説明

車両用電源装置及び車両用電源装置の故障部位推定方法

【課題】 故障が発生した場合に故障部位を推定することができる車両用電源装置及び車両用電源装置の故障部位推定方法を提供する。
【解決手段】 車両用電源装置は、接触器3と、フィルタコンデンサ8と、制御部13と、補助接点14と、電流検出器17と、第1電圧検出器18と、第2電圧検出器19と、を備えている。制御部13は、第2電圧検出器19が検出したフィルタコンデンサ8の電圧を示す第2電圧情報を基に、フィルタコンデンサ8が充電されない故障が発生したと判断した場合、補助接点からのアンサー信号、電流検出器17が検出した電流を示す電流情報、第1電圧検出器18が検出した電圧を示す第1電圧情報及び第2電圧情報の組合せにより故障部位を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両用電源装置及び車両用電源装置の故障部位推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両には、パンタグラフを介して架線から受け取った電力を、照明装置、空調装置等の電動機に供給する車両用電源装置が搭載されている。車両用電源装置は、電圧検出器を有し、電圧検出器にて架線電圧の有無が検出される。電圧検出器が架線電圧を検出した場合、車両用電源装置は動作を開始し、すなわち、電動機への電力の供給を開始する。
【0003】
また、上記車両用電源装置においては、装置内部に故障が発生したのかどうかを判断することができる。車両用電源装置は、装置内部に故障が発生したと判断した場合、電動機への電力の供給を停止する機能(保護機能)を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−306713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記車両用電源装置では、装置内部に故障が発生したことを判断することはできるが、どの部分が故障したかまでは判断することができなかった。
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、故障が発生した場合に故障部位を推定することができる車両用電源装置及び車両用電源装置の故障部位推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る車両用電源装置は、
パンタグラフを介して架線に接続される接触器と、
前記接触器に接続され、前記パンタグラフ及び接触器を介して前記架線から入力される電力を平滑化するフィルタコンデンサと、
制御部と、
アンサー信号を前記制御部に与える、前記接触器の補助接点と、
前記接触器及びフィルタコンデンサ間に接続され、前記パンタグラフ及び接触器を介して前記架線から入力される電流を検出し、前記電流を示す電流情報を前記制御部に与えることが可能な電流検出器と、
前記パンタグラフを介して前記架線に接続され、架線の電圧を検出し、前記電圧を示す第1電圧情報を前記制御部に与えることが可能な第1電圧検出器と、
前記フィルタコンデンサの電圧を検出し、前記電圧を示す第2電圧情報を前記制御部に与えることが可能な第2電圧検出器と、を備え、
前記制御部は、前記第2電圧情報を基に、前記フィルタコンデンサが充電されない故障が発生したと判断した場合、前記アンサー信号、電流情報、第1電圧情報及び第2電圧情報の組合せにより故障部位を推定することを特徴としている。
【0007】
また、一実施形態に係る車両用電源装置は、
パンタグラフを介して架線に接続される高速度遮断器と、
前記高速度遮断器に接続され、前記パンタグラフ及び高速度遮断器を介して前記架線から入力される電力を平滑化するフィルタコンデンサと、
制御部と、
アンサー信号を前記制御部に与える、前記高速度遮断器の補助接点と、
前記高速度遮断器及びフィルタコンデンサ間に接続され、前記パンタグラフ及び高速度遮断器を介して前記架線から入力される電流を検出し、前記電流を示す電流情報を前記制御部に与えることが可能な電流検出器と、
投入信号を前記高速度遮断器に与えるのかどうか制御し、前記投入信号を前記制御部に与えることが可能な投入制御モジュールと、を備え、
前記制御部は、前記投入信号及びアンサー信号が不一致となる故障が発生したと判断した場合、前記アンサー信号、電流情報及び投入制御モジュールの状態の組合せにより故障部位を推定することを特徴としている。
【0008】
また、一実施形態に係る車両用電源装置の故障部位推定方法は、
パンタグラフを介して架線に接続される接触器と、前記接触器に接続され、前記パンタグラフ及び接触器を介して前記架線から入力される電力を平滑化するフィルタコンデンサと、前記接触器の補助接点と、前記接触器及びフィルタコンデンサ間に接続され、前記パンタグラフ及び接触器を介して前記架線から入力される電流を検出する電流検出器と、前記パンタグラフを介して前記架線に接続され、架線の電圧を検出する第1電圧検出器と、前記フィルタコンデンサの電圧を検出する第2電圧検出器と、を備えた車両用電源装置の故障部位推定方法において、
前記第2電圧検出器が検出した前記フィルタコンデンサの電圧を示す第2電圧情報を基に、前記フィルタコンデンサが充電されない故障が発生したのかどうか判断し、
前記故障が発生したと判断した場合、前記補助接点からのアンサー信号、前記電流検出器が検出した電流を示す電流情報、前記第1電圧検出器が検出した電圧を示す第1電圧情報及び第2電圧情報の組合せにより故障部位を推定することを特徴としている。
【0009】
また、一実施形態に係る車両用電源装置の故障部位推定方法は、
パンタグラフを介して架線に接続される高速度遮断器と、前記高速度遮断器に接続され、前記パンタグラフ及び高速度遮断器を介して前記架線から入力される電力を平滑化するフィルタコンデンサと、前記高速度遮断器の補助接点と、前記高速度遮断器及びフィルタコンデンサ間に接続され、前記パンタグラフ及び高速度遮断器を介して前記架線から入力される電流を検出する電流検出器と、投入信号を前記高速度遮断器に与えるのかどうか制御する投入制御モジュールと、を備えた車両用電源装置の故障部位推定方法において、
前記投入制御モジュールからの投入信号及び前記補助接点からのアンサー信号が不一致となる故障が発生したのかどうか判断し、
前記故障が発生したと判断した場合、前記アンサー信号、前記電流検出器が検出した電流を示す電流情報及び前記投入制御モジュールの状態の組合せにより故障部位を推定することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る車両用電源装置を概略的に示すブロック図である。
【図2】図2は、上記第1の実施形態に係る車両用電源装置の故障部位推定方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】図3は、図2に続く、上記第1の実施形態に係る車両用電源装置の故障部位推定方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】図4は、図3に続く、上記第1の実施形態に係る車両用電源装置の故障部位推定方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】図5は、第2の実施形態に係る車両用電源装置の一部を概略的に示すブロック図である。
【図6】図6は、上記第2の実施形態に係る車両用電源装置の故障部位推定方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら第1の実施形態に係る車両用電源装置及び車両用電源装置の故障部位推定方法について詳細に説明する。始めに、車両用電源装置の構成について説明する。車両用電源装置は、鉄道車両等の電気車両の照明装置、空調装置等の負荷(電動機)に電力を供給するものである。
【0012】
図1は、第1の実施形態に係る車両用電源装置を概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、車両用電源装置は、ヒューズ2、主回路入力用の接触器3、充電抵抗4、開閉器としての充電抵抗短絡スイッチ5、放電抵抗6、放電用の接触器7、フィルタコンデンサ8、インバータ9、変圧器10、負荷接続切替え用の接触器11、制御部13、接触器3の補助接点14、接触器7の補助接点15、接触器11の補助接点16、電流検出器17、第1電圧検出器18、及び第2電圧検出器19を備えている。
【0013】
なお、全てを図示しないが、電気車両は、それぞれ車輪が設けられた一対の台車フレームと、台車フレームに空気ばねを介して支持された車体と、パンタグラフ1aとを備えている。車輪は、レールに接触するため、地絡されている。車両用電源装置は、車体の床下に設置されている。
【0014】
ヒューズ2は、パンタグラフ1aを介して架線1に電気的に接続されている。接触器3は、パンタグラフ1a及びヒューズ2を介して架線1に接続されている。充電抵抗4、充電抵抗短絡スイッチ5及び放電抵抗6は、それぞれ接触器3に直列に接続されている。充電抵抗4は、充電抵抗短絡スイッチ5に並列に接続されている。接触器7は、一方が放電抵抗6に接続され、他方が接地されている。
【0015】
フィルタコンデンサ8の一端は、充電抵抗4及び充電抵抗短絡スイッチ5に接続され、これら充電抵抗4及び充電抵抗短絡スイッチ5を介して接触器3に接続されている。フィルタコンデンサ8の他端は接地されている。フィルタコンデンサ8は、パンタグラフ1a、接触器3、充電抵抗4等を介して架線1から入力される電力を充電し、平滑化する。
【0016】
インバータ9は、フィルタコンデンサ8に接続されている。インバータ9は、フィルタコンデンサ8で平滑化された直流電力を交流電力に変換し、交流電力を変圧器10及び接触器11を介して負荷12に供給する。インバータ9は、変圧器10の一次側に接続されている。変圧器10の一次側は、接触器11に接続されている。
【0017】
補助接点14は、アンサー信号を制御部13に与えることが可能である。例えば、接触器3がオン(閉状態)に切替わるタイミングで、補助接点14は、接触器3がオンに切替わったことを示すアンサー信号を制御部13に与える。
【0018】
補助接点15は、アンサー信号を制御部13に与えることが可能である。例えば、接触器7がオン(閉状態)に切替わるタイミングで、補助接点15は、接触器7がオンに切替わったことを示すアンサー信号を制御部13に与える。
【0019】
補助接点16は、アンサー信号を制御部13に与えることが可能である。例えば、接触器11の開閉状態が切替わるタイミングで、補助接点15は、接触器11の開閉状態が切替わったことを示すアンサー信号を制御部13に与える。
【0020】
電流検出器17は、接触器3及びフィルタコンデンサ8間に接続されている。詳しくは、電流検出器17の一端が接触器3に接続され、電流検出器17の他端が充電抵抗4、充電抵抗短絡スイッチ5及び放電抵抗6に接続されている。電流検出器17は、パンタグラフ1a及び接触器3を介して架線1から入力される電流を検出し、上記電流を示す電流情報を制御部13に与えることが可能である。
【0021】
第1電圧検出器18は、パンタグラフ1a及びヒューズ2を介して架線1に接続されている。第1電圧検出器18は、架線1の電圧を検出し、上記電圧を示す第1電圧情報を制御部13に与えることが可能である。
【0022】
第2電圧検出器19は、フィルタコンデンサ8の両端に接続されている。第2電圧検出器19は、フィルタコンデンサ8の電圧を検出し、上記電圧を示す第2電圧情報を制御部13に与えることが可能である。
【0023】
制御部13は、第2電圧検出器19からの第2電圧情報を基に、フィルタコンデンサ8が充電されない故障が発生したのかどうか判断する。制御部13は、上記故障が発生したと判断した場合、補助接点14からのアンサー信号、電流検出器17からの電流情報、第1電圧検出器18からの第1電圧情報及び第2電圧検出器19からの第2電圧情報の組合せにより故障部位を推定することができる。
上記のように車両用電源装置が構成されている。
【0024】
次に、上記車両用電源装置の故障部位推定方法について説明する。故障部位推定方法は、制御部13が第2電圧検出器19からの第2電圧情報を基にフィルタコンデンサ8が充電されない故障が発生したと判断した場合に用いられる。図2乃至図4は、第1の実施形態に係る車両用電源装置の故障部位推定方法を説明するためのフローチャートである。
【0025】
図1及び図2に示すように、装置を起動するため、接触器3をオンに切替えたとき(投入したとき)に、制御部13がフィルタコンデンサ8が充電されない故障が発生したと判断することにより、車両用電源装置の故障部位推定方法がスタートする。以下の手順を追えば、故障部位を推定することができる。
【0026】
車両用電源装置の故障部位推定方法がスタートすると、まず、ステップS1aにおいて、制御部13は、補助接点14が出力した信号が接触器3に入力されたのかどうか判断する。補助接点14が出力した信号が接触器3に入力されなかった場合(ステップS1a)、ステップS2aにおいて、制御部13は、接触器3の故障であると推定し、上記故障部位推定方法が終了する(エンド)。
【0027】
補助接点14が出力した信号が接触器3に入力された場合(ステップS1a)、ステップS3aにおいて、制御部13は、第1電圧情報を取得し、第1電圧検出器18が検出した電圧の値が0Vであるのかどうか判断する。第1電圧検出器18が検出した電圧の値が0Vであった場合(ステップS3a)、ステップS4aにおいて、制御部13は、ヒューズ2及び充電抵抗4間の故障(地絡)であると推定する。
【0028】
続いて、ステップS5aにおいて、制御部13は、電流情報を取得し、電流検出器17が検出した電流の値が0Aであるのかどうか判断する。電流検出器17が検出した電流の値が0Aではなかった場合(ステップS5a)、すなわち、電流検出器17で電流が検出された場合、ステップS6aにおいて、制御部13は、補助接点14及び充電抵抗4間の故障(地絡)であると推定し、上記故障部位推定方法が終了する。
【0029】
電流検出器17が検出した電流の値が0Aであった場合(ステップS5a)、すなわち、電流検出器17で電流が検出されなかった場合、ステップS7aにおいて、制御部13は、ヒューズ2及び電流検出器17間の故障(地絡)であると推定し、上記故障部位推定方法が終了する。第1電圧検出器18が検出した電圧の値が0Vではなかった場合(ステップS3a)、すなわち、第1電圧検出器18に一定以上の電圧が与えられた場合、ステップS8aに移行する。
【0030】
図1及び図3に示すように、ステップS8aにおいて、制御部13は、電流情報を取得し、電流検出器17が検出した電流の値が0Aであるのかどうか判断する。電流検出器17が検出した電流の値が0Aであった場合(ステップS8a)、すなわち、電流検出器17で電流が検出されなかった場合、ステップS9aにおいて、制御部13は、ヒューズ2及び充電抵抗4間の故障(地絡)であると推定する。
【0031】
続いて、ステップS10aにおいて、制御部13は、充電抵抗短絡スイッチ5をオンに切替えたとき(投入したとき)に、第2電圧情報を取得し、フィルタコンデンサ8が充電されるのかどうか判断する。フィルタコンデンサ8が充電されなかった場合(ステップS10a)、ステップS11aにおいて、制御部13は、充電抵抗4以外の部位の故障(断線)であると推定し、上記故障部位推定方法が終了する(図2)。
【0032】
フィルタコンデンサ8が充電された場合(ステップS10a)、ステップS12aにおいて、制御部13は、充電抵抗4の故障(断線)であると推定し、上記故障部位推定方法が終了する(図2)。
電流検出器17が検出した電流の値が0Aではなかった場合(ステップS8a)、すなわち、電流検出器17で電流が検出された場合、ステップS13aに移行する。
【0033】
図1及び図4に示すように、ステップS13aにおいて、制御部13は、電流情報を取得し、電流検出器17が検出した電流の値が一定値(通常の充電時に流れる電流より高い値に設定された基準値)以上であるのかどうか判断する。電流検出器17が検出した電流の値が一定値以上ではなかった場合(ステップS13a)、ステップS14aにおいて、制御部13は、制御部13自体に問題があると推定し、上記故障部位推定方法が終了する(図2)。
【0034】
電流検出器17が検出した電流の値が一定値以上であった場合(ステップS13a)、ステップS15aにおいて、制御部13は、フィルタコンデンサ8又はインバータ9の故障(短絡又は地絡)であると推定する。
【0035】
続いて、ステップS16aにおいて、制御部13は、インバータ9の高圧側スイッチのゲートフィードバックがあるのかどうか判断する。インバータ9の高圧側スイッチのゲートフィードバックがあった場合(ステップS16a)、ステップS17aにおいて、制御部13は、インバータ9内の故障(短絡又は地絡)であると推定し、上記故障部位推定方法が終了する(図2)。
【0036】
インバータ9の高圧側スイッチのゲートフィードバックがなかった場合(ステップS16a)、ステップS18aにおいて、制御部13は、フィルタコンデンサ8の故障(短絡)であると推定し、上記故障部位推定方法が終了する(図2)。
【0037】
上記のように構成された第1の実施形態に係る車両用電源装置及び車両用電源装置の故障部位推定方法によれば、車両用電源装置は、接触器3と、フィルタコンデンサ8と、制御部13と、補助接点14と、電流検出器17と、第1電圧検出器18と、第2電圧検出器19と、を備えている。制御部13は、第2電圧検出器19が検出したフィルタコンデンサ8の電圧を示す第2電圧情報を基に、フィルタコンデンサ8が充電されない故障が発生したのかどうか判断する。
【0038】
制御部13は、上記故障が発生したと判断した場合、補助接点14からのアンサー信号、電流検出器17が検出した電流を示す電流情報、第1電圧検出器18が検出した電圧を示す第1電圧情報及び第2電圧情報の組合せにより故障部位を推定する。
【0039】
このため、フィルタコンデンサ8が充電されない故障が発生した場合に、どの部位が故障したのかを推定することができる。しかも、車両用電源装置に新たに用品を加えること無しに故障部位を推定することができるため、製造コストの高騰や車両用電源装置の大型化を抑制することができる。
【0040】
上記のことから、故障(フィルタコンデンサ8が充電されない故障)が発生した場合に故障部位を推定することができる車両用電源装置及び車両用電源装置の故障部位推定方法を得ることができる。
【0041】
次に、第2の実施形態に係る車両用電源装置及び車両用電源装置の故障部位推定方法について説明する。始めに、車両用電源装置の構成について説明する。なお、この実施形態において、他の構成は上述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0042】
図5は、第2の実施形態に係る車両用電源装置の一部を概略的に示すブロック図である。車両用電源装置は、第2の実施形態のヒューズ2及び接触器3の替わりに高速度遮断器20を備えている。高速度遮断器20は、パンタグラフ1aを介して架線1に接続されている。補助接点14は、高速度遮断器20の補助接点であり、アンサー信号を制御部13に与える。
【0043】
車両用電源装置は、投入制御モジュール25をさらに有している。投入制御モジュール25は、投入信号を高速度遮断器20に与えるのかどうか制御し、投入信号を制御部13に与えることが可能である。投入制御モジュール25は、投入リレー(継電器)21、保持リレー22及び保持電流制限抵抗23を有している。
【0044】
高速度遮断器20は、投入リレー21、保持リレー22及び保持電流制限抵抗23にて投入の制御(オン/オフの切替え)がされている。高速度遮断器20に流れる電流Iの値が設定した電流値以上の場合、過電流検知にて供給される電力(電流I)を遮断するよう、高速度遮断器20が機能する。この場合、補助接点14によるアンサー信号も無くなる。投入リレー21は、高速度遮断器20が機能した(投入された)後にオフに切替えられる。
【0045】
制御部13は、投入制御モジュール25からの投入信号及び補助接点14からのアンサー信号が不一致となる故障が発生したのかどうか判断する。制御部13は、上記故障が発生したと判断した場合、アンサー信号、電流検出器17が検出した電流を示す電流情報及び投入制御モジュール25の状態の組合せにより故障部位を推定することができる。
上記のように車両用電源装置が構成されている。
【0046】
次に、上記車両用電源装置の故障部位推定方法について説明する。故障部位推定方法は、制御部13が投入信号及びアンサー信号を基に、投入信号及びアンサー信号が不一致となる故障が発生したと判断した場合に用いられる。
【0047】
図6は、第2の実施形態に係る車両用電源装置の故障部位推定方法を説明するためのフローチャートである。
図5及び図6に示すように、制御部13が投入信号及びアンサー信号が不一致となる故障が発生したと判断することにより、車両用電源装置の故障部位推定方法がスタートする。従来では、高速度遮断器20への投入信号がHレベル(オン)、アンサー信号がLレベル(投入されず)となる不一致で保護検知としていた。そこで、以下の手順を追えば、故障部位を推定することができる。
【0048】
車両用電源装置の故障部位推定方法がスタートすると、まず、ステップS1bにおいて、制御部13は、電流情報を取得し、電流検出器17が検出した電流の値が0Aであるのかどうか判断する。電流検出器17が検出した電流の値が0Aではなかった場合(ステップS1b)、すなわち、電流検出器17で電流が検出された場合、高速度遮断器20の主接点は閉じている(オンに切替えられている)ため、ステップS2bにおいて、制御部13は、補助接点14の故障であると推定し、上記故障部位推定方法が終了する(エンド)。
【0049】
電流検出器17が検出した電流の値が0Aであった場合(ステップS1b)、すなわち、電流検出器17で電流が検出されなかった場合、ステップS3bにおいて、制御部13は、投入リレー21をオフに切替えると同時に、アンサー信号がLレベルとなるのかどうか判断する。
【0050】
アンサー信号がLレベルとなった場合(ステップS3b)、ステップS4bにおいて、制御部13は、保持リレー22又は保持電流制限抵抗23の故障であると推定し、上記故障部位推定方法が終了する。
【0051】
アンサー信号がLレベルとならなかった場合(ステップS3b)、ステップS5bにおいて、制御部13は、電流情報を取得し、電流検出器17が過大な電流を検出しているのかどうか判断する。電流検出器17が過大な電流を検出した場合(ステップS5b)、ステップS6bにおいて、制御部13は、電流検出器17が検出した電流は正常であるものと判断し、すなわち正常な動作であるものと判断し、車両用電源装置に故障は発生していなかったものと推定し、上記故障部位推定方法が終了する。
【0052】
電流検出器17が過大な電流を検出しなかった場合(ステップS5b)、ステップS7bにおいて、制御部13は、投入リレー21又は高速度遮断器20の故障であると推定し、上記故障部位推定方法が終了する。
【0053】
上記のように構成された第2の実施形態に係る車両用電源装置及び車両用電源装置の故障部位推定方法によれば、車両用電源装置は、高速度遮断器20と、フィルタコンデンサ8と、制御部13と、補助接点14と、電流検出器17と、投入制御モジュール25、を備えている。
【0054】
制御部13は、投入制御モジュール25からの投入信号及び補助接点14からのアンサー信号が不一致となる故障が発生したのかどうか判断する。制御部13は、上記故障が発生したと判断した場合、アンサー信号、電流検出器17が検出した電流を示す電流情報及び投入制御モジュール25の状態の組合せにより故障部位を推定する。
【0055】
このため、投入信号及びアンサー信号が不一致となる故障が発生した場合に、どの部位が故障したのかを推定することができる。しかも、車両用電源装置に新たに用品を加えること無しに故障部位を推定することができるため、製造コストの高騰や車両用電源装置の大型化を抑制することができる。
【0056】
上記のことから、故障(投入信号及びアンサー信号が不一致となる故障)が発生した場合に故障部位を推定することができる車両用電源装置及び車両用電源装置の故障部位推定方法を得ることができる。
【0057】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0058】
例えば、この発明の車両用電源装置及び車両用電源装置の故障部位推定方法は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々変形可能であり、各種の車両用電源装置及び車両用電源装置の故障部位推定方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…架線、1a…パンタグラフ、3…接触器、4…充電抵抗、5…充電抵抗短絡スイッチ、8…フィルタコンデンサ、9…インバータ、13…制御部、14…補助接点、17…電流検出器、18…第1電圧検出器、19…第2電圧検出器、20…高速度遮断器、21…投入リレー、22…保持リレー、23…保持電流制限抵抗、25…投入制御モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンタグラフを介して架線に接続される接触器と、
前記接触器に接続され、前記パンタグラフ及び接触器を介して前記架線から入力される電力を平滑化するフィルタコンデンサと、
制御部と、
アンサー信号を前記制御部に与える、前記接触器の補助接点と、
前記接触器及びフィルタコンデンサ間に接続され、前記パンタグラフ及び接触器を介して前記架線から入力される電流を検出し、前記電流を示す電流情報を前記制御部に与えることが可能な電流検出器と、
前記パンタグラフを介して前記架線に接続され、架線の電圧を検出し、前記電圧を示す第1電圧情報を前記制御部に与えることが可能な第1電圧検出器と、
前記フィルタコンデンサの電圧を検出し、前記電圧を示す第2電圧情報を前記制御部に与えることが可能な第2電圧検出器と、を備え、
前記制御部は、前記第2電圧情報を基に、前記フィルタコンデンサが充電されない故障が発生したと判断した場合、前記アンサー信号、電流情報、第1電圧情報及び第2電圧情報の組合せにより故障部位を推定することを特徴とする車両用電源装置。
【請求項2】
パンタグラフを介して架線に接続される高速度遮断器と、
前記高速度遮断器に接続され、前記パンタグラフ及び高速度遮断器を介して前記架線から入力される電力を平滑化するフィルタコンデンサと、
制御部と、
アンサー信号を前記制御部に与える、前記高速度遮断器の補助接点と、
前記高速度遮断器及びフィルタコンデンサ間に接続され、前記パンタグラフ及び高速度遮断器を介して前記架線から入力される電流を検出し、前記電流を示す電流情報を前記制御部に与えることが可能な電流検出器と、
投入信号を前記高速度遮断器に与えるのかどうか制御し、前記投入信号を前記制御部に与えることが可能な投入制御モジュールと、を備え、
前記制御部は、前記投入信号及びアンサー信号が不一致となる故障が発生したと判断した場合、前記アンサー信号、電流情報及び投入制御モジュールの状態の組合せにより故障部位を推定することを特徴とする車両用電源装置。
【請求項3】
パンタグラフを介して架線に接続される接触器と、前記接触器に接続され、前記パンタグラフ及び接触器を介して前記架線から入力される電力を平滑化するフィルタコンデンサと、前記接触器の補助接点と、前記接触器及びフィルタコンデンサ間に接続され、前記パンタグラフ及び接触器を介して前記架線から入力される電流を検出する電流検出器と、前記パンタグラフを介して前記架線に接続され、架線の電圧を検出する第1電圧検出器と、前記フィルタコンデンサの電圧を検出する第2電圧検出器と、を備えた車両用電源装置の故障部位推定方法において、
前記第2電圧検出器が検出した前記フィルタコンデンサの電圧を示す第2電圧情報を基に、前記フィルタコンデンサが充電されない故障が発生したのかどうか判断し、
前記故障が発生したと判断した場合、前記補助接点からのアンサー信号、前記電流検出器が検出した電流を示す電流情報、前記第1電圧検出器が検出した電圧を示す第1電圧情報及び第2電圧情報の組合せにより故障部位を推定することを特徴とする車両用電源装置の故障部位推定方法。
【請求項4】
パンタグラフを介して架線に接続される高速度遮断器と、前記高速度遮断器に接続され、前記パンタグラフ及び高速度遮断器を介して前記架線から入力される電力を平滑化するフィルタコンデンサと、前記高速度遮断器の補助接点と、前記高速度遮断器及びフィルタコンデンサ間に接続され、前記パンタグラフ及び高速度遮断器を介して前記架線から入力される電流を検出する電流検出器と、投入信号を前記高速度遮断器に与えるのかどうか制御する投入制御モジュールと、を備えた車両用電源装置の故障部位推定方法において、
前記投入制御モジュールからの投入信号及び前記補助接点からのアンサー信号が不一致となる故障が発生したのかどうか判断し、
前記故障が発生したと判断した場合、前記アンサー信号、前記電流検出器が検出した電流を示す電流情報及び前記投入制御モジュールの状態の組合せにより故障部位を推定することを特徴とする車両用電源装置の故障部位推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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