説明

車両用電力供給装置

【課題】2以上の電力供給端子を有している場合に、適切な電力出力シーケンスで電力供給を可能にした車両用電力供給装置を提供する。
【解決手段】基準電圧生成回路11は、電力供給手段A1に電力供給される前に予め与えられたIG信号から基準電圧を生成し、コンパレータ15は電力供給手段A1の供給電圧による分圧電圧と基準電圧生成回路11の基準電圧とを比較し、電力供給手段A2はコンパレータ15の比較結果に基いて出力端子3fから電力供給を開始する。この場合、コンパレータ15には予め基準電圧が与えられているため、比較結果を誤ることなく正確な比較結果を出力できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を生成して車両内に供給する車両用電力供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電源は、瞬間的に立ち上がるわけではなく徐々に立ち上がる。電源投入時点から規定電圧に達するまでの間、不安定な電源電圧により様々な回路が動作してしまうため、この動作を回避するためパワーオンリセット回路が提供されている(例えば、特許文献1〜3参照)。特許文献1記載の技術思想によれば、電源電圧の低下により所定の基準電圧が出力されなくなったことを検出すると、基準電圧低下時の制御論理を固定するための信号として検出信号を出力している。また、特許文献2記載の技術思想によれば、レベル変換回路の出力信号を電源投入時所定の非活性状態に設定する初期化回路を設けている。また、特許文献3記載によれば、電源立ち上げ時にパワー素子を安定に保つためのリセットパルス出力回路を設けた構成を開示している。
【0003】
他方、ユーザが車両の運転を開始するときにはイグニッションキーを操作することで動作開始指示が車両用ECU(Engine Control Unit)に与えられる。車両用ECUは、外部接続された例えばバッテリ電源により動作することになるものの、ユーザが動作開始指示したときに車両用ECUの各主要部の誤動作を防ぐため、車両用電力供給装置は各主要部に対する電力出力シーケンスを守らなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−189927号公報
【特許文献2】特開2003−133935号公報
【特許文献3】特開平8−97695号公報
【特許文献4】特開2005−189048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、実験、評価、検査など特殊状態で使用するときには、外部接続されるバッテリ電源など、ユーザ実使用時の動作環境が整わないこともあり、当該動作環境の相違によって電力出力シーケンスを守れなくなることがある。前記特殊状態で使用するときでも電力出力シーケンスが守られた状態で、その他の実験、評価、検査などに車両用ECUを使用したいという業者などの要望があり、このような場合でも適切な電力出力シーケンスで電力供給する必要がある。
【0006】
また、前記のように特殊状態で使用しない場合であっても、通常時に電源が車両用電力供給装置に直接接続されない構成を適用した場合には、暗電流を出力端子から供給可能とはならないため同様に適切な電力出力シーケンスで電力供給できない場合がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、2以上の電力供給端子を有している場合に、適切な電力出力シーケンスで電力供給可能にした車両用電力供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、第1電力供給手段は電源から電力生成して第1電力供給端子から電力供給するが、基準電圧生成手段は電源が当該第1電力供給手段に供給される前に電源によって生成された信号から基準電圧を生成する。比較手段が第1電力供給手段の供給電圧と基準電圧生成手段の基準電圧とを比較し、第2電力供給手段は比較手段の比較結果に基いて第2電力供給端子から電力供給を開始する。
【0009】
この場合、比較手段は、予め基準電圧が与えられるため比較結果を誤ることなく正確な比較結果を出力することができ、第1電力供給手段が第1電力供給端子から電力供給した後、第2電力供給手段は比較手段の比較結果に基いて第2電力供給端子から適切に電力供給を開始できる。請求項2ないし5記載の発明のように、電源によって生成された信号をイグニッション信号、ACC信号、WAKEUP信号、リレー信号とすると良い。
【0010】
請求項6記載の発明によれば、比較手段はその比較対象とする基準電圧を、第1電力供給手段に対する電源供給が安定した後、基準電圧生成手段の基準電圧に代えて、安定した電源により生成された基準電圧を比較対象として比較するため、たとえ基準電圧生成手段が生成する基準電圧にノイズが重畳される懸念が生じたとしても、比較手段は比較結果を誤ることなく正確な比較結果を出力することができ、第2電力供給手段は第2電力供給端子から適切に電力供給することができる。
【0011】
請求項7記載の発明によれば、基準電圧生成手段は、電源によって生成された信号と電源との並列出力により基準電圧を生成するため、たとえ電源によって生成された信号にノイズが重畳され、基準電圧生成手段が生成する基準電圧に当該ノイズが重畳される懸念が生じたとしても、比較手段は比較結果を誤ることなく正確な比較結果を出力することができ、第2電力供給手段は適切に電力供給することができる。
【0012】
請求項8記載の発明によれば、基準電圧生成手段は、第1電力供給端子から電力供給するための第2基準電圧を生成する第2基準電圧生成手段と共用されているため、回路構成要素を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図2】IG信号を生成する信号生成回路の構成図
【図3】基準信号生成回路の構成例を示す回路図
【図4】第2電力供給手段の電気的構成を示す回路図
【図5】通常動作時の各ノードの電圧を示すタイミングチャート
【図6】特殊状態時の各ノードの電圧を示すタイミングチャート
【図7】比較例を示す図6相当図
【図8】本発明の第2実施形態について示す図1相当図
【図9】ロジック電源を生成するための回路図
【図10】本発明の第3実施形態について示す図1相当図
【図11】図3相当図
【図12】本発明の第4実施形態について示す図1相当図
【図13】本発明の第5実施形態について示す図3相当図
【図14】本発明の第6実施形態について示す図1相当図
【図15】図6相当図
【図16】本発明の第7実施形態について示す図6相当図
【図17】本発明の第8実施形態について示す図1相当図
【図18】図6相当図
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の車両用電力供給装置を、車両ECU内の集積回路装置に適用した第1実施形態について図1ないし図7を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、ECU(Engine Control Unit)内の電気的構成について、本実施形態の特徴部分を主としたブロック図によって概略的に示している。この図1に示すように、車両用ECU1には、バッテリ(電源)2から電源供給可能に構成される集積回路装置3、スイッチ制御回路4などが搭載されており、当該集積回路装置3から電力供給を受けて各種メモリ(RAM16(揮発性メモリ)、ROM18)、CPU17、その周辺回路19が動作するように構成される。バッテリ2は、スイッチ制御回路4、信号生成回路5に電源供給する。
【0016】
図2(a)は信号生成回路の構成図を示しており、図2(b)は、ACC信号、IG信号、STA_ON信号の出力タイミングチャートを示している。信号生成回路5は、ユーザによってイグニッションキー5bがオン操作されると、イグニッションスイッチ5aが接点を順次接続し、バッテリ2からの通電に応じてACC信号(アクセサリ信号)、IG信号(イグニッション信号)、STA_ON信号を順次出力する(図2(b)の前半参照)。
【0017】
逆に、ユーザによりイグニッションキー5bがオフ操作されると、イグニッションスイッチ5aが接点を順次非接続とし、バッテリ2からの通電に応じてSTA_ON信号、IG信号、ACC信号を順次非出力とする(図2(b)の後半参照)。この信号生成回路5は、車両のエンジンを起動させるときに端子3aを通じてIG信号を出力する。IG信号は、信号生成回路5がIG信号を出力するタイミング直後において、過渡的に変動する信号電圧であると共に定常的には直流電圧となる。
【0018】
図1に示すように、IG信号は端子3aを通じて集積回路装置3内の論理回路6に与えられる。論理回路6はIG信号が入力されるとIGSWout端子3bを通じてスイッチ制御回路4にオン信号を出力する。集積回路装置3内では、IG信号は集積回路装置3内の他回路の入力信号として入力される。スイッチ制御回路4は、IGSWout端子3bを通じてオン信号を入力するとメインリレー7をオン通電制御する。
【0019】
ユーザが通常使用するときには、バッテリ2はBATT端子3dに接続されると共に、メインリレー7を介してVB端子3cに接続されている。このため、メインリレー7がオフしているときでもバッテリ2の電源がBATT端子3dに供給される。スイッチ制御回路4がメインリレー7をオン通電制御すると、バッテリ2からVB端子3cに電源供給されるようになる。
【0020】
次に、集積回路装置3内の構成を説明する。集積回路装置3内には、論理回路6の他に、第1電力供給手段A1、第2電力供給手段A2が構成されている。電力供給手段A1は、基準電圧生成回路9、10、オペアンプ12、13、出力トランジスタQ1、Q2、抵抗R1、R2aおよびR2bを組み合わせて構成されている。
【0021】
また、電力供給手段A2は、基準電圧生成回路11、オペアンプ14、コンパレータ15、出力トランジスタQ3、オンオフ制御トランジスタQ4、抵抗R3およびR4を組み合わせて構成されている。出力トランジスタQ1〜Q3は例えばNPN形のバイポーラトランジスタにより構成されており、オンオフ制御トランジスタQ4は例えばNPN形のバイポーラトランジスタにより構成されている。尚、トランジスタQ1〜Q4をそれぞれFETなどで構成しても良い。
【0022】
基準電圧生成回路9、オペアンプ12、出力トランジスタQ1のコレクタ(入力端子)にはVB端子3cのVB電源が与えられるように構成されている。基準電圧生成回路10、オペアンプ13、出力トランジスタQ2のコレクタ(入力端子)には、バッテリ2からBATT端子3dを通じてバッテリ電源が供給されるように構成されている。また、オペアンプ14、出力トランジスタQ3のコレクタ(入力端子)、コンパレータ15には、VB端子3cのVB電源が与えられるように構成されている。
【0023】
基準電圧生成回路11には電源として論理回路6からIG信号が与えられている。なお、論理回路6は端子3aから基準電圧生成回路11の電源に直結してIG信号を出力する。基準電圧生成回路9が生成する基準電圧の出力は、オペアンプ12および14の非反転入力端子(比較対象端子)に与えられている。基準電圧生成回路10が生成する基準電圧(第2基準電圧)の出力はオペアンプ13の非反転入力端子(比較対象端子)に与えられている。基準電圧生成回路11が生成する基準電圧の出力は、コンパレータ15の非反転入力端子に印加されている。オペアンプ12の出力は、出力トランジスタQ1のベース(制御端子)に与えられており、オペアンプ13の出力は、出力トランジスタQ2のベース(制御端子)に与えられている。
【0024】
出力トランジスタQ1およびQ2のエミッタ(出力端子)は共通接続されており、この共通接続ノードとグランドとの間には抵抗R1、R2a、R2bが直列接続されている。出力トランジスタQ1およびQ2のエミッタと抵抗R1との共通接続ノードは出力端子(Vsub端子)3eに接続されており、出力端子3eから信号出力する。ECU1には、車両内の各種制御を行うためのRAM16、CPU17、ROM18、周辺回路19が搭載されており、出力端子3eの直流電力出力はRAM16に与えられる。
【0025】
抵抗R1およびR2aと抵抗R2bとによる分圧電圧は、オペアンプ12および13の反転入力端子に与えられており、抵抗R1と抵抗R2aおよびR2bとによる分圧電圧はコンパレータ15の反転入力端子に与えられている。
【0026】
オペアンプ14の出力は、出力トランジスタQ3のベース(制御端子)に与えられており、当該出力トランジスタQ3のエミッタ(出力端子)とグランドとの間には抵抗R3〜R4が直列接続され、トランジスタQ3のエミッタと抵抗R3との共通接続ノードに出力端子(Vmain端子)3fが接続されており、当該出力端子3fから信号出力する。
【0027】
抵抗R3およびR4の分圧電圧は、オペアンプ14の反転入力端子に与えられている。コンパレータ15の出力は、オンオフ制御トランジスタQ4のベース(制御端子)に与えられている。このオンオフ制御トランジスタQ4のコレクタは出力トランジスタQ3のベース(制御端子)に接続されており、エミッタはグランドに接続されている。出力端子3fの直流電力出力は、CPU17、ROM18、周辺回路19など、ECU1内のRAM16以外の電気的構成に与えられる。
【0028】
図3は、基準電圧生成回路11の電気的構成を概略的に示している。この図3に示すように、基準電圧生成回路11は、電圧入力端子11aに入力されたIG信号に基いて基準電圧を生成して出力端子11bから出力する。
【0029】
図3に示すように、基準電圧生成回路11は、PNP形トランジスタQ6、Q8、NPN形トランジスタQ5、Q7、抵抗R5〜R10、ツェナーダイオードD1などの半導体素子(電気的素子)を組み合わせて構成されている。
【0030】
電圧入力端子11aのノードN1とグランドとの間には、抵抗R5、トランジスタQ5のコレクタ−エミッタが直列接続されている。抵抗R5とトランジスタQ5のコレクタとの共通接続点には、トランジスタQ7のベースが接続されている。ノードN1とグランドとの間には、トランジスタQ6のエミッタ−コレクタ、トランジスタQ7のコレクタ−エミッタ、抵抗R7が直列接続されている。トランジスタQ7のエミッタと抵抗R7との共通接続点はトランジスタQ5のベースに接続されている。トランジスタQ6のベース−コレクタ間には抵抗R6が接続されている。
【0031】
ノードN1とグランドとの間には、トランジスタQ8のエミッタ−コレクタ、抵抗R8〜R10が直列接続されている。また、抵抗R8およびR9の共通接続点にはツェナーダイオードD1のカソードが接続されており、そのアノードはグランドに接続されている抵抗R9およびR10の共通接続点は出力端子11bに接続されている。トランジスタQ6およびQ8のベースは共通接続されている。
【0032】
この基準電圧生成回路11は、電圧入力端子11aからIG信号が入力されると、当該IG信号に応じた信号を出力端子11bから出力する。IG信号として直流電圧が印加されたときには、抵抗R5、トランジスタQ7のベース−エミッタ、抵抗R7およびトランジスタQ5のベース−エミッタを通じて電流が流れるため、トランジスタQ5およびQ7並びに抵抗R7に基準電流が流れる。この基準電流源に直列接続されたトランジスタQ6には所定の定電流が流れることになり、このトランジスタQ6とカレントミラー対となるトランジスタQ8にも抵抗R8〜R10を通じて定電流が流れる。
【0033】
この定電流は抵抗R9およびR10と共にツェナーダイオードD1にも流れる。このツェナーダイオードD1が電圧を安定化する。この定電圧化された電圧は、抵抗R9およびR10によって分圧され、当該分圧電圧が出力端子11bから出力される。これにより、基準電圧生成回路11は一定の直流電圧を基準電圧として出力端子11bから出力する。基準電圧生成回路9、10は、基準電圧生成回路11とほぼ同一構成とされている。
【0034】
図4は、電圧Vmainを供給する電力供給部分の回路構成の詳細を示している。この図4の左端に示すように、抵抗R11〜R13、NPN形トランジスタQ9、Q11、PNP形トランジスタQ10を組み合わせた基準電流源が、VB電圧を電力供給源として構成されている。
【0035】
コンパレータ15は、当該基準電流源を構成するトランジスタQ10にカレントミラー接続されたトランジスタQ12、Q13を備える。コンパレータ15は、差動入力トランジスタ対Q15、Q16、能動負荷Q17、Q18、出力段トランジスタQ19を備え、その出力はトランジスタQ4のベースに与えられる。
【0036】
図4においては、オペアンプ14は、主オペアンプ14aの出力段トランジスタ14b、14cのみ独立して図示しており、前記基準電流源を構成するトランジスタQ10にカレントミラー対となるPNP形トランジスタQ14、当該トランジスタQ14に直列接続されたNPN形トランジスタ14bを備える。なお、前述した回路構成は、コンデンサ、抵抗など電圧安定化素子が本実施形態の特徴部分として関係しないため省略しているが適宜付加された回路構成を適用しても良い。
【0037】
まず、ユーザが集積回路装置を実際に使用するときの実使用時の動作について説明する。図5は、実使用時における各ノードの時間経過に伴う電圧変化をタイミングチャートにより示している。
【0038】
ユーザが、ECU1を通常使用するときには、バッテリ2がBATT端子3dに直接接続されている。図5に示すように、集積回路装置3は、ユーザの実使用時にはバッテリ2からBATT端子3dに結線されておりBATT端子3dを通じて電源供給を受ける。すると、基準電圧生成回路10、オペアンプ13、トランジスタQ2のコレクタには、BATT端子3dの電圧が印加されるため出力端子3eから電圧Vsubを出力できる(図5(f)参照)。この電圧Vsubは、RAM16に供給される電圧であり、当該RAM16は情報を保持するため暗電流を消費する。つまり、バッテリ2の電圧が集積回路装置3のBATT端子3dに供給されることにより、イグニッションスイッチ5aが例えばオフ状態であってもRAM16に電力が供給されることになり、RAM16は情報を保持し続けることができる。
【0039】
イグニッションキー5bが操作されイグニッションスイッチ5aがオンすると、信号生成回路5がIG信号を出力し、当該IG信号は端子3aを通じて論理回路6に与えられる。論理回路6はIGSWout端子3bを通じてIG信号をスイッチ制御回路4に出力する。
【0040】
スイッチ制御回路4は、イグニッションスイッチ5aがオンされてから遅延時間DTだけ遅れてメインリレー7をオン状態とする。この場合、スイッチ制御回路4はIGSWout端子3bを通じてIG信号が定常的に与えられた時点から遅延時間DTだけ遅れてメインリレー7をオン状態とする(図5(d)参照)。
【0041】
メインリレー7がオン状態となると、集積回路装置3のVB端子3cにはバッテリ2から電源が与えられるようになる。VB端子3cに電源電圧が与えられると、基準電圧生成回路9、オペアンプ12および14、トランジスタQ1およびQ3のコレクタ、コンパレータ15に電圧が与えられるようになり、出力端子3eから出力可能な電流(電力)が増加すると共に、電圧Vmainが出力端子3fを通じて供給開始される(図5(e)、図5(g)参照)。つまり、イグニッションスイッチ5aがオンされると、その後、集積回路装置3は、出力端子3fから電圧Vmainを他のデバイス(CPU17、ROM18、周辺回路19など)に供給開始できる。
【0042】
集積回路装置3は、通常動作時にはこのような通常モード(通常状態)のシーケンスで動作するが、バッテリ2をBATT端子3dに直接接続せず、当該バッテリ2に代えて外部に例えば検査電源(図1では符号2を付す)などでVB端子3c、BATT端子3dに印加する特殊モード(特殊状態)で動作させるときがある。特殊モード(特殊状態)では、VB端子3cおよびBATT端子3dを同一電源とみなしてほぼ同一電圧の電源をほぼ同時に印加させることがある。
【0043】
このとき、集積回路装置3は、出力端子3eから常時電力供給不能な構成となるものの、出力端子3eおよび3fの出力電力を用いて、集積回路装置3の後段に接続された回路(RAM16、CPU17、ROM18、周辺回路19)の内部を検査するときなど各種検査を行うことができる。
【0044】
しかし、例えば、バッテリ2の電圧がBATT端子3dとVB端子3cに同時に与えられるときには、前述した図5(f)、図5(g)に示す出力端子3eおよび3fの電力出力シーケンスを守ることができない虞がある。すなわち、RAM16に安定的に電力供給された状態で、CPU17、ROM18、周辺回路19に電力供給開始するという通常動作時のシーケンスを守りたいにも関わらず、各デバイス16、17〜19に同時に電力供給されてしまったり不安定な電力が供給されてしまったりする虞がある。
【0045】
そこで、本実施形態では、基準電圧生成回路11の電源としてIG信号が与えられる。このときの動作について図6を参照して説明する。図6は、このときの各ノードの電圧変化をタイミングチャートによって概略的に示している。この図6に示すように、バッテリ2がBATT端子3dに接続されていないときには、BATT端子3dやVB端子3cから電源供給される電気的要素は動作しない。
【0046】
しかし、イグニッションキー5bが操作されることで、信号生成回路5がIG信号を出力すると、この基準電圧生成回路11の電源としてIG信号が与えられる。このとき、基準電圧生成回路11の出力電圧が上昇し、当該出力電圧がコンパレータ15の反転入力端子(比較対象端子)に基準電圧として与えられる(図6(e)の(1)のタイミング参照)。
【0047】
スイッチ制御回路4は、この遅延時間DTの経過後にメインリレー7をオン制御し(図6(f)参照)、バッテリ2がメインリレー7を通じてVB端子3cに印加されると同時にBATT端子3dにも印加される。この電圧は、基準電圧生成回路9、10、オペアンプ12〜14、コンパレータ15、トランジスタQ1〜Q3のコレクタに供給されるようになる。
【0048】
基準電圧生成回路9、10は、その出力を徐々に立ち上げる(図6(g)(h)参照)。すると出力端子3eの出力電圧も徐々に立ち上がる(図6(i)参照)。この出力端子3eの電圧は、抵抗R1と抵抗R2aおよびR2bとによって分圧され、コンパレータ15の反転入力端子に印加される。コンパレータ15は予め非反転入力端子に印加された基準電圧生成回路11の出力電圧と当該分圧電圧とを比較した結果を出力する。
【0049】
コンパレータ15は、VB端子3cから電源が与えられると非反転入力端子の印加電圧に応じた電圧(電流)を出力開始する(図6(j)の(2)のタイミング参照)ことで、トランジスタQ4をオン、トランジスタQ3をオフし、電圧Vmainを出力端子3fから出力させることはない。
【0050】
その後、出力端子3eの出力電圧がVref以上となると、コンパレータ15の反転入力端子の印加電圧が、基準電圧生成回路11が生成する基準電圧以上となり、コンパレータ15の出力は反転しトランジスタQ4はオフする(図6(j)の(3)のタイミング参照)。トランジスタQ4がオフすると、オペアンプ14は出力トランジスタQ3のベースに電流を印加することで出力端子3fから電圧を出力開始する(図6(k)の(3)のタイミング参照)。このようにして、集積回路装置3は、出力端子(Vsub端子)3eから電力供給を開始した後、出力端子(Vmain端子)3fから電力供給開始するという電力出力シーケンスを守ることができる。
【0051】
図7は、図6に対する比較例を示している。この図7は、コンパレータ15の非反転入力端子に与えられる電圧を、IG信号に代えて、基準電圧生成回路10の出力電圧としたときの各ノードの電圧変化についてタイミングチャートにより概略的に示している。
【0052】
基準電圧生成回路10はBATT端子3dの電源で動作するため、基準電圧生成回路10の出力電圧はBATT端子3dの立上り印加電圧に応じた電圧となる(図7(g)参照)。
【0053】
基準電圧生成回路10が生成する基準電圧の立ち上がりが遅れて電圧Vsubが立ち上がるとトランジスタQ4がオフとなる。電圧Vsubの立ち上がりが基準電圧生成回路10の立ち上がりよりも遅いため、トランジスタQ4がオンとなり(図7(j)の(2)〜(3)の期間参照)、出力端子3fの出力電圧が現れてしまう(図7(k)の(2)〜(3)の期間参照)。すると、出力端子3e、3fの電圧がほぼ同時に立ち上がり開始してしまうことになり、電力出力シーケンスを守ることができない。
【0054】
本実施形態では、基準電圧生成回路11は、VB端子3cおよびBATT端子3dに電圧が供給される前に予め供給されたIG信号を電源として用いてコンパレータ15の基準電圧を生成しているため、図7に示すような不具合を生じることなく、正常な電力出力シーケンスで出力端子3e、3fから順次電力出力できる。
【0055】
本実施形態によれば、基準電圧生成回路11は、電力供給手段A1に電力供給される前に予め与えられたIG信号から基準電圧を生成し、コンパレータ15は電力供給手段A1の供給電圧による分圧電圧と基準電圧生成回路11の基準電圧とを比較し、電力供給手段A2はコンパレータ15の比較結果に基いて出力端子3fから電力供給を開始している。この場合、コンパレータ15には予め基準電圧生成回路11の基準電圧が与えられているため、比較結果を誤ることなく正確な比較結果を出力することができ、電力供給手段A2はコンパレータ15の比較結果に基いて適切に電力供給を開始できる。
【0056】
(第2実施形態)
図8および図9は、本発明の第2実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、比較手段が、その比較対象とする基準電圧を、電源供給が安定した後は、当該安定した電源により生成された基準電圧とするところにある。前述実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
基準電圧生成回路11とコンパレータ15の非反転入力端子の間にはアナログスイッチ20が設けられている。このアナログスイッチ20は、制御端子付スイッチであり、制御端子に与えられる電圧が所定電圧より低い場合にオンとなり、所定電圧以上となるとオフになるノーマリーオンタイプのスイッチによって構成されている。このアナログスイッチ20は、出力端子3fの電圧に応じて切替えられるものであり、出力端子3fの電圧が所定電圧より低いときにはオンし、所定電圧以上となるとオフする。
【0058】
他方、基準電圧生成回路9とコンパレータ15の非反転入力端子の間にはアナログスイッチ21が設けられている。このアナログスイッチ21もまた制御端子付スイッチとして設けられている。NOTゲート22が出力端子3fとアナログスイッチ21の制御端子との間に設けられている。
【0059】
図9は、NOTゲート22の電源回路を示している。この図9に示すように、電源回路はBATT端子3dに印加された電圧により電源を生成してNOTゲート22に与える。
この電源回路は抵抗R14〜R16、NPN形トランジスタQ20、Q22、PNP形トランジスタQ21を組み合わせた基準電流源と、トランジスタQ21にカレントミラー接続されたPNP形トランジスタQ23、当該トランジスタQ23に直列接続され出力電圧を規定するためのダイオード群D2、トランジスタQ23およびダイオード群D2間の共通接続ノードにベースが接続されたNPN形トランジスタQ24、当該トランジスタQ24のコレクタとBATT端子3dとの間に接続された抵抗R17、などを組み合わせて構成され、トランジスタQ24のエミッタからNOTゲート22に電源供給されるようになっている。
【0060】
NOTゲート22に電源が供給されると、アナログスイッチ20がオンのときにはアナログスイッチ21はオフし、アナログスイッチ20がオフのときにはアナログスイッチ21はオンする。したがって、BATT端子3dの電圧が所定電圧よりも低い間は、基準電圧生成回路11が基準電圧をコンパレータ15の非反転入力端子に印加し、BATT端子3dの電圧が所定電圧以上となると基準電圧生成回路9が基準電圧をコンパレータ15の非反転入力端子に印加する。
【0061】
したがって、集積回路装置3に電源供給されてから当該電圧が安定化すると、コンパレータ15の非反転入力端子には、基準電圧生成回路9が生成する基準電圧が与えられるようになる。基準電圧生成回路9の基準電圧は、電源供給が安定化した状態でコンパレータ15の非反転入力端子に与えられるため、コンパレータ15は当該基準電圧を比較対象として比較出力することになり正確な比較結果を出力できる。
【0062】
図2に示したように、端子3aはバッテリ2にほぼ直接接続されることになるためノイズの影響を受けやすく、車両内においてIG信号はノイズが重畳しやすい。本実施形態によれば、コンパレータ15は、IG信号により生成された基準電圧生成回路11の出力電圧を基準電圧として用いているものの、電圧Vmainが所定電圧以上となると、コンパレータ15の基準電圧として基準電圧生成回路9の出力電圧に切り替えるため、コンパレータ15は安定した電源により生成された基準電圧を比較対象として比較出力することになり、たとえIG信号にノイズが重畳しやすかったとしても、コンパレータ15の出力が当該ノイズに影響することがなくなり、電圧Vmainを出力端子3fから安定して供給できる。
【0063】
(第3実施形態)
図10および図11は、本発明の第3実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、IG信号とBATT端子3dの電源との並列出力を基準電圧生成回路11の電源として適用して基準電圧生成回路11が基準電圧を生成しているところにある。前述実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、以下、異なる部分を説明する。
【0064】
図10は、図1に代わる回路構成を示しており、図11は、基準電圧生成回路11の電源供給部分を詳細に示している。図11に示すように、基準電圧生成回路11は、端子3a(IG信号供給端子)およびBATT端子3dから電圧入力端子11aにダイオードOR接続されており、IG信号が供給されると共にバッテリ2の電圧が与えられる。
【0065】
このような実施形態によれば、たとえIG信号が外来ノイズなどの影響を受けたとしても、基準電圧生成回路11はBATT端子3dの電源によって基準電圧を生成できるため、基準電圧が低下することがなくなり、コンパレータ15の出力が切替わることなく正確な比較結果を出力できる。これにより、電圧Vmainを適切な電力出力シーケンスで出力端子3fから出力できる。
【0066】
(第4実施形態)
図12は、本発明の第4実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、コンパレータ15用に特別に基準電圧生成回路11を設けることなく、基準電圧生成回路10を第2基準電圧生成手段として構成し、コンパレータ15の基準電圧生成用にも共用したところにある。また、IG信号とBATT端子3dの電源を基準電圧生成回路10の電源として適用したところにある。
【0067】
図12は、図1に代わる回路構成を示している。この図12に示すように、基準電圧生成回路10は、その電源供給端子に対し端子3a(IG信号供給端子)からダイオードDaが接続されると共に、BATT端子3dからダイオードDbが接続されており、これにより電源供給端子にダイオードOR接続されている。
【0068】
すなわち、基準電圧生成回路10の電源供給端子にはIG信号が供給されると共にバッテリ2の電圧が与えられる。基準電圧生成回路10の出力は、オペアンプ13の非反転入力端子に与えられると共に、コンパレータ15の非反転入力端子にも与えられている。
【0069】
このような実施形態においても、前述実施形態と同様に、たとえIG信号が外来ノイズなどの影響を受けたとしても、基準電圧生成回路10はBATT端子3dの印加電源によって基準電圧を生成するため、基準電圧が低下することがなくなり、コンパレータ15の出力が切替わることなく正確な比較結果を出力できる。これにより、前述実施形態とほぼ同様の作用効果を奏する。しかも、基準電圧生成回路11の構成を削除できる。
【0070】
(第5実施形態)
図13は、本発明の第5実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、基準電圧生成回路の構成を変更したところにある。図13は、基準電圧生成回路の別の構成例を示している。
この図13に示すように、基準電圧生成回路11に代わる基準電圧生成回路23は、抵抗R8〜R10、ツェナーダイオードD1を組み合わせて構成されている。電圧入力端子11aには抵抗R8〜R10が直列接続されており、前述実施形態に示した基準電流源を設けていない。このような基準電圧生成回路23を適用しても、前述実施形態とほぼ同様の作用効果を奏する。
【0071】
(第6実施形態)
図14および図15は、本発明の第6実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、IG信号、WAKEUP信号を基準電圧生成回路の電源にしたところにある。前述実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、以下、異なる部分について説明する。
【0072】
図14は、図1に代わるブロック構成図を示している。信号生成回路50は、例えば、
WAKEUP(ウェイクアップ)信号を出力する回路を示している。WAKEUP信号は、車両のドアが開放されたときに出力されるドア開信号,車両のドアロックが解除されたときに出力されるドアアンロック信号,運転者が運転席に着座したときに出力される運転席着座信号等の何れかの信号に応じて正電圧を出力する信号である。
【0073】
信号生成回路50はバッテリ2の電源を受けてWAKEUP信号を集積回路装置3の入力端子3gに出力する。WAKEUP信号はダイオードDbを通じて基準電圧生成回路11の電源端子、および論理回路26に与えられる。
【0074】
前述実施形態に示したように、信号生成回路5は、IG信号を入力端子3aに与える。このIG信号は、ダイオードDaを通じて基準電圧生成回路11の電源端子、および論理回路26に与えられる。すなわち、論理回路26および基準電圧生成回路11の電源としては、ダイオードDaおよびDbの和(OR)の信号が与えられる。
【0075】
他方、ECU1にはCAN(Controller Area Network)トランシーバ24が搭載されている。CANトランシーバ24はCAN車載ネットワークシステムにおける通信を行うための送受信器を示している。この車載ネットワークシステム上では約数秒間電源が供給されればその間に通信を行うことができる。このCANトランシーバ24は、電源が供給されると集積回路装置3内に搭載される入出力バッファ(図示せず)を通じてデータ通信を行う。このCANトランシーバ24は、出力端子3fからの電源供給を受けて動作する。
【0076】
図15は、図5に代わるタイミングチャートを示している。以下、バッテリ2をBATT端子3dに直接接続せず、当該バッテリ2に代えて外部に例えば検査電源(図14では符号2を付している)などでVB端子3c、BATT端子3dに印加する特殊モード(特殊状態)で動作させるときの動作について図15に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。図15に示すように、WAKEUP信号が立ち上がると(図15の(10)のタイミング)、論理回路26および基準電圧生成回路11に電源が供給されるようになり、基準電圧生成回路11は基準電圧を出力する。
【0077】
スイッチ制御回路4は、WAKEUP信号が立ち上がってから遅延時間DTだけ遅れてメインリレー7をオン状態とする。この場合、スイッチ制御回路4は論理回路26のIGSWout端子3bを通じてWAKEUP信号が定常的に与えられた時点から遅延時間DTだけ遅れてメインリレー7をオン状態とする(図15の(11)のタイミング)。
【0078】
メインリレー7がオン状態となると、集積回路装置3のVB端子3cおよびBATT端子3dにバッテリ2から電源が与えられるようになる。VB端子3cおよびBATT端子3dに電源電圧が与えられると、前述実施形態と同様に出力端子3eから電力出力できる。コンパレータ15には、VB端子3cから電源が与えられるようになり、コンパレータ15は、予め与えられた基準電圧生成回路11の出力電圧と、抵抗R1と抵抗R2aおよびR2bの直列抵抗との分圧電圧とを比較した結果を出力する。
【0079】
その後、出力端子3eの出力電圧がVref以上となると、コンパレータ15の反転入力端子の印加電圧が、基準電圧生成回路11が生成する基準電圧以上となり、コンパレータ15の出力は反転しトランジスタQ4はオフする。
【0080】
トランジスタQ4がオフすると、オペアンプ14は出力トランジスタQ3のベースに電流を印加することで出力端子3fから電力を出力開始する(図15の(12)のタイミング参照)。すると、電源がCANトランシーバ24、CPU17、ROM18、周辺回路19に供給されるようになり、CANトランシーバ24がCPU17や他ECU25との間で通信処理を行うことができる(図15の(12)のタイミング)。
【0081】
このようにして、集積回路装置3は、出力端子(Vsub端子)3eから電力供給を開始した後、出力端子(Vmain端子)3fから電力供給開始するという電力出力シーケンスを守ることができる。
【0082】
なお、WAKEUP信号は、図15の(10)のタイミングで立ち上がった後、タイマによる数秒間計測後オフする(図15の(13)のタイミング)が、その間にIG信号が基準電圧生成回路11の電源として与えられていれば(図15(d)参照)、トランジスタQ4がオフし続けることになり、出力端子3fから電力供給し続けることができる。
【0083】
したがって、CAN通信処理が図15の(12)のタイミングから(13)のタイミングを超えて継続したとしても、通信処理が中断することなく継続できる。なお、前述実施形態と同様に、VB電圧が安定化した後に基準電圧生成回路11の電源として与えられても良い。ECU1内では、出力端子3fの供給電源を受けて、RAM16の記憶内容のチェックを行ったり、CANトランシーバ24が通信したりするのに使用できる。
【0084】
本実施形態によれば、信号生成回路50はWAKEUP信号を入力端子3gに供給し、基準電圧生成回路11は、電力供給手段A1に電力供給される前に予め与えられたWAKEUP信号から基準電圧を生成し、コンパレータ15は電力供給手段A1の供給電圧による分圧電圧と基準電圧生成回路11の基準電圧とを比較し、電力供給手段A2はコンパレータ15の比較結果に基いて出力端子3fから電力供給を開始している。この場合、コンパレータ15には予め基準電圧生成回路11の基準電圧が与えられているため、比較結果を誤ることなく正確な比較結果を出力することができ、電力供給手段A2はコンパレータ15の比較結果に基いて適切に電力供給を開始できる。
【0085】
WAKEUP信号が立ち下がる前にIG信号が立ち上がっているため、WAKEUP信号とIG信号とが重畳して基準電圧生成回路11の電源として与えられるようになり、基準電圧生成回路11の生成電圧は常に一定となる。したがって、CPU17、ROM18、周辺回路19、CANトランシーバ24は、出力端子3fのVmain電源が供給され続けることになり処理を継続できる。
【0086】
(第7実施形態)
図16は、本発明の第7実施形態を示すもので、第6実施形態と異なるところは、IG信号が立ち上がる前にWAKEUP信号が立ち下がる態様に適用したところにある。前述実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、以下、異なる部分について説明する。
【0087】
前述実施形態に示したように、WAKEUP(ウェイクアップ)信号は、車両のドアが開放されたときに出力されるドア開信号,車両のドアロックが解除されたときに出力されるドアアンロック信号,運転者が運転席に着座したときに出力される運転席着座信号等の何れかに応じて正電圧を出力する信号である。この場合、運転者が運転席に着座した後、例えば数分間何も行動を起こさず、その後、イグニッションキーを操作することでイグニッションスイッチ5aをオンとすることもある。そこで、本形態ではこの点を反映した実施形態を示す。
【0088】
図16は、このタイミングチャートを概略的に示している。WAKEUP信号が立ち上がると、基準電圧生成回路11はこの立上り信号に応じて基準電圧を出力する(図16の(20)のタイミング)。前述実施形態と同様に、コンパレータ15の基準電圧入力端子(非反転入力端子)には基準電圧が印加されるため、コンパレータ15は抵抗R1,R2a及びR2bの分圧電圧と基準電圧とを正確に比較することができる(図16の(21),(22)のタイミング)。
【0089】
したがって、基準電圧生成回路11に電源供給されている間は、出力端子3fから供給される電源を利用してCAN通信やRAMの動作チェックなどの諸機能を正常に行うことができる(図15の(23)〜(24)の期間参照)。
【0090】
この後、IG信号が立ち上がると(図16の(25)参照)、遅延時間DTだけ遅れてVB端子3cの電圧、BATT端子3dの電圧が上昇する。すると、Vsub出力端子3e、Vmain出力端子3fから順次電力が出力される(図16の(26)参照)。すると、CPU17、ROM18,周辺回路19、CANトランシーバ24は、この供給電力を用いて例えばCAN通信処理、RAM16の動作チェックなどの諸機能を正常に行うことができる(図16の(27)参照)。
【0091】
本実施形態によれば、IG信号が立ち上がる前にWAKEUP信号が立ち下がったとしても、WAKEUP信号が立ち上がっている間は、出力端子3e,3fから電力出力シーケンスを守って電力供給できる。その後、IG信号が立ち上がると、出力端子3e,3fから電力出力シーケンスを守って電力供給できる。
【0092】
(第8実施形態)
図17および図18は、本発明の第8実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、メインリレーを通電オンするためのリレー信号を基準電圧生成回路の電源にしたところにある。前述実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、以下、異なる部分について説明する。
【0093】
本実施形態では、ECU1を特殊モード(特殊状態)で使用することを前提としておらず、通常モード(通常状態)で使用し、暗電流を供給可能な電源(2,100)が集積回路装置3およびECU1に直接接続されていない構成を考慮した実施形態を示している。
【0094】
図17は、図1に代わるブロック図を示している。ハイブリッド車、電気自動車には電池(電源)100が搭載されている。この電池100は、リチウムイオン電池などの二次電池により構成されており、例えば280〜300[V]の直流電力を大電力で供給できる。この電池100は、メインリレー7を介してDCDCコンバータ27に接続されている。DCDCコンバータ27は降圧コンバータによるもので280〜300[V]の直流電圧がメインリレー7を介して供給されると12[V](または24[V])に降圧しVB端子3cに供給するように構成されている。
【0095】
また、ECU1の他にハイブリッドECU28が構成されている。このハイブリッドECU28は、ガソリンエンジンにより車両を駆動するか、電動モータにより車両を駆動するかを決定するためのECUであり、ECU1の上位ECUに相当する。ハイブリッドECU28は、論理回路28aを搭載して構成されている。
【0096】
前述実施形態に示したように、信号生成回路5はIG信号を出力するが、このIG信号は論理回路28aに与えられる。論理回路28aはフィルタ回路およびバッファ回路を備えており、IG信号の立上り時のチャタリングをフィルタ回路によりフィルタ処理すると共にバッファ回路を通じて波形整形してスイッチ制御回路4およびIGSWout端子3bに出力する。なお、フィルタ処理せずバッファにより波形整形した後、スイッチ制御回路4およびIGSWout端子3bに出力しても良い。
【0097】
図18は、本実施形態における動作をタイミングチャートにより示している。電池100の電圧が供給されているときに(図18(a)参照)、IG信号が立ち上がると、これに応じてリレー信号の電圧が上昇する(図18(c)参照)。リレー信号が基準電圧生成回路11の電源として与えられると、基準電圧生成回路11は基準電圧を出力する(図18(f)の(30)のタイミング)。
【0098】
スイッチ制御回路4は、タイマにより遅延時間DTを測定し当該遅延時間DTだけ遅れてメインリレー7をオン通電制御する(図18(d)の(31)のタイミング)。すると、出力端子3eの出力電圧が徐々に上昇し、所定の閾値電圧Vrefまで上昇した時点から出力端子3fの出力電圧が上昇し始める(図18の(32)のタイミング)。したがって、適切な電力出力シーケンスで電力供給できる。
【0099】
本実施形態によれば、メインリレー7をオン通電するためのリレー信号を基準電圧生成回路11の電源として適用しているため、たとえ通常時において暗電流を供給可能な電池(電源)100がECU1に直接接続されない構成であっても、適切な電力出力シーケンスで電力供給できる。
【0100】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形または拡張が可能である。
なお、IG信号がエンジン停止時に端子3aを通じて入力されていなくても、BATT端子3d、VB端子3cに電源が与えられているときに、論理回路6がオン信号を生成しIGSWout端子3bからスイッチ制御回路4にオン信号を出力することで、スイッチ制御回路4がメインリレー7をオンさせる場合もある。この場合に論理回路6が動作するため前述実施形態では論理回路6を設けているが、本発明の動作に関係しなければ当該論理回路6は必要に応じて構成すれば良い。
【0101】
また、第1電力供給手段A1、第2電力供給手段A2の電気的構成は、出力端子3e、3fからそれぞれ電力供給可能な構成であれば適宜変更しても良い。すなわち、前述実施形態で説明した基準電圧生成回路11、コンパレータ15にそれぞれ相当する基準電圧生成手段、比較手段が構成されていれば、集積回路装置3の内部の電気的構成は前述実施形態に示した構成に限られない。2つの出力端子3e、3fを備えた集積回路装置3に適用した実施形態を示したが、3以上の出力端子を備えた集積回路装置3に適用しても良い。
【0102】
前述実施形態では、IG信号を基準電圧生成回路11、10などの電源として適用したが、IG信号に代えてACC信号を適用しても良い。
第2実施形態において、出力端子3fの電圧が所定電圧以上となったときに、基準電圧生成回路9および11の双方の並列出力電圧をコンパレータ15の非反転入力端子に入力させるようにスイッチ20および21を切替えても良い。これにより前述同様の作用効果を奏する。
【0103】
コンパレータ15の電源として、VB端子3cの印加電圧が供給された実施形態を示したが、必要に応じてIG信号またはACC信号を電源として適用しても良い。
第8実施形態において、リレー信号を基準電圧生成回路11の電源として適用したが、IG信号を電源として入力しても良いし、ACC信号を電源として入力しても良い。
ハイブリッド車や電気自動車など各種車両用の電力供給装置に適用できる。
【符号の説明】
【0104】
図面中、2はバッテリ(電源)、3は集積回路装置(車両用電力供給装置)、3eは出力端子(第1電力供給端子)、3fは出力端子(第2電力供給端子)、9〜11、23は基準電圧生成回路(11は基準電圧生成手段、10は第2基準電圧生成手段)、15はコンパレータ(比較手段)、100は電池(電源)、A1は第1電力供給手段、A2は第2電力供給手段を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から電力生成して第1電力供給端子に電力供給可能な第1電力供給手段と、
前記電源が前記第1電力供給手段に供給される前に前記電源により生成された信号から基準電圧を生成する基準電圧生成手段と、
前記第1電力供給手段が供給する電圧と前記基準電圧生成手段の基準電圧とを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基いて前記第2電力供給端子から電力供給を開始する第2電力供給手段と、を備え、
前記第1電力供給手段が第1電力供給端子から電力供給を開始した後、前記第2電力供給手段が第2電力供給端子から電力供給を開始することを特徴とする車両用電力供給装置。
【請求項2】
前記電源によって生成された信号は、イグニッション信号を含むことを特徴とする請求項1記載の車両用電力供給装置。
【請求項3】
前記電源によって生成された信号は、ACC信号を含むことを特徴とする請求項1または2記載の車両用電力供給装置。
【請求項4】
前記電源によって生成された信号は、WAKEUP信号を含むことを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の車両用電力供給装置。
【請求項5】
前記電源によって生成された信号は、前記電源との間に介在して接続されたメインリレーをオフ状態からオン状態とするリレー信号を含むことを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の車両用電力供給装置。
【請求項6】
前記比較手段は、その比較対象とする基準電圧を、前記第1電力供給手段に対する電源供給が安定した後、前記基準電圧生成手段の基準電圧に代えて前記安定した電源により生成された基準電圧を比較対象として比較することを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の車両用電力供給装置。
【請求項7】
前記基準電圧生成手段は、前記電源によって生成された信号と前記電源との並列出力により基準電圧を生成することを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載の車両用電力供給装置。
【請求項8】
前記第1電力供給手段は、前記第1電力供給端子から電力供給するための第2基準電圧を生成する第2基準電圧生成手段を備え、
前記基準電圧生成手段は、前記第2基準電圧生成手段と共用されていることを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載の車両用電力供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−210228(P2011−210228A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272511(P2010−272511)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】