車両用空調装置
【課題】電気ヒータの作動開始時の突入電流発生頻度を低減できる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】空調制御装置50が、エンジン冷却水温度をエンジンON水温およびエンジンOFF水温と比較して、エンジンEGの作動要求信号の出力の要否を決定するとともに、エンジン冷却水温度をPTCヒータのON水温およびOFF水温と比較して、PTCヒータ15の作動および停止を決定する車両用空調装置において、PTCヒータのON水温とOFF水温の差dPTCを、エンジンON水温とエンジンOFF水温との差dEGよりも大きくする。これにより、PTCヒータのON水温とOFF水温の少なくとも一方が、冷却水温度の変動範囲とほぼ等しいエンジンON水温とエンジンOFF水温との間の温度範囲から離れるので、PTCヒータの作動と停止との切り替えが起き難くなり、電気ヒータの作動開始時の突入電流発生頻度を低減できる。
【解決手段】空調制御装置50が、エンジン冷却水温度をエンジンON水温およびエンジンOFF水温と比較して、エンジンEGの作動要求信号の出力の要否を決定するとともに、エンジン冷却水温度をPTCヒータのON水温およびOFF水温と比較して、PTCヒータ15の作動および停止を決定する車両用空調装置において、PTCヒータのON水温とOFF水温の差dPTCを、エンジンON水温とエンジンOFF水温との差dEGよりも大きくする。これにより、PTCヒータのON水温とOFF水温の少なくとも一方が、冷却水温度の変動範囲とほぼ等しいエンジンON水温とエンジンOFF水温との間の温度範囲から離れるので、PTCヒータの作動と停止との切り替えが起き難くなり、電気ヒータの作動開始時の突入電流発生頻度を低減できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車やアイドリングストップ車のように、走行状態等に応じてエンジンを自動停止する車両に搭載され、エンジン冷却水を熱源として車室内への送風空気を加熱するヒータコアを備える車両用空調装置において、走行状態等に応じてエンジンが停止している場合であっても、エンジン冷却水の温度が低ければ、空調のためにエンジン作動を要求するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献1に記載の車両用空調装置は、車室内への送風空気を加熱する電気ヒータを備えている。この電気ヒータは、エンジン冷却水の温度に基づいて、その作動本数が決定される(特許文献1の図22参照)。
【0004】
また、電気ヒータとしては、PTC素子(正特性サーミスタ素子)を用いたPTCヒータが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−174042号公報
【特許文献2】実公平7−29597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電気ヒータは、例えば、特許文献2の第2頁〈考案が解決しようとする課題〉の欄に記載のように、その通電初期(始動時)に突入電流が流れることが知られている。
【0007】
このため、上記特許文献1のように、空調のためにエンジン作動を要求するとともに、車室内への送風空気を加熱するPTCヒータ等の電気ヒータを備える車両用空調装置において、電気ヒータのO/OFF切替の頻度が高いと、突入電流の発生頻度が高くなって、車両に搭載されている他の電子機器への悪影響、例えば、電圧降下や電流制限等が起きる可能性がある。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、電気ヒータの作動開始時の突入電流発生頻度を低減できる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
熱媒体の温度を所定温度以上に維持するために、温度上昇手段(EG)の停止時に、温度上昇手段(EG)の作動を要求する作動要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)と、
電気ヒータ(15)の作動と停止の切り替えを制御する電気ヒータ制御手段(50b)とを備え、
要求信号出力手段(50a)は、熱媒体の温度が第1の作動用しきい値よりも低い場合に、作動要求信号を出力し、熱媒体の温度が第1の停止用しきい値よりも高い場合に、作動要求信号を出力しないようになっており、
電気ヒータ制御手段(50b)は、熱媒体の温度が第2の作動用しきい値よりも低い場合に、電気ヒータ(15)を作動させ、熱媒体の温度が第2の停止用しきい値よりも高い場合に、電気ヒータ(15)を停止させるようになっており、
電気ヒータ制御手段(50b)は、第2の作動用しきい値および第2の停止用しきい値として、第2の作動用しきい値と第2の停止用しきい値の差(dPTC)が、第1の作動用しきい値と第1の停止用しきい値との差(dEG)よりも大きく設定されているものを用いることを特徴としている。
【0010】
これによると、要求信号出力手段によって、温度上昇手段(EG)の作動と停止とが切り替えられるので、熱媒体の温度が温度上昇手段(EG)側の第1の作動用しきい値と第1の停止用しきい値との間の温度範囲付近で維持される。
【0011】
このとき、本発明と異なり、電気ヒータ(15)側の第2の作動用しきい値と第2の停止用しきい値とが、それぞれ、温度上昇手段(EG)側の第1の作動用しきい値と第1の停止用しきい値と一致する場合、熱媒体の温度変化によって生じる温度上昇手段(EG)の作動と停止の切り替え毎に、電気ヒータ(15)の作動と停止の切り替えが起きてしまう。
【0012】
これに対して、本発明では、電気ヒータ(15)側の第2の作動用しきい値と第2の停止用しきい値の少なくとも一方は、温度上昇手段(EG)側の第1の作動用しきい値と第1の停止用しきい値との間の温度範囲から離れるので、電気ヒータ(15)側の第2の作動用しきい値と第2の停止用しきい値とが、それぞれ、温度上昇手段(EG)側の第1の作動用しきい値と第1の停止用しきい値と一致する場合と比較して、電気ヒータ(15)の作動と停止の切替頻度を少なくできる。この結果、電気ヒータの作動開始時の突入電流発生頻度を低減できる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明では、
熱媒体の温度を所定温度以上に維持するために、温度上昇手段(EG)の停止時に、温度上昇手段(EG)の作動を要求する作動要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)と、
電気ヒータ(15)の作動と停止の切り替えを制御する電気ヒータ制御手段(50b)とを備え、
要求信号出力手段(50a)は、熱媒体の温度が第1の作動用しきい値よりも低い場合に、作動要求信号を出力し、熱媒体の温度が第1の停止用しきい値よりも高い場合に、作動要求信号を出力しないようになっており、
電気ヒータ制御手段(50b)は、熱媒体の温度が第2の作動用しきい値よりも低い場合に、電気ヒータ(15)を作動させ、熱媒体の温度が第2の停止用しきい値よりも高い場合に、電気ヒータ(15)を停止させるようになっており、
電気ヒータ制御手段(50b)は、第2の停止用しきい値として、乗員によって設定される車室内の目標温度(Tset)が高い程、高く補正されたものを用いることを特徴としている。
【0014】
これによると、要求信号出力手段によって、温度上昇手段(EG)の作動と停止とが切り替えられるので、熱媒体の温度が温度上昇手段(EG)側の第1の作動用しきい値と第1の停止用しきい値との間の温度範囲付近で維持される。
【0015】
一方、電気ヒータ制御手段によって、電気ヒータの作動と停止とが切り替えられる際に、ユーザーが車室内の目標温度を比較的高く設定するときでは、目標温度を比較的低く設定するときよりも、電気ヒータ側の第2の停止用しきい値が高くなるので、電気ヒータを作動させるときの熱媒体の温度範囲(電気ヒータのON領域)を拡大できる。すなわち、電気ヒータ側の第2の停止用しきい値が高くなることで、温度上昇手段側の第1の作動用しきい値と第1の停止用しきい値との間の温度範囲付近で熱媒体が温度変化するときに、熱媒体の温度が電気ヒータ側の第2の停止用しきい値を超える機会を減少させることができ、電気ヒータが連続作動する機会を増大させることができる。また、ユーザーが車室内の目標温度を比較的高く設定するときは、ユーザーが高い吹出温を望むときである。吹出温とは吹出口からの吹出空気温度である。
【0016】
よって、本発明によれば、ユーザーが高い吹出温を望むときに、吹出温を高くすることができるとともに、電気ヒータの作動と停止の切替頻度を少なくでき、電気ヒータの作動開始時の突入電流発生頻度を低減できる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明では、
熱媒体の温度を所定温度以上に維持するために、温度上昇手段(EG)の停止時に、温度上昇手段(EG)の作動を要求する作動要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)と、
電気ヒータ(15)の作動と停止の切り替えを制御する電気ヒータ制御手段(50b)とを備え、
要求信号出力手段(50a)は、熱媒体の温度が第1の作動用しきい値よりも低い場合に、作動要求信号を出力し、熱媒体の温度が第1の停止用しきい値よりも高い場合に、作動要求信号を出力しないようになっており、
電気ヒータ制御手段(50b)は、熱媒体の温度が第2の作動用しきい値よりも低い場合に、電気ヒータ(15)を作動させ、熱媒体の温度が第2の停止用しきい値よりも高い場合に、電気ヒータ(15)を停止させるようになっており、
電気ヒータ制御手段(50b)は、第2の停止用しきい値として、外気温(Tam)が低い程、高く補正されたものを用いることを特徴としている。
【0018】
これによると、要求信号出力手段によって、温度上昇手段(EG)の作動と停止とが切り替えられるので、熱媒体の温度が温度上昇手段(EG)側の第1の作動用しきい値と第1の停止用しきい値との間の温度範囲付近で維持される。
【0019】
一方、電気ヒータ制御手段によって、電気ヒータの作動と停止とが切り替えられる際に、外気温が比較的低いときに、外気温が比較的高いときよりも、電気ヒータ側の第2の停止用しきい値が高くなるので、電気ヒータを作動させるときの熱媒体の温度範囲(電気ヒータのON領域)を拡大できる。すなわち、電気ヒータ側の第2の停止用しきい値が高くなることで、温度上昇手段側の第1の作動用しきい値と第1の停止用しきい値との間の温度範囲付近で熱媒体が温度変化するときに、熱媒体の温度が電気ヒータ側の第2の停止用しきい値を超える機会を減少させることができ、電気ヒータが連続作動する機会を増大させることができる。また、外気温が比較的低いときは、通常、ユーザーに対して高い吹出温が必要となるときである。吹出温とは吹出口からの吹出空気温度である。
【0020】
よって、本発明によれば、ユーザーに対して高い吹出温が必要となるときに、吹出温を高くすることができるとともに、電気ヒータの作動と停止の切替頻度を少なくでき、電気ヒータの作動開始時の突入電流発生頻度を低減できる。
【0021】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態における車両用空調装置の構成図である。
【図2】図1の車両用空調装置の電気制御部の構成図である。
【図3】図1中の電気ヒータの構成図である。
【図4】図1の車両用空調装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図5】図4のステップS5の詳細を示すフローチャートである。
【図6】図4のステップS10の詳細を示すフローチャートである。
【図7】図4のステップS11の詳細を示すフローチャートである。
【図8】図4のステップS12の詳細を示すフローチャートである。
【図9】第1実施形態の一例における冷却水温度TWの変化とPTCヒータのON/OFF切替との関係を示すタイムチャートである。
【図10】比較例1における冷却水温度TWの変化とPTCヒータのON/OFF切替との関係を示すタイムチャートである。
【図11】第2実施形態における図4のステップS10の詳細を示すフローチャートである。
【図12】第2実施形態における設定温度毎に用意されたPTCヒータON/OFF制御マップの一例である。
【図13】第2実施形態の一例における冷却水温度TWの変化とPTCヒータのON/OFF切替との関係を示すタイムチャートである。
【図14】第3実施形態における図4のステップS10の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
図1に、本実施形態における車両用空調装置1の全体構成を示し、図2に、この車両用空調装置1の電気制御部の構成を示す。本実施形態では、この車両用空調装置1を、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用している。
【0024】
まず、本実施形態のハイブリッド車両について説明する。本実施形態のハイブリッド車両は、車両停止時に外部電源(商用電源)から供給された電力をバッテリ81に充電することのできる、いわゆるプラグインハイブリッド車両として構成されている。このプラグインハイブリッド車両は、車両走行開始前の車両停止時に外部電源からバッテリ81に充電しておくことによって、走行開始時のようにバッテリ81の蓄電残量が予め定めた走行用基準残量以上になっているときには、主に走行用電動モータの駆動力によって走行する(以下、この運転モードをEV運転モードという)。
【0025】
一方、車両走行中にバッテリ81の蓄電残量が走行用基準残量よりも低くなっているときには、主にエンジンEGの駆動力によって走行する(以下、この運転モードをHV運転モードという)。このように、EV運転モードとHV運転モードとを切り替えることによって、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対してエンジンEGの燃料消費量を抑制して、車両燃費を向上させている。
【0026】
なお、EV運転モードは、主に走行用電動モータが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際にはエンジンEGを作動させて走行用電動モータを補助する。同様に、HV運転モードは、主にエンジンEGが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際には走行用電動モータを作動させてエンジンEGを補助する。このようなエンジンEGおよび走行用電動モータの作動は、エンジン制御装置70によって制御される。
【0027】
また、エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機80を作動させるためにも用いられる。そして、発電機80にて発電された電力および外部電源から供給された電力は、バッテリ81に蓄えることができ、バッテリ81に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給できる。
【0028】
次に、本実施形態の車両用空調装置1の詳細構成を説明する。車両用空調装置1は、図1に示す室内空調ユニット10と、図2に示す空調制御装置50とを備えている。
【0029】
室内空調ユニット10は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング11内に送風機12、蒸発器13、ヒータコア14、PTCヒータ15等を収容したものである。
【0030】
ケーシング11は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング11内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替箱20が配置されている。
【0031】
より具体的には、内外気切替箱20には、ケーシング11内に内気を導入させる内気導入口21および外気を導入させる外気導入口22が形成されている。さらに、内外気切替箱20の内部には、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア23が配置されている。
【0032】
したがって、内外気切替ドア23は、ケーシング11内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。より具体的には、内外気切替ドア23は、内外気切替ドア23用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0033】
また、吸込口モードとしては、内気導入口21を全開とするとともに外気導入口22を全閉としてケーシング11内へ内気を導入する内気モード、内気導入口21を全閉とするとともに外気導入口22を全開としてケーシング11内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
【0034】
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機(ブロワ)12が配置されている。この送風機12は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
【0035】
送風機12の空気流れ下流側には、蒸発器13が配置されている。蒸発器13は、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。蒸発器13は、圧縮機(コンプレッサ)31、凝縮器32、気液分離器33、膨張弁34等とともに、冷凍サイクル30を構成している。
【0036】
圧縮機31は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル30において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構31aを電動モータ31bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。電動モータ31bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。また、インバータ61は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機31の冷媒吐出能力が変更される。
【0037】
凝縮器32は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と、室外送風機としての送風ファン35から送風された車室外空気(外気)とを熱交換させることにより、圧縮された冷媒を凝縮液化させるものである。送風ファン35は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
【0038】
気液分離器33は、凝縮液化された冷媒を気液分離して液冷媒のみを下流に流すものである。膨張弁34は、液冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。蒸発器13は、冷媒と送風空気との熱交換により、減圧膨張された冷媒を蒸発気化させるものである。
【0039】
また、ケーシング11内において、蒸発器13の空気流れ下流側には、蒸発器13通過後の空気を流す加熱用冷風通路16、冷風バイパス通路17といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路16および冷風バイパス通路17から流出した空気を混合させる混合空間18が形成されている。
【0040】
加熱用冷風通路16には、蒸発器13通過後の空気を加熱するための加熱手段としてのヒータコア14およびPTCヒータ15が、送風空気流れ方向に向かってこの順で配置されている。
【0041】
ヒータコア14は、車両走行用駆動力を出力するエンジンEGの冷却水と蒸発器13通過後の空気とを熱交換させて、蒸発器13通過後の空気を加熱する加熱用熱交換器である。
【0042】
具体的には、ヒータコア14とエンジンEGとの間に冷却水流路41が設けられており、ヒータコア14とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路40が構成されている。そして、この冷却水回路40には、冷却水を循環させるための電動ウォータポンプ42が設置されている。電動ウォータポンプ42は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環量)が制御される電動式の水ポンプである。
【0043】
また、PTCヒータ15は、PTC素子(正特性サーミスタ素子)を有し、このPTC素子に電力が供給されることによって発熱して、ヒータコア14通過後の空気を加熱する補助暖房手段としての電気ヒータである。本実施形態のPTCヒータ15は、複数本(具体的には3本)設けられており、空調制御装置50が、通電するPTCヒータ15の本数を変化させることによって、複数のPTCヒータ15全体としての加熱能力が制御される。
【0044】
ここで、図3に、本実施形態のPTCヒータ15の電気的構成を示す。より具体的には、このPTCヒータ15は、図3に示すように、第1PTCヒータ15a、第2PTCヒータ15b、第3PTCヒータ15cから構成されている。そして、各PTCヒータ15a、15b、15cの正極側はバッテリ81側に接続され、負極側は各PTCヒータ15a、15b、15cが有する各スイッチ素子SW1、SW2、SW3を介して、グランド側へ接続されている。各スイッチ素子SW1、SW2、SW3は、各PTCヒータ15a、15b、15cが有する各PTC素子h1、h2、h3の通電状態と非通電状態とを切り替えるものである。
【0045】
さらに、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、独立して制御される。したがって、空調制御装置50は、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の通電状態(ON)と非通電状態(OFF)とを独立に切り替えることによって、各PTCヒータ15a、15b、15cのうち、通電状態となり加熱能力を発揮するものを切り替えて、PTCヒータ15全体としての加熱能力を変化させることができる。
【0046】
一方、図1中の冷風バイパス通路17は、蒸発器13通過後の空気を、ヒータコア14およびPTCヒータ15を通過させることなく、混合空間18に導くための空気通路である。したがって、混合空間18にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路16を通過する空気および冷風バイパス通路17を通過する空気の風量割合によって変化する。
【0047】
そこで、本実施形態では、蒸発器13の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路16および冷風バイパス通路17の入口側に、加熱用冷風通路16および冷風バイパス通路17へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア19を配置している。
【0048】
したがって、エアミックスドア19は、混合空間18内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。より具体的には、エアミックスドア19は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動され、この電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0049】
さらに、ケーシング11の送風空気流れ最下流部には、混合空間18から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口24〜26が配置されている。この吹出口24〜26としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口24、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口25、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口26が設けられている。
【0050】
また、フェイス吹出口24、フット吹出口25、およびデフロスタ吹出口26の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口24の開口面積を調整するフェイスドア24a、フット吹出口25の開口面積を調整するフットドア25a、デフロスタ吹出口26の開口面積を調整するデフロスタドア26aが配置されている。
【0051】
これらのフェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26aは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
【0052】
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口24を全開してフェイス吹出口24から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口24とフット吹出口25の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口25を全開するとともにデフロスタ吹出口26を小開度だけ開口して、フット吹出口25から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口25およびデフロスタ吹出口26を同程度開口して、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
【0053】
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
【0054】
空調制御装置50の出力側には、送風機12、圧縮機31の電動モータ31b用のインバータ61、送風ファン35、各種電動アクチュエータ62、63、64、第1PTCヒータ15a、第2PTCヒータ15b、第3PTCヒータ15c、電動ウォータポンプ42等が接続されている。
【0055】
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、圧縮機31吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、圧縮機31吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、蒸発器13からの吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、圧縮機31に吸入される冷媒の温度Tsiを検出する吸入温度センサ57、エンジンEGから流出したエンジン冷却水の冷却水温度TWを検出する冷却水温度センサ58(冷却水温度検出手段)等のセンサ群が接続されている。
【0056】
なお、本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的に蒸発器13の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、蒸発器13のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、蒸発器13を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。
【0057】
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ(図示せず)、エアコンのオン・オフ(具体的には圧縮機31のオン・オフ)を切り替えるエアコンスイッチ60a、オートスイッチ60b、運転モードの切替スイッチ(図示せず)、吸込口モードを切り替える吸込口モードスイッチ(図示せず)、吹出口モードを切り替える吹出口モードスイッチ(図示せず)、送風機12の風量設定スイッチ(図示せず)、車室内温度設定スイッチ60c、エコノミースイッチ60d等が設けられている。
【0058】
オートスイッチ60bは、乗員の操作によって車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除する自動制御設定手段である。車室内温度設定スイッチ60cは、乗員の操作によって車室内の目標温度Tsetを設定する目標温度設定手段である。エコノミースイッチ60dは、乗員の操作によって車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力させる省動力化要求手段である。
【0059】
さらに、空調制御装置50は、エンジンEGの作動を制御するエンジン制御装置70に電気的接続されており、空調制御装置50およびエンジン制御装置70は互いに電気的に通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置50がエンジン制御装置70へエンジンEGの作動要求信号を出力することによって、エンジンEGを作動させることができる。また、空調のためにエンジンEGが作動している場合には、空調制御装置50がエンジンEGの作動要求信号を出力しないことによって、エンジンEGを停止させることができる。
【0060】
なお、空調制御装置50およびエンジン制御装置70は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。
【0061】
例えば、空調制御装置50のうち、エンジン制御装置70と制御信号の送受信を行う構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、信号出力手段50aを構成している。また、空調制御装置50のうち、PTCヒータ15の作動と停止との切り替えを制御する構成がPTCヒータ制御手段50bを構成している。
【0062】
次に、図4により、上記構成における本実施形態の作動を説明する。図4は、本実施形態の車両用空調装置1のメインルーチンとしての制御処理を示すフローチャートである。なお、図4中の各ステップS1〜S14は、空調制御装置50が有する各種の機能実現手段を構成している。
【0063】
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等が行われる。
【0064】
次のステップS2では、操作パネル60の操作信号を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチ60cによって設定される車室内設定温度Tset、吹出口モードの選択信号、吸込口モードの選択信号、送風機12の風量の設定信号等がある。
【0065】
ステップS3では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜58等の検出信号を読み込んで、ステップS4へ進む。ステップS4では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチ60cによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。このように、目標吹出温度TAOは、少なくとも車室内設定温度や外気温に基づいて算出される。
【0066】
続くステップS5〜S12では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。
【0067】
まず、ステップS5では、エアミックスドア19の制御開度SWを、上記TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された蒸発器13からの吹出空気温度TE、冷却水温度センサ58によって検出されたエンジン冷却水温度TWに基づいて算出する。図5にステップS5の詳細内容を示す。
【0068】
具体的には、ステップS5では、図5に示すように、ステップS51で、次の数式F2−1〜F2−3により、仮のエアミックス開度SWddを演算する。
SWdd=(分子/分母)×100(%) …(F2−1)
分子=TAO−(TE+2) …(F2−2)
分母=MAX[10、{TW−(TE+2)}]…(F2−3)
ここで、数式F2−3に示すように、数式F2−1の分母は、10と演算値とのうち大きい方を採用する。これは、分母が0になってSWddの演算結果がエラーにならないようにするためである。
【0069】
続いて、ステップS52で、仮のエアミックス開度SWddを補正することにより、エアミックスドア19の制御開度(エアミックス制御開度)SWを演算する。この補正は、SWddの演算値と、所望の空気温度とするための実際のエアミックス開度とのずれを修正するためのものであり、実験によって得られた補正値を用いる。例えば、ステップS52中に示すSWddとSWとの関係を示す制御マップが予め空調制御装置50に記憶されており、この制御マップを用いて、仮のエアミックス開度SWddからエアミックス制御開度SWを演算する。
【0070】
なお、SW=0(%)は、エアミックスドア19の最大冷房位置であり、冷風バイパス通路17を全開し、加熱用冷風通路16を全閉する。これに対し、SW=100(%)は、エアミックスドア19の最大暖房位置であり、冷風バイパス通路17を全閉し、加熱用冷風通路16を全開する。
【0071】
ステップS6では、送風機12により送風される空気の目標送風量を決定する。具体的には電動モータに印加するブロワモータ電圧をステップS4にて決定されたTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。
【0072】
具体的には、本実施形態では、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を最大値付近の高電圧にして、送風機12の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機12の風量を減少させる。
【0073】
さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機12の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワモータ電圧を最小値にして送風機12の風量を最小値にするようになっている。
【0074】
ステップS7では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱20の切替状態を決定する。この吸込口モードもTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。さらに、外気の排ガス濃度を検出する排ガス濃度検出手段を設け、排ガス濃度が予め定めた基準濃度以上となったときに、内気モードを選択するようにしてもよい。
【0075】
ステップS8では、吹出口モードを決定する。この吹出口モードも、TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフットモード→バイレベルモード→フェイスモードへと順次切り替える。
【0076】
したがって、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択される。さらに、湿度センサの検出値から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合には、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
【0077】
ステップS9では、圧縮機31の冷媒吐出能力(具体的には、回転数)を決定する。本実施形態の基本的な圧縮機31の回転数の決定手法は以下の通りである。例えば、ステップS4で決定したTAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、蒸発器13からの吹出空気温度TEの目標吹出温度TEOを決定する。
【0078】
さらに、この目標吹出温度TEOと吹出空気温度TEの偏差En(TEO−TE)を算出し、この偏差Enと、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fCn−1に対する回転数変化量ΔfCを求める。そして、前回の圧縮機回転数fCn−1に回転数変化量ΔfCを加算したものを今回の圧縮機回転数fCnとする。
【0079】
ステップS9に続いて、ステップS10では、外気温、仮のエアミックス開度SWdd、エンジン冷却水温度TWに応じて、PTCヒータ15の作動本数を決定する。図6に、このステップS10の詳細を示す。
【0080】
図6に示すように、ステップS101では、外気温に基づいてPTCヒータ15の作動が不要か否かを判定する。具体的には、外気センサ52が検出した外気温が所定温度、本例では、26℃よりも高いか否かを判定する。外気温が26℃よりも高いと判定した場合(YES判定の場合)、PTCヒータ15による吹出温アシストは必要無いので、ステップS105に進み、PTCヒータ15の作動本数を0本に決定する。一方、ステップS101で、外気温が26℃よりも低いと判定した場合(NO判定の場合)、ステップS102に進む。
【0081】
ステップS102では、仮のエアミックス開度SWddに基づいてPTCヒータ作動の要否フラグ(f(SW)=ONorOFF)を決定する。エアミックス開度SWが小さいほど、暖風割合が少ないことから、エアミックス開度SWが小さければ、PTCヒータの作動は不要であると考えられる。そこで、ステップS102では、ステップS5で演算した仮のエアミックス開度SWddを予め定められた所定開度と比較する。そして、仮のエアミックス開度SWddが第1基準開度、本例では、100%よりも小さければ、PTCヒータ停止(f(SW)=OFF)とする。一方、仮のエアミックス開度SWddが第2基準開度、本例では、110%よりも大きければ、PTCヒータ作動(f(SW)=ON)とする。このように、本例では、エアミックスドア19の位置が最大暖房位置およびその付近となる場合に、PTCヒータ15を作動させるようにしている。
【0082】
そして、ステップS103では、ステップS102で決定したPTCヒータ作動の要否フラグがPTCヒータ停止(f(SW)=OFF)か否かを判定する。このとき、f(SW)=OFFの場合(YES判定の場合)、ステップS105に進み、PTCヒータの作動本数を0本に決定する。一方、f(SW)=ONの場合(NO判定の場合)、ステップS104に進む。
【0083】
ステップS104では、冷却水温度TWに応じてPTCヒータ15の作動本数を決定する。このとき、空調制御装置に予め記憶され、1本目、2本目、3本目それぞれのPTCヒータ15a、15b、15cのON水温およびOFF水温が予め定められされた制御マップを用いる。ON水温およびOFF水温は、作動および停止の判定基準温度となる作動用しきい値および停止用しきい値であり、特許請求の範囲に記載の第2の作動用しきい値および第2の停止用しきい値に相当する。
【0084】
本実施形態では、図6のステップS104に示すように、各PTCヒータ15a、15b、15cにおけるON水温とOFF水温の差dPTCが7.5℃に設定されている。また、PTCヒータの1本目と2本目におけるON水温同士の間隔およびOFF水温同士の間隔が5℃に設定されており、2本目と3本目との関係も同様である。なお、本実施形態では、各PTCヒータのON水温とOFF水温は固定されている。
【0085】
ステップS10に続いて、ステップS11では、エンジンEGの作動要求(エンジンON要求)の要否を決定する。このステップS11では、運転モード、バッテリ残量および車両走行負荷によってエンジンEGが停止している場合に、空調のためのエンジンEGの作動および停止を決定する。
【0086】
ここで、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両では、常時エンジンを作動させているのでエンジン冷却水も常時高温となる。したがって、通常の車両ではエンジン冷却水をヒータコア14に流通させることで充分な暖房性能を発揮することができる。
【0087】
これに対して、本実施形態のようなハイブリッド車両では、バッテリ残量に余裕があれば、走行用電動モータのみから走行用の駆動力を得て走行することができる。このため、高い暖房性能が必要な場合であっても、エンジンEGが停止しているために、エンジン冷却水温度TWが、ヒータコア14にて充分な暖房性能を発揮できる温度まで上昇していないことがある。
【0088】
そこで、本実施形態では、高い暖房性能が必要な場合であって、エンジン冷却水温度TWが予め定めた基準冷却水温度よりも低いときは、空調制御装置50からエンジン制御装置70に対して、エンジンEGを作動するようにエンジン作動要求信号を出力する。これにより、エンジン冷却水温度TWを上昇させて高い暖房性能を得るようにしている。
【0089】
また、このように空調のためにエンジンEGを作動させる場合では、エンジン冷却水温度TWが所定の温度範囲内で維持されるように、空調制御装置50からエンジン制御装置70に対してエンジンON要求信号を出力しない。これにより、エンジン制御装置70はエンジンEGを停止させる。
【0090】
このステップS11の詳細について図7を用いて説明する。
【0091】
図7に示すステップS111、S112では、ステップS113で行うエンジン冷却水温度に基づく仮のエンジンON要求の要否決定に用いる判定しきい値を算出する。
【0092】
まず、ステップS111で、PTCヒータ15の作動による吹出温上昇量ΔTptcを演算する。この吹出温上昇量ΔTptcとは、吹出口から車室内へ吹き出される空調風の温度(吹出温)のうちPTCヒータ15の作動が寄与した温度上昇量である。本例では、ΔTptcの数値がPTCヒータ15の作動本数毎に予め定められた制御マップを用いて、PTCヒータ15の作動本数に応じて、ΔTptcの数値(固定値)を決定する。この制御マップは、実験によって作成されるものである。ここでは、PTCヒータの作動本数が0本のとき0℃とし、1本増える毎に3℃ずつ加算している。
【0093】
続いて、ステップS112では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOや吹出温上昇量ΔTptc等に応じて、エンジンOFF水温と、エンジンON水温を算出する。エンジンOFF水温は、エンジンを停止させるときの判定基準温度となる停止用しきい値であり、エンジンON水温は、エンジンを作動させるときの判定基準温度となる作動用しきい値である。したがって、エンジンOFF水温およびエンジンON水温が、特許請求の範囲に記載の第1の停止用しきい値および第2の作動用しきい値に相当する。
【0094】
ここで、エンジンOFF水温は、数式F5−1を用いて実吹出温がおおよそ目標吹出温度TAOとなるように演算された基準冷却水温度TWOと70℃とのうちの小さい方が採用される。一方、エンジンON水温は、頻繁にエンジンがON/OFF切替するのを防止するため、エンジンOFF水温よりも所定温度、本例では、5℃低く設定される。
TWO={(TAO−ΔTptc)−(TE×0.2)}/0.8・・・(F5−1)
なお、基準冷却水温度TWOは、エアミックス前の温風温度TWDが目標吹出温度TAOになるものと仮定したときに、必要とされる冷却水温度である。TEは、蒸発器温度センサ56が検出した蒸発器13からの吹出空気温度である。
【0095】
また、数式F5−1は、ヒータコア14からの吹出空気温度Taについての2つの下記数式F5−2、F5−3から導かれる。すなわち、数式F5−1は、数式F5−3の右辺を数式F5−2の左辺に代入し、TWOについて解くことで導かれる。
Ta=TWO×α+TE×β・・・(F5−2)
Ta=TAO−ΔTptc・・・(F5−3)
なお、数式F5−2中のαはヒータコア14の熱交換効率であり、βはヒータコア14からの吹出空気温度Taに対する蒸発器13からの吹出空気温度TEの寄与度である。本例では、αを0.8、βを0.2としている。
【0096】
続いて、ステップS113では、エンジンEGの作動要求信号を出力するか否かの仮の要求信号フラグf(Tw)を決定する。この仮の要求信号フラグf(TW)は、次のステップS114でのエンジンON要求の要否決定の際のパラメータとなる。
【0097】
具体的には、冷却水温度センサ58で検出した実際の冷却水温度TWを、ステップS112で求めたエンジンOFF水温、エンジンON水温と比較する。そして、冷却水温度TWがエンジンON水温より低ければ、仮の要求信号フラグをf(TW)=ONとしてエンジンON要求信号を出力することを仮決定し、冷却水温度がエンジンOFF水温より高ければ、仮の要求信号フラグf(TW)=OFFとしてエンジンON要求信号を出力しないことを仮決定する。
【0098】
続いて、ステップS114では、ブロワの作動状態、目標吹出温度TAO、仮のON要求信号の要否フラグf(TW)に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、空調のためのエンジンON要求の要否決定を行う。
【0099】
具体的には、送風機12が作動(ON)している場合であって、目標吹出温度TAOが所定温度以上、本例では28℃以上のときは、空調のためのエンジンON要求の要否を仮の要求信号フラグf(TW)に応じて決定する。すなわち、仮の要求信号フラグf(TW)がONであれば、エンジンON要求信号を出力することを仮決定し、仮の要求信号フラグf(TW)がOFFであれば、エンジンON要求信号を出力しないことを仮決定する。
【0100】
一方、送風機12が作動(ON)している場合であって、目標吹出温度TAOが所定温度未満、本例では28℃未満の場合のように、目標吹出温度TAOが比較的低いときは、ヒータコア14による空気の加熱は必要無いため、仮の要求信号フラグf(TW)に関わらず、エンジンON要求信号を出力しないことを仮決定する。また、送風機12が停止(OFF)の場合は、目標吹出温度TAOや仮の要求信号フラグf(TW)にかかわらず、エンジンON要求信号を出力しないことを仮決定する。
【0101】
ステップS11に続いて、ステップ12では、ヒータコア14とエンジンEGとの間でエンジン冷却水を循環させる電動ウォータポンプ42の作動の要否を決定する。なお、このステップS12は、エンジンEGのON、OFF状態や、吹出口モードに関わらず、実行される。図8に、このステップS12の詳細を示す。
【0102】
ステップS12では、具体的には、図8に示すように、ステップS121で、冷却水温度センサ58が検出した冷却水温度TWが、蒸発器温度センサ56が検出した蒸発器13からの吹出空気温度TEより高いか否かを判定する。このとき、冷却水温度TWが蒸発器13からの吹出空気温度TEより低い場合(NO判定の場合)、ステップS124に進み、電動ウォータポンプ42の停止(OFF)を選択する。この結果、電動ウォータポンプ42は停止状態となるので、冷却水回路40での冷却水の循環が停止される。これは、冷却水温度TWが蒸発器13からの吹出空気温度TEより低いときに、冷却水をヒータコア14に流すと、ヒータコア14を流れる冷却水によって蒸発器通過後の空気を冷却してしまい、かえって吹出口からの吹出空気温度を低くしてしまうためである。
【0103】
一方、冷却水温度TWが蒸発器13からの吹出空気温度TEより高い場合(YES判定の場合)、ステップS122に進む。
【0104】
ステップS122では、送風機の作動(送風機ON)が選択されているか否かを判定する。このとき、送風機の停止(送風機OFF)が選択されている場合、NO判定し、省動力のため、ステップS124に進み、電動ウォータポンプ42の停止(OFF)を選択する。この結果、ブロワ停止時は電動ウォータポンプ42も停止状態となる。
【0105】
一方、送風機ONが選択されている場合、YES判定して、ステップS123に進み、電動ウォータポンプ42の作動(ON)を選択する。この結果、電動ウォータポンプ42が作動して、冷却水が冷媒回路内を循環することにより、ヒータコア14を流れる冷却水とヒータコア14を通過する空気との熱交換により、送風空気が加熱される。
【0106】
ステップS12に続いて、ステップS13では、上述のステップS5〜S12で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50から各種機器12、61、35、62、63、64、15a、15b、15c、42に対して制御信号および制御電圧が出力され、空調制御装置50(要求信号出力手段50a)からエンジン制御装置70に対してエンジンON要求信号が出力される。
【0107】
これにより、例えば、PTCヒータ15は、ステップ10で決定された作動本数で作動するとともに、電動ウォータポンプ42は、ステップS12で決定された通りに作動もしくは停止する。
【0108】
また、エンジン制御装置70に対して、空調のためのエンジンON要求信号が出力された場合、運転モードや走行条件によってエンジンEGが停止している場合であっても、バッテリ残量が所定量以上であれば、エンジン制御装置70は、空調のためにエンジンEGを作動させる。また、エンジンON要求信号が出力されない場合、エンジン制御装置70は、エンジン停止時であれば、エンジンを停止したままとし、空調のためのエンジン作動時であれば、エンジンを停止させる。
【0109】
次のステップS14では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。さらに、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を充分に確保することができる。
【0110】
次に、本実施形態の車両用空調装置1の特徴について説明する。
【0111】
図9は、本実施形態の一例における冷却水温度TWの変化とPTCヒータのON/OFF切替との関係を示すタイムチャートである。
【0112】
空調制御装置50は、図7のステップS113、S114のごとく、送風機12が作動(ON)の場合であって、目標吹出温度TAOが28℃以上のときに、空調のためのエンジンON要求の要否を冷却水温度TWに応じて決定している。そして、冷却水温度TWがエンジンON水温よりも低温のとき、エンジン作動要求信号の出力を決定することにより、エンジンを作動させる。一方、冷却水温度TWがエンジンOFF水温よりも高温のとき、エンジン作動要求信号を出力しないことを決定することにより、エンジンを停止させるようになっている。
【0113】
これにより、図9に示すように、エンジンEGが停止して、冷却水温度TWが低ければ、エンジンEGが作動することで、冷却水温度TWが上昇して所定の温度以上に維持される。このとき、エンジンOFF水温とエンジンON水温との差dEGが5℃に設定されている。図9の例では、エンジンOFF水温が70℃であり、エンジンON水温が65℃であるので、冷却水温度TWは、5℃付近の温度上下幅をもつ温度範囲、65℃〜70℃の間付近に維持される。なお、エンジンOFF水温を超えた後やエンジンON水温を下回った後のオーバーシュート量は、図9の例では毎回同じとなっているが、外気温等の車両環境条件によって変動するものである。ただし、通常、このオーバーシュート量が多くなりすぎることはなく、エンジンOFF水温とエンジンON水温との間付近で冷却水温度TWが変化する。
【0114】
このように、本実施形態では、エンジンOFF水温とエンジンON水温に所定の温度差を持たせているので、エンジンOFF水温とエンジンON水温との間付近で冷却水温度TWが変化する。これに対して、エンジンOFF水温とエンジンON水温に差を持たせない場合では、1つのエンジンON/OFF水温付近で冷却水温度TWが変化する。したがって、本実施形態によれば、エンジンOFF水温とエンジンON水温に差を持たせない場合と比較して、エンジンEGが頻繁にかかることを抑制できるので、エンジンEGの作動音変化が乗員に与える煩わしさを軽減できる。
【0115】
また、空調制御装置50は、図6のステップS104のごとく、1本目、2本目、3本目それぞれのPTCヒータのON水温およびOFF水温が予め定められた制御マップを用いて、冷却水温度TWに応じてPTCヒータ15の作動本数を決定している。ちなみに、本実施形態では、図9に示すように、1本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ75℃、67.5℃に設定され、2本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ70℃、62.5℃に設定され、3本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ65℃、57.5℃に設定されている。
【0116】
これにより、図9に示すように、空調のためにエンジンEGが作動して、冷却水温度TWが上昇して所定温度範囲内で維持されるとき、PTCヒータの作動本数は次のようになる。
【0117】
時刻t0のとき、冷却水温度TWが、1本目、2本目、3本目の全てのON水温よりも低いので、時刻t0〜時刻t1では、3本のPTCヒータが作動(ON)する。
【0118】
時刻t1を過ぎると、冷却水温度TWが3本目のOFF水温である65℃よりも高温となるので、時刻t1〜時刻t2では、3本目のPTCヒータが停止して、PTCヒータの作動本数は2本となる。
【0119】
さらに、時刻t2を過ぎると、冷却水温度TWが2本目のOFF水温である70℃よりも高温となるので、2本目が停止するが、時刻t2以降では、冷却水温度TWが2本目、3本目のON水温である62.5℃、57.5℃よりも低温にならないので、2本目、3本目は停止し続けることとなり、PTCヒータの作動本数は1本となる。なお、本実施形態では、1本目のOFF水温が75℃に設定されており、通常、冷却水温度TWが70℃付近までしか上昇せず75℃を超えないので、1本目のPTCヒータは、一度、作動開始すると、ほとんど停止せず、作動しっぱなしとなる。
【0120】
ここで、本実施形態と比較例1とを比較する。図10は、比較例1における冷却水温度TWの変化とPTCヒータのON/OFF切替との関係を示すタイムチャートである。この比較例1は、本実施形態に対して、各PTCヒータ15a、15b、15cにおけるON水温とOFF水温の差dPTCを、エンジンON水温とエンジンOFF水温との差dEGと同じ5℃に変更したものである。
【0121】
PTCヒータのON水温およびOFF水温は所定温度で固定されているが、エンジンON水温およびエンジンOFF水温は、図7のステップS112のごとく、TAO等によって変動する。このとき、比較例1では、PTCヒータのON水温およびOFF水温が、それぞれ、エンジンON水温およびエンジンOFF水温と一致する場合がある。この場合、エンジンEGのON/OFF切替に連動して、PTCヒータ15もON/OFF切替してしまう。
【0122】
例えば、図10に示すように、1本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ75℃、70℃に設定され、2本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ70℃、65℃に設定され、3本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ65℃、60℃に設定されているとき、エンジンOFF水温、エンジンON水温がそれぞれ70℃と65℃になって、2本目のPTCヒータのON水温、OFF水温が、それぞれ、エンジンON水温、エンジンOFF水温と一致する場合がある。
【0123】
この場合、図10に示すように、時刻t2以降(t3〜t8)において、冷却水温度TWが70℃よりも高くなったり、65℃よりも低くなったりして、エンジンEGがONもしくはOFFに切り替わる毎に、2本目のPTCヒータもONもしくはOFFに切り替わる。このように、比較例1では、PTCヒータ15が頻繁にON/OFF切替することとなる。
【0124】
これに対して、本実施形態では、各PTCヒータ15a、15b、15cにおけるON水温とOFF水温の差dPTCを、エンジンON水温とエンジンOFF水温との差dEGよりも大きな7.5℃に設定しているので、PTCヒータのON水温とOFF水温の両方が、それぞれ、エンジンON水温とエンジンOFF水温に一致することはない。
【0125】
本実施形態では、PTCヒータのON水温とOFF水温の少なくとも一方が、冷却水温度の変動範囲とほぼ等しいエンジンON水温とエンジンOFF水温との間の温度範囲から離れるので、PTCヒータの作動と停止との切替が起き難くなる。すなわち、PTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温よりも高い場合では、冷却水温度がPTCヒータのOFF水温よりも高くなり難いので、PTCヒータが停止し難くなる。PTCヒータのON水温がエンジンON水温よりも低い場合では、冷却水温度がPTCヒータのON水温よりも低くなり難いので、PTCヒータが作動し難くなる。
【0126】
例えば、図9に示すように、エンジンOFF水温およびエンジンON水温の演算の結果、エンジンOFF水温が70℃となり、エンジンON水温が65℃となったときでは、2本目のPTCヒータのOFF水温とエンジンOFF水温とは一致するが、2本目のPTCヒータのON水温とエンジンON水温とは一致せず、2本目のPTCヒータのON水温がエンジンON水温よりも低温となる。このため、2本目のPTCヒータは、時刻t2以降で、冷却水温度TWが2本目のPTCヒータのON水温よりも低くならないので、停止し続けることとなる。
【0127】
また、図示しないが、エンジンOFF水温およびエンジンON水温の演算の結果、例えば、エンジンOFF水温が67.5℃となり、エンジンON水温が62.5℃のときでは、2本目のPTCヒータのON水温とエンジンON水温とは62.5℃で一致するが、2本目のPTCヒータのOFF水温とエンジンOFF水温とは一致せず、2本目のPTCヒータのOFF水温は70℃であり、エンジンOFF水温よりも高温である。このため、2本目のPTCヒータは、冷却水温度TWが62.5℃よりも低いときに作動した後、冷却水温度TWが67.5℃付近までしか上昇せず、70℃よりも高くならないので、停止せず、作動し続けることとなる。
【0128】
よって、本実施形態によれば、比較例1と比較して、2本目のPTCヒータの作動と停止の切替頻度を少なくできるので、PTCヒータの作動開始時の突入電流発生頻度を低減できる。
【0129】
この結果、車両に搭載されている他の電子機器への悪影響、例えば、電圧降下や電流制限等が起きる可能性を少なくできる。さらに、PTCヒータに電気的に接続されているヒューズが突入電流で切れる可能性を少なくできるとともに、2本目のPTCヒータ15bが有するスイッチ素子SW2の作動頻度を低減できるで、スイッチ素子SW2を壊れにくくすることができる。
【0130】
また、図9に示す例では、2本目のPTCヒータ15bは、時刻t2以降では停止のままなので、図10に示す作動と停止の切り替えを繰り返す比較例1と比較して、車両全体の電力消費量を低減できる。
【0131】
(第2実施形態)
図11に、本実施形態におけるPTCヒータ15の作動本数を決定するステップS10の要部を示す。図11は、冷却水温度TWに応じたPTCヒータ15の作動本数が予め定められた制御マップであり、第1実施形態で説明した図6中のステップS104に対応している。
【0132】
第1実施形態では、図6中のステップS104で用いる各PTCヒータのON水温とOFF水温とが固定されていたが、本実施形態では、各PTCヒータのON水温とOFF水温とがユーザーによって設定される車室内設定温度Tsetに応じて変更される。
【0133】
具体的には、図11に示すように、制御マップ中に記載の各PTCヒータのON水温およびOFF水温は、予め定められた各基準値に対して、設定温度に基づいた補正値αを加算することによって決定される。図11に示す制御マップの各基準値は、第1実施形態で説明した図6中のステップS104に示される制御マップと同じであり、各PTCヒータのON水温とOFF水温の差dPTCは7.5℃に設定されている。補正値αは、各PTCヒータのON水温とOFF水温とが、設定温度が高い程、高く補正されるように、次の式により算出される。
【0134】
α(℃)=(設定温度−25)×5
したがって、設定温度が28℃のとき、補正値α=(28−25)×5=15(℃)となり、設定温度が25℃のとき、補正値α=(25−25)×5=0となり、設定温度が21℃のとき、補正値α=(21−25)×5=−20(℃)となる。
【0135】
このため、設定温度が25℃のときは、補正値αが0なので、1本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ75℃、67.5℃に設定され、2本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ70℃、62.5℃に設定され、3本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ65℃、57.5℃に設定される。
【0136】
また、設定温度が28℃のときは、補正値αが15℃なので、1本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ90℃、82.5℃に設定され、2本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ85℃、77.5℃に設定され、3本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ80℃、72.5℃に設定される。
【0137】
また、設定温度が21℃のときは、補正値αが−20℃なので、1本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ55℃、47.5℃に設定され、2本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ50℃、42.5℃に設定され、3本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ45℃、37.5℃に設定される。
【0138】
なお、ここでは、空調制御装置50に予め1つの制御マップが記憶されており、空調制御装置50が、この制御マップ中の各PTCヒータのON水温およびOFF水温を補正したが、図12に示すように、空調制御装置50に予め複数の制御マップが記憶されており、空調制御装置50が、ステップS104でのPTC作動本数の決定の際に、設定温度に応じて制御マップを選択的に切り替えるようにしても良い。図12は、設定温度毎に用意された制御マップの一例であり、これらの制御マップは、各PTCヒータのON水温とOFF水温とが、設定温度が高い程、高く補正されるように作成されている。
【0139】
このように、本実施形態では、各PTCヒータのON水温とOFF水温とが、設定温度が高い程、高く補正されるので、ある温度よりも高い設定温度のときに、PTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温よりも高くなる。このため、PTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温よりも高くなったPTCヒータは、一度電源がONになると、ONしっぱなしとなる。
【0140】
この一例を図13に示す。図13は、設定温度が28℃のときの冷却水温度TWの変化とPTCヒータのON/OFF切替との関係を示すタイムチャートである。図13に示すように、エンジンOFF水温およびエンジンON水温の演算の結果、エンジンOFF水温が上限温度である70℃となり、エンジンON水温が65℃となったときでは、通常、冷却水温度TWは65℃と70℃との間付近で変動する。
【0141】
このとき、1〜3本目の各PTCヒータのOFF水温は90℃、85℃、80℃であり、エンジンOFF水温の70℃よりも高く設定される。このように、設定温度が28℃のときでは、全てのPTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温よりも高くなるように補正される。また、1〜3本目の各PTCヒータのON水温は82.5℃、77.5℃、72.5℃と比較的高温に補正され、PTCヒータがONし易い条件となる。このため、1〜3本目の各PTCヒータは、冷却水温度が変化してもONとOFFの切替がされず、一度電源がONになると、ONしっぱなしとなる。
【0142】
よって、本実施形態によれば、設定温度が28℃のように高く、ユーザーが高い吹出温を望むときには、設定温度が25℃のように、設定温度が比較的低い場合と比較して、PTCヒータのON領域(PTCヒータがONとなる冷却水温度の範囲)が拡大して、PTCヒータが連続作動することとなるので、吹出温を高くすることができるとともに、PTCヒータの作動と停止の切替頻度を少なくできる。この結果、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、PTCヒータの作動開始時の突入電流発生頻度を低減できる。
【0143】
また、設定温度が28℃以上の場合、全てのPTCヒータがONしっぱなしとなるが、設定温度が28℃よりも低い場合、例えば、21℃、25℃の場合では、エンジンOFF水温の演算の結果によっては、何れかのPTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温よりも低くなり、冷却水温度の変化に応じて、PTCヒータのONとOFFとの切り替えがされるので、無駄な電力消費を抑制できる。
【0144】
なお、本実施形態においては、以下のように変更することも可能である。
【0145】
(1)図11、12に示す制御マップでは、各PTCヒータのON水温とOFF水温の差dPTCが、7.5℃に固定されていたが、エンジンON水温とエンジンOFF水温との差dEGと同じ温度である5℃に固定されていても良く、エンジンON水温とエンジンOFF水温との差dEGよりも小さな温度差に固定されていても良い。
【0146】
各PTCヒータのON水温とOFF水温の差dPTCがエンジンON水温とエンジンOFF水温との差dEGと同じ温度に固定されている場合、設定温度が低ければ、第1実施形態における比較例1の説明の通り、PTCヒータのON水温およびOFF水温が、それぞれ、エンジンON水温およびエンジンOFF水温と一致するときがある。
【0147】
これに対して、本実施形態では、ある温度よりも高い設定温度のときに、PTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温(上限温度)よりも高くなり、PTCヒータのOFF水温とエンジンOFF水温とは一致しなくなる。よって、この場合であっても、PTCヒータの作動と停止の切替頻度を少なくでき、PTCヒータの作動開始時の突入電流発生頻度を低減できる。
【0148】
(2)図11、12に示す制御マップでは、PTCヒータのON水温とOFF水温の両方が、設定温度が高い程、高く補正されるようになっていたが、PTCヒータのON水温とOFF水温のうちOFF水温のみが補正されるようになっていても良い。この場合、PTCヒータのON水温は固定され、PTCヒータのOFF水温がON水温よりも高い関係を維持しつつ、OFF水温は、設定温度が高い程、高く補正される。
【0149】
具体的には、図11に示す制御マップに対して、ON水温を固定値とし、OFF水温を基準値+補正値αとする。ただし、補正値αが常に0以上となるように式を変更する。例えば、設定温度が25℃、28℃のときでは、1本目〜3本目のPTCヒータのON水温は、それぞれ、67.5℃、62.5℃、57.5℃で同じであり、1本目〜3本目のPTCヒータのOFF水温は、それぞれ、設定温度が25℃のときは75℃、70℃、65℃であり、設定温度が28℃のときは90℃、85℃、80℃である。
【0150】
この場合であっても、設定温度が28℃のときでは、全てのPTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温よりも高くなるように補正されることとなるので、PTCヒータの作動と停止の切替頻度を少なくできるという上述した本実施形態の効果を奏する。なお、この場合では、各PTCヒータのON水温とOFF水温の差dPTCが設定温度に応じて変動することとなる。
【0151】
(第3実施形態)
図14に、本実施形態におけるPTCヒータ15の作動本数を決定するステップS10の要部を示す。図14は、冷却水温度TWに応じたPTCヒータ15の作動本数が予め定められた制御マップであり、第1実施形態で説明した図6中のステップS104に対応している。
【0152】
第2実施形態では、図6中のステップS104で用いる各PTCヒータのON水温とOFF水温とが設定温度に応じて変更されたが、本実施形態では、各PTCヒータのON水温とOFF水温とが外気温Tamに応じて変更される。
【0153】
具体的には、空調制御装置50に予め複数の制御マップが記憶されており、空調制御装置50が、ステップS104でのPTC作動本数の決定の際に、外気温Tamに応じて制御マップを選択的に切り替えて用いるようになっている。
【0154】
図14に示す制御マップは、この複数の制御マップの一例であり、外気温が−7℃以下のとき、−7℃を超え12℃未満(−7〜12℃)のとき、12℃以上25℃以下(12〜25℃)のときの3種類であり、各PTCヒータのON水温とOFF水温とが、外気温が低い程、高く補正されるように作成されている。
【0155】
すなわち、外気温が12〜25℃のときでは、1本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ55℃、47.5℃に設定され、2本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ50℃、42.5℃に設定され、3本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ45℃、37.5℃に設定された制御マップを用いる。
【0156】
また、外気温が−7〜12℃のときでは、1本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ70℃、62.5℃に設定され、2本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ65℃、57.5℃に設定され、3本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ60℃、52.5℃に設定された制御マップを用いる。
【0157】
また、外気温が−7℃以下のときでは、1本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ75℃、67.5℃に設定され、2本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ70℃、62.5℃に設定され、3本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ65℃、57.5℃に設定された制御マップを用いる。
【0158】
なお、ここでは、空調制御装置50が設定温度に応じて制御マップを選択的に切り替えて用いたが、空調制御装置50に予め1つの制御マップが記憶されており、空調制御装置50が、この制御マップ中の各PTCヒータのON水温およびOFF水温を、外気温が低い程、高くなるように、補正しても良い。
【0159】
このように、本実施形態では、各PTCヒータのON水温とOFF水温とが、外気温が低い程、高く補正されるので、ある温度よりも低い外気温のときに、PTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温よりも高くなる。このため、PTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温よりも高くなったPTCヒータは、一度電源がONになると、ONしっぱなしとなる。
【0160】
例えば、図14に示すように、外気温が−7℃以下のときの制御マップでは、1本目のOFF水温が75℃に設定されており、エンジンOFF水温がとりうる上限温度の70℃よりも高くなっている。このため、エンジンOFF水温が70℃のときでも、通常、冷却水温度TWが70℃付近までしか上昇せず75℃を超えないので、1本目のPTCヒータは、一度、作動開始すると、ほとんど停止せず、作動(ON)しっぱなしとなる。
【0161】
一方、外気温が−7〜12℃のときの制御マップや、外気温が12〜25℃のときの制御マップでは、1本目のOFF水温が70℃や55℃に設定されており、エンジンOFF水温がとりうる温度範囲内である。このため、1本目のPTCヒータは、冷却水温度に応じて、冷却水温度の変化に応じて、PTCヒータのONとOFFとの切り替えがされる。
【0162】
このように、本実施形態では、外気温が−7℃以下のように低く、ユーザーに対して高い吹出温が必要な場合に、外気温が−7℃よりも高い場合と比較して、PTCヒータのON領域(PTCヒータがONとなる冷却水温度域)が拡大して、1本目のPTCヒータが連続作動することとなるので、吹出温を高くすることができるとともに、1本目のPTCヒータの作動と停止の切替頻度を少なくできる。この結果、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、PTCヒータの作動開始時の突入電流発生頻度を低減できる。
【0163】
また、本実施形態では、外気温が−7℃以下の場合、1本目のPTCヒータがONしっぱなしとなるが、外気温が−7℃よりも高い場合では、エンジンOFF水温の演算の結果によっては、1本目のPTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温以下となり、冷却水温度の変化に応じて、PTCヒータのONとOFFとの切り替えがされるので、無駄な電力消費を抑制できる。
【0164】
なお、本実施形態においても、第2実施形態と同様の変更が可能である。
【0165】
(1)図14に示す制御マップでは、各PTCヒータのON水温とOFF水温の差dPTCが、7.5℃に固定されていたが、エンジンON水温とエンジンOFF水温との差dEGと同じ温度である5℃に固定されていても良く、エンジンON水温とエンジンOFF水温との差dEGよりも小さな温度差に固定されていても良い。
【0166】
このような場合であっても、本実施形態によれば、ある温度(−7℃)よりも低い外気温のときに、1本目のPTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温(上限温度の70℃)よりも高く設定されるので、1本目のPTCヒータの作動と停止の切替頻度を少なくできる。
【0167】
(2)図14に示す制御マップでは、PTCヒータのON水温とOFF水温の両方が、外気温が低い程、高く補正されるようになっていたが、PTCヒータのON水温とOFF水温のうちOFF水温のみが補正されるようになっていても良い。例えば、図14に示す3つの制御マップにおけるPTCヒータのON水温を、外気温が12〜25℃のときのON水温と同じ温度に変更しても良い。
【0168】
この場合であっても、外気温が−7℃以下のときでは、1本目のPTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温よりも高くなるように補正されることとなるので、1本目のPTCヒータの作動と停止の切替頻度を少なくできるという上述した本実施形態の効果を奏する。なお、この場合では、各PTCヒータのON水温とOFF水温の差dPTCが設定温度に応じて変動することとなる。
【0169】
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態では、ステップS4で空調熱負荷から算出したTAOを用いて、エンジンON/OFFのしきい値を決定したが、ステップS4で算出したTAOを用いる代わりに、直接、空調熱負荷に基づいて決定しても良い。空調熱負荷は、例えば、設定温度と、少なくとも外気温を要素とする環境条件とに応じて決定される。
【0170】
(2)上述の各実施形態では、3本のPTCヒータ15を用いたが、PTCヒータの本数は任意に変更可能である。また、上述の実施形態では、PTCヒータとして、複数本のPTCヒータを用い、各PTCヒータの作動と停止とを切り替えることで、PTCヒータ15全体としての加熱能力を変化させていたが、PTCヒータとして、連続的に加熱能力を変更可能なものを用いても良い。
【0171】
(3)上述の各実施形態では、電気ヒータとして、PTCヒータを用いたが、PTCヒータ以外の他の電気ヒータを用いても良い。
【0172】
(4)上述の各実施形態では、PTCヒータ15の配置場所を、ヒータコア14の空気流れ下流側としたが、ヒータコア14の内部としても良い。
【0173】
(5)上述の各実施形態では、空調のためのエンジンEG作動時において、空調制御装置50の要求信号出力手段50aからエンジンON要求信号が出力されない場合に、エンジン制御装置70がエンジンEGを停止させていたが、要求信号出力手段50aからエンジンON要求信号が出力されず、エンジン停止を要求するエンジンOFF要求信号(停止要求信号)が出力された場合に、エンジン制御装置70がエンジンEGを停止させるようにしても良い。
【0174】
(6)上述の各実施形態では、加熱用熱交換器として、エンジンEGによって温度上昇したエンジン冷却水と空気との熱交換により、車室内への送風空気を加熱するヒータコア14を用いたが、エンジン以外の温度上昇手段によって温度上昇した熱媒体と空気とを熱交換させるものを用いても良い。この場合、空調制御装置50(要求信号出力手段50a)が、温度上昇手段の作動を制御する温度上昇手段用の制御手段に対して作動要求信号を出力することによって、温度上昇手段が作動することになる。
【0175】
熱媒体としては、水以外に、冷凍サイクルに用いられるエチレングリコール等の冷媒や、その他の比熱の高い保温剤等が挙げられる。また、熱媒体の温度上昇手段としては、電熱ヒータやヒートポンプサイクル等が挙げられる。
【0176】
例えば、ヒータコアと電熱ヒータとの間を水が循環する温水回路を構成し、電熱ヒータで加熱された温水と空気とを熱交換させても良い。また、ヒートポンプサイクルの冷媒をヒータコアに流入させて、ヒータコアで冷媒を放熱させても良い。また、エンジン冷却水の代わりに、燃料電池の冷却水を用いても良い。
【0177】
(7)車両に着目すると、上述の各実施形態では、本発明の車両用空調装置1を、プラグインハイブリッド車両に適用したが、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から直接駆動力を得て走行可能な、いわゆるパラレル型のハイブリッド車両に適用してもよい。また、エンジンEGを発電機の駆動源として用い、発電された電力をバッテリに蓄え、さらに、バッテリ81に蓄えられた電力を供給されることによって作動する走行用電動モータから駆動力を得て走行する、いわゆるシリアル型のハイブリッド車両に適用してもよい。
【0178】
また、停止時にエンジンを自動停止するアイドリングストップ車、燃料電池車、燃料電池とバッテリとを備えるハイブリッド車両、電気自動車等に、本発明の車両用空調装置を適用しても良い。
【符号の説明】
【0179】
1 車両用空調装置
14 ヒータコア(加熱用熱交換器)
15 PTCヒータ(電気ヒータ)
50 空調制御装置
50a 要求信号出力手段
50b PTCヒータ制御手段(電気ヒータ制御手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車やアイドリングストップ車のように、走行状態等に応じてエンジンを自動停止する車両に搭載され、エンジン冷却水を熱源として車室内への送風空気を加熱するヒータコアを備える車両用空調装置において、走行状態等に応じてエンジンが停止している場合であっても、エンジン冷却水の温度が低ければ、空調のためにエンジン作動を要求するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献1に記載の車両用空調装置は、車室内への送風空気を加熱する電気ヒータを備えている。この電気ヒータは、エンジン冷却水の温度に基づいて、その作動本数が決定される(特許文献1の図22参照)。
【0004】
また、電気ヒータとしては、PTC素子(正特性サーミスタ素子)を用いたPTCヒータが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−174042号公報
【特許文献2】実公平7−29597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電気ヒータは、例えば、特許文献2の第2頁〈考案が解決しようとする課題〉の欄に記載のように、その通電初期(始動時)に突入電流が流れることが知られている。
【0007】
このため、上記特許文献1のように、空調のためにエンジン作動を要求するとともに、車室内への送風空気を加熱するPTCヒータ等の電気ヒータを備える車両用空調装置において、電気ヒータのO/OFF切替の頻度が高いと、突入電流の発生頻度が高くなって、車両に搭載されている他の電子機器への悪影響、例えば、電圧降下や電流制限等が起きる可能性がある。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、電気ヒータの作動開始時の突入電流発生頻度を低減できる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
熱媒体の温度を所定温度以上に維持するために、温度上昇手段(EG)の停止時に、温度上昇手段(EG)の作動を要求する作動要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)と、
電気ヒータ(15)の作動と停止の切り替えを制御する電気ヒータ制御手段(50b)とを備え、
要求信号出力手段(50a)は、熱媒体の温度が第1の作動用しきい値よりも低い場合に、作動要求信号を出力し、熱媒体の温度が第1の停止用しきい値よりも高い場合に、作動要求信号を出力しないようになっており、
電気ヒータ制御手段(50b)は、熱媒体の温度が第2の作動用しきい値よりも低い場合に、電気ヒータ(15)を作動させ、熱媒体の温度が第2の停止用しきい値よりも高い場合に、電気ヒータ(15)を停止させるようになっており、
電気ヒータ制御手段(50b)は、第2の作動用しきい値および第2の停止用しきい値として、第2の作動用しきい値と第2の停止用しきい値の差(dPTC)が、第1の作動用しきい値と第1の停止用しきい値との差(dEG)よりも大きく設定されているものを用いることを特徴としている。
【0010】
これによると、要求信号出力手段によって、温度上昇手段(EG)の作動と停止とが切り替えられるので、熱媒体の温度が温度上昇手段(EG)側の第1の作動用しきい値と第1の停止用しきい値との間の温度範囲付近で維持される。
【0011】
このとき、本発明と異なり、電気ヒータ(15)側の第2の作動用しきい値と第2の停止用しきい値とが、それぞれ、温度上昇手段(EG)側の第1の作動用しきい値と第1の停止用しきい値と一致する場合、熱媒体の温度変化によって生じる温度上昇手段(EG)の作動と停止の切り替え毎に、電気ヒータ(15)の作動と停止の切り替えが起きてしまう。
【0012】
これに対して、本発明では、電気ヒータ(15)側の第2の作動用しきい値と第2の停止用しきい値の少なくとも一方は、温度上昇手段(EG)側の第1の作動用しきい値と第1の停止用しきい値との間の温度範囲から離れるので、電気ヒータ(15)側の第2の作動用しきい値と第2の停止用しきい値とが、それぞれ、温度上昇手段(EG)側の第1の作動用しきい値と第1の停止用しきい値と一致する場合と比較して、電気ヒータ(15)の作動と停止の切替頻度を少なくできる。この結果、電気ヒータの作動開始時の突入電流発生頻度を低減できる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明では、
熱媒体の温度を所定温度以上に維持するために、温度上昇手段(EG)の停止時に、温度上昇手段(EG)の作動を要求する作動要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)と、
電気ヒータ(15)の作動と停止の切り替えを制御する電気ヒータ制御手段(50b)とを備え、
要求信号出力手段(50a)は、熱媒体の温度が第1の作動用しきい値よりも低い場合に、作動要求信号を出力し、熱媒体の温度が第1の停止用しきい値よりも高い場合に、作動要求信号を出力しないようになっており、
電気ヒータ制御手段(50b)は、熱媒体の温度が第2の作動用しきい値よりも低い場合に、電気ヒータ(15)を作動させ、熱媒体の温度が第2の停止用しきい値よりも高い場合に、電気ヒータ(15)を停止させるようになっており、
電気ヒータ制御手段(50b)は、第2の停止用しきい値として、乗員によって設定される車室内の目標温度(Tset)が高い程、高く補正されたものを用いることを特徴としている。
【0014】
これによると、要求信号出力手段によって、温度上昇手段(EG)の作動と停止とが切り替えられるので、熱媒体の温度が温度上昇手段(EG)側の第1の作動用しきい値と第1の停止用しきい値との間の温度範囲付近で維持される。
【0015】
一方、電気ヒータ制御手段によって、電気ヒータの作動と停止とが切り替えられる際に、ユーザーが車室内の目標温度を比較的高く設定するときでは、目標温度を比較的低く設定するときよりも、電気ヒータ側の第2の停止用しきい値が高くなるので、電気ヒータを作動させるときの熱媒体の温度範囲(電気ヒータのON領域)を拡大できる。すなわち、電気ヒータ側の第2の停止用しきい値が高くなることで、温度上昇手段側の第1の作動用しきい値と第1の停止用しきい値との間の温度範囲付近で熱媒体が温度変化するときに、熱媒体の温度が電気ヒータ側の第2の停止用しきい値を超える機会を減少させることができ、電気ヒータが連続作動する機会を増大させることができる。また、ユーザーが車室内の目標温度を比較的高く設定するときは、ユーザーが高い吹出温を望むときである。吹出温とは吹出口からの吹出空気温度である。
【0016】
よって、本発明によれば、ユーザーが高い吹出温を望むときに、吹出温を高くすることができるとともに、電気ヒータの作動と停止の切替頻度を少なくでき、電気ヒータの作動開始時の突入電流発生頻度を低減できる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明では、
熱媒体の温度を所定温度以上に維持するために、温度上昇手段(EG)の停止時に、温度上昇手段(EG)の作動を要求する作動要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)と、
電気ヒータ(15)の作動と停止の切り替えを制御する電気ヒータ制御手段(50b)とを備え、
要求信号出力手段(50a)は、熱媒体の温度が第1の作動用しきい値よりも低い場合に、作動要求信号を出力し、熱媒体の温度が第1の停止用しきい値よりも高い場合に、作動要求信号を出力しないようになっており、
電気ヒータ制御手段(50b)は、熱媒体の温度が第2の作動用しきい値よりも低い場合に、電気ヒータ(15)を作動させ、熱媒体の温度が第2の停止用しきい値よりも高い場合に、電気ヒータ(15)を停止させるようになっており、
電気ヒータ制御手段(50b)は、第2の停止用しきい値として、外気温(Tam)が低い程、高く補正されたものを用いることを特徴としている。
【0018】
これによると、要求信号出力手段によって、温度上昇手段(EG)の作動と停止とが切り替えられるので、熱媒体の温度が温度上昇手段(EG)側の第1の作動用しきい値と第1の停止用しきい値との間の温度範囲付近で維持される。
【0019】
一方、電気ヒータ制御手段によって、電気ヒータの作動と停止とが切り替えられる際に、外気温が比較的低いときに、外気温が比較的高いときよりも、電気ヒータ側の第2の停止用しきい値が高くなるので、電気ヒータを作動させるときの熱媒体の温度範囲(電気ヒータのON領域)を拡大できる。すなわち、電気ヒータ側の第2の停止用しきい値が高くなることで、温度上昇手段側の第1の作動用しきい値と第1の停止用しきい値との間の温度範囲付近で熱媒体が温度変化するときに、熱媒体の温度が電気ヒータ側の第2の停止用しきい値を超える機会を減少させることができ、電気ヒータが連続作動する機会を増大させることができる。また、外気温が比較的低いときは、通常、ユーザーに対して高い吹出温が必要となるときである。吹出温とは吹出口からの吹出空気温度である。
【0020】
よって、本発明によれば、ユーザーに対して高い吹出温が必要となるときに、吹出温を高くすることができるとともに、電気ヒータの作動と停止の切替頻度を少なくでき、電気ヒータの作動開始時の突入電流発生頻度を低減できる。
【0021】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態における車両用空調装置の構成図である。
【図2】図1の車両用空調装置の電気制御部の構成図である。
【図3】図1中の電気ヒータの構成図である。
【図4】図1の車両用空調装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図5】図4のステップS5の詳細を示すフローチャートである。
【図6】図4のステップS10の詳細を示すフローチャートである。
【図7】図4のステップS11の詳細を示すフローチャートである。
【図8】図4のステップS12の詳細を示すフローチャートである。
【図9】第1実施形態の一例における冷却水温度TWの変化とPTCヒータのON/OFF切替との関係を示すタイムチャートである。
【図10】比較例1における冷却水温度TWの変化とPTCヒータのON/OFF切替との関係を示すタイムチャートである。
【図11】第2実施形態における図4のステップS10の詳細を示すフローチャートである。
【図12】第2実施形態における設定温度毎に用意されたPTCヒータON/OFF制御マップの一例である。
【図13】第2実施形態の一例における冷却水温度TWの変化とPTCヒータのON/OFF切替との関係を示すタイムチャートである。
【図14】第3実施形態における図4のステップS10の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
図1に、本実施形態における車両用空調装置1の全体構成を示し、図2に、この車両用空調装置1の電気制御部の構成を示す。本実施形態では、この車両用空調装置1を、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用している。
【0024】
まず、本実施形態のハイブリッド車両について説明する。本実施形態のハイブリッド車両は、車両停止時に外部電源(商用電源)から供給された電力をバッテリ81に充電することのできる、いわゆるプラグインハイブリッド車両として構成されている。このプラグインハイブリッド車両は、車両走行開始前の車両停止時に外部電源からバッテリ81に充電しておくことによって、走行開始時のようにバッテリ81の蓄電残量が予め定めた走行用基準残量以上になっているときには、主に走行用電動モータの駆動力によって走行する(以下、この運転モードをEV運転モードという)。
【0025】
一方、車両走行中にバッテリ81の蓄電残量が走行用基準残量よりも低くなっているときには、主にエンジンEGの駆動力によって走行する(以下、この運転モードをHV運転モードという)。このように、EV運転モードとHV運転モードとを切り替えることによって、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対してエンジンEGの燃料消費量を抑制して、車両燃費を向上させている。
【0026】
なお、EV運転モードは、主に走行用電動モータが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際にはエンジンEGを作動させて走行用電動モータを補助する。同様に、HV運転モードは、主にエンジンEGが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際には走行用電動モータを作動させてエンジンEGを補助する。このようなエンジンEGおよび走行用電動モータの作動は、エンジン制御装置70によって制御される。
【0027】
また、エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機80を作動させるためにも用いられる。そして、発電機80にて発電された電力および外部電源から供給された電力は、バッテリ81に蓄えることができ、バッテリ81に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給できる。
【0028】
次に、本実施形態の車両用空調装置1の詳細構成を説明する。車両用空調装置1は、図1に示す室内空調ユニット10と、図2に示す空調制御装置50とを備えている。
【0029】
室内空調ユニット10は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング11内に送風機12、蒸発器13、ヒータコア14、PTCヒータ15等を収容したものである。
【0030】
ケーシング11は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング11内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替箱20が配置されている。
【0031】
より具体的には、内外気切替箱20には、ケーシング11内に内気を導入させる内気導入口21および外気を導入させる外気導入口22が形成されている。さらに、内外気切替箱20の内部には、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア23が配置されている。
【0032】
したがって、内外気切替ドア23は、ケーシング11内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。より具体的には、内外気切替ドア23は、内外気切替ドア23用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0033】
また、吸込口モードとしては、内気導入口21を全開とするとともに外気導入口22を全閉としてケーシング11内へ内気を導入する内気モード、内気導入口21を全閉とするとともに外気導入口22を全開としてケーシング11内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
【0034】
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機(ブロワ)12が配置されている。この送風機12は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
【0035】
送風機12の空気流れ下流側には、蒸発器13が配置されている。蒸発器13は、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。蒸発器13は、圧縮機(コンプレッサ)31、凝縮器32、気液分離器33、膨張弁34等とともに、冷凍サイクル30を構成している。
【0036】
圧縮機31は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル30において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構31aを電動モータ31bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。電動モータ31bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。また、インバータ61は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機31の冷媒吐出能力が変更される。
【0037】
凝縮器32は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と、室外送風機としての送風ファン35から送風された車室外空気(外気)とを熱交換させることにより、圧縮された冷媒を凝縮液化させるものである。送風ファン35は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
【0038】
気液分離器33は、凝縮液化された冷媒を気液分離して液冷媒のみを下流に流すものである。膨張弁34は、液冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。蒸発器13は、冷媒と送風空気との熱交換により、減圧膨張された冷媒を蒸発気化させるものである。
【0039】
また、ケーシング11内において、蒸発器13の空気流れ下流側には、蒸発器13通過後の空気を流す加熱用冷風通路16、冷風バイパス通路17といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路16および冷風バイパス通路17から流出した空気を混合させる混合空間18が形成されている。
【0040】
加熱用冷風通路16には、蒸発器13通過後の空気を加熱するための加熱手段としてのヒータコア14およびPTCヒータ15が、送風空気流れ方向に向かってこの順で配置されている。
【0041】
ヒータコア14は、車両走行用駆動力を出力するエンジンEGの冷却水と蒸発器13通過後の空気とを熱交換させて、蒸発器13通過後の空気を加熱する加熱用熱交換器である。
【0042】
具体的には、ヒータコア14とエンジンEGとの間に冷却水流路41が設けられており、ヒータコア14とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路40が構成されている。そして、この冷却水回路40には、冷却水を循環させるための電動ウォータポンプ42が設置されている。電動ウォータポンプ42は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環量)が制御される電動式の水ポンプである。
【0043】
また、PTCヒータ15は、PTC素子(正特性サーミスタ素子)を有し、このPTC素子に電力が供給されることによって発熱して、ヒータコア14通過後の空気を加熱する補助暖房手段としての電気ヒータである。本実施形態のPTCヒータ15は、複数本(具体的には3本)設けられており、空調制御装置50が、通電するPTCヒータ15の本数を変化させることによって、複数のPTCヒータ15全体としての加熱能力が制御される。
【0044】
ここで、図3に、本実施形態のPTCヒータ15の電気的構成を示す。より具体的には、このPTCヒータ15は、図3に示すように、第1PTCヒータ15a、第2PTCヒータ15b、第3PTCヒータ15cから構成されている。そして、各PTCヒータ15a、15b、15cの正極側はバッテリ81側に接続され、負極側は各PTCヒータ15a、15b、15cが有する各スイッチ素子SW1、SW2、SW3を介して、グランド側へ接続されている。各スイッチ素子SW1、SW2、SW3は、各PTCヒータ15a、15b、15cが有する各PTC素子h1、h2、h3の通電状態と非通電状態とを切り替えるものである。
【0045】
さらに、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、独立して制御される。したがって、空調制御装置50は、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の通電状態(ON)と非通電状態(OFF)とを独立に切り替えることによって、各PTCヒータ15a、15b、15cのうち、通電状態となり加熱能力を発揮するものを切り替えて、PTCヒータ15全体としての加熱能力を変化させることができる。
【0046】
一方、図1中の冷風バイパス通路17は、蒸発器13通過後の空気を、ヒータコア14およびPTCヒータ15を通過させることなく、混合空間18に導くための空気通路である。したがって、混合空間18にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路16を通過する空気および冷風バイパス通路17を通過する空気の風量割合によって変化する。
【0047】
そこで、本実施形態では、蒸発器13の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路16および冷風バイパス通路17の入口側に、加熱用冷風通路16および冷風バイパス通路17へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア19を配置している。
【0048】
したがって、エアミックスドア19は、混合空間18内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。より具体的には、エアミックスドア19は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動され、この電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0049】
さらに、ケーシング11の送風空気流れ最下流部には、混合空間18から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口24〜26が配置されている。この吹出口24〜26としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口24、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口25、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口26が設けられている。
【0050】
また、フェイス吹出口24、フット吹出口25、およびデフロスタ吹出口26の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口24の開口面積を調整するフェイスドア24a、フット吹出口25の開口面積を調整するフットドア25a、デフロスタ吹出口26の開口面積を調整するデフロスタドア26aが配置されている。
【0051】
これらのフェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26aは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
【0052】
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口24を全開してフェイス吹出口24から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口24とフット吹出口25の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口25を全開するとともにデフロスタ吹出口26を小開度だけ開口して、フット吹出口25から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口25およびデフロスタ吹出口26を同程度開口して、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
【0053】
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
【0054】
空調制御装置50の出力側には、送風機12、圧縮機31の電動モータ31b用のインバータ61、送風ファン35、各種電動アクチュエータ62、63、64、第1PTCヒータ15a、第2PTCヒータ15b、第3PTCヒータ15c、電動ウォータポンプ42等が接続されている。
【0055】
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、圧縮機31吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、圧縮機31吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、蒸発器13からの吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、圧縮機31に吸入される冷媒の温度Tsiを検出する吸入温度センサ57、エンジンEGから流出したエンジン冷却水の冷却水温度TWを検出する冷却水温度センサ58(冷却水温度検出手段)等のセンサ群が接続されている。
【0056】
なお、本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的に蒸発器13の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、蒸発器13のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、蒸発器13を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。
【0057】
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ(図示せず)、エアコンのオン・オフ(具体的には圧縮機31のオン・オフ)を切り替えるエアコンスイッチ60a、オートスイッチ60b、運転モードの切替スイッチ(図示せず)、吸込口モードを切り替える吸込口モードスイッチ(図示せず)、吹出口モードを切り替える吹出口モードスイッチ(図示せず)、送風機12の風量設定スイッチ(図示せず)、車室内温度設定スイッチ60c、エコノミースイッチ60d等が設けられている。
【0058】
オートスイッチ60bは、乗員の操作によって車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除する自動制御設定手段である。車室内温度設定スイッチ60cは、乗員の操作によって車室内の目標温度Tsetを設定する目標温度設定手段である。エコノミースイッチ60dは、乗員の操作によって車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力させる省動力化要求手段である。
【0059】
さらに、空調制御装置50は、エンジンEGの作動を制御するエンジン制御装置70に電気的接続されており、空調制御装置50およびエンジン制御装置70は互いに電気的に通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置50がエンジン制御装置70へエンジンEGの作動要求信号を出力することによって、エンジンEGを作動させることができる。また、空調のためにエンジンEGが作動している場合には、空調制御装置50がエンジンEGの作動要求信号を出力しないことによって、エンジンEGを停止させることができる。
【0060】
なお、空調制御装置50およびエンジン制御装置70は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。
【0061】
例えば、空調制御装置50のうち、エンジン制御装置70と制御信号の送受信を行う構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、信号出力手段50aを構成している。また、空調制御装置50のうち、PTCヒータ15の作動と停止との切り替えを制御する構成がPTCヒータ制御手段50bを構成している。
【0062】
次に、図4により、上記構成における本実施形態の作動を説明する。図4は、本実施形態の車両用空調装置1のメインルーチンとしての制御処理を示すフローチャートである。なお、図4中の各ステップS1〜S14は、空調制御装置50が有する各種の機能実現手段を構成している。
【0063】
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等が行われる。
【0064】
次のステップS2では、操作パネル60の操作信号を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチ60cによって設定される車室内設定温度Tset、吹出口モードの選択信号、吸込口モードの選択信号、送風機12の風量の設定信号等がある。
【0065】
ステップS3では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜58等の検出信号を読み込んで、ステップS4へ進む。ステップS4では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチ60cによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。このように、目標吹出温度TAOは、少なくとも車室内設定温度や外気温に基づいて算出される。
【0066】
続くステップS5〜S12では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。
【0067】
まず、ステップS5では、エアミックスドア19の制御開度SWを、上記TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された蒸発器13からの吹出空気温度TE、冷却水温度センサ58によって検出されたエンジン冷却水温度TWに基づいて算出する。図5にステップS5の詳細内容を示す。
【0068】
具体的には、ステップS5では、図5に示すように、ステップS51で、次の数式F2−1〜F2−3により、仮のエアミックス開度SWddを演算する。
SWdd=(分子/分母)×100(%) …(F2−1)
分子=TAO−(TE+2) …(F2−2)
分母=MAX[10、{TW−(TE+2)}]…(F2−3)
ここで、数式F2−3に示すように、数式F2−1の分母は、10と演算値とのうち大きい方を採用する。これは、分母が0になってSWddの演算結果がエラーにならないようにするためである。
【0069】
続いて、ステップS52で、仮のエアミックス開度SWddを補正することにより、エアミックスドア19の制御開度(エアミックス制御開度)SWを演算する。この補正は、SWddの演算値と、所望の空気温度とするための実際のエアミックス開度とのずれを修正するためのものであり、実験によって得られた補正値を用いる。例えば、ステップS52中に示すSWddとSWとの関係を示す制御マップが予め空調制御装置50に記憶されており、この制御マップを用いて、仮のエアミックス開度SWddからエアミックス制御開度SWを演算する。
【0070】
なお、SW=0(%)は、エアミックスドア19の最大冷房位置であり、冷風バイパス通路17を全開し、加熱用冷風通路16を全閉する。これに対し、SW=100(%)は、エアミックスドア19の最大暖房位置であり、冷風バイパス通路17を全閉し、加熱用冷風通路16を全開する。
【0071】
ステップS6では、送風機12により送風される空気の目標送風量を決定する。具体的には電動モータに印加するブロワモータ電圧をステップS4にて決定されたTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。
【0072】
具体的には、本実施形態では、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を最大値付近の高電圧にして、送風機12の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機12の風量を減少させる。
【0073】
さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機12の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワモータ電圧を最小値にして送風機12の風量を最小値にするようになっている。
【0074】
ステップS7では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱20の切替状態を決定する。この吸込口モードもTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。さらに、外気の排ガス濃度を検出する排ガス濃度検出手段を設け、排ガス濃度が予め定めた基準濃度以上となったときに、内気モードを選択するようにしてもよい。
【0075】
ステップS8では、吹出口モードを決定する。この吹出口モードも、TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフットモード→バイレベルモード→フェイスモードへと順次切り替える。
【0076】
したがって、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択される。さらに、湿度センサの検出値から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合には、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
【0077】
ステップS9では、圧縮機31の冷媒吐出能力(具体的には、回転数)を決定する。本実施形態の基本的な圧縮機31の回転数の決定手法は以下の通りである。例えば、ステップS4で決定したTAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、蒸発器13からの吹出空気温度TEの目標吹出温度TEOを決定する。
【0078】
さらに、この目標吹出温度TEOと吹出空気温度TEの偏差En(TEO−TE)を算出し、この偏差Enと、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fCn−1に対する回転数変化量ΔfCを求める。そして、前回の圧縮機回転数fCn−1に回転数変化量ΔfCを加算したものを今回の圧縮機回転数fCnとする。
【0079】
ステップS9に続いて、ステップS10では、外気温、仮のエアミックス開度SWdd、エンジン冷却水温度TWに応じて、PTCヒータ15の作動本数を決定する。図6に、このステップS10の詳細を示す。
【0080】
図6に示すように、ステップS101では、外気温に基づいてPTCヒータ15の作動が不要か否かを判定する。具体的には、外気センサ52が検出した外気温が所定温度、本例では、26℃よりも高いか否かを判定する。外気温が26℃よりも高いと判定した場合(YES判定の場合)、PTCヒータ15による吹出温アシストは必要無いので、ステップS105に進み、PTCヒータ15の作動本数を0本に決定する。一方、ステップS101で、外気温が26℃よりも低いと判定した場合(NO判定の場合)、ステップS102に進む。
【0081】
ステップS102では、仮のエアミックス開度SWddに基づいてPTCヒータ作動の要否フラグ(f(SW)=ONorOFF)を決定する。エアミックス開度SWが小さいほど、暖風割合が少ないことから、エアミックス開度SWが小さければ、PTCヒータの作動は不要であると考えられる。そこで、ステップS102では、ステップS5で演算した仮のエアミックス開度SWddを予め定められた所定開度と比較する。そして、仮のエアミックス開度SWddが第1基準開度、本例では、100%よりも小さければ、PTCヒータ停止(f(SW)=OFF)とする。一方、仮のエアミックス開度SWddが第2基準開度、本例では、110%よりも大きければ、PTCヒータ作動(f(SW)=ON)とする。このように、本例では、エアミックスドア19の位置が最大暖房位置およびその付近となる場合に、PTCヒータ15を作動させるようにしている。
【0082】
そして、ステップS103では、ステップS102で決定したPTCヒータ作動の要否フラグがPTCヒータ停止(f(SW)=OFF)か否かを判定する。このとき、f(SW)=OFFの場合(YES判定の場合)、ステップS105に進み、PTCヒータの作動本数を0本に決定する。一方、f(SW)=ONの場合(NO判定の場合)、ステップS104に進む。
【0083】
ステップS104では、冷却水温度TWに応じてPTCヒータ15の作動本数を決定する。このとき、空調制御装置に予め記憶され、1本目、2本目、3本目それぞれのPTCヒータ15a、15b、15cのON水温およびOFF水温が予め定められされた制御マップを用いる。ON水温およびOFF水温は、作動および停止の判定基準温度となる作動用しきい値および停止用しきい値であり、特許請求の範囲に記載の第2の作動用しきい値および第2の停止用しきい値に相当する。
【0084】
本実施形態では、図6のステップS104に示すように、各PTCヒータ15a、15b、15cにおけるON水温とOFF水温の差dPTCが7.5℃に設定されている。また、PTCヒータの1本目と2本目におけるON水温同士の間隔およびOFF水温同士の間隔が5℃に設定されており、2本目と3本目との関係も同様である。なお、本実施形態では、各PTCヒータのON水温とOFF水温は固定されている。
【0085】
ステップS10に続いて、ステップS11では、エンジンEGの作動要求(エンジンON要求)の要否を決定する。このステップS11では、運転モード、バッテリ残量および車両走行負荷によってエンジンEGが停止している場合に、空調のためのエンジンEGの作動および停止を決定する。
【0086】
ここで、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両では、常時エンジンを作動させているのでエンジン冷却水も常時高温となる。したがって、通常の車両ではエンジン冷却水をヒータコア14に流通させることで充分な暖房性能を発揮することができる。
【0087】
これに対して、本実施形態のようなハイブリッド車両では、バッテリ残量に余裕があれば、走行用電動モータのみから走行用の駆動力を得て走行することができる。このため、高い暖房性能が必要な場合であっても、エンジンEGが停止しているために、エンジン冷却水温度TWが、ヒータコア14にて充分な暖房性能を発揮できる温度まで上昇していないことがある。
【0088】
そこで、本実施形態では、高い暖房性能が必要な場合であって、エンジン冷却水温度TWが予め定めた基準冷却水温度よりも低いときは、空調制御装置50からエンジン制御装置70に対して、エンジンEGを作動するようにエンジン作動要求信号を出力する。これにより、エンジン冷却水温度TWを上昇させて高い暖房性能を得るようにしている。
【0089】
また、このように空調のためにエンジンEGを作動させる場合では、エンジン冷却水温度TWが所定の温度範囲内で維持されるように、空調制御装置50からエンジン制御装置70に対してエンジンON要求信号を出力しない。これにより、エンジン制御装置70はエンジンEGを停止させる。
【0090】
このステップS11の詳細について図7を用いて説明する。
【0091】
図7に示すステップS111、S112では、ステップS113で行うエンジン冷却水温度に基づく仮のエンジンON要求の要否決定に用いる判定しきい値を算出する。
【0092】
まず、ステップS111で、PTCヒータ15の作動による吹出温上昇量ΔTptcを演算する。この吹出温上昇量ΔTptcとは、吹出口から車室内へ吹き出される空調風の温度(吹出温)のうちPTCヒータ15の作動が寄与した温度上昇量である。本例では、ΔTptcの数値がPTCヒータ15の作動本数毎に予め定められた制御マップを用いて、PTCヒータ15の作動本数に応じて、ΔTptcの数値(固定値)を決定する。この制御マップは、実験によって作成されるものである。ここでは、PTCヒータの作動本数が0本のとき0℃とし、1本増える毎に3℃ずつ加算している。
【0093】
続いて、ステップS112では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOや吹出温上昇量ΔTptc等に応じて、エンジンOFF水温と、エンジンON水温を算出する。エンジンOFF水温は、エンジンを停止させるときの判定基準温度となる停止用しきい値であり、エンジンON水温は、エンジンを作動させるときの判定基準温度となる作動用しきい値である。したがって、エンジンOFF水温およびエンジンON水温が、特許請求の範囲に記載の第1の停止用しきい値および第2の作動用しきい値に相当する。
【0094】
ここで、エンジンOFF水温は、数式F5−1を用いて実吹出温がおおよそ目標吹出温度TAOとなるように演算された基準冷却水温度TWOと70℃とのうちの小さい方が採用される。一方、エンジンON水温は、頻繁にエンジンがON/OFF切替するのを防止するため、エンジンOFF水温よりも所定温度、本例では、5℃低く設定される。
TWO={(TAO−ΔTptc)−(TE×0.2)}/0.8・・・(F5−1)
なお、基準冷却水温度TWOは、エアミックス前の温風温度TWDが目標吹出温度TAOになるものと仮定したときに、必要とされる冷却水温度である。TEは、蒸発器温度センサ56が検出した蒸発器13からの吹出空気温度である。
【0095】
また、数式F5−1は、ヒータコア14からの吹出空気温度Taについての2つの下記数式F5−2、F5−3から導かれる。すなわち、数式F5−1は、数式F5−3の右辺を数式F5−2の左辺に代入し、TWOについて解くことで導かれる。
Ta=TWO×α+TE×β・・・(F5−2)
Ta=TAO−ΔTptc・・・(F5−3)
なお、数式F5−2中のαはヒータコア14の熱交換効率であり、βはヒータコア14からの吹出空気温度Taに対する蒸発器13からの吹出空気温度TEの寄与度である。本例では、αを0.8、βを0.2としている。
【0096】
続いて、ステップS113では、エンジンEGの作動要求信号を出力するか否かの仮の要求信号フラグf(Tw)を決定する。この仮の要求信号フラグf(TW)は、次のステップS114でのエンジンON要求の要否決定の際のパラメータとなる。
【0097】
具体的には、冷却水温度センサ58で検出した実際の冷却水温度TWを、ステップS112で求めたエンジンOFF水温、エンジンON水温と比較する。そして、冷却水温度TWがエンジンON水温より低ければ、仮の要求信号フラグをf(TW)=ONとしてエンジンON要求信号を出力することを仮決定し、冷却水温度がエンジンOFF水温より高ければ、仮の要求信号フラグf(TW)=OFFとしてエンジンON要求信号を出力しないことを仮決定する。
【0098】
続いて、ステップS114では、ブロワの作動状態、目標吹出温度TAO、仮のON要求信号の要否フラグf(TW)に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、空調のためのエンジンON要求の要否決定を行う。
【0099】
具体的には、送風機12が作動(ON)している場合であって、目標吹出温度TAOが所定温度以上、本例では28℃以上のときは、空調のためのエンジンON要求の要否を仮の要求信号フラグf(TW)に応じて決定する。すなわち、仮の要求信号フラグf(TW)がONであれば、エンジンON要求信号を出力することを仮決定し、仮の要求信号フラグf(TW)がOFFであれば、エンジンON要求信号を出力しないことを仮決定する。
【0100】
一方、送風機12が作動(ON)している場合であって、目標吹出温度TAOが所定温度未満、本例では28℃未満の場合のように、目標吹出温度TAOが比較的低いときは、ヒータコア14による空気の加熱は必要無いため、仮の要求信号フラグf(TW)に関わらず、エンジンON要求信号を出力しないことを仮決定する。また、送風機12が停止(OFF)の場合は、目標吹出温度TAOや仮の要求信号フラグf(TW)にかかわらず、エンジンON要求信号を出力しないことを仮決定する。
【0101】
ステップS11に続いて、ステップ12では、ヒータコア14とエンジンEGとの間でエンジン冷却水を循環させる電動ウォータポンプ42の作動の要否を決定する。なお、このステップS12は、エンジンEGのON、OFF状態や、吹出口モードに関わらず、実行される。図8に、このステップS12の詳細を示す。
【0102】
ステップS12では、具体的には、図8に示すように、ステップS121で、冷却水温度センサ58が検出した冷却水温度TWが、蒸発器温度センサ56が検出した蒸発器13からの吹出空気温度TEより高いか否かを判定する。このとき、冷却水温度TWが蒸発器13からの吹出空気温度TEより低い場合(NO判定の場合)、ステップS124に進み、電動ウォータポンプ42の停止(OFF)を選択する。この結果、電動ウォータポンプ42は停止状態となるので、冷却水回路40での冷却水の循環が停止される。これは、冷却水温度TWが蒸発器13からの吹出空気温度TEより低いときに、冷却水をヒータコア14に流すと、ヒータコア14を流れる冷却水によって蒸発器通過後の空気を冷却してしまい、かえって吹出口からの吹出空気温度を低くしてしまうためである。
【0103】
一方、冷却水温度TWが蒸発器13からの吹出空気温度TEより高い場合(YES判定の場合)、ステップS122に進む。
【0104】
ステップS122では、送風機の作動(送風機ON)が選択されているか否かを判定する。このとき、送風機の停止(送風機OFF)が選択されている場合、NO判定し、省動力のため、ステップS124に進み、電動ウォータポンプ42の停止(OFF)を選択する。この結果、ブロワ停止時は電動ウォータポンプ42も停止状態となる。
【0105】
一方、送風機ONが選択されている場合、YES判定して、ステップS123に進み、電動ウォータポンプ42の作動(ON)を選択する。この結果、電動ウォータポンプ42が作動して、冷却水が冷媒回路内を循環することにより、ヒータコア14を流れる冷却水とヒータコア14を通過する空気との熱交換により、送風空気が加熱される。
【0106】
ステップS12に続いて、ステップS13では、上述のステップS5〜S12で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50から各種機器12、61、35、62、63、64、15a、15b、15c、42に対して制御信号および制御電圧が出力され、空調制御装置50(要求信号出力手段50a)からエンジン制御装置70に対してエンジンON要求信号が出力される。
【0107】
これにより、例えば、PTCヒータ15は、ステップ10で決定された作動本数で作動するとともに、電動ウォータポンプ42は、ステップS12で決定された通りに作動もしくは停止する。
【0108】
また、エンジン制御装置70に対して、空調のためのエンジンON要求信号が出力された場合、運転モードや走行条件によってエンジンEGが停止している場合であっても、バッテリ残量が所定量以上であれば、エンジン制御装置70は、空調のためにエンジンEGを作動させる。また、エンジンON要求信号が出力されない場合、エンジン制御装置70は、エンジン停止時であれば、エンジンを停止したままとし、空調のためのエンジン作動時であれば、エンジンを停止させる。
【0109】
次のステップS14では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。さらに、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を充分に確保することができる。
【0110】
次に、本実施形態の車両用空調装置1の特徴について説明する。
【0111】
図9は、本実施形態の一例における冷却水温度TWの変化とPTCヒータのON/OFF切替との関係を示すタイムチャートである。
【0112】
空調制御装置50は、図7のステップS113、S114のごとく、送風機12が作動(ON)の場合であって、目標吹出温度TAOが28℃以上のときに、空調のためのエンジンON要求の要否を冷却水温度TWに応じて決定している。そして、冷却水温度TWがエンジンON水温よりも低温のとき、エンジン作動要求信号の出力を決定することにより、エンジンを作動させる。一方、冷却水温度TWがエンジンOFF水温よりも高温のとき、エンジン作動要求信号を出力しないことを決定することにより、エンジンを停止させるようになっている。
【0113】
これにより、図9に示すように、エンジンEGが停止して、冷却水温度TWが低ければ、エンジンEGが作動することで、冷却水温度TWが上昇して所定の温度以上に維持される。このとき、エンジンOFF水温とエンジンON水温との差dEGが5℃に設定されている。図9の例では、エンジンOFF水温が70℃であり、エンジンON水温が65℃であるので、冷却水温度TWは、5℃付近の温度上下幅をもつ温度範囲、65℃〜70℃の間付近に維持される。なお、エンジンOFF水温を超えた後やエンジンON水温を下回った後のオーバーシュート量は、図9の例では毎回同じとなっているが、外気温等の車両環境条件によって変動するものである。ただし、通常、このオーバーシュート量が多くなりすぎることはなく、エンジンOFF水温とエンジンON水温との間付近で冷却水温度TWが変化する。
【0114】
このように、本実施形態では、エンジンOFF水温とエンジンON水温に所定の温度差を持たせているので、エンジンOFF水温とエンジンON水温との間付近で冷却水温度TWが変化する。これに対して、エンジンOFF水温とエンジンON水温に差を持たせない場合では、1つのエンジンON/OFF水温付近で冷却水温度TWが変化する。したがって、本実施形態によれば、エンジンOFF水温とエンジンON水温に差を持たせない場合と比較して、エンジンEGが頻繁にかかることを抑制できるので、エンジンEGの作動音変化が乗員に与える煩わしさを軽減できる。
【0115】
また、空調制御装置50は、図6のステップS104のごとく、1本目、2本目、3本目それぞれのPTCヒータのON水温およびOFF水温が予め定められた制御マップを用いて、冷却水温度TWに応じてPTCヒータ15の作動本数を決定している。ちなみに、本実施形態では、図9に示すように、1本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ75℃、67.5℃に設定され、2本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ70℃、62.5℃に設定され、3本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ65℃、57.5℃に設定されている。
【0116】
これにより、図9に示すように、空調のためにエンジンEGが作動して、冷却水温度TWが上昇して所定温度範囲内で維持されるとき、PTCヒータの作動本数は次のようになる。
【0117】
時刻t0のとき、冷却水温度TWが、1本目、2本目、3本目の全てのON水温よりも低いので、時刻t0〜時刻t1では、3本のPTCヒータが作動(ON)する。
【0118】
時刻t1を過ぎると、冷却水温度TWが3本目のOFF水温である65℃よりも高温となるので、時刻t1〜時刻t2では、3本目のPTCヒータが停止して、PTCヒータの作動本数は2本となる。
【0119】
さらに、時刻t2を過ぎると、冷却水温度TWが2本目のOFF水温である70℃よりも高温となるので、2本目が停止するが、時刻t2以降では、冷却水温度TWが2本目、3本目のON水温である62.5℃、57.5℃よりも低温にならないので、2本目、3本目は停止し続けることとなり、PTCヒータの作動本数は1本となる。なお、本実施形態では、1本目のOFF水温が75℃に設定されており、通常、冷却水温度TWが70℃付近までしか上昇せず75℃を超えないので、1本目のPTCヒータは、一度、作動開始すると、ほとんど停止せず、作動しっぱなしとなる。
【0120】
ここで、本実施形態と比較例1とを比較する。図10は、比較例1における冷却水温度TWの変化とPTCヒータのON/OFF切替との関係を示すタイムチャートである。この比較例1は、本実施形態に対して、各PTCヒータ15a、15b、15cにおけるON水温とOFF水温の差dPTCを、エンジンON水温とエンジンOFF水温との差dEGと同じ5℃に変更したものである。
【0121】
PTCヒータのON水温およびOFF水温は所定温度で固定されているが、エンジンON水温およびエンジンOFF水温は、図7のステップS112のごとく、TAO等によって変動する。このとき、比較例1では、PTCヒータのON水温およびOFF水温が、それぞれ、エンジンON水温およびエンジンOFF水温と一致する場合がある。この場合、エンジンEGのON/OFF切替に連動して、PTCヒータ15もON/OFF切替してしまう。
【0122】
例えば、図10に示すように、1本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ75℃、70℃に設定され、2本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ70℃、65℃に設定され、3本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ65℃、60℃に設定されているとき、エンジンOFF水温、エンジンON水温がそれぞれ70℃と65℃になって、2本目のPTCヒータのON水温、OFF水温が、それぞれ、エンジンON水温、エンジンOFF水温と一致する場合がある。
【0123】
この場合、図10に示すように、時刻t2以降(t3〜t8)において、冷却水温度TWが70℃よりも高くなったり、65℃よりも低くなったりして、エンジンEGがONもしくはOFFに切り替わる毎に、2本目のPTCヒータもONもしくはOFFに切り替わる。このように、比較例1では、PTCヒータ15が頻繁にON/OFF切替することとなる。
【0124】
これに対して、本実施形態では、各PTCヒータ15a、15b、15cにおけるON水温とOFF水温の差dPTCを、エンジンON水温とエンジンOFF水温との差dEGよりも大きな7.5℃に設定しているので、PTCヒータのON水温とOFF水温の両方が、それぞれ、エンジンON水温とエンジンOFF水温に一致することはない。
【0125】
本実施形態では、PTCヒータのON水温とOFF水温の少なくとも一方が、冷却水温度の変動範囲とほぼ等しいエンジンON水温とエンジンOFF水温との間の温度範囲から離れるので、PTCヒータの作動と停止との切替が起き難くなる。すなわち、PTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温よりも高い場合では、冷却水温度がPTCヒータのOFF水温よりも高くなり難いので、PTCヒータが停止し難くなる。PTCヒータのON水温がエンジンON水温よりも低い場合では、冷却水温度がPTCヒータのON水温よりも低くなり難いので、PTCヒータが作動し難くなる。
【0126】
例えば、図9に示すように、エンジンOFF水温およびエンジンON水温の演算の結果、エンジンOFF水温が70℃となり、エンジンON水温が65℃となったときでは、2本目のPTCヒータのOFF水温とエンジンOFF水温とは一致するが、2本目のPTCヒータのON水温とエンジンON水温とは一致せず、2本目のPTCヒータのON水温がエンジンON水温よりも低温となる。このため、2本目のPTCヒータは、時刻t2以降で、冷却水温度TWが2本目のPTCヒータのON水温よりも低くならないので、停止し続けることとなる。
【0127】
また、図示しないが、エンジンOFF水温およびエンジンON水温の演算の結果、例えば、エンジンOFF水温が67.5℃となり、エンジンON水温が62.5℃のときでは、2本目のPTCヒータのON水温とエンジンON水温とは62.5℃で一致するが、2本目のPTCヒータのOFF水温とエンジンOFF水温とは一致せず、2本目のPTCヒータのOFF水温は70℃であり、エンジンOFF水温よりも高温である。このため、2本目のPTCヒータは、冷却水温度TWが62.5℃よりも低いときに作動した後、冷却水温度TWが67.5℃付近までしか上昇せず、70℃よりも高くならないので、停止せず、作動し続けることとなる。
【0128】
よって、本実施形態によれば、比較例1と比較して、2本目のPTCヒータの作動と停止の切替頻度を少なくできるので、PTCヒータの作動開始時の突入電流発生頻度を低減できる。
【0129】
この結果、車両に搭載されている他の電子機器への悪影響、例えば、電圧降下や電流制限等が起きる可能性を少なくできる。さらに、PTCヒータに電気的に接続されているヒューズが突入電流で切れる可能性を少なくできるとともに、2本目のPTCヒータ15bが有するスイッチ素子SW2の作動頻度を低減できるで、スイッチ素子SW2を壊れにくくすることができる。
【0130】
また、図9に示す例では、2本目のPTCヒータ15bは、時刻t2以降では停止のままなので、図10に示す作動と停止の切り替えを繰り返す比較例1と比較して、車両全体の電力消費量を低減できる。
【0131】
(第2実施形態)
図11に、本実施形態におけるPTCヒータ15の作動本数を決定するステップS10の要部を示す。図11は、冷却水温度TWに応じたPTCヒータ15の作動本数が予め定められた制御マップであり、第1実施形態で説明した図6中のステップS104に対応している。
【0132】
第1実施形態では、図6中のステップS104で用いる各PTCヒータのON水温とOFF水温とが固定されていたが、本実施形態では、各PTCヒータのON水温とOFF水温とがユーザーによって設定される車室内設定温度Tsetに応じて変更される。
【0133】
具体的には、図11に示すように、制御マップ中に記載の各PTCヒータのON水温およびOFF水温は、予め定められた各基準値に対して、設定温度に基づいた補正値αを加算することによって決定される。図11に示す制御マップの各基準値は、第1実施形態で説明した図6中のステップS104に示される制御マップと同じであり、各PTCヒータのON水温とOFF水温の差dPTCは7.5℃に設定されている。補正値αは、各PTCヒータのON水温とOFF水温とが、設定温度が高い程、高く補正されるように、次の式により算出される。
【0134】
α(℃)=(設定温度−25)×5
したがって、設定温度が28℃のとき、補正値α=(28−25)×5=15(℃)となり、設定温度が25℃のとき、補正値α=(25−25)×5=0となり、設定温度が21℃のとき、補正値α=(21−25)×5=−20(℃)となる。
【0135】
このため、設定温度が25℃のときは、補正値αが0なので、1本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ75℃、67.5℃に設定され、2本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ70℃、62.5℃に設定され、3本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ65℃、57.5℃に設定される。
【0136】
また、設定温度が28℃のときは、補正値αが15℃なので、1本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ90℃、82.5℃に設定され、2本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ85℃、77.5℃に設定され、3本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ80℃、72.5℃に設定される。
【0137】
また、設定温度が21℃のときは、補正値αが−20℃なので、1本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ55℃、47.5℃に設定され、2本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ50℃、42.5℃に設定され、3本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ45℃、37.5℃に設定される。
【0138】
なお、ここでは、空調制御装置50に予め1つの制御マップが記憶されており、空調制御装置50が、この制御マップ中の各PTCヒータのON水温およびOFF水温を補正したが、図12に示すように、空調制御装置50に予め複数の制御マップが記憶されており、空調制御装置50が、ステップS104でのPTC作動本数の決定の際に、設定温度に応じて制御マップを選択的に切り替えるようにしても良い。図12は、設定温度毎に用意された制御マップの一例であり、これらの制御マップは、各PTCヒータのON水温とOFF水温とが、設定温度が高い程、高く補正されるように作成されている。
【0139】
このように、本実施形態では、各PTCヒータのON水温とOFF水温とが、設定温度が高い程、高く補正されるので、ある温度よりも高い設定温度のときに、PTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温よりも高くなる。このため、PTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温よりも高くなったPTCヒータは、一度電源がONになると、ONしっぱなしとなる。
【0140】
この一例を図13に示す。図13は、設定温度が28℃のときの冷却水温度TWの変化とPTCヒータのON/OFF切替との関係を示すタイムチャートである。図13に示すように、エンジンOFF水温およびエンジンON水温の演算の結果、エンジンOFF水温が上限温度である70℃となり、エンジンON水温が65℃となったときでは、通常、冷却水温度TWは65℃と70℃との間付近で変動する。
【0141】
このとき、1〜3本目の各PTCヒータのOFF水温は90℃、85℃、80℃であり、エンジンOFF水温の70℃よりも高く設定される。このように、設定温度が28℃のときでは、全てのPTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温よりも高くなるように補正される。また、1〜3本目の各PTCヒータのON水温は82.5℃、77.5℃、72.5℃と比較的高温に補正され、PTCヒータがONし易い条件となる。このため、1〜3本目の各PTCヒータは、冷却水温度が変化してもONとOFFの切替がされず、一度電源がONになると、ONしっぱなしとなる。
【0142】
よって、本実施形態によれば、設定温度が28℃のように高く、ユーザーが高い吹出温を望むときには、設定温度が25℃のように、設定温度が比較的低い場合と比較して、PTCヒータのON領域(PTCヒータがONとなる冷却水温度の範囲)が拡大して、PTCヒータが連続作動することとなるので、吹出温を高くすることができるとともに、PTCヒータの作動と停止の切替頻度を少なくできる。この結果、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、PTCヒータの作動開始時の突入電流発生頻度を低減できる。
【0143】
また、設定温度が28℃以上の場合、全てのPTCヒータがONしっぱなしとなるが、設定温度が28℃よりも低い場合、例えば、21℃、25℃の場合では、エンジンOFF水温の演算の結果によっては、何れかのPTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温よりも低くなり、冷却水温度の変化に応じて、PTCヒータのONとOFFとの切り替えがされるので、無駄な電力消費を抑制できる。
【0144】
なお、本実施形態においては、以下のように変更することも可能である。
【0145】
(1)図11、12に示す制御マップでは、各PTCヒータのON水温とOFF水温の差dPTCが、7.5℃に固定されていたが、エンジンON水温とエンジンOFF水温との差dEGと同じ温度である5℃に固定されていても良く、エンジンON水温とエンジンOFF水温との差dEGよりも小さな温度差に固定されていても良い。
【0146】
各PTCヒータのON水温とOFF水温の差dPTCがエンジンON水温とエンジンOFF水温との差dEGと同じ温度に固定されている場合、設定温度が低ければ、第1実施形態における比較例1の説明の通り、PTCヒータのON水温およびOFF水温が、それぞれ、エンジンON水温およびエンジンOFF水温と一致するときがある。
【0147】
これに対して、本実施形態では、ある温度よりも高い設定温度のときに、PTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温(上限温度)よりも高くなり、PTCヒータのOFF水温とエンジンOFF水温とは一致しなくなる。よって、この場合であっても、PTCヒータの作動と停止の切替頻度を少なくでき、PTCヒータの作動開始時の突入電流発生頻度を低減できる。
【0148】
(2)図11、12に示す制御マップでは、PTCヒータのON水温とOFF水温の両方が、設定温度が高い程、高く補正されるようになっていたが、PTCヒータのON水温とOFF水温のうちOFF水温のみが補正されるようになっていても良い。この場合、PTCヒータのON水温は固定され、PTCヒータのOFF水温がON水温よりも高い関係を維持しつつ、OFF水温は、設定温度が高い程、高く補正される。
【0149】
具体的には、図11に示す制御マップに対して、ON水温を固定値とし、OFF水温を基準値+補正値αとする。ただし、補正値αが常に0以上となるように式を変更する。例えば、設定温度が25℃、28℃のときでは、1本目〜3本目のPTCヒータのON水温は、それぞれ、67.5℃、62.5℃、57.5℃で同じであり、1本目〜3本目のPTCヒータのOFF水温は、それぞれ、設定温度が25℃のときは75℃、70℃、65℃であり、設定温度が28℃のときは90℃、85℃、80℃である。
【0150】
この場合であっても、設定温度が28℃のときでは、全てのPTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温よりも高くなるように補正されることとなるので、PTCヒータの作動と停止の切替頻度を少なくできるという上述した本実施形態の効果を奏する。なお、この場合では、各PTCヒータのON水温とOFF水温の差dPTCが設定温度に応じて変動することとなる。
【0151】
(第3実施形態)
図14に、本実施形態におけるPTCヒータ15の作動本数を決定するステップS10の要部を示す。図14は、冷却水温度TWに応じたPTCヒータ15の作動本数が予め定められた制御マップであり、第1実施形態で説明した図6中のステップS104に対応している。
【0152】
第2実施形態では、図6中のステップS104で用いる各PTCヒータのON水温とOFF水温とが設定温度に応じて変更されたが、本実施形態では、各PTCヒータのON水温とOFF水温とが外気温Tamに応じて変更される。
【0153】
具体的には、空調制御装置50に予め複数の制御マップが記憶されており、空調制御装置50が、ステップS104でのPTC作動本数の決定の際に、外気温Tamに応じて制御マップを選択的に切り替えて用いるようになっている。
【0154】
図14に示す制御マップは、この複数の制御マップの一例であり、外気温が−7℃以下のとき、−7℃を超え12℃未満(−7〜12℃)のとき、12℃以上25℃以下(12〜25℃)のときの3種類であり、各PTCヒータのON水温とOFF水温とが、外気温が低い程、高く補正されるように作成されている。
【0155】
すなわち、外気温が12〜25℃のときでは、1本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ55℃、47.5℃に設定され、2本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ50℃、42.5℃に設定され、3本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ45℃、37.5℃に設定された制御マップを用いる。
【0156】
また、外気温が−7〜12℃のときでは、1本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ70℃、62.5℃に設定され、2本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ65℃、57.5℃に設定され、3本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ60℃、52.5℃に設定された制御マップを用いる。
【0157】
また、外気温が−7℃以下のときでは、1本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ75℃、67.5℃に設定され、2本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ70℃、62.5℃に設定され、3本目のPTCヒータのOFF水温、ON水温がそれぞれ65℃、57.5℃に設定された制御マップを用いる。
【0158】
なお、ここでは、空調制御装置50が設定温度に応じて制御マップを選択的に切り替えて用いたが、空調制御装置50に予め1つの制御マップが記憶されており、空調制御装置50が、この制御マップ中の各PTCヒータのON水温およびOFF水温を、外気温が低い程、高くなるように、補正しても良い。
【0159】
このように、本実施形態では、各PTCヒータのON水温とOFF水温とが、外気温が低い程、高く補正されるので、ある温度よりも低い外気温のときに、PTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温よりも高くなる。このため、PTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温よりも高くなったPTCヒータは、一度電源がONになると、ONしっぱなしとなる。
【0160】
例えば、図14に示すように、外気温が−7℃以下のときの制御マップでは、1本目のOFF水温が75℃に設定されており、エンジンOFF水温がとりうる上限温度の70℃よりも高くなっている。このため、エンジンOFF水温が70℃のときでも、通常、冷却水温度TWが70℃付近までしか上昇せず75℃を超えないので、1本目のPTCヒータは、一度、作動開始すると、ほとんど停止せず、作動(ON)しっぱなしとなる。
【0161】
一方、外気温が−7〜12℃のときの制御マップや、外気温が12〜25℃のときの制御マップでは、1本目のOFF水温が70℃や55℃に設定されており、エンジンOFF水温がとりうる温度範囲内である。このため、1本目のPTCヒータは、冷却水温度に応じて、冷却水温度の変化に応じて、PTCヒータのONとOFFとの切り替えがされる。
【0162】
このように、本実施形態では、外気温が−7℃以下のように低く、ユーザーに対して高い吹出温が必要な場合に、外気温が−7℃よりも高い場合と比較して、PTCヒータのON領域(PTCヒータがONとなる冷却水温度域)が拡大して、1本目のPTCヒータが連続作動することとなるので、吹出温を高くすることができるとともに、1本目のPTCヒータの作動と停止の切替頻度を少なくできる。この結果、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、PTCヒータの作動開始時の突入電流発生頻度を低減できる。
【0163】
また、本実施形態では、外気温が−7℃以下の場合、1本目のPTCヒータがONしっぱなしとなるが、外気温が−7℃よりも高い場合では、エンジンOFF水温の演算の結果によっては、1本目のPTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温以下となり、冷却水温度の変化に応じて、PTCヒータのONとOFFとの切り替えがされるので、無駄な電力消費を抑制できる。
【0164】
なお、本実施形態においても、第2実施形態と同様の変更が可能である。
【0165】
(1)図14に示す制御マップでは、各PTCヒータのON水温とOFF水温の差dPTCが、7.5℃に固定されていたが、エンジンON水温とエンジンOFF水温との差dEGと同じ温度である5℃に固定されていても良く、エンジンON水温とエンジンOFF水温との差dEGよりも小さな温度差に固定されていても良い。
【0166】
このような場合であっても、本実施形態によれば、ある温度(−7℃)よりも低い外気温のときに、1本目のPTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温(上限温度の70℃)よりも高く設定されるので、1本目のPTCヒータの作動と停止の切替頻度を少なくできる。
【0167】
(2)図14に示す制御マップでは、PTCヒータのON水温とOFF水温の両方が、外気温が低い程、高く補正されるようになっていたが、PTCヒータのON水温とOFF水温のうちOFF水温のみが補正されるようになっていても良い。例えば、図14に示す3つの制御マップにおけるPTCヒータのON水温を、外気温が12〜25℃のときのON水温と同じ温度に変更しても良い。
【0168】
この場合であっても、外気温が−7℃以下のときでは、1本目のPTCヒータのOFF水温がエンジンOFF水温よりも高くなるように補正されることとなるので、1本目のPTCヒータの作動と停止の切替頻度を少なくできるという上述した本実施形態の効果を奏する。なお、この場合では、各PTCヒータのON水温とOFF水温の差dPTCが設定温度に応じて変動することとなる。
【0169】
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態では、ステップS4で空調熱負荷から算出したTAOを用いて、エンジンON/OFFのしきい値を決定したが、ステップS4で算出したTAOを用いる代わりに、直接、空調熱負荷に基づいて決定しても良い。空調熱負荷は、例えば、設定温度と、少なくとも外気温を要素とする環境条件とに応じて決定される。
【0170】
(2)上述の各実施形態では、3本のPTCヒータ15を用いたが、PTCヒータの本数は任意に変更可能である。また、上述の実施形態では、PTCヒータとして、複数本のPTCヒータを用い、各PTCヒータの作動と停止とを切り替えることで、PTCヒータ15全体としての加熱能力を変化させていたが、PTCヒータとして、連続的に加熱能力を変更可能なものを用いても良い。
【0171】
(3)上述の各実施形態では、電気ヒータとして、PTCヒータを用いたが、PTCヒータ以外の他の電気ヒータを用いても良い。
【0172】
(4)上述の各実施形態では、PTCヒータ15の配置場所を、ヒータコア14の空気流れ下流側としたが、ヒータコア14の内部としても良い。
【0173】
(5)上述の各実施形態では、空調のためのエンジンEG作動時において、空調制御装置50の要求信号出力手段50aからエンジンON要求信号が出力されない場合に、エンジン制御装置70がエンジンEGを停止させていたが、要求信号出力手段50aからエンジンON要求信号が出力されず、エンジン停止を要求するエンジンOFF要求信号(停止要求信号)が出力された場合に、エンジン制御装置70がエンジンEGを停止させるようにしても良い。
【0174】
(6)上述の各実施形態では、加熱用熱交換器として、エンジンEGによって温度上昇したエンジン冷却水と空気との熱交換により、車室内への送風空気を加熱するヒータコア14を用いたが、エンジン以外の温度上昇手段によって温度上昇した熱媒体と空気とを熱交換させるものを用いても良い。この場合、空調制御装置50(要求信号出力手段50a)が、温度上昇手段の作動を制御する温度上昇手段用の制御手段に対して作動要求信号を出力することによって、温度上昇手段が作動することになる。
【0175】
熱媒体としては、水以外に、冷凍サイクルに用いられるエチレングリコール等の冷媒や、その他の比熱の高い保温剤等が挙げられる。また、熱媒体の温度上昇手段としては、電熱ヒータやヒートポンプサイクル等が挙げられる。
【0176】
例えば、ヒータコアと電熱ヒータとの間を水が循環する温水回路を構成し、電熱ヒータで加熱された温水と空気とを熱交換させても良い。また、ヒートポンプサイクルの冷媒をヒータコアに流入させて、ヒータコアで冷媒を放熱させても良い。また、エンジン冷却水の代わりに、燃料電池の冷却水を用いても良い。
【0177】
(7)車両に着目すると、上述の各実施形態では、本発明の車両用空調装置1を、プラグインハイブリッド車両に適用したが、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から直接駆動力を得て走行可能な、いわゆるパラレル型のハイブリッド車両に適用してもよい。また、エンジンEGを発電機の駆動源として用い、発電された電力をバッテリに蓄え、さらに、バッテリ81に蓄えられた電力を供給されることによって作動する走行用電動モータから駆動力を得て走行する、いわゆるシリアル型のハイブリッド車両に適用してもよい。
【0178】
また、停止時にエンジンを自動停止するアイドリングストップ車、燃料電池車、燃料電池とバッテリとを備えるハイブリッド車両、電気自動車等に、本発明の車両用空調装置を適用しても良い。
【符号の説明】
【0179】
1 車両用空調装置
14 ヒータコア(加熱用熱交換器)
15 PTCヒータ(電気ヒータ)
50 空調制御装置
50a 要求信号出力手段
50b PTCヒータ制御手段(電気ヒータ制御手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度上昇手段(EG)によって温度上昇した熱媒体と空気との熱交換により、車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器(14)と、
前記送風空気を加熱する電気ヒータ(15)と、
前記熱媒体の温度を所定温度以上に維持するために、前記温度上昇手段(EG)の停止時に、前記温度上昇手段(EG)の作動を要求する作動要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)と、
前記電気ヒータ(15)の作動と停止の切り替えを制御する電気ヒータ制御手段(50b)とを備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記熱媒体の温度が第1の作動用しきい値よりも低い場合に、前記作動要求信号を出力し、前記熱媒体の温度が第1の停止用しきい値よりも高い場合に、前記作動要求信号を出力しないようになっており、
前記電気ヒータ制御手段(50b)は、前記熱媒体の温度が第2の作動用しきい値よりも低い場合に、前記電気ヒータ(15)を作動させ、前記熱媒体の温度が第2の停止用しきい値よりも高い場合に、前記電気ヒータ(15)を停止させるようになっており、
前記電気ヒータ制御手段(50b)は、前記第2の作動用しきい値および前記第2の停止用しきい値として、前記第2の作動用しきい値と前記第2の停止用しきい値の差(dPTC)が、前記第1の作動用しきい値と前記第1の停止用しきい値との差(dEG)よりも大きく設定されているものを用いることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
温度上昇手段(EG)によって温度上昇した熱媒体と空気との熱交換により、車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器(14)と、
前記送風空気を加熱する電気ヒータ(15)と、
前記熱媒体の温度を所定温度以上に維持するために、前記温度上昇手段(EG)の停止時に、前記温度上昇手段(EG)の作動を要求する作動要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)と、
前記電気ヒータ(15)の作動と停止の切り替えを制御する電気ヒータ制御手段(50b)とを備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記熱媒体の温度が第1の作動用しきい値よりも低い場合に、前記作動要求信号を出力し、前記熱媒体の温度が第1の停止用しきい値よりも高い場合に、前記作動要求信号を出力しないようになっており、
前記電気ヒータ制御手段(50b)は、前記熱媒体の温度が第2の作動用しきい値よりも低い場合に、前記電気ヒータ(15)を作動させ、前記熱媒体の温度が第2の停止用しきい値よりも高い場合に、前記電気ヒータ(15)を停止させるようになっており、
前記電気ヒータ制御手段(50b)は、前記第2の停止用しきい値として、乗員によって設定される車室内の目標温度(Tset)が高い程、高く補正されたものを用いることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
温度上昇手段(EG)によって温度上昇した熱媒体と空気との熱交換により、車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器(14)と、
前記送風空気を加熱する電気ヒータ(15)と、
前記熱媒体の温度を所定温度以上に維持するために、前記温度上昇手段(EG)の停止時に、前記温度上昇手段(EG)の作動を要求する作動要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)と、
前記電気ヒータ(15)の作動と停止の切り替えを制御する電気ヒータ制御手段(50b)とを備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記熱媒体の温度が第1の作動用しきい値よりも低い場合に、前記作動要求信号を出力し、前記熱媒体の温度が第1の停止用しきい値よりも高い場合に、前記作動要求信号を出力しないようになっており、
前記電気ヒータ制御手段(50b)は、前記熱媒体の温度が第2の作動用しきい値よりも低い場合に、前記電気ヒータ(15)を作動させ、前記熱媒体の温度が第2の停止用しきい値よりも高い場合に、前記電気ヒータ(15)を停止させるようになっており、
前記電気ヒータ制御手段(50b)は、前記第2の停止用しきい値として、外気温(Tam)が低い程、高く補正されたものを用いることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項1】
温度上昇手段(EG)によって温度上昇した熱媒体と空気との熱交換により、車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器(14)と、
前記送風空気を加熱する電気ヒータ(15)と、
前記熱媒体の温度を所定温度以上に維持するために、前記温度上昇手段(EG)の停止時に、前記温度上昇手段(EG)の作動を要求する作動要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)と、
前記電気ヒータ(15)の作動と停止の切り替えを制御する電気ヒータ制御手段(50b)とを備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記熱媒体の温度が第1の作動用しきい値よりも低い場合に、前記作動要求信号を出力し、前記熱媒体の温度が第1の停止用しきい値よりも高い場合に、前記作動要求信号を出力しないようになっており、
前記電気ヒータ制御手段(50b)は、前記熱媒体の温度が第2の作動用しきい値よりも低い場合に、前記電気ヒータ(15)を作動させ、前記熱媒体の温度が第2の停止用しきい値よりも高い場合に、前記電気ヒータ(15)を停止させるようになっており、
前記電気ヒータ制御手段(50b)は、前記第2の作動用しきい値および前記第2の停止用しきい値として、前記第2の作動用しきい値と前記第2の停止用しきい値の差(dPTC)が、前記第1の作動用しきい値と前記第1の停止用しきい値との差(dEG)よりも大きく設定されているものを用いることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
温度上昇手段(EG)によって温度上昇した熱媒体と空気との熱交換により、車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器(14)と、
前記送風空気を加熱する電気ヒータ(15)と、
前記熱媒体の温度を所定温度以上に維持するために、前記温度上昇手段(EG)の停止時に、前記温度上昇手段(EG)の作動を要求する作動要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)と、
前記電気ヒータ(15)の作動と停止の切り替えを制御する電気ヒータ制御手段(50b)とを備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記熱媒体の温度が第1の作動用しきい値よりも低い場合に、前記作動要求信号を出力し、前記熱媒体の温度が第1の停止用しきい値よりも高い場合に、前記作動要求信号を出力しないようになっており、
前記電気ヒータ制御手段(50b)は、前記熱媒体の温度が第2の作動用しきい値よりも低い場合に、前記電気ヒータ(15)を作動させ、前記熱媒体の温度が第2の停止用しきい値よりも高い場合に、前記電気ヒータ(15)を停止させるようになっており、
前記電気ヒータ制御手段(50b)は、前記第2の停止用しきい値として、乗員によって設定される車室内の目標温度(Tset)が高い程、高く補正されたものを用いることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
温度上昇手段(EG)によって温度上昇した熱媒体と空気との熱交換により、車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器(14)と、
前記送風空気を加熱する電気ヒータ(15)と、
前記熱媒体の温度を所定温度以上に維持するために、前記温度上昇手段(EG)の停止時に、前記温度上昇手段(EG)の作動を要求する作動要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)と、
前記電気ヒータ(15)の作動と停止の切り替えを制御する電気ヒータ制御手段(50b)とを備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記熱媒体の温度が第1の作動用しきい値よりも低い場合に、前記作動要求信号を出力し、前記熱媒体の温度が第1の停止用しきい値よりも高い場合に、前記作動要求信号を出力しないようになっており、
前記電気ヒータ制御手段(50b)は、前記熱媒体の温度が第2の作動用しきい値よりも低い場合に、前記電気ヒータ(15)を作動させ、前記熱媒体の温度が第2の停止用しきい値よりも高い場合に、前記電気ヒータ(15)を停止させるようになっており、
前記電気ヒータ制御手段(50b)は、前記第2の停止用しきい値として、外気温(Tam)が低い程、高く補正されたものを用いることを特徴とする車両用空調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−76710(P2012−76710A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226297(P2010−226297)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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