説明

車両用送風装置

【課題】ファンにおける車両外部に面する側にファンネットが配置された車両用送風装置において、走行中の枝等の侵入によるファンの破損を防止する。
【解決手段】送風装置がバス車両の屋根上に搭載され、ファンネット17が略水平に配置される場合、リング状の第1格子171と交差する第2格子172を、第1格子171が車両左右方向と略平行となる部位よりも、第1格子171が車両前後方向と略平行となる部位の方に密に配置する。これにより、第1格子171が車両前後方向と略平行となる部位の格子間隙間の車両前後方向寸法を従来よりも短くして、走行中の枝等の侵入を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンを保護するファンネットを備える車両用送風装置に関し、特にバス等の車両の屋根上に搭載される車両用送風装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用送風装置は、ファンネットにより異物等の侵入を防止してファンを保護するようにしている。このファンネットは、同心状に多数配置されたリング状の第1格子と、第1格子と交差する第2格子とを備えている(例えば、特許文献1参照)。また、バス車両の屋根上に搭載する車両用送風装置において、ファンネットを用いることも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−280566号公報
【特許文献2】特開2003−320841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の車両用送風装置は、例えば道路側まで伸びた木の枝が車両走行中にファンネットに衝突すると、ファンネットの格子間の隙間から枝が侵入してファンが破壊されるという問題があった。
【0004】
そして、送風装置が車両の屋根上に搭載され、ファンネットが車両前後方向および車両左右方向に延びるように(すなわち、略水平に)配置されている場合、ファンネットにおける車両前後方向中央部で且つ車両左右側の部位の格子間の隙間から枝が侵入することが判明した。これは、ファンネットにおける車両前後方向中央部で且つ車両左右側の部位では、リング状の第1格子が車両前後方向(すなわち、車両進行方向)と略平行となり、その部位の格子間の隙間は車両前後方向に細長くなっていて、走行中に木の枝が侵入しやすいためである。一方、ファンネットにおける車両前方側で且つ車両左右方向中央部の部位および車両後方側で且つ車両左右方向中央部の部位では、リング状の第1格子が車両左右方向と略平行となり、その部位の格子間の隙間は、車両左右方向に細長く、車両前後方向の寸法が短いため、木の枝は走行中に侵入し難い。
【0005】
また、送風装置が車両の側面に搭載され、ファンネットが車両前後方向および天地方向に延びるように(すなわち、略垂直に)配置されている場合、ファンネットにおける車両前後方向中央部で且つ上方側の部位および車両前後方向中央部で且つ下方側の部位の格子間の隙間が車両前後方向に細長いため、その隙間から木の枝が侵入しやすい。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、ファンにおける車両外部に面する側にファンネットが配置された車両用送風装置において、走行中の枝等の侵入によるファンの破損を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ファン(15)を保護するファンネット(17)が車両前後方向に延びるように配置された車両用送風装置において、ファンネット(17)は、周方向に延びる第1格子(171)と、第1格子(171)と交差する第2格子(172)とを備え、第2格子(172)は、第1格子(171)が車両左右方向と略平行となる部位よりも、第1格子(171)が車両前後方向と略平行となる部位の方に密に配置されていることを特徴とする。
【0008】
このようにすれば、第1格子(171)が車両前後方向と略平行となる部位の格子間隙間の車両前後方向寸法を従来よりも短くすることが可能であるため、走行中の枝等の侵入によるファン(15)の破損を防止することができる。また、必要な部位のみに第2格子(172)を密に配置するため、圧損の増加を抑制しつつファン(15)の破損を防止することができる。
【0009】
この場合、第2格子(172)が放射状に延びるようにすれば、第2格子(172)が車両前後方向に対して垂直な方向または車両左右方向に延びる場合よりも、ファンネット(17)を通過する際の空気の流れがスムーズになる。
【0010】
また、第1格子(171)が車両前後方向と略平行となる部位に配置された第2格子(172)が、車両前後方向に対して垂直な方向または車両左右方向に延びるようにすることができる。このようにすれば、第1格子(171)が車両前後方向と略平行となる部位の格子間隙間の車両前後方向寸法を、ファンネット(17)における内周側部位と外周側部位で等しくすることができる。
【0011】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は第1実施形態に係る送風装置を搭載したコンデンシングユニットを示す斜視図、図2は図1のコンデンシングユニットの断面図、図3は図1のファンネットの平面図である。
【0013】
図1、図2に示すように、コンデンシングユニット10は、冷凍サイクルの一部をなす凝縮器11を備え、凝縮器11内を流れる高圧ガス冷媒を外気により冷却して凝縮させる機能を発揮するものであり、図示しないバス車両の屋根Rの上に搭載される。そして、凝縮器11で凝縮された冷媒は、冷凍サイクルの一部をなす図示しない蒸発器に送られ、その蒸発器内を流れる液相冷媒が車室内空調用の空気から吸熱して蒸発し、その車室内空調用の空気を冷却するようになっている。
【0014】
コンデンシングユニット10のケース12には、空気の吸い込み口となる第1開口13が車両前方側端部に設けられ、空気の吹き出し口となる第2開口14が第1開口13よりも車両後方側で且つ上面に設けられている。
【0015】
ケース12の内側空間において第2開口14の下方に、空気流を発生するファン15が配置されている。より詳細には、このファン15は、軸流ファンを電動モータにより回転駆動する電動ファンであり、軸流ファンの回転軸線が略天地方向になっている。
【0016】
このファン15の周囲には、ファン15の通風路を区画する筒状のシュラウド16が配置されている。また、ケース12の内側空間においてファン15の下方に、凝縮器11が略水平に配置されている。そして、ファン15が駆動されると、第1開口13から外気が導入され、その外気は凝縮器11のコア部を通過して第2開口14から排出されるようになっている。
【0017】
第2開口14は、ファン15の外径と略同径の円形の開口部であり、この第2開口14には、その開口部を覆うようにして円形のファンネット17が装着されている。そして、ファンネット17は、走行風と一緒に運ばれてくる大きな異物や道路側まで伸びた木の枝等がケース12内に侵入するのを防止する。なお、第1開口13は、スリット状の多数の開口部からなり、ファンネットは装着されていない。
【0018】
図3に示すように、ファンネット17は、車両前後方向および車両左右方向に延びるように(すなわち、略水平に)配置されている。ファンネット17は、径の異なる多数のリング状の部材を同心状に配置して構成された第1格子171と、放射状に延びて第1格子171と交差する複数の第2格子172とを備えている。なお、ファンネット17は、樹脂にて成形することができる。
【0019】
第2格子172は、リング状の第1格子171が車両左右方向と略平行となる部位よりも、リング状の第1格子171が車両前後方向(すなわち、車両進行方向)と略平行となる部位の方に密に配置されている。なお、第1格子171が車両左右方向と略平行となる部位は、ファンネット17における車両前方側で且つ車両左右方向中央部の部位、および車両後方側で且つ車両左右方向中央部の部位である。また、第1格子171が車両前後方向と略平行となる部位は、ファンネット17における車両前後方向中央部で且つ車両左右側の部位である。
【0020】
そして、第1格子171が車両左右方向と略平行となる部位に、第2格子172がそれぞれ1本設けられている。第1格子171が車両前後方向と略平行となる部位に、第2格子172がそれぞれ3本設けられている。
【0021】
このように、第1格子171が車両前後方向と略平行となる部位に第2格子172を密に配置することにより、隣接する2本の第1格子171と隣接する2本の第2格子172とで区画される格子間隙間のうち、第1格子171が車両前後方向と略平行となる部位の格子間隙間について、その車両前後方向寸法を従来よりも短くしている。
【0022】
このため、例えば道路側まで伸びた木の枝が車両走行中にファンネット17に衝突しても、第1格子171が車両前後方向と略平行となる部位の格子間隙間から枝が侵入するのを防止することができ、ひいてはファン15の破損を防止することができる。また、必要な部位のみに第2格子172を密に配置するため、圧損の増加を抑制しつつファン15の破損を防止することができる。
【0023】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図4は第2実施形態に係る送風装置のファンネットの平面図である。
【0024】
本実施形態は、ファンネット17における第2格子172の構成を変更したものである。なお、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0025】
図4に示すように、本実施形態では、ファンネット17の第2格子172のうち、第1格子171が車両前後方向と略平行となる部位の第2格子172は、車両前後方向(すなわち、車両進行方向)に対して垂直方向に、より詳細には、車両左右方向に延びている。これにより、第1格子171が車両前後方向と略平行となる部位の格子間隙間の車両前後方向寸法は、ファンネット17における内周側部位と外周側部位で等しくなっている。
【0026】
第2格子172は、第1格子171が車両前後方向と略平行となる部位にそれぞれ5本設けられている。換言すると、第1格子171が車両前後方向と略平行となる部位に第2格子172が密に配置されている。したがって、第1実施形態と同様に、第1格子171が車両前後方向と略平行となる部位の格子間隙間から枝が侵入するのを防止することができ、ひいてはファン15の破損を防止することができる。また、必要な部位のみに第2格子172を密に配置するため、圧損の増加を抑制しつつファン15の破損を防止することができる。
【0027】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、コンデンシングユニット10がバス車両の屋根Rの上に搭載される例を示したが、本発明はコンデンシングユニット10が車両の側面に搭載される場合にも適用することができる。この場合、ファンネット17は車両前後方向およ天地方向に延びるように(すなわち、略垂直に)配置され、リング状の第1格子171が車両前後方向と略平行となる部位(すなわち、ファンネット17における車両前後方向中央部で且つ上方側の部位、および車両前後方向中央部で且つ下方側の部位)の格子間隙間から木の枝が侵入しやすいため、第1格子171が車両前後方向と略平行となる部位に第2格子172を密に配置する。
【0028】
また、上記各実施形態では、径の異なる多数のリング状の部材を同心状に配置して第1格子171を構成したが、第1格子171は渦巻き状であってもよい。
【0029】
さらに、上記各実施形態では、ファン15における車両外部に面する側に設けた第2開口14をファン15の空気吹き出し側としたが、その第2開口14をファン15の空気吸い込み側としてもよい。この場合、第1開口13がファン15の空気の吹き出し口となるため、第1開口13は、コンデンシングユニット10のケース12における車両後方側端部または左右側面に設けるのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係る送風装置を搭載したコンデンシングユニットを示す斜視図である。
【図2】図1のコンデンシングユニットの断面図である。
【図3】図1のファンネットの平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態にに係る送風装置のファンネットの平面図である。
【符号の説明】
【0031】
15…ファン、17…ファンネット、171…第1格子、172…第2格子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、回転駆動されて空気流を発生するファン(15)と、前記ファン(15)における車両外部に面する側に配置されて前記ファン(15)を保護するファンネット(17)とを備え、前記ファンネット(17)が車両前後方向に延びるように配置された車両用送風装置において、
前記ファンネット(17)は、周方向に延びる第1格子(171)と、前記第1格子(171)と交差する第2格子(172)とを備え、
前記第2格子(172)は、前記第1格子(171)が車両左右方向と略平行となる部位よりも、前記第1格子(171)が車両前後方向と略平行となる部位の方に密に配置されていることを特徴とする車両用送風装置。
【請求項2】
前記ファン(15)は車両の屋根上に搭載され、前記ファンネット(17)は略水平に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用送風装置。
【請求項3】
前記第2格子(172)は、放射状に延びていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用送風装置。
【請求項4】
前記第2格子(172)のうち前記第1格子(171)が車両前後方向と略平行となる部位に配置された第2格子(172)は、車両前後方向に対して垂直な方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載の車両用送風装置。
【請求項5】
前記第2格子(172)のうち前記第1格子(171)が車両前後方向と略平行となる部位に配置された第2格子(172)は、車両左右方向に延びていることを特徴とする請求項2に記載の車両用送風装置。
【請求項6】
前記ファン(15)における車両外部に面する側は、前記ファン(15)の空気吹き出し側であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用送風装置。
【請求項7】
前記ファン(15)における車両外部に面する側は、前記ファン(15)の空気吸い込み側であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用送風装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−23483(P2009−23483A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187950(P2007−187950)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】