説明

車両用開閉体のロック装置

【課題】製造コストの低廉化を実現できる車両用開閉体のロック装置を提供する。
【解決手段】ロック装置1は、車両用開閉体9の外面側に設けられたハンドル8が初期位置から第1位置に変位することにより、ハウジング71、72の外側に設けられたコントローラ3に電動モータ81が制御されて動作し、切替手段50が車両用開閉体9をアンラッチ状態に切り替えるように構成されており、スイッチ88と、1個のコネクタ71Eとを備える。スイッチ88は、収容室71A内に設けられ、ハンドル8に連結された連結部材6の変位に基づいて、ハンドル8が第1位置に変位したことを検知する。コネクタ71Eは、ハウジング71、72に設けられ、電動モータ81及びスイッチ88と、コントローラ3とを1系統のワイヤハーネス4を介して電気的に接続可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用開閉体のロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の車両用開閉体のロック装置が開示されている。このロック装置は、車両用開閉体を係止するラッチ状態又は係止しないアンラッチ状態とするロック装置本体(符号20参照)と、ロック装置本体に併設され、防水構成とされた収容室を内部に有するハウジング(符号32参照)と、収容室内に収容された電動モータ(符号33参照)と、収容室内に収容され、電動モータに駆動されてロック装置本体を操作することにより、車両用開閉体をアンラッチ状態に切り替える切替手段(符号31、35、34等参照)とを備える。
【0003】
車両用開閉体の外面側には、ユーザが車両用開閉体を開操作するためのハンドル(符号なし)が設けられている。また、ハンドルの近傍、かつハウジングの外部には、ハンドルが開操作されたことを検知するスイッチ回路(符号40参照)が設けられている。
【0004】
ハウジング内のモータは、図4に図示されているように、ワイヤハーネス(符号43参照)を介して車両内に別途設けられる直流電源(符号42参照)と接続されている。図5〜図7に図示されているように、ワイヤハーネスは、スイッチ回路(符号40参照)とハウジング内のモータとを電気的に接続する第1のワイヤハーネスと、スイッチ回路と直流電源とを電気的に接続する第2のワイヤハーネスとからなる。
【0005】
上記構成である従来のロック装置は、ユーザがハンドルを開操作することにより、スイッチ回路内のスイッチ(符号41参照)が通電状態となると、第1のワイヤハーネス及び第2のワイヤハーネスを介して、直流電源から電動モータに給電が行われ、電動モータが動作する。これにより、切替手段がロック装置本体を操作して、車両用開閉体をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−339621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両用開閉体のロック装置には、製造コストの低廉化が求められている。この点、上記従来のロック装置では、ハンドルが開操作されたことを検知するスイッチは、車両用開閉体のロック装置とは別体とされ、車両用開閉体の内部において、ハンドルの近傍、かつハウジングの外部に設けられるので、防水構成のスイッチが必要となる。また、電動モータとスイッチとは、2系統のワイヤハーネスを介して直流電源に接続されるので、ワイヤハーネスやコネクタの数が増加する。このため、上記従来のロック装置は、製造コストの低廉化が難しい。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、製造コストの低廉化を実現できる車両用開閉体のロック装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両用開閉体のロック装置は、車両用開閉体を係止するラッチ状態又は係止しないアンラッチ状態とするロック装置本体と、
前記ロック装置本体に併設され、防水構成とされた収容室を内部に有するハウジングと、
前記収容室内に収容された電動モータと、
前記収容室内に収容され、前記電動モータに駆動されて前記ロック装置本体を操作することにより、前記車両用開閉体を前記アンラッチ状態に切り替える切替手段とを備え、
前記車両用開閉体の外面側に設けられたハンドルが初期位置から第1位置に変位することにより、前記ハウジングの外側に設けられたコントローラに前記電動モータが制御されて動作し、前記切替手段が前記車両用開閉体を前記アンラッチ状態に切り替えるように構成された車両用開閉体のロック装置であって、
前記収容室内に設けられ、前記ハンドルの変位又は前記ハンドルに連結された連結部材の変位に基づいて、前記ハンドルが前記第1位置に変位したことを検知するスイッチと、
前記ハウジングに設けられ、前記電動モータ及び前記スイッチと、前記コントローラとを1系統のワイヤハーネスを介して電気的に接続可能な1個のコネクタとを備えることを特徴とする(請求項1)。
【0010】
本発明の車両用開閉体のロック装置では、ハンドルが第1位置に変位したことを検知するスイッチは、防水構成とされた収容室内に電動モータとともに設けられているので、スイッチを防水構成とする必要が無い。また、電動モータとスイッチとは、ハウジングに設けられた1個のコネクタにより、1系統のワイヤハーネスを介してコントローラと接続可能とされているので、ワイヤハーネスやコネクタの数を削減できる。
【0011】
したがって、本発明の車両用開閉体のロック装置は、製造コストの低廉化を実現できる。
【0012】
また、このロック装置を車両に搭載する際、予めスイッチをハンドルの近傍に組み付けたり、そのスイッチをもう1系統のワイヤハーネスを介して電動モータ又はコントローラと接続する必要がない。このため、このロック装置は、組み付け作業を簡素化でき、生産性の向上を実現できる。
【0013】
さらに、手動式の車両用開閉体のロック装置、すなわち、ハンドルにリンクを介して連結され、スイッチを介さずにユーザのハンドル操作力を利用して動作するロック装置を採用する車両に対して、最小限の仕様変更により、電動モータ駆動式である本発明のロック装置を容易に後付けできる。その結果、車両自体の製造コストの低廉化も実現できる。
【0014】
本発明の車両用開閉体のロック装置において、ハウジングには、ハウジングの外側から収容室内に挿通された状態でハウジングに回転可能に支持される伝達部材が設けられることが好ましい。そして、伝達部材におけるハウジングの外側に突出する一端には、ハンドル又は連結部材と係合する入力部が形成され、伝達部材における収容室内に突出する他端には、スイッチを断接する出力部が形成されていることが好ましい(請求項2)。
【0015】
この場合、このロック装置は、伝達部材の入力部及び出力部によりスイッチを断接させる構成とすることで、製造コストの低廉化を確実に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の車両用開閉体のロック装置の側面図である。
【図2】実施例1の車両用開閉体のロック装置に係り、図1のII−II断面を示す断面図である(ラッチ状態を示す)。
【図3】実施例1の車両用開閉体のロック装置に係り、図1のII−II断面を示す断面図である(アンラッチ状態を示す)。
【図4】実施例1の車両用開閉体のロック装置と、ハンドルとの相対位置関係を示す斜視図である。
【図5】実施例1の車両用開閉体のロック装置に係り、ハンドルとスイッチとの連係動作を説明する部分断面図である。
【図6】実施例2の車両用開閉体のロック装置に係り、図1のII−II断面を示す断面図である。
【図7】実施例2の車両用開閉体のロック装置と、ハンドルとの相対位置関係を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。なお、図1に示すように、テールゲート9側を後側として前後方向、左右方向及び上下方向を規定している。すなわち、テールゲート9の反対側である車両前方を前側と規定している。また、車両前方を向いた状態における左側(図1における紙面奥側)を左側と規定し、車両前方を向いた状態における右側(図1における紙面手前側)を右側と規定している。そして、図2以降の各図に示す前後方向、左右方向及び上下方向は、全て図1の各方向に対応している。
【0018】
(実施例1)
図1に示すように、実施例の車両用開閉体のロック装置1は、車両用開閉体の具体的態様の一例としての自動車のテールゲート9に適用されるものである。ロック装置1は、テールゲート9の下方の車内側に配設されている。そして、ロック装置1は、後述する通り、フォーク11がストライカ79を係止したり、係止を解除することにより、テールゲート9を閉じたまま保持するラッチ状態又はテールゲート9を開くことができるアンラッチ状態とするようになっている。以下、ロック装置1の各構成要素について説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、ロック装置1は、ロック装置本体70と、第1ケース71と、第2ケース72と、電動モータ81と、切替手段50と、マイクロスイッチ88、89と、1個のコネクタ71Eと、伝達部材100とを備えている。第1ケース71及び第2ケース72が本発明の「ハウジング」の一例である。また、マイクロスイッチ88、89のうちのマイクロスイッチ88が本発明のハウジングの「スイッチ」の一例である。
【0020】
ロック装置本体70は、鋼板が折り曲げ加工されてなる取付部材73を有している。取付部材73には、上端側において左右方向に略水平に延在する一対の取付部73B(図1参照)と、下方に凹む凹部73Aとが形成されている。取付部73Bは、テールゲート9の下側端面に締結固定されるためのものである。凹部73Aには、後述するフォーク11及びポール12が収容されている。また、取付部材73には、下端縁中央から上方に向けて深く溝状に切り欠かれた進入口78(図2参照)が形成されている。進入口78には、テールゲート9の開閉に伴ってロック装置1が移動する際、車体に固定されたストライカ79が相対的に進入するようになっている。
【0021】
図1に示すように、第1ケース71は熱可塑性樹脂の射出成形品であり、開口71Bを有する略箱形状のものである。第1ケース71は、取付部材73の上面後端側において、開口71Bを車内側(前方)に向けた状態で併設されている。
【0022】
第2ケース72も熱可塑性樹脂の射出成形品であり、略蓋形状に形成されている。第2ケース72は、取付部材73の上面後端側において、車内側(前方)から開口71Bを塞ぐように第1ケース71に嵌合固定されている。
【0023】
第1ケース71と第2ケース72とは、図示しないシール部材を介して互いに嵌合されることよりその内部に、防水構成とされた収容室71Aを形成している。収容室71A内には、電動モータ81と、切替手段50と、マイクロスイッチ88、89とが収容されている。
【0024】
図2に示すように、第1ケース71及び第2ケース72の左側面には、1個のコネクタ71Eが一体に設けられている。コネクタ71Eは、四角い筒状をなして、左方に突出しており、1系統のワイヤハーネス4を介して、車両内に設けられたコントローラ3に接続されている。ワイヤハーネス4は、複数本の信号ケーブルが束ねられ、その両端に他の電子機器と接続可能なコネクタが設けられた周知の電気配線部材である。コントローラ3は、車両に搭載された電子機器を制御するものであり、後述するように、ロック装置1に対しても、給電や制御信号の送受信を行うようになっている。
【0025】
凹部73A内には、フォーク11及びポール12が進入口78を左右から挟むように設けられている。
【0026】
フォーク11は、進入口78の左側に配設され、取付部材73の底部から凹部73A内に向けて立設された揺動軸14Aに揺動可能に軸支されている。そして、フォーク11は、図示しないコイルバネにより、揺動軸14A回りで反時計方向に揺動するように付勢されている。なお、本実施例における「時計方向」及び「反時計方向」は、図2の断面図に対面した状態を基準としている。
【0027】
フォーク11の進入口78側に位置する部位は、上側凸部11Aと下側凸部11Bとに分岐している。そして、上側凸部11Aと下側凸部11Bとの間に形成された凹部11Cには、進入口78内に進入したストライカ79が収まるようになっている。図2に示す状態が、フォーク11が進入口78の底部でストライカ79を係止することによりテールゲート9が閉じたまま保持されるラッチ状態である。上側凸部11Aのポール12に対面する先端側には、後述するストッパ部12Aと当接可能なラッチ面19Aが形成されている。フォーク11の外周縁は、上側凸部11Aの先端から時計方向に円弧状に延び、その途中にハーフラッチ面19Bが段状に形成された湾曲部11Dとされている。
【0028】
ポール12は、進入口78の右側に配設され、取付部材73の底部から凹部73A内に向けて立設された揺動軸14Bに揺動可能に軸支されている。そして、ポール12は、図示しないコイルバネにより、揺動軸14B回りで時計方向に揺動するように付勢されている。
【0029】
ポール12の進入口78側に位置する部位は、フォーク11の上側凸部11Aに向けて突出するように形成され、その先端側がストッパ部12Aとされている。ストッパ部12Aは、フォーク11が進入口78の底部でストライカ79を係止した状態において、上側凸部11Aのラッチ面19Aに当接することにより、フォーク11を反時計方向に揺動させないように固定してラッチ状態とするようになっている。なお、説明は簡略するが、ストッパ部12Aは、フォーク11が進入口78の底部の手前でストライカ79を係止した状態において、ハーフラッチ面19Bに当接することにより、テールゲート9をハーフラッチ状態とすることができる。
【0030】
ポール12の揺動軸14Bより上方に位置する部位は、ストッパ部12Aと分岐しつつ、第1ケース71及び第2ケース72の下面に向けて突出するように形成され、その先端側が被当接部12Bとされている。被当接部12Bは、詳細は後述するが、切替レバー51の一端である当接部51Bが当接することにより、反時計方向に押されて変位するようになっている。
【0031】
図3に示すように、被当接部12Bが反時計方向に変位すれば、ポール12は、コイルバネの付勢力に抗しつつ、揺動軸14B回りで反時計方向に揺動するようになっている。この際、ストッパ部12Aがフォーク11のラッチ面19Aから離反するので、ポール12がフォーク11を開放する。このため、フォーク11がコイルバネの付勢力により揺動軸14A回りで反時計方向に揺動して、ストライカ79を進入口78から離脱する方向に変位させる。その結果、フォーク11は、進入口78内においてストライカ79を係止しない状態に切り替わり、テールゲート9はアンラッチ状態とされる。この際、テールゲート9は、完全に閉じた状態から少し開いた状態に変位する。
【0032】
逆に、ストライカ79が進入口78内に進入する場合には、フォーク11及びポール12が上述の動作とは逆に動作する。そして、図2に示すように、ストライカ79が進入口78の底部まで進入すれば、フォーク11は、元の状態まで揺動し、ストッパ部12Aがラッチ面19Aに当接してラッチ状態に戻る。
【0033】
図2に示すように、電動モータ81は、収容室71Aの左側に配設されている。電動モータ81の回転軸には、ウォームギヤ82Aが一体回転可能に固定されている。電動モータ81には、収容室71A内に配設された細長い金属薄板製の端子91、92の一端側が電気的に接続されている。また、端子91、92の他端側は、コネクタ71E内に突出する入出力端子91A、92Aとされている。電動モータ81は、ワイヤハーネス4及び端子91、92を介して、外部のコントローラ3から給電される。
【0034】
切替手段50は、収容室71Aの右側に収容されており、切替レバー51と、ギヤ機構82とを有している。
【0035】
切替レバー51は、熱可塑性樹脂の射出成形により、上方に扇型歯車82Dが形成され、中央に軸穴51Aが形成され、下方に当接部51Bが形成された細長い板形状のものである。
【0036】
軸穴51Aは、第1ケース71の内側から前方(図2における紙面手前側)に向けて凸設された揺動軸72Cに挿通されている。このため、切替レバー51は、揺動軸72C回りで揺動可能となっている。図2は、初期状態の切替レバー51を示している。また、図3は、最大揺動状態の切替レバー51を示している。
【0037】
図2に示すように、当接部51Bは、第1ケース71及び第2ケース72の下面側に形成された当接部用開口72Dよりも下方に突出し、被当接部12Bの左側に延在している。
【0038】
扇型歯車82Dの上方、すなわち、収容室71Aの上方右側には、小径ギヤ82C及びウォームホイール82Bが配設されている。前方に位置する小径ギヤ82Cと後方(図2における紙面奥側)に位置するウォームホイール82Bとは同軸であり、熱可塑性樹脂の射出形成や金属材料の切削加工等により一体成型されている。小径ギヤ82C及びウォームホイール82Bは、第1ケース71の内側から前方に向けて凸設された回転軸75によって、回転可能に軸支されている。小径ギヤ82Cは、扇型歯車82Dと噛み合っている。一方、ウォームホイール82Bは、ウォームギヤ82Aと噛み合っている。
【0039】
ウォームホイール82Bの後面側には、リターンスプリング83が配設されている。リターンスプリング83の一端は、第1ケース71からウォームホイール82Bの後面側に向けて凸設された第1ケース側係止部83Aに係止されている。他方、リターンスプリング83の他端は、ウォームホイール82Bの後面側から第1ケース71に向けて凸設されたウォームホイール側係止部83Bに係止されている。このため、ウォームホイール82Bは、リターンスプリング83により時計方向に回転するように付勢されている。
【0040】
ウォームギヤ82Aと、ウォームホイール82Bと、小径ギヤ82Cと、扇型歯車82Dと、リターンスプリング83とを有してギヤ機構82が構成されている。そして、電動モータ81と、ギヤ機構82とは、後述する通り、切替レバー51を初期状態(図2参照)と最大揺動状態(図3参照)との間で往復動作させる。
【0041】
図1に示すように、テールゲート9においてロック装置1の上方には、テールゲート9を開操作するためのハンドル8が外部に露出する状態で設けられている。ハンドル8の前方は、テールゲート9の内側に延在しており、テールゲート9の内側に設けられた図示しない支持部材に回動可能に支持されている。ハンドル8の前端部には、金属棒材が曲げ加工されてなる連結部材6の上端側が連結されている。連結部材6は、第2ケース72に向かって下方に延びている。なお、図2及び図5では、ハンドル8を模式的に図示しているが、ロック装置1とハンドル8との相対位置関係は、正確には図4に示す通りである。
【0042】
図1、図2及び図4に示すように、伝達部材100は円柱軸体であり、第2ケース72の前面側から収容室71A内に挿通された状態で第2ケース72に回転可能に支持されている。伝達部材100における第2ケース72の前面側に突出する前端には、細長板形状の入力部101が形成されている。入力部101は、伝達部材100から右斜め上方に離れるように突出しており、その先端部には、連結部材6の下端側が連結されている(図2では、入力部101は紙面手前側に位置している)。その一方、伝達部材100における収容室71A内に突出する後端には、細長板形状の出力部102が形成されている。出力部102は、伝達部材100から左斜め下方に離れるように突出している。
【0043】
マイクロスイッチ88は、非防水型の安価な規格品であり、出力部102と隣接するように収容室71Aの左側上方に配設されている。マイクロスイッチ88には、図2に示すように、収容室71A内に配設された細長い金属薄板製の端子95、96の一端側が電気的に接続されている。また、端子95、96の他端側は、コネクタ71E内に突出する入出力端子95A、96Aとされている。
【0044】
ハンドル8が初期位置(図1、図2及び図4に示す位置)にある場合、出力部102がレバー88Aから離反しており、マイクロスイッチ88は端子95、96を導通させない状態となっている。そして、ユーザがハンドル8を図5に示すように押し上げて、テールゲート9の開操作をすると、連結部材6が下降して、入力部101と伝達部材100と出力部102とが反時計周りに一体に回動し、出力部102がレバー88Aを押すことにより、マイクロスイッチ88が端子95、96を導通させる状態に切り替わる。その結果、マイクロスイッチ88は、ワイヤハーネス4を介して、端子95、96を導通させる状態であることを外部のコントローラ3に伝達する。図5に示すハンドル8の位置が本発明の「第1位置」である。
【0045】
一方、収容室71Aの下方、かつフォーク11の湾曲部11Dの上方には、マイクロスイッチ89が配設されている。マイクロスイッチ89には、図2に示すように、収容室71A内に配設された細長い金属薄板製の端子93、94の一端側が電気的に接続されている。また、端子93、94の他端側は、コネクタ71E内に突出する入出力端子93A、94Aとされている。
【0046】
フォーク11が図2に示す状態となっている場合、湾曲部11Dがレバー89Aを押しており、マイクロスイッチ89が端子93、94を導通させる状態となっている。そして、図3に示すように、フォーク11が揺動軸14A回りで反時計方向に揺動すれば、レバー89Aが湾曲部11Dから離れることにより、マイクロスイッチ89が端子93、94を導通させない状態に切り替わる。その結果、マイクロスイッチ89は、ワイヤハーネス4を介して、端子93、94を導通させない状態であることを外部のコントローラ3に伝達する。
【0047】
このような構成である実施例のロック装置1では、ハンドル8が図1、図2及び図4に示す初期位置にある場合において、ユーザがハンドル8を開操作してテールゲート9を開こうとする場合、下記のようにして、切替手段50が自動によりロック装置本体70を操作して、テールゲート9をアンラッチ状態とする。
【0048】
まず、ユーザがテールゲート9を開こうとして、ハンドル8を図5に示す第1位置まで押し上げると、上述したように、その動作が、連結部材6、入力部101及び伝達部材100を介して出力部102に伝達され、出力部102がレバー88Aを押す。その結果、マイクロスイッチ88が端子95、96を導通させる状態に切り替わり、その情報がワイヤハーネス4を介してコントローラ3に伝達される。
【0049】
これに対応して、コントローラ3は、ロック装置1の制御を開始する。具体的には、ワイヤハーネス4及び端子91、92を介して、電動モータ81に電力を供給してウォームギヤ82Aを回転させる。これにより、ウォームギヤ82Aと噛合するウォームホイール82Bが反時計方向に回転し、小径ギヤ82Cもウォームホイール82Bと一体に反時計方向に回転する。そして、図3に示すように、小径ギヤ82Cと噛み合う扇型歯車82Dを介して、切替レバー51が揺動軸72C回りで時計方向に揺動し、当接部51B及び被当接部12Bを介して、ポール12に作用する。
【0050】
その結果、上述の通り、ポール12がフォーク11を開放し、フォーク11が揺動軸14A回りで反時計方向に揺動する。その結果、フォーク11は、進入口78内においてストライカ79を係止しない状態に切り替わり、テールゲート9はアンラッチ状態とされる。
【0051】
この際、フォーク11の反時計方向の揺動により、マイクロスイッチ89が端子93、94を導通させない状態に切り替わると、その情報がワイヤハーネス4を介してコントローラ3に伝達される。その結果、コントローラ3は、テールゲート9がアンラッチ状態になっていると判断できる。
【0052】
そして、ユーザがハンドル8を図1、図2及び図4に示す初期位置まで戻すと、その動作が、連結部材6、入力部101及び伝達部材100を介して出力部102に伝達され、出力部102がレバー88Aから離反する。その結果、マイクロスイッチ88が端子95、96を導通させない状態に復帰して、その情報がワイヤハーネス4を介してコントローラ3に伝達される。
【0053】
これに対応して、コントローラ3は、電動モータ81への電力の供給を停止する。これにより、切替レバー51は、リターンスプリング83により時計方向に付勢されたウォームホイール82B及び小径ギヤ82Cに駆動されて、図3に示す最大揺動状態から逆方向に揺動して、図2に示す初期状態へと復帰する。このため、ポール12も逆方向に揺動し、ストッパ部12Aがフォーク11の外周面に付勢されて、いつでもフォーク11を固定可能な状態になる。その後、ユーザがテールゲート9を閉めようとすれば、ストライカ79が進入口78に進入して、フォーク11を逆方向に揺動させるので、フォーク11及びポール12が上述とは逆に動作する。そして、ストライカ79が進入口78の底部まで進入すれば、図2に示すラッチ状態へと戻る。
【0054】
この際、フォーク11の時計方向の揺動により、マイクロスイッチ89が端子93、94を導通させる状態に切り替わると、その情報がワイヤハーネス4を介してコントローラ3に伝達される。その結果、コントローラ3は、テールゲート9がラッチ状態になっていると判断できる。
【0055】
<作用効果>
実施例1のロック装置1では、ハンドル8が第1位置(図5に示す位置)に変位したことを検知するマイクロスイッチ88は、防水構成とされた収容室71A内に電動モータ81とともに設けられているので、マイクロスイッチ88を防水構成とする必要が無い。また、電動モータ81とマイクロスイッチ88とは、第1ケース71及び第2ケース72に設けられた1個のコネクタ71Eにより、1系統のワイヤハーネス4を介してコントローラ3と接続可能とされているので、ワイヤハーネスやコネクタの数を削減できる。
【0056】
したがって、実施例1のロック装置1は、製造コストの低廉化を実現できる。
【0057】
また、このロック装置1を車両に搭載する際、予めマイクロスイッチ88をハンドル8の近傍に組み付けたり、そのマイクロスイッチ88をワイヤハーネス4とは別系統のワイヤハーネスを介して電動モータ81又はコントローラ3と接続する必要がない。このため、このロック装置1は、組み付け作業を簡素化でき、生産性の向上を実現できる。
【0058】
さらに、手動式の車両用開閉体のロック装置、すなわち、ハンドルにリンクを介して連結され、スイッチを介さずにユーザのハンドル操作力を利用して動作するロック装置を採用する車両に対して、最小限の仕様変更により、電動モータ駆動式である実施例1のロック装置1を容易に後付けできる。最小限の仕様変更の具体例としては、既存のハンドルを実施例1のハンドル8としてそのまま利用し、ハンドルに連結されていた既存のリンクを連結部材6に交換して、ハンドル8とロック装置1とを連結部材6により連結する構成が挙げられる。この場合、連結部材6を金属丸棒の曲げ加工により製造すれば、ハンドル8とロック装置1との距離に応じて、最適な長さの連結部材6を安価に製造できる。その結果、車両自体の製造コストの低廉化も実現できる。
【0059】
また、このロック装置1は、伝達部材100の入力部101及び出力部102によりマイクロスイッチ88を断接させる構成とすることで、製造コストの低廉化を確実に実現できる。
【0060】
(実施例2)
図6及び図7に示すように、実施例2のロック装置2は、実施例1のロック装置1における連結部材6を省略した構成である。実施例2のその他の構成は全て実施例1と同様であるので、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0061】
実施例2のロック装置2では、第1ケース71及び第2ケース72の上部がハンドル8に向かって膨出している。それに伴って、収容室71Aもハンドル8に向かって膨出しており、その膨出する範囲にマイクロスイッチ88が配設されている。
【0062】
伝達部材200は、第1ケース71の後面側から収容室71A内に挿通された状態で第1ケース71に回転可能に支持されている。伝達部材200における第1ケース71の後面側に突出する後端には、細長板形状の入力部201が形成されている。入力部201は、伝達部材200から左斜め上方に離れるように突出しており、その先端部には、円柱軸形状の係合軸部201Aが後方に向けて突出するように設けられている(図6では、入力部201は紙面奥側に位置している)。その一方、伝達部材200における収容室71A内に突出する前端には、細長板形状の出力部202が形成されている。出力部202は、伝達部材200から右斜め下方に離れるように突出している。
【0063】
ハンドル8の前端部には、係合軸部201Aを挟むように二股に突出する係合フォーク8Aが設けられている。ハンドル8が初期位置(図6及び図7に示す位置)にある場合、出力部202がレバー88Aから離反しており、マイクロスイッチ88は端子95、96を導通させない状態となっている。そして、ユーザがハンドル8を第1位置(図6の8’参照)まで押し上げて、テールゲート9の開操作をすると、係合フォーク8Aが係合軸部201Aを押し下げて、入力部201と伝達部材200と出力部202とが時計周りに一体に回動し、出力部202がレバー88Aを押すことにより、マイクロスイッチ88が端子95、96を導通させる状態に切り替わる。
【0064】
このような構成である実施例2のロック装置2も、実施例1のロック装置1と同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
また、このロック装置2は、連結部材6を省略して部品点数を削減しているので、製造コストの低廉化を確実に実現できる。
【0066】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0067】
例えば、スイッチは、フォトインタラプタ又は近接センサ等であってもよい。
【0068】
また、本発明のロック装置をテールゲート以外の車両用開閉体、例えば、サイドドアに適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は車両用開閉体に利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
9…車両用開閉体(テールゲート)
70…ロック装置本体
71、72…ハウジング(71…第1ケース、72…第2ケース)
71A…収容室
81…電動モータ
50…切替手段
8…ハンドル
3…コントローラ
1、2…車両用開閉体のロック装置
6…連結部材
88…スイッチ(マイクロスイッチ)
4…ワイヤハーネス
71E…コネクタ
100、200…伝達部材
101、201…入力部
102、202…出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用開閉体を係止するラッチ状態又は係止しないアンラッチ状態とするロック装置本体と、
前記ロック装置本体に併設され、防水構成とされた収容室を内部に有するハウジングと、
前記収容室内に収容された電動モータと、
前記収容室内に収容され、前記電動モータに駆動されて前記ロック装置本体を操作することにより、前記車両用開閉体を前記アンラッチ状態に切り替える切替手段とを備え、
前記車両用開閉体の外面側に設けられたハンドルが初期位置から第1位置に変位することにより、前記ハウジングの外側に設けられたコントローラに前記電動モータが制御されて動作し、前記切替手段が前記車両用開閉体を前記アンラッチ状態に切り替えるように構成された車両用開閉体のロック装置であって、
前記収容室内に設けられ、前記ハンドルの変位又は前記ハンドルに連結された連結部材の変位に基づいて、前記ハンドルが前記第1位置に変位したことを検知するスイッチと、
前記ハウジングに設けられ、前記電動モータ及び前記スイッチと、前記コントローラとを1系統のワイヤハーネスを介して電気的に接続可能な1個のコネクタとを備えることを特徴とする車両用開閉体のロック装置。
【請求項2】
前記ハウジングには、前記ハウジングの外側から前記収容室内に挿通された状態で前記ハウジングに回転可能に支持される伝達部材が設けられ、
前記伝達部材における前記ハウジングの外側に突出する一端には、前記ハンドル又は前記連結部材と係合する入力部が形成され、
前記伝達部材における前記収容室内に突出する他端には、前記スイッチを断接する出力部が形成されている請求項1記載の車両用開閉体のロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−7341(P2012−7341A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142971(P2010−142971)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(591038587)株式会社アンセイ (48)
【Fターム(参考)】