説明

車両用電源装置

【課題】 ハイブリッド車両におけるエンジン効率を改善するようにバッテリの充放電制御を行う。
【解決手段】
本発明による車両用電源装置は、エンジンに接続されたオルタネータと、電気負荷が接続された低電圧バッテリを有する第一電源システムと、電気負荷が接続された高電圧バッテリを有する第二電源システムと、第一電源システムの電力を電圧変換して第二電源システムを充電するDC/DCコンバータとを備え、第一電源システムの電圧が、所定の下限電圧を下回らないように、DC/DCコンバータの出力電圧と出力電流とを設定して、エンジンとオルタネータを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用電源装置に特性の異なる2つのバッテリを設けて、車両の動作状態に基づいて、発電機(オルタネータ)の発電電力の制御を行うと共に、この発電電力のこれら2つのバッテリへの充電、およびこれら2つのバッテリ間の電力の授受を含む、バッテリの充放電を制御することによって、車両全体のエネルギー効率を改善する装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、車両用電源装置に2つのバッテリ装置(第1バッテリ:鉛酸バッテリ、第2バッテリ:リチウムイオンバッテリ)を設け、発電機の通電DUTYが所定値以上である場合に第2バッテリへの充電動作を禁止する制御が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、電源装置に2つのバッテリ(鉛酸バッテリなどの低電圧バッテリ、リチウム二次電池などの高電圧バッテリ)を設け、これら2つのバッテリ間の電力の授受を行うDC/DCコンバータを制御する装置および、さらに車両の稼働状態に応じて、オルタネータの発電電力によるこれら2つのバッテリの充電と、さらにこれら2つのバッテリの放電とを最適化する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−229478号公報
【特許文献2】特開2006−304574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば特許文献1や特許文献2に開示されている従来の車両用電源装置では、低電圧バッテリから高電圧バッテリへの電力の輸送においてはエンジン効率が考慮されておらず、したがって車両全体として効率を最大にするような2つのバッテリ間の電力の授受の制御が行われていなかった。また、この低電圧バッテリを充電するオルタネータの制御は、オルタネータの励磁コイルの電流量あるいはこの電流量を制御するスイッチのオンオフのデューティ比を検出して行っていたが、この励磁コイルの電流量あるいはデューティ比は外的負荷の変動により大きく変化するため、2つのバッテリ間の電力の授受を安定して行うことができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)請求項1に記載の発明は、エンジンに接続されたオルタネータと、電気負荷が接続された低電圧バッテリを有する第一電源システムと、電気負荷が接続された高電圧バッテリを有する第二電源システムと、第一電源システムの電力を電圧変換して第二電源システムを充電するDC/DCコンバータと、を備えた車両用電源装置であって、第一電源システムの電圧が、所定の下限電圧を下回らないように、DC/DCコンバータの出力電圧と出力電流とを設定して、エンジンとオルタネータを制御することを特徴とする車両用電源装置である。
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用電源装置において、エンジンの最高効率運転条件に対応したオルタネータの電気負荷が設定されるように、低電圧バッテリの目標電圧を設定し、DC/DCコンバータの出力電圧と出力電流とを設定することを特徴とする。
(3)請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用電源装置において、エンジンの最高効率運転条件に対応したオルタネータの電気負荷が設定されるように、オルタネータの電気負荷となる補機を選択する補機選択部を備えることを特徴とする。
(4)請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の車両用電源装置において、エンジンの負荷がポンピングロスが減る運転領域になるように、高電圧バッテリの充電をDC/DCコンバータの定電流制御で行うことを特徴とする。
(5)請求項5に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用電源装置において、高電圧バッテリの充電率が高く満充電に近い場合、高電圧バッテリの充電をDC/DCコンバータの定電圧制御で行うことを特徴とする。
(6)請求項6に記載の発明は、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の車両用電源装置において、高電圧バッテリの充電率が低い場合、高電圧バッテリの充電電流を所定の値に設定し、DC/DCコンバータを充電電流の所定の値で定電流制御して高電圧バッテリの充電を行うことを特徴とする。
(7)請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の車両用電源装置において、充電電流の所定の値は、エンジンの最高効率運転条件に対応したオルタネータの電気負荷と、低電圧バッテリのオルタネータへの電気負荷との差に基づいて算出されることを特徴とする。
(8)請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の車両用電源装置をそなえたことを特徴とする電動車両である。
(9)請求項9に記載の発明は、低電圧バッテリにより補機を駆動するための第一電源システムと、 高電圧バッテリにより走行駆動モータを駆動するための第二電源システムと、エンジンで駆動され、低電圧バッテリーが負荷に拘わらず定電圧となるように充電制御するオルタネータと、低電圧バッテリによる出力電圧を昇圧して高電圧バッテリーを充電するDC/DCコンバータと、エンジンのアイドリング時のエンジン負荷領域を監視し、エンジン最高効率点でエンジンを運転するためのエンジン負荷領域を決定し、そのエンジン負荷領域でエンジンが運転されるようにDC/DCコンバータを制御して、低電圧バッテリの出力で高電圧バッテリを充電する制御手段とを備えることを特徴とする車両用電源装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明による車両用電源装置によって、2つのバッテリ(低電圧バッテリと高電圧バッテリ)を備えたハイブリッド車両において、エンジン効率を最良とするように、これらのバッテリの充放電制御を行うことができる。また、低電圧バッテリの充電を行う発電機の制御を外的変動に対し強いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による車両用電源装置を備えた車両の構成例の概略を示すブロック図である。
【図2】本発明による車両用電源装置のエンジンコントローラの構成例をオルタネータおよび他の種々のセンサや入出力装置と共に示す図である。
【図3】低電圧バッテリ50の電圧変動に対するオルタネータ51の励磁コイル電流の制御量(デューティ)の変化を示す図である。
【図4】オルタネータ51への負荷電流の増大による、低電圧バッテリ50の電圧降下の様子を示した図である。
【図5】エンジンの燃費の高効率な領域を、エンジン回転数とエンジン出力トルクの等高線図で示した図である。
【図6】高電圧バッテリを構成するリチウムイオン電池の充電制御の例を示した図である。
【図7】オルタネータ51の励磁コイル電流量の変化速度制限動作のフローチャート図である。
【図8】オルタネータ51の電気負荷変動と低電圧バッテリ50の電圧変動の関係を示すチャート図である
【図9】本発明による車両用電源装置におけるDC/DCコンバータ153の動作モードを切り替える場合の車両制御フローを説明する図である。
【図10】本発明による車両用電源装置におけるDC/DCコンバータ153の動作モードが第一電源の定電圧制御である場合の車両制御フローを説明する図である。
【図11】本発明による車両用電源装置の動作全体の概略フローを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1〜11を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
図1は本発明による車両電源装置を備えたハイブリッド自動車の一実施形態であり、スタータ10などの電気負荷と、発電機(オルタネータ)51が配線151で接続されている低電圧バッテリ50からなる第一電源システムと、第一電源システムの電力を電圧変換する電圧変換器(DC/DCコンバータ)153と、モータ156への三相電力供給を制御するインバータ159に直流電力を供給するリチウムイオン電池等の高電圧バッテリ152からなる第二電源システムとを有する。インバータ159は、モータ156の回生電力を直流電力に変換して第二電源システムを充電する制御も行う。低電圧バッテリ50は、一般的に自動車で使われている鉛酸バッテリであり、充電状態(SOC)は100%近くで使われている。
【0011】
エンジン回転中での低電圧系の電気負荷(空調機やオーディオ等の補機)への電力供給は殆ど、低電圧バッテリ50と発電機(オルタネータ)51の出力でまかなわれる。モーター156や、エンジン160は、ハイブリッドコントローラ(HCM)157の指示信号により動作する。例えばスタータ10は、HCMからの指示信号が配線155を介してエンジンコントローラ(ECM)71に入力され、エンジンコントローラ71はさらにスタータ10に作動信号を配線158を介して出力し、スタータ10がエンジンを始動する。
【0012】
図2に、本発明による車両用電源装置でのエンジンコントローラ71の構成例をオルタネータ51および他の種々のセンサや入出力装置と共に示す。演算装置であるCPU100、読みだし専用メモリーであるROM101、読みだし及び書き込み可能なメモリーであるRAM102、イグニッションスイッチ72をオフにしても内容がクリアされないバックアップRAM111、割り込みコントローラ104、タイマー105、入力処理回路106、出力処理回路107で構成され、それらは、バス108により接続されている。
【0013】
CPU100は、入力処理回路106で処理された様々な情報をもとに、ROM101に記憶されているプログラムに基づき、RAM102及びイグニッションスイッチ72がオフの時も記憶内容を保持可能なバックアップRAM111を用いて各種の処理を行う。この際、タイマー105や入力処理回路106からの情報をもとに割り込みコントローラ104より発せられる割り込み命令により割り込み処理も適時行う。
【0014】
発電システムについて説明する。オルタネータ51は、従来の発電機と同様、外周に励磁コイル54を巻き回してなる回転子と、この回転子の外側に、回転子の外周面に対向するように3相巻線53a、53b、53cを巻き回した固定子とから構成されており、この回転子は上記エンジン160のクランク軸に連動して回転駆動される。また、オルタネータ51の3相巻線53a、53b、53cの出力端は、例えば2個ダイオードの直列回路を3組並列接続した三相全波整流回路55に接続され、このオルタネータ51の3相交流出力を整流して低電圧バッテリ50に供給して充電するように構成されている。
【0015】
エンジンコントローラ71には、低電圧バッテリ50の電圧を検出しながらオルタネータ51の出力電圧を調整する発電制御用プログラムも内蔵されている。励磁コイル54の電流量は、励磁コイル駆動回路56により以下のように制御される。低電圧バッテリ50の電圧を検出する電圧検出機能を有する入力処理回路106で取り込んだ結果と、前述のエンジン160の運転状態に応じて発電目標電圧を演算した結果とを比較して、低電圧バッテリ50の電圧が目標電圧に近づく様に、励磁コイル54の励磁コイル電流量を演算する。この励磁コイル電流量に対応した駆動信号が励磁コイル駆動回路56に出力される。
【0016】
図3は、低電圧バッテリ50の電圧変動に対するオルタネータ51の励磁コイル電流制御量すなわち励磁コイル駆動回路のデューティの変化を示す。低電圧バッテリ50に使用されている鉛酸バッテリは、放電して電圧が低い状態が続くと性能が劣化し寿命が短くなるので、できるかぎりSOCが100%に近い充電状態で使用される。このため、低電圧バッテリ50の定格電圧の電圧偏差に依存して、オルタネータ51の励磁コイル電流制御量が大きくなるように設定する。すなわち、低電圧バッテリ50の電圧が目標電圧よりも低い時は励磁コイル電流制御量を大きく設定し、逆に電圧が目標電圧よりも高い時はオルタネータ51の励磁コイル電流量を小さく設定することにより、電圧を一定に保つようにする。この目標電圧は、通常、低電圧バッテリ50の定格電圧としており、図3では、電圧偏差0Vで示されている。言い換えれば、この動作は、負荷電流により発生する電圧降下を補うフィードバック(F/B)制御を行っているものである。
なお、オルタネータ51の発電動作においては、低電圧バッテリの充電を最優先するので、上記のように低電圧バッテリ50の電圧を一定に保つようにオルタネータ51は動作する。以下に説明するオルタネータ51への追加の電気負荷の説明では、この低電圧バッテリの充電の負荷は除いてある。
【0017】
図4に、オルタネータ51への負荷電流の増大による、低電圧バッテリ50の電圧降下の一般的な動作例を示した図を示す。図3で示したとおり、種々の電気負荷による負荷電流が大きくなると低電圧バッテリ50の電圧降下が大きくなるために励磁コイルの電流量が大きくなるように調整し、0.5V以上低下すると励磁コイル電流量が100%となるようにする。従って、オルタネータ51への負荷電流が過電流の時は、低電圧バッテリ50の電圧低下が上記の0.5Vを超えるために電圧が下限電圧よりも低下し、電圧が不安定になる。後述するように、この実施形態では、DC/DCコンバータ153の動作による電気負荷がさらにオルタネータ51の負荷となる場合に、オルタネータ51への負荷電流がこの過電流領域にならない様に制御する。
【0018】
図5は、エンジン回転数とエンジン出力トルクとの関係から導かれる燃費の効率について概略的に示したものである。図示のように、燃費の効率が高い領域は、エンジン回転数が低乃至中程度の回転数であって、エンジン出力トルクが中程度よりも高めの負荷であることが分かる。従って、本発明では、補機の負荷が、この最大効率点での動作に対し不足している場合、さらに、DC/DCコンバータ153を動作させることによって、発電機51に負荷を追加して、エンジンの動作点をその最大効率点に移動する事で、高効率にエンジンを作動させる。
【0019】
図6は、第二電源システムを構成するリチウムイオン電池152の単電池セルの充電制御の例を示した図である。リチウムイオン電池の単電池セルの充電は、その端子間電圧がSOC100%に対応する定格電圧より低い時は、定電流制御、端子間電圧が高い時は、定電圧制御を行うのが一般的である。このような定電流/定電圧でリチウムイオン電池を充電する装置すなわちDC/DCコンバータは市販されて広く使用されており、ここでの詳細な説明は省略する。なお、以下の説明では、このような定電流/定電圧でリチウムイオン電池を充電するためのDC/DCコンバータを用いることを前提としている。
【0020】
なお、図6の例では、分かり易いように、リチウムイオン電池152の単電池セル1個の場合を示してある。高電圧バッテリ(リチウムイオン電池)152は、通常このような単電池セルが複数個直列に接続されたセルグループが複数個直列あるいは直並列に接続されて構成されている。このような構成により数百Vに達する高電圧出力が得られている。したがって、高電圧バッテリ152のSOC100%の状態とは、全単電池セルの総電圧が定格の電圧であることに対応している。
図1には図示していないが、高電圧バッテリ152は、その総電圧(高電圧バッテリの端子間電圧あるいは出力電圧)およびこの高電圧バッテリ152を構成する個々の単電池セルの充電状態を監視する高電圧バッテリ制御装置(不図示)によって監視/制御されている。また、全ての単電池セルの各々の充電状態がほぼ同一となるように、この高電圧バッテリ制御装置が、いわゆるバランシング放電を行うことによって各々の単電池セルの充電状態が揃えられているが、この説明は省略する。
【0021】
DC/DCコンバータ153による充電の定電流制御領域は大電流での短時間での充電を目的としているが、電流が小さくても大きくても問題は無い。従って、本実施形態では、定電流制御の際は、第一電源システムでエンジン動作が最大効率点になるようにオルタネータ51への負荷を制御する。このためのオルタネータ51への追加の負荷に相当するDC/DCコンバータ153の動作の負荷に対応した充電電流をDC/DCコンバータ153から第ニ電源システムに供給する。なお、リチウムイオン電池152が充分に充電されている場合、すなわちSOCが100%の場合は、上記のようにDC/DCコンバータ153は定電圧制御となり、SOC100%に対応する定格電圧以上には充電されない。極く小さな充電電流によって、自己放電やバランシング放電による僅かなSOC低下分の充電が行われる。
【0022】
<本発明による車両用電源装置の効果の例>
前述のように、本発明による車両用電源装置を用いて、第一電源システムと第二電源システムの電力の授受が外乱に強く安定して行える車両用電源装置とすることができる。この効果の例を図7、図8を参照して説明する。
【0023】
図7は、オルタネータ51の励磁コイル電流量の変化速度制限に関するフローチャートで、ステップ220でバッテリ温度(TVB)を算出し、この算出されたバッテリ温度にもとづいてステップ221でオルタネータ51の目標発電電圧(VBSET)を算出し、ステップ222でバッテリ電圧(VB)を検出し、ステップ223でオルタネータ51の目標発電電圧に対する低電圧バッテリ50の電圧の偏差を演算する。
【0024】
ステップ225で低電圧バッテリ50の電圧が所定値以上低下したことを検出する事により、電気負荷がOFFからONになった事を検出する。低電圧バッテリ50の電圧が所定値以上低下したことを検出した場合は、ステップ226でオルタネータ51の励磁コイル電流制御量ALTDTYの上昇速度を制限し、電気負荷のOFFからONになった事を検出しなかった場合はALTDTYの上昇速度に制限をかけずに制御を行う(たとえば 特開平8−284719号公報参照)。
【0025】
このような制御により、低電圧バッテリ50の状態に適した充電電圧で充電できる事による、低電圧バッテリ51の寿命の短縮を避け、電気負荷投入時のオルタネータ51への負荷トルクの急激な増大によるエンジン回転数の低下がない発電制御装置を実現する事が出来る。
一方、このような制御が動作している時には、オルタネータ51の駆動DUTY(励磁コイル電流制御量すなわち励磁コイル駆動回路のオンオフのデューティ比)が実負荷と一致していないDUTYになるため、このDUTYで負荷を推定するとオルタネータ51の負荷算出の誤差の原因となる。
【0026】
図8はオルタネータ51の電気負荷変動と低電圧バッテリ50の電圧変動の関係を示すチャート図である。この例では上記の図7のオルタネータ51の励磁コイル電流量の変化速度決定方法を用いてオルタネータ51の励磁コイル電流量を制御しているため、オルタネータ51への電気負荷がOFFからONになった時には低電圧バッテリ50の電圧の落ち込みが大きいが、オルタネータ51の回転数低下の防止効果が得られること、また電圧上昇が緩慢なことのため、前照灯などの照度変化に運転者が気づきにくく制御されている。一方電気負荷がONからOFFになった時は電源電圧の変動は小さく、電源電圧の上昇は殆どなく照度変化も殆ど無い。
【0027】
図9は、本発明による車両用電源装置の実施形態におけるDC/DCコンバータ153の動作モードを切り替える制御フローの例である。
ステップ201では、第二電源システムの電圧を検出する。ステップ202では図6の特性に基づき、DC/DCコンバータ153の充電電圧制御を切り替えている。すなわち、第ニ電源システムのリチウムイオン電池152の端子間電圧が所定の電圧(たとえば定格電圧)より低い場合は、定電流制御による充電が行われる。
【0028】
ステップ203では、DC/DCコンバータ153で定電圧制御による充電が選択された時の充電動作を行う。この定電圧制御では充電電流は非常に小さく、したがってDC/DCコンバータ153の負荷は小さいので、エンジン動作を最高効率点とするために十分な負荷をオルタネータ51に与えるような第一電源システム側の制御は行われない。ステップ204は、DC/DCコンバータ153が定電圧制御を行うことを示している。
【0029】
一方、ステップ202で、第二電源システムのリチウムイオン電池152の端子間電圧が所定の電圧より低い場合は、この第二電源システムのリチウムイオン電池152を定電流制御で充電するモードに切り替えられ、ステップ205に進む。ステップ205では、エンジン効率を最高効率点とするように、オルタネータ51の動作を制御する。
ここで、DC/DCコンバータ153の動作(定電流制御での第二電源システムのリチウムイオン電池152の充電)による負荷増大は、エンジン効率を最高効率点とするように、オルタネータ51が動作するように設定される。すなわち、エンジン効率を最高点とするようなオルタネータ51への追加の負荷となるように、DC/DCコンバータ153の負荷(第二電源システムのリチウムイオン電池152への充電電流)が設定される。
なお、後述するように、ステップ205での、エンジン効率を最高効率点とするように、オルタネータ51の動作の制御例を図10を参照して説明する。
【0030】
ステップ205で第二電源システムのリチウムイオン電池152への充電電流量が算出されるので、これをステップ206でDC/DCコンバータ153に設定し、ステップ207で第二電源システムのリチウムイオン電池152を定電流制御で充電する。
【0031】
また、ステップ206およびステップ207の動作と並行して、ステップ208でエンジンコントローラ71は、ステップ208でエンジン効率を最高効率点とするような鉛酸バッテリ50の端子間の所定の電圧を出力処理回路107に設定する。ステップ209では、出力処理回路107では、鉛酸バッテリ50の端子間電圧がこの所定の電圧となるように、励磁コイル駆動回路56を制御して励磁コイル電流量を調整する。この制御は図3を参照した前述のオルタネータ51のフィードバック制御で行われる。
【0032】
図10は、上記で説明したステップ205での、オルタネータ51への負荷算出の例を示す。ステップ210でエンジン吸入空気量を取り込み、ステップ211で吸入空気量Qaとエンジン回転数Neとでエンジン目標負荷TP(ここでは最高効率点の負荷に対応する)を、図5に示すようなエンジン回転数とエンジン出力トルクとの関係から算出する。吸入空気量Qaをエンジン回転数Neで割る事で単位回転あたりの空気量を算出する事で負荷を算出する。本実施形態では、エンジンを最高効率点で動作させるために、DC/DCコンバータ153や前述の補機(空調等)などの電気負荷が追加されるので、これに対応して、スロットル開度を大きくする。なお、このようなスロットル開度を大きくするような制御を行うことによりポンピングロスを低減することができる。
【0033】
ステップ213ではエンジン回転数に応じた最大効率点の負荷を算出し、ステップ214では、ステップ211で算出した負荷との差から目標発電負荷LDALTを算出する。次に、鉛酸バッテリ50の現在の電圧V1をステップ215で取り込み、ステップ216で目標発電電圧TVを算出し、それに基づきDC/DCコンバータ153の定電圧制御を行う。
【0034】
なお、図10には記載されていないが、ステップ213では、エンジン目標負荷TPがエンジンの最高効率点となるように、DC/DCコンバータ153を含む各電気負荷を選択する。また、ステップ212で検出されたエンジン回転数Neに対応したエンジン負荷とエンジン目標負荷TPの差を、DC/DCコンバータ153を含む追加の電気負荷に電流を供給することができるので、DC/DCコンバータ153がリチウムイオン電池152を定電流制御で充電するときの充電電流は、このエンジン回転数Neに対応したエンジン負荷とエンジン目標負荷TPの差から定められる。すなわち、DC/DCコンバータ153の定電流制御での、リチウムイオン電池152の最大充電電流に対応した負荷が、ステップ211で算出したエンジン負荷TPとエンジン目標負荷TPの差よりも小さければ、DC/DCコンバータ153は、最大の充電電流でリチウムイオン電池152を充電することができる。
【0035】
あるいは、ステップ211で算出したエンジン負荷TPとエンジン目標負荷TPの差が充分大きければ、さらに他の電気負荷も追加の電気負荷とすることもできる。
逆に、DC/DCコンバータ153の電気負荷に優先する他の電気負荷に、ステップ211で算出したエンジン負荷TPとエンジン目標負荷TPの差の分に対応したオルタネータ51の発電量を供給する必要がある場合は、DC/DCコンバータ153の電気負荷に供給する電流量を減らす必要がある。このような場合は、DC/DCコンバータ153の充電電流を制限して、DC/DCコンバータ153の電気負荷を小さくする。
このように、DC/DCコンバータ153の定電流制御での充電電流を調整することにより、エンジンを最高効率点で動作させ、かつ第二電源システムの充電量の不足を補うような充電を行うことができる。
【0036】
以上の説明をまとめ、本発明による車両用電源装置の車両始動時からの動作フローの概略を図11に示す。この動作フロー全体の制御はハイブリッドコントローラ(HCM)157によって行われる。エンジン制御やエンジンの動作状態を示す種々のパラメータの検出およびオルタネータ51の制御は図2に示すように、このハイブリッドコントローラ157が制御するエンジンコントローラ(ECM)71によって行われる。
上記の説明で分かるように、本発明による車両用電源装置のDC/DCコンバータ153を用いたリチウムイオン電池152の充電はオルタネータ51の発電能力に余裕がある状態で行われ、またこのオルタネータ51への負荷の変動が大きくない状態で行われることがことが好ましい。したがって、本発明による車両用電源装置の動作は主に車両のアイドリング時あるいは、高速巡航時に行われる。
【0037】
ステップ301で電動車両が始動(エンジン始動)すると、ステップ302〜308およびステップ311の低電圧側の制御動作とステップ309と310およびステップ311の高電圧側の制御動作が並行して行われる。
【0038】
ステップ301の車両の始動と同時に、オルタネータ51が低電圧バッテリ50の充電状態を所定の値とするような発電を行う自動制御が開始される。これは図2〜4を参照して上記で説明した通りである。
ステップ302でこの状態でのオルタネータ51の負荷(励磁コイル電流あるいは励磁コイル駆動回路56のオンオフのデューティ比)が検出される。続いてステップ303で、図10を参照して説明したエンジンの負荷が検出される。
【0039】
ステップ304で、図10のステップ213で説明したエンジン160の最高効率点が、ハイブリッドコントローラ(HCM)157あるいはエンジンコントローラ(ECM)71のメモリ領域(不図示)に格納された、図5に示すようなデータから算出される。この最高効率点は、たとえば車両の始動時ではエンジンのアイドリングでの回転数での最高効率点であり、また高速巡航時においては、その状態の回転数での最高効率点である。
【0040】
高電圧側の制御では、上記の低電圧側の制御と並行して、ステップ310で高電圧バッテリ152の端子間電圧が検出される。なお、高電圧バッテリ152の端子間電圧は、図1では図示していない高電圧バッテリ制御装置によって測定され、その測定結果はハイブリッドコントローラ157に、不図示の通信回路を介して送信される。
続いてステップ311で、この端子間電圧に基づいて、DC/DCコンバータ153の充電モードが選択される。たとえば高電圧バッテリ152の端子間電圧が定格出力に対応した充電状態(SOC100%)以下の電圧であれば定電流充電のモードが選択され、SOC100%と判断されれば定電圧充電のモードが選択される。
【0041】
低電圧側の制御のステップ305では、ステップ304で算出されたエンジン最高効率点でのエンジン出力(トルク)を発生させるためのオルタネータ51負荷(発電量)をハイブリッドコントローラ(HCM)157あるいはエンジンコントローラ(ECM)71のメモリ領域(不図示)に格納されたデータ(不図示)から算出し、上記ステップ303で検出されたエンジン負荷との差を、オルタネータ51負荷余裕(発電余裕)として算出する。
なお、以上のステップ303〜305の動作は、図10のステップ210〜214での動作に対応する。
【0042】
ステップ306では、ステップ305で算出されたオルタネータ51の負荷余裕を満たすような追加の負荷が、DC/DCコンバータ153およびその他の補機から選択される。この際各補記の優先度を考慮して補機が選択される。
たとえば、高電圧バッテリ152のSOCが低い状態であれば、これを優先的に追加の負荷とする。あるいは、高電圧バッテリ152のSOCが充分高く、運転者が空調の使用を希望する場合は、この空調の負荷を優先する。更に、高電圧バッテリ152のSOCが低く、また他の補機の使用も必要な場合は、高電圧バッテリの充電電流を制限するようなDC/DCコンバータ153の制御とその他の補機の使用とを組み合わせることが可能である。このような補機の選択および、DC/DCコンバータ153の充電出力の調整はハイブリッドコントローラ157によって行われる。この際、図3および4を参照して上記で説明したように、第一電源システムの電圧が所定の下限電圧を下回らないように補機の負荷を考慮して選択する。
【0043】
ステップ307では、以上のようにしてDC/DCコンバータ153がオルタネータ51への追加の負荷として選択された場合に、上記の条件でのDC/DCコンバータ153の出力に対応したDC/DCコンバータ153の動作負荷が算出される。この動作負荷の算出は、たとえばDC/DCコンバータ153の出力−消費電力の関係のデータをハイブリッドコントローラ157のメモリ領域(不図示)に格納しておき、このデータを用いて算出する。
【0044】
ステップ308、309、312では、ステップ304〜307で算出されたエンジン160、オルタネータ51、DC/DCコンバータ153の動作負荷や動作時の各種パラメータによって、エンジン160、オルタネータ51、DC/DCコンバータ153がそれぞれ動作する。
なお、この際オルタネータ51は、図3および4を参照して上記で説明したような発電動作を行う。
【0045】
DC/DCコンバータ153の動作による高電圧バッテリ152の充電は、ハイブリッド車両の稼働中は適宜繰り返し行われる。また、オルタネータ51の負荷とDC/DCコンバータ153を含む各種補機の稼働状況に基づいて、DC/DCコンバータ153による高電圧バッテリ152の充電電流が制限される場合も、高電圧バッテリ152の充電は長時間に渡って繰り返し行われる。
【0046】
ステップ313で、車両が停止すると、上記の全ての制御も停止し、動作終了となる。
【0047】
以上のように、本発明による車両用電源装置を用いて、内燃機関の効率を考慮した発電負荷により、第一電源システム(低電圧バッテリ50)の電圧を最適に制御する事により発電能力を考慮した発電負荷とする事で内燃機関の効率向上を実現し、発電機の制御に電圧検出値を使う事によりS/N比が高く、発電機の応答性が良い制御を行う、外乱に強い電源システムが実現できる。
また、本発明による車両用電源装置では、電圧変換装置(DC/DCコンバータ)153の電力変換量を制御する事により、内燃機関の動作をその最高効率点で行えるので、燃費向上の効果がある。また、オルタネータ51のDUTYではなく、低電圧バッテリ50の電圧を検出して行うF/Bであるので、外乱に強く、DUTYに比べて電気負荷の変動に対する発電機の応答性の影響が少ない効果がある。
【0048】
以上の説明は本発明の実施形態の例であり、本発明はこれらの実施形態や実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の特徴を損なわずに様々な変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 スロットルセンサ
2 エアフローセンサ
3 水温センサ
5 車速センサ
7 クランク角センサ
8 O2センサ
9 パワステスイッチ
10 スタータスイッチ
11 エアコンスイッチ
12 前照灯スイッチ
13 カム角センサ
14 アクセルセンサ
20 燃料ポンプ
23 インジェクタ
30 イグナイター
40 スロットルバルブ
41 ISCバルブ
50 低電圧バッテリ(第一電源システム)
51 オルタネータ
53a、53b、53c 固定子三相巻線
54 励磁コイル
55 三相全波整流回路
56 励磁コイル駆動回路
71 エンジンコントローラ(ECM)
74 エアコンクラッチ
75 ラジエータファンリレー
76 チャージランプ
100 CPU
101 ROM
102 RAM
104 割込コントローラ
105 タイマー
106 入力処理回路
107 出力処理回路
108 バス
111 バックアップRAM
151 配線
152 高電圧バッテリ(第二電源システム)
153 DC/DCコンバータ
154 配線
155 配線
156 モータ
157 ハイブリッドコントローラ(HCM)
158 配線
160 エンジン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに接続されたオルタネータと、電気負荷が接続された低電圧バッテリを有する第一電源システムと、電気負荷が接続された高電圧バッテリを有する第二電源システムと、前記第一電源システムの電力を電圧変換して前記第二電源システムを充電するDC/DCコンバータと、を備えた車両用電源装置であって、
前記第一電源システムの電圧が、所定の下限電圧を下回らないように、前記DC/DCコンバータの出力電圧と出力電流とを設定して、前記エンジンと前記オルタネータを制御することを特徴とする車両用電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用電源装置において、
前記エンジンの最高効率運転条件に対応した前記オルタネータの電気負荷が設定されるように、前記低電圧バッテリの目標電圧を設定し、前記DC/DCコンバータの出力電圧と出力電流とを設定することを特徴とする車両用電源装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用電源装置において、
前記エンジンの最高効率運転条件に対応した前記オルタネータの電気負荷が設定されるように、前記オルタネータの電気負荷となる補機を選択する補機選択部を備えることを特徴とする車両用電源装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用電源装置において、
前記エンジンの負荷がポンピングロスが減る運転領域になるように、前記高電圧バッテリの充電をDC/DCコンバータの定電流制御で行うことを特徴とする車両用電源装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用電源装置において、
前記高電圧バッテリの充電率が高く満充電に近い場合、前記高電圧バッテリの充電をDC/DCコンバータの定電圧制御で行うことを特徴とする車両用電源装置。
【請求項6】
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の車両用電源装置において、
前記高電圧バッテリの充電率が低い場合、前記高電圧バッテリの充電電流を所定の値に設定し、前記DC/DCコンバータを前記充電電流の前記所定の値で定電流制御して前記高電圧バッテリの充電を行うことを特徴とする車両用電源装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用電源装置において、
前記充電電流の前記所定の値は、前記エンジンの最高効率運転条件に対応した前記オルタネータの電気負荷と、前記低電圧バッテリの前記オルタネータへの電気負荷との差に基づいて算出されることを特徴とする車両用電源装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の車両用電源装置をそなえたことを特徴とする電動車両。
【請求項9】
低電圧バッテリにより補機を駆動するための第一電源システムと、
高電圧バッテリにより走行駆動モータを駆動するための第二電源システムと、
エンジンで駆動され、前記低電圧バッテリーが負荷に拘わらず定電圧となるように充電制御するオルタネータと、
前記低電圧バッテリによる出力電圧を昇圧して前記高電圧バッテリーを充電するDC/DCコンバータと、
前記エンジンのアイドリング時のエンジン負荷領域を監視し、エンジン最高効率点でエンジンを運転するためのエンジン負荷領域を決定し、その前記エンジン負荷領域で前記エンジンが運転されるように前記DC/DCコンバータを制御して、前記低電圧バッテリの出力で前記高電圧バッテリを充電する制御手段とを備えることを特徴とする車両用電源装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−95246(P2013−95246A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239189(P2011−239189)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】