説明

車両用電源装置

【課題】点検作業時等における作業者の安全を十分に確保しつつ、車両用電源装置の小型化を図ることにある。
【解決手段】走行用のモータジェネレータ10に給電するためのバッテリパック21において、高電圧バッテリ12は、それぞれ複数の単電池を直列接続して形成される一端側出力端子22a側の第1の組電池32と、他端側出力端子22b側の第2の組電池33とにより構成されている。バッテリボックス20内には、第1の組電池32と一端側出力端子22aとの電気的な接続を開閉するリレーユニット24が収容されている。また、高電圧バッテリ12の中間電位の位置よりも他端側に位置させて、第1の組電池32と第2の組電池33との間には、第1の組電池32と第2の組電池33との電気的な接続を開閉するプラグユニット31が設けられている。この第2の組電池33の最大電圧v2は安全電圧に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車または電気自動車に搭載される走行用の電動モータに給電するための車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源としてエンジンおよび電動モータを備えるハイブリッド車や、駆動源として電動モータのみを備える電気自動車には、走行用の電動モータに電力を供給する高電圧バッテリ(走行用バッテリ)が搭載されている。高電圧バッテリは、走行用の電動モータを駆動するために必要な電圧および放電容量を得るため、単電池からなる複数の電池セルを互いに直列接続することにより構成されている。この高電圧バッテリと走行用の電動モータとを電気的に接続する高電圧回路は車体に対して絶縁されており、乗員の安全が確保されている。例えば、高電圧バッテリはバッテリボックスに収容され、バッテリボックス内の高電圧回路が車体に対して絶縁された状態でバッテリパック(車両用電源装置)として車両に搭載されている。
【0003】
バッテリボックス内には、高電圧バッテリの一端側に位置させてリレーユニットが設けられている。リレーユニットの開閉動作は車両制御装置からの信号に基づいて制御される。このリレーユニットが閉動作されると、高電圧バッテリと電動モータとが電気的に接続され、車両が作動状態となる。一方、リレーユニットが開動作されると、高電圧バッテリと電動モータとの電気的な接続が遮断され、車両が非作動状態となる。
【0004】
このようなバッテリパックには、点検作業時や整備作業時の安全確保を目的として、例えば、特許文献1に記載されるように、バッテリパック内の高電圧回路を遮断するための安全プラグ装置が設けられている。この安全プラグ装置では、高電圧バッテリの中央に設けられるソケットを有しており、ソケットの両側でそれぞれほぼ同じ電圧が生じるように配置されている。ソケットにプラグが装着された状態では、ソケットの両側にそれぞれ設けられた複数の電池セルが互いに通電される。一方、ソケットからプラグが離脱された状態では、ソケットの両側にそれぞれ設けられた複数の電池セルの通電が遮断される。
【0005】
また、バッテリボックス内には、高電圧バッテリの他端側に位置させて回路遮断リレーが設けられている。回路遮断リレーは常開式となっており、車両の起動信号等に連動して回路遮断リレーが閉動作される。したがって、点検作業時や整備作業時には、当然車両は動作停止状態に在るため、安全プラグが離脱されるとともに高電圧バッテリの両側にそれぞれ設けられたリレーが開状態となる。これにより、バッテリボックス内の高電圧回路が確実に遮断されるため、作業者の安全が確保されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−7920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されるように高電圧バッテリの両側にそれぞれリレーを設けるようにすると、バッテリパックが大型化するとともにコストアップの要因となる。そこで、いずれか一方のリレーを廃止することも考えられるが、リレーを廃止すると、万一、バッテリパック内での漏電により、安全プラグ装置よりもリレーを廃止した側において高電圧回路と車体との間で大きな電位差が生じた場合に、これを遮断するための手段がなくなることになる。その場合、点検作業時や整備作業時において、作業者の安全を十分に確保することができないおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、点検作業時等における作業者の安全を十分に確保しつつ、車両用電源装置の小型化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両用電源装置は、複数の単電池を直列接続して形成される走行用バッテリを備え、走行用の電動モータに給電する車両用電源装置であって、前記走行用バッテリを収容するケース体に設けられ、前記走行用バッテリの一端および他端がそれぞれ電気的に接続される一端側出力端子および他端側出力端子と、それぞれ複数の前記単電池を直列接続して形成され、前記走行用バッテリを構成する前記一端側出力端子側の第1の組電池および前記他端側出力端子側の第2の組電池と、前記ケース体に収容され、前記一端側出力端子と前記第1の組電池との電気的な接続を開閉する第1の開閉手段と、前記走行用バッテリの中間電位の位置よりも他端側に位置させて前記第1の組電池と前記第2の組電池との間に設けられ、前記第1の組電池と前記第2の組電池との電気的な接続を開閉する第2の開閉手段とを有し、前記第2の組電池の最大電圧を安全電圧に設定することを特徴とする。
【0010】
本発明の車両用電源装置は、前記安全電圧は直流で60V以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第2の開閉手段を走行用バッテリの中間電位の位置よりも第1の開閉手段が設けられていない側に位置させて設けることにより、第1の開閉手段が設けられていない側に配置される第2の組電池の最大電圧を安全電圧に設定している。これにより、万一、車両用電源装置内で漏電が生じても、第1の開閉手段が設けられていない側において高電圧回路と車体との間で、安全電圧の上限値を超える電位差が発生することを防止できる。したがって、第2の組電池と他端側出力端子との間に回路遮断リレーを設けなくとも、作業者の安全を十分に確保することができ、回路遮断リレーを省略することで車両用電源装置の小型化およびコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態である車両用電源装置を備えた高電圧回路を示す概略図である。
【図2】比較例としての高電圧回路において車両用電源装置内で漏電した状態を示す概略図である。
【図3】図1に示す高電圧回路において車両用電源装置内で漏電した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は電気自動車に搭載された高電圧回路を示す概略図である。この電気自動車には、駆動源としての走行用のモータジェネレータ(電動モータ)10が搭載されている。モータジェネレータ10は三相交流モータにより構成されており、その出力軸には歯車列を介して図示しない車輪駆動軸が連結されている。このモータジェネレータ10には、インバータ11を介して、モータジェネレータ10に電力を供給するための高電圧バッテリ(走行用バッテリ)12が電気的に接続されている。なお、電気自動車を制動する際には、モータジェネレータ10を発電駆動することにより、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して高電圧バッテリ12に回収することが可能となる。
【0014】
インバータ11は、高電圧バッテリ12からの直流電流を三相交流電流に変換するための図示しない複数のスイッチング素子、および各スイッチング素子に直流電流を安定して供給するためのコンデンサ等を有している。各スイッチング素子は、図示しない車両制御装置からインバータ11に入力される制御信号によりon/offされる。このインバータ11を介してモータジェネレータ10に供給される三相交流電流の電流値や周波数を制御することにより、モータジェネレータ10の出力トルクや回転数の制御が行われる。
【0015】
また、インバータ11には、DC/DCコンバータ13(以下、コンバータという)を介して低電圧バッテリ14が接続されている。例えば、低電圧バッテリ14には定格電圧が12Vの鉛蓄電池が用いられる。この低電圧バッテリ14は、インバータ11、コンバータ13、車両制御装置に対して電力を供給するとともに、ヘッドライト、テールランプ、ウィンカー、ブロワ等の図示しない車両補機に対して電力を供給する。また、コンバータ13を介して高電圧電流から低電圧電流を生成することにより、高電圧バッテリ12から低電圧バッテリ14に対して電力が供給される。
【0016】
モータジェネレータ10と高電圧バッテリ12とを電気的に接続する高電圧回路は車体に対して絶縁されており、乗員の安全が確保されている。図1に破線で示すように、インバータ11とコンバータ13とは同一の容器16内に収容されており、容器16内に設けられる回路が車体に対して絶縁された状態でモータ制御ユニット17として車両に搭載されている。インバータ11とコンバータ13とは、容器16内に配索される通電ライン18により互いに電気的に接続されている。また、モータ制御ユニット17の容器16には、容器16内でインバータ11やコンバータ13にそれぞれ電気的に接続される複数の出力端子19が設けられている。これにより、容器16の外側からは出力端子19以外の回路に接触することが防止され、通常時に容器16の内部に触る必要がないように構成されている。これら出力端子19を介して、インバータ11にモータジェネレータ10や後述するバッテリパック21が電気的に接続されるとともに、コンバータ13に低電圧バッテリ14が電気的に接続されている。
【0017】
なお、図示は省略するが、モータ制御ユニット17には、インバータ11やコンバータ13を制御するための制御用の端子等が設けられている。この制御用の端子を介してモータ制御ユニット17が車両制御装置に接続されている。本実施の形態においては、インバータ11に高電圧バッテリ12とコンバータ13とを別々に接続するようにしたが、これに限られることはない。例えば、インバータ11とコンバータ13とを高電圧バッテリ12に対して並列に接続するようにしても良い。
【0018】
同様に、高電圧バッテリ12はバッテリボックス(ケース体)20に収容されており、バッテリボックス20内に設けられる高電圧回路が車体に対して絶縁された状態でバッテリパック(車両電源装置)21として車両に搭載されている。バッテリボックス20には、バッテリボックス20内で高電圧バッテリ12の一端および他端にそれぞれ電気的に接続される一端側出力端子22aおよび他端側出力端子22bが設けられている。これにより、バッテリボックス20の外側からは出力端子22a,22b以外の高電圧回路に接触することが防止され、通常時にバッテリボックス20の内部に触る必要がないように構成されている。この一対の出力端子22a,22bを介して、バッテリボックス20内の高電圧回路がインバータ11に電気的に接続されている。
【0019】
バッテリボックス20の内部には、高電圧バッテリ12と一端側出力端子22aとの間に位置させて、第1の開閉手段としてのリレーユニット24が収容されている。リレーユニット24は、高電圧バッテリ12の一端(正極)と一端側出力端子22aとを電気的に接続する給電ライン25aを開閉するためのメインリレー26と、メインリレー26に対して並列接続される抵抗器27およびサブリレー28とを有している。それぞれのリレー26,28の開閉動作は車両制御装置により制御される。リレーユニット24が閉動作されると、高電圧バッテリ12とインバータ11とが電気的に接続され、車両が作動状態となる。一方、リレーユニット24が開動作されると、高電圧バッテリ12とインバータ11との電気的な接続が遮断され、車両が非動作状態となる。
【0020】
このリレーユニット24では、インバータ11に設けられたコンデンサが十分に充電されていない状態でメインリレー26が閉動作されると、コンデンサの急充電によって高電圧回路に過大な電流が流れてしまうこととなる。そのため、リレーユニット24を閉動作する際には、抵抗器27に直列接続されたサブリレー28を閉動作した後、メインリレー26を閉動作させることにより高電圧回路に過大な電流が流れてしまうことが防止されている。これらリレー26,28の開閉動作のタイミングは車両制御装置により制御される。
【0021】
また、バッテリボックス20の内部には、高電圧バッテリ12と他端側出力端子22bとの間に位置させて電流計29が設けられている。バッテリボックス20内の高電圧回路を流れる直流電流の電流値を計測するため、電流計29は高電圧バッテリの他端(負極)と他端側出力端子22bとを電気的に接続する給電ライン25bに直列接続されている。この電流計29から車両制御装置に出力される信号等に基づいて、車両制御装置によりリレーユニット24やインバータ11などの制御が行われる。なお、図示は省略するが、バッテリパック21には、リレーユニット24を制御するための制御用の端子や、電流計29の信号を出力するための出力用の端子等が設けられている。これらの端子を介してバッテリパック21が車両制御装置に接続されている。
【0022】
高電圧バッテリ12は、モータジェネレータ10を駆動するために必要な電圧および放電容量を得るため、単電池からなる複数の電池セルを互いに直列接続することにより構成されている。例えば、近年の電気自動車では、単電池として約1.2Vのニッケル水素バッテリや約3.6Vのリチウムイオンバッテリ等からなる複数の電池セルを互いに直列接続することにより、高電圧バッテリ12の定格電圧が330V前後となるように構成されており、ここでは単セル当たりの定格電圧が約3.6Vのリチウムイオンバッテリが92個直列に接続されている。つまり、高電圧バッテリ12の最大電圧v0は、後述する安全電圧の上限値(例えば、60V)の2倍よりも大きく設定されている。
【0023】
高電圧バッテリ12には、点検作業時や整備作業時の安全確保を目的として、第2の開閉手段としてのプラグユニット(安全プラグ装置)31が設けられている。プラグユニット31は、高電圧バッテリ12の中間電位の位置よりも他端側(負極側)に位置させて、つまり高電圧バッテリ12の中央位置よりもリレーユニット24が設けられていない側にずらして配置されている。このプラグユニット31により、高電圧バッテリ12を構成する複数の電池セルは、プラグユニット31よりも一端側に配置される第1の組電池32と、プラグユニット31よりも他端側に配置される第2の組電池33とに分断されている。
【0024】
他端側出力端子22b側に設けられる第2の組電池33は、複数の電池セルを互いに直列接続することにより、その最大電圧v2が安全電圧となるように設定されている。ここで、安全電圧とは、UL規格やIEC規格等の工業規格により定められた危険電圧(Hazardous Voltage)とならない電圧である。例えば、UL規格では、直流で60Vを超える電圧を危険電圧として定義しており、この場合、安全電圧は直流で60V以下の電圧となる。また、一端側出力端子22a側に設けられる第1の組電池32は、第2の組電池33を構成する電池セルを除く他の複数の電池セルを互いに直列接続することにより形成されている。例えば、約330Vの定格電圧を生じる高電圧バッテリ12において、第2の組電池33の最大電圧v2を安全電圧となる60V以下に設定するために、単セル当たりの最大電圧が4.2Vであるとするなら最大電圧を58.8Vになるように14個の電池セルを直列にすることで定格電圧が50.4Vになるように設定した場合には、第1の組電池32は78個の電池セルが直列に接続され、定格電圧が280.8Vに設定され、最大電圧v1は327.6Vとなる。
【0025】
プラグユニット31は、第1の組電池32と第2の組電池33との間に設けられる図示しないプラグ受け(ソケット)と、プラグ受けに着脱自在に装着されるサービスプラグ34とを有している。プラグ受けにサービスプラグ34が装着された状態では、第1の組電池32と第2の組電池33とが互いに通電され、高電圧バッテリ12の両端間に電圧が生じる。一方、プラグ受けからサービスプラグ34が離脱された状態では、第1の組電池32と第2の組電池33との通電が遮断され、高電圧バッテリ12の両端間に電圧が生じない。
【0026】
したがって、点検作業時や整備作業時には、作業者によりプラグ受けからサービスプラグ34が離脱されることにより、バッテリボックス20内の高電圧回路が遮断される。これにより、作業者の安全が確保される。なお、車両非作動時にはリレーユニット24によりバッテリボックス20内の高電圧回路が遮断されることとなるが、これに加えサービスプラグ34を離脱することにより車両事故等の非常時においてもバッテリボックス20内の高電圧回路を確実に遮断することが可能となる。
【0027】
また、高電圧バッテリ12には、高電圧回路の保護を目的として、プラグユニット31と第2の組電池33との間に位置させてヒューズ35が設けられている。このヒューズ35により、バッテリボックス20内の高電圧回路に過大な電流が流れることが防止されている。
【0028】
図2は比較例としての高電圧回路においてバッテリパック内で漏電した状態を示す概略図である。図2において図1に示す部材と同様の部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。図3は図1に示す高電圧回路においてバッテリパック内で漏電した状態を示す概略図である。
【0029】
図2に示すバッテリパック41では、プラグユニット31が高電圧バッテリ12の中央に設けられている。そのため、プラグユニット31の両側にそれぞれ設けられる第1の組電池42と第2の組電池43とがほぼ同じ定格電圧を生じるように形成されている。例えば、図1に示す例と同じ電池セルを用いて高電圧バッテリ12の定格電圧が約330Vに設定される場合には、第1の組電池42と第2の組電池43の最大電圧u1,u2がそれぞれ約193Vとなり、安全電圧の上限値を超える最大電圧u1,u2に設定される。
【0030】
このように第2の組電池43の最大電圧u2が安全電圧の上限値より大きく設定される場合には、万一、バッテリパック41内で漏電したときに、リレーユニット24が設けられていない側において高電圧回路と車体との間で大きな電位差が発生するおそれがある。すなわち、図2に示すように、バッテリパック41内でプラグユニット31の他端側(第2の組電池43側)が車体に対して漏電したときには、第2の組電池43の電圧により、高電圧回路と車体との間で、安全電圧の上限値を超える電位差が生じることとなる。その場合には、点検作業時や整備作業時にリレーユニット24およびプラグユニット31を開状態としても、高電圧回路と車体との間で発生する電位差を遮断することができない。このため、作業者の安全を十分に確保することができない。
【0031】
それに対して、図1に示す高電圧回路では、第2の組電池33の最大電圧v2が安全電圧に設定されている。このため、図3に示すように、万一、バッテリパック21内でプラグユニット31の他端側(第2の組電池33側)が車体に対して漏電したとしても、リレーユニット24が設けられていない側において高電圧回路と車体との間で、安全電圧の上限値を超える電位差が発生することがない。したがって、第2の組電池33と他端側出力端子22bとの間に給電ライン25bを開閉するための回路遮断リレー等の開閉手段を設けなくとも、作業者の安全を十分に確保することができる。
【0032】
また、図1に示す高電圧回路において、万一、バッテリパック21内でプラグユニット31の一端側(第1の組電池32側)が車体に対して漏電したときには、第1の組電池32の電圧により、リレーユニット24が設けられる側において高電圧回路と車体との間で、安全電圧の上限値を超える電位差が発生することとなる。その場合には、点検作業時や整備作業時にリレーユニット24およびプラグユニット31を開状態とすることで、高電圧回路と車体との間で発生する電位差を遮断することが可能となる。
【0033】
このように、図1に示すバッテリパック21においては、プラグユニット31を高電圧バッテリ12の中間電位の位置よりもリレーユニット24が設けられていない側にずらして設けることにより、リレーユニット24が設けられていない側に配置される第2の組電池33の最大電圧v2を安全電圧に設定している。これにより、万一、バッテリパック21内で漏電が生じても、リレーユニット24が設けられていない側において高電圧回路と車体との間で、安全電圧の上限値を超える電位差が発生することを防止できる。したがって、第2の組電池33と他端側出力端子22bとの間に回路遮断リレーを設けなくとも、作業者の安全を十分に確保することができ、回路遮断リレーを省略することでバッテリパック21の小型化およびコストダウンを図ることができる。
【0034】
また、例えば、UL規格で定義された危険電圧とならない電圧、つまり直流で60V以下の電圧を安全電圧とすることで、UL規格に則ってバッテリパック21を製造することが可能となる。これにより、バッテリパック21の信頼性を確保することができる。
【0035】
なお、高電圧バッテリ12の最大電圧v0は任意に設定可能であることは言うまでもない。ただし、図2に示すようにプラグユニット31を高電圧バッテリ12の中央に設けた場合に、第1の組電池42と第2の組電池43とのいずれもが安全電圧の上限値を超えるような最大電圧u1,u2に設定されるように、高電圧バッテリ12の最大電圧v0が設定されることが好ましい。つまり、安全電圧の上限値の2倍(例えば、120V)より大きい最大電圧v0を生じる高電圧バッテリ12を備えたバッテリパック21に対して本発明は好適である。
【0036】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前記実施の形態においては、本発明を適用したバッテリパック21を電気自動車に搭載するようにしたが、走行用の電動モータを備えるハイブリッド車などの他の車両に本発明を適用したバッテリパック21を搭載するようにしても良い。
【0037】
また、前記実施の形態においては、高電圧バッテリ12の正極側にリレーユニット24を設けるようにしたが、高電圧バッテリ12の負極側にリレーユニット24を設けるようにしても良い。その場合には、プラグユニット31が高電圧バッテリ12の中間電位の位置よりも正極側に位置させて設けられることとなる。さらに、バッテリパック21を備える高電圧回路の構成は任意に変更可能であり、例えば、高電圧回路を遮断するための他のリレーをバッテリパック21の外部に設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0038】
10 モータジェネレータ(電動モータ)
12 高電圧バッテリ(走行用バッテリ)
20 バッテリボックス(ケース体)
21 バッテリパック(車両用電源装置)
22a 一端側出力端子
22b 他端側出力端子
24 リレーユニット(第1の開閉手段)
31 プラグユニット(第2の開閉手段)
32 第1の組電池
33 第2の組電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単電池を直列接続して形成される走行用バッテリを備え、走行用の電動モータに給電する車両用電源装置であって、
前記走行用バッテリを収容するケース体に設けられ、前記走行用バッテリの一端および他端がそれぞれ電気的に接続される一端側出力端子および他端側出力端子と、
それぞれ複数の前記単電池を直列接続して形成され、前記走行用バッテリを構成する前記一端側出力端子側の第1の組電池および前記他端側出力端子側の第2の組電池と、
前記ケース体に収容され、前記一端側出力端子と前記第1の組電池との電気的な接続を開閉する第1の開閉手段と、
前記走行用バッテリの中間電位の位置よりも他端側に位置させて前記第1の組電池と前記第2の組電池との間に設けられ、前記第1の組電池と前記第2の組電池との電気的な接続を開閉する第2の開閉手段とを有し、
前記第2の組電池の最大電圧を安全電圧に設定することを特徴とする車両用電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用電源装置において、前記安全電圧は直流で60V以下であることを特徴とする車両用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−205382(P2012−205382A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67268(P2011−67268)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】