説明

車両用自動変速機の遊星ギヤトレイン

【課題】複数の遊星ギヤセットと複数の摩擦部材の組み合わせによって、摩擦部材の作動条件及び段間比に優れた前進9速及び後進1速の変速段を提供する。
【解決手段】本発明は、入力軸、出力軸、入力される回転動力を逆回転出力する第1遊星ギヤセット、常時入力される回転動力を同速及び増速出力する第2遊星ギヤセット、第3、第4遊星ギヤセットの組み合わせにより4個の回転要素を保有して、入力軸から2個の経路を通じて選択的に入力される回転動力と、第1遊星ギヤセット及び第2遊星ギヤセットから入力される逆回転及び増速回転動力を多段変速段で変速して出力する複合遊星ギヤセット、2個以上の回転要素を連結するかまたは1個の回転要素で構成される8個の回転メンバ、選択された2個の回転メンバの間、または選択された回転メンバと前記入力軸との間に挿入されるクラッチ、及び選択された回転メンバと変速機ハウジングとの間に挿入されるブレーキで構成される6個の摩擦部材を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用自動変速機の遊星ギヤトレインに係り、より詳しくは、動力伝達性能を向上させ、燃費を低減させることのできる車両用自動変速機の遊星ギヤトレインに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、自動変速機の遊星ギヤトレインは、複数の遊星ギヤセットの組み合わせによって実現され、トルクコンバータから伝達される回転動力を多段に自動変速して出力軸に伝達する機能を有する。
このような遊星ギヤトレインは、実現可能な変速段が多いほど、より適切な変速比の設計が可能であるだけでなく、動力性能及び燃費面に優れる車両を実現できるので、さらに多い変速段を実現するための粘り強い研究が行われている。
遊星ギヤトレインは同一の変速段を実現しても、回転要素(サンギヤ、遊星キャリア、リングギヤ)の連結構成によって相異なる作動メカニズムを有する。
また、遊星ギヤトレインは、その連結構成によって耐久性、動力伝達効率、大きさなどが異なる特性がある。そのため、自動変速機の分野では、より堅固で、動力損失がなく、コンパクト(Compact)な遊星ギヤトレインを製作するための研究開発が続けられている。
【0003】
また、遊星ギヤトレインは多数の変速段を実現するが、変速制御の観点から隣接する変速段への順次変速の時、一つの摩擦部材を解除し、他の一つの摩擦部材を作動する作動条件を満足させなければならない。
そして、遊星ギヤトレインは隣接する変速段間の段間比が適切な水準に実現されなければならない。
このような側面から、現在、通常使用されている自動変速機は4速及び5速自動変速機が主流をなしているが、最近は、6速自動変速機が商用化される傾向にあり、それ以上の変速段(8速乃至10速)を実現できる遊星ギヤトレインの研究開発も活発に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−052807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、複数の遊星ギヤセットと複数の摩擦部材の組み合わせによって、摩擦部材の作動条件及び段間比に優れた前進9速及び後進1速の変速段を実現し、これによって動力伝達性能を向上させ、燃費を低減できる車両用自動変速機の遊星ギヤトレインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施例による車両用自動変速機の遊星ギヤトレインは、エンジンの回転動力が伝達される入力軸、変速した回転動力を出力する出力軸、前記入力軸と選択的に連結されて選択的な入力要素として作動する第1回転要素、常時固定要素として作動する第2回電要素、及び出力要素として作動する第3回転要素で構成される第1遊星ギヤセット、前記第1遊星ギヤセットの第2回電要素と直接連結されて常時固定要素として作動する第4回転要素、前記入力軸と直接連結されて常時入力要素として作動すると同時に、入力軸の回転速度を出力する第5回転要素、及び常時出力要素として作動する第6回転要素を含む第2遊星ギヤセット、4個の回転要素を保有し、前記第2遊星ギヤセットの第5回転要素から入力軸の回転速度が選択的に伝達されるか、または選択的に固定要素として作動する第7回転要素、前記第2遊星ギヤセットの第6回転要素から増速が選択的に伝達されるか、または選択的に固定要素として作動する第8回転要素、前記出力軸と直接連結されて常時出力要素として作動する第9回転要素、及び前記入力軸と選択的に連結されて選択的な入力要素として作動する第10回転要素で構成される複合遊星ギヤセット、前記第1、2遊星ギヤセット及び複合遊星ギヤセットの一つ以上の回転要素で構成される8個の回転メンバ、及び前記回転メンバのうち選択された2個の回転メンバの間、または選択された回転メンバと前記入力軸との間に介されるクラッチ、及び前記回転メンバのうち選択された回転メンバと変速機ハウジングとの間に介されるブレーキで構成される6個の摩擦部材、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、エンジンの回転動力が伝達される入力軸、変速した回転動力を出力する出力軸、第1サンギヤ、第1遊星キャリア、第1リングギヤをその回転要素として保有する第1遊星ギヤセット、第2サンギヤ、第2遊星キャリア、第2リングギヤをその回転要素として保有する第2遊星ギヤセット、第3サンギヤ、第3遊星キャリア、第3リングギヤをその回転要素として保有する第3遊星ギヤセットと、第4サンギヤ、第4遊星キャリア、第4リングギヤをその回転要素として保有する第4遊星ギヤセットとを結合して構成される複合遊星ギヤセット、前記第1サンギヤを含んで構成されて、入力軸と選択的に連結される第1回転メンバ、前記第1遊星キャリアと第2サンギヤを含んで構成されて、変速機ハウジングと直接連結される第2回転メンバ、前記第1リングギヤと第3サンギヤを含んで構成されて、変速機ハウジングと選択的に連結される第3回転メンバ、前記第2遊星キャリアを含んで構成されて、前記入力軸と直接連結されると同時に、前記第3回転メンバと選択的に連結される第4回転メンバ、前記第2リングギヤを含む第5回転メンバ、前記第3遊星キャリアと第4リングギヤを含んで構成されて、前記第5回転メンバと選択的に連結されるか、または変速機ハウジングと選択的に連結される第6回転メンバ、前記第3リングギヤと第4遊星キャリアを含んで構成されて、前記出力軸と直接連結される第7回転メンバ、前記第4サンギヤを含んで構成されて、入力軸と選択的に連結される第8回転メンバ、及び前記回転メンバのうち選択された2個の回転メンバの間、または選択された回転メンバと前記入力軸との間に介されるクラッチ、及び前記回転メンバのうち選択された回転メンバと変速機ハウジングとの間に介されるブレーキで構成される6個の摩擦部材、を含むことを特徴とする。
【0008】
前記第1、2、3、4遊星ギヤセットはシングルピニオン遊星ギヤセットであることを特徴とする請求項2に記載の車両用自動変速機の遊星ギヤトレイン。
【0009】
前記6個の摩擦部材は、前記入力軸と第1回転メンバの間に介される第1クラッチ、前記入力軸と第8回転メンバの間に介される第2クラッチ、前記第5回転メンバと第6回転メンバの間に介される第3クラッチ、前記第3回転メンバと第4回転メンバの間に介される第4クラッチ、前記第3回転メンバと変速機ハウジングの間に介される第1ブレーキ、及び前記第6回転メンバと変速機ハウジングの間に介される第2ブレーキ、を含むことを特徴とする。
【0010】
前進1速変速段では前記第1クラッチと第2ブレーキが作動し、前進2速変速段では前記第2クラッチと第2ブレーキが作動し、前進3速変速段では前記第1クラッチと第2クラッチが作動し、前進4速変速段では前記第2クラッチと第1ブレーキが作動し、前進5速変速段では前記第2クラッチと第4クラッチが作動し、前進6速変速段では前記第2クラッチと第3クラッチが作動し、前進7速変速段では前記第3クラッチと第4クラッチが作動し、前進8速変速段では前記第3クラッチと第1ブレーキが作動し、前進9速変速段では前記第1クラッチと第3クラッチが作動し、そして後進変速段では前記第4クラッチと第2ブレーキが作動することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、エンジンの回転動力が伝達される入力軸、変速した回転動力を出力する出力軸、第1サンギヤ、第1遊星キャリア、第1リングギヤをその回転要素として保有する第1遊星ギヤセット、第2サンギヤ、第2遊星キャリア、第2リングギヤをその回転要素として保有する第2遊星ギヤセット、第3サンギヤ、共有遊星キャリア、共有リングギヤ、第4サンギヤをその回転要素として保有する複合遊星ギヤセット、前記第1サンギヤを含んで構成されて、入力軸と選択的に連結される第1回転メンバ、前記第1遊星キャリアと第2サンギヤを含んで構成されて、変速機ハウジングと直接連結される第2回転メンバ、前記第1リングギヤと第3サンギヤを含んで構成されて、変速機ハウジングと選択的に連結される第3回転メンバ、前記第2遊星キャリアを含んで構成されて、前記入力軸と直接連結されると同時に、前記第3回転メンバと選択的に連結される第4回転メンバ、前記第2リングギヤを含む第5回転メンバ、前記共有遊星キャリアを含み、前記第5回転メンバと選択的に連結され、変速機ハウジングと選択的に連結される第6回転メンバ、前記共有リングギヤを含み、出力軸と直接連結される第7回転メンバ、前記第4サンギヤを含み、入力軸と選択的に連結される第8回転メンバ、及び前記回転メンバのうち選択された2個の回転メンバの間、または選択された回転メンバと前記入力軸との間に介されるクラッチ、及び前記回転メンバのうち選択された回転メンバと変速機ハウジングとの間に介されるブレーキで構成される6個の摩擦部材、を含むことを特徴とする。
【0012】
前記第1、2遊星ギヤセットは、シングルピニオン遊星ギヤセットであり、前記複合遊星ギヤセットはラビニヨ型遊星ギヤセットであることを特徴とする。
【0013】
前記6個の摩擦部材は、前記入力軸と第1回転メンバの間に介される第1クラッチ、前記入力軸と第8回転メンバの間に介される第2クラッチ、前記第5回転メンバと第6回転メンバの間に介される第3クラッチ、前記第3回転メンバと第4回転メンバの間に介される第4クラッチ、前記第3回転メンバと変速機ハウジングの間に介される第1ブレーキ、及び前記第6回転メンバと変速機ハウジングの間に介される第2ブレーキ、を含むことを特徴とする。
【0014】
前進1速変速段では前記第1クラッチと第2ブレーキが作動し、前進2速変速段では前記第2クラッチと第2ブレーキが作動し、前進3速変速段では前記第1クラッチと第2クラッチが作動し、前進4速変速段では前記第2クラッチと第1ブレーキが作動し、前進5速変速段では前記第2クラッチと第4クラッチが作動し、前進6速変速段では前記第2クラッチと第3クラッチが作動し、前進7速変速段では前記第3クラッチと第4クラッチが作動し、前進8速変速段では前記第3クラッチと第1ブレーキが作動し、前進9速変速段では前記第1クラッチと第3クラッチが作動し、そして後進変速段では前記第4クラッチと第2ブレーキが作動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、4個の遊星ギヤセットを6個の摩擦部材を利用して組み合わせ、各変速段で選択された2個の摩擦部材が作動して前進9速及び後進1速の変速段を実現することができる。
また、6個の摩擦部材だけを適用することによって、これらを制御する油圧制御システムの単純化が可能であり、原価、重量及び搭載性に優れている。
また、一般的な変速が行われる時、一つの摩擦部材の作動を解除し、他の一つの摩擦部材を作動させる方法で制御が行われることによって、変速制御が容易である。
さらに、車両動力性能で要求する変速比の特性及び低速段/高速段における隣接する変速段間の段間比がほぼ均一になる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施例による遊星ギヤトレインの構成図である。
【図2】本発明の第1実施例による遊星ギヤトレインの連結関係図である。
【図3】本発明の第1実施例による遊星ギヤトレインに適用される各摩擦部材の各変速段別作動表である。
【図4】本発明の第2実施例による遊星ギヤトレインの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施例による遊星ギヤトレインの構成図であり、図2は、本発明の第1実施例による遊星ギヤトレインの連結関係図である。
図1と図2に示す通り、本実施例による遊星ギヤトレインは、同一の軸線上に配置される第1、2、3、4遊星ギヤセット(PG1、PG2、PG3、PG4)、入力軸(IS)、出力軸(OS)、前記第1、2、3、4遊星ギヤセット(PG1、PG2、PG3、PG4)の各回転要素を相互直接連結するかまたは選択的に連結して形成される8個の回転メンバ(TM1〜TM8)、6個の摩擦部材(C1〜C4、B1〜B2)、及び変速機ハウジング(H)を備えている。
【0018】
これによって、入力軸(IS)から入力される回転動力が第1、2、3、4遊星ギヤセット(PG1、PG2、PG3、PG4)の相互補完作動により変速されて、出力軸(OS)を通じて出力される。
そして、各遊星ギヤセットは、エンジン側からその後方へ第1、2、3、4遊星ギヤセット(PG1、PG2、PG3、PG4)の順で配置される。
入力軸(IS)は入力部材であって、エンジンのクランクシャフトからトルクコンバータを通じてトルク変換が行われた回転動力が入力される。
出力軸(OS)は出力部材であって、差動装置を通じて駆動輪を駆動させるように駆動力を伝達する。
【0019】
第1遊星ギヤセット(PG1)はシングルピニオン遊星ギヤセットであって、第1サンギヤ(S1)、第1リングギヤ(R1)、及び第1サンギヤ(S1)と第1リングギヤ(R1)に噛み合う第1ピニオン(P1)を回転可能に支持する第1遊星キャリア(PC1)で構成される。
第2遊星ギヤセット(PG2)はシングルピニオン遊星ギヤセットであって、第2サンギヤ(S2)、第2リングギヤ(R2)、及び第2サンギヤ(S2)と第2リングギヤ(R2)に噛み合う第2ピニオン(P2)を回転可能に支持する第2遊星キャリア(PC2)で構成される。
第3遊星ギヤセット(PG3)はシングルピニオン遊星ギヤセットであって、第3サンギヤ(S3)、第3リングギヤ(R3)、及び第3サンギヤ(S3)と第3リングギヤ(R3)に噛み合う第3ピニオン(P3)を回転可能に支持する第3遊星キャリア(PC3)で構成される。
【0020】
第4遊星ギヤセット(PG4)はシングルピニオン遊星ギヤセットであって、第4サンギヤ(S4)、第4リングギヤ(R4)、及び第4サンギヤ(S4)と第4リングギヤ(R4)に噛み合う第4ピニオン(P4)を回転可能に支持する第4遊星キャリア(PC4)で構成される。
第1遊星ギヤセット(PG1)の一つの回転要素は第2遊星ギヤセット(PG2)の一つの回転要素と直接連結され、第1遊星ギヤセット(PG1)の他の一つの回転要素は第2遊星ギヤセット(PG2)の他の一つの回転要素と選択的に連結されて、第1、2遊星ギヤセット(PG1、PG2)は選択的に独立的な遊星ギヤセットとして作動するか、または複合遊星ギヤセットとして作動する。
【0021】
第3、4遊星ギヤセット(PG3、PG4)は相互組み合わされて一つの複合遊星ギヤセット(Compound Planetary Gear Set、CPG)として作動して、入力軸(IS)から伝達される回転動力を前進9速の変速段に変換して出力する。
第1、2、3、4遊星ギヤセット(PG1、PG2、PG3、PG4)は少なくとも1つ以上の回転要素が相互連結される。
具体的には、第1遊星ギヤセット(PG1)の第1遊星キャリア(PC1)が第2遊星ギヤセット(PG2)の第2サンギヤ(S2)と直接連結され、第1遊星ギヤセット(PG)の第1リングギヤ(R1)が第2遊星ギヤセット(PG2)の第2遊星キャリア(PC1)と選択的に連結されると同時に、第3遊星ギヤセット(PG3)の第3サンギヤ(S3)と直接連結される。
また、第3遊星ギヤセット(PG3)の第3遊星キャリア(PC3)と第3リングギヤ(R3)が、それぞれ第4遊星ギヤセット(PG4)の第4リングギヤ(R4)と第4遊星キャリア(PC4)に連結される。
【0022】
これによって、本実施例による遊星ギヤトレインは全て8個の回転メンバ(TM1〜TM8)を保有する。
第1回転メンバ(TM1)は、第1サンギヤ(S1)を含んで構成されて、入力軸(IS)と選択的に連結される。
第2回転メンバ(TM2)は、第1遊星キャリア(PC1)と第2サンギヤ(S2)を含んで構成されて、変速機ハウジング(H)と直接連結される。
第3回転メンバ(TM3)は、第1リングギヤ(R1)と第3サンギヤ(S3)を含んで構成されて、変速機ハウジング(H)と選択的に連結される。
第4回転メンバ(TM4)は、第2遊星キャリア(PC2)を含んで構成されて、入力軸(IS)と直接連結され、第3回転メンバ(TM3)と選択的に連結される。
第5回転メンバ(TM5)は、第2リングギヤ(R2)を含んで構成される。
【0023】
第6回転メンバ(TM6)は、第3遊星キャリア(PC3)と第4リングギヤ(R4)を含んで構成されて、第5回転メンバ(TM5)と選択的に連結されるか、または変速機ハウジング(H)と選択的に連結される。
第7回転メンバ(TM7)は、第3リングギヤ(R3)と第4遊星キャリア(PC4)を含んで構成され、出力軸(OS)と直接連結される。
第8回転メンバ(TM8)は、第4サンギヤ(S4)を含んで構成され、入力軸(IS)と選択的に連結される。
そして、これら回転メンバ(TM1〜TM8)間の選択的連結、または回転メンバ(TM1〜TM8)と入力軸(IS)との選択的連結は、クラッチ(C1、C2、C3C4)によって行われる。
また、回転メンバ(TM1〜TM8)と変速機ハウジング(H)との選択的連結は、ブレーキ(B1、B2)によって行われる。
【0024】
第1クラッチ(C1)は、入力軸(IS)と第1回転メンバ(TM1)の間に挿入されて、第1回転メンバ(TM1)が選択的な入力要素として作動する。
第2クラッチ(C2)は、入力軸(IS)と第8回転メンバ(TM8)の間に挿入されて、第8回転メンバ(TM8)が選択的な入力要素として作動する。
第3クラッチ(C3)は、第5回転メンバ(TM5)と第6回転メンバ(TM6)の間に挿入されて、選択的に第5回転メンバ(TM5)と第6回転メンバ(TM6)を連結する。
第4クラッチ(C4)は、第3回転メンバ(TM3)と第4回転メンバ(TM4)の間に挿入されて、選択的に第3回転メンバ(TM3)と第4回転メンバ(TM4)を連結する。
第1ブレーキ(B1)は、第3回転メンバ(TM3)と変速機ハウジング(H)の間に挿入されて、第3回転メンバ(TM3)が選択的な固定要素として作動する。
第2ブレーキ(B2)は、第6回転メンバ(TM6)と変速機ハウジング(H)の間に挿入されて、第6回転メンバ(TM6)が選択的な固定要素として作動する。
【0025】
第1、2、3、4クラッチ(C1、C2、C3、C4)と第1、2ブレーキ(B1、B2)で構成される各摩擦部材は、油圧によって摩擦結合される多板式油圧摩擦結合ユニットで形成することができる。
図3は、本発明の第1実施例による遊星ギヤトレインに適用される各摩擦部材の各変速段別作動表である。
図3に示すように、本発明の第1実施例による遊星ギヤトレインは、各変速段で2個の摩擦部材が作動しながら変速が行われる。
前進1速変速段(D1)は、第1クラッチ(C1)と第2ブレーキ(B2)の同時作動によって達成される。
前進2速変速段(D2)は、第2クラッチ(C2)と第2ブレーキ(B2)の同時作動によって達成される。
前進3速変速段(D3)は、第1クラッチ(C1)と第2クラッチ(C2)の同時作動によって達成される。
前進4速変速段(D4)は、第2クラッチ(C2)と第1ブレーキ(B1)の同時作動によって達成される。
【0026】
前進5速変速段(D5)は、第2クラッチ(C2)と第4クラッチ(C4)の同時作動によって達成される。
前進6速変速段(D6)は、第2クラッチ(C2)と第3クラッチ(C3)の同時作動によって達成される。
前進7速変速段(D7)は、第3クラッチ(C3)と第4クラッチ(C4)の同時作動によって達成される。
前進8速変速段(D8)は、第3クラッチ(C3)と第1ブレーキ(B1)の同時作動によって達成される。
前進9速変速段(D9)は、第1クラッチ(C1)と第3クラッチ(C3)の同時作動によって達成される。
後進変速段(REV)は、第4クラッチ(C4)と第2ブレーキ(B2)の同時作動によって達成される。
【0027】
第1遊星ギヤセット(PG1)は、前進1速変速段(D1)、前進3速変速段(D3)、及び前進9速変速段(D9)で第1クラッチ(C1)の作動により第3回転メンバ(TM3)を通じて逆回転減速が出力される。
第2遊星キャリア(PC2)を含む第4回転メンバ(TM4)を通じて常時入力軸(IS)の回転動力が入力される状態で、第2サンギヤ(S2)を含む第2回転メンバ(TM2)が常時固定要素として作動する。したがって、第2遊星ギヤセット(PG2)は第5回転メンバ(TM5)を通じて増速を出力する。
また、第4回転メンバ(TM4)は、第4クラッチ(C4)が作動すると、第3回転メンバ(TM3)と連結される。したがって、入力軸(IS)の速度と同一の速度が第3回転メンバ(TM3)を通じて出力される。
【0028】
第3、第4遊星ギヤセット(PG3、PG4)の組み合わせで構成される複合遊星ギヤセット(CPG)は、第3回転メンバ(TM3)を通じて第1、2遊星ギヤセット(PG1、PG2)から選択的に入力される入力軸(IS)の速度、増速及び逆回転減速と、第2クラッチ(C2)を通じて選択的に第8回転メンバ(TM8)に入力される入力軸(IS)の速度を、第1、2ブレーキ(B1、B2)の作動制御によって前進9速及び後進1速の変速段に実現する。
本発明の第1実施例による遊星ギヤトレインは、4個の遊星ギヤセットを6個の摩擦部材を利用して組み合わせ、各変速段で2個の摩擦部材が作動されて前進9速及び後進1速の変速段を実現することができる。
また、6個の摩擦部材だけを使用することによって、これらを制御する油圧制御システムの単純化が可能であり、原価、重量及び搭載性に優れるという特徴がある。
【0029】
そして、一般的な変速が行われる時、一つの摩擦部材の作動を解除し、他の一つの摩擦部材を作動させるので、変速制御が容易であるという特徴がある。
また、車両動力性能で要求する変速比の特性及び低速段/高速段における隣接する変速段間の段間比が、図3に示すようにほぼ均一になるという特徴がある。
図4は、本発明の第2実施例による遊星ギヤトレインの構成図である。
図4に示す通り、第1実施例において、複合遊星ギヤセットを2個のシングルピニオン遊星ギヤセットで構成しているが、第2実施例においては、ラビニヨ型複合遊星ギヤセットで構成する。
すなわち、第2実施例に適用される複合遊星ギヤセット(CPG)は、シングルピニオン遊星ギヤセットである第3遊星ギヤセット(PG3)と、ダブルピニオン遊星ギヤセットである第4遊星ギヤセット(PG4)とを組み合わせ、リングギヤと遊星キャリアを共有する。
【0030】
これによって、リングギヤと遊星キャリア、及び2個のサンギヤを含んで4個の回転要素で作動するが、説明の便宜上、共有するリングギヤを共有リングギヤ(R34)、共有する遊星キャリアを共有遊星キャリア(PC34)、ロングピニオン(P3)と噛み合うサンギヤを第3サンギヤ(S3)、ショットピニオン(P4)と噛み合うサンギヤを第4サンギヤ(S4)と称する。
複合遊星ギヤセット(CPG)は、第3、6、7、8回転メンバ(TM3、TM6TM7、TM8)を保有する。
第3回転メンバ(TM3)は、第1リングギヤ(R1)と第3サンギヤ(S3)を含み、変速機ハウジング(H)と第1ブレーキ(B1)を通じて選択的に連結される。
【0031】
第6回転メンバ(TM6)は、共有遊星キャリア(PC34)を含んで構成されて、変速機ハウジング(H)と第2ブレーキ(B2)を通じて選択的に連結される。
第7回転メンバ(TM7)は、共有リングギヤ(R34)を含んで構成されて、出力軸(OS)と直接連結される。
第8回転メンバ(TM8)は、第4サンギヤ(S4)を含んで構成されて、入力軸(IS)と第2クラッチ(C2)を通じて選択的に連結される。
本発明の第2実施例による遊星ギヤトレインは、第6回転メンバ(TM6)と第7回転メンバ(TM7)の構成が第1実施例とは異なるが、各変速段における摩擦部材作動と変速過程が第1実施例と同一なので、詳細な説明は省略する。
【0032】
そして、第2実施例の場合には、複合遊星ギヤセット(CPG)の構成ギヤ比が第1実施例とは異なるため、変速ギヤ比が異なって形成されることができる。
本発明の実施例は、4個の遊星ギヤセットを6個の摩擦部材を利用して組み合わせ、各変速段で選択された2個の摩擦部材が作動して前進9速及び後進1速の変速段を実現することができる。
また、6個の摩擦部材だけを適用することによって、これらを制御する油圧制御システムの単純化が可能であり、原価、重量及び搭載性に優れている。
また、一般的な変速が行われる時、一つの摩擦部材の作動を解除し、他の一つの摩擦部材を作動させる方法で制御が行われることによって、変速制御が容易である。
さらに、車両動力性能で要求する変速比の特性及び低速段/高速段における隣接する変速段間の段間比がほぼ均一になる。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明は前記実施例に限定されず、本発明の実施例から当該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者によって容易に変更されて均等であると認められる範囲の全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0034】
CPG 複合遊星ギヤセット
PG1、PG2、PG3、PG4 第1、2、3、4遊星ギヤセット
S1、S2、S3、S4 第1、2、3、4 サンギヤ
PC1、PC2、PC3、PC4 第1、2、3、4遊星キャリア
R1、R2、R3、R4 第1、2、3、4 リングギヤ
IS 入力軸
OS 出力軸
R34 共有リングギヤ
PC34 共有遊星キャリア
TM1、TM2、TM3、TM4、TM5、TM6、TM7、TM8 第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8回転メンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの回転動力が伝達される入力軸、
変速した回転動力を出力する出力軸、
前記入力軸と選択的に連結されて選択的な入力要素として作動する第1回転要素、常時固定要素として作動する第2回電要素、及び出力要素として作動する第3回転要素で構成される第1遊星ギヤセット、
前記第1遊星ギヤセットの第2回電要素と直接連結されて常時固定要素として作動する第4回転要素、前記入力軸と直接連結されて常時入力要素として作動すると同時に、入力軸の回転速度を出力する第5回転要素、及び常時出力要素として作動する第6回転要素を含む第2遊星ギヤセット、
4個の回転要素を保有し、前記第2遊星ギヤセットの第5回転要素から入力軸の回転速度が選択的に伝達されるか、または選択的に固定要素として作動する第7回転要素、前記第2遊星ギヤセットの第6回転要素から増速が選択的に伝達されるか、または選択的に固定要素として作動する第8回転要素、前記出力軸と直接連結されて常時出力要素として作動する第9回転要素、及び前記入力軸と選択的に連結されて選択的な入力要素として作動する第10回転要素で構成される複合遊星ギヤセット、
前記第1、2遊星ギヤセット及び複合遊星ギヤセットの一つ以上の回転要素で構成される8個の回転メンバ、及び
前記回転メンバのうち選択された2個の回転メンバの間、または選択された回転メンバと前記入力軸との間に介されるクラッチ、及び前記回転メンバのうち選択された回転メンバと変速機ハウジングとの間に介されるブレーキで構成される6個の摩擦部材、
を含むことを特徴とする車両用自動変速機の遊星ギヤトレイン。
【請求項2】
エンジンの回転動力が伝達される入力軸、
変速した回転動力を出力する出力軸、
第1サンギヤ、第1遊星キャリア、第1リングギヤをその回転要素として保有する第1遊星ギヤセット、
第2サンギヤ、第2遊星キャリア、第2リングギヤをその回転要素として保有する第2遊星ギヤセット、
第3サンギヤ、第3遊星キャリア、第3リングギヤをその回転要素として保有する第3遊星ギヤセットと、第4サンギヤ、第4遊星キャリア、第4リングギヤをその回転要素として保有する第4遊星ギヤセットとを結合して構成される複合遊星ギヤセット、
前記第1サンギヤを含んで構成されて、入力軸と選択的に連結される第1回転メンバ、
前記第1遊星キャリアと第2サンギヤを含んで構成されて、変速機ハウジングと直接連結される第2回転メンバ、
前記第1リングギヤと第3サンギヤを含んで構成されて、変速機ハウジングと選択的に連結される第3回転メンバ、
前記第2遊星キャリアを含んで構成されて、前記入力軸と直接連結されると同時に、前記第3回転メンバと選択的に連結される第4回転メンバ、
前記第2リングギヤを含む第5回転メンバ、
前記第3遊星キャリアと第4リングギヤを含んで構成されて、前記第5回転メンバと選択的に連結されるか、または変速機ハウジングと選択的に連結される第6回転メンバ、
前記第3リングギヤと第4遊星キャリアを含んで構成されて、前記出力軸と直接連結される第7回転メンバ、
前記第4サンギヤを含んで構成されて、入力軸と選択的に連結される第8回転メンバ、及び
前記回転メンバのうち選択された2個の回転メンバの間、または選択された回転メンバと前記入力軸との間に介されるクラッチ、及び前記回転メンバのうち選択された回転メンバと変速機ハウジングとの間に介されるブレーキで構成される6個の摩擦部材、
を含むことを特徴とする車両用自動変速機の遊星ギヤトレイン。
【請求項3】
前記第1、2、3、4遊星ギヤセットはシングルピニオン遊星ギヤセットであることを特徴とする請求項2に記載の車両用自動変速機の遊星ギヤトレイン。
【請求項4】
前記6個の摩擦部材は、
前記入力軸と第1回転メンバの間に介される第1クラッチ、
前記入力軸と第8回転メンバの間に介される第2クラッチ、
前記第5回転メンバと第6回転メンバの間に介される第3クラッチ、
前記第3回転メンバと第4回転メンバの間に介される第4クラッチ、
前記第3回転メンバと変速機ハウジングの間に介される第1ブレーキ、及び
前記第6回転メンバと変速機ハウジングの間に介される第2ブレーキ、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の車両用自動変速機の遊星ギヤトレイン。
【請求項5】
前進1速変速段では前記第1クラッチと第2ブレーキが作動し、
前進2速変速段では前記第2クラッチと第2ブレーキが作動し、
前進3速変速段では前記第1クラッチと第2クラッチが作動し、
前進4速変速段では前記第2クラッチと第1ブレーキが作動し、
前進5速変速段では前記第2クラッチと第4クラッチが作動し、
前進6速変速段では前記第2クラッチと第3クラッチが作動し、
前進7速変速段では前記第3クラッチと第4クラッチが作動し、
前進8速変速段では前記第3クラッチと第1ブレーキが作動し、
前進9速変速段では前記第1クラッチと第3クラッチが作動し、そして
後進変速段では前記第4クラッチと第2ブレーキが作動することを特徴とする請求項4に記載の車両用自動変速機の遊星ギヤトレイン。
【請求項6】
エンジンの回転動力が伝達される入力軸、
変速した回転動力を出力する出力軸、
第1サンギヤ、第1遊星キャリア、第1リングギヤをその回転要素として保有する第1遊星ギヤセット、
第2サンギヤ、第2遊星キャリア、第2リングギヤをその回転要素として保有する第2遊星ギヤセット、
第3サンギヤ、共有遊星キャリア、共有リングギヤ、第4サンギヤをその回転要素として保有する複合遊星ギヤセット、
前記第1サンギヤを含んで構成されて、入力軸と選択的に連結される第1回転メンバ、
前記第1遊星キャリアと第2サンギヤを含んで構成されて、変速機ハウジングと直接連結される第2回転メンバ、
前記第1リングギヤと第3サンギヤを含んで構成されて、変速機ハウジングと選択的に連結される第3回転メンバ、
前記第2遊星キャリアを含んで構成されて、前記入力軸と直接連結されると同時に、前記第3回転メンバと選択的に連結される第4回転メンバ、
前記第2リングギヤを含む第5回転メンバ、
前記共有遊星キャリアを含み、前記第5回転メンバと選択的に連結され、変速機ハウジングと選択的に連結される第6回転メンバ、
前記共有リングギヤを含み、出力軸と直接連結される第7回転メンバ、
前記第4サンギヤを含み、入力軸と選択的に連結される第8回転メンバ、及び
前記回転メンバのうち選択された2個の回転メンバの間、または選択された回転メンバと前記入力軸との間に介されるクラッチ、及び前記回転メンバのうち選択された回転メンバと変速機ハウジングとの間に介されるブレーキで構成される6個の摩擦部材、
を含むことを特徴とする車両用自動変速機の遊星ギヤトレイン。
【請求項7】
前記第1、2遊星ギヤセットはシングルピニオン遊星ギヤセットであり、前記複合遊星ギヤセットはラビニヨ型遊星ギヤセットであることを特徴とする請求項6に記載の車両用自動変速機の遊星ギヤトレイン。
【請求項8】
前記6個の摩擦部材は、
前記入力軸と第1回転メンバの間に介される第1クラッチ、
前記入力軸と第8回転メンバの間に介される第2クラッチ、
前記第5回転メンバと第6回転メンバの間に介される第3クラッチ、
前記第3回転メンバと第4回転メンバの間に介される第4クラッチ、
前記第3回転メンバと変速機ハウジングの間に介される第1ブレーキ、及び
前記第6回転メンバと変速機ハウジングの間に介される第2ブレーキ、
を含むことを特徴とする請求項7に記載の車両用自動変速機の遊星ギヤトレイン。
【請求項9】
前進1速変速段では前記第1クラッチと第2ブレーキが作動し、
前進2速変速段では前記第2クラッチと第2ブレーキが作動し、
前進3速変速段では前記第1クラッチと第2クラッチが作動し、
前進4速変速段では前記第2クラッチと第1ブレーキが作動し、
前進5速変速段では前記第2クラッチと第4クラッチが作動し、
前進6速変速段では前記第2クラッチと第3クラッチが作動し、
前進7速変速段では前記第3クラッチと第4クラッチが作動し、
前進8速変速段では前記第3クラッチと第1ブレーキが作動し、
前進9速変速段では前記第1クラッチと第3クラッチが作動し、そして
後進変速段では前記第4クラッチと第2ブレーキが作動することを特徴とする請求項8に記載の車両用自動変速機の遊星ギヤトレイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−7481(P2013−7481A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253931(P2011−253931)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】