説明

車両用空調装置

【課題】複合型熱交換器にて複数種の流体の適切な熱交換を実現することで、複数種の流体それぞれの有する熱量を有効に活用可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】冷媒と送風空気とを熱交換させる第1熱交換部131、およびエンジンEGの冷却水と送風空気とを熱交換させる第2熱交換部132を有する複合型熱交換器13を、第1熱交換部131を流れる吐出冷媒と第2熱交換部132を流れる冷却水との熱移動が可能なように一体化する。そして、複合型熱交換器13の第1熱交換部131へ流入する圧縮機11吐出冷媒の冷媒吐出能力、第2熱交換部132への冷却水の流入量、複合型熱交換器13へ送風する送風空気の送風量のうち、少なくとも1つを調整することで、複合型熱交換器13における送風空気、吐出冷媒、および冷却水の間の適切な熱交換を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種の流体間で熱交換可能に構成された複合型熱交換器を備える車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数種の流体間で熱交換可能に構成された複合型熱交換器を備える車両用空調装置が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
具体的には、特許文献1には、圧縮機から吐出された吐出冷媒(高圧冷媒)を車室内に送風する送風空気(車室内送風空気)と熱交換させて車室内送風空気を加熱する暖房用熱交換部、および燃焼式温水ヒータにて加熱されたブライン(熱媒体)と車室内送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱するヒータコア部が一体的に構成された複合型熱交換器を備える車両用空調装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、特許文献1と同様の暖房用熱交換部、およびエンジンを冷却するエンジン冷却水(熱媒体)と車室内送風空気とを熱交換させて車室内送風空気を加熱するヒータコア部が一体的に構成された複合型熱交換器を備える車両用空調装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3275414号公報
【特許文献2】特許第4311115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2のいずれも、車室内送風空気よりも高い温度の高圧冷媒や熱媒体が有する熱量を複合型熱交換器にて放熱させて、車室内送風空気を加熱する車両用空調装置を開示しているにすぎない。つまり、特許文献1、2に記載の車両用空調装置では、複合型熱交換器を単に高圧冷媒や熱媒体が有する熱量により車室内送風空気を加熱する手段として機能させるだけで、高圧冷媒と熱媒体とを積極的に熱交換させるための手段として機能させておらず、各流体が有する熱量を相互に有効活用することができなかった。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、複合型熱交換器にて複数種の流体の適切な熱交換を実現することで、複数種の流体それぞれの有する熱量を有効に活用可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車室内へ空気を送風する送風手段(32a)と、送風手段(32a)から送風された送風空気の空気通路を形成するケーシング(31)と、ケーシング(31)の内部に配置され、冷凍サイクル(10)における冷媒を圧縮する圧縮機構(11a)から吐出された吐出冷媒と送風空気とを熱交換させる第1熱交換部(131)、および作動時に発熱を伴う外部熱源を温度調整する熱媒体と送風空気とを熱交換させる第2熱交換部(132)を有する複合型熱交換器(13)と、複合型熱交換器(13)へ送風する送風空気の送風量を調整する送風量調整手段(35、32b)と、圧縮機構(11a)の冷媒吐出能力を変更する吐出能力変更手段(11b)と、熱媒体を圧送する熱媒体圧送手段(41a)と、第2熱交換部(132)に流入する熱媒体の流入量を調整する熱媒体流量調整手段(41b、42)と、を備え、複合型熱交換器(13)は、第1熱交換部(131)を流れる吐出冷媒と第2熱交換部(132)を流れる熱媒体との熱移動が可能なように、第1熱交換部(131)および第2熱交換部(132)が一体化され、送風空気の送風量、圧縮機構(11a)の冷媒吐出能力、および熱媒体の流入量のうち、少なくとも1つを調整することで、複合型熱交換器(13)における送風空気、吐出冷媒、および熱媒体の間の熱交換量が変更されることを特徴とする。
【0009】
これによれば、複合型熱交換器(13)における送風空気と圧縮機構(11a)からの吐出冷媒との熱交換量、および送風空気と熱媒体との熱交換量に加えて、吐出冷媒と熱媒体との熱交換量を調整することができ、複数種の流体間の適切な熱交換を実現することができるので、複数種の流体それぞれの有する熱量を有効に活用することが可能となる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用空調装置において、第1熱交換部(131)は、吐出冷媒が流れる複数の冷媒用チューブ(131a)を有し、第2熱交換部(132)は、熱媒体が流れる複数の熱媒体用チューブ(132a)を有し、冷媒用チューブ(131a)の外表面および熱媒体用チューブ(132a)の外表面には、送風空気が流れる送風空気通路(133)が形成され、複数の冷媒用チューブ(131a)および複数の熱媒体用チューブ(132a)の一方のうち少なくとも1つは、他方の間に配置され、冷媒用チューブ(131a)および熱媒体用チューブ(132a)は、互いに離間して配置され、冷媒用チューブ(131a)および熱媒体用チューブ(132a)の間に、送風空気通路(133)が形成されていることを特徴とする。
【0011】
これによれば、冷媒用チューブ(131a)と熱媒体用チューブ(132a)との間に送風空気が流れる送風空気通路(133)を形成しているので、送風空気を吐出冷媒および熱媒体の双方と熱交換可能な複合型熱交換器(13)を具体的かつ容易に実現することができる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の車両用空調装置において、冷媒用チューブ(131a)の外表面および熱媒体用チューブ(132a)の外表面には、双方の熱交換部(131、132)における熱交換を促進すると共に、冷媒用チューブ(131a)を流通する吐出冷媒と熱媒体用チューブ(132a)を流通する熱媒体との間の熱移動を可能とするアウターフィン(134)が接合されていることを特徴とする。
【0013】
これによれば、冷媒用チューブ(131a)の外表面および熱媒体用チューブ(132a)の外表面に、アウターフィン(134)が接合されているので、極めて容易に、第1熱交換部(131)を流通する吐出冷媒と、第2熱交換部(132)を流通する熱媒体との間の熱移動を可能とすることができる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、送風量調整手段(35、32b)は、熱媒体の温度が予め定めた第1熱媒体基準温度以下となった際に、送風空気の送風量を減少させることを特徴とする。
【0015】
これによると、複合型熱交換器(13)の第2熱交換部(132)に流入する熱媒体の温度が第1熱媒体基準温度以下となった場合には、複合型熱交換器(13)へ送風する送風空気の送風量を減少させ、送風空気と熱媒体および吐出冷媒との熱交換量を減少させることで、複合型熱交換器(13)における吐出冷媒と熱媒体との熱交換を積極的に促進させることができる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の車両用空調装置において、送風量調整手段(35、32b)は、外部熱源が作動を開始してから予め定めた基準時間以内に、熱媒体の温度が第1熱媒体基準温度以下となった際に、送風空気の送風量を減少させ、熱媒体の温度が第1熱媒体基準温度より高い温度となるまで上昇した際に、送風空気の送風量を増加させることを特徴とする。
【0017】
これによると、外部熱源の作動開始の初期段階において熱媒体の温度が第1熱媒体基準温度以下となった場合には、複合型熱交換器(13)における吐出冷媒と熱媒体との熱交換を積極的に促進させることができる。さらに、熱媒体の温度が第1熱媒体基準温度よりも高い温度に上昇した場合には、複合型熱交換器(13)にて送風空気と吐出冷媒および熱媒体とを適切に熱交換させることが可能となる。
【0018】
この場合、外部熱源の作動開始の初期段階において熱媒体の温度が低い場合には、複合型熱交換器(13)における吐出冷媒と熱媒体との熱交換を、吐出冷媒と送風空気との熱交換よりも優先させることとなる。
【0019】
また、請求項6に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、送風量調整手段(35、32b)は、外部熱源が作動を開始してから予め定めた基準時間以内に、熱媒体の温度が予め定めた第2熱媒体基準温度以下となった際に、送風空気の送風量を増加させ、複合型熱交換器(13)を通過した吹出空気の温度が予め定められた吹出基準温度より高い温度にまで上昇した際に、送風空気の送風量を減少させることを特徴とする。
【0020】
これによると、外部熱源の作動開始の初期段階において熱媒体の温度が第2熱媒体基準温度以下となった場合には、複合型熱交換器(13)における送風空気と吐出冷媒および熱媒体との熱交換を積極的に促進させることができる。さらに、複合型熱交換器(13)を通過した吹出空気の温度が吹出基準温度より高い温度にまで上昇した場合には、複合型熱交換器(13)にて吐出冷媒と熱媒体との熱交換を適切に熱交換させることが可能となる。
【0021】
この場合、外部熱源の作動開始の初期段階において熱媒体の温度が低い場合には、複合型熱交換器(13)における送風空気と吐出冷媒および熱媒体との熱交換を、吐出冷媒と熱媒体との熱交換よりも優先させることとなる。
【0022】
また、請求項7に記載の発明では、請求項4ないし6のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、熱媒体流量調整手段(41b)は、送風量調整手段(35、32b)にて熱媒体の温度に応じて送風空気の送風量を減少させる際に、熱媒体の流入量を増加させることを特徴とする。
【0023】
これによれば、複合型熱交換器(13)の第2熱交換部(132)に流入する熱媒体の温度に応じて、複合型熱交換器(13)へ送風する送風空気の送風量の減少させる際に、第2熱交換部(132)に流入する熱媒体の流入量を増加させることで、吐出冷媒と熱媒体との熱交換量を増大させることで、複合型熱交換器(13)における吐出冷媒と熱媒体との熱交換をより積極的に促進させることができる。
【0024】
具体的には、請求項8に記載の発明のように、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、ケーシング(31)の内部に、送風手段(32a)から送風される送風空気を複合型熱交換器(13)を迂回して流すバイパス通路(34)を形成し、送風量調整手段を、複合型熱交換器(13)へ流す送風空気とバイパス通路(34)へ流す送風空気の風量割合を変更するエアミックスドア(35)で構成することができる。
【0025】
また、請求項9に記載の発明では、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、吐出能力変更手段(11b)は、熱媒体の温度が送風手段(32a)により複合型熱交換器(13)に向けて送風される送風空気の温度以上となった際に、複合型熱交換器(13)を通過した吹出空気の温度が予め決定された目標温度に近づくように圧縮機構(11a)の冷媒吐出能力を変更することを特徴とする。
【0026】
これによれば、複合型熱交換器(13)の第2熱交換部(132)に流入する熱媒体の温度が複合型熱交換器(13)に送風される送風空気の温度以上である場合には、圧縮機構(11a)の冷媒吐出能力を目標温度に応じて調整することで、第1熱交換部(131)にて吐出冷媒と送風空気とを適切に熱交換させると共に、第2熱交換部(132)にて熱媒体と送風空気とを適切に熱交換させることが可能となる。つまり、吐出冷媒および熱媒体の有する熱量を車室内へ送風する送風空気を加熱するために有効に活用することができる。
【0027】
また、請求項10に記載の発明では、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、吐出能力変更手段(11b)は、熱媒体の温度が予め定めた第3熱媒体基準温度以下となった際に、複合型熱交換器(13)を通過した吹出空気の温度が予め決定された目標温度に近づくように圧縮機構(11b)の冷媒吐出能力を変更し、熱媒体流量調整手段(41b、42)は、熱媒体の温度が第3熱媒体基準温度以下となった際に、熱媒体の流入量を減少させることを特徴とする。
【0028】
これによれば、複合型熱交換器(13)における吐出冷媒と送風空気との熱交換を積極的に促進させることができ、車室内へ送風する空気を所望の温度に調整することが可能となる。
【0029】
また、請求項11に記載の発明では、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、熱媒体流量調整手段(41b、42)は、吐出能力変更手段(13b)による圧縮機構(13a)の冷媒吐出能力の調整が制限される際に、熱媒体の流入量を増加させることを特徴とする。
【0030】
これによれば、複合型熱交換器(13)における熱媒体と送風空気との熱交換を積極的に促進させることができ、車室内へ送風する空気を温度調整することができる。つまり、吐出冷媒の有する熱量にて送風空気を充分に加熱できない場合では、熱媒体の有する熱を車室内へ送風する送風空気に放熱することで、熱媒体の有する熱を有効に活用することができる。
【0031】
また、請求項12に記載の発明では、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、外部熱源は、充電時に発熱する車載バッテリであって、熱媒体流量調整手段(41b、42)は、車載バッテリが充電されている際に、熱媒体の流入量を増加させることを特徴とする。
【0032】
これによれば、車載バッテリ(BT)の充電時に生ずる熱量を送風空気の温度調整に有効に活用することが可能となる。
【0033】
具体的には、請求項13に記載の発明のように、請求項2または3に記載の車両用空調装置において、第1熱交換部(131)に設けられた冷媒用チューブ(131a)を流通する冷媒の集合または分配を行う冷媒用タンク部(131b)を冷媒用チューブ(131a)および熱媒体用チューブ(132a)の長手方向の一端側において冷媒用チューブ(131a)および熱媒体用チューブ(132a)の双方に固定し、さらに、第2熱交換部(132)に設けられた熱媒体用チューブ(132a)を流通する熱媒体の集合または分配を行う熱媒体用タンク部(132b)を、冷媒用チューブ(131a)および熱媒体用チューブ(132a)の長手方向の他端側において冷媒用チューブ(131a)および熱媒体用チューブ(132a)の双方に固定するようにしてもよい。
【0034】
また、請求項14に記載の発明のように、請求項13に記載の車両用空調装置において、冷媒用チューブ(131a)および熱媒体用チューブ(132a)を、送風空気通路(133)を流通する送風空気の流れ方向に複数列配置するようにしてもよい。
【0035】
また、請求項15に記載の発明のように、請求項13または14に記載の車両用空調装置において、冷媒用タンク部(131b)の長手方向の一端側に冷媒を導入する冷媒導入部(13a)および冷媒導出部(13b)を接続し、熱媒体用タンク部(132b)の長手方向の一端側に冷媒を導入する熱媒体導入部(13c)および熱媒体導出部(13d)を接続するようにしてもよい。
【0036】
ここで、請求項における「送風空気の送風量を減少させる」とは、現在、複合型熱交換器(13)に送風している送風量よりも少ない送風量とすることのみを意味するものではなく、送風量をゼロとすることも含む意味である。
【0037】
また、請求項における「熱媒体の流入量を減少させる」とは、現在、複合型熱交換器(13)の第2熱交換部(132)に流入している流入量よりも少ない流入量とすることのみを意味するものではなく、流入量をゼロとすることも含む意味である。
【0038】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1実施形態に係る車両用空調装置の全体構成図である。
【図2】第1実施形態に係る複合型熱交換器の外観斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る複合型熱交換器の分解斜視図である。
【図4】第1実施形態に係る複合型熱交換器における冷媒および冷却水の流れを説明するための模式的な斜視図である
【図5】第1実施形態に係るエアミックスドアのサーボモータの制御の概要を示す流れ図である。
【図6】第1実施形態に係る冷却水ポンプの電動モータの制御の概要を示す流れ図である。
【図7】第2実施形態に係るエアミックスドアのサーボモータの制御の概要を示す流れ図である。
【図8】第3実施形態に係る圧縮機の電動モータの制御の概要を示す流れ図である。
【図9】第4実施形態に係る冷却水ポンプの電動モータの制御の概要を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0041】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1〜図6に基づいて説明する。本実施形態では、本発明の車両用空調装置を内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る、いわゆるハイブリッド車両に適用している。
【0042】
ハイブリッド車両は、車両の走行負荷等に応じてエンジンを作動あるいは停止させて、エンジンおよび走行用電動モータの双方から駆動力を得て走行する走行状態や、エンジンを停止させて走行用電動モータのみから駆動力を得て走行する走行状態等を切り替えることができる。これにより、ハイブリッド車両では、車両走行用の駆動力をエンジンのみから得る通常の車両に対して車両燃費を向上させることができる。
【0043】
本実施形態の車両用空調装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルであるヒートポンプサイクル10、室内空調ユニット30、および外部熱源であるエンジンEGを冷却する冷却水(熱媒体)が循環する冷却水循環回路(熱媒体循環回路)40等によって構成されている。
【0044】
本実施形態のヒートポンプサイクル10は、車両用空調装置1において、車両における空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を加熱あるいは冷却する機能を果たす。つまり、ヒートポンプサイクル10は、冷媒流路を切り替えて、車室内へ送風する送風空気(以下、車室内送風空気と称する。)を加熱して車室内を暖房する暖房運転、および車室内送風空気を冷却して車室内を冷房する冷房運転を実行できる。
【0045】
また、本実施形態のヒートポンプサイクル10では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用しており、高圧冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を越えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。この冷媒には、後述する圧縮機11を循環するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒と共にサイクルを循環している。
【0046】
圧縮機11は、エンジンルーム(図示略)内に配置されて、ヒートポンプサイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機である。圧縮機構11aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用することができる。
【0047】
電動モータ11bは、後述する制御装置(図示略)から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれの形式を採用してもよい。そして、この回転数制御によって、圧縮機構11aの冷媒吐出能力が変更される。従って、本実施形態では、電動モータ11bが圧縮機構11aの吐出能力変更手段を構成する。
【0048】
圧縮機11の吐出口側には、複合型熱交換器13の第1熱交換部131の入口側が接続されている。複合型熱交換器13は、後述する室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されて、その内部を流通する流体(冷媒、冷却水)と車室内送風空気とを熱交換させる熱交換器である。
【0049】
複合型熱交換器13は、圧縮機11から吐出された吐出冷媒(高圧冷媒)を車室内送風空気と熱交換させる第1熱交換部131、および冷却水と車室内送風空気とを熱交換させる第2熱交換部132を有する。なお、複合型熱交換器13の詳細構成については後述する。
【0050】
複合型熱交換器13における第1熱交換部131の出口側には、暖房運転時に複合型熱交換器13の第1熱交換部131から流出した冷媒を減圧膨張させる第1減圧手段としての第1固定絞り15が接続されている。この第1固定絞り15としては、オリフィスやキャピラリーチューブを採用することができる。第1固定絞り15の出口側には、後述する室外熱交換器19の入口側が接続されている。
【0051】
また、複合型熱交換器13の第1熱交換部131の出口側には、第1熱交換部131から流出した冷媒を第1固定絞り15を迂回させて室外熱交換器19側へ導くための固定絞り用迂回通路17が接続されている。
【0052】
この固定用絞り用迂回通路17には、固定絞り用迂回通路17を開閉する開閉弁18が配置されている。開閉弁18は、後述する制御装置から出力される制御信号(制御電圧)によって、その開閉作動が制御される電磁弁である。
【0053】
また、冷媒が開閉弁18を通過する際に生ずる圧力損失は、第1固定絞り15を通過する際に生ずる圧力損失に対して極めて小さい。従って、複合型熱交換器13の第1熱交換部131から流出した冷媒は、開閉弁18が開いている場合には固定絞り用迂回通路17を介して室外熱交換器19の入口側へ流入し、開閉弁18が閉じている場合には第1固定絞り15を介して室外熱交換器19の入口側へ流入する。
【0054】
このように、開閉弁18は、ヒートポンプサイクル10の冷媒流路を切り替えることができる。従って、本実施形態の開閉弁18は、冷媒流路切替手段としての機能を果たす。なお、開閉弁18に変えて、複合型熱交換器13の第1熱交換部131出口側と第1固定絞り15入口側とを接続する冷媒流路、および複合型熱交換器13出口側と固定絞り用迂回通路17入口側とを接続する冷媒流路を切り替える電気式の三方弁等を設ける構成としてもよい。
【0055】
室外熱交換器19は、内部を流通する冷媒と送風ファン20から送風された外気とを熱交換させるものである。この室外熱交換器19は、エンジンルーム内に配置されて、暖房運転時には、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発器として機能し、冷房運転時には、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能する熱交換器である。
【0056】
送風ファン20は、後述する制御装置から出力される制御信号(制御電圧)によって回転数(外気の送風空気量)が制御される電動式送風機である。なお、送風ファン20は、室外熱交換器19に向けて外気を送風する外気送風手段を構成している。
【0057】
室外熱交換器19の出口側には、電気式の三方弁21が接続されている。この三方弁21は、後述する制御装置から出力される制御信号(制御電圧)によって、その作動が制御されるものである。
【0058】
より具体的には、三方弁21は、暖房運転時に室外熱交換器19出口側と後述する第2固定絞り22入口側とを接続する冷媒流路に切り替え、冷房運転時および除湿暖房運転時に室外熱交換器19出口側と後述するアキュムレータ24とを接続する冷媒流路に切り替える。なお、三方弁21は、上述の開閉弁18と共に冷媒流路切替手段としての機能を果たす。
【0059】
第2固定絞り22は、冷媒運転時に室外熱交換器19から流出した冷媒を減圧膨張させる第2減圧手段であり、その基本構成は、上述の第1固定絞り15と同様である。第2固定絞り22の出口側には、室内蒸発器23の入口側が接続されている。
【0060】
室内蒸発器23は、室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されて、第2固定絞り22によって減圧膨張された低圧冷媒と車室内送風空気とを熱交換させ、低圧冷媒を蒸発させることによって送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。室内蒸発器23の出口側には、アキュムレータ24の入口側が接続されている。
【0061】
アキュムレータ24は、その内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰冷媒を蓄える気液分離器である。アキュムレータ24の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。従って、アキュムレータ24は、圧縮機11に液相冷媒が吸入されることを抑制し、圧縮機11における液圧縮を防止する機能を果たす。
【0062】
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、上述の複合型熱交換器13、および室内蒸発器23等を収容したものである。
【0063】
ケーシング31は、車室内送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、車室内空気(内気)と外気とを切替導入する内外気切替装置33が配置されている。
【0064】
内外気切替装置33には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口が形成されている。さらに、内外気切替装置33の内部には、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドアが配置されている。
【0065】
内外気切替装置33の空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して導入された空気を車室内に向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)32aを電動モータ32bにて駆動する電動送風機であって、後述する制御装置から出力される制御信号(制御電圧)によって回転数(送風量)が制御される。なお、遠心式多翼ファン32aが車室内へ空気を送風する送風手段としての機能を果たす。
【0066】
送風機32の空気流れ下流側には、室内蒸発器23および複合型熱交換器13が、車室内送風空気の流れに対して、この順に配置されている。換言すると、室内蒸発器23は、複合型熱交換器13に対して、車室内送風空気の流れ方向上流側に配置されている。
【0067】
また、ケーシング31内には、室内蒸発器23を通過した空気を複合型熱交換器13を迂回させて流すバイパス通路34が形成されている。
【0068】
さらに、室内蒸発器23の空気流れ下流側であって、かつ、複合型熱交換器13の空気流れ上流側には、室内蒸発器23通過後の空気のうち、複合型熱交換器13を通過させる空気とバイパス通路34を通過させる空気との風量割合を調整するエアミックスドア35が配置されている。また、複合型熱交換器13の空気流れ下流側およびバイパス通路34の空気流れ下流側には、複合型熱交換器13を通過した空気とバイパス通路34を通過した空気とを混合させる混合空間が設けられている。
【0069】
そして、ケーシング31の送風空気流れ最下流側には、混合空間にて混合された空調風を、空調対象空間である車室内へ吹き出す吹出口(図示略)が配置されている。具体的には、吹出口としては、車室内の乗員の上半身へ空調風を吹き出すフェイス吹出口、乗員の足元へ空調風を吹き出すフット吹出口、および車両前面窓ガラス内側面へ空調風を吹き出すデフロスタ吹出口が設けられている。
【0070】
従って、エアミックスドア35は、複合型熱交換器13を通過させる空気とバイパス通路34を通過させる空気との風量割合を調整することで、混合空間にて混合された空調風の温度が調整され、各吹出口から吹き出される空調風の温度が調整される。つまり、エアミックスドア35は、複合型熱交換器13へ送風する車室内送風空気の送風量を調整する送風量調整手段としての機能を果たすと共に、車室内へ送風する空調風の温度を調整する温度調整手段としての機能も果たす。なお、エアミックスドア35は、制御装置から出力される制御信号によって作動するサーボモータ(図示略)によって駆動される。
【0071】
さらに、フェイス吹出口、フット吹出口、およびデフロスタ吹出口の送風空気流れ上流側には、フェイス吹出口の開口面積を調整するフェイスドア(図示略)、フット吹出口の開口面積を調整するフットドア(図示略)、およびデフロスタ吹出口の開口面積を調整するデフロスタドア(図示略)が配置されている。
【0072】
これらのフェイスドア、フットドア、およびデフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、リンク機構等を介して、後述する制御装置から出力される制御信号によってその作動が制御されるサーボモータ(図示略)によって駆動される。
【0073】
次に、冷却水循環回路40について説明する。冷却水循環回路40は、作動時に発熱を伴う車載機器であるエンジンEGの内部に形成された冷却水通路に、熱媒体としての冷却水(例えば、エチレングリコール水溶液)を流通させてエンジンEGを冷却する熱媒体循環回路である。
【0074】
本実施形態の冷却水循環回路40には、冷却水ポンプ41、開閉弁42、ラジエータ43、複合型熱交換器13の第2熱交換部132が設けられている。
【0075】
冷却水ポンプ41は、冷却水循環回路40においてエンジンEGの内部に形成された冷却水通路へ冷却水を圧送する熱媒体圧送手段である圧送機構41a、および圧送機構41aを駆動する電動モータ41bで構成される電動式の水ポンプである。この冷却水ポンプ41の電動モータ41bは、その回転数を増加させることで、複合型熱交換器13の第2熱交換部131に流入する冷却水の流入量を増加させることができる。
【0076】
従って、本実施形態の冷却水ポンプ41の電動モータ41bは、熱媒体流量調整手段としての機能を果たす。冷却水ポンプ41の電動モータ41bは、制御装置から出力される制御信号によって回転数が制御される。
【0077】
冷却水ポンプ41の出口側には、ラジエータ43の入口側、および複合型熱交換器13の第2熱交換部13の入口側が接続されている。そして、冷却水ポンプ41から複合型熱交換器13の第2熱交換部13に至る熱媒体流路には、当該熱媒体流路を開閉する開閉弁42が配置されている。この開閉弁42には、制御装置から出力される制御信号(制御電圧)によって、その開閉作動が制御される電磁弁である。
【0078】
ここで、開閉弁42が開いている場合には、冷却水ポンプ41から圧送されてエンジンEGによって昇温された冷却水が、ラジエータ43の入口側および複合型熱交換器13の第2熱交換部132の入口側の双方へ流入し、開閉弁42が閉じている場合には、冷却水ポンプ41から圧送されてエンジンEGによって昇温された冷却水が、ラジエータ44の入口側へ流入する。
【0079】
つまり、本実施形態の冷却水循環回路40では、冷却水ポンプ41→エンジンEG→複合型熱交換器13の第2熱交換部132およびラジエータ43→冷却水ポンプ41の順に冷却水を循環させる熱媒体回路と、冷却水ポンプ41→エンジンEG→ラジエータ43→冷却水ポンプ41の順に冷却水を循環させる熱媒体回路とを切り替えることができる。
【0080】
このように、開閉弁42は、冷却水循環回路40の熱媒体流路を切り替えることができる。従って、本実施形態の開閉弁42は、熱媒体流路切替手段としての機能を果たす。
【0081】
また、開閉弁42が開いている場合には、複合型熱交換器13の第2熱交換部132に冷却水が流入しなくなる。すなわち、複合型熱交換器13の第2熱交換部132へ流入させる冷却水の流入量を減少させることができる。従って、本実施形態の開閉弁42は、冷却水ポンプ41の電動モータ41bと共に、熱媒体流量調整手段としての機能を果たす。なお、開閉弁42に変えて、エンジンEGの内部に形成された冷却水通路の出口側と複合型熱交換器13の第2熱交換部132入口側とを接続する熱媒体流路、およびエンジンEGの内部に形成された冷却水通路の出口側とラジエータ43入口側とを接続する熱媒体流路を切り替える電気式の三方弁等を設ける構成としてもよい。
【0082】
ラジエータ43は、エンジンルーム内に配置されて、エンジンEGの内部に形成された冷却水通路から流出した冷却水と、送風ファン(図示略)から送風される外気と熱交換させて冷却水の有する熱を外気に放熱させる放熱器である。なお、ラジエータ43の送風ファンは、制御装置から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0083】
次に、図2〜図4に基づいて、複合型熱交換器13の詳細構成について説明する。図2は、本実施形態に係る複合型熱交換器13の外観斜視図であり、図3は、本実施形態に係る複合型熱交換器13の分解斜視図である。また、図4は、本実施形態に係る複合型熱交換器13における冷媒および冷却水の流れを説明するための模式的な斜視図である。
【0084】
本実施形態の複合型熱交換器13は、車室内送風空気が圧縮機構11aから吐出された吐出冷媒および熱媒体である冷却水の双方と熱交換可能なように、第1熱交換部131および第2熱交換部132を一体化したものである。
【0085】
第1熱交換部131および第2熱交換部132それぞれは、内部に流体を流通させる複数のチューブ131a、132a、当該複数のチューブ131a、132aの両端側に配置されて流体の集合あるいは分配を行う一対の集合分配用のタンク131b、132b等を有する、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器として構成されている。
【0086】
より具体的には、第1熱交換部131は、冷媒が流れる複数の冷媒用チューブ131a、および冷媒用チューブ131aの長手方向に対して直交する方向に延びて冷媒用チューブ131a内を流れる高圧冷媒の集合あるいは分配を行う冷媒用ヘッダタンク部(冷媒用タンク部)131bを有し、冷媒用チューブ131aを流れる冷媒と冷媒用チューブ131aの周囲を流れる車室内送風空気とを熱交換させる熱交換部である。
【0087】
一方、第2熱交換部132は、熱媒体である冷却水が流れる複数の熱媒体用チューブ132a、および熱媒体用チューブ132aの長手方向に対して直交する方向に延びて熱媒体用チューブ132a内を流れる低圧冷媒の集合あるいは分配を行う熱媒体用ヘッダタンク部(熱媒体用タンク部)132bを有し、熱媒体用チューブ132aを流れる低圧冷媒と熱媒体用チューブ132aの周囲を流れる車室内送風空気とを熱交換させる熱交換部である。
【0088】
冷媒用チューブ131aおよび熱媒体用チューブ132aは、その長手方向に直交する断面形状が扁平形状となる扁平チューブで構成されて、伝熱性に優れる金属(アルミニウム合金等)で形成されている。
【0089】
本実施形態の冷媒用チューブ131aおよび熱媒体用チューブ132aは、それぞれ送風機32からの送風空気の流れ方向Xに沿って2列配置されている。そして、本実施形態の冷媒用チューブ131aおよび熱媒体用チューブ132aは、その外表面の平坦面同士が互いに平行、かつ、所定の間隔をあけて離間した状態で交互に配置されている。すなわち、冷媒用チューブ131aは、熱媒体用チューブ132aの間に配置され、逆に、熱媒体用チューブ132aは、冷媒用チューブ131aの間に配置されている。
【0090】
そして、冷媒用チューブ131aと熱媒体用チューブ132aとの間に形成される空間は、車室内送風空気が流通する送風空気通路133を構成している。つまり、冷媒用チューブ131aの外周および熱媒体用チューブ132aの外周には、車室内送風空気が流通する送風空気通路133が形成されている。
【0091】
さらに、送風空気通路133には、第1熱交換部131における冷媒と車室内送風空気との熱交換、および第2熱交換部132における冷却水と車室内送風空気との熱交換を促進すると共に、冷媒用チューブ131aを流れる冷媒と熱媒体用チューブ132aを流れる冷却水との熱交換を促進する伝熱促進手段としてアウターフィン134が配置されている。アウターフィン134は、対向する冷媒用チューブ131aの外表面および熱媒体用チューブ132aの外表面に接合された状態で配置されている。
【0092】
また、冷媒用チューブ131aおよび熱媒体用チューブ132aは、冷媒用ヘッダタンク部131bと熱媒体用ヘッダタンク部132bとの間に配置されている。具体的には、冷媒用チューブ131aおよび熱媒体用チューブ132aの長手方向一端側に冷媒用ヘッダタンク部131bが配置され、冷媒用チューブ131aおよび熱媒体用チューブ132aの長手方向他端側に熱媒体用ヘッダタンク部132bが配置されている。
【0093】
図3に示すように、冷媒用ヘッダタンク部131bは、2列に配置された各チューブ131a、132aに接続される冷媒用接続プレート131c、冷媒用接続プレート131cに固定された冷媒用中間プレート131d、および冷媒用タンク形成部材131eを有している。
【0094】
冷媒用中間プレート131dには、冷媒用接続プレート131cが固定されることによって、冷媒用接続プレート131cとの間に、2列の熱媒体用チューブ132a同士を互いに連通する複数の空間を有する複数の凹み部131fが形成されている。
【0095】
また、冷媒用中間プレート131dにおける冷媒用チューブ131aに対応する部位には、その表裏を貫通する貫通穴が形成され、当該貫通穴に冷媒用チューブ131aが嵌挿されている。なお、冷媒用チューブ131aおよび熱媒体用チューブ132aの冷媒用ヘッダタンク部131b側の端部では、冷媒用チューブ131aが、熱媒体用チューブ132aよりも冷媒用タンク形成部材131e側に突出している。
【0096】
冷媒用タンク形成部材131eは、冷媒用接続プレート131cおよび冷媒用中間プレート131dに固定されることによって、その内部に冷媒を集合させる集合空間131g、および冷媒を分配する分配空間131hを形成する。具体的には、冷媒用タンク形成部材131eは、平板金属にプレス加工を施すことにより、その長手方向から見たときに二山状(W字状)に形成される。
【0097】
そして、冷媒用タンク形成部材131eの二山状の中央部が、冷媒用中間プレート131dに接合されることで、集合空間131gおよび分配空間131hが区画されている。なお、本実施形態では、送風空気の流れ方向Xの風下側に集合空間131gが配置され、風下側に分配空間131hが配置されている。
【0098】
また、冷媒用タンク形成部材131eの長手方向一端側には、分配空間131hへ冷媒を流入させる冷媒用流入配管(冷媒導入部)13aが接続されると共に、集合空間131gから冷媒を流出させる冷媒用流出配管(冷媒導出部)13bが接続されている。さらに、冷媒用タンク形成部材131eの長手方向他端側は、閉塞部材により閉塞されている。
【0099】
一方、熱媒体用ヘッダタンク部132bは、冷媒用ヘッダタンク部131bと基本的構成が同様であり、各チューブ131a、132aに接続される熱媒体用接続プレート132c、熱媒体用接続プレート132cに固定された熱媒体用中間プレート132d、および熱媒体用タンク形成部材132eを有している。
【0100】
そして、熱媒体用中間プレート132dには、熱媒体用接続プレート132cが固定されることによって、熱媒体用接続プレート132cとの間に、2列の冷媒用チューブ131a同士を互いに連通する複数の空間を有する複数の凹み部132fが形成されている。
【0101】
また、熱媒体用中間プレート132dにおける熱媒体用チューブ132aに対応する部位には、その表裏を貫通する貫通穴が形成され、当該貫通穴に熱媒体用チューブ132aが嵌挿されている。なお、冷媒用チューブ131aおよび熱媒体用チューブ132aの熱媒体用ヘッダタンク部132b側の端部では、熱媒体用チューブ132aが、冷媒用チューブ131aよりも熱媒体用タンク形成部材132e側に突出している。
【0102】
熱媒体用タンク形成部材132eは、熱媒体用接続プレート132cおよび熱媒体用中間プレート132dに固定されることによって、その内部に冷却水を集合させる集合空間132g、および冷却水を分配する分配空間132hを形成する。具体的には、熱媒体用タンク形成部材132eは、冷媒用タンク形成部材131eと同様に、その長手方向から見たときに二山状(W字状)に形成される。
【0103】
そして、熱媒体用タンク形成部材132eの二山状の中央部が、熱媒体用中間プレート132dに接合されることで、集合空間132gおよび分配空間132hが区画されている。なお、本実施形態では、送風空気の流れ方向Xの風上側に集合空間132gが配置され、風下側に分配空間132hが配置されている。
【0104】
また、熱媒体用タンク形成部材132eの長手方向一端側には、分配空間132hへ冷却水を流入させる熱媒体用流入配管(熱媒体導入部)13cが接続されると共に、集合空間132gから冷却水を流出させる熱媒体用流出配管(熱媒体導出部)13dが接続されている。さらに、熱媒体用タンク形成部材132eの長手方向他端側は、閉塞部材により閉塞されている。
【0105】
このように構成される本実施形態の複合型熱交換器13では、図4の実線矢印で示すように、冷媒用流入配管13aを介して冷媒用ヘッダタンク部131bの分配空間131hから流入した冷媒が、2列に並べられた冷媒用チューブ131aのうち、外気流れ方向の風上側の各冷媒用チューブ131aへ流入する。
【0106】
そして、外気流れ方向の風上側の各冷媒用チューブ131aから流出した冷媒が、熱媒体用ヘッダタンク部132bの熱媒体用接続プレート132cと熱媒体用中間プレート132dとの間に形成された空間を介して、外気流れ方向の風下側の各冷媒用チューブ131aへ流入する。
【0107】
さらに、外気流れ方向の風下側に配置された各冷媒用チューブ131aから流出した冷媒が、冷媒用ヘッダタンク部131bの集合空間131gにて集合し、冷媒用流出配管13bから流出する。つまり、本実施形態の複合型熱交換器13では、冷媒用流入配管13aから流入した冷媒が、風上側の各冷媒用チューブ131a→熱媒体用ヘッダタンク部132b→風下側の各冷媒用チューブ131aの順にUターンして、冷媒流出配管13bへ流出する。
【0108】
同様に、熱媒体用流入配管13cから流入した冷却水は、図4の破線矢印で示すように、風下側の各熱媒体用チューブ132a→冷媒用ヘッダタンク部131b→風上側の各熱媒体用チューブ132aの順にUターンして、熱媒体用流出配管13dへ流出する。
【0109】
本実施形態では、このような複合型熱交換器13を採用していることにより、複数種の流体(冷媒、冷却水、空気)の間で相互に熱交換させることができる。
【0110】
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。本実施形態の制御装置(図示略)は、CPU、ROM、およびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種制御機器等の作動を制御する。
【0111】
また、制御装置の入力側には、車室内温度を検出する内気センサ(内気温度検出手段)、外気温を検出する外気センサ(外気温度検出手段)、車室内の日射量を検出する日射センサ(日射量検出手段)、室内蒸発器23の吹出空気温度(蒸発器温度)を検出する蒸発器温度センサ(蒸発器温度検出手段)、複合型熱交換器13に流入する高圧冷媒(圧縮機11の吐出冷媒)の温度を検出する高圧側温度センサ(高圧側冷媒温度検出手段)、高圧冷媒の圧力を検出する高圧側圧力センサ(高圧側冷媒圧力検出手段)、複合型熱交換器13に流入する冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ(熱媒体温度検出手段)等のセンサ群が接続されている。
【0112】
さらに、制御装置の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル(図示略)に接続され、この操作パネルに設けられた各種操作スイッチの操作信号が入力される。操作パネルに設けられた操作スイッチとしては、車両用空調装置の作動スイッチ、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ、運転モード設定スイッチ等が設けられている。
【0113】
ここで、制御装置は、各種制御機器を制御する制御手段が一体に構成され、これらを制御するものであるが、本実施形態では、制御装置のうち、各制御機器の作動を制御するための構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が各制御機器の制御手段として機能する。
【0114】
例えば、圧縮機11の電動モータ11bの作動を制御する構成が吐出能力制御手段を構成し、冷却水循環回路40の冷却水ポンプ41および開閉弁42の作動を制御する構成が熱媒体流量制御手段を構成し、エアミックスドア35のサーボモータの作動を制御する構成が送風量制御手段を構成する。
【0115】
次に、上述のように構成される本実施形態の作動について説明する。本実施形態の車両用空調装置1では、車室内を暖房する暖房運転、および車室内を冷房する冷房運転を実行することができる。なお、暖房運転および冷房運転のいずれの運転を実行するかは、操作パネルの運転モード設定スイッチの操作信号に応じて決定される。
(a)冷房運転
冷房運転は、操作パネルの作動スイッチが投入された状態で、操作パネルの運転モード設定スイッチにて冷房運転モードが選択されると開始される。
【0116】
冷房運転時には、制御装置が、ヒートポンプサイクル10の開閉弁18を開くと共に、三方弁21を圧縮機11の吐出口側と第2固定絞り22とを接続する冷媒流路に切り替える。さらに、制御装置が冷却水循環回路40の開閉弁42を閉じる。
【0117】
これにより、ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された吐出冷媒(高圧冷媒)が、図1の白抜き矢印に示すように流れる。また、冷却水循環回路40では、冷却水ポンプ41から圧送された冷却水が、図1の実線矢印に示すように流れる。
【0118】
開閉弁18、三方弁21、開閉弁42にて冷房運転時の冷媒流路および熱媒体流路に切り替えられた後、制御装置が、上述のセンサ群の検出信号や操作パネルの操作信号を読み込む。そして、読み込んだ検出信号や操作信号に応じて、車室内に吹き出す空気の目標温度である目標吹出温度TAOを算出する。さらに、算出された目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号、および操作パネルの操作信号に基づいて、制御装置の出力側に接続された各種制御機器の作動状態を決定する。
【0119】
例えば、ヒートポンプサイクル10における圧縮機構11aの冷媒吐出能力、すなわち圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号(回転数)については、以下のように決定される。まず、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置に記憶された制御マップを参照して、室内蒸発器23の目標蒸発器吹出温度TEOを決定する。
【0120】
そして、この目標蒸発器吹出温度TEOと蒸発器温度センサによって検出された室内蒸発器23からの吹出空気温度Teとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いて室内蒸発器23からの吹出空気温度Teが目標吹出空気温度TEOに近づくように、圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号が決定される。
【0121】
また、エアミックスドア35のサーボモータに出力される制御信号については、目標吹出温度TAOおよび室内蒸発器23の吹出空気温度Teに基づいて、予め制御装置に記憶された制御マップを参照して、車室内へ吹き出す空気の温度が車室内温度設定スイッチによって設定された所望の温度となるように決定される。
【0122】
また、冷却水ポンプ41の電動モータに出力される制御信号については、冷却水温度センサの検出値に応じて、エンジンEGの温度が予め定められた保護温度範囲となるように決定される。
【0123】
ここで、保護温度範囲は、エンジンEG内に封入された潤滑量オイルの粘度増加によるフリクションロスを低減するために設定された下限保護温度Twl以上、かつ、エンジンEGのオーバーヒートを抑制するために設定された上限保護温度Twh以下となる範囲に設定されている。
【0124】
そして、目標吹出温度TAO等により決定された制御信号等を各種制御機器へ出力する。その後、操作パネルによって車両用空調装置1の作動停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、上述の検出信号および操作信号の読み込み→目標吹出温度TAOの算出→各制御機器の作動状態の決定→各制御機器の制御といった制御ルーチンが繰り返される。なお、このような制御ルーチンは、基本的には他の運転モードが設定された場合にも同様に行われる。
【0125】
これにより、ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された冷媒が、複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入する。複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入した高圧冷媒は、送風機32から送風された車室内送風空気と熱交換して放熱し、車室内送風空気が加熱される。
【0126】
複合型熱交換器13の第1熱交換部131から流出した高圧冷媒は、開閉弁18を介して、室外熱交換器19へ流入する。室外熱交換器19へ流入した冷媒は、送風ファン20から送風された外気と熱交換して放熱する。
【0127】
室外熱交換器19から流出した冷媒は、第2固定絞り22に流入して低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第2固定絞り22にて減圧された低圧冷媒は、室内蒸発器23へ流入して、送風機32から送風された車室内送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される送風空気が冷却される。
【0128】
室内蒸発器23から流出した冷媒は、アキュムレータ23に流入し、当該アキュムレータ23にて気液分離される。そして、アキュムレータ23にて分離された気相冷媒が、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0129】
また、冷却水循環回路40では、冷却水ポンプ41から圧送された冷却水がエンジンEGの内部に形成された冷却水通路を流れ、エンジンEGの有する熱量によって加熱される。そして、エンジンEGの冷却水通路から流出した冷却水は、ラジエータ43に流入し外気に放熱した後、再び冷却水ポンプ41に吸入される。
【0130】
以上の如く、冷房運転時には、室内蒸発器23にて低圧冷媒が車室内送風空気から吸熱することで、車室内送風空気が冷却されて車室内の冷房を行うことができる。
(b)暖房運転
暖房運転は、操作パネルの作動スイッチが投入された状態で、操作パネルの運転モード設定スイッチにて暖房運転モードが選択されると開始される。
【0131】
この暖房運転時には、制御装置がヒートポンプサイクル10の開閉弁18を閉じると共に、三方弁21を室外熱交換器19の出口側とアキュムレータ24の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。さらに、制御装置が冷却水循環回路40の開閉弁42を開く。
【0132】
これにより、ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された吐出冷媒が図1の黒矢印に示すように流れる。また、冷却水循環回路40では、冷却水ポンプ41から圧送された冷却水が、図1の破線矢印で示すように流れる。
【0133】
そして、制御装置が、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号、および操作パネルの操作信号に基づいて、制御装置の出力側に接続された各種制御機器の作動状態を決定する。
【0134】
例えば、圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号(回転数)については、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置に記憶された制御マップを参照して、複合型熱交換器13の目標熱交換器温度を算出し、算出した目標熱交換器温度と高圧側温度センサによって検出された第1熱交換部131に流入する高圧冷媒の温度との偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いて複合型熱交換器13からの吹出空気温度が目標熱交換器に近づくように決定される。
【0135】
また、暖房運転時におけるエアミックスドア35のサーボモータに出力される制御信号については、エアミックスドア35の開度が目標吹出温度TAOおよび室内蒸発器23の吹出空気温度Teに基づく第1目標開度、および第1目標開度よりも複合型熱交換器13側の空気通路の開度を減少させた第2目標開度のいずれかとなるように決定される。
【0136】
例えば、図5に示すように、エアミックスドア35のサーボモータに出力される制御信号は、外部熱源であるエンジンEGの作動開始から予め定められた基準時間以内(起動初期段階)において、冷却水温度が第1熱媒体基準温度以下となっている場合に、エアミックスドア35の開度が第2目標開度となるように決定される。
【0137】
一方、エンジンEGの起動初期段階において冷却水温度が第1熱媒体基準温度より高い温度に上昇した場合、あるいは、エンジンEGの起動初期段階を経過した場合には、エアミックスドア35の開度が第1目標開度となるようにエアミックスドア35のサーボモータに出力される制御信号が決定される。なお、図5は、エアミックスドア35のサーボモータの制御の一例を示す流れ図である。
【0138】
これにより、エアミックスドア35のサーボモータに出力される制御信号が、エアミックスドア35の開度が第2目標開度となるように決定された場合には、第1目標開度となるように決定された場合に比べて、複合型熱交換器13へ送風される車室内送風空気の送風量が減少する。逆に、エアミックスドア35のサーボモータに出力される制御信号が、エアミックスドア35の開度が第1目標開度となるように決定された場合には、第2目標開度となるように決定された場合に比べて、複合型熱交換器13へ送風される車室内送風空気の送風量が増加する。
【0139】
また、暖房運転時における冷却水ポンプ41の電動モータ41bに出力される制御信号については、電動モータ41bの回転数が冷却水温度センサの検出値に応じた第1目標回転数、および第1目標回転数よりも高い回転数となる第2目標回転数のいずれかとなるように決定される。
【0140】
例えば、図6に示すように、冷却水ポンプ41の電動モータ41bに出力される制御信号は、エアミックスドア35の開度が第2目標開度となるように決定される条件が成立した場合に、電動モータ41bの回転数が第2目標回転数となるように決定される。
【0141】
一方、冷却水ポンプ41の電動モータ41bに出力される制御信号は、エアミックスドア35の開度が第1目標開度となるように決定される条件が成立した場合に、電動モータ41bの回転数が第1目標回転数となるように決定される。なお、図6は、冷却水ポンプ41の電動モータ41bの制御の一例を示す流れ図である。
【0142】
これにより、冷却水ポンプ41の電動モータ41bに出力される制御信号が、電動モータ41bの回転数が第2目標回転数となるように決定された場合には、第1目標回転数となるように決定された場合に比べて、複合型熱交換器13の第2熱交換部131へ流入する冷却水の流入量が増加する。逆に、冷却水ポンプ41の電動モータ41bに出力される制御信号が、電動モータ41bの回転数が第1目標回転数となるように決定された場合には、第2目標回転数となるように決定された場合に比べて、複合型熱交換器13の第2熱交換部131へ流入する冷却水の流入量が減少する。
【0143】
なお、暖房運転時には、制御装置が、ラジエータ43に空気を送風する送風ファンが作動しないように、送風ファンに制御信号を出力する。
【0144】
これにより、ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された吐出冷媒が、複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入する。複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入した高圧冷媒は、送風機32から送風された車室内送風空気と熱交換して放熱する。これにより、車室内送風空気が加熱される。
【0145】
複合型熱交換器13の第1熱交換部131から流出した高圧冷媒は、第1固定絞り15に流入して低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1固定絞り15にて減圧された低圧冷媒は、室外熱交換器19へ流入して、送風ファン20から送風された外気から吸熱して蒸発する。熱交換して放熱する。
【0146】
室外熱交換器19から流出した冷媒は、アキュムレータ23に流入し、当該アキュムレータ23にて気液分離される。そして、アキュムレータ23にて分離された気相冷媒が、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0147】
一方、冷却水循環回路40では、冷却水ポンプ41から圧送された冷却水がエンジンEGの内部に形成された冷却水通路を流れ、エンジンEGと冷却水とが熱交換される。そして、エンジンEGの冷却水通路から流出した冷却水は、ラジエータ43および複合型熱交換器13の第2熱交換部132の双方に流入する。
【0148】
ラジエータ43に流入した冷却水は、送風ファンが停止しているので、外気と熱交換することなく、再び冷却水ポンプ41に吸入される。また、複合型熱交換器13の第2熱交換部132に流入した冷却水は、吐出冷媒および送風空気の一方または双方と熱交換して、再び冷却水ポンプ41に吸入される。
【0149】
ここで、暖房運転では、外部熱源であるエンジンEGの起動初期段階において冷却水温度が第1熱媒体基準温度以下となっている場合に、複合型熱交換器13へ送風される送風空気の送風量を減少させ、さらに、第2熱交換部132に流入する冷却水の流入量を増加させるので、複合型熱交換器13における吐出冷媒と冷却水との熱交換を積極的に促進させることができる。そして、吐出冷媒の温度が冷却水よりも高い場合には、吐出冷媒の有する熱量をアウターフィン134を介して冷却水に放熱して、冷却水を加熱することができる。
【0150】
一方、暖房運転では、エンジンEGの起動初期段階において冷却水温度が第1熱媒体基準温度より高い温度まで上昇している場合、あるいは、エンジンEGの起動初期段階を経過している場合に、複合型熱交換器13にて吐出冷媒および冷却水が有する熱量を車室内送風空気に放熱して車室内送風空気を所望の温度に加熱することができる。これにより、車室内の暖房を実現することができる。
【0151】
以上説明した本実施形態によれば、複合型熱交換器13における車室内送風空気と圧縮機11aから吐出された吐出冷媒との熱交換量、および車室内送風空気と冷却水との熱交換量に加えて、吐出冷媒と冷却水との熱交換量を調整することができ、複数種の流体(吐出冷媒、冷却水、送風空気)間の適切な熱交換を実現することができるので、複数種の流体それぞれの有する熱量を有効に活用することが可能となる。
【0152】
また、本実施形態では、暖房運転時に、エンジンEGの起動初期段階において冷却水温度が第1熱媒体基準温度以下となっている場合に、複合型熱交換器13へ送風される送風空気の送風量を減少させると共に、第2熱交換部132に流入する冷却水の流入量を増加させることで、複合型熱交換器13における吐出冷媒と冷却水との熱交換を積極的に促進させることができる。
【0153】
これにより、高圧冷媒の温度が冷却水よりも高い場合には、高圧冷媒の有する熱量をアウターフィン134を介して冷却水に放熱して、冷却水を加熱することができるので、エンジンEGの起動初期段階においてエンジンEGの早期暖機を行うことができる。この結果、エンジンEGのフリクションロスを低減させることができ、車両燃費等の向上を図ることができる。
【0154】
さらに、本実施形態では、第1熱交換部131の冷媒用チューブ131aの外表面および第2熱交換部132の冷媒用チューブ132aの外表面に、アウターフィン134が接合されているので、極めて容易に複合型熱交換器13にて第1熱交換部131を流通する吐出冷媒と、第2熱交換部132を流通する冷却水との間の熱移動を可能とすることができる。
【0155】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図7に基づいて説明する。図7は、本実施形態に係るエアミックスドア35のサーボモータの制御の概要を示す流れ図である。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0156】
上述の第1実施形態では、エンジンEGの起動初期段階において、複合型熱交換器13の第2熱交換部132に流入する冷却水の温度が第1熱媒体基準温度以下となっている場合に、エアミックスドア35の開度調整にて複合型熱交換器13に送風する空気の送風量を減少させるようにしている。
【0157】
これに対して、本実施形態では、エンジンEGの起動初期段階において、複合型熱交換器13の第2熱交換部132に流入する冷却水の温度が予め定めた第2熱媒体基準温度以下となっている場合に、エアミックスドア35の開度調整にて複合型熱交換器13に送風する空気の送風量を増加させ、複合型熱交換器13を通過した吹出空気の温度が吹出基準温度よりも高い温度にまで上昇した場合に、エアミックスドア35の開度調整にて複合型熱交換器13に送風する空気の送風量を徐々に減少させるようにしている。なお、第2熱媒体基準温度は、上述の実施形態における第1熱媒体基準温度と同等の値に限らず、第1熱媒体基準温度と異なる値に設定することができる。
【0158】
具体的には、本実施形態の暖房運転時におけるエアミックスドア35のサーボモータに出力される制御信号については、エアミックスドア35の開度が目標吹出温度TAOおよび室内蒸発器23の吹出空気温度Teに基づく第1目標開度、および第1目標開度よりも複合型熱交換器13側の空気通路の開度を増大させた第3目標開度のいずれかとなるように決定される。
【0159】
例えば、図7に示すように、エアミックスドア35のサーボモータに出力される制御信号は、エンジンEGの起動初期段階において、冷却水温度が第2熱媒体基準温度以下となっている場合に、エアミックスドア35の開度が第3目標開度となるように決定される。
【0160】
一方、エンジンEGの起動初期段階において冷却水温度が第2熱媒体基準温度より高い温度にまで上昇した場合、あるいは、エンジンEGの起動初期段階を経過した場合には、エアミックスドア35の開度が第1目標開度となるようにエアミックスドア35のサーボモータに出力される制御信号が決定される。
【0161】
さらに、複合型熱交換器13を通過した吹出空気の温度が吹出基準温度よりも高い温度にまで上昇した場合には、エアミックスドア35の開度が第1目標開度となるようにエアミックスドア35のサーボモータに出力される制御信号が決定される。なお、図7は、エアミックスドア35の目標開度を決定する処理の流れを説明するための模式図である。
【0162】
これにより、エアミックスドア35のサーボモータに出力される制御信号が、エアミックスドア35の開度が第3目標開度となるように決定された場合には、第1目標開度となるように決定された場合に比べて、複合型熱交換器13へ送風される車室内送風空気の送風量が減少する。逆に、エアミックスドア35のサーボモータに出力される制御信号が、エアミックスドア35の開度が第1目標開度となるように決定された場合には、第3目標開度となるように決定された場合に比べて、複合型熱交換器13へ送風される車室内送風空気の送風量が減少する。
【0163】
以上の如く、本実施形態では、暖房運転時に、エンジンEGの起動初期段階において、複合型熱交換器13の第2熱交換部132に流入する冷却水温度が第2熱媒体基準温度以下となっている場合に、複合型熱交換器13へ送風される送風空気の送風量を増加させることで、複合型熱交換器13における送風空気と吐出冷媒および冷却水との熱交換を積極的に促進させることができる。
【0164】
これにより、吐出冷媒の有する熱量を車室内送風空気に放熱して、車室内送風空気を加熱することができるので、エンジンEGの起動初期段階において車室内の暖房を早期に行うことができる。
【0165】
また、本実施形態では、複合型熱交換器13を通過した吹出空気の温度が吹出基準温度よりも高い温度にまで上昇した場合、複合型熱交換器13へ送風される送風空気の送風量を減少させるので、複合型熱交換器13における吐出冷媒と冷却水との熱交換を積極的に促進させることができる。
【0166】
これにより、高圧冷媒の温度が冷却水よりも高い場合には、高圧冷媒の有する熱量を、アウターフィン134を介して冷却水に放熱して、冷却水を加熱することができ、エンジンEGの暖機を行うことができる。
【0167】
なお、本実施形態では、冷却水温度や吹出空気の温度に応じて複合型熱交換器13へ送風される送風空気の送風量を減少させた際に、冷却水ポンプ41の電動モータ41bに出力される制御信号を、複合型熱交換器13の第2熱交換部131へ流入する冷却水の流入量が増加するように決定するようにしてもよい。これにより、複合型熱交換器13における送風空気と吐出冷媒および冷却水との熱交換をより積極的に促進させることができる。
【0168】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図8に基づいて説明する。図8は、本実施形態に係る圧縮機11の電動モータ11bの制御の概要を示す流れ図である。なお、本実施形態では、第1、第2実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0169】
上述の各実施形態では、例えば、暖房運転時には、圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号を、目標吹出温度TAOに基づいて算出した目標熱交換器温度に応じて決定するようにしている。
【0170】
これに対して、本実施形態では、複合型熱交換器13の第2熱交換部132に流入する冷却水温度が複合型熱交換器13に向けて送風する送風空気の温度以上となった場合に、複合型熱交換器13を通過した吹出空気の温度が目標吹出温度TAOに基づいて算出した目標熱交換器温度となるように圧縮機構11aの冷媒吐出能力を変更するようにしている。
【0171】
なお、複合型熱交換器13に向けて送風する送風空気の温度は、内外気切替装置33にてケーシング31内に外気を導入する場合には、外気センサの検出値(外気温)となり、ケーシング31内に内気を導入する場合には、内気センサの検出値(内気温)となる。
【0172】
具体的には、圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号については、目標吹出温度に基づいて算出した目標熱交換器温度に応じた第1目標回転数(第1目標吐出能力)、および第1目標回転数よりも高い回転数となる第2目標回転数(第2目標吐出能力)のいずれかに決定される。
【0173】
例えば、図8に示すように、圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号は、複合型熱交換器13の第2熱交換部132に流入する冷却水温度が複合型熱交換器13に向けて送風する送風空気の温度(送風空気流入温度)以上となった場合に、圧縮機11の電動モータ11bの回転数が第1目標回転数(第1目標吐出能力)となるように決定される。
【0174】
一方、複合型熱交換器13の第2熱交換部132に流入する冷却水温度が複合型熱交換器13に向けて送風する送風空気の温度より低くなった場合に、圧縮機11の電動モータ11bの回転数が第2目標回転数(第2目標吐出能力)となるように決定される。
【0175】
これにより、圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号が電動モータ11bの回転数が第1目標回転数となるように決定された場合には、複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流れる吐出冷媒の有する熱を車室内送風空気に放熱して車室内送風空気を加熱することができる。さらに、第2熱交換部132に流れる冷却水が有する熱を車室内送風空気に放熱して、車室内送風空気を加熱することが可能となる。つまり、吐出冷媒の有する熱量、および冷却水の有する熱量を、車室内送風空気を加熱するために有効に活用することが可能となる。
【0176】
また、圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号が電動モータ11bの回転数が第2目標回転数となるように決定された場合には、複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流れる吐出冷媒の有する熱を車室内送風空気に放熱して車室内送風空気を加熱して車室内送風空気を加熱することができる。さらに、複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流れる吐出冷媒の有する熱を第2熱交換部132に流れる冷却水に放熱して、冷却水を加熱することが可能となる。つまり、吐出冷媒の有する熱量を車室内送風空気および冷却水を加熱するために有効に活用することが可能となる。
【0177】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図9に基づいて説明する。図9は、本実施形態に係る圧縮機11の電動モータ11bの制御の概要を示す流れ図である。なお、本実施形態では、第1〜第3実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0178】
本実施形態では、複合型熱交換器13の第2熱交換部132に流入する冷却水温度が予め定められた第3熱媒体基準温度以下となった場合に、複合型熱交換器13を通過した吹出空気の温度が目標吹出温度TAOに基づいて算出した目標熱交換器温度となるように圧縮機構11aの冷媒吐出能力を変更すると共に、複合型熱交換器13の第2熱交換部131へ流入する冷却水の流入量を減少させるようにしている。なお、第3熱媒体基準温度は、上述の実施形態における第1、第2熱媒体基準温度と同等の値に限らず、第1、第2熱媒体基準温度と異なる値に設定することができる。
【0179】
具体的には、圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号については、目標吹出温度に基づいて算出した目標熱交換器温度に応じた目標回転数に決定される。
【0180】
また、冷却水ポンプ41の電動モータ41bに出力される制御信号については、電動モータ41bの回転数が冷却水温度センサの検出値に応じた第1目標回転数、および第1目標回転数よりも低い回転数となる第3目標回転数のいずれかとなるように決定される。
【0181】
例えば、図9に示すように、冷却水ポンプ41の電動モータ41bに出力される制御信号は、第2熱交換部132に流入する冷却水温度が第3熱媒体基準温度以下となった場合に、電動モータ41bの回転数が第3目標回転数となるように決定され、第2熱交換部132に流入する冷却水温度が第3熱媒体基準温度より高くなった場合に、電動モータ41bの回転数が第1目標回転数となるように決定される。
【0182】
これによれば、複合型熱交換器13の第2熱交換部132に流入する冷却水の温度が第3熱媒体基準温度以下となった場合に、第2熱交換部132への冷却水の流入量を減少させると共に、圧縮機構11の冷媒吐出能力を目標吹出温度に応じて調整することで、複合型熱交換器13にて吐出冷媒と送風空気との熱交換を積極的に促進させることで、車室内へ送風する空気を所望の温度に調整することが可能となる。
【0183】
ここで、本実施形態では、第2熱交換部132に流入する冷却水温度が第3熱媒体基準温度以下となった場合に、第2熱交換部132への冷却水の流入量が減少するように、冷却水ポンプ41の電動モータ41bに出力される制御信号を決定しているが、これに限定されない。例えば、第2熱交換部132に流入する冷却水温度が第3熱媒体基準温度以下となった場合に、冷却水循環回路40の開閉弁42を閉じることで、第2熱交換部132への冷却水の流入量が減少させてもよい。
【0184】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0185】
(1)上述の各実施形態で説明したヒートポンプサイクル10のように、暖房運転時に室外熱交換器19にて冷媒と外気とを熱交換させて冷媒を蒸発させる冷凍サイクル装置では、室外熱交換器19における冷媒蒸発温度が着霜温度(具体的には0℃)以下になると、室外熱交換器19に着霜が生ずる虞がある。このような着霜が生ずると、室外熱交換器19における外気が流通する外気通路が霜によって閉塞されてしまい、室外熱交換器19の熱交換能力が著しく低下してしまう。
【0186】
ここで、例えば、複合型熱交換器13の第1熱交換部131への圧縮機11の吐出冷媒の流入量を制限することで、室外熱交換器19を流通する冷媒の温度を着霜温度以上とすることが考えられる。
【0187】
また、室外熱交換器19を上述の実施形態で説明した複合型熱交換器13の如く、冷媒と外気とを熱交換させる熱交換部に加えて、外気および冷媒の少なくとも一方とエンジンEGとは異なる別熱源(車載バッテリ等)を冷却する熱媒体とを熱交換させる熱交換部を備える熱交換器で構成し、室外熱交換器19への冷媒の流入量を制限すると共に、別熱源の熱媒体の室外熱交換器19への流入量を増加させることで、室外熱交換器19の温度を着霜温度以上とすることが考えられる。
【0188】
しかし、いずれにおいても室外熱交換器19の除霜を行う際には、圧縮機11の圧縮機構11aの冷媒吐出能力が制限されて、複合型熱交換器13の第1熱交換部131に所望の熱量を有する冷媒を流通させることができないことがある。この場合、車室内送風空気の温度を調整するために電気ヒータ等の別の暖房熱源を設けることが考えられるが、車両用空調装置の部品点数の増加によるコスト増大等が懸念される。
【0189】
そこで、本実施形態の車両用空調装置では、室外熱交換器19への除霜時等のように圧縮機構11aの冷媒吐出能力が制限される場合には、第2熱交換部132への冷却水の流入量を増加させる。これにより、複合型熱交換器13における冷却水と送風空気との熱交換量を増大させることで、複合型熱交換器13における冷却水と送風空気との熱交換を積極的に促進させることができ、車室内へ送風する空気を温度調整することができる。つまり、冷却水の有する熱量を車室内へ送風する送風空気を加熱するために有効に活用することができる。
【0190】
なお、複合型熱交換器13の第2熱交換部132への冷却水の流入量を増加させる制御は、室外熱交換器19の除霜時以外にも、複合型熱交換器13の第1熱交換部131に所望の熱量を有する冷媒を流通させることができない場合に適用することができる。
【0191】
(2)上述の各実施形態では、外部熱源としてエンジンEGを採用する例について説明したが、外部熱源はエンジンEGに限定されない。例えば、作動時に発熱を伴う走行用電動モータや車載バッテリ等を外部熱源として採用してもよい。
【0192】
例えば、外部熱源として車載バッテリを採用する場合、車載バッテリは充電時に発熱を伴うことから、車載バッテリの充電時に生ずる熱により複合型熱交換器13の第2熱交換部132に流入する熱媒体を昇温させ、昇温した熱媒体の複合型熱交換器13の第2熱交換部132への流入量を増加させるようにしてもよい。この場合、車載バッテリの充電時に生ずる熱量を送風空気の温度調整に有効に活用することができる。
【0193】
(3)上述の各実施形態では、冷却水の温度等に応じて、エンジンEGの起動初期段階における各制御機器への制御信号を決定するようにしているが、上述のような制御信号の決定は、エンジンEGの起動初期段階に限らず、エンジンEGの起動初期段階を経過した後に適用してもよい。
【0194】
(4)上述の第1実施形態では、暖房運転時において外部熱源であるエンジンEGの起動初期段階における冷却水の温度が第1熱媒体基準温度以下となっている場合に、複合型熱交換器13への車室内送風空気の送風量を減少させると共に、複合型熱交換器13の第2熱交換部132への冷却水の流入量を増加させる例について説明したが、これに限定されない。
【0195】
例えば、冷房運転時においても、エンジンEGの起動初期段階における冷却水の温度が第1熱媒体基準温度よりも低い場合に、複合型熱交換器13への車室内送風空気の送風量を減少させると共に、冷却水循環回路40の開閉弁42を開いて複合型熱交換器13の第2熱交換部132への冷却水の流入量を増加させるようにしてもよい。
【0196】
また、エンジンEGの起動初期段階における冷却水の温度が第1熱媒体基準温度よりも低い場合に、少なくとも複合型熱交換器13への車室内送風空気の送風量を減少させるようにしてもよい。これによっても、複合型熱交換器13における吐出冷媒と冷却水との熱交換を積極的に促進することができる。
【0197】
また、外部熱源であるエンジンEGの起動初期段階に限らず、冷却水の温度が第1熱媒体基準温度以下となっている場合に、少なくとも複合型熱交換器13への車室内送風空気の送風量を減少させるようにしてもよい。
【0198】
(5)上述の各実施形態では、エアミックスドア35を送風量調整手段として機能させる例について説明したが、送風量調整手段を送風機32の電動モータ32bで構成してもよい。
【0199】
(6)上述の各実施形態では、複合型熱交換器13全域において冷媒用チューブ131aおよび熱媒体用チューブ132aを交互に配置する構成としているが、これに限定されず、複合型熱交換器13の一部において冷媒用チューブ131aおよび熱媒体用チューブ132aを交互に配置する構成としてもよい。また、複数の冷媒用チューブ131aおよび複数の熱媒体用チューブ132aの一方のうち、少なくとも1つのチューブを、他方のチューブ間に配置するようにしてもよい。
【0200】
(7)上述の各実施形態では、複合型熱交換器13の各チューブ131a、132aを空気流れ方向に2列配置する例について説明したが、これに限定されず、例えば、2列よりも多い複数列配置としてもよい。
【0201】
(8)上述の各実施形態では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用した例を説明したが冷媒の種類はこれに限定されない。例えば、二酸化炭素等の自然冷媒や炭化水素系冷媒等を採用してもよい。
【0202】
(9)上述の各実施形態で説明した車両用空調装置は、可能な範囲で組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0203】
10 ヒートポンプサイクル(冷凍サイクル)
11a 圧縮機構
11b 電動モータ(冷媒吐出能力変更手段)
13 複合型熱交換器
131 第1熱交換部
131a 冷媒用チューブ
131b 冷媒用ヘッダタンク部(冷媒用タンク部)
132 第2熱交換部
132a 熱媒体用チューブ
132b 熱媒体用ヘッダタンク部(熱媒体用タンク部)
133 送風空気通路
134 アウターフィン
32b 電動モータ(送風量調整手段)
35 エアミックスドア(送風量調整手段)
41a 圧送機構(熱媒体圧送手段)
41b 電動モータ(熱媒体流量調整手段)
42 開閉弁(熱媒体流量調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内へ空気を送風する送風手段(32a)と、
前記送風手段(32a)から送風された送風空気の空気通路を形成するケーシング(31)と、
前記ケーシング(31)の内部に配置され、冷凍サイクル(10)における冷媒を圧縮する圧縮機構(11a)から吐出された吐出冷媒と前記送風空気とを熱交換させる第1熱交換部(131)、および作動時に発熱を伴う外部熱源を温度調整する熱媒体と前記送風空気とを熱交換させる第2熱交換部(132)を有する複合型熱交換器(13)と、
前記複合型熱交換器(13)へ送風する前記送風空気の送風量を調整する送風量調整手段(35、32b)と、
前記圧縮機構(11a)の冷媒吐出能力を変更する吐出能力変更手段(11b)と、
前記熱媒体を圧送する熱媒体圧送手段(41a)と、
前記第2熱交換部(132)に流入する前記熱媒体の流入量を調整する熱媒体流量調整手段(41b、42)と、を備え、
前記複合型熱交換器(13)は、前記第1熱交換部(131)を流れる前記吐出冷媒と前記第2熱交換部(132)を流れる前記熱媒体との熱移動が可能なように、前記第1熱交換部(131)および前記第2熱交換部(132)が一体化され、
前記送風空気の送風量、前記圧縮機構(11a)の冷媒吐出能力、および前記熱媒体の流入量のうち、少なくとも1つを調整することで、前記複合型熱交換器(13)における前記送風空気、前記吐出冷媒、および前記熱媒体の間の熱交換量が変更されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記第1熱交換部(131)は、前記吐出冷媒が流れる複数の冷媒用チューブ(131a)を有し、
前記第2熱交換部(132)は、前記熱媒体が流れる複数の熱媒体用チューブ(132a)を有し、
前記冷媒用チューブ(131a)の外表面および前記熱媒体用チューブ(132a)の外表面には、前記送風空気が流れる送風空気通路(133)が形成され、
前記複数の冷媒用チューブ(131a)および前記複数の熱媒体用チューブ(132a)の一方のうち少なくとも1つは、他方の間に配置され、
前記冷媒用チューブ(131a)および前記熱媒体用チューブ(132a)は、互いに離間して配置され、前記冷媒用チューブ(131a)および前記熱媒体用チューブ(132a)の間に、前記送風空気通路(133)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記冷媒用チューブ(131a)の外表面および前記熱媒体用チューブ(132a)の外表面には、双方の熱交換部(131、132)における熱交換を促進すると共に、前記冷媒用チューブ(131a)を流通する前記吐出冷媒と前記熱媒体用チューブ(132a)を流通する前記熱媒体との間の熱移動を可能とするアウターフィン(134)が接合されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記送風量調整手段(35、32b)は、前記熱媒体の温度が予め定めた第1熱媒体基準温度以下となった際に、前記送風空気の送風量を減少させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記送風量調整手段(35、32b)は、
前記外部熱源が作動を開始してから予め定めた基準時間以内に、前記熱媒体の温度が前記第1熱媒体基準温度以下となった際に、前記送風空気の送風量を減少させ、
前記熱媒体の温度が前記第1熱媒体基準温度より高い温度となるまで上昇した際に、前記送風空気の送風量を増加させることを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記送風量調整手段(35、32b)は、
前記外部熱源が作動を開始してから予め定めた基準時間以内に、前記熱媒体の温度が予め定めた第2熱媒体基準温度以下となった際に、前記送風空気の送風量を増加させ、
前記複合型熱交換器(13)を通過した吹出空気の温度が予め定められた吹出基準温度より高い温度にまで上昇した際に、前記送風空気の送風量を減少させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記熱媒体流量調整手段(41b)は、前記送風量調整手段(35、32b)にて前記熱媒体の温度に応じて前記送風空気の送風量を減少させる際に、前記熱媒体の流入量を増加させることを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記ケーシング(31)の内部には、前記送風手段(32a)から送風される送風空気を前記複合型熱交換器(13)を迂回して流すバイパス通路(34)が形成されており、
前記送風量調整手段は、前記複合型熱交換器(13)へ流す前記送風空気と前記バイパス通路(34)へ流す前記送風空気の風量割合を変更するエアミックスドア(35)であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記吐出能力変更手段(11b)は、前記熱媒体の温度が前記送風手段(32a)により前記複合型熱交換器(13)に向けて送風される送風空気の温度以上となった際に、前記複合型熱交換器(13)を通過した吹出空気の温度が予め決定された目標温度に近づくように前記圧縮機構(11a)の冷媒吐出能力を変更することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記吐出能力変更手段(11b)は、前記熱媒体の温度が予め定めた第3熱媒体基準温度以下となった際に、前記複合型熱交換器(13)を通過した吹出空気の温度が予め決定された目標温度に近づくように前記圧縮機構(11b)の冷媒吐出能力を変更し、
前記熱媒体流量調整手段(41b、42)は、前記熱媒体の温度が前記第3熱媒体基準温度以下となった際に、前記熱媒体の流入量を減少させることを特徴とする請求項1ないし8に記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記熱媒体流量調整手段(41b、42)は、前記吐出能力変更手段(13b)による前記圧縮機構(13a)の冷媒吐出能力の調整が制限される際に、前記熱媒体の流入量を増加させることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記外部熱源は、充電時に発熱する車載バッテリであって、
前記熱媒体流量調整手段(41b、42)は、前記車載バッテリが充電されている際に、前記熱媒体の流入量を増加させることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項13】
前記第1熱交換部(131)は、前記冷媒用チューブ(131a)を流通する冷媒の集合または分配を行う冷媒用タンク部(131b)を有し、
前記第2熱交換部(132)は、前記熱媒体用チューブ(132a)を流通する熱媒体の集合または分配を行う熱媒体用タンク部(132b)を有し、
前記冷媒用タンク部(131b)は、前記冷媒用チューブ(131a)および前記熱媒体用チューブ(132a)の長手方向の一端側において前記冷媒用チューブ(131a)および前記熱媒体用チューブ(132a)の双方が固定され、
前記熱媒体用タンク部(132b)は、前記冷媒用チューブ(131a)および前記熱媒体用チューブ(132a)の長手方向の他端側において前記冷媒用チューブ(131a)および前記熱媒体用チューブ(132a)の双方が固定されていることを特徴とする請求項2または3に記載の車両用空調装置。
【請求項14】
前記冷媒用チューブ(131a)および前記熱媒体用チューブ(132a)は、前記送風空気通路(133)を流通する前記送風空気の流れ方向に複数列配置されていることを特徴とする請求項13に記載の車両用空調装置。
【請求項15】
前記冷媒用タンク部(131b)には、その長手方向の一端側に冷媒を導入する冷媒導入部(13a)および冷媒導出部(13b)が接続され、
前記熱媒体用タンク部(132b)には、その長手方向の一端側に冷媒を導入する熱媒体導入部(13c)および熱媒体導出部(13d)が接続されていることを特徴する請求項13または14に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−218463(P2012−218463A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82760(P2011−82760)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】