説明

車両用静電霧化装置

【課題】 使用者が車両に乗り込んで運転を行う際には脱臭やアレルゲンの不活化がなされている状態とする。
【解決手段】 放電電極11と、放電電極に水分を供給する水分供給手段13と、上記放電電極に水分が供給された状態で上記放電電極に高電圧を印加して上記水分を静電霧化する高圧電源部15とを備え、さらにエンジン動作開始時間を含む運転時刻情報を記憶する記憶部8と、記憶部に記憶された運転時刻情報のエンジン動作開始時間から所定時間引いた時間を翌日の静電霧化動作開始時間として、該静電霧化動作開始時間に上記静電霧化動作を開始させる制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の静電霧化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の車両にあっては車室内が密閉空間となっているため車室内に煙草等の臭いがこもるという問題がある。このために濾過式の空気浄化装置が各種提供されているが、車室内の壁面等に付着した臭い成分を除去することはできない。
【0003】
ここにおいて、水を霧化させてナノメータサイズの帯電微粒子水(ナノサイズミスト)を発生させる静電霧化装置が注目されている。この静電霧化装置が発生するナノサイズミストはスーパーオキサイドラジカルやヒドロキシラジカルといったラジカルが含まれていることから、脱臭効果に加えてウイルス・カビ菌の抑制効果、アレル物質不活化効果等も備えており、このために上記ナノサイズミストを車室内に送り出せば、車室内の空気中の臭い成分だけでなく、車室内の壁面やシート等に付着した臭い成分の脱臭も行うことができる上に、シートやフロアカーペット、クッション等に付着したダニの屍骸や、屋外でのドアの開閉に伴って車室内に入ったり人の衣服に付着して車室内に持ち込まれた花粉等のアレルゲンも抑制することができる。このために、特開2006−151046号公報(特許文献1)には車両が備える空調装置が出力する風にナノサイズミストを乗せることで、車室内にナノサイズミストを放出する車両用静電霧化装置が提案されている。
【0004】
車両内に設けられる従来の空気浄化装置は、車両用の電源であるバッテリの消耗防止という点から、イグニッションキースイッチにキーを差し込んで上記スイッチ(におけるアクセサリスイッチを含む)をオンとすることによって電源が供給されるようになっており、実際上、エンジンを始動している時にだけ空気を浄化するものであった。
【0005】
一方、使用者にしてみれば、車のドアを開けた時や、車両が搭載している空調装置を作動させた時に車内残留の臭いを最も強く感ずるものであり、また使用者が車室内に乗り込む際、車室内のアレルゲンは活性状態にある。しかし、上記空気浄化装置と同様にイグニッションキースイッチがオンとなっている時に動作可能となっている静電霧化装置では、この点に対処することができない。
【0006】
また、シートに人が座っていると、ナノサイズミストMはシートにしみ込んだ臭いやシート内に入り込んだアレルゲンに触れることができないために、これらに対する脱臭や不活化の機会がないことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−151046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような点に鑑みなされたものであって、使用者が車両に乗り込んで運転を行う際には脱臭やアレルゲンの不活化がなされている状態とすることができる車両用静電霧化装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、放電電極と、放電電極に水分を供給する水分供給手段と、上記放電電極に水分が供給された状態で上記放電電極に高電圧を印加して上記水分を静電霧化する高圧電源部とを備えた車両用静電霧化装置であって、エンジン動作開始時間を含む運転時刻情報を記憶する記憶部と、記憶部に記憶された運転時刻情報のエンジン動作開始時間から所定時間引いた時間を翌日の静電霧化動作開始時間として、該静電霧化動作開始時間に上記静電霧化動作を開始させる制御手段とを備えて、静電霧化で生成したミストをシートを有する車室内に供給するものであることに特徴を有している。
【0010】
前記制御手段は、車両の運転を終了した後も静電霧化動作を所定時間継続するものであってもよく、また、前記制御手段は、静電霧化動作開始時間に基づく静電霧化動作を開始してから所定時間内にエンジンが始動されないときは静電霧化動作を停止するものであることが好ましい。
【0011】
前記制御部は、翌日が平日か休日かを区別し、記憶部に記憶した平日の運転時刻情報のエンジン動作開始時間から所定時間引いた時間を翌日が平日である時の静電霧化動作開始時間とするとともに、記憶部に記憶した休日の運転時刻情報のエンジン動作開始時間から所定時間引いた時間を翌日が休日である時の静電霧化動作開始時間とするものであってもよく、この場合、前記記憶部は過去の1週間分以上の運転時刻情報を記憶するものであり、前記制御部は一致する運転時刻情報が多い日を平日と判断し、他の運転時刻情報の日を休日と判断するものであってもよい。
【0012】
放電電極に対向するとともに放電電極との間に高電圧が印加される対向電極を備えているものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、エンジン動作開始時間から所定時間引いた時間を翌日の静電霧化動作開始時間として静電霧化動作を開始するものであるために、車両使用者が車に乗り込んで運転を開始する時には、臭いの除去やアレルゲンの不活化がなされた状態とすることができて、快適な空間での車両使用を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の一例のブロック回路図である。
【図2】同上の静電霧化ユニット部分の断面図である。
【図3】同上の車載状態を示す概略断面図である。
【図4】同上の動作を示すタイムチャートである。
【図5】同上の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施の形態の一例に基づいて詳述すると、図2はナノメータサイズの帯電微粒子水(ナノサイズミスト)を発生させる静電霧化装置1の霧化ユニット部分を示しており、放電電極11を囲む絶縁材からなる筒体16の先端開口部に配設されて上記放電電極11に対向するリング状の対向電極12と、上記放電電極11を冷却することで空気中の水分を放電電極11上に結露させる冷却手段13と、放電電極11と対向電極12との間に高電圧を印加する高圧電源部15とからなるもので、ペルチェ素子で構成されているとともに冷却側に上記放電電極11が熱的に接続されている上記冷却手段13は、その放熱側に放熱フィン14を備えている。
【0016】
また、上記静電霧化装置1は、放熱フィン14に冷却風を送るモータファン(図示せず)を備えているとともに、このモータファンから送られる風の一部は上記筒体16の側面開口から筒体16内に入り、筒体16の先端開口である放出口17から吐出される。
【0017】
この静電霧化装置1では、冷却手段13で放電電極11を冷却することで空気中の水分を結露させて放電電極11上に結露水を生成するものであり、従って冷却手段13が放電電極に水分を供給する水分供給手段を構成している。そして、結露水が放電電極11に付着している状態において、上記電極11,12間に高電圧を印加すれば、上記結露水は放電電極11の先端に集まるとともに対向電極12との間の放電によってレイリー分裂を繰り返してナノサイズミストMとなり、上記のモータファンによる風に乗って前記放出口17から外部に吐出される。なお、上記静電霧化装置1は、放電電圧検出回路と放電電流検出回路とを備えて検出された放電電圧及び放電電流を基に冷却手段13の冷却度調整による結露水生成量の調整を行う制御回路を備えており、放電電極11上に適量の結露水を常に確保してナノサイズミストMの発生を温度や湿度に影響されることなく確実に行うものとなっている。
【0018】
このように構成された静電霧化装置1は、図3に示すように自動車である車両の車室の天井部分や、空調装置における吹き出し口近傍に設置されて放出口17から放出するナノサイズミストMを車室内に供給し、脱臭やアレルゲンの不活化等を行う。
【0019】
ここにおいて、静電霧化装置1の動作を司る上記制御回路は、車両の各部動作を司る車載制御回路Cに接続されて車載制御回路から各種信号を受けられるようになっており、車両が運転されている時(エンジンが始動している時)にはそのことを示す信号を受けて、静電霧化動作を常時、もしくは車室内に設置した臭いセンサーやアレルゲンセンサーの出力に応じて静電霧化動作を行う。
【0020】
ただし、該静電霧化装置1は、図1に示すように車両におけるイグニッションキースイッチSWを介することなく車両電源であるバッテリーVから電源供給を受けられるようになっており、このためにイグニッションキースイッチSWがオフの時にも静電霧化動作が可能となっている。図1中の6は車載機器である。
【0021】
また、上記制御回路は、車載制御回路Cからのエンジン動作情報を元に作成された過去の運転時刻情報を記憶する記憶部8と、この記憶部8に蓄積された過去の運転時刻情報から次の運転時刻を予測する予測部9とを備えている。
【0022】
そして、該静電霧化装置1はイグニッションキースイッチSWがオフの時でも上記予測部9で予測された運転時刻になれば静電霧化動作を開始する。たとえば、図4に示すように、1日目が6:00から7:00までと20:00から21:00まで運転がなされた場合、上記時刻情報が記憶部8に記憶されるとともに、予測部9は翌日(2日目)の運転時刻も6:00から7:00までと20:00から21:00と予測し、この予測時刻よりもたとえば10分だけ早い時刻5:50及び19:50になれば、静電霧化動作を開始させる。
【0023】
そして、2日目の実際の運転時刻が7:00からと21:00からであれば、5:50及び19:50から開始した静電霧化動作は所定時間t(たとえば10分)で打ち切る。
【0024】
3日目の予測時刻は、前日の運転時刻をそのまま反映させる場合は7:00から8:00までと21:00から22:00と予測し、この予測時刻よりもたとえば10分だけ早い時刻6:50及び20:50になれば、静電霧化動作を開始させることになるが、図に示すように、実際の運転時刻が6:00からと20:00からとなった時には、運転時刻に合わせた静電霧化動作を行うとともに、6:50からの予測運転時刻と20:50からの予測運転時刻とは、既に運転が終了しているためにキャンセルする。図5に上記動作についてのフローチャートを示す。
【0025】
予測運転時刻をここでは前日の運転時刻のみを参照して決定するものを示したが、平日の場合と休日とを区別することができるようにしておくことが望ましい。つまり、翌日が平日であれば、過去の平日であった時の運転時刻を元に予測を行い、翌日が休日であれば過去の休日であった時の運転時刻を元に予測を行うのである。この場合、平日か休日かを予め予測部に指示しておかなくても、過去の1週間分以上の運転時刻情報を記憶させておけるようにして、一致する運転時刻情報が多い日を平日と判断し、他の運転時刻情報の日を休日と判断することでも対応することができる。
【0026】
いずれにしても、予測運転時刻に運転が開始されるならば、実際の運転の10分前から静電霧化動作が行われているために、車を使用するために使用者がドアを開けた時には、脱臭及びアレルゲンの不活化がなされている状態となっており、使用者は臭いやアレルゲンに悩まされることなく運転を開始することができる。
【0027】
なお、図4に示したタイムチャートでは、運転を終了した後も所定時間Tだけ静電霧化動作が継続されるようにしている。運転中は使用者が少なくとも運転席に座ったままであるために運転席のシートにナノサイズミストMが触れることができない上に、使用者の汗や汚れがシートに付着し、これが原因となる臭いが車の不使用時に車室内に広がるおそれがあるが、運転を終了した後も所定時間Tだけ静電霧化動作が継続されるならば、上記おそれを無くすことができるからである。
【符号の説明】
【0028】
1 静電霧化装置
8 記憶部
V バッテリ
SW イグニッションキースイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極と、放電電極に水分を供給する水分供給手段と、上記放電電極に水分が供給された状態で上記放電電極に高電圧を印加して上記水分を静電霧化する高圧電源部とを備えた車両用静電霧化装置であって、
エンジン動作開始時間を含む運転時刻情報を記憶する記憶部と、記憶部に記憶された運転時刻情報のエンジン動作開始時間から所定時間引いた時間を翌日の静電霧化動作開始時間として、該静電霧化動作開始時間に上記静電霧化動作を開始させる制御手段とを備えて、静電霧化で生成したミストをシートを有する車室内に供給するものであることを特徴とする車両用静電霧化装置。
【請求項2】
前記制御手段は、車両の運転を終了した後も静電霧化動作を所定時間継続するものであることを特徴とする請求項1記載の車両用静電霧化装置。
【請求項3】
前記制御手段は、静電霧化動作開始時間に基づく静電霧化動作を開始してから所定時間内にエンジンが始動されないときは静電霧化動作を停止するものであることを特徴とする請求項1または2記載の車両用静電霧化装置。
【請求項4】
前記制御部は、翌日が平日か休日かを区別し、記憶部に記憶した平日の運転時刻情報のエンジン動作開始時間から所定時間引いた時間を翌日が平日である時の静電霧化動作開始時間とするとともに、記憶部に記憶した休日の運転時刻情報のエンジン動作開始時間から所定時間引いた時間を翌日が休日である時の静電霧化動作開始時間とするものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用静電霧化装置。
【請求項5】
前記記憶部は過去の1週間分以上の運転時刻情報を記憶するものであり、前記制御部は一致する運転時刻情報が多い日を平日と判断し、他の運転時刻情報の日を休日と判断するものであることを特徴とする請求項4記載の車両用静電霧化装置。
【請求項6】
放電電極に対向するとともに放電電極との間に高電圧が印加される対向電極を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用静電霧化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−173636(P2010−173636A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36037(P2010−36037)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【分割の表示】特願2006−217422(P2006−217422)の分割
【原出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】