説明

車両用空調装置

【課題】冷房運転と暖房運転のどちらでも室外熱交換器において効率的な熱交換が行われ得る車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置1Aは、圧縮機11、第1室内熱交換器12、室外熱交換器14、膨張機構15および第2室内熱交換器16を含むヒートポンプ回路2を備えている。室外熱交換器14および膨張機構15は、第1室内熱交換器12と第2室内熱交換器16の間に配置されている。第1室内熱交換器12と第2室内熱交換器16の間の冷媒の流れ方向は、切換手段13により、冷房運転時には冷媒が室外熱交換器14および膨張機構15をこの順に通過する第1方向に切り換えられ、暖房運転時には冷媒が膨張機構15および室外熱交換器14をこの順に通過する第2方向に切り換えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の冷房および暖房を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばガソリンエンジンを備える自動車では、冷房にヒートポンプが用いられる一方、暖房にエンジンの廃熱が利用されていた。近年では、エンジンの廃熱量が少ないハイブリッド車、およびエンジンの廃熱が利用できない電気自動車が普及してきており、これに合わせて冷房だけでなく暖房にもヒートポンプを用いるようにした車両用空調装置が開発されてきている。例えば、特許文献1には、図6(a)に示すような車両用空調装置100が開示されている。
【0003】
この車両用空調装置100は、冷媒が一方向のみに流れるヒートポンプ回路110を備えている。ヒートポンプ回路110は、圧縮機121、第1室内熱交換器131、第1膨張弁122、室外熱交換器133、第2膨張弁123および第2室内熱交換器132を含み、これらの機器は流路によってこの順に接続されている。また、ヒートポンプ回路110には、第1膨張弁122をバイパスする短絡路と第2膨張弁123をバイパスする短絡路とが設けられており、これらの短絡路には第1開閉弁141および第2開閉弁142がそれぞれ設けられている。
【0004】
第1室内熱交換器131および第2室内熱交換器132は、内気(車室内の空気)または外気(車室外の空気)を選択的に流すためのダクト150内に配置されている。ダクト150内には図略の送風機によって第2室内熱交換器132側の一端から内気または外気が取り込まれ、その内気または外気が第1室内熱交換器131側の他端から車室内に吹き出される。すなわち、第2室内熱交換器132は、第1室内熱交換器131よりも風上側に位置している。
【0005】
また、ダクト150内には、図6(b)に示すように、第2室内熱交換器132の風上側に第1ダンパ161が配設され、第1室内熱交換器131の風上側に第2ダンパ162が配設されている。
【0006】
このような構成の車両空調装置100では、冷房運転時は、第1開閉弁141が開かれ、第2開閉弁142が閉じられる。また、第1ダンパ161および第2ダンパ162は、図6(b)中に実線で示す位置にセットされる。これにより、圧縮機121から吐出された冷媒は、第1室内熱交換器131で放熱することなく室外熱交換器133に流入し、ここで放熱した後に第2膨張弁123で膨張される。膨張された冷媒は、第2室内熱交換器132で吸熱した後に圧縮機121に吸入される。
【0007】
一方、暖房運転時は、第1開閉弁141が閉じられ、第2開閉弁142が開かれる。また、第1ダンパ161および第2ダンパ162は、図6(b)中に二点鎖線で示す位置にセットされる。これにより、圧縮機121から吐出された冷媒は、第1室内熱交換器131で放熱し、第1膨張弁122で膨張される。膨張された冷媒は、室外熱交換器133に流入し、ここで吸熱した後に第2室内熱交換器132でさらに吸熱することなく圧縮機121に吸入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3433297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した構成の車両用空調装置100では、冷房運転時も暖房運転時も室外熱交換器133を通過する冷媒の向きが同じであるため、室外熱交換器133での熱交換作用に問題がある。その理由は以下のとおりである。
【0010】
すなわち、車両用空調装置100では、暖房運転時、第1膨張弁122で膨張された気液二相状態の冷媒が室外熱交換器133に流入する。一般に、室外熱交換器は、複数のパスを有する熱交換器本体を含むため、気液二相状態の冷媒が流入する室外熱交換器では、熱交換器本体の上流側に複数のパスでの質量流量を均一にするためのキャピラリーチューブなどの減圧管が設けられる。しかしながら、車両用空調装置100における室外熱交換器133にそのような構成が採用された場合には、冷房運転時、室外熱交換器133に流入する高温高圧の冷媒が減圧管によって減圧される。その結果、凝縮温度が低下し、冷房運転時の外部への放熱量が低下する。一方で、減圧管を設けなければ、暖房運転時に熱交換器本体における複数のパスでの質量流量が不均一になり、外部からの吸熱量が低下する。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑み、冷房運転と暖房運転のどちらでも室外熱交換器において効率的な熱交換が行われ得る車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は、車室内の冷房および暖房を行う車両用空調装置であって、冷媒を圧縮する圧縮機、前記圧縮機から吐出された冷媒と前記車室内に送られる空気との熱交換を行う第1室内熱交換器、および前記圧縮機に吸入される冷媒と前記車室内に送られる空気との熱交換器を行う第2室内熱交換器を含むとともに、前記第1室内熱交換器と前記第2室内熱交換器の間に配置された、前記車室外の空気と冷媒との熱交換を行う室外熱交換器、および冷媒を膨張させる膨張機構を含むヒートポンプ回路と、前記ヒートポンプ回路に設けられた、前記第1室内熱交換器と前記第2室内熱交換器の間の冷媒の流れ方向を、冷房運転時には冷媒が前記室外熱交換器および前記膨張機構をこの順に通過する第1方向に切り換え、暖房運転時には冷媒が前記膨張機構および前記室外熱交換器をこの順に通過する第2方向に切り換える切換手段と、を備える、車両用空調装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成によれば、冷房運転時と暖房運転時とで室外熱交換器を通過する冷媒の向きが逆になるため、熱交換器本体の膨張機構側に減圧管が設けられた室外熱交換器を用いれば、暖房運転では熱交換器本体における質量流量の均一化を図ることができ、冷房運転では熱交換器本体に高圧の冷媒をそのまま導くことができる。これにより、冷房運転と暖房運転のどちらでも効率的な熱交換を行うことができる。
【0014】
しかも、冷房運転時には膨張機構が室外熱交換器の上流側に位置し、暖房運転時には膨張機構が室外熱交換器の下流側に位置するため、1つの膨張機構および1つの切換手段を用いた簡単な構成で冷房運転と暖房運転の双方を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置の構成図
【図2】室外熱交換器の構成図
【図3】本発明の第2実施形態に係る車両用空調装置の構成図
【図4】本発明の第3実施形態に係る車両用空調装置の構成図
【図5】(a)および(b)は代替案の切換手段の構成図
【図6】(a)は従来の車両用空調装置の構成図、(b)は同車両用空調装置に用いられるダンパを示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は本発明の一例に関するものであり、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置1Aの構成図である。この車両用空調装置1Aは、図略の車室内の冷房および暖房を行うものであり、冷媒を循環させるヒートポンプ回路2と、制御装置6(図1では図面の簡略化のために信号線の一部のみを作図)とを備えている。なお、冷媒としては、R134a、R410A、HFO−1234yf、HFO−1234ze、CO2などに加え、他のHFC系、HC系などが利用できる。
【0018】
ヒートポンプ回路2は、圧縮機11、第1室内熱交換器12、四方弁13、室外熱交換器14、膨張弁15および第2室内熱交換器16を含んでおり、これらの機器は、第1流路21〜第7流路27によって接続されている。具体的に、圧縮機11の吸入口は、第7流路27を介して第2室内熱交換器16に接続されており、圧縮機11の吐出口は、第1流路21を介して第1室内熱交換器12に接続されている。第1室内熱交換器12および第2室内熱交換器16は、それぞれ第2流路22および第6流路26を介して四方弁13の2つのポートに接続されており、四方弁13の残りの2つのポートには、それぞれ第3流路23および第5流路25を介して室外熱交換器14および膨張弁15が接続されている。室外熱交換器14と膨張弁15とは、第4流路24を介して互いに接続されている。換言すれば、室外熱交換器14および膨張弁15は、第1室内熱交換器12と第2室内熱交換器16の間に配置されている。なお、第7流路27には、アキュムレータ17が設けられている。
【0019】
四方弁13は、本発明の切換手段として機能するものであり、第1室内熱交換器12と第2室内熱交換器16の間の冷媒の流れ方向を、冷房運転時には破線矢印で示す第1方向に切り換え、暖房運転時には実線矢印で示す第2方向に切り換える。第1方向は、冷媒が室外熱交換器14および膨張弁13をこの順に通過する方向であり、第2方向は、冷媒が膨張弁13および室外熱交換器14をこの順に通過する方向である。本実施形態では、第1方向では、第1室内熱交換器12から流出した冷媒が室外熱交換器14および膨張弁13をこの順に通過した後に第2室内熱交換器16に流入し、第2方向では、第1室内熱交換器12から流出した冷媒が膨張弁13および室外熱交換器14をこの順に通過した後に第2室内熱交換器16に流入する。
【0020】
圧縮機11は、図略の電動モータにより駆動されるものであり、吸入口から吸入した冷媒を圧縮して吐出口から吐出する。電動モータは、圧縮機11の内部に配置されていてもよいし、外部に配置されていてもよい。
【0021】
第2室内熱交換器16は、圧縮機11に吸入される冷媒と車室内に送られる空気との間で熱交換を行い、第1室内熱交換器12は、圧縮機11から吐出された冷媒と車室内に送られる空気との間で熱交換を行う。本実施形態では、第2室内熱交換器16および第1室内熱交換器12は、送風機4により車室内の空気(内気)および/または車室外の空気(外気)が流されるダクト3内に配置されている。すなわち、第2室内熱交換器16および第1室内熱交換器12は、送風機4により供給される内気および/または外気と冷媒との間で熱交換を行う。さらに、本実施形態では、ダクト3内で、第2室内熱交換器16が第1室内熱交換器12よりも風上側に位置している。
【0022】
ダクト3は、一端に流入口31を有し、他端に流出口32を有する。流入口31は、内気を循環させるための内気導入口と車室内に外気を導入するための外気導入口の一方であってもよいし、双方を含んでいてもよい。流入口31が内気導入口と外気導入口の双方を含む場合は、ダクト3内に、内気導入口を通じてダクト3内に取り込まれる内気の量と外気導入口を通じてダクト3内に取り込まれる外気の量の比率を調整する吸気ダンパが配設され得る。流出口32は、車室内に開口するものであればよく、デフロスタ吹出口、フェイス吹出口およびフット吹出口など複数に分岐していてもよい。送風機4としては、流入口31の近くに配置されるブロワを用いてもよいし、流出口32の近くにも配置可能なファンを用いてもよい。なお、以下では、説明の便宜のために、送風機4によりダクト3内に流される空気が内気100%であると仮定する。また、ダクト3の内部の構成については、後述にて詳細に説明する。
【0023】
膨張弁15は、冷媒を膨張させるものであり、本発明の膨張機構の一例である。本発明の膨張機構としては、膨張する冷媒から動力を回収する容積型の膨張機等を採用してもよい。
【0024】
室外熱交換器14は、車室外(例えば、自動車のフロント)に配置され、車両の走行およびファン18により供給される外気と冷媒との間で熱交換を行う。室外熱交換器14は、冷房運転時に凝縮器として機能し、暖房運転時に蒸発器として機能する。
【0025】
具体的に、室外熱交換器14は、図2に示すように、複数のパス14bを有する熱交換器本体14aと、熱交換器本体14aの両側に配置された第1ヘッダ14cおよび第2ヘッダ14dとを含む。第1ヘッダ14cは、第4流路24を介して膨張弁15と接続されており、第2ヘッダ14dは、第3流路23を介して四方弁13と接続されている。また、第1ヘッダ14cは、パス14bと同数の減圧管14eによって熱交換器本体14aに接続されており、第2ヘッダ14dは、パス14bと同数の連絡管14fによって熱交換器本体14aに接続されている。なお、図2中にも、上述した第1方向を破線矢印で示し、第2方向を実線矢印で示す。
【0026】
暖房運転時には、膨張弁15で膨張された気液二相状態の冷媒が第4流路24を通じて第1ヘッダ14cに導かれ、各減圧管14eに流れ込む。すなわち、第1ヘッダ14cおよび減圧管14eは、気液二相状態の冷媒を分流する。気液二相状態の冷媒は、密度が均一ではないため、体積流量が同じでも質量流量が異なることがある。減圧管14eは、気液二相状態の冷媒に圧力損失を与えることにより、全てのパス14bでの質量流量を均一にするためのものである。例えば、減圧管14eとしては、パス14bを構成し得る伝熱管の一方の端部を絞った絞り部を用いることができ、連絡管14fとしては、その伝熱管の他方の端部を用いることができる。なお、減圧管14eおよび連絡管14fは、それぞれ第1ヘッダ14cおよび第2ヘッダ14d内に配置されていてもよい。
【0027】
一方、冷房運転時には、第1室内熱交換器12でほとんど放熱しなかった高温高圧の冷媒が第2流路22および第3流路23を通じて第2ヘッダ14dに導かれ、各連絡管14fに流れ込む。すなわち、第2ヘッダ14dおよび連絡管14fは、高温高圧の冷媒を分流する。ガス冷媒は、密度が均一な気相であるため、分流するだけで全てのパス14bでの質量流量が均一になる。連絡管14fは、高温高圧の冷媒にできるだけ圧力損失を与えないように、減圧管14eよりも十分に大きな断面積を有する。
【0028】
なお、暖房運転時および冷房運転時ともに、減圧管14eによって冷媒が減圧されるが、この減圧幅が膨張弁15による減圧幅と合わせて冷凍サイクルの高低圧力差になるように膨張弁15が調整されるため、特に問題はない。
【0029】
次に、図1を参照して、ダクト3の内部の構成を詳細に説明する。なお、図1はダクト3の形状を模式的に表すものであり、ダクト3の実際の形状は、当該ダクト3が設置されるスペースに合わせて膨らんでいたりうねっていたりしていてもよい。
【0030】
本実施形態では、第2室内熱交換器16が、ダクト3内で当該第2室内熱交換器16を経由する風上側第1流路3Aと当該第2室内熱交換器16を経由しない風上側第2流路3Bとが層をなすように配置されている。同様に、第1室内熱交換器12も、ダクト3内で当該第1室内熱交換器12を経由する風下側第1流路3Cと当該第1室内熱交換器12を経由しない風下側第2流路3Dとが層をなすように配置されている。また、ダクト3内には、風上側第1流路3Aと風上側第2流路3Bとを仕切る第1仕切り板41と、風下側第1流路3Cと風下側第2流路3Dとを仕切る第2仕切り板42とが配設されている。そして、第2室内熱交換器16および第1室内熱交換器12は、風上側第1流路3Aが風下側第2流路3Dと連続し、風上側第2流路3Bが風下側第1流路3Cと連続するように、第1仕切り板41および第2仕切り板42を挟んで互いに反対側に位置している。
【0031】
さらに、ダクト3内には、風上側第1流路3Aを流れる風量と風上側第2流路3Bを流れる風量の比率を調整する第1ダンパ51と、風下側第1流路3Cを流れる風量と風下側第2流路3Dを流れる風量の比率を調整する第2ダンパ52とが配設されている。本実施形態では、第1ダンパ51および第2ダンパ52がそれぞれ第1仕切り板41および第2仕切り板42の風上側に配置されているが、第1ダンパ51および第2ダンパ52はそれぞれ第1仕切り板41および第2仕切り板42の風下側に配置されていてもよい。
【0032】
上述した圧縮機11、膨張弁15、四方弁13およびダンパ51,52は、制御装置6により制御される。制御装置6は、車室内に配置された操作パネル(図示せず)と接続されており、冷房運転および暖房運転を行う。以下、冷房運転時および暖房運転時における車両用空調装置1Aの動作を説明する。
【0033】
なお、以下では、説明の簡略化のために、第1ダンパ51については、風上側第1流路3Aを遮断する位置を熱交換器側遮断位置、風上側第2流路3Bを遮断する位置をバイパス側遮断位置、第1流路3Aを流れる風量と第2流路3Bを流れる風量とが等しくなる位置を中間位置、中間位置と熱交換器側遮断位置との間の位置を熱交換器側抑制位置、中間位置とバイパス側遮断位置との間の位置をバイパス側抑制位置という。一方、第2ダンパ52については、風下側第1流路3Cを遮断する位置を熱交換器側遮断位置、風下側第2流路3Dを遮断する位置をバイパス側遮断位置、第1仕切り板41の風下側の端部と第2仕切り板42の風上側の端部とを結ぶ線上に位置する位置を中間位置、中間位置と熱交換器側遮断位置との間の位置を熱交換器側抑制位置、中間位置とバイパス側遮断位置との間の位置をバイパス側抑制位置という。
【0034】
<冷房運転>
通常の冷房運転時、制御装置6は、まずヒートポンプ回路2における第1室内熱交換器12と第2室内熱交換器16の間で冷媒が破線矢印で示す第1方向に流れるように四方弁13を制御する。また、制御装置6は、第1ダンパ51をバイパス側遮断位置にセットし、第2ダンパ52を中間位置または熱交換器側遮断位置にセットする。このため、圧縮機11から吐出された高温高圧の冷媒は、第1室内熱交換器12をほとんど放熱することなくそのまま通過して室外熱交換器14に流入し、ここで外気に放熱して中温高圧となる。室外熱交換器14から流出した中温高圧の冷媒は、膨張弁15で膨張されることにより低温低圧の気液二相冷媒となる。気液二相冷媒は、第2室内熱交換器16に流入し、ここで内気から吸熱して蒸発する。第2室内熱交換器16から流出した低温低圧の冷媒は、再び圧縮機11に吸入されて圧縮される。一方、送風機4により流入口31からダクト3内に取り込まれた内気は、第2室内熱交換器16で冷却された後に、流出口32から車室内に吹き出される。
【0035】
冷房と同時に除湿を行う場合には、制御装置6は、第2ダンパ52を中間位置または熱交換器側遮断位置からバイパス側抑制位置にシフトさせて、第2室内熱交換器16で冷却された内気の一部を第1室内熱交換器12で加熱する。
【0036】
<暖房運転>
通常の暖房運転時、制御装置6は、まずヒートポンプ回路2における第1室内熱交換器12と第2室内熱交換器16の間で冷媒が実線矢印で示す第2方向に流れるように四方弁13を制御する。また、制御装置6は、第1ダンパ51を熱交換器側遮断位置にセットし、第2ダンパ52を中間位置またはバイパス側遮断位置にセットする。このため、圧縮機11から吐出された高温高圧の冷媒は、第1室内熱交換器12で内気に放熱して中温高圧となる。第1室内熱交換器12から流出した中温高圧の冷媒は、膨張弁15で膨張されることにより低温低圧の気液二相冷媒となる。気液二相冷媒は、室外熱交換器14に流入し、ここで外気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器14から流出した低温低圧の冷媒は、第2室内熱交換器16をほとんど吸熱することなくそのまま通過し、再び圧縮機11に吸入されて圧縮される。一方、送風機4により流入口31からダクト3内に取り込まれた内気は、第1室内熱交換器12で加熱された後に、流出口32から車室内に吹き出される。
【0037】
暖房と同時に除湿を行う場合には、制御装置6は、第1ダンパ51を熱交換器側遮断位置から熱交換器側抑制位置にシフトさせて、第1室内熱交換器12で加熱される前の内気の一部を第2室内熱交換器16で冷却除湿する。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の車両用空調装置1Aでは、冷房運転時と暖房運転時とで室外熱交換器14を通過する冷媒の向きが逆になる。そして、室外熱交換器14は、熱交換器本体14aの膨張弁15側に減圧管14eが設けられ、その反対側に連絡管14fが設けられた構成を有しているので、暖房運転では熱交換器本体14aにおいて質量流量の均一化を図ることができ、冷房運転では熱交換器本体14aに高圧の冷媒を凝縮温度の低下を起こすこと無くそのまま導くことができる。これにより、冷房運転と暖房運転のどちらでも、冷媒分流を行う減圧管14eは熱交換する冷媒温度に影響を与えないので、効率的な熱交換を行うことができる。
【0039】
しかも、冷房運転時には膨張弁15が室外熱交換器14の上流側に位置し、暖房運転時には膨張弁15が室外熱交換器14の下流側に位置するため、1つの膨張弁15および1つの四方弁13を用いた簡単な構成で冷房運転と暖房運転の双方を実行することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、ダクト3内に第1仕切り板41および第2仕切り板42が設けられているが、第1仕切り板41がなくても第1ダンパ51により風上側第1流路3Aを流れる風量と風上側第2流路3Bを流れる風量の比率を変更することは可能である。同様に、第2仕切り板42がなくても第2ダンパ52により風下側第1流路3Cを流れる風量と風下側第2流路3Dを流れる風量の比率を変更することは可能である。
【0041】
また、第2室内熱交換器16および第1室内熱交換器12は、必ずしも第1仕切り板41および第2仕切り板42を挟んで互いに反対側に位置している必要はなく、風上側第1流路3Aが風下側第1流路3Cと連続し、風上側第2流路3Bが風下側第2流路3Dと連続するように、第1仕切り板41および第2仕切り板42に対して同じ方向に配置されていてもよい。
【0042】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係る車両用空調装置1Bの構成図である。なお、本実施形態では、第1実施形態と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略することがある。この点は、後述する第3実施形態でも同様である。
【0043】
本実施形態の車両用空調装置1Bは、第1室内熱交換器12およびこの回りの構造以外は第1実施形態の車両用空調装置1Aと同じ構成を有している。具体的に、本実施形態では、第1室内熱交換器12が、当該第1室内熱交換器12が配置される位置でのダクト3の断面積と同程度の大きさを有している。換言すれば、第1室内熱交換器12は、ダクト3の内部を通風方向に分断するようにダクト3内に配置されている。また、バイパス回路2には、第1室内熱交換器12をバイパスするように第1流路21と第2流路22とをつなぐバイパス路7が設けられている。
【0044】
バイパス路7には、開閉弁71が設けられている。開閉弁71は、例えば、暖房運転時および除湿が必要な冷房運転時に閉じられ、それ以外の冷房運転時に開かれる。このような構成であれば、第1室内熱交換器12を必要なときのみ働かせることができる。
【0045】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態に係る車両用空調装置1Cの構成図である。本実施形態の車両用空調装置1Cは、第2室内熱交換器16およびこの回りの構造以外は第1実施形態の車両用空調装置1Aと同じ構成を有している。具体的に、本実施形態では、第2室内熱交換器16が、当該第2室内熱交換器16が配置される位置でのダクト3の断面積と同程度の大きさを有している。換言すれば、第2室内熱交換器16は、ダクト3の内部を通風方向に分断するようにダクト3内に配置されている。また、バイパス回路2には、第2室内熱交換器16をバイパスするように第6流路26と第7流路27とをつなぐバイパス路8が設けられている。
【0046】
バイパス路8には、開閉弁81が設けられている。開閉弁81は、例えば、冷房運転時および除湿が必要な暖房運転時に閉じられ、それ以外の暖房運転時に開かれる。このような構成であれば、第2室内熱交換器16を必要なときのみ働かせることができる。
【0047】
(その他の実施形態)
前記各実施形態では、切換手段として四方弁13が用いられていたが、本発明の切換手段はこれに限られるものではない。例えば、切換手段は、図5(a)に示すような、第2流路22および第6流路26と接続された2つの三方弁131が一対の配管132によってループ状に接続され、それらの配管132に第3流路23および第5流路25が接続された回路13Aであってもよい。あるいは、切換手段は、図5(b)に示すようないわゆるブリッジ回路13Bであってもよい。
【0048】
また、第2室内熱交換器16はダクト3内で必ずしも第1室内熱交換器12よりも風上側に位置している必要はなく、それらの配置位置が逆になっていてもよい。ただし、第2室内熱交換器16が第1室内熱交換器12よりも風上側に位置していれば、暖房運転時にダクト3内を流れる空気を第1室内熱交換器12で加熱する前に第2室内熱交換器16で冷却して除湿することが可能になる。
【0049】
また、図示は省略するが、第2実施形態の第1室内熱交換器12およびバイパス路7を第3実施形態の第2室内熱交換器16およびバイパス路8と組み合わせることも可能である。さらに、第1実施形態でも、第2実施形態のバイパス路7と第3実施形態のバイパス路8のいずれか一方または双方を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の車両用空調装置は、暖房に必要な熱源が十分に確保できない車両に適用できるので、特に電気自動車、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)や燃料電池自動車などの非燃焼系の自動車に有用である。
【符号の説明】
【0051】
1A〜1C 車両用空調装置
11 圧縮機
12 第1室内熱交換器
13 四方弁(切換手段)
13A 回路(切換手段)
13B ブリッジ回路(切換手段)
14 室外熱交換器
14a 熱交換器本体
14b パス
14c 第1ヘッダ
14d 第2ヘッダ
14e 減圧管
14f 連絡管
15 膨張弁(膨張機構)
16 第2室内熱交換器
2 ヒートポンプ回路
3 ダクト
3A 風上側第1風路
3B 風上側第2風路
3C 風下側第1風路
3D 風下側第2風路
41,42 仕切り板
51,52 ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の冷房および暖房を行う車両用空調装置であって、
冷媒を圧縮する圧縮機、前記圧縮機から吐出された冷媒と前記車室内に送られる空気との熱交換を行う第1室内熱交換器、および前記圧縮機に吸入される冷媒と前記車室内に送られる空気との熱交換器を行う第2室内熱交換器を含むとともに、前記第1室内熱交換器と前記第2室内熱交換器の間に配置された、前記車室外の空気と冷媒との熱交換を行う室外熱交換器、および冷媒を膨張させる膨張機構を含むヒートポンプ回路と、
前記ヒートポンプ回路に設けられた、前記第1室内熱交換器と前記第2室内熱交換器の間の冷媒の流れ方向を、冷房運転時には冷媒が前記室外熱交換器および前記膨張機構をこの順に通過する第1方向に切り換え、暖房運転時には冷媒が前記膨張機構および前記室外熱交換器をこの順に通過する第2方向に切り換える切換手段と、
を備える、車両用空調装置。
【請求項2】
内部に前記第1室内熱交換器および前記第2室内熱交換器が配置された、送風機により前記車室内の空気および/または前記車室外の空気が流されるダクトをさらに備える、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記第2室内熱交換器は、前記ダクト内で前記第1室内熱交換器よりも風上側に位置している、請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記第2室内熱交換器は、前記ダクト内で当該第2室内熱交換器を経由する風上側第1流路と当該第2室内熱交換器を経由しない風上側第2流路とが層をなすように配置されている、請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記ダクト内に配設された、前記風上側第1流路を流れる風量と前記風上側第2流路を流れる風量の比率を調整するダンパをさらに備える、請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記ダクト内に、前記風上側第1流路と前記風上側第2流路とを仕切るように配設された仕切り板をさらに備える、請求項4または5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記第1室内熱交換器は、前記ダクト内で当該第1室内熱交換器を経由する風下側第1流路と当該第1室内熱交換器を経由しない風下側第2流路とが層をなすように配置されている、請求項3〜6のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記ダクト内に配設された、前記風下側第1流路を流れる風量と前記風下側第2流路を流れる風量の比率を調整するダンパをさらに備える、請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記ダクト内に、前記風下側第1流路と前記風下側第2流路とを仕切るように配設された仕切り板をさらに備える、請求項7または8に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記室外熱交換器は、複数のパスを有する熱交換器本体と、前記膨張機構に接続された第1ヘッダと、前記第1ヘッダと前記熱交換器本体を接続する複数の減圧管と、前記前記切換手段と接続された第2ヘッダと、前記第2ヘッダと前記熱交換器本体を接続する複数の連絡管と、を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−245849(P2012−245849A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117967(P2011−117967)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】