説明

車両用空調装置

【課題】暖房時の除湿において、無駄な電力を消費せず窓、特にフロントガラスの曇りを抑制できるような制御が行える車両用空調装置を提供することを目的とする。
【解決手段】車内の空気温度を検知する内気温検知手段として温度センサ5と、車外の空気温度を検知する外気温検知手段として温度センサ6を備え、各温度センサで検知した温度と設定湿度あるいは湿度センサで検知した湿度を用いて、車内の露点温度は算出でき、外気温との比較により、窓、特にフロントガラスの曇りの有無を判断することにより、暖房時に外気が高湿で窓、特にフロントガラスが曇る恐れがある時のみ、第1車内熱交換器10で除湿してから、第2車内熱交換器11で加熱できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房の熱源の得られにくい電気自動車やハイブリッド車等に使用される車室内を暖房可能な車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車やハイブリッド車のエアコンには、コンプレッサをモータで駆動するクーラと電気ヒータとによるシステムが一部に用いられている。
【0003】
最近では、暖房時の省電力の観点からヒートポンプサイクルによるシステムが主流となっており、電動コンプレッサを駆動制御した冷凍サイクルを用いて、冷房、暖房、除湿などを行うものがある(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
図3に四方弁を用いたヒートポンプシステムの例を示す。冷房時の冷媒はコンプレッサ101から吐出され四方弁102により室外熱交換器103に流して放熱後、 冷房用絞り104で減圧しエバポレータ(蒸発器)105で吸熱しコンプレッサ101に戻る冷凍サイクルである。
【0005】
暖房時は四方弁102を切り替え、冷媒をコンデンサ106に流して放熱し、室外熱交換器103は蒸発器として作動させる。また除湿をする場合はコンデンサ106、 暖房用絞り107、室外熱交換器103、冷房用絞り104、エバポレータ105などの順に冷媒を流し、空気を冷却除湿した後に過熱を行う、いわゆるリヒート方式としている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】電気自動車ハンドブック編集委員会 編著「電気自動車ハンドブック」丸善株式会社出版(図5.151)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の車両用空調装置においては、リヒート方式で暖房時の除湿可能なヒートポンプシステムの構成は開発されているが、ヒートポンプシステムの特性を生かし、特に暖房時の除湿において、無駄な電力を消費せず窓、特にフロントガラスの曇りを抑制できるような制御は行われていないという課題を有していた。
【0008】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、暖房時の除湿において、無駄な電力を消費せず窓、特にフロントガラスの曇りを抑制できるような制御が行える車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために、本発明は、外気を導入する外気導入口から車内に空調風を吹き出す空調吹出口にかけての給気送風路と、内気を導入する内気導入口から内気を車外へ排出する内気排出口にかけての内気排出路と、前記給気送風路に前記外気導入口から前記空調吹出口に向かう空気流を発生させる外気送風手段と、前記内気排出路に前記内気導入口から前記内気排出口に向かう空気流を発生させる内気送風手段と、前記給気送風路を流れる空気を冷却または加熱する第1車内熱交換器および第2車内熱交換器と、冷房運転時凝縮器、暖房運転時蒸発器として外気と熱交換する車外熱交換器と、前記第1車内熱交換器、前記第2車内熱交換器および前記車外熱交換器と圧縮機の間で冷媒を循環させるヒートポンプと、前記内気排出路を流れる内気と前記外気導入口から導入される外気とを熱交換させて熱回収する熱回収器と、車内の空気温度を検知する内気温検知手段と、車外の空気温度を検知する外気温検知手段を備え、前記内気温検知手段で検知した温度と前記外気温検知手段で検知した温度を用いて、暖房運転時の除湿を制御するものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車外熱交換器と第1車内熱交換器に直列に冷媒を流すという構成にし、車内の空気温度を検知する内気温検知手段と、車外の空気温度を検知する外気温検知手段を備え、前記内気温検知手段で検知した温度と外気温検知手段で検知した温度を用いて、暖房運転時の除湿を制御することにより、暖房時に外気が高湿で窓、特にフロントガラスが曇る恐れがある時のみ、第1車内熱交換器で除湿してから、第2車内熱交換器で加熱できるので、無駄な電力を消費せず窓、特にフロントガラスの曇りを抑制するという効果を得ることができる。
【0011】
さらに、内気排出路を流れる内気と外気導入口から導入される外気とを熱交換させて熱回収する熱回収器とを備えた構成にしたことにより、空調された車内空気から熱回収を行い、導入する外気を車内環境に近づけることができるので、車内の空調負荷を低減し、省エネ効果のある車両用空調装置を提供するという効果を得ることができる。
【0012】
また、外気導入口を複数設け、空調された車内空気から熱回収を行わず、外気を直接第1車内熱交換器に送れるという構成にしたことにより、窓、特にフロントガラスの曇りをより抑制するという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1の車両用空調装置の概略構成図
【図2】本発明の実施の形態2の熱回収器を示すイメージ図
【図3】従来の車両用空調装置のヒートポンプシステムの概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1に示すように、車両用空調装置は、外気、内気の送風路とヒートポンプシステムで構成されている。
【0016】
外気、内気の送風路には、外気を導入する外気導入口1から車内に空調風を吹き出す空調吹出口2にかけての給気送風路3と、内気導入口4から内気排出口7に向かい内気を車外へ排出する内気排出路8と、給気送風路3に外気導入口1から空調吹出口2に向かう空気流を発生させる外気送風手段9aと、内気排出路8に内気導入口4から内気排出路8に向かう空気流を発生させる内気送風手段9bと、給気送風路3を流れる空気を冷却または加熱する第1車内熱交換器10および第2車内熱交換器11が設けられている。
【0017】
また、内気導入口4には車内の空気温度を検知する内気温検知手段としての温度センサ5、車外の空気温度を検知する外気温検知手段としての温度センサ6が設けられている。
【0018】
熱源として、冷房運転時凝縮器、暖房運転時蒸発器として外気と熱交換する車外熱交換器12が、給気送風路3とは別の送風路に設けられ、第1車内熱交換器10、第2車内熱交換器11および車外熱交換器12と圧縮機13の間で冷媒を循環させるヒートポンプを備えている。
【0019】
ここでヒートポンプの構成を説明する。
【0020】
圧縮機13の高圧冷媒吐出側に四方弁14、四方弁14と車外熱交換器12の間に逆止弁15、車外熱交換器12と第1車内熱交換器10の間に絞り弁16(図に示すように膨張弁16aと電磁弁16bを内蔵)、第2車内熱交換器11と車外熱交換器12の間に逆止弁17と絞り弁18(図に示すように膨張弁18aと電磁弁18bを内蔵)を設け、ヒートポンプを構成している。ここで本実施の形態では、前述の外気温検知手段としての温度センサ6を、車外熱交換器12の吸込み側に設けている。
【0021】
そして、内気排出路8を流れる内気から吸熱し、外気導入口1から導入される外気へ放熱する熱回収器19を備えている。この熱回収器19は顕熱と潜熱の両方を熱交換する全熱交換器である。
【0022】
上記構成において、表1に記載の各運転モードについて説明する。
【0023】
【表1】

【0024】
まず冷房運転時の冷媒の流れは、圧縮機13→四方弁14→逆止弁15→車外熱交換器12→絞り弁16→第1車内熱交換器10→圧縮機13で、第2車内熱交換器11には冷媒は流さない。
【0025】
このような冷媒の流れの中、外気は外気送風手段9aの運転により外気導入口1から導入され、熱回収器19で外気より温度の低い内気に冷やされ、給気送風路3を通り、蒸発器として作用する第1車内熱交換器10通過時に冷媒の気化熱で冷却され、冷媒の流れていない第2車内熱交換器11を通り、空調吹出口2からフロントガラスや運転者に冷風を吹き出す。吹出された冷風は、内気となり車内を循環し、内気送風手段9bの運転により内気導入口4から内気排出路8中の熱回収器19で外気に暖められ、内気排出口7から車外へ排出される。
【0026】
このように外気より温度の低い内気をそのまま排出せず、熱回収器19で外気と熱交換させてから排出するようにしたので、第1車内熱交換器10での冷媒による冷却負荷が減り圧縮機13の消費電力を低減できる。
【0027】
次に暖房運転時の冷媒の流れは、圧縮機13→四方弁14→第2車内熱交換器11→絞り弁18→車外熱交換器12→電磁弁16b→圧縮機13で、第1車内熱交換器10には冷媒は流さない。
【0028】
このような冷媒の流れの中、外気は外気送風手段9aの運転により外気導入口1から導入され、熱回収器19で外気より温度の高い内気に暖められ、給気送風路3を通り、冷媒の流れていない第1車内熱交換器10を通り、凝縮器として作用する第2車内熱交換器11通過時に冷媒の凝縮熱で加熱され、空調吹出口2からフロントガラスや運転者に温風を吹き出す。吹出された温風は、内気となり車内を循環し、内気送風手段9bの運転により内気導入口4から内気排出路8中の熱回収器19で外気に冷やされ、内気排出口7から車外へ排出される。
【0029】
このように外気より温度の高い内気をそのまま排出せず、熱回収器19で外気と熱交換させてから排出するようにしたので、第2車内熱交換器11での冷媒による加熱負荷が減り圧縮機13の消費電力を低減できる。
【0030】
また暖房時窓が曇る等除湿が必要な場合(表1では第一除湿暖房)、例えば結露検知手段として温度センサ6で検知した外気の温度が温度センサ5で検知した車内室温(または車内の空調の設定温度)の露点温度より低い場合、車外熱交換器12の後、第1車内熱交換器10にも冷媒を流し蒸発器として作用させ、第1車内熱交換器10通過時に外気を冷却除湿することにより、低湿な温風を空調吹出口2からフロントガラスや運転者に吹き出すことができる。
【0031】
ここで車内の露点温度は、車内の湿度により変化するが、暖房時の一般的な相対湿度50〜60%と設定することにより、車内の露点温度は算出でき、外気温との比較により、窓の曇りの有無を判断できる。また、車内の湿度を検知する湿度検知手段として湿度センサ(図示なし)を内気温検知手段としての温度センサ5の近傍に設けて検知した湿度も用いて車内の露点温度を算出することにより、窓の曇りの有無をより正確に判断できる。
【0032】
このとき、窓の曇りを早く解消したい場合、車外熱交換器12より第1車内熱交換器10での冷媒の蒸発量を多くすればよい。すなわち、車外熱交換器12用の送風機20を停止または送風量を減少させることにより、第1車内熱交換器10での冷媒の蒸発量を多くでき、除湿能力を増加させることができる。
【0033】
さらに上記の除湿をしても窓が曇る場合(表1では第二除湿暖房)、外気導入口1をダンパ21で閉じ、外気導入口1aのダンパ21aを開き、熱回収器19を通らない外気導入口1aから外気を導入することにより、熱回収器19での内気からの湿度回収を行わないため、より低湿な温風を空調吹出口2からフロントガラスや運転者に吹き出すことができる。
【0034】
また、外気が高湿、すなわち、外気の絶対湿度が内気の絶対湿度より高い場合には、内気導入口4のダンパ22、外気導入口1のダンパ21、外気導入口1aのダンパ21aを閉じ、通常閉じている内気導入口4aのダンパ22aを開けることによる内気循環を断続的に行うことによっても、第1車内熱交換器10での除湿負荷を減らすことができ、無駄な電力を消費せず窓、特にフロントガラスの曇りを抑制できる。
【0035】
以上のように、このような構成によれば、車内の空気温度を検知する内気温検知手段として温度センサ5と、車外の空気温度を検知する外気温検知手段として温度センサ6を備え、各温度センサで検知した温度と設定湿度あるいは湿度センサで検知した湿度を用いて、車内の露点温度は算出でき、外気温との比較により、窓、特にフロントガラスの曇りの有無を判断することにより、暖房時に外気が高湿で窓、特にフロントガラスが曇る恐れがある時のみ、第1車内熱交換器で除湿してから、第2車内熱交換器で加熱できるので、無駄な電力を消費せず窓、特にフロントガラスの曇りを抑制するという効果を得ることができる。
【0036】
(実施の形態2)
次に図2に、実施の形態1で説明した熱回収器19の別の形態を示す。
【0037】
図2に示すように、熱回収器29は顕熱のみを回収(熱交換)する顕熱部29aと全熱を回収(熱交換)する全熱部29bにより構成され、表1で示した各運転モードにより、顕熱部29a、全熱部29bを使い分けることができる。
【0038】
上記構成において、表1で示した各運転モードにおける熱回収器29の使い分けを説明する。
【0039】
冷房運転時は外気の湿度を車内に入れない方が冷房負荷を低減できるので、全熱部29bのみを使用するのが好ましく、外気が低湿の場合、顕熱部29aと全熱部29b両方を使用してもよい。
【0040】
暖房運転時は、外気が低湿の場合、顕熱部29aと全熱部29b両方を使用するのが好ましく、外気が高湿の場合や窓が曇る等除湿が必要な場合(表1では第一除湿暖房)、顕熱部29aのみを使用するのが好ましい。すなわち、表1での第二除湿暖房時にも、熱回収器29を使用することができ、外気より温度の高い内気をそのまま排出せず、熱回収器19で外気と熱交換させてから排出するようにしたので、第2車内熱交換器11での冷媒による加熱負荷が減り圧縮機13の消費電力を低減できる。
【0041】
なお、本実施の形態では、図2のように顕熱部29aと全熱部29bをイメージで表したが、顕熱部29aと全熱部29bを使い分けるには風路を切替えるダンパが必要となる。
【0042】
また、顕熱部29aと全熱部29b両方に流す場合と、どちらか一方のみ流す場合では、圧損の違いから風量も変わるため、風量を確保したい場合は、顕熱部29aと全熱部29b両方に流すのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明にかかる車両用空調装置は、空調された車内空気から熱回収を行い、導入する外気を車内環境に近づけることができるので、車内の空調負荷の低減を可能とするものであるので、暖房の熱源の得られにくい電気自動車やハイブリッド車等に使用される車室内を暖房可能な車両用空調装置として有用である。
【符号の説明】
【0044】
1、1a 外気導入口
2 空調吹出口
3 給気送風路
4、4a 内気導入口
5、6 温度センサ
7 内気排出口
8 内気排出路
9a 外気送風手段
9b 内気送風手段
10 第1車内熱交換器
11 第2車内熱交換器
12 車外熱交換器
13 圧縮機
14 四方弁
15、17 逆止弁
16、18 絞り弁
16a、18a 膨張弁
16b、18b 電磁弁
19、29 熱回収器
20 送風機
21、21a、22、22a ダンパ
29a 顕熱部
29b 全熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を導入する外気導入口から車内に空調風を吹き出す空調吹出口にかけての給気送風路と、
内気を導入する内気導入口から内気を車外へ排出する内気排出口にかけての内気排出路と、
前記給気送風路に前記外気導入口から前記空調吹出口に向かう空気流を発生させる外気送風手段と、
前記内気排出路に前記内気導入口から前記内気排出口に向かう空気流を発生させる内気送風手段と、
前記給気送風路を流れる空気を冷却または加熱する第1車内熱交換器および第2車内熱交換器と、
冷房運転時凝縮器、暖房運転時蒸発器として外気と熱交換する車外熱交換器と、
前記第1車内熱交換器、前記第2車内熱交換器および前記車外熱交換器と圧縮機の間で冷媒を循環させるヒートポンプと、
前記内気排出路を流れる内気と前記外気導入口から導入される外気とを熱交換させて熱回収する熱回収器と、
車内の空気温度を検知する内気温検知手段と、車外の空気温度を検知する外気温検知手段を備え、
前記内気温検知手段で検知した温度と前記外気温検知手段で検知した温度を用いて、暖房運転時の除湿を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
車内の湿度を検知する湿度検知手段を設けた請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
熱回収器を通らない外気導入口を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
熱回収器は、全熱および/または顕熱を回収することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかにに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
内気導入口に切替ダンパを設け、内気循環と外気導入を切替えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかにに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−1036(P2012−1036A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135792(P2010−135792)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】