内部に収容する空調ケース1とを備えている。
【0017】
空調ケース1は、内部に空気通路を形成するものであり、例えば、車室内最前部の計器盤(図示せず)の内側部に配設される。空調ケース1の空気流れの最下流側には、図示しない吹出開口部と、吹出開口部を開閉する吹出モードドアとが設けられている。
【0018】
送風機2は、空調ケース1に空気を送風するものである。図1では、送風機2は、空調ケース1内の空気流れ最上流部に配置されており、送風機2として遠心式ファンが用いられている。なお、送風機2を空調ケース1とは別体の送風ケースに収容しても良い。
【0019】
第1蒸発器3は、送風機2から送風された空気A1と冷媒との間で熱交換させ、空気A1を冷却して除湿する熱交換器であり、チューブおよびフィン等を有している。第1蒸発器3は、空調ケース1内の送風機2の下流側に配置されており、送風機2から送風された空気A1の全てが第1蒸発器3を通過するようになっている。なお、送風機2から送風された空気A1の一部が第1蒸発器3を通過するようにしても良い。
【0020】
第2蒸発器4は、第1蒸発器3から供給される空気A2と冷媒との間で熱交換させて、空気A2を冷却する冷却用熱交換器であり、チューブおよびフィン等を有している。第2蒸発器4は、第1蒸発器3の空気流れ下流側に配置されている。
【0021】
第1蒸発器3と第2蒸発器4のチューブ、フィン等の表面には、図示しないが、水と接触すると活性酸素を発生する被膜が形成されている。この被膜は、電子供与重合体を成分として含む膜であり、第1、第2蒸発器3、4の表面に付着した凝縮水と接触すると、電子供与重合体から凝縮水中の溶存酸素に電子を供与し(溶存酸素を還元し)、活性酸素を発生させる。この活性酸素が凝縮水中に存在する細菌やカビや、第1、第2蒸発器3、4の表面に付着した有機物質等の異臭の発生源を分解する。本発明でいう活性酸素とは、通常の酸素に比べて著しく活性が高く化学反応を起こしやすい酸素をいい、具体的には、一重項酸素、スーパーオキシドアニオンラジカル(・O)、ヒドロキシラジカル(・OH)、スーパーヒドロキシラジカル(・OOH)および過酸化水素等をいう。また、電子供与重合体としては、例えば、ポリアニリン、ポリアニリンの誘導体、アニリンブラック、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセンなどのベンゼン縮合環化合物等を用いることができる。
【0022】
第1、第2蒸発器3、4は、圧縮機7、凝縮器8とともに、周知の冷凍サイクルをなす冷媒回路を構成する機器である。本実施形態の冷媒回路は、圧縮機7の冷媒吐出側に凝縮器8、受液器9が順に接続されており、受液器9と圧縮機7との間に、第1蒸発器3と第2蒸発器4とが並列に接続されている。すなわち、受液器9よりも冷媒流れ下流側の冷媒経路が、第1蒸発器3の冷媒入口に連通する第1蒸発器入口側冷媒経路11と、第2蒸発器4の冷媒入口に連通する第2蒸発器入口側冷媒経路12とに分岐しており、第1蒸発器3の冷媒出口に連通する第1蒸発器出口側冷媒経路15と、第2蒸発器4の冷媒出口に連通する第2蒸発器出口側冷媒経路16とが合流して圧縮機7に連通している。
【0023】
そして、冷媒回路中の第1蒸発器入口側冷媒経路11に第1膨張弁13が設けられ、冷媒回路中の第2蒸発器入口側冷媒経路12に第2膨張弁14が設けられている。第1膨張弁13は、第1蒸発器3に流入する冷媒を減圧するものであり、第2膨張弁14は、第2蒸発器4に流入する冷媒を減圧するものである。第1膨張弁13、第2膨張弁14としては、例えば、弁が電気的もしくは電磁的に変動することで開度が調整されるものが用いられる。なお、開度の調整には弁の開閉も含まれる。
【0024】
また、本実施形態では、冷媒として、高圧圧力が臨界圧力を超えないフロン系、HC系等の冷媒を用いている。
【0025】
このような冷凍サイクルでは、圧縮機7により冷媒が圧縮され、この圧縮機7から吐出されたガス冷媒が凝縮器8に導入され、この凝縮器8にてガス冷媒が外気と熱交換して放熱し凝縮する。凝縮器8を通過した冷媒を受液器9にて液相冷媒と気相冷媒とに分離するとともに、液相冷媒を受液器9内に貯留する。そして、第1、第2膨張弁13、14の両方が開状態のとき、受液器9からの液冷媒を第1、第2膨張弁13、14にて減圧し、この減圧後の冷媒を第1、第2蒸発器3、4において空気A1、A2から吸熱して蒸発させるようになっている。第1、第2蒸発器3、4において蒸発した後のガス冷媒は再度、圧縮機7に吸入され、圧縮される。
【0026】
なお、各機器は冷媒配管によって接続されており、冷媒配管によって冷媒経路が構成されている。冷凍サイクルを構成する各機器のうち、圧縮機7、凝縮器8、受液器9等の機器は、車両エンジンルーム(図示せず)内に配置されている。
【0027】
空調ケース1内のヒータコア5は、第1、第2蒸発器3、4を通過した空気を加熱する加熱用熱交換器であり、エンジン冷却水を熱源とするものである。ヒータコア5は、空調ケース1内の第2蒸発器4の空気流れ下流側に配置されている。
【0028】
エアミックスドア6は、ヒータコア5を通過した空気とヒータコア5を迂回した空気との混合割合を調整するものであり、例えば、空調ケース1内の第2蒸発器4の空気流れ下流側であってヒータコア5の上流側に配置されている。
【0029】
また、本実施形態の車両用空調装置では、空調ケース1内に、表面温度測定手段としての表面温度センサ17と、第1温湿度測定手段(温湿度測定手段)としての第1温湿度センサ18と、第2温湿度測定手段としての第2温湿度センサ19と、風量測定手段としての風量センサ20とが設けられている。
【0030】
表面温度センサ17は、第2蒸発器4の表面温度を測定するものであり、第2蒸発器4の表面に設置されている。
【0031】
第1温湿度センサ18は、第1蒸発器3から第2蒸発器4に供給される空気A2の温度と湿度とを測定するものであり、空調ケース1内の空気流れの第1蒸発器3と第2蒸発器4との間であって、第1蒸発器3の近傍に配置されている。例えば、第1蒸発器3のうち第1蒸発器3を流れる冷媒の出口近傍に第1温湿度センサ18が配置されている。
【0032】
第2温湿度センサ19は、第2蒸発器4を通過した空気A3の温度と湿度とを測定するものであり、空調ケース1内の空気流れの第2蒸発器4の下流側であって、第2蒸発器4の近傍に配置されている。例えば、第2蒸発器4のうち第2蒸発器4を流れる冷媒の出口近傍に第2蒸発器4が配置されている。
【0033】
第1、第2温湿度センサ18、19は、ともに温度センサと湿度センサとが一体となったものである。なお、別体の温度センサと湿度センサとを第1、第2温度測定手段として用いても良い。
【0034】
風量センサ20は、第1蒸発器3から第2蒸発器4に供給される空気A2の風量を測定するものであり、空調ケース1内の空気流れの第1蒸発器3と第2蒸発器4との間に配置されている。
【0035】
また、車両用空調装置は、制御手段としての電子制御装置(ECU)21を備えている。ECU21は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路等から構成され、予め設定されたプログラムに従って所定の演算処理を行い、圧縮機7、送風機2のモータ、エアミックスドア6、吹出モードドア等の各機器を駆動制御するものである。
【0036】
さらに、本実施形態では、ECU21は、第1膨張弁13および第2膨張弁14の開度を制御するようになっており、表面温度センサ17、第1温湿度センサ18、第2温湿度センサ19、風量センサ20の測定結果が入力されるようになっている。そして、ECU21は、第2蒸発器4の表面の凝縮水量を調整する下記の凝縮水量調整制御を実行するようになっている。
【0037】
この凝縮水量調整制御のフローチャートを図2に示す。図2に示す一連の制御は、エアコンスイッチ(A/C)がオンのとき、すなわち、送風機2および圧縮機7の運転時に繰り返し実行され、エアコンスイッチ(A/C)がオフのとき、すなわち、送風機2および圧縮機7の運転停止時に終了する。
【0038】
ステップS1では、第1膨張弁13と第2膨張弁14とを開状態とする。例えば、エアコンスイッチ(A/C)がオンになったとき、第1膨張弁13と第2膨張弁14とが閉状態であれば開状態とし、第1膨張弁13と第2膨張弁14とが開状態であればその状態を維持する。
【0039】
これにより、第1、第2蒸発器3、4の両方に冷媒が流れ、第1蒸発器3では冷媒によって第1蒸発器3が冷えて送風機1から供給された空気A1が除湿され、除湿された空気A2が第2蒸発器4に供給される。第2蒸発器4では、この除湿された空気A2がさらに冷却される。
【0040】
次に、ステップS2で、第1温湿度センサ18によって測定された第1蒸発器3から第2蒸発器2に供給される空気A2の温度および湿度の情報信号を読み取る。
【0041】
そして、ステップS3で、第1温湿度センサ18によって測定された温度および湿度に基づいて、第1蒸発器3から第2蒸発器2に供給される空気A2の露点を算出する。この算出方法としては一般的な方法を用いることができる。また、本実施形態では、第1温湿度センサ18を第1蒸発器3の冷媒出口近傍に設け、冷却性能が最も低い箇所で測定することで、露点の算出精度を高めている。
【0042】
続いて、ステップS4で、算出した露点が0℃よりも大きいか否かを判定する。これは、第2蒸発器4は、通常、フロスト防止等の観点より、常時、表面温度が0℃以上となるように制御されていることから、算出した露点が0℃以下であれば、第2蒸発器4の表面温度が露点よりも高いので、第2蒸発器4の表面には凝縮水が生成しないからである。したがって、算出した露点が0℃以下の場合、凝縮水量を調整する必要がないので、図2に示す一連の制御を終了し、再び、ステップS1に進む。一方、算出した露点が0℃よりも高ければ、第2蒸発器4の表面温度によっては凝縮水が発生するので、ステップS5に進む。
【0043】
ステップS5では、第2蒸発器4の表面温度が算出した露点以下になるように、第2膨張弁14の開度を調整する。ここでは、表面温度センサ17が測定した温度情報を繰り返し読み取りながら、例えば、第2膨張弁14の開度を大きくし、このステップS5以前より、第2蒸発器4の表面温度が算出した露点以下であれば第2膨張弁14の開度を変更しない。このように、第2膨張弁14の開度を調整するとは、第2膨張弁14の開度を大きくする側に変更するだけでなく、開度を維持することも含む意味である。
【0044】
これにより、第2蒸発器4の表面温度を空気A2の露点以下として、第2蒸発器4の表面に凝縮水を生成させる。
【0045】
続いて、ステップS6では、表面温度センサ17、第2温湿度センサ19および風量センサ20から入力された各センサによる測定結果の情報信号を読み込む。
【0046】
続いて、ステップS7では、ステップS6で読み込んだ情報信号と、ステップS3で算出した露点とに基づいて、第2蒸発器4の表面で発生する凝縮水の量を算出する。この凝縮水の算出方法としては一般的な算出方法を用いることができる。また、本実施形態では、第2温湿度センサ19を第2蒸発器4の冷媒出口近傍に設け、冷却性能が最も低い箇所で測定することで、凝縮水の算出精度を高めている。
【0047】
続いて、ステップS8では、算出した凝縮水の量が所定量よりも多いか否かを判定する。この所定量とは、空調運転の停止後に第2蒸発器4の表面を自然乾燥させることが可能となるように、1年間における季節、月等の各時期の平均温度、平均湿度等の環境条件に基づいて実測値により設定されるものである。
【0048】
そして、算出した凝縮水の量が所定量よりも少なければ、第2蒸発器4の表面の凝縮水量を特に調整しなくても、空調運転の停止後に第2蒸発器4の表面を自然乾燥させることが可能なので、図2に示す一連の制御を終了し、再び、ステップS1に進む。一方、算出した凝縮水の量が所定量よりも多い場合、ステップS9に進む。
【0049】
ステップS9では、第2蒸発器4の表面温度がステップS3で算出した露点よりも高くなるように第2膨張弁14の開度を調整する。ここでは、表面温度センサ17が測定した温度情報を繰り返し読み取りながら、第2膨張弁14の開度を大きい側から小さい側に変更することで、第2蒸発器4の表面温度が露点以下から露点よりも高い温度に変更されるようにする。
【0050】
これにより、第2蒸発器4の表面温度が空気A2の露点よりも高い温度となるので、第2蒸発器4の表面での凝縮水の生成が停止する。このようにして、図2に示す一連の制御が終了し、再び、ステップS1に進む。
【0051】
以上の説明の通り、本実施形態では、第2蒸発器4の空気流れ上流側に第1蒸発器3を配置し、空調運転時に、ECU21がステップS1〜S5を実行することによって、第1、第2蒸発器3、4の両方に冷媒が流れる状態として、第1蒸発器3によって除湿された空気A2を第2蒸発器4に供給しているので、第2蒸発器4の表面温度を露点以下として第2蒸発器4に凝縮水を生成させても、生成する凝縮水が多くなりすぎることを抑制できる。
【0052】
さらに、ECU21がステップS6〜S9を実行することによって、ステップS5によって第2蒸発器4の表面に生成させた凝縮水の量が、空調運転停止後に第2蒸発器4の表面が自然乾燥できない程度に達しそうな場合には、第2蒸発器4を流れる冷媒の流量を調整して、第2蒸発器4の表面温度を露点よりも高くすることで、第2蒸発器4の表面での凝縮水の生成を停止させ、凝縮水の量が多くなりすぎることを抑制できる。
【0053】
そして、ステップS9によって、第2蒸発器4の表面での凝縮水の生成を停止させたときでは、第1蒸発器3によって除湿された空気A2が第2蒸発器4に供給されているので、この空気A2によって第2蒸発器4の表面に多く存在する凝縮水を徐々に蒸発させることができ、第2蒸発器4の表面に存在する凝縮水の量を減少させることができる。
【0054】
本実施形態によれば、このようにして、第2蒸発器4の表面に生成する凝縮水の量を調整しているので、夏場のように、湿度の高い空気が従来の車両用空調装置の蒸発器に供給されて、この蒸発器の表面に大量の凝縮水が発生するような環境下であっても、空調運転の停止後に第2蒸発器4の表面を自然乾燥させることが容易となり、第2蒸発器4の被膜による活性酸素の無駄な発生を抑制できる。
【0055】
また、本実施形態では、空調運転時に、第2蒸発器4の表面を乾燥させるのではなく、空調運転の停止後に自然乾燥可能な量の凝縮水を第2蒸発器4の表面に生成しているので、第2蒸発器4の表面に形成した被膜によって、活性酸素を発生させることができる。これによって、冷却用熱交換器の表面に付着した臭い成分や凝縮水中に発生した臭い成分を分解することができる。特に、本実施形態では、凝縮水の生成量を少量に抑えているので、凝縮水の生成量が大量の場合よりも、凝縮水中の活性酸素濃度を高めることができ、臭い成分と活性酸素の接触効率を向上させることができる。
【0056】
(第2実施形態)
図3に本実施形態におけるECU21が実行する凝縮水量調整制御のフローチャートを示す。本実施形態は、第1実施形態で説明した図2中のステップS5〜S9を変更している。なお、ステップS11〜S14は、それぞれ、図2中のステップS1〜S4と同じである。
【0057】
本実施形態では、ECU21は、時間計測手段としての図示しないタイマを有しており、ステップS15で、第2膨張弁14の開度を調整すると同時にタイマを作動させて、時間計測を開始する。ここでの第2膨張弁14の開度調整は、図2中のステップS5と同じである。
【0058】
続いて、ステップS16で、タイマの計測時間が所定時間Tを経過したか否かを判定する。この計測時間は、ステップS15の実行開始からの時間、すなわち、第2膨張弁14の開度を調整してからの時間である。
【0059】
また、所定時間Tは、第2蒸発器4の表面温度を第1蒸発器3によって除湿された空気A2の露点以下としてから第2蒸発器4の表面に生成する凝縮水の量が多くなりすぎないように設定される時間である。この所定時間Tは、空調運転の停止後に第2蒸発器4の表面を自然乾燥させることが可能な量を超えないように実測して設定され、例えば、15〜30分とすることができる。なお、第1蒸発器3によって除湿された空気A2の露点や、季節、月等の時期等に応じて、所定時間Tが選択されるように設定しても良い。
【0060】
そして、所定時間Tが経過するまで、ステップS16を繰り返し実行し、所定時間Tが経過した場合に、ステップS17に進む。このステップS17は、図2中のステップS9と同じである。
【0061】
本実施形態のように、ステップS16で、所定時間Tを超えたか否かを判定することによって、第2蒸発器4の表面に生成する凝縮水の量が多いか否かを推定するようにしても良い。本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0062】
(他の実施形態)
(1)第1実施形態では、ステップS7で、表面温度センサ17、第2温湿度センサ19および風量センサ20の検出結果と、算出した露点とに基づいて、第2蒸発器4の表面で発生する凝縮水の量を算出したが、風量センサ20の検出結果を省略しても良い。ただし、風量センサ20の検出結果を用いた方が好ましい。算出精度を高められるからである。
【0063】
(2)第1、第2実施形態では、ステップS4、S14での判定において、算出した露点が0℃以下の場合、図2に示す一連の制御を終了していたが、第2膨張弁14を閉じ、第2蒸発器4に冷媒を流さず、第1蒸発器3のみを用いた冷凍サイクルが稼動している状態としても良い。なお、第2膨張弁14を閉じた後、ステップS1に戻る。
【0064】
(3)第1、第2実施形態では、ステップS9、S17で第2膨張弁14の開度を調整する際に、第2膨張弁14の開度を大きい側から小さい側に変更させていたが、第2膨張弁14を閉じる制御をしても良い。これによっても、第2膨張弁14が閉まると、第2蒸発器4に冷媒が入らなくなり、第1蒸発器3から供給される空気A2との熱交換により、第2蒸発器4の表面温度は空気A2と同じ温度まで上昇するので、第2蒸発器4での凝縮水の生成を停止させることができる。
【0065】
(4)第1、第2実施形態では、空調運転時に、常に、第1膨張弁1を開状態として、第1蒸発器3による除湿を行っていたが、冬場等の第2蒸発器4で凝縮水が大量に発生しない外気条件下であれば、第1膨張弁1を閉じて第1蒸発器3による除湿を停止しても良い。
【0066】
(5)上記した各実施形態では、第1蒸発器3の表面にも、水と接触すると活性酸素を発生する被膜を形成していたが、この被膜を省略しても良い。
【0067】
(6)上述の各実施形態では、冷媒として高圧圧力が臨界圧力を超えないフロン系、HC系等の冷媒を用いる場合を説明したが、冷媒として二酸化炭素のように高圧圧力が臨界圧力を超える冷媒を用いても良い。この場合、凝縮器8は冷媒を放熱させる放熱器として機能する。
【0068】
(7)上述の各実施形態を実施可能な範囲で任意に組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の断面構成を示す図である。
【図2】図1中のECU21が実行する凝縮水量調整制御のフローチャートである。
【図3】第2実施形態におけるECU21が実行する凝縮水量調整制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
3 第1蒸発器
4 第2蒸発器
13 第1膨張弁
14 第2膨張弁
17 表面温度センサ
18 第1温湿度センサ
19 第2温湿度センサ
20 風量センサ
21 電子制御装置(ECU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(7)、凝縮器(8)とともに冷凍サイクルをなす冷媒回路を構成し、空調ケース(1)内を流れる空気と冷媒との間で熱交換させる第1蒸発器(3)と、
前記冷媒回路内で前記第1蒸発器(3)に対して並列に接続され、前記第1蒸発器(3)から供給される空気と冷媒との間で熱交換させる第2蒸発器(4)と、
前記冷媒回路中に設けられ、前記第1蒸発器(3)に流入する冷媒を減圧する第1膨張弁(13)と、
前記冷媒回路中に設けられ、前記第2蒸発器(4)に流入する冷媒を減圧する第2膨張弁(14)と、
前記第2蒸発器(4)の表面温度を測定する表面温度測定手段(17)と、
前記第1蒸発器(3)から前記第2蒸発器(4)に供給される空気(A2)の温度と湿度とを測定する第1温湿度測定手段(18)と、
前記第2蒸発器(4)を通過した空気(A3)の温度と湿度とを測定する第2温湿度測定手段(19)と、
前記第1膨張弁(13)および前記第2膨張弁(14)の開度を制御する制御手段(21)とを備える車両用空調装置であって、
前記第2蒸発器(4)の表面には水と接触すると活性酸素を発生する被膜が形成されており、
前記制御手段(21)は、
送風機(2)および前記圧縮機(7)の運転時に前記第1、第2膨張弁(13、14)を開状態とし、
前記第1、第2膨張弁(13、14)が開状態のときに、前記第1温湿度測定手段(18)の測定結果に基づいて前記第1蒸発器(3)から前記第2蒸発器(4)に供給される空気(A2)の露点を算出して、前記表面温度測定手段(17)による測定温度が前記露点以下となるように前記第2膨張弁(14)の開度を調整し、
さらに、前記露点以下となるように前記第2膨張弁(14)の開度を調整したことによって前記第2蒸発器(4)の表面に生成する凝縮水の量を、少なくとも前記表面温度測定手段(17)および前記第2温湿度測定手段(19)の測定結果と前記露点とに基づいて算出し、算出した前記凝縮水の量が所定量を超える場合に、前記表面温度測定手段(17)による測定温度が前記露点以下から前記露点よりも高い温度に変更されるように前記第2膨張弁(14)の開度を調整するようになっていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記第1蒸発器(3)から前記第2蒸発器(4)に供給される空気(A2)の風量を測定する風量測定手段(20)を備え、
前記制御手段(21)は、前記露点以下となるように前記第2膨張弁(14)の開度を調整したことによって前記第2蒸発器(4)の表面に生成する凝縮水の量を、前記表面温度測定手段(17)、前記第2温湿度測定手段(19)および前記風量測定手段(20)の測定結果と前記露点とに基づいて算出することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
圧縮機(7)、凝縮器(8)とともに冷凍サイクルをなす冷媒回路を構成し、空調ケース(1)内を流れる空気と冷媒との間で熱交換させる第1蒸発器(3)と、
前記冷媒回路内で前記第1蒸発器(3)に対して並列に接続され、前記第1蒸発器(3)から供給される空気と冷媒との間で熱交換させる第2蒸発器(4)と、
前記冷媒回路中に設けられ、前記第1蒸発器(3)に流入する冷媒を減圧する第1膨張弁(13)と、
前記冷媒回路中に設けられ、前記第2蒸発器(4)に流入する冷媒を減圧する第2膨張弁(14)と、
前記第2蒸発器(4)の表面温度を測定する表面温度測定手段(17)と、
前記第1蒸発器(3)から前記第2蒸発器(4)に供給される空気(A2)の温度と湿度とを測定する温湿度測定手段(18)と、
前記第1膨張弁(13)および前記第2膨張弁(14)の開度を制御する制御手段(21)とを備える車両用空調装置であって、
前記第2蒸発器(4)の表面には水と接触すると活性酸素を発生する被膜が形成されており、
前記制御手段(21)は、
送風機(2)および前記圧縮機(7)の運転時に、前記第1、第2膨張弁(13、14)を開状態とし、
前記第1、第2膨張弁(13、14)が開状態の場合に、前記温湿度測定手段(18)の測定結果に基づいて前記第1蒸発器(3)から前記第2蒸発器(4)に供給される空気(A2)の露点を算出して、前記表面温度測定手段(17)による測定温度が前記露点以下となるように前記第2膨張弁(14)の開度を調整し、
さらに、前記露点以下となるように前記第2膨張弁(14)の開度を調整してから所定時間経過した後、前記表面温度測定手段(17)による測定温度が前記露点よりも高くなるように前記第2膨張弁(14)の開度を調整するようになっていることを特徴とする車両用空調装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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