説明

車両用遠隔始動装置および車両用遠隔始動方法

【課題】ドライバが車両の乗り込んでから発進するまでに時間を要するようなケースを判断して加温処理を行うことにより、その処理の効率化を図る。
【解決手段】車両用遠隔始動装置1は、エンジン13の始動を指示する始動信号を受信したことをトリガとして、ワイパブレードまたはパワーウインドの作動を指示するとともに、ワイパブレードまたはパワーウインドの駆動に対応してアクチュエータに供給される電流値と、過電流状態を判定する判定値とを比較する。そして、アクチュエータに供給される電流が過電流状態であることを条件として、車両のウインドを加温する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用遠隔始動装置および車両用遠隔始動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両のエンジンを遠隔始動する車両用遠隔始動装置が知られている。この類の装置では、単に、遠隔操作によってエンジンを始動するのみならず、寒冷時には、氷結等によるウインドの視界不良を解消するといった観点より、デフロスタ、デフォッガ、エアコンブロワ等を作動させ、ウインドを加温する加温処理が行われる(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平11−62793号公報
【特許文献2】特開2000−38976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1,2に開示された手法では、車室内の温度を条件に加温処理が行われるため、単にウインドが曇っているといったように、ドライバ自身の操作によっても視界が確保できるようなケースでも加温処理が実行されてしまい、効率が悪いという不都合がある。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ドライバが車両に乗り込んでから発進するまでに時間を要するようなケースを判断して加温処理を行うことにより、その処理の効率化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するために、本発明は、車両用遠隔始動装置を提供する。この車両用遠隔始動装置は、ワイパブレードまたはパワーウインドを駆動するアクチュエータに供給される電流を検出する。また、この車両用遠隔始動装置は、エンジンの始動を指示する始動信号を送信機から受信する。そして、車両用遠隔始動装置は、始動信号を受信したことをトリガとして、ワイパブレードまたはパワーウインドの作動を指示するとともに、ワイパブレードまたはパワーウインドの駆動に対応してアクチュエータに供給される電流値と、過電流状態を判定する判定値とを比較し、アクチュエータに供給される電流が過電流状態であることを条件として、車両のウインドを加温する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、アクチュエータに供給される電流値を判定値と比較することで、ワイパブレードまたはパワーウインドがロックしているか否かを判定することができる。そして、このロック状態を判定した場合に、ウインドが氷結などにより凍結していると判断し、ウインドを加温することで、ウインドの凍結を解消させることができる。そのため、寒冷時であっても、ワイパブレードやパワーウインドウがロックしていないような状況では、加温処理の実行が抑制される。これにより、凍結等による視界不良といったように、ドライバが車両の乗り込んでから発信するまでに時間を要するようなケースにおいて加温処理が実行されるので、その処理の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、車両用遠隔始動装置1の全体構成を示すブロック図である。なお、同図には、説明の便宜上、後述する実施形態を含む全ての構成要素が描かれている。第1の実施形態に係る車両用遠隔始動装置1は、受信機(受信手段)10、リモートスタート制御装置(制御手段)11、始動装置12、エンジン13、フロントワイパ駆動系(フロントワイパ駆動手段)14、リアワイパ駆動系(リアワイパ駆動手段)15、フロントデフロスタ17、リアデフォッガ18、ワイパデアイサ19およびエアコンブロワ20で構成されている。第1の実施形態において、この車両用遠隔始動装置1は、フロントワイパ駆動系14およびリアワイパ駆動系15によって本発明のワイパ駆動手段が構成され、フロントデフロスタ17、リアデフォッガ18、ワイパデアイサ19およびエアコンブロワ20によって本発明のウインド加温手段が構成される。
【0008】
エンジン13の始動を目的としてドライバによって送信機10aが操作されると、受信機10は、送信機10aからの無線信号を受信する。受信機10は、受信した無線信号について復調等の処理を行った後に、この信号を始動信号としてリモートスタート制御装置11に対して出力する。
【0009】
リモートスタート制御装置11は、受信機10が始動信号を受信したことをトリガとして、すなわち、受信機10からの始動信号の入力をトリガとして、始動装置12に対してエンジン13の始動を指示するとともに、後述するように、始動に伴う各種の処理を実行する。始動装置12は、リモートスタート制御装置11からエンジン13の始動が指示されると、イグニッションスイッチをオンする等の処理を行い、エンジン13の始動を行う。
【0010】
フロントワイパ駆動系14は、フロントウインドに設けられたワイパブレード(以下「フロントワイパ」という)を電動モータなどのアクチュエータ(図示せず)によって駆動する。リアワイパ駆動系15は、リアウインドに設けられたワイパブレード(以下「リアワイパ」という)を電動モータなどのアクチュエータ(図示せず)によって駆動する。これらの駆動系14,15は、基本的に、ドライバによるスイッチ操作に応じてフロントワイパを作動させたり、リアワイパを作動させたりする。また、本実施形態では、これらの駆動系14,15は、リモートスタート制御装置11からの指示に応じて、フロントワイパを作動させたり、リアワイパを作動させたりするもできる。
【0011】
フロントデフロスタ17は、フロントウインドを加温する装置(フロントウインド加温手段)であり、例えば、ヒータを通した温風をフロントウインドに吹き付けることにより、フロントウインドを加温する。リアデフォッガ18は、リアウインドを加温する装置(リアウインド加温手段)であり、例えば、リアウインドにプリントされた電気抵抗線に通電することにより、リアウインドを加温する。ワイパデアイサ19は、フロントウインドを加温する装置(フロントウインド加温手段)であり、例えば、ワイパブレードの直下のウインドガラス内にプリントされた電気抵抗線に通電することにより、フロントウインドを加温する。エアコンブロワ20は、フロントウインド、リアウインド、車両のサイドに設けられたウインドを加温する装置であり、例えば、ヒータを通した温風を車内に供給することにより、車両のウインドを加温する(それ故に、このエアコンブロワ20は、単に、ウインド加温手段の機能のみならず、限定的には、フロントウインド加温手段或いはリアウインド加温手段としての機能を担う)。これらの加温装置17〜20は、基本的に、ドライバによるスイッチ操作に応じて各々独立に作動するが、本実施形態では、リモートスタート制御装置11からの指示に応じて、これらの装置17〜20を適宜作動させることもできる。
【0012】
リモートスタート制御装置11としては、例えば、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェースを主体に構成されるマイクロコンピュータを用いることができる。リモートスタート制御装置11は、受信機10が始動信号を受信したことをトリガとして、フロントワイパ駆動系14に対してフロントワイパの作動を指示する。そして、リモートスタート制御装置11は、アクチュエータによるフロントワイパの駆動に応じてアクチュエータに供給される電流値(駆動電流値)と、アクチュエータの過電流状態を判定する判定値とを比較する。また、リモートスタート制御装置11は、リアワイパ駆動系15に対してリアワイパの作動を指示する。そして、リモートスタート制御装置11は、アクチュエータによるリアワイパの駆動に応じてアクチュエータに供給される電流値(駆動電流値)と、アクチュエータの過電流状態を判定する判定値とを比較する。リモートスタート制御装置11は、フロントワイパ側またはリアワイパ側を駆動するアクチュエータに供給される電流が過電流状態であることを条件として、加温装置17〜20を作動させる。
【0013】
リモートスタート制御装置11には、この様な処理を実行するために、各種センサからの検出信号が入力されている。フロントワイパ電流検出部(フロントワイパ駆動電流検出手段)14aは、フロントワイパを駆動するアクチュエータに供給される電流(駆動電流)を検出する。リアワイパ電流検出部(リアワイパ駆動電流検出手段)15aは、リアワイパを駆動するアクチュエータに供給される電流(駆動電流)を検出する。なお、第1の実施形態において、フロントワイパ電流検出部14aと、リアワイパ電流検出部15aとは、本発明のワイパ駆動電流検出手段に相当する。
【0014】
以下、車両用遠隔始動装置1の動作について説明する。ここで、図2は、第1の実施形態に係る車両用遠隔始動装置1によって実行される始動処理の手順を説明するフローチャートである。
【0015】
まず、ステップ10において、リモートスタート制御装置11は、送信機10aからの無線信号があったか否かを判定する。送信機10aが操作され、無線信号が送信された場合には、受信機10はこれを受信して、始動信号をリモートスタート制御装置11に対して出力する。そこで、リモートスタート制御装置11は、受信機10から始動信号を受信したか否かにより、送信機10aからの無線信号があったか否かを判定する。送信機10aから無線信号が送信されない限り、このステップ10において否定判定されるため、ステップ11以降の処理には進まず、再度、無線信号があったか否かを判定する。一方、送信機10aからの無線信号があった場合には、このステップ10において肯定判定され、ステップ11に進む。
【0016】
ステップ11において、リモートスタート制御装置11は、始動装置12に対して制御信号を出力することにより、エンジンの13の始動を指示する。始動装置12は、リモートスタート制御装置11からの制御信号の入力をトリガとして、エンジン13の始動を行う。
【0017】
ステップ12において、リモートスタート制御装置11は、フロントワイパ駆動系14に対してフロントワイパの作動を指示するとともに、リアワイパ駆動系14に対してリアワイパの作動を指示する。具体的には、リモートスタート制御装置11は、フロントワイパ駆動系14に対して所定の制御信号を出力し、フロントワイパを時間T1だけ作動させる。また、リモートスタート制御装置11は、リアワイパ駆動系15に対して所定の制御信号を出力し、リアワイパを時間T2だけ作動させる。これらの時間T1,T2は、後述する過電流の判定を前提として、フロントワイパおよびリアワイパが凍結等によってロックしていることを判定するのに十分な時間が、実験やシミュレーションを通じて予め設定されている。
【0018】
ステップ13において、リモートスタート制御装置11は、フロントワイパ電流検出部14aからの検出結果(フロントワイパ電流値)に基づいて、フロントワイパがロックしているか否かを判定する。氷結や積雪等といったように、その解消にある程度の時間を必要とするような視界不良がウインドに発生してるケースでは、この氷結や積雪等に起因してフロントワイパも凍結している可能性がある。凍結によりフロントワイパがフロントウインドに固着した状態でフロントワイパを作動させた場合、このフロントワイパ用のアクチュエータには、フロントワイパのロックに伴い、通常作動時の2乃至3倍以上の大電流が流れる(過電流の発生)。そこで、リモートスタート制御装置11は、先のフロントワイパの作動に対応したフロントワイパ電流値を、アクチュエータの過電流状態を判定するための判定値と比較する。そして、リモートスタート制御装置11は、フロントワイパ用のアクチュエータに供給される電流が過電流状態であることを条件として、フロントワイパがロックしていると判定する。この判定値には、予め実験やシミュレーションを通じて、フロントワイパがロックしていないと見なせる程度のフロントワイパ電流値の最大値が適切に設定されている。すなわち、このステップ13では、リモートスタート制御装置11は、フロントワイパ電流値が判定値よりも大きいか否かを判定する。
【0019】
このステップ13において肯定判定された場合(フロントワイパ電流値>判定値)、すなわち、フロントワイパがロックしている場合には、後述するステップ15に進む。一方、このステップ13において否定判定された場合(フロントワイパ電流値≦判定値)、すなわち、フロントワイパがロックしていない場合には、ステップ14に進む。
【0020】
ステップ14において、リモートスタート制御装置11は、リアワイパ電流検出部15aからの検出結果(リアワイパ電流値)に基づいて、リアワイパがロックしているか否かを判定する。フロントワイパと同様に、凍結等によりリアワイパがリアウインドに固着した状態においてリアワイパを作動させた場合、このリアワイパ用のアクチュエータには、リアワイパのロックに伴い過電流が発生する。そこで、リモートスタート制御装置11は、先のリアワイパの作動に対応したリアワイパ電流値を、このアクチュエータの過電流状態を判定するための判定値とを比較する。そして、リモートスタート制御装置11は、リアワイパ用のアクチュエータに供給される電流が過電流状態であることを条件に、リアワイパがロックしていると判定する。この判定値には、予め実験やシミュレーションを通じて、リアワイパがロックしていないと見なせる程度のリアワイパ電流値の最大値が適切に設定されている。すなわち、このステップ14では、リモートスタート制御装置11は、リアワイパ電流値が判定値よりも大きいか否かを判定する。
【0021】
このステップ14において肯定判定された場合(リアワイパ電流値>判定値)、すなわち、リアワイパがロックしている場合には、後述するステップ15に進む。一方、このステップ14において否定判定された場合(リアワイパ電流値≦判定値)、すなわち、リアワイパがロックしていない場合には、本処理を終了する。
【0022】
ステップ15において、リモートスタート制御装置11は、フロントワイパまたはリアワイパがロックしていること前提に、ウインドが氷結等により凍結していると判断し、これを解消すべく、加温処理を実行する。具体的には、リモートスタート制御装置11は、フロントデフロスタ17、リアデフォッガ18、ワイパデアイサ19およびエアコンブロワ20を作動させ、本処理を終了する。
【0023】
このように本実施形態によれば、リモートスタート制御装置11は、フロントワイパ駆動系14およびリアワイパ駆動系15に対してワイパの作動を指示する。凍結等によりフロントワイパまたはリアワイパがロックしているケースでは、これらを作動するアクチュエータの駆動もロックされる。そのため、フロントワイパおよびリアワイパの作動を指示した場合には、これらのワイパを駆動するアクチュエータに対して、通常よりも大きな電流が流れる(過電流の発生)。そこで、リモートスタート制御装置11は、フロントワイパおよびリアワイパの駆動に伴う電流値と、アクチュエータの過電流状態を判定する判定値とを比較することにより、フロントワイパまたはリアワイパが凍結等によってロックしていると判断することができる。そして、凍結等に起因したロックを判定した場合には、リモートスタート制御装置11は、フロントデフロスタ17、リアデフォッガ18、ワイパデアイサ19およびエアコンブロワ20を作動させる。これにより、ウインドが直接的に加温される、或いは、室温の上昇とともにウインドが加温されることにより、ウインドの凍結等を解消することができる。これにより視界不良を事前に解消することができるので、加温処理を行うことで、ドライバが車両に乗り込んでから発進するまでの時間短縮を図ることができる。
【0024】
特に、本実施形態では、室温が低くとも、視界は確保できているような場合や、ウインドが曇っている場合など、ドライバ自信の操作によって、視界を確保できるような場合には、フロントデフロスタ17、リアデフォッガ18、ワイパデアイサ19およびエアコンブロワ20といった加温装置の作動が抑制される。すなわち、凍結といったように、その解除に時間を要するようなケースをワイパのロックから判定して、ウインドを加温するため、単に温度は低いがドライバの操作によって視界不良の要因を除去できるようなケースでは加温処理の実行が抑制される。これにより、処理の効率化を図ることができる。
【0025】
また、本実施形態によれば、ワイパを作動させることにより、加温処理の前提となる氷結や積雪を検知することが可能となるため、室温センサなど別個設ける必要がない。そのため、簡素な構成で凍結や積雪等を検出し、また、必要に応じてこれを除去することができる。
【0026】
なお、本実施形態では、フロントワイパ或いはリアワイパのいずれか一方のロックが判定された場合、リモートスタート制御装置11は、フロントデフロスタ17、リアデフォッガ18、ワイパデアイサ19、エアコンブロワ20の作動を指示する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではく、ロックの箇所に応じていずれかの加温装置17〜20を作動させてもよい。例えば、フロントワイパのロックを判定した場合には、リモートスタート制御装置11は、フロントデフロスタ17、ワイパデアイサ19およびエアコンブロワ20のいずれか一つ以上の加温装置の始動を指示し、リアワイパのロックを判定した場合には、リモートスタート制御装置11は、リアデフォッガ18またはエアコンブロワ20のいずれか一つ以上の加温装置の始動を指示するといった如くである。かかる構成によれば、ロックしているワイパに対応して加温装置を作動させ、凍結等が生じているであろう箇所に限定して加温装置を作動させることができる。しかしながら、全てのウインドにおいて温度条件は同じであるため、いずれかのワイパがロックしている場合には、すべての加温装置を作動させ、ウインド全体を加温することが好ましい。
【0027】
つぎに、第2の実施形態に係る車両用遠隔始動装置1について説明する。第2の実施形態に係る車両用遠隔始動装置1が、第1の実施形態のそれと相違する点は、凍結等に起因するパワーウインドのロックを判定することで、視界不良の要因となるウインドの凍結を判定することにある。なお、第1の実施形態と同様の構成については、その説明は省略する。
【0028】
再び、図1を参照するに、第2の実施形態に係る遠隔始動装置1は、受信機(受信手段)10、リモートスタート制御装置(制御手段)11、始動装置12、エンジン13、ウインド駆動系(パワーウインド駆動手段)16、フロントデフロスタ17、リアデフォッガ18、ワイパデアイサ19およびエアコンブロワ20で構成されている。ウインド駆動系16は、所謂、パワーウインド装置であり、車両の可動ウインド(パワーウインド)を電動モータなどのアクチュエータによって駆動する。なお、第2の実施形態では、フロントデフロスタ17、リアデフォッガ18、ワイパデアイサ19およびエアコンブロワ20によって本発明のウインド加温手段が構成される。
【0029】
この第2の実施形態において、リモートスタート制御装置11は、受信機10が始動信号を受信したことをトリガとして、ウインド駆動系16に対してパワーウインドの作動を指示する。そして、リモートスタート制御装置11は、パワーウインドの駆動に応じてアクチュエータに供給される電流値(駆動電流値)と、アクチュエータの過電流状態を判定する判定値とを比較する。リモートスタート制御装置11は、パワーウインド用のアクチュエータに供給される電流が過電流状態であることを条件として、フロントデフロスタ17、リアデフォッガ18、ワイパデアイサ19およびエアコンブロワ20といった加温装置を作動させる。このような処理を行うために、このリモートスタート制御装置11には、ウインド電流検出部(パワーウインド駆動電流検出手段)16aからの検出信号が入力されている。このウインド電流検出部16aは、パワーウインドを駆動するアクチュエータに供給される電流値を検出する。
【0030】
以下、本実施形態に係る車両用遠隔始動装置1の動作について説明する。ここで、図3は、第2の実施形態に係る車両用遠隔始動装置1によって実行される始動処理の手順を説明するフローチャートである。
【0031】
まず、ステップ20において、リモートスタート制御装置11は、送信機10aからの無線信号があったか否かを判定する。図2に示すステップ10と同様、送信機10aから無線信号が送信されない限り、このステップ20において否定判定されるため、ステップ21以降の処理には進まず、再度、無線信号があったか否かを判定する。一方、送信機10aからの無線信号があった場合には、このステップ20において肯定判定され、ステップ21に進む。
【0032】
ステップ21において、リモートスタート制御装置11は、始動装置12に対して制御信号を出力することにより、エンジン13の始動を指示する。始動装置12は、リモートスタート制御装置11からの制御信号の入力をトリガとして、エンジン13の始動を行う。
【0033】
ステップ22において、リモートスタート制御装置11は、ウインド駆動系16に対して、パワーウインドの駆動を指示する。具体的には、リモートスタート制御装置11は、パワーウインドを時間T3だけ作動させるように(例えば、時間(T3)/2だけ開作動させ、時間(T3)/2だけ閉作動させる)、ウインド駆動系16に対して制御信号を出力する。この時間T3は、後述する過電流の判定を前提として、凍結等によってパワーウインドがロックしていることを判定するのに十分な時間が、実験やシミュレーションを通じて予め設定されている。
【0034】
ステップ23において、リモートスタート制御装置11は、ウインド電流検出部16aからの検出結果(ウインド電流値)に基づいて、パワーウインドがロックしているか否かを判定する。第1の実施形態と同様に、凍結等によりウインドが固着した状態においてパワーウインドを作動させた場合、このパワーウインド用のアクチュエータには、パワーウインドのロックに伴い、通常作動時の2乃至3倍以上の大電流が流れる(過電流の発生)。そこで、リモートスタート制御装置11は、先のパワーウインドの開作動に対応したウインド電流値と、このアクチュエータの過電流状態を判定するための判定値と比較する。そして、リモートスタート制御装置11は、パワーウインド用のアクチュエータに供給される電流の過電流状態であることを条件に、パワーウインドがロックしていると判定する。この判定値には、予め実験やシミュレーションを通じて、パワーウインドがロックしていないと見なせる程度のウインド電流値の最大値が、適切に設定されている。すなわち、このステップ23では、リモートスタート制御装置11は、ウインド電流値が判定値よりも大きいか否かを判定する。
【0035】
このステップ23において肯定判定された場合(ウインド電流値>判定値)、すなわち、パワーウインドがロックしている場合には、ステップ24に進む。一方、このステップ23において否定判定された場合(ウインド電流値≦判定値)、すなわち、パワーウインドがロックしていない場合には、本処理を終了する。
【0036】
ステップ24において、リモートスタート制御装置11は、パワーウインドがロックしていること前提に、ウインドが氷結等により凍結していると判断し、これを解消すべく、加温処理を実行する。具体的には、リモートスタート制御装置11は、フロントデフロスタ17、リアデフォッガ18、ワイパデアイサ19およびエアコンブロワ20を作動させ、本処理を終了する。
【0037】
このように本実施形態によれば、リモートスタート制御装置11は、エンジン13の始動を条件として、ウインド駆動系16に対してパワーウインドの作動を指示する。凍結等によりパワーウインドがロックしているケースでは、これを作動するアクチュエータの駆動もロックされる。そのため、パワーウインドの作動を指示した場合には、ウインドを駆動するアクチュエータに対して、通常よりも大きな電流が流れる(過電流の発生)。そこで、リモートスタート制御装置11は、パワーウインドの作動に伴う電流値と、アクチュエータの過電流状態を判定する判定値とを比較することにより、パワーウインドが凍結等によってロックしていると判定することができる。そして、凍結等に起因したロックを判定した場合には、リモートスタート制御装置11は、フロントデフロスタ17、リアデフォッガ18、ワイパデアイサ19およびエアコンブロワ20を作動させる。これにより、ウインドが直接的に加温される、或いは、室温の上昇とともにウインドが加温されることにより、ウインドの凍結等を解消することができる。これにより視界不良を事前に解消することができるので、加温処理を行うことで、ドライバが車両に乗り込んでから発進するまでの時間短縮を図ることができる。
【0038】
特に、本実施形態では、室温が低くとも、視界は確保できているような場合や、ウインドが曇っている場合など、ドライバ自信の操作によって、視界を確保できるような場合には、フロントデフロスタ17、リアデフォッガ18、ワイパデアイサ19およびエアコンブロワ20といった加温装置の作動が抑制される。すなわち、凍結といったように、その解除に時間を要するようなケースをパワーウインドのロックから判定して、ウインドを加温するため、単に温度は低いがドライバの操作によって視界不良の要因を除去できるようなケースでは加温処理の実行が抑制される。これにより、処理の効率化を図ることができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、パワーウインドを作動させることにより、加温処理の前提となる氷結や積雪を検知することが可能となるため、室温センサなど別個設ける必要がない。そのため、簡素な構成で凍結や積雪等を検出し、また、必要に応じてこれを除去することができる。
【0040】
なお、リモートスタート制御装置11は、全てのパワーウインドに対して上述した処理を実行し、いずれか一つのウインドのロックを条件として、加温装置を作動させてもよい。また、リモートスタート制御装置11は、パワーウインドのうち、任意のウインド(例えば、運転席側のウインド)に対して上述した処理を実行し、このパワーウインドのロックを条件として、加温装置を作動させてもよい。
【0041】
また、本発明では、上述した第1の実施形態に示す構成を第2の実施形態の構成に追加し、ワイパブレード(フロントワイパまたはリアワイパ)、パワーウインドのいずれかのロック状態を判断した場合に、各種の加温装置17〜20を始動させるように構成してもよい。かかる構成であっても、ウインドが氷結等により凍結している状態を多重的に判断することができるので、有効に加温処理を行うべき状況を判断することが可能となる。また、加温処理を行うことで、視界不良を事前に解消することができるので、ドライバが車両に乗り込んでから発進するまでの時間短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】車両用遠隔始動装置1の全体構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る車両用遠隔始動装置1によって実行される始動処理の手順を説明するフローチャートである。
【図3】第2の実施形態に係る車両用遠隔始動装置1によって実行される始動処理の手順を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
1 車両用遠隔始動装置
10 受信機
10a 送信機
11 リモートスタート制御装置
12 始動装置
13 エンジン
14 フロントワイパ駆動系
14a フロントワイパ電流検出部
15 リアワイパ駆動系
15a リアワイパ電流検出部
16 ウインド駆動系
16a ウインド電流検出部
17 フロントデフロスタ
18 リアデフォッガ
19 ワイパデアイサ
20 エアコンブロワ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられたワイパブレードをアクチュエータによって駆動するワイパ駆動手段と、
前記アクチュエータに供給される電流を検出するワイパ駆動電流検出手段と、
エンジンの始動を指示する始動信号を送信機から受信する受信手段と、
車両のウインドを加温するウインド加温手段と、
前記受信手段が始動信号を受信したことをトリガとして、前記ワイパ駆動手段に対して前記ワイパブレードの作動を指示するとともに、前記アクチュエータによるワイパブレードの駆動に対応して前記ワイパ駆動電流検出手段によって検出される電流値と、前記アクチュエータの過電流状態を判定する判定値とを比較し、前記アクチュエータに供給される電流が過電流状態であることを条件として、前記ウインド加温手段を作動させる制御手段と
を有することを特徴とする車両用遠隔始動装置。
【請求項2】
前記ワイパ駆動手段は、フロントウインドに取り付けられたワイパブレードをアクチュエータによって駆動するフロントワイパ駆動手段と、リアウインドに取り付けられたワイパブレードをアクチュエータによって駆動するリアワイパ駆動手段とを含み、
前記ワイパ駆動電流検出手段は、フロントウインド側のワイパブレードを駆動するアクチュエータに供給される電流を検出するフロントワイパ駆動電流検出手段と、リアウインド側のワイパブレードを駆動するアクチュエータに供給される電流を検出するリアワイパ駆動電流検出手段とを含み、
前記加温手段は、フロントウインドを加温するフロントウインド加温手段と、リアウインドを加温するリアウインド加温手段とを含み、
前記制御手段は、フロントウインド側のワイパブレードを駆動するアクチュエータに供給される電流値が過電流状態であることを条件として、前記フロントウインド加温手段を作動させ、リアウインド側のワイパブレードを駆動するアクチュエータに供給される電流が過電流状態であることを条件として、前記リアウインド加温手段を作動させることを特徴とする請求項1に記載された車両用遠隔始動装置。
【請求項3】
車両のパワーウインドをアクチュエータによって駆動するパワーウインド駆動手段と、
前記アクチュエータに供給される電流を検出するパワーウインド駆動電流検出手段と、
エンジンの始動を指示する始動信号を送信機から受信する受信手段と、
車両のウインドを加温するウインド加温手段と、
前記受信手段が始動信号を受信したことをトリガとして、前記パワーウインド駆動手段に対して前記パワーウインドの作動を指示するとともに、前記アクチュエータによるパワーウインドの駆動に対応して前記パワーウインド駆動電流検出手段によって検出される電流値と、前記アクチュエータの過電流状態を判定する判定値とを比較し、前記アクチュエータに供給される電流が過電流状態であることを条件として、前記ウインド加温手段を作動させる制御手段と
を有することを特徴とする車両用遠隔始動装置。
【請求項4】
エンジンの始動を指示する始動信号を送信機から受信したことをトリガとして、車両に取り付けられたワイパブレードの作動を指示するとともに、アクチュエータによるワイパブレードの駆動に対応して当該アクチュエータに供給される電流値に基づき、ワイパブレードのロックを判定した場合には、車両のウインドを加温することを特徴とする車両用遠隔始動装置。
【請求項5】
エンジンの始動を指示する始動信号を送信機から受信したことをトリガとして、車両のパワーウインドの作動を指示するとともに、アクチュエータによるパワーウインドの駆動に対応して当該アクチュエータに供給される電流値に基づき、パワーウインドのロックを判定した場合には、車両のウインドを加温することを特徴とする車両用遠隔始動装置。
【請求項6】
エンジンの始動を指示する始動信号を送信機から受信する第1のステップと、
前記始動信号の受信をトリガとして、車両に取り付けられたワイパブレードをアクチュエータによって駆動するワイパ駆動手段に前記ワイパブレードの作動を指示する第2のステップと、
前記アクチュエータによるワイパブレードの駆動に対応して、当該アクチュエータに供給される電流を検出する第3のステップと、
前記第3のステップにおいて検出された電流値と、前記アクチュエータの過電流状態を判定する判定値とを比較し、前記アクチュエータに供給される電流が過電流状態であることを条件として、ウインドを加温する第4のステップと
を有することを特徴とする車両用遠隔始動方法。
【請求項7】
エンジンの始動を指示する始動信号を送信機から受信する第1のステップと、
前記始動信号の受信をトリガとして、車両のパワーウインドをアクチュエータによって駆動するパワーウインド駆動手段に前記パワーウインドの作動を指示する第2のステップと、
前記アクチュエータによるパワーウインドの駆動に対応して、当該アクチュエータに供給される電流値を検出する第3のステップと、
前記第3のステップにおいて検出された電流値と、前記アクチュエータの過電流状態を判定する判定値とを比較し、前記アクチュエータに供給される電流が過電流状態であることを条件として、ウインドを加温する第4のステップと
を有することを特徴とする車両用遠隔始動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−240550(P2006−240550A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61530(P2005−61530)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】