説明

車両用電源装置

【課題】効率よく大電力負荷への電力供給が可能で、かつ、その他の負荷へも回生電力を有効活用することができる車両用電源装置の提供。
【解決手段】車両用電源装置11は、第1DC/DCコンバータ13と、第1蓄電部15と、第2蓄電部17と、第2DC/DCコンバータ19と、第1蓄電部電圧検出回路21と、全蓄電部電圧検出回路23と、制御部25からなる。制御部25は、大電力負荷29の非駆動時に、全蓄電部電圧Vcが、大電力負荷駆動下限電圧Vsc以上となる範囲で、かつ、少なくとも第1蓄電部15が車両の回生電力を充放電するように第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19を制御し、大電力負荷29の駆動時に、第1蓄電部15と第2蓄電部17の電力を大電力負荷29に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生電力回収機能を有する車両用電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省燃費のために減速時の回生電力回収機能を有する車両が開発されている。この車両について、例えば特許文献1に示される車両用電力制御装置が提案されている。この概略構成図を図9に示す。車両のエンジン131はタイヤ133と発電機135に機械的に接続されている。発電機135には主電源であるバッテリ137と車両電気負荷139が電気的に接続される。なお、車両電気負荷139にはスタータが含まれる。さらに、発電機135にはDC/DCコンバータ141を介して蓄電部である電気二重層コンデンサ143が電気的に接続される。また、DC/DCコンバータ141は制御部である電子演算装置145により制御される。
【0003】
次に、このような車両用電力制御装置における動作について説明する。車両の減速期間に発電機135を発電させることで回生電力が発生する。それにより、電子演算装置145はDC/DCコンバータ141に対して電気二重層コンデンサ143を充電するように制御する。その結果、前記回生電力が電気二重層コンデンサ143に蓄えられる。その後、車両が減速を終了すると、電子演算装置145はDC/DCコンバータ141に対して電気二重層コンデンサ143をバッテリ137に優先して放電するように制御する。その結果、電気二重層コンデンサ143に蓄えた前記回生電力がバッテリ137や車両電気負荷139に供給され、その有効活用が可能となる。従って、前記車両の省燃費化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3465293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した図9の車両用電力制御装置によると、確かに回生電力の有効活用ができるのであるが、電気二重層コンデンサ143における急峻な充放電が可能であるという特性を活かして、蓄えた前記回生電力でスタータや電動パワーステアリング(いずれも図示せず)等の短期間に大電力を消費する負荷(以下、大電力負荷と呼ぶ)を駆動する構成とした場合、次のような課題が発生する。すなわち、前記大電力負荷は、いつ動作するかが不明確であるため、前記大電力負荷を駆動する分の前記回生電力を電気二重層コンデンサ143に残しておかなければならない。従って、電子演算装置145は、その他の車両電気負荷139に前記回生電力を十分に供給することができない可能性がある。さらに、電気二重層コンデンサ143に前記回生電力を残しておいても、前記大電力負荷を駆動する前に新たな減速が始まると、電子演算装置145は、減速による前記回生電力を電気二重層コンデンサ143へ十分に充電できない可能性もある。また、電気二重層コンデンサ143から前記大電力負荷へ電力を供給すると、DC/DCコンバータ141に大電流が流れ、DC/DCコンバータ141による損失が大きくなる。これらのことから、車両全体として回生電力の有効活用が必ずしも十分に図れないという課題があった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、効率よく大電力負荷への電力供給が可能で、かつ、その他の負荷へも回生電力を有効活用することができる車両用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の車両用電源装置は、第1DC/DCコンバータと、前記第1DC/DCコンバータに電気的に接続される第1蓄電部と、前記第1蓄電部と直列に接続される第2蓄電部と、前記第2蓄電部の両端に電気的に接続される第2DC/DCコンバータと、前記第1蓄電部の両端に電気的に接続され、第1蓄電部電圧(Vc1)を検出する第1蓄電部電圧検出回路と、前記第1蓄電部と前記第2蓄電部の直列回路の両端に電気的に接続され全蓄電部電圧(Vc)を検出する全蓄電部電圧検出回路か、または、前記第2蓄電部の両端に電気的に接続され第2蓄電部電圧(Vc2)を検出する第2蓄電部電圧検出回路のいずれか一方と、前記全蓄電部電圧検出回路と前記第2蓄電部電圧検出回路のいずれか一方、前記第1DC/DCコンバータ、第2DC/DCコンバータ、および第1蓄電部電圧検出回路と電気的に接続される制御部と、を備え、前記第1DC/DCコンバータは車両のバッテリと電気的に接続され、前記直列回路の両端は、前記車両の大電力負荷と電気的に接続され、前記制御部は、前記大電力負荷の非駆動時に、前記第1蓄電部電圧(Vc1)と前記第2蓄電部電圧(Vc2)との合計電圧である前記全蓄電部電圧(Vc)が、大電力負荷駆動下限電圧(Vsc)以上となる範囲で、かつ、少なくとも前記第1蓄電部が前記車両の回生電力を充放電するように前記第1DC/DCコンバータと前記第2DC/DCコンバータを制御し、前記大電力負荷の駆動時に、前記第1蓄電部と前記第2蓄電部の電力を前記大電力負荷に供給するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用電源装置によれば、制御部は、全蓄電部電圧(Vc)が、大電力負荷駆動下限電圧(Vsc)以上となる範囲で、かつ、少なくとも第1蓄電部が車両の回生電力を充放電するので、少なくとも前記第1蓄電部による前記大電力負荷以外の負荷への電力供給や、新たに減速時に発生する回生電力の充電が可能となる。また、前記第1蓄電部に直列に第2蓄電部を接続し、第1DC/DCコンバータと第2DC/DCコンバータを介さずに、前記第1蓄電部と第2蓄電部が蓄えた電力を前記大電力負荷に供給できる構成としているので、前記制御部は、前記第1DC/DCコンバータと前記第2DC/DCコンバータによる損失がない状態で、前記大電力負荷を十分に駆動できる。これらのことから、車両用電源装置は、効率よく前記大電力負荷への電力供給が可能で、かつ、その他の前記負荷へも前記回生電力を有効活用することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における車両用電源装置のブロック回路図
【図2】本発明の実施の形態1における車両用電源装置の基本動作を示すフローチャート
【図3】本発明の実施の形態1における車両用電源装置の他の構成のブロック回路図
【図4】本発明の実施の形態2における車両用電源装置の基本動作を示すフローチャート
【図5】本発明の実施の形態3における車両用電源装置の基本動作の一部を示すフローチャート
【図6】本発明の実施の形態4における車両用電源装置の基本動作の一部を示すフローチャート
【図7】本発明の実施の形態4における車両用電源装置の車両の使用期間に対する蓄電素子上限電圧の相関図
【図8】本発明の実施の形態5における車両用電源装置の基本動作の一部を示すフローチャート
【図9】従来の車両用電力制御装置の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、ここでは車両用電源装置を回生電力回収機能付きアイドリングストップ車両に適用した場合について述べる。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における車両用電源装置のブロック回路図である。図2は、本発明の実施の形態1における車両用電源装置の基本動作を示すフローチャートである。図3は、本発明の実施の形態1における車両用電源装置の他の構成のブロック回路図である。なお、図1、図3において、太線は電力系配線を、細線は信号系配線をそれぞれ示す。
【0012】
図1において、車両用電源装置11は、第1DC/DCコンバータ13と、第1DC/DCコンバータ13に電気的に接続される第1蓄電部15と、第1蓄電部15と直列に接続される第2蓄電部17と、第2蓄電部17の両端に電気的に接続される第2DC/DCコンバータ19と、第1蓄電部15の両端に電気的に接続され、第1蓄電部電圧Vc1を検出する第1蓄電部電圧検出回路21と、第1蓄電部15と第2蓄電部17の直列回路の両端に電気的に接続され全蓄電部電圧Vcを検出する全蓄電部電圧検出回路23と、全蓄電部電圧検出回路23、第1DC/DCコンバータ13、第2DC/DCコンバータ19、および第1蓄電部電圧検出回路21と電気的に接続される制御部25と、を備えている。
【0013】
また、第1DC/DCコンバータ13は、車両のバッテリ27と電気的に接続され、前記直列回路の両端は、前記車両の大電力負荷29と電気的に接続される。
【0014】
そして、制御部25は、大電力負荷29の非駆動時に、第1蓄電部電圧Vc1と第2蓄電部電圧Vc2との合計電圧である全蓄電部電圧Vcが、大電力負荷駆動下限電圧Vsc以上となる範囲で、かつ、少なくとも第1蓄電部15が前記車両の回生電力を充放電するように第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19を制御し、大電力負荷29の駆動時に、第1蓄電部15と第2蓄電部17の電力を大電力負荷29に供給するよう制御する。
【0015】
これにより、制御部25は、全蓄電部電圧Vcが、大電力負荷駆動下限電圧Vsc以上となる範囲で、かつ、第1蓄電部15が前記車両の回生電力を充放電するので、第1蓄電部15による大電力負荷29以外の負荷31への電力供給や、新たに減速時に発生する前記回生電力の充電が可能となる。また、第1蓄電部15に直列に第2蓄電部17を接続し、第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19を介さずに、第1蓄電部15と第2蓄電部17が蓄えた電力を大電力負荷29に供給できる構成としているので、制御部25は、第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19による損失がない状態で、大電力負荷29を十分に駆動できる。これらのことから、車両用電源装置11は、効率よく大電力負荷29への電力供給が可能で、かつ、その他の負荷31へも前記回生電力を供給することで、その有効活用を図ることができる。
【0016】
以下、より具体的に本実施の形態1の構成、動作について説明する。
【0017】
図1において、前記車両に搭載される発電機33は、図示しないエンジンにより電力を発生する。この発電機33にはバッテリ27と負荷31が電力系配線で電気的に接続されている。ここで、バッテリ27は鉛バッテリであり、負荷31は前記車両に搭載される電装品である。なお、負荷31には、後述する大電力負荷29は含まれない。
【0018】
バッテリ27には、車両用電源装置11が電気的に接続される。具体的には、バッテリ27の正極が車両用電源装置11の正極端子35に電気的に接続される。そして、バッテリ27の負極が車両用電源装置11の負極端子37に電気的に接続される。なお、負極端子37は前記車両のグランドとも接続される。
【0019】
車両用電源装置11には、大電力負荷端子39とスイッチ41を介して大電力負荷29が電気的に接続される。なお、大電力負荷29の負極はグランドに接続される。
【0020】
大電力負荷29は、短期間に大電力を消費する負荷として、本実施の形態1ではスタータとしている。すなわち、前記車両はアイドリングストップ機能を備えるため、前記車両が信号等で停車すると前記エンジンを止める。そして、再び前記車両が走行を開始する際に前記スタータを駆動する。従って、前記スタータは前記車両の使用中において、アイドリングストップを終了するごとに、短期間に大電力を消費して駆動する負荷である。
【0021】
なお、大電力負荷29は、前記スタータに限定されるものではなく、例えば前記車両の操舵開始時に短期間に大電力を消費する電動パワーステアリング等であってもよい。
【0022】
また、スイッチ41は大電力負荷29への電力をオンオフするためのもので、3端子スイッチ構成のものを用いている。すなわち、3端子の内、共通端子43には大電力負荷29が、第1端子45には大電力負荷端子39が、第2端子47にはバッテリ27の正極が、それぞれ接続される。そして、スイッチ41は、外部からの信号によって、共通端子43の接続先を第1端子45、第2端子47、または無接続のいずれか1つに切り替える構成を有する。従って、前記エンジンが駆動している通常時には、スイッチ41の共通端子43は無接続となる。また、アイドリングストップ後の前記エンジンの再始動時には、共通端子43は第1端子45に接続される。これにより、第1蓄電部15と第2蓄電部17の電力が大電力負荷29に直接供給され、前記エンジンを再始動できる。また、前記車両の使用を開始する際は、第1蓄電部15と第2蓄電部17の電力量が不十分な可能性があるので、共通端子43は第2端子47に接続される。これにより、バッテリ27の電力が大電力負荷29に供給され、前記エンジンを始動できる。
【0023】
スイッチ41は、上記のような機能を持つものとして、本実施の形態1では3端子を有するリレーを用いている。前記リレーを用いる理由は、内部抵抗が小さくスイッチ41における損失が小さいため、およびスイッチ41の切り替え頻度が少ないためである。
【0024】
なお、前記リレーは3端子構成のものに限定されるものではなく、スイッチ41は、2端子のリレーを組み合わせた構成としてもよい。また、スイッチ41は前記リレーに限定されるものではなく、例えば半導体スイッチング素子等の、外部から切り替え制御ができるものであればよい。前記半導体スイッチング素子を用いると、前記リレーのように機械的な接点がないので、前記半導体スイッチング素子は、スイッチ41の切り替え頻度が多い用途、例えば大電力負荷29が電動パワーステアリングの場合等に適用できる。
【0025】
また、車両用電源装置11には、データ端子49を介して車両用制御部51が信号系配線で電気的に接続される。車両用制御部51は車両全体の制御を司るものであり、マイクロコンピュータとメモリ等の周辺回路で構成される。従って、車両用制御部51には、スイッチ41を始めとして、前記車両に搭載された各種機器と電気的に接続される。そして、車両用制御部51は、前記機器からの各種信号を読み込み、そして各種制御信号を前記機器へ出力する。なお、図1では本実施の形態1の説明で必要な信号系配線以外は省略している。また、車両用制御部51は上記したように車両用電源装置11とも接続されるため、データ信号dataにより両者が様々な情報の送受信を行う。また、スイッチ41は車両用制御部51から出力されるスイッチ信号SWにより切り替え制御が行なわれる。
【0026】
次に、車両用電源装置11の詳細構成について説明する。
【0027】
正極端子35には第1DC/DCコンバータ13が電力系配線で接続される。従って、第1DC/DCコンバータ13は前記車両の前記バッテリと電気的に接続される構成となる。
【0028】
第1DC/DCコンバータ13には、第1蓄電部15が電気的に接続される。従って、第1DC/DCコンバータ13は、第1蓄電部15の充放電を行う。また、図1に示すように、第1蓄電部15は急峻な大電力を充放電する特性に優れる電気二重層キャパシタを4個直列に接続した構成としている。なお、第1蓄電部15を構成する前記電気二重層キャパシタを第1蓄電素子53と呼ぶ。ゆえに、第1蓄電部15は、第1蓄電素子53が4個直列に接続された構成を有する。
【0029】
ここで、第1蓄電素子53の詳細について説明する。上記したように、第1蓄電素子53は前記電気二重層キャパシタであるので、その満充電電圧の上限は約3Vである。従って、本実施の形態1では、第1蓄電素子53が過充電になる可能性を低減するためのマージンを考慮して、第1蓄電素子上限電圧Vek1を2.7Vと決定した。よって、第1蓄電素子53には最大2.7Vまで充電する構成としている。その結果、第1蓄電部15は第1蓄電素子53を4個直列に接続した構成であるので、第1蓄電部上限電圧Vck1は10.8V(=2.7V×4個)となる。
【0030】
一方、バッテリ27の開放電圧は12Vであり、発電機33の発電電圧は14.5Vである。従って、第1蓄電部上限電圧Vck1は、前記開放電圧や前記発電電圧よりも低い。ゆえに、第1DC/DCコンバータ13は正極端子35の電圧(前記開放電圧や前記発電電圧)を降圧して第1蓄電部15へ電力を供給する構成となる。なお、第1DC/DCコンバータ13は双方向動作が可能な構成としているので、第1蓄電部電圧Vc1を昇圧して、正極端子35を介し電力を出力することも可能である。
【0031】
このような構成により、第1DC/DCコンバータ13は、前記車両の減速時に発電機33が発生した回生電力を第1蓄電部15に充電し、前記車両の非減速時に第1蓄電部15の電力をバッテリ27や負荷31へ供給することができる。その結果、前記回生電力の有効活用が図れる。
【0032】
第1蓄電部15には、第2蓄電部17が直列に接続される。具体的には、図1に示すように、第1蓄電部15と第1DC/DCコンバータ13との接続点に第2蓄電部17が接続される構成としている。第2蓄電部17は、第1蓄電部15と同様に前記電気二重層キャパシタを用い、これを2個直列に接続した構成としている。なお、第2蓄電部17を構成する前記電気二重層キャパシタを第2蓄電素子55と呼ぶ。ゆえに、第2蓄電部17は、第2蓄電素子55が2個直列に接続された構成を有する。
【0033】
ここで、第2蓄電素子55の詳細について説明する。第2蓄電素子55は、第1蓄電素子53と同様に、前記満充電電圧の上限が約3Vである。従って、本実施の形態1では、第2蓄電素子55が過充電になる可能性を低減するためのマージンを考慮して、第2蓄電素子上限電圧Vek2を2.5Vと決定した。よって、第2蓄電素子55には最大2.5Vまで充電する構成としている。その結果、第2蓄電部17は第2蓄電素子55を2個直列に接続した構成であるので、第2蓄電部上限電圧Vck2は5V(=2.5V×2個)となる。
【0034】
なお、本実施の形態1では、第1蓄電部15を構成する第1蓄電素子53に対する第1蓄電素子上限電圧Vek1(=2.7V)は、第2蓄電部17を構成する第2蓄電素子55に対する第2蓄電素子上限電圧Vek2(=2.5V)より大きくしている。これは、以下の理由による。
【0035】
第1蓄電素子53と第2蓄電素子55に用いている前記電気二重層キャパシタは、前記満充電電圧の上限である約3Vに近づいている期間が長くなるほど、劣化が早くなる。一方、詳細な動作は後述するが、第2蓄電素子55は第1蓄電素子53に比べて、第2蓄電素子上限電圧Vek2に維持される期間が長くなるように制御される。その結果、第1蓄電素子上限電圧Vek1と第2蓄電素子上限電圧Vek2を同じ電圧値に決定すると、第2蓄電素子55の方が第1蓄電素子53に比べ早く劣化する。その結果、第1蓄電素子53はまだ劣化していないにもかかわらず、車両用電源装置11全体の寿命が短くなる。
【0036】
そこで、第1蓄電素子53と第2蓄電素子55の劣化が同等となるように、第1蓄電素子上限電圧Vek1(=2.7V)が第2蓄電素子上限電圧Vek2(=2.5V)より大きくする。これにより、車両用電源装置11全体の寿命を延ばすことができる。
【0037】
なお、第1蓄電素子上限電圧Vek1と第2蓄電素子上限電圧Vek2の値は、上記したものに限定されるものではなく、第1蓄電部15と第2蓄電部17の、それぞれの充放電頻度、第1蓄電素子53の直列に接続される数(以下、第1蓄電素子直列数n1という)と第2蓄電素子55の直列数(以下、第2蓄電素子直列数n2という)、使用する前記電気二重層キャパシタの劣化特性などに応じて、適宜決定されればよい。逆に、使用する前記電気二重層キャパシタの特性により、第1蓄電素子上限電圧Vek1と第2蓄電素子上限電圧Vek2の値が決まってくる場合は、それに合わせて第1蓄電素子直列数n1と第2蓄電素子直列数n2が、それぞれ決定されてもよい。
【0038】
また、上記した様々な要因によっては、必ずしも第1蓄電素子上限電圧Vek1が第2蓄電素子上限電圧Vek2より大きくなるように決定される必要はない。すなわち、例えば第1蓄電素子上限電圧Vek1と第2蓄電素子上限電圧Vek2とを等しく決定しても、車両用電源装置11全体の寿命が前記車両の寿命を超える場合は、あえて第1蓄電素子上限電圧Vek1が第2蓄電素子上限電圧Vek2より大きくなるように決定される必要はない。また、例えば第1蓄電素子53よりも第2蓄電素子55の方が寿命の長い前記電気二重層キャパシタを用いる場合は、逆に第1蓄電素子上限電圧Vek1が第2蓄電素子上限電圧Vek2より小さくなるように決定されてもよい。
【0039】
第2蓄電部17の両端には、第2DC/DCコンバータ19が電気的に接続される。第2DC/DCコンバータ19は第2蓄電部17の充電を行うために設けられている。ここで、第2蓄電部17は第1蓄電部15の正極側に直列に接続されているので、第2DC/DCコンバータ19は、第1蓄電部15と第2蓄電部17との接続点の電圧、すなわち第1蓄電部電圧Vc1を昇圧して第2蓄電部17を充電する。なお、本実施の形態1では、第2DC/DCコンバータ19は第2蓄電部17の充電を行うのみであるので、第2DC/DCコンバータ19は単方向の昇圧コンバータ構成である。従って、第1蓄電部15と第2蓄電部17とを、それぞれの上限電圧まで充電した場合の全蓄電部電圧Vcは、第1蓄電部上限電圧Vck1が10.8Vであり第2蓄電部上限電圧Vck2が5Vであるので、15.8Vとなる。
【0040】
第1蓄電部15の両端には、第1蓄電部電圧検出回路21が電気的に接続される。なお、第1蓄電部15の一端は前記グランドに接続されているので、第1蓄電部電圧検出回路21の一端も前記グランドに接続することで、第1蓄電部電圧検出回路21は、前記グランドを介して第1蓄電部15の両端に電気的に接続される構成となる。第1蓄電部電圧検出回路21は第1蓄電部15の両端電圧、すなわち、第1蓄電部電圧Vc1を検出して出力する。
【0041】
また、第1蓄電部15と第2蓄電部17の前記直列回路の両端には、全蓄電部電圧検出回路23が電気的に接続される。なお、詳細な接続構成については、上記した第1蓄電部電圧検出回路21と同様である。全蓄電部電圧検出回路23は全蓄電部電圧Vcを検出して出力する。ここで、全蓄電部電圧Vcは、第1蓄電部電圧Vc1と、第2蓄電部17の両端電圧である第2蓄電部電圧Vc2との合計電圧のことであり、Vc=Vc1+Vc2の関係が成立する。ゆえに、本実施の形態1においては、全蓄電部電圧Vcと第1蓄電部電圧Vc1とを検出しているので、両者の差から第2蓄電部電圧Vc2を求めることができる。
【0042】
第2蓄電部17と第2DC/DCコンバータ19との接続点は、大電力負荷端子39と電気的に接続される。この構成により、大電力負荷29の駆動時に、スイッチ41を介して、第1蓄電部15と第2蓄電部17の電力を大電力負荷29に供給することができる。
【0043】
なお、本実施の形態1では、スイッチ41を介して、第1蓄電部15と第2蓄電部17の電力を大電力負荷29に供給する構成としているが、これに限定されるものではなく、例えば大電力負荷29が大電力負荷端子39から出力される電力によってのみ駆動される構成とし、大電力負荷29の駆動制御を車両用制御部51が直接行なう場合であれば、スイッチ41は特に設けなくてもよい。この場合、回路構成が簡単になるが、大電力負荷29を発電機33、またはバッテリ27のいずれか一方のみの電力で駆動する場合、第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19を動作させる必要があるため、両者で損失が発生し効率が低下する。従って、本実施の形態1のように、第1蓄電部15と第2蓄電部17からの電力、および、発電機33やバッテリ27からの電力の、いずれか一方をスイッチ41により切り替えることができる構成が望ましい。
【0044】
正極端子35には、バッテリ電圧検出回路57が電気的に接続される。バッテリ電圧検出回路57は正極端子35に接続されるバッテリ27におけるバッテリ電圧Vbを検出して出力する。このバッテリ電圧検出回路57は、制御部25が第1蓄電部15の電力を正極端子35から出力する際に、正極端子35の電圧を監視し、第1DC/DCコンバータ13を制御する目的で設けられている。従って、第1蓄電部15の電力を大電力負荷29にのみ供給する構成の車両用電源装置11とする場合は、バッテリ電圧検出回路57がない構成でもよい。このような構成では、第1DC/DCコンバータ13は単方向の降圧コンバータ構成となる。但し、前記回生電力の有効活用の観点からは、本実施の形態1のように少なくとも第1蓄電部15の電力を正極端子35から出力する構成の方が望ましい。
【0045】
全蓄電部電圧検出回路23、第1DC/DCコンバータ13、第2DC/DCコンバータ19、第1蓄電部電圧検出回路21、およびバッテリ電圧検出回路57とは、制御部25が信号系配線により電気的に接続される。制御部25は、マイクロコンピュータとメモリ等の周辺回路から構成される。
【0046】
制御部25は、第1蓄電部電圧検出回路21から第1蓄電部電圧Vc1を、全蓄電部電圧検出回路23から全蓄電部電圧Vcを、バッテリ電圧検出回路57からバッテリ電圧Vbを、それぞれ読み込む。
【0047】
そして、制御部25は、第1DC/DCコンバータ13との間で、第1制御信号cont1の送受信を行なう。この第1制御信号cont1により、制御部25は第1DC/DCコンバータ13の状態を知ることができ、その結果に応じた第1DC/DCコンバータ13の制御を行なうことができる。なお、第1DC/DCコンバータ13の状態として、第1DC/DCコンバータ13に流れる第1電流I1が含まれる。従って、第1DC/DCコンバータ13は、電流センサ(図示せず)が内蔵された構成を有する。
【0048】
同様に、制御部25は、第2DC/DCコンバータ19との間で、第2制御信号cont2の送受信を行なう。この第2制御信号cont2は第1制御信号cont1と同様のものであり、第2DC/DCコンバータ19の制御を行なう。そして、第2制御信号cont2には第2DC/DCコンバータ19に流れる第2電流I2の値が含まれる。従って、第2DC/DCコンバータ19も、電流センサ(図示せず)が内蔵された構成を有する。
【0049】
また、制御部25は、データ端子49を介して車両用制御部51とも接続される。従って、制御部25は、車両用制御部51と、データ信号dataにより、様々な情報を送受信する。
【0050】
次に、このような車両用電源装置11の動作について説明する。
【0051】
車両を使用するために運転者がイグニションスイッチ(図示せず)をオンにすると、車両用制御部51は前記エンジンを始動するために、スイッチ41を第2端子47に切り替えるようにスイッチ信号SWを出力する。これを受け、スイッチ41が第2端子47に切り替わるので、大電力負荷29(スタータ)にバッテリ27の電力が供給される。これにより、前記エンジンの始動が行われる。前記エンジンの始動が完了すると、車両用制御部51はスイッチ41を無接続の状態(オフ状態)にするようスイッチ信号SWを出力する。これにより、バッテリ27から大電力負荷29への電力供給が停止する。また、前記エンジンが始動したので、負荷31へは発電機33の電力が供給される。
【0052】
なお、本実施の形態1では、前記車両の使用開始時にバッテリ27の電力で大電力負荷29を駆動し、前記エンジンの始動を行っているが、これは、第1蓄電部15と第2蓄電部17に電力が十分に蓄えられている場合は、第1蓄電部15と第2蓄電部17の電力により、大電力負荷29を駆動するようにしてもよい。この場合、制御部25はスイッチ41を第1端子45に切り替えるよう制御する。但し、このような制御を行なうには、前記車両の使用開始時に、常に第1蓄電部15と第2蓄電部17に大電力負荷29を駆動することができるだけの電力を蓄えておく必要がある。従って、前記車両の非使用時においても、第1蓄電部15と第2蓄電部17の自己放電による蓄電量減少を抑制するために、第1蓄電部15と第2蓄電部17は大容量化しておく必要がある。これらのことから、本実施の形態1のように、前記車両の使用開始時には、バッテリ27の電力で大電力負荷29を駆動する構成が望ましい。
【0053】
前記エンジンが始動し、前記車両の走行が開始されると、車両用制御部51はデータ信号dataにより、現在の前記車両の走行に関する情報を制御部25に出力する。ここで、前記情報は、例えば前記車両の加速中、定速走行中、減速中、停止中などの状態と、それらに関連する車速vの信号、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み込み量の信号、フューエルカット信号、アイドリングストップ信号などの各種信号である。
【0054】
制御部25は前記各種信号を受信するとともに、上記した第1蓄電部電圧Vc1、全蓄電部電圧Vc、バッテリ電圧Vb、第1電流I1、第2電流I2を読み込む。従って、制御部25は前記車両の状態と、車両用電源装置11の状態の両方に基づいて、車両用電源装置11の制御を行なう。
【0055】
この基本動作について図2を用いて説明する。図2は前記基本動作を示すフローチャートである。
【0056】
制御部25は前記マイクロコンピュータにより実行されるメインルーチン(図示せず)から図2のフローチャートに示すサブルーチンを繰り返し実行する。
【0057】
図2のサブルーチンが実行されると、制御部25は、車両用制御部51から受信した前記各種信号から、前記車両が大電力負荷29の駆動時であるか否かを判断する(ステップ番号S11)。ここで、前記車両は、上記したようにアイドリングストップ機能を有するので、大電力負荷29(スタータ)の駆動時とは、アイドリングストップを終了し、前記エンジンを再始動する時点である。
【0058】
もし、大電力負荷29の駆動時でなければ(S11のNo)、前記車両は前記エンジンの再始動時以外の状態である。この場合、制御部25は、前記車両の状態に応じて以下に説明するS13の動作を行う。
【0059】
まず、前記車両が減速時で、ブレーキペダルの踏み込み量信号から前記運転者が前記車両を制動していると判断される場合、制御部25は制動により発電機33が発生する前記回生電力を第1蓄電部15に充電するように第1DC/DCコンバータ13を制御する。これにより、制御部25は、前記回生電力を、一旦、第1蓄電部15に充電する。
【0060】
但し、制御部25は、全蓄電部電圧Vcと第1蓄電部電圧Vc1との差より第2蓄電部電圧Vc2を求め、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2(=5V)に至っていなければ、第2蓄電部17への前記回生電力の充電を優先するように、第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19を制御する。ここで、前記回生電力を第2蓄電部17へ優先して充電するために、制御部25は、第1DC/DCコンバータ13の第1電流I1と、第2DC/DCコンバータ19の第2電流I2とが、誤差範囲内で等しくなるように、第1制御信号cont1と第2制御信号cont2を、それぞれ出力する。このような動作により、第1DC/DCコンバータ13から出力される電流は、そのまま第2DC/DCコンバータ19に流れることになるので、第2蓄電部17へ前記回生電力が優先して充電される。なお、このように制御する理由は、後述する大電力負荷29の駆動確実性を増すためである。
【0061】
また、ここでは、制御部25は、第1電流I1と第2電流I2とが、誤差範囲内で等しくなるように制御して、第2蓄電部17への前記回生電力の充電を優先しているが、この制御に限定されるものではなく、第2電流I2より第1電流I1が大きくなるように制御してもよい。この場合、前記回生電力は第2蓄電部17に充電されると同時に、第1蓄電部15へも充電される。このような制御によっても、後述する大電力負荷29の駆動確実性を増すことができるとともに、第1蓄電部15へも前記回生電力を速やかに充電できる。
【0062】
また、制御部25は第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2に至れば、第2DC/DCコンバータ19を停止するよう制御する。従って、前記回生電力の発生時に既に第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2に至っているか、または前記回生電力の優先充電により第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2に至れば、第2DC/DCコンバータ19は前記回生電力の第2蓄電部17への充電を行わない。よって、これらの場合は、制御部25は第1蓄電部15へのみ前記回生電力を充電するよう第1DC/DCコンバータ13を制御する。
【0063】
なお、前記回生電力の充電により、第1蓄電部電圧Vc1が第1蓄電部上限電圧Vck1(=10.8V)に至れば、制御部25は、前記回生電力が発生し続けていても、第1DC/DCコンバータ13を停止するように制御する。その結果、第1蓄電部15と第2蓄電部17は上限まで充電された状態となるので、以後発生する前記回生電力はバッテリ27や負荷31に供給される。
【0064】
次に、前記車両が信号等で停止する。これにより、車両用制御部51はアイドリングストップを開始するために、前記エンジンを停止する。この情報はデータ信号dataにより制御部25に送信される。その結果、制御部25は、上記した制動時に、第1蓄電部15に蓄えた前記回生電力を負荷31に放電するように第1DC/DCコンバータ13を制御する。この際、制御部25は、全蓄電部電圧Vcが大電力負荷駆動下限電圧Vsc以上の範囲で第1蓄電部15を放電する。この際、第2DC/DCコンバータ19は停止しているので、第2蓄電部17から負荷31への電力供給は行われない。
【0065】
このような制御による第1蓄電部電圧Vc1と第2蓄電部電圧Vc2について具体的に説明する。
【0066】
まず、第2蓄電部電圧Vc2は第2蓄電部上限電圧Vck2まで充電されるので、アイドリングストップ中の第2蓄電部電圧Vc2は5Vである。
【0067】
次に、前記回生電力の第1蓄電部15への充電によって、第1蓄電部電圧Vc1が第1蓄電部上限電圧Vck1に至っていれば、アイドリングストップ開始直後の第1蓄電部電圧Vc1は10.8Vとなる。従って、全蓄電部電圧Vcは最大で15.8Vとなる。
【0068】
次に、アイドリングストップ中は発電機33からの発電電力が停止するので、バッテリ27からの電力持ち出しによる負担を軽減するために、制御部25はアイドリングストップが開始すると、第1蓄電部15の電力を負荷31に放電するように第1DC/DCコンバータ13を制御する。その結果、第1蓄電部電圧Vc1は経時的に低下する。
【0069】
制御部25は、全蓄電部電圧Vcを監視しているので、全蓄電部電圧Vcが大電力負荷駆動下限電圧Vscに至るまで、第1蓄電部15の電力を負荷31に放電する。ここで、大電力負荷駆動下限電圧Vscとは、第1蓄電部15と第2蓄電部17との電力で大電力負荷29を駆動するために必要な下限電圧のことで、予め大電力負荷29を何Vまで駆動可能であるかを求めておき、前記メモリに記憶しておく。ここでは、大電力負荷駆動下限電圧Vscを9Vとした。従って、制御部25は、全蓄電部電圧Vcが9Vに至るまで、アイドリングストップ中に第1蓄電部15の電力を放電するよう第1DC/DCコンバータ13を制御する。
【0070】
このような制御により、アイドリングストップ中に全蓄電部電圧Vcは最大15.8Vから最小9Vまでの範囲で変化することになる。ここで、上記したように、第2蓄電部電圧Vc2は5Vであるので、制御部25は、第1蓄電部電圧Vc1が最大10.8Vから最小4V(=第1蓄電部下限電圧Vcd1)に至るまで第1蓄電部15の電力を放電する。なお、第1蓄電部電圧Vc1が第1蓄電部下限電圧Vcd1に至れば、制御部25は第1DC/DCコンバータ13を停止する。これにより、大電力負荷駆動下限電圧Vscを維持することができるので、アイドリングストップ後の大電力負荷29の駆動が可能となる。
【0071】
次に、前記車両がアイドリングストップを終了し、大電力負荷29により前記エンジンを再始動する場合については、後述するS15で説明する。
【0072】
前記エンジンが再始動し、前記車両が加速、および定速走行をする。この際、前記エンジンの再始動直後は、大電力負荷29の駆動により、第1蓄電部電圧Vc1と第2蓄電部電圧Vc2が低下した状態である。そこで、制御部25は、次の前記エンジンの再始動に備えて、第2蓄電部17を第2蓄電部上限電圧Vck2(=5V)まで充電するよう、第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19を制御する。ここで、第2蓄電部17に充電される電力は、前記エンジンにより燃料を消費して発電機33により発電される電力であるので、まず、制御部25は蓄電される電気エネルギが少ない第2蓄電部17を優先的に充電する。この制御の詳細は、上記したように、前記車両の減速時の動作と同じである。
【0073】
次に、制御部25は第1蓄電部電圧Vc1が第1蓄電部下限電圧Vcd1(=4V)より低ければ、次の前記エンジンの再始動に備えて、第1蓄電部15を第1蓄電部下限電圧Vcd1(=4V)まで充電するよう、第1DC/DCコンバータ13を制御する。このような制御により、全蓄電部電圧Vcはアイドリングストップ後の早い段階で大電力負荷駆動下限電圧Vsc(=9V)に至る。その結果、次回のアイドリングストップを行う可能性を高めることができる。また、第1蓄電部15は第1蓄電部下限電圧Vcd1(=4V)までしか充電されないので、制御部25は、第1蓄電部上限電圧Vck1(=10.8V)までの範囲で、できるだけ多くの前記回生電力を第1蓄電部15に充電することができる。
【0074】
なお、第2蓄電部17を第2蓄電部上限電圧Vck2(=5V)まで優先して充電する理由は次の通りである。
【0075】
1)上記したように第2蓄電部17に蓄電される電気エネルギは少ないので、第2蓄電部17の充電を優先することで、大電力負荷29の駆動確実性を向上し、かつ、燃料を消費して発電される電力の蓄電量をできるだけ低減することができる。
【0076】
2)第2蓄電部17への前記回生電力の充電可能性を減らすことで、その分、第1蓄電部15への前記回生電力の充電量を増やすことができる。これにより、上記したように、アイドリングストップ中の負荷31へは第1蓄電部15の電力が供給されるので、その期間を長くすることが可能となり、前記車両の低燃費化が図れる。
【0077】
3)例えば、前記車両が走行を開始して、すぐに減速した場合、第2蓄電部電圧Vc2は第2蓄電部上限電圧Vck2まで充電されていない可能性がある。この際、制御部25は、上記したように、前記回生電力を第2蓄電部17に充電するのであるが、そのために第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19の両方を動作させるので、損失が大きくなる。従って、せっかく発生した前記回生電力を十分に活用できない可能性がある。ゆえに、制御部25は、前記車両の加速中や定速走行中に、速やかに第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2に至るまで充電しておく。この場合、バッテリ27や発電機33から第2蓄電部17を充電してもよいし、第1蓄電部15が蓄えた電力を第2DC/DCコンバータ19により第2蓄電部17へ充電してもよい。その結果、制御部25が前記回生電力を第1蓄電部15のみに充電する割合が増えるので、その分、第2DC/DCコンバータ19による損失を低減できる。
【0078】
以上に説明したS13の動作をまとめると、次のようになる。制御部25は、全蓄電部電圧Vcが大電力負荷駆動下限電圧Vsc(=9V)以上の範囲で、かつ、第1蓄電部15が前記回生電力を充放電するよう第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19を制御する。
【0079】
ここで、本実施の形態1では、上記3)で述べたように、制御部25が、前記回生電力を第2蓄電部17に充電するように、第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19の両方を動作させるよう制御する場合がある。しかし、第2蓄電部17は、後述するS15で述べるように、第2DC/DCコンバータ19を介さずに大電力負荷29への放電のみを行うので、制御部25は、第2蓄電部17が前記回生電力を放電するよう第2DC/DCコンバータ19を制御することはない。これらのことから、制御部25は、全蓄電部電圧Vcが大電力負荷駆動下限電圧Vsc以上とするために、第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19を制御する。さらに、制御部25は、全蓄電部電圧Vcが大電力負荷駆動下限電圧Vsc以上の範囲において、第1蓄電部15が前記回生電力を充放電するよう第1DC/DCコンバータ13を制御する。これらの動作をまとめると、上記したS13の動作となる。
【0080】
S13の動作の後は、図2のサブルーチンを終了し、前記メインルーチンに戻る。前記メインルーチンは図2のサブルーチンを繰り返し実行することで、前記車両の状況に応じて車両用電源装置11を制御する。
【0081】
ここで、図2のS11に戻り、前記車両が大電力負荷29を駆動する時であれば(S11のYes)、前記車両はアイドリングストップを終了し、前記エンジンの再始動を行う状態である。制御部25は、この状態を車両用制御部51からのデータ信号dataにより知ることができる。
【0082】
制御部25は大電力負荷29の駆動時であれば、S15の動作を行う。すなわち、まず、第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19が動作していれば、両方の動作を停止する。これにより、第1蓄電部15と第2蓄電部17の蓄えた電力を大電力負荷29に供給する準備ができたので、制御部25は、車両用制御部51に第1蓄電部15と第2蓄電部17の電力を大電力負荷29に供給する指令をデータ信号dataにより出力する(S15)。
【0083】
これを受け、車両用制御部51はスイッチ41を第1端子45に切り替える。その結果、第1蓄電部15と第2蓄電部17の電力が直接、大電力負荷29に供給される。これにより、前記エンジンが再始動される。なお、S13で述べたように、全蓄電部電圧Vcは大電力負荷駆動下限電圧Vsc(=9V)以上であるので、第1蓄電部15と第2蓄電部17の電力のみにより、大電力負荷29を駆動できる。ゆえに、主に第1蓄電部15に蓄えた前記回生電力の有効活用が図れるとともに、バッテリ27の負担を軽減することができる。また、このようにして大電力負荷29を駆動することにより、バッテリ電圧Vbの急峻な低下が抑制されるので、負荷31への電圧を安定化することができる。
【0084】
前記エンジンの再始動後は、車両用制御部51がスイッチ41をオフ状態とする。そして、制御部25は図2のサブルーチンを終了して、前記メインルーチンに戻る。
【0085】
なお、S15では、制御部25が第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19の動作を停止しているが、これは大電力負荷29(スタータ)が電力を消費する期間が短いため、特に停止しなくてもよい。この場合、制御が簡単になるが、第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19の動作が継続することにより、短期間とはいえ、大電力負荷29の動作時にバッテリ27からの電力の持ち出しが発生する。従って、さらなる高効率化のためには、制御部25が第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19の動作を停止する方が望ましい。
【0086】
また、S11でYesとなっても、第1蓄電部15と第2蓄電部17の少なくとも一方が充電途中で、全蓄電部電圧Vcが大電力負荷駆動下限電圧Vsc未満の場合がある。この際、制御部25は第1蓄電部15と第2蓄電部17による大電力負荷29の駆動を禁止するデータ信号dataを車両用制御部51に出力する。これを受け、車両用制御部51はスイッチ41を第2端子47に切り替え、バッテリ27の電力で大電力負荷29を駆動する。これにより、アイドリングストップ後に前記エンジンが再始動できない可能性を低減できる。
【0087】
以上の構成、動作により、前記回生電力の有効活用が図れる上に、大電力負荷29を第1蓄電部15と第2蓄電部17の電力で直接駆動でき、第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19の損失がないので、前記車両の全体に対する高効率化が可能な車両用電源装置11を実現できる。
【0088】
なお、本実施の形態1では、第2蓄電部電圧Vc2を全蓄電部電圧Vcと第1蓄電部電圧Vc1との差から計算で求める構成としたが、これは全蓄電部電圧検出回路23に替わって、第2蓄電部電圧検出回路を設けるようにしてもよい。このような車両用電源装置11のブロック回路図を図3に示す。
【0089】
図3における図1の構成との違いは、全蓄電部電圧検出回路23を外し、第2蓄電部17の両端に第2蓄電部電圧検出回路59を電気的に接続した点である。また、第2蓄電部電圧検出回路59は制御部25と信号系配線で接続され、第2蓄電部電圧Vc2を検出して制御部25へ出力する。上記以外の構成は図1と同じである。
【0090】
このような構成とすることにより、全蓄電部電圧Vcは、第1蓄電部電圧Vc1と第2蓄電部電圧Vc2の合計電圧を計算することで求められる。従って、本実施の形態1における動作は、図2で説明した動作と同等とすることができる。ゆえに、図3の構成における動作の詳細については省略する。
【0091】
以上のことから、本実施の形態1の車両用電源装置11は、第1蓄電部15と第2蓄電部17の直列回路の両端に電気的に接続され全蓄電部電圧Vcを検出する全蓄電部電圧検出回路23か、または、第2蓄電部17の両端に電気的に接続され第2蓄電部電圧Vc2を検出する第2蓄電部電圧検出回路59のいずれか一方を備える構成とすればよい。
【0092】
なお、全蓄電部電圧検出回路23と第2蓄電部電圧検出回路59を両方備え、第1蓄電部電圧検出回路21を外す構成も考えられる。しかし、この場合、制御部25は、全蓄電部電圧検出回路23と第2蓄電部電圧検出回路59とから、それぞれ得られる全蓄電部電圧Vcと第2蓄電部電圧Vc2との差を計算して、第1蓄電部電圧Vc1を求める必要がある。ゆえに、第1蓄電部電圧Vc1を直接検出する場合に比べ誤差が大きくなる。第1蓄電部15は急峻な前記回生電力の充放電頻度が高いので、前記誤差が伝播して第1DC/DCコンバータ13の充放電制御誤差が大きくなると、第1蓄電部15が過充電に至り劣化する可能性がある。従って、第1蓄電部電圧Vc1を全蓄電部電圧Vcと第2蓄電部電圧Vc2との差から求める構成は望ましくない。
【0093】
また、本実施の形態1では、第1蓄電素子53と第2蓄電素子55に、それぞれ前記電気二重層キャパシタを用いているが、それに限定されるものではなく、電気化学キャパシタやリチウムイオン電池などの二次電池でもよい。
【0094】
さらに、第1蓄電素子53と第2蓄電素子55とで、異なる種類の蓄電素子を用いるようにしてもよい。但し、本実施の形態1では、第2蓄電部17は大電力負荷29に急峻な駆動電流を流すために用いられているので、第2蓄電部17には短期間の急速放電特性に優れる蓄電素子を用いる方が望ましい。すなわち、第2蓄電部17は、単位体積あたりの容量が小さく、かつ単位体積あたりの電力密度が大きい蓄電素子で構成されればよい。このような理由から、第2蓄電素子55として前記電気二重層キャパシタを用いている。
【0095】
これに対し、第1蓄電部15は、できるだけ多くの前記回生電力を回収し、アイドリングストップ期間中にできるだけ長く負荷31へ放電できる構成が望ましい。そのため、第1蓄電部15は、第2蓄電部17より単位体積あたりの容量が大きく、かつ単位体積あたりの電力密度が小さい前記リチウムイオン電池などの二次電池を用いてもよい。これにより、寿命の点で前記電気二重層キャパシタより劣るものの、さらなる前記車両の高効率化が図れる。
【0096】
また、第2蓄電部17の蓄電エネルギは、第1蓄電部15の蓄電エネルギより小さいので、第2DC/DCコンバータ19の電力容量を第1DC/DCコンバータ13の電力容量と等しくする必要はない。すなわち、第2DC/DCコンバータ19の電力容量を第1DC/DCコンバータ13の電力容量より小さい構成としてもよい。この場合、第2DC/DCコンバータ19の小型、低コスト化が可能となる。
【0097】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における車両用電源装置の基本動作を示すフローチャートである。なお、本実施の形態2における車両用電源装置11の構成は実施の形態1と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0098】
すなわち、本実施の形態2における特徴は動作であり、実施の形態1と異なる点は次の通りである。制御部25は、大電力負荷29の非駆動時に、全蓄電部電圧Vcと第1蓄電部電圧Vc1との差電圧である第2蓄電部電圧Vc2が、第2蓄電部上限電圧Vck2を維持するように第2DC/DCコンバータ19を制御する。
【0099】
このような動作により、第2蓄電部電圧Vc2は、第2蓄電部上限電圧Vck2に至った後も、第2蓄電部上限電圧Vck2を維持するので、第2蓄電部17の内部抵抗による第2蓄電部電圧Vc2の経時的な低下を抑制することができる。従って、車両用電源装置11は、大電力負荷29がいつ駆動されても、その駆動確実性を、さらに増すことができる。
【0100】
以下、より具体的に本実施の形態2の動作について図4を用いて説明する。図4は図2と同様に、制御部25の前記メインルーチンから実行されるサブルーチンである。なお、図4では図2の詳細動作も含めて記載されているので、それらについても以下に説明する。
【0101】
図4のサブルーチンが実行されると、制御部25は、現在の前記車両の状態が大電力負荷29の駆動時であるか否かを判断する(S21)。この動作は図2のS11と同じである。
【0102】
もし、大電力負荷29の駆動時であれば(S21のYes)、前記車両はアイドリングストップを終了し前記エンジンを再始動する状態であるので、制御部25は後述するS47以降の動作を行う。
【0103】
一方、大電力負荷29の駆動時でなければ(S21のNo)、前記車両は前記エンジンの再始動時以外の状態である。この場合、制御部25は、まず第2蓄電部17を優先して充電する動作を行う。
【0104】
具体的には、制御部25は全蓄電部電圧検出回路23より全蓄電部電圧Vcを、第1蓄電部電圧検出回路21より第1蓄電部電圧Vc1を、それぞれ検出する(S23)。そして、制御部25は第2蓄電部電圧Vc2を全蓄電部電圧Vcと第1蓄電部電圧Vc1との差より計算して求める。すなわち、Vc2=Vc−Vc1より第2蓄電部電圧Vc2を求める(S25)。
【0105】
次に、制御部25は、求めた第2蓄電部電圧Vc2と第2蓄電部上限電圧Vck2とを比較する(S27)。ここで、第2蓄電部上限電圧Vck2は実施の形態1と同様に5Vとした。
【0106】
もし、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2未満であれば(S27のNo)、第2蓄電部17は第2蓄電部上限電圧Vck2まで充電されていないことになるので、優先して第2蓄電部17を充電する動作を行う。具体的には、制御部25は、第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19とに流れる電流が、誤差範囲内で等しくなるように両者を制御する(S29)。この詳細動作については実施の形態1と同じである。なお、第2蓄電部17を充電する電流値は、第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19とで流すことができ、かつ、できるだけ早く充電できる上限の電流値として予め決定されて、前記メモリに記憶されている。
【0107】
その後、制御部25は図4のサブルーチンを終了し、前記メインルーチンに戻る。前記メインルーチンは、実施の形態1と同様に、図4のサブルーチンを繰り返し実行するので、上記したS29の動作は、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2に至るまで継続されることになる。この際、大電力負荷29の駆動時でない限り、前記車両の状態(加速時、定速走行時、減速時、停車時)によらず第2蓄電部17の充電動作のみが行われる。従って、制御部25は、第2蓄電部17を第2蓄電部上限電圧Vck2まで充電する動作を優先していることとなる。
【0108】
なお、S29において、前記車両の制動による減速時には前記回生電力が第2蓄電部17に充電される。また、減速時以外で前記エンジンの駆動時には、燃料を消費して発電機33による発電された電力が第2蓄電部17に充電される。さらに、アイドリングストップ中はバッテリ27の電力が第2蓄電部17に充電される。但し、上記したように、第2蓄電部17の充電が優先されるので、アイドリングストップ中であって、第2蓄電部17が第2蓄電部上限電圧Vck2に至っていない場合は、第1蓄電部15には前記回生電力がほとんど充電されていない状態である。従って、アイドリングストップ中に第1蓄電部15から第2蓄電部17への充電は行われない。
【0109】
ここで、S27に戻り、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2以上であれば(S27のYes)、第2蓄電部17は第2蓄電部上限電圧Vck2まで充電されていることになるので、制御部25は、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2を維持するように、第2DC/DCコンバータ19を定電圧制御する(S31)。これにより、第2蓄電部17の内部抵抗による第2蓄電部電圧Vc2の経時的な低下を抑制することができる。すなわち、第2蓄電部17は前記車両の使用中に、できるだけ第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2となるように制御される。従って、実施の形態1のように、制御部25が第2蓄電部17を第2蓄電部上限電圧Vck2まで充電した後、第2DC/DCコンバータ19を停止すると、それ以降に大電力負荷29を駆動するまでの期間が長くなる場合、第2蓄電部電圧Vc2の経時的な低下が発生する可能性がある。その結果、第2蓄電部17において、大電力負荷29を駆動する際に必要な電力が不足することがある。そこで、本実施の形態2では、制御部25は、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2を維持するように第2DC/DCコンバータ19を制御するので、いつ大電力負荷29が駆動されても、必要な電力を確保できているので、駆動確実性をさらに増すことができる。
【0110】
ここで、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2を維持する動作には、経時的な電圧低下により第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2未満となった場合に、第2蓄電部17を第2蓄電部上限電圧Vck2まで充電する動作も含まれる。同様に、以下の説明で電圧を維持する動作は、全て、目標とする電圧未満となれば、目標電圧まで充電する動作を含むと定義する。
【0111】
なお、例えば第2蓄電部17の容量が大きい場合や、大電力負荷29の駆動頻度が高い場合などで、内部抵抗による第2蓄電部電圧Vc2の経時的な低下がほとんど無視できることがある。このような際には、実施の形態1のように、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2に至れば、制御部25が第2DC/DCコンバータ19を停止する制御を行なってもよい。これにより、第2DC/DCコンバータ19による電力消費を少しでも抑制することができる。
【0112】
次に、制御部25は、車両用制御部51からのデータ信号dataにより、前記車両が制動中であるか否かを判断する(S33)。ここで、前記車両が制動中であるとは、前記運転者が前記ブレーキペダルを操作することにより前記車両が減速している状態であると定義する。もし、前記車両が制動中であれば(S33のYes)、制御部25は後述するS41以降の制御を行なう。
【0113】
一方、前記車両が制動中でなければ(S33のNo)、前記回生電力は発生していない。そこで、制御部25は、第1蓄電部15の電力を負荷31に供給するように制御する。
【0114】
具体的には、まず制御部25は、第1蓄電部電圧Vc1と第1蓄電部下限電圧Vcd1とを比較する(S35)。ここで、第1蓄電部下限電圧Vcd1は実施の形態1と同様に4Vである。
【0115】
もし、第1蓄電部電圧Vc1が第1蓄電部下限電圧Vcd1以下であれば(S35のYes)、制御部25は、第1蓄電部電圧Vc1が第1蓄電部下限電圧Vcd1を維持するように第1DC/DCコンバータ13を制御する(S37)。これにより、第1蓄電部電圧Vc1は第1蓄電部下限電圧Vcd1となるので、大電力負荷29の駆動確実性を増すことができる。その後、制御部25は、図4のサブルーチンを終了し、前記メインルーチンに戻る。
【0116】
一方、第1蓄電部電圧Vc1が第1蓄電部下限電圧Vcd1より大きければ(S35のNo)、第1蓄電部15には前回の制動時に蓄えた前記回生電力が残っていることになる。そこで、制御部25は第1蓄電部15の電力を負荷31に供給するように第1DC/DCコンバータ13を制御する(S39)。これにより、前記回生電力の有効活用を図ることができる。その後、制御部25は、図4のサブルーチンを終了し、前記メインルーチンに戻る。
【0117】
ここで、S33に戻り、前記車両が制動中であれば(S33のYes)、前記回生電力が発生していることになる。ここで、S33の時点ではS27において第2蓄電部電圧Vc2は第2蓄電部上限電圧Vck2に至っていると判断されているので、第2蓄電部17の優先充電は完了している状態である。従って、制御部25は前記回生電力を第1蓄電部15へ充電する。
【0118】
具体的には、制御部25はS23で検出した第1蓄電部電圧Vc1と第1蓄電部上限電圧Vck1とを比較する(S41)。ここで、第1蓄電部上限電圧Vck1は実施の形態1と同様に10.8Vである。
【0119】
もし、第1蓄電部電圧Vc1が第1蓄電部上限電圧Vck1以上であれば(S41のYes)、これ以上、第1蓄電部15に充電できないので、制御部25は第1蓄電部電圧Vc1が第1蓄電部上限電圧Vck1を維持するように第1DC/DCコンバータ13を制御する(S43)。これにより、第1蓄電部15に上限まで充電された前記回生電力を保持することができるので、前記車両が制動していない非減速時に前記回生電力を有効活用することができる。その後、制御部25は、図4のサブルーチンを終了し、前記メインルーチンに戻る。
【0120】
一方、第1蓄電部電圧Vc1が第1蓄電部上限電圧Vck1未満であれば(S41のNo)、前記回生電力を第1蓄電部15へ充電することができる。そこで、制御部25は、第1蓄電部15に前記回生電力を充電するように、第1DC/DCコンバータ13を制御する(S45)。その後、制御部25は、図4のサブルーチンを終了し、前記メインルーチンに戻る。
【0121】
以上の動作が、大電力負荷29を駆動しない場合の動作であるが、次に、大電力負荷29を駆動する場合の動作について述べる。
【0122】
S21において、大電力負荷29の駆動時であれば(S21のYes)、制御部25は、まず第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19を停止する(S47)。この動作は実施の形態1と同様である。
【0123】
次に、制御部25は、全蓄電部電圧検出回路23より全蓄電部電圧Vcを検出する(S49)。そして、制御部25は、全蓄電部電圧Vcと大電力負荷駆動下限電圧Vscとを比較する(S51)。
【0124】
もし、全蓄電部電圧Vcが大電力負荷駆動下限電圧Vsc以上であれば(S51のYes)、制御部25はスイッチ41を第1端子45に切り替える指令を車両用制御部51へデータ信号dataにより出力する(S53)。これを受け、車両用制御部51はスイッチ41を第1端子45に切り替える。その後、制御部25は後述するS57以降の制御を行なう。
【0125】
一方、全蓄電部電圧Vcが大電力負荷駆動下限電圧Vsc未満であれば(S51のNo)、制御部25はスイッチ41を第2端子47に切り替える指令を車両用制御部51へデータ信号dataにより出力する(S55)。これを受け、車両用制御部51はスイッチ41を第2端子47に切り替える。
【0126】
上記したS53、またはS55の動作により、大電力負荷29を駆動する準備が完了したので、制御部25は、車両用制御部51に対して大電力負荷駆動指令をデータ信号dataにより出力する(S57)。これを受け、車両用制御部51は大電力負荷29の駆動を行う。
【0127】
その後、制御部25は車両用制御部51からデータ信号dataにより大電力負荷29の駆動状態を読み込み、大電力負荷29の駆動が完了したか否かを判断する(S59)。もし、大電力負荷29の駆動が完了していなければ(S59のNo)、制御部25はS59の制御に戻り、大電力負荷29の駆動が完了するまで待つ。
【0128】
一方、大電力負荷29の駆動が完了すれば(S59のYes)、制御部25は大電力負荷29への電力供給を停止するために、スイッチ41を無接続状態(オフ状態)とする指令を車両用制御部51へデータ信号dataとして出力する(S61)。これを受け、車両用制御部51はスイッチ41をオフ状態とする。その後、制御部25は、図4のサブルーチンを終了し、前記メインルーチンに戻る。
【0129】
以上の構成、動作により、車両用電源装置11は、前記回生電力の有効活用が図れる上に、大電力負荷29を第1蓄電部15と第2蓄電部17の電力で直接駆動できるので、前記車両の高効率化が図れる。そして、車両用電源装置11は、大電力負荷29の非駆動時に、第2蓄電部17が第2蓄電部上限電圧Vck2を維持するので、大電力負荷29がいつ駆動されても、その駆動確実性を、さらに増すことができる。
【0130】
なお、本実施の形態2では、制御部25は、第1蓄電部15に対しても、第1蓄電部電圧Vc1が第1蓄電部下限電圧Vcd1、または第1蓄電部上限電圧Vck1に至れば、それらの電圧を維持するように第1DC/DCコンバータ13を制御している。しかし、これらの動作に替わって、制御部25は実施の形態1と同様に第1DC/DCコンバータ13を停止するように制御してもよい。これは、第1蓄電部15は前記回生電力の充放電頻度が高いことから、第1蓄電部電圧Vc1が第1蓄電部下限電圧Vcd1、または第1蓄電部上限電圧Vck1に至っている期間が、第2蓄電部17の場合に比べ短く、自己放電による経時的な電圧低下の可能性が低いからである。
【0131】
一方で、前記回生電力の充放電頻度が比較的高い場合、それに追従するために第1DC/DCコンバータ13を停止せずに第1蓄電部電圧Vc1の維持動作を継続する方が望ましいこともある。従って、前記車両の使用状況や、第1蓄電部15の容量などの仕様に応じて、第1DC/DCコンバータ13を停止するか否かが決定されればよい。
【0132】
また、本実施の形態2では、制御部25が電圧維持のために第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19を動作するよう制御しているが、実施の形態1では、制御部25は、電圧維持を行わず第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19の動作を停止している。従って、図4において、S31で第2DC/DCコンバータ19を、S37、およびS43で第1DC/DCコンバータ13を、それぞれ停止するように変更すれば、実施の形態1と同様の動作となる。
【0133】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における車両用電源装置の基本動作の一部を示すフローチャートである。なお、本実施の形態3における車両用電源装置11の構成は実施の形態1と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0134】
すなわち、本実施の形態3における特徴は動作であり、実施の形態1、2と異なる点は次の通りである。制御部25は、大電力負荷29の非駆動時に、全蓄電部電圧Vcと第1蓄電部電圧Vc1との差電圧である第2蓄電部電圧Vc2が、第2蓄電部下限電圧Vcd2に至れば、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2に至るまで第2蓄電部17を充電するように第2DC/DCコンバータ19を制御した後、第2DC/DCコンバータ19を停止する動作を繰り返す。
【0135】
このような動作により、第2蓄電部電圧Vc2は、第2蓄電部下限電圧Vcd2から第2蓄電部上限電圧Vck2までの間の電圧となるように制御される。すなわち、制御部25は、第2蓄電部17を第2蓄電部上限電圧Vck2まで充電した後、第2DC/DCコンバータ19を停止するので、第2蓄電部電圧Vc2は内部抵抗による自己放電で経時的に低下する。そして、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部下限電圧Vcd2に至ると、再び制御部25は、第2蓄電部17を第2蓄電部上限電圧Vck2まで充電する。これにより、第2蓄電部電圧Vc2は、実施の形態2のように第2蓄電部上限電圧Vck2で維持されることがないので、第2蓄電部17の劣化を抑制できる。さらに、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部下限電圧Vcd2に至ると、第2蓄電部17は再び充電されるので、車両用電源装置11は、大電力負荷29がいつ駆動されても、その駆動確実性を、さらに増すことができる。
【0136】
以下、より具体的に本実施の形態3の動作について、特徴となる部分を中心に図5を用いて説明する。図5は図2や図4と同様に、制御部25の前記メインルーチンから実行されるサブルーチンである。なお、図5において、図4と同じ動作については同じステップ番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0137】
図5のサブルーチンが実行されると、制御部25は、大電力負荷29の駆動時であるか否かを判断する(S21)。この動作は図4のS21と同じである。もし、S21でYesであれば、制御部25は図4のS47以降の動作を行う。
【0138】
一方、S21でNoの場合、まず制御部25は、図4のS23とS25の動作を行う。
【0139】
次に、制御部25は、S23で検出した第1蓄電部電圧Vc1を、大電力負荷駆動下限電圧Vscと第2蓄電部下限電圧Vcd2との差電圧と比較する(S71)。
【0140】
ここで、実施の形態1で述べたように、大電力負荷駆動下限電圧Vscは9Vである。
【0141】
また、第2蓄電部下限電圧Vcd2は、第2蓄電部17の劣化を抑制するために、あえて第2蓄電部17を自己放電させた際の下限電圧のことで、次のようにして決定される。第2蓄電部下限電圧Vcd2は、第2蓄電部17の劣化抑制に効果があり、かつ、できるだけ早く第2蓄電部上限電圧Vck2(=5V)まで充電できるよう、第2蓄電部上限電圧Vck2に近い電圧値として予め求められる。すなわち、第2蓄電部電圧Vc2が低いほど第2蓄電部17の劣化に対しては効果的であるが、低いほど第2蓄電部上限電圧Vck2までの充電期間が長くなる。従って、第2蓄電部下限電圧Vcd2は、必要な劣化抑制効果が得られる範囲でできるだけ高い電圧値として決定される。本実施の形態3では、第2蓄電部下限電圧Vcd2は4Vとした。なお、第2蓄電部下限電圧Vcd2は4Vに限定されるものではなく、使用する第2蓄電素子55の種類や劣化特性に応じて適宜決定される。
【0142】
これらのことから、大電力負荷駆動下限電圧Vscと第2蓄電部下限電圧Vcd2との差電圧は5V(=9V−4V)となる。
【0143】
制御部25は、第1蓄電部電圧Vc1と、上記した差電圧(=5V)とを比較する。もし、第1蓄電部電圧Vc1が5V以下であれば(S71のYes)、第2蓄電部電圧Vc2の値によっては、全蓄電部電圧Vcが大電力負荷駆動下限電圧Vscを下回る場合がある。すなわち、第1蓄電部下限電圧Vcd1は実施の形態1で述べたように4Vであるので、もし、第1蓄電部電圧Vc1が4Vで、第2蓄電部電圧Vc2も第2蓄電部下限電圧Vcd2(=4V)であれば、全蓄電部電圧Vcは8Vとなる。この場合、第1蓄電部15と第2蓄電部17とによる大電力負荷29の駆動ができなくなる。
【0144】
そこで、制御部25は、S71でYesの場合、直ちに第2蓄電部17が第2蓄電部上限電圧Vck2(=5V)となるように優先制御する。具体的には、制御部25は、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2を維持するように、第2DC/DCコンバータ19を制御する(S73)。すなわち、制御部25は、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2に至るまで第2蓄電部17を充電し、その後、第2蓄電部上限電圧Vck2を維持する。その結果、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2となるので、たとえ第1蓄電部電圧Vc1が第1蓄電部下限電圧Vcd1(=4V)であっても、全蓄電部電圧Vcが9Vとなり、大電力負荷駆動下限電圧Vscと等しくなる。ゆえに、第1蓄電部15と第2蓄電部17とによる大電力負荷29の駆動が可能となる。
【0145】
その後、制御部25は図4のS33以降の制御を行なう。これにより、第1蓄電部15における前記回生電力の充放電動作が行われる。
【0146】
一方、第1蓄電部電圧Vc1が5Vより大きければ(S71のNo)、仮に第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部下限電圧Vcd2(=4V)であっても、全蓄電部電圧Vcは9Vより大きくなるので、この時点で大電力負荷29を駆動する条件が整った状態である。そこで、制御部25は第2蓄電部17の劣化を抑制する動作を行う。
【0147】
すなわち、まず制御部25は、第2蓄電部電圧Vc2と第2蓄電部上限電圧Vck2(=5V)とを比較する(S75)。もし、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2以上であれば(S75のYes)、これ以上、第2蓄電部17に充電できないので、制御部25は第2DC/DCコンバータ19を停止する(S77)。これにより、制御部25は、あえて第2蓄電部電圧Vc2を、第2蓄電部17の内部抵抗による自己放電で経時的に低下させる動作を開始する。その後、制御部25は、後述するS81以降の制御を行なう。
【0148】
一方、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2未満であれば(S75のNo)、次に制御部25は、第2蓄電部電圧Vc2と第2蓄電部下限電圧Vcd2(=4V)とを比較する(S79)。もし、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部下限電圧Vcd2以上であれば(S79のYes)、第2蓄電部電圧Vc2は、第2蓄電部下限電圧Vcd2(=4V)以上で、第2蓄電部上限電圧Vck2(=5V)未満であることになる。この場合、第2蓄電部17は第2蓄電部下限電圧Vcd2まで放電されている途中であるか、または、第2蓄電部17は第2蓄電部上限電圧Vck2まで充電されている途中である。いずれの場合も、制御部25は、第1蓄電部下限電圧Vcd1の値を、大電力負荷駆動下限電圧Vscと、S25で求めた第2蓄電部電圧Vc2との差として更新する。すなわち、制御部25は、第1蓄電部下限電圧Vcd1を、Vcd1=Vsc−Vc2により更新する(S81)。
【0149】
ここで、S81の動作を行う理由について説明する。図4の動作では、第1蓄電部下限電圧Vcd1の値は4Vで一定である。従って、上記したVcd1=Vsc−Vc2を変形して、Vc2=Vsc−Vcd1となるので、Vsc=9V、Vcd1=4Vを代入すると、Vc2=5Vとなる。従って、図4の動作において、制御部25は、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2(=5V)になる動作を優先させ、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2に至れば、第2蓄電部上限電圧Vck2を維持するように制御する。従って、第2蓄電部電圧Vc2が5Vを維持するので、第1蓄電部15は、第1蓄電部下限電圧Vcd1(=4V)まで放電することができる。この際、全蓄電部電圧Vcは9V以上となり、大電力負荷29を十分に駆動できる。
【0150】
これに対し、本実施の形態3では、第2蓄電部電圧Vc2が4Vから5Vまでの範囲で上下するので、第1蓄電部下限電圧Vcd1を4Vに固定してしまうと、全蓄電部電圧Vcが9V未満となる場合が発生する。
【0151】
そこで、本実施の形態3では、第2蓄電部電圧Vc2の値に応じて第1蓄電部下限電圧Vcd1を更新することにより、第2蓄電部電圧Vc2が変化しても全蓄電部電圧Vcが9V以上となるようにしている。具体的には、図5のS81の後、制御部25は図4のS33以降の動作を行うが、この際、S81で更新された第1蓄電部下限電圧Vcd1に従って、図4のS35、S37、S39の動作により第1蓄電部15の充放電が制御される。
【0152】
ゆえに、第2蓄電部電圧Vc2が下がれば、その分、S81の動作により第1蓄電部下限電圧Vcd1が上がる。その結果、制御部25は、第1蓄電部15が負荷31へ放電している場合(S39)、第1蓄電部下限電圧Vcd1が上がったことで、S35がYesとなれば、S37の動作により第1蓄電部下限電圧Vcd1を維持するように制御する。これにより、制御部25は、放電の下限を制限して第1蓄電部電圧Vc1が下がり過ぎないように制御する。また、制御部25は、第1蓄電部15が第1蓄電部下限電圧Vcd1を維持している場合(S37)、第1蓄電部下限電圧Vcd1が上がった分、第1蓄電部15を充電して第1蓄電部電圧Vc1が下がり過ぎないように制御する。
【0153】
一方、第2蓄電部電圧Vc2が上がれば、その分、S81の動作により第1蓄電部下限電圧Vcd1が下がるので、制御部25は、第1蓄電部15が負荷31へ放電している場合(S39)、放電の下限を下げ、第1蓄電部15の前記回生電力の有効活用が最大限となる方向へ制御する。また、制御部25は、第1蓄電部15が第1蓄電部電圧Vc1を維持している場合(S37)、第1蓄電部下限電圧Vcd1が下がったことで、S35がNoとなれば、S39の動作により第1蓄電部15を放電して第1蓄電部電圧Vc1が第1蓄電部下限電圧Vcd1となるように制御する。
【0154】
なお、図4のS33にて前記車両が制動中であれば(S33のYes)、制御部25は第1蓄電部15への前記回生電力の充電制御を行なうので、図5のS81による第1蓄電部下限電圧Vcd1の更新結果に影響されない。
【0155】
このような動作により、制御部25は、第2蓄電部17の劣化抑制のために、第2蓄電部電圧Vc2を変化させ、その場合でも全蓄電部電圧Vcが大電力負荷駆動下限電圧Vsc(=9V)以上となるように制御している。
【0156】
ここで、図5のS79に戻り、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部下限電圧Vcd2未満であれば(S79のNo)、第2蓄電部電圧Vc2は4Vより低いので、大電力負荷29の駆動に必要な電力を第2蓄電部17に蓄えるために、制御部25は、第2蓄電部17を充電するように第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19を制御する(S83)。この動作は、図4のS29と同じである。その後、図5のサブルーチンを終了し、前記メインルーチンに戻る。これにより、第2蓄電部17への充電が優先される。
【0157】
以上の構成、動作により、車両用電源装置11は、前記車両の高効率化を図ることができる上に、第2蓄電部17の劣化を抑制することが可能となる。
【0158】
なお、本実施の形態3では、実施の形態2における図4の動作を、図5に示すように一部変更することで、上記した特徴となる動作が実現されるが、これに限定されるものではなく、実施の形態1の動作に本実施の形態3の動作を適用してもよい。この場合、図4のS37の動作が、実施の形態1では、第1DC/DCコンバータ13を停止する動作となるので、図5のS81で第1蓄電部下限電圧Vcd1を更新した結果によっては、第1蓄電部15を第1蓄電部下限電圧Vcd1まで充電して維持する動作ができなくなる。この場合は、全蓄電部電圧Vcが大電力負荷駆動下限電圧Vsc未満となる可能性がある。その結果、大電力負荷29がバッテリ27の電力で駆動されることになる。従って、大電力負荷29のバッテリ27による駆動をできるだけ回避するために、実施の形態1の動作に本実施の形態3の動作を適用する場合は、第1蓄電部15の容量を大きくし、そして内部抵抗値ができるだけ小さい第2蓄電素子55を用いることが望ましい。
【0159】
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4における車両用電源装置の基本動作の一部を示すフローチャートである。図7は、本発明の実施の形態4における車両用電源装置の車両の使用期間に対する蓄電素子上限電圧の相関図である。なお、本実施の形態4における車両用電源装置11の構成は実施の形態1と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0160】
すなわち、本実施の形態4における特徴は動作であり、実施の形態1〜3に追加される動作は次の通りである。制御部25は、第1蓄電部15を構成する第1蓄電素子53に対する第1蓄電素子上限電圧Vek1が、第2蓄電部17を構成する第2蓄電素子55に対する第2蓄電素子上限電圧Vek2に比べ、第1蓄電素子53、および第2蓄電素子55の劣化進行に応じて大きくなるように制御する。
【0161】
このような動作により、第2蓄電素子55に印加される電圧が、劣化進行に応じて、第1蓄電素子53に印加される電圧より相対的に低下する傾向となるので、第2蓄電部上限電圧Vck2に至る期間が長い第2蓄電部17に対する負担が軽減され、その劣化進行を第1蓄電部15に近づけることができる。その結果、車両用電源装置11全体の寿命を延ばすことが可能となる。
【0162】
以下、より具体的に本実施の形態4の動作について、特徴となる部分を中心に図6を用いて説明する。
【0163】
図6のサブルーチンが実行されると、制御部25は、内蔵されたタイマ回路(図示せず)により計測された前記車両の使用期間tに応じて、第1蓄電素子上限電圧Vek1と第2蓄電素子上限電圧Vek2を求める(S91)。具体的には、制御部25は、前記メモリに記憶した図7の相関図から、第1蓄電素子上限電圧Vek1と第2蓄電素子上限電圧Vek2を求める。
【0164】
ここで、図7に示す前記車両の使用期間tに対する蓄電素子上限電圧Vekの相関図について説明する。なお、図7において、横軸は前記車両の使用期間tを、縦軸は蓄電素子上限電圧Vekを、それぞれ示す。
【0165】
本実施の形態4の構成は、実施の形態1と同じであるので、第1蓄電素子53と第2蓄電素子55は両方とも、同種の前記電気二重層キャパシタで構成される。前記電気二重層キャパシタは一般に、前記満充電電圧の上限に近い電圧を印加し続けると、経時的に劣化が進行する。また、劣化の進行は新品時からの初期の段階で早く進み、ある程度の期間が経過すると劣化の進行が遅くなる傾向を示す。また、劣化が進行すると、前記電気二重層キャパシタの内部抵抗値が経時的に上昇し内部損失が増える。また、前記電気二重層キャパシタの容量が経時的に低下し蓄電容量が減る。ゆえに、前記電気二重層キャパシタの劣化は、前記車両の寿命と同等以上に抑制される必要がある。
【0166】
このような前記電気二重層キャパシタの劣化特性から、第2蓄電部上限電圧Vck2に至る期間が長い第2蓄電部17は、第1蓄電部15に比べて劣化進行が早くなると想定される。その結果、先に第2蓄電部17の劣化が進行して、第1蓄電部15はまだ使用可能であっても、車両用電源装置11全体の寿命が短くなる。
【0167】
そこで、本実施の形態4では、前記電気二重層キャパシタの劣化が、前記満充電電圧の上限に近い電圧の印加時間に応じて進行することに着目し、制御部25は、前記印加時間に相当する前記車両の使用期間tに応じて、第2蓄電素子55に印加される電圧の上限、すなわち第2蓄電素子上限電圧Vek2を、第1蓄電素子53に印加される電圧の上限、すなわち第1蓄電素子上限電圧Vek1に比べ相対的に小さくなるように決定している。そのために、図7の相関図が用いられる。
【0168】
図7において、前記車両の新品時、すなわち、前記車両の使用期間tがほぼ0の場合、第1蓄電素子53と第2蓄電素子55の両方とも、劣化は進んでいない。従って、前記車両の使用期間tがほぼ0の場合は、第1蓄電素子上限電圧Vek1と第2蓄電素子上限電圧Vek2が等しくなるようにしている。
【0169】
ここで、実施の形態1では、第1蓄電素子上限電圧Vek1が2.7V、第2蓄電素子上限電圧Vek2が2.5Vとし、前者の方が後者より大きくなるように決定している。これにより、第1蓄電素子53と第2蓄電素子55の劣化が同等となり、車両用電源装置11の寿命が延びる構成となる。
【0170】
これに対し、本実施の形態4では、前記車両の使用期間tに応じて、第1蓄電素子上限電圧Vek1と第2蓄電素子上限電圧Vek2を図7に基づいて変化させている。従って、実施の形態1のように予め第1蓄電素子上限電圧Vek1と第2蓄電素子上限電圧Vek2が異なるように決定しておく必要はない。ゆえに、本実施の形態4では、前記車両の使用期間tの初期段階で、第1蓄電素子上限電圧Vek1と第2蓄電素子上限電圧Vek2が等しくなるようにしている。但し、実施の形態1のように、第1蓄電素子上限電圧Vek1と第2蓄電素子上限電圧Vek2が異なるように決定しておき、その後、前記車両の使用期間tに応じて第1蓄電素子上限電圧Vek1と第2蓄電素子上限電圧Vek2を変化させるようにしても、第1蓄電素子53と第2蓄電素子55の劣化を同等にできる。
【0171】
次に、前記車両の使用期間tが長くなるほど、同じ蓄電素子上限電圧Vekを印加していれば、第2蓄電素子55の方が第1蓄電素子53より劣化進行が早まる。そこで、図7に示すように、前記車両の使用期間tが長くなるほど、第2蓄電素子上限電圧Vek2が小さくなるようにして第2蓄電素子55の劣化進行を遅らせ、その分、全蓄電部電圧Vcが低下してしまわないように、第1蓄電素子上限電圧Vek1が大きくなるようにしている。これにより、第1蓄電素子53は、第1蓄電素子上限電圧Vek1が大きくなる分、負担が増すが、第1蓄電部電圧Vc1が第1蓄電部上限電圧Vck1に至っている期間は、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2に至っている期間より短いので、全体として第1蓄電素子53と第2蓄電素子55との劣化進行が同等となる。すなわち、図7の相関図は、第1蓄電素子53と第2蓄電素子55との劣化進行が同等となるように、かつ、全蓄電部電圧Vcが大電力負荷駆動下限電圧Vscを下回らないように、予め前記電気二重層キャパシタの劣化特性に基づいて決定されている。
【0172】
また、図7において、第1蓄電部上限電圧Vck1の経時特性、および第2蓄電部上限電圧Vck2の経時特性は、いずれも前記電気二重層キャパシタの劣化特性を考慮し、前記車両の使用期間tが初期の段階で早く変化するように決定されている。
【0173】
上記より、前記電気二重層キャパシタの劣化は、前記車両の寿命と同等以上に抑制されるので、車両用電源装置11全体の寿命も前記車両の寿命と同等以上とすることができる。
【0174】
ここで、図6に戻り、制御部25は、S91で図7から求めた第1蓄電素子上限電圧Vek1と第2蓄電素子上限電圧Vek2を用いて、第1蓄電部上限電圧Vck1と第2蓄電部上限電圧Vck2を、それぞれ求める(S93)。具体的には、第1蓄電素子直列数n1(=4)、および第2蓄電素子直列数n2(=2)が既知であるので、これらと、図7から求めた第1蓄電素子上限電圧Vek1と第2蓄電素子上限電圧Vek2とから、第1蓄電部上限電圧Vck1は、Vck1=Vek1×n1、第2蓄電部上限電圧Vck2は、Vck2=Vek2×n2より、それぞれ計算で求められる。
【0175】
こうして求められた第1蓄電部上限電圧Vck1と第2蓄電部上限電圧Vck2を用いて、制御部25は図4のS21以降の動作を行う。その結果、第1蓄電部上限電圧Vck1と第2蓄電部上限電圧Vck2は、第1蓄電素子53と第2蓄電素子55との劣化進行が同等となるように求められているので、車両用電源装置11の寿命を延ばすことが可能となる。
【0176】
以上の構成、動作により、車両用電源装置11は、前記車両の高効率化を図ることができる上に、その長寿命化も可能となる。
【0177】
なお、本実施の形態1では、第1蓄電素子53と第2蓄電素子55の劣化が前記車両の使用期間tに応じて変化するとして、図7の相関図を用いているが、それに限定されるものではない。すなわち、上記したように、第1蓄電素子53と第2蓄電素子55は、劣化が進行すると、内部抵抗値が上昇し、容量が低下する。従って、例えば、第1蓄電部15と第2蓄電部17における、それぞれの内部抵抗値を求めて、それを横軸にした図7と同様の相関図を決定し、それを基に第1蓄電部上限電圧Vck1と第2蓄電部上限電圧Vck2を計算するようにしてもよい。同様に、第1蓄電部15と第2蓄電部17における、それぞれの容量を求めて、それを横軸にした図7と同様の相関図を決定し、それを基に第1蓄電部上限電圧Vck1と第2蓄電部上限電圧Vck2を計算するようにしてもよい。いずれの場合も、前記車両の使用期間tにより第1蓄電部上限電圧Vck1と第2蓄電部上限電圧Vck2を求める場合よりも高精度化が図れる。但し、前記内部抵抗値を求めるために第1蓄電部電圧Vc1と第2蓄電部電圧Vc2の波形(特に大電力負荷29の駆動時の波形)を計測したり、前記容量を求めるために第1蓄電部電圧Vc1と第2蓄電部電圧Vc2を定電流充電、または定電流放電する期間を設けたりする必要があり、制御が複雑化する。従って、第1蓄電部上限電圧Vck1と第2蓄電部上限電圧Vck2に求められる精度や制御部25の負担を考慮して、最適な相関図を決定すればよい。
【0178】
また、本実施の形態4では、第1蓄電素子53と第2蓄電素子55のいずれも前記電気二重層キャパシタを用いたが、例えば実施の形態1で述べたように、第1蓄電素子53に前記リチウムイオン電池を、第2蓄電素子55に前記電気二重層キャパシタを用いた場合、図7の相関図は、それぞれの蓄電素子における劣化特性に応じて適宜変更すればよい。この際に、前記車両の使用期間tがほぼ0の際に、必ずしも第1蓄電素子上限電圧Vek1と第2蓄電素子上限電圧Vek2が等しい必要はなく、使用する蓄電素子に合わせて適宜変更すればよい。
【0179】
(実施の形態5)
図8は、本発明の実施の形態5における車両用電源装置の基本動作の一部を示すフローチャートである。なお、本実施の形態5における車両用電源装置11の構成は実施の形態1と同じであるので、その詳細な説明を省略する。但し、本実施の形態5においては、第2DC/DCコンバータ19は双方向構成としている。
【0180】
本実施の形態5における特徴となる点は動作であり、実施の形態1〜3と異なる動作は次の通りである。制御部25は、大電力負荷29の非駆動時に、前記車両の車速vが大きいほど、全蓄電部電圧Vcと第1蓄電部電圧Vc1との差電圧である第2蓄電部電圧Vc2が下がるように第2DC/DCコンバータ19を制御する。
【0181】
このような動作により、制御部25は、車速vが大きいと、第2蓄電部電圧Vc2を下げるので、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2に至っている期間を短くすることができ、第2蓄電素子55の劣化を抑制することが可能となる。また、第2蓄電部電圧Vc2が下がるので、前記車両の制動時には、前記回生電力が優先して第2蓄電部17に充電される。従って、第1蓄電部15にのみ前記回生電力を充電する場合に比べ、前記回生電力の回収量が増え、前記車両全体の効率を向上することが可能となる。
【0182】
以下、より具体的に本実施の形態5の動作について、特徴となる部分を中心に図8を用いて説明する。なお、図8のサブルーチンにおいて、図4と同じ動作を行う部分には同じステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0183】
図8のサブルーチンが実行されると、制御部25は、図4におけるS21からS33までの動作を行う。これらの動作は本実施の形態5でも同じであるので、説明を省略する。
【0184】
次に、図8におけるS33で制動中でなければ(S33のNo)、制御部25は車両用制御部51からのデータ信号dataにより、車速vを読み込む(S101)。そして、制御部25は、車速vと所定車速vkとを比較する(S103)。ここで、所定車速vkとは、第1蓄電部15を第1蓄電部下限電圧Vcd1から第1蓄電部上限電圧Vck1まで充電でき、かつ、第2蓄電部17を第2蓄電部下限電圧Vcd2から第2蓄電部上限電圧Vck2まで充電できるだけの前記回生電力が得られる車速vのことである。所定車速vkは、上記した各種の電圧値、第1蓄電部15と第2蓄電部17の各容量、発電機33の発電能力、第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19の効率などのパラメータから予め決定され、前記メモリに記憶されている。
【0185】
車速vが所定車速vk未満であれば(S103のNo)、発生すると予測される前記回生電力が少ないので、第2蓄電部電圧Vc2を下げてしまうと、大電力負荷29の駆動時に全蓄電部電圧Vcが大電力負荷駆動下限電圧Vscに至らなくなる可能性がある。そこで、制御部25は、第2蓄電部電圧Vc2を下げる動作を行わずに、図4のS35以降の動作、すなわち第1蓄電部15の放電制御を行う。従って、車速vが所定車速vk未満であれば、図8の動作は、図4の動作と実質的に同じになる。
【0186】
一方、車速vが所定車速vk以上であれば(S103のYes)、制御部25は、図4のS23で検出した第1蓄電部電圧Vc1と第1蓄電部上限電圧Vck1とを比較する(S105)。
【0187】
もし、第1蓄電部電圧Vc1が第1蓄電部上限電圧Vck1以上であれば(S105のYes)、第1蓄電部15には前記回生電力が上限まで充電されていることになり、さらに、S33でNoであるので、前記車両は制動を行なっていない状態である。従って、S105でYesの場合は、制御部25は、前記回生電力を積極的に負荷31へ供給して有効活用を図る制御を優先する。そのために、制御部25は、図4のS35以降の動作、すなわち第1蓄電部15の放電制御を行う。
【0188】
一方、第1蓄電部電圧Vc1が第1蓄電部上限電圧Vck1未満であれば(S105のNo)、制御部25は、図4のS23で検出した全蓄電部電圧Vcと大電力負荷駆動下限電圧Vscとを比較する(S107)。
【0189】
もし、全蓄電部電圧Vcが大電力負荷駆動下限電圧Vsc未満であれば(S107のNo)、第1蓄電部15と第2蓄電部17との電力により大電力負荷29の駆動ができない状態である。しかし、S33でNoであるので、前記車両は制動を行なっておらず、さらに、S103でYesであるので、車速vは所定車速vk以上である。これらより、前記車両が制動されると、前記回生電力により、十分に全蓄電部電圧Vcが大電力負荷駆動下限電圧Vsc以上に至ると想定される。従って、ここでは、前記回生電力を最大限に第1蓄電部15へ充電して有効活用を行うために、制御部25は、第2蓄電部電圧Vc2を下げる動作を行わずに、図8のサブルーチンを終了して前記メインルーチンに戻る。
【0190】
一方、全蓄電部電圧Vcが大電力負荷駆動下限電圧Vsc以上であれば(S107のYes)、第1蓄電部15と第2蓄電部17には大電力負荷29を駆動できるだけの電力が蓄えられていることになる。しかし、S105でNoであるので、第1蓄電部15は上限までは電力が蓄えられていない状態である。
【0191】
次に、制御部25は、図4のS25で求められた第2蓄電部電圧Vc2と第2蓄電部下限電圧Vcd2とを比較する(S109)。
【0192】
もし、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部下限電圧Vcd2以下であれば(S109のYes)、制御部25は、これ以上、第2蓄電部電圧Vc2を下げることができない。そこで、制御部25は、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部下限電圧Vcd2を維持するように、第2DC/DCコンバータ19を制御する(S111)。これにより、第2蓄電部17の電力が不足して、大電力負荷29の駆動ができなくなる可能性を低減することができる。その後、制御部25は、図4のS35以降の動作、すなわち第1蓄電部15の放電制御を行う。これにより、第1蓄電部15に蓄えられた前記回生電力の有効活用を図ることができるとともに、次回の制動時に発生する前記回生電力をできるだけ多く第1蓄電部15に回収することができる。
【0193】
なお、制御部25は、図4のS35以降の動作を行った後、前記メインルーチンに戻り、前記メインルーチンから再び図8のサブルーチンを実行する。この際に、図8のS33までは図4のサブルーチンと同じ動作をするので、図4のS21で大電力負荷駆動時でなければ(S21のNo)、制御部25は第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部上限電圧Vck2以上であるか否かを判断する(S27)。
【0194】
ここで、上記した図8のS109において、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部下限電圧Vcd2に至っていることで、制御部25はS111の動作を行った状態である。
【0195】
従って、この状態で再度、図8のサブルーチンが実行されると、図4のS27ではNoとなり、制御部25は第2蓄電部17を充電する動作(S29)を行う。
【0196】
これらの動作から、本実施の形態5における基本的な動作として、制御部25は、第2蓄電部電圧Vc2を下げる条件(車速vに対する条件を含む)が成立すれば、第2蓄電部17を放電し、第2蓄電部電圧Vc2を下げる条件が成立しなくなれば、第2蓄電部17を上限まで優先充電するという一連の動作を繰り返す。これにより、制御部25は、第2蓄電部17の劣化進行を抑制しつつ、前記車両の高効率化を図っている。
【0197】
ここで、S109に戻り、第2蓄電部電圧Vc2が第2蓄電部下限電圧Vcd2より大きければ(S109のNo)、制御部25は、第2蓄電部電圧Vc2を下げる制御を行なう。具体的には、まず制御部25は、第1DC/DCコンバータ13を停止する(S113)。次に、制御部25は、第2蓄電部17を放電するように、第2DC/DCコンバータ19を制御する(S115)。このような動作により、第2蓄電部17に蓄えられた電力は、第2DC/DCコンバータ19により、第1蓄電部15に充電される。これにより、第2蓄電素子55の印加電圧を下げることができ、そして、第1蓄電素子53の印加電圧を上げることができる。その結果、制御部25は、第1蓄電素子53と第2蓄電素子55との印加電圧が均等化される方向に制御する。従って、実施の形態4で述べたように、車両用電源装置11全体としての寿命を延ばすことができる。
【0198】
次に、制御部25は、現時点での前記車両の制動状態を判断する(S117)。この動作はS33と同じである。もし、前記車両が制動中であれば(S117のYes)、制御部25は図8のサブルーチンを終了して、前記メインルーチンに戻る。前記メインルーチンは繰り返し図8のサブルーチンを実行するので、次回実行時に、制御部25は、図4で述べたように、第2蓄電部17を優先して充電する動作を行う。従って、制御部25が図8のS115で第2蓄電部17を放電するように制御したとしても、制動がかかれば、制御部25は直ちに第2蓄電部17を充電する動作を行う。従って、第2蓄電部17の電力が不足して、制御部25が大電力負荷29を駆動できなくなる可能性が低減する。
【0199】
一方、前記車両が制動中でなければ(S117のNo)、制御部25は現時点の車速vを読み込む(S119)。そして、制御部25は車速vと所定車速vkを比較する(S121)。
【0200】
もし、車速vが所定車速vk未満であれば(S121のNo)、S117においてNoであったため、前記車両は制動せずに慣性走行をしており、徐々に車速vが低下して、S119の時点で車速vが所定車速vk未満に至った状態である。この場合、これ以上、第2蓄電部電圧Vc2を下げる動作を継続すると、前記車両の制動終了時に第2蓄電部17の第2蓄電部上限電圧Vck2までの充電が不十分となり、第1蓄電部15と第2蓄電部17の電力によるアイドリングストップ後の大電力負荷29の駆動ができなくなる可能性がある。そこで、制御部25は第2DC/DCコンバータ19を停止する(S123)。これにより、第2蓄電部電圧Vc2を下げる動作を停止することができる。その後、制御部25は、図8のサブルーチンを終了して、前記メインルーチンに戻る。
【0201】
一方、車速vが所定車速vk以上であれば(S121のYes)、制動時に発生する前記回生電力により、第2蓄電部17は第2蓄電部上限電圧Vck2まで十分に充電される。従って、制御部25は第2DC/DCコンバータ19の動作を継続する。
【0202】
次に、制御部25は、現時点での第1蓄電部電圧Vc1を検出する(S125)。そして、制御部25は、第1蓄電部電圧Vc1と第1蓄電部上限電圧Vck1とを比較する(S127)。
【0203】
もし、第1蓄電部電圧Vc1が第1蓄電部上限電圧Vck1以上であれば(S127のYes)、第2DC/DCコンバータ19により第2蓄電部17の電力が第1蓄電部15へ充電された結果、第1蓄電部電圧Vc1が第1蓄電部上限電圧Vck1に至った状態である。従って、制御部25は、これ以上、第2蓄電部17の電力を第1蓄電部15に充電することができないので、上記したS111以降の動作を行う。これにより、第2蓄電部17の第1蓄電部15への充電が停止され、第1蓄電部15の電力が負荷31に供給される。
【0204】
一方、第1蓄電部電圧Vc1が第1蓄電部上限電圧Vck1未満であれば(S127のNo)、第2蓄電部17の第1蓄電部15への充電を継続することができる。但し、この動作により、全蓄電部電圧Vc、第1蓄電部電圧Vc1、および第2蓄電部電圧Vc2は経時的に変化するので、制御部25は、現時点での上記各種電圧を求める。具体的には、まず全蓄電部電圧Vcと第1蓄電部電圧Vc1を検出する(S131)。そして、第2蓄電部電圧Vc2を、Vc2=Vc−Vc1より求める(S133)。その後、上記したS107に戻り、制御部25は、それ以降の動作を継続する。
【0205】
以上の構成、動作により、車両用電源装置11は、前記車両の高効率化を図ることができる上に、その長寿命化も可能となる。
【0206】
なお、本実施の形態5では、制御部25は、図8のS113で第1DC/DCコンバータ13を停止し、S115で第2蓄電部17の電力を放電して第1蓄電部15へ充電している。これに対し、S113で第1DC/DCコンバータ13を停止せずに負荷31へ電力を供給するように動作させた状態で、S115により第2蓄電部17を放電してもよい。この場合、第1DC/DCコンバータ13に流れる第1電流I1と、第2DC/DCコンバータ19に流れる第2電流I2が誤差範囲内で等しくなるように制御すれば、制御部25は、第2蓄電部17の電力を負荷31へ供給できる。また、第1DC/DCコンバータ13に流れる第1電流I1が、第2DC/DCコンバータ19に流れる第2電流I2より小さくなるように制御すれば、第2蓄電部17の電力は第1蓄電部15に充電されると同時に負荷31へも供給される。但し、第2蓄電部17の電力を負荷31に供給するためには、第1DC/DCコンバータ13と第2DC/DCコンバータ19の両方を動作させる必要があるため、第1電流I1や第2電流I2の大きさによっては、損失が大きくなる場合がある。従って、本実施の形態5で述べたように、制御部25は、第2蓄電部17の電力を放電する際、放電された電力を第1蓄電部15のみへ充電するように制御する方が高効率となる。
【0207】
また、本実施の形態5では、基本的な動作として、制御部25は、車速vが大きいほど、具体的には、車速vが所定車速vk以上であれば、第2蓄電部電圧Vc2を下げる制御を行なっている。これは、車速vが所定車速vk以上であるか否かという2段階の判断に限定されるものではなく、さらに多段階の判断を行うようにしてもよい。この場合、例えば車速vが、ある車速範囲であれば、第2蓄電部電圧Vc2を下げる目標電圧を何Vにするという相関を予め決定しておけばよい。さらに、車速vと前記目標電圧との前記相関をグラフ化して、無段階に前記目標電圧を決定するようにしてもよい。これらの動作により、制御部25は、制御が複雑になるものの、車速vが所定車速vkに至らない状態で、僅かでも第2蓄電素子55の印加電圧を下げることができるので、劣化進行を遅らせることができる。
【0208】
また、実施の形態1〜5の動作は、実施の形態1の動作を基本として、複数の動作を任意に組み合わせてもよい。この場合、それぞれの実施の形態1〜5で述べた効果が同時に得られる。
【0209】
また、実施の形態1〜5における前記車両は、アイドリングストップ機能付きであるとして説明したが、これはアイドリングストップ機能を持たずに、回生機能のみを有する車両であってもよい。但し、この場合は、前記スタータの駆動が前記車両の使用開始時の1回のみであるので、実施の形態1〜5の効果を十分に得るためには、大電力負荷29は前記スタータ以外とする構成が望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0210】
本発明にかかる車両用電源装置は、効率よく大電力負荷への電力供給が可能で、かつ、その他の負荷へも回生電力を有効活用することができるので、特に回生電力回収機能付き車両における車両用電源装置等として有用である。
【符号の説明】
【0211】
13 第1DC/DCコンバータ
15 第1蓄電部
17 第2蓄電部
19 第2DC/DCコンバータ
21 第1蓄電部電圧検出回路
23 全蓄電部電圧検出回路
25 制御部
27 バッテリ
29 大電力負荷
53 第1蓄電素子
55 第2蓄電素子
59 第2蓄電部電圧検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1DC/DCコンバータと、
前記第1DC/DCコンバータに電気的に接続される第1蓄電部と、
前記第1蓄電部と直列に接続される第2蓄電部と、
前記第2蓄電部の両端に電気的に接続される第2DC/DCコンバータと、
前記第1蓄電部の両端に電気的に接続され、第1蓄電部電圧(Vc1)を検出する第1蓄電部電圧検出回路と、
前記第1蓄電部と前記第2蓄電部の直列回路の両端に電気的に接続され全蓄電部電圧(Vc)を検出する全蓄電部電圧検出回路か、または、前記第2蓄電部の両端に電気的に接続され第2蓄電部電圧(Vc2)を検出する第2蓄電部電圧検出回路のいずれか一方と、
前記全蓄電部電圧検出回路と前記第2蓄電部電圧検出回路のいずれか一方、前記第1DC/DCコンバータ、第2DC/DCコンバータ、および第1蓄電部電圧検出回路と電気的に接続される制御部と、を備え、
前記第1DC/DCコンバータは車両のバッテリと電気的に接続され、
前記直列回路の両端は、前記車両の大電力負荷と電気的に接続され、
前記制御部は、前記大電力負荷の非駆動時に、前記第1蓄電部電圧(Vc1)と前記第2蓄電部電圧(Vc2)との合計電圧である前記全蓄電部電圧(Vc)が、大電力負荷駆動下限電圧(Vsc)以上となる範囲で、かつ、少なくとも前記第1蓄電部が前記車両の回生電力を充放電するように前記第1DC/DCコンバータと前記第2DC/DCコンバータを制御し、
前記大電力負荷の駆動時に、前記第1蓄電部と前記第2蓄電部の電力を前記大電力負荷に供給するようにした車両用電源装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記大電力負荷の非駆動時に、前記全蓄電部電圧(Vc)と前記第1蓄電部電圧(Vc1)との差電圧である前記第2蓄電部電圧(Vc2)が、第2蓄電部上限電圧(Vck2)を維持するように前記第2DC/DCコンバータを制御するようにした請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記大電力負荷の非駆動時に、前記全蓄電部電圧(Vc)と前記第1蓄電部電圧(Vc1)との差電圧である前記第2蓄電部電圧(Vc2)が、第2蓄電部下限電圧(Vcd2)に至れば、前記第2蓄電部電圧(Vc2)が第2蓄電部上限電圧(Vck2)に至るまで前記第2蓄電部を充電するように前記第2DC/DCコンバータを制御した後、前記第2DC/DCコンバータを停止する動作を繰り返すようにした請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項4】
前記第1蓄電部を構成する第1蓄電素子に対する第1蓄電素子上限電圧(Vek1)は、前記第2蓄電部を構成する第2蓄電素子に対する第2蓄電素子上限電圧(Vek2)より大きくした請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項5】
前記第1蓄電部を構成する第1蓄電素子に対する第1蓄電素子上限電圧(Vek1)は、前記第2蓄電部を構成する第2蓄電素子に対する第2蓄電素子上限電圧(Vek2)に比べ、前記第1蓄電素子、および前記第2蓄電素子の劣化進行に応じて大きくなるようにした請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記大電力負荷の非駆動時に、前記車両の車速(v)が大きいほど、前記全蓄電部電圧(Vc)と前記第1蓄電部電圧(Vc1)との差電圧である前記第2蓄電部電圧(Vc2)が下がるように前記第2DC/DCコンバータを制御するようにした請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項7】
前記第1蓄電部は、前記第2蓄電部より単位体積あたりの容量が大きく、かつ単位体積あたりの電力密度が小さい請求項1に記載の車両用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−244864(P2012−244864A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115501(P2011−115501)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】