説明

車両用通信装置

【課題】受信ID(認識情報)の増加に対して安価に対応する。
【解決手段】バッファ部3を、識別情報毎の複数領域m1〜m32に分割された複数のバッファユニット3a、3bにより形成し、所定のバッファユニット3aを、送信端子部t、受信端子部rが送受信回路部4に接続し、その少なくとも一部の領域に送信データを保持し、残りのバッファユニット3bを、受信専用に設定してその受信端子部を送受信回路部4に接続して対応可能な受信IDを増加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信バスで接続される車内の各種機器等の車両用通信装置に関し、詳しくは、受信する識別情報の増加に安価に対応可能な新規な構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車内の各種のECU等は、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)に代表されるシリアル通信プロトコルのネットワークにより結ばれて情報をやり取りする。
【0003】
そして、例えばCANの車両用通信装置の例で説明すると、送信データおよび受信データはデバイス等を認識するためのID(認識情報)が付加されてECU等のマイクロコンピュータ間でやり取りされる。その際、データの送受信には、送受信共用のバッファ部と送受信回路部を備えた車両用通信装置が用いられる(例えば、特許文献1(段落[0003]−[0006]、図1等)参照)。
【0004】
図2は上記した車両用通信装置100の概略の基本構成を示し、CPU101によりデータが読み書きされるバッファ部102は、例えば送受信総合のID数が32個であれば、ID毎の32の領域m1〜m32に分割(区分)された1チャンネルのバッファユニット103のICで形成され、その後段に送受信回路部104が設けられる。
【0005】
そして、バッファユニット103は、領域m1〜m32に割り当てられるIDが決まっており、CPU101からの各IDの送信データは、バッファユニット103の該当する送信IDの領域に保持された後、バッファユニット103の送信端子部(送信ポート)tから送受信回路部104に送られ、送受信回路部104により、CANの信号に変換されてネットワークを構築するCANの通信バス105に送信される。また、通信バス105のCANの各受信信号(他の機器の送信信号)は送受信回路部104により、CPU101が扱うことができる受信IDおよび受信データに変換され、変換された受信IDおよび受信データは、送受信回路部104からバッファユニット103の受信端子部(受信ポート)rに送られて、バッファユニット103の該当する受信IDの領域に受信データが取り込まれて保持された後、CPU101がバッファユニット103の受信データを読み出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−282612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種の車両用通信装置においては、前記したように、バッファ部102の1チャンネルのバッファユニット103に保持可能な送受信のID総数が例えば32に固定されるので、車内の機器(ECU)が増えたりして受信IDが増加し、1個のバッファユニット103では賄えなくなると、バッファ部102を市販の2チャンネルのバッファユニット形成することが考えられるが、この場合、送信データがチャンネル間で競合し、両チャンネルのバッファユニットの送信データが同時に同じ送受信回路部に入力されると、信号のレベル短絡が発生して送信できなくなることから、チャンネル毎に送受信回路部が設けられる。
【0008】
図3は従来装置のバッファ部102を2チャンネル(以下、2チャンネルの一方をチャンネルA、他方をチャンネルBという)のバッファユニット103a、103bに増設した場合の構成を示す。
【0009】
この場合、チャンネルAのバッファユニット103aの送信端子部t、受信端子部rはそのチャンネルの送受信回路部104aに接続され、チャンネルBのバッファユニット103bの送信端子部t、受信端子部rはそのチャンネルの送受信回路部104bに接続され、送受信回路部104a、104bが通信バス105に接続される。
【0010】
そして、バッファユニット103a、103bは、それぞれ例えば32の領域m1〜m32の一部(例えば半分)が受信IDの領域であり、これらの領域は異なる受信IDに割り当てられる。したがって、バッファ部102は、バッファユニット103a、103bのいずれか1個の構成の場合より受信可能なID数が倍増する。
【0011】
しかしながら、図3のように受信IDの増加に基づくバッファ部102のバッファユニット103a、103bの増設に伴って、送受信回路部104a、104bも増設するのでは、大幅なコストアップを招く問題がある。
【0012】
本発明は、受信ID(認識情報)の増加に対して安価に対応することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成するために、本発明の車両用通信装置は、受信データは競合しないことに着目してなされたものであり、バッファ部に保持された送信データを識別情報(ID)を付して送受信回路部から通信バスに送信し、前記通信バスの受信データを前記送受信回路部により受信して前記バッファ部に保持する車両用通信装置であって、前記バッファ部は、識別情報毎の複数領域に分割された複数のバッファユニットにより形成され、所定のバッファユニットは、少なくとも一部の領域が送信データの保持に設定されて送信端子部、受信端子部が前記送受信回路部に接続され、残りのバッファユニットは、各領域が受信データの保持に設定されて受信端子部が前記送受信回路部に接続されることを特徴としている。(請求項1)。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、各送信IDのデータはバッファ部の所定のバッファユニットの一部の領域に保持された後、その送信端子部から送受信回路部に送られて通信バスに送信されるので、複数の送信データが競合することはない。
【0015】
つぎに、通信バスの各受信IDのデータは、順に送受信回路部が受信し、バッファ部の前記所定のバッファユニットの残りの領域が受信IDの領域であれば、送受信回路部から前記所定のバッファユニットおよび残りのバッファユニットの受信端子に分枝入力される。なお、前記所定のバッファユニットの全領域が送信IDの領域であれば、残りのバッファユニットの受信端子だけに分枝入力される。このとき、各バッファユニットに同じ受信データが分枝入力されるので、受信データのレベル短絡は生じない。そして、各バッファユニットの該当する受信IDの領域にその受信IDの受信データが保持され、前記所定のバッファユニットだけの場合よりバッファ部に保持可能な受信ID数が増加する。
【0016】
そして、この場合は送受信回路部をバッファユニット毎に用意しなくてよく、送受信回路部は1個でよく、受信ID数の増加に伴って受信データのバッファユニットを増加すればよく、安価な構成で受信IDの増加に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の車両用通信装置の一実施形態のブロック図である。
【図2】バッファ部に1チャンネルのバッファユニットを備えた従来装置のブロック図である。
【図3】図2の従来装置のバッファ部に2チャンネルのバッファユニットを備えた場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
つぎに、本発明をより詳細に説明するため、本発明の一実施形態について、図1を参照して詳述する。
【0019】
図1は本実施形態の車両用通信装置1のブロック結線図を示し、CPU2によりデータが読み書きされるバッファ部3は、それぞれID毎の32の領域m1〜m32に分割(区分)されたチャンネルAのバッファユニット3aとチャンネルBのバッファユニット3bとを有する。
【0020】
そして、バッファユニット3aは、32の記憶領域m1〜m32の一部(例えば記憶領域m1〜m16)が送信データの保持に設定されて、その送信端子部tが送受信回路部4に接続される。
【0021】
また、バッファユニット3aの残りの記憶領域(例えば記憶領域m17〜m32)および、チャンネルBのバッファユニット3bの32の各記憶領域m1〜m32は受信データの保持に設定され、バッファユニット3aの受信端子部rが送受信回路部4に接続されるとともに、例えばバッファユニット3aの受信端子部rを送受信回路部4に接続する信号線Lrの途中に増設用の分枝線Lbを介してバッファユニット3bの受信端子部rが接続される。なお、送受信回路部4はCANの通信バス5に接続される。
【0022】
そして、バッファユニット3aの前記残りの記憶領域(例えば記憶領域m17〜m32)および、チャンネルBのバッファユニット3bの32の各記憶領域m1〜m32は、異なる受信IDの領域に設定され、通信バス5の各受信IDの受信データは、送受信回路部4を介してバッファユニット3a、3bの受信端子部rに分枝入力され、バッファユニット3a、3bのいずれかの該当する受信IDの領域に保持される。
【0023】
この場合、バッファユニット3bを受信専用のバッファユニットとして追加することにより、送信データには影響を及ぼすことなく、バッファ部3の受信IDの領域が、元のバッファユニット3aの例えば16個の領域から、あらたに32個増加する。
【0024】
そして、バッファユニット3bを受信専用のバッファユニットとして追加するので、バッファユニット3bの受信端子部rを、増設用の分枝線Lbを介して送受信回路部4に接続するだけでよく、送受信回路部の増設等は不要であり、極めて低コストに受信IDの増加に対応することができる。なお、受信IDがさらに増加するときは、バッファ部3にバッファユニット3bと同様の受信専用のバッファユニットを増設し、それらの受信端子部rを、分枝線Lbと同様の分枝線を介して送受信回路部4に接続すればよい。
【0025】
したがって、本実施形態の場合、受信IDが増加して1チャンネルのバッファユニット3aではバッファ部3が対応しきれなくなる場合に、送受信回路部を増設せずに、もう1チャンネルの受信専用のバッファユニット3bをバッファ部3に増設するだけで、低コストに対応することができ、バッファユニット3bと同様の受信専用のバッファユニットをバッファ部3にさらに増設すれば、さらに多くの受信IDの増加に、簡単に、かつ、低コストに対応でき、低コストでCAN通信の大幅な機能アップが実現できる。
【0026】
そして、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能であり、例えば、前記実施形態では、バッファユニット3aを送信IDのデータ(送信データ)の保持と受信IDのデータ(受信データ)の保持に共用したが、バッファユニット3aは送信専用のバッファユニットに設定し、受信データはバッファユニット3b等の受信専用のバッファユニットに保持するようにしてもよく、この場合、バッファユニット3aは送信端子部tのみを送受信回路部4に接続して用いることも可能になる。また、バッファユニット3aは、記憶領域m1〜m20が送信データの保持に設定され、記憶領域m21〜m32が受信データの保持に設定されてもよい。すなわち、所定のバッファユニット(バッファユニット3a)における複数のバッファ部のうち送信データの保持に設定されるバッファ部の数が受信データの保持に設定されるバッファ部の数よりも多く設定されていてもよい。これらのようにすることで、コストアップを招くことなく送信可能なIDを増やすことができる。
【0027】
つきに、各バッファユニット3a、3bの分割領域の個数等はどのようであってもよく、バッファユニット3a、3bによって分割領域の個数が異なっていてもよい。
【0028】
そして、本発明は、CANの車両用通信装置だけでなく、LINの車両用通信装置等にも同様に適用することができ、種々の車両用通信装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 車両用通信装置
3 バッファ部
3a、3b バッファユニット
4 送受信回路部
5 通信バス
m1〜m32 記憶領域
r 受信端子部
t 送信端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッファ部に保持された送信データを識別情報を付して送受信回路部から通信バスに送信し、前記通信バスの受信データを前記送受信回路部により受信して前記バッファ部に保持する車両用通信装置であって、
前記バッファ部は、識別情報毎の複数領域に分割された複数のバッファユニットにより形成され、
所定のバッファユニットは、少なくとも一部の領域が送信データの保持に設定されて送信端子部、受信端子部が前記送受信回路部に接続され、
残りのバッファユニットは、各領域が受信データの保持に設定されて受信端子部が前記送受信回路部に接続されることを特徴とする車両用通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−142646(P2012−142646A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291815(P2010−291815)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】