説明

車両用駆動装置

【課題】装置全体の小型化を図りつつ、動力伝達部材に対して軸方向の荷重が作用した場合に当該動力伝達部材を適切に支持することが可能な車両用駆動装置を実現する。
【解決手段】ケース3は、軸方向Lにおける回転電機MGと流体継手との間で径方向Rに延びる支持壁部31を備え、ロータ部材21と継手入力部材2とが連動して回転するように連結されて動力伝達部材Tを構成し、動力伝達部材Tを支持壁部31に対して回転可能な状態で軸第二方向L2側から支持する第一軸受71と、動力伝達部材Tを支持壁部31に対して回転可能な状態で軸第一方向L1側から支持する第二軸受72と、が備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機と、回転電機と同軸上に配置される流体継手と、回転電機及び流体継手を収容するケースと、を備え、流体継手が、回転電機のロータ部材に駆動連結される継手入力部材と、車輪に駆動連結される継手出力部材と、を備える車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような車両用駆動装置の従来技術として、例えば、特開2006−137406号公報(特許文献1)に記載された技術がある。なお、この背景技術の欄の説明では、〔〕内に特許文献1における部材名を引用して説明する。特許文献1に記載の構成では、当該文献の図1に示されているように、ロータ部材〔ロータ12及びドラム部材13〕と継手入力部材とが中間部材〔プレート部材10及び第2スプライン軸11〕を介して一体回転するように駆動連結されて、動力伝達部材が構成されている。
【0003】
ところで、特に明記はされていないが、特許文献1の図1に示される構成では、流体継手〔トルクコンバータ1〕の回転状態等に起因して動力伝達部材に対して軸方向の荷重が作用した場合には、軸方向一方側(当該図1における右側)への荷重は軸受〔ベアリング15〕が受け、軸方向他方側(当該図1における左側)への荷重は別の軸受〔ベアリング9〕が受ける構成であると理解される。すなわち、径方向の荷重を受けるためのラジアル軸受が、軸方向の荷重をも受ける構成となっている。そのため、特許文献1の構成では、各軸受が大型化しやすく、その結果、装置全体の大型化を招来するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−137406号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、装置全体の小型化を図りつつ、動力伝達部材に対して軸方向の荷重が作用した場合に当該動力伝達部材を適切に支持することが可能な車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る、回転電機と、当該回転電機に対して当該回転電機の軸方向の一方側である軸第一方向側にて、当該回転電機と同軸上に配置される流体継手と、前記回転電機及び前記流体継手を収容するケースと、を備え、前記流体継手が、前記回転電機のロータ部材に駆動連結される継手入力部材と、車輪に駆動連結される継手出力部材と、を備える車両用駆動装置の特徴構成は、前記ケースは、前記軸方向における前記回転電機と前記流体継手との間で、前記回転電機の径方向に延びる支持壁部を備え、前記ロータ部材と前記継手入力部材とが連動して回転するように連結されて動力伝達部材を構成し、前記動力伝達部材を前記支持壁部に対して回転可能な状態で前記軸第一方向とは反対方向の軸第二方向側から支持する第一軸受と、前記動力伝達部材を前記支持壁部に対して回転可能な状態で前記軸第一方向側から支持する第二軸受と、を備える点にある。
【0007】
本願において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等が含まれていてもよい。
また、本願において「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
また、本願において「流体継手」は、トルク増幅機能を有するトルクコンバータ、及びトルク増幅機能を有さない通常の流体継手のいずれをも含む概念として用いている。
また、本願において、部材の形状に関し、ある方向に(或いは、ある方向へ)「延びる」とは、当該方向を基準方向として、部材の延在方向が前記基準方向に平行な形状に限らず、部材の延在方向が前記基準方向に交差する方向であっても、その交差角度が所定範囲内である形状も含む概念として用いている。
【0008】
上記の特徴構成によれば、動力伝達部材に対して軸第二方向側への荷重が作用した場合には、当該荷重を第一軸受により受けることができ、動力伝達部材に対して軸第一方向側への荷重が作用した場合には、当該荷重を第二軸受により受けることができる。すなわち、動力伝達部材に対して軸方向の荷重が作用した場合であっても、当該荷重の向きにかかわらず、動力伝達部材を適切に支持することができる。
そして、第一軸受及び第二軸受とは別に動力伝達部材を径方向に支持する径方向支持軸受が備えられる場合には、当該径方向支持軸受に軸方向の荷重が作用することを抑制することができるため、第一軸受及び第二軸受を備えない場合に比べて、当該径方向支持軸受として寸法の小さな軸受を用いることが可能となる。また、このような径方向支持軸受が備えられる場合には、第一軸受及び第二軸受にて径方向の大きな荷重を受ける必要がないため、第一軸受及び第二軸受についても、寸法の小さな軸受を用いることが可能となる。従って、第一軸受及び第二軸受を含む各軸受を小型化することができ、各軸受を適切に配置して装置全体の小型化を図ることが容易となる。
また、上記の特徴構成によれば、第一軸受及び第二軸受の双方とも同一の壁部である支持壁部に対して動力伝達部材を支持する。そのため、第一軸受及び第二軸受が互いに別の壁部に対して動力伝達部材を支持する場合に比べて、ケース内における各部材(例えば、他の壁部等)についての設計の自由度を高めることが容易となり、この点からも、装置全体の小型化を図ることが容易となる。
【0009】
ここで、前記動力伝達部材は、前記支持壁部の前記径方向の内側を通って前記軸方向に延びる軸方向延在部と、前記支持壁部に対して前記軸第一方向側において前記径方向の外側へ延びる第一径方向延在部と、前記支持壁部に対して前記軸第二方向側において前記径方向の外側へ延びる第二径方向延在部と、を備えると共に、前記第一径方向延在部と第二径方向延在部とが、前記軸方向延在部を介しての前記軸方向の相対移動が規制された状態で連結されており、前記第一軸受は前記第一径方向延在部を前記軸第二方向側から支持し、前記第二軸受は前記第二径方向延在部を前記軸第一方向側から支持している構成とすると好適である。
【0010】
この構成によれば、動力伝達部材における軸方向に一体的に移動する部分が、支持壁部の径方向の内側部分を軸方向の両側及び径方向の内側から囲むように配置されるため、第一軸受及び第二軸受の双方についての支持構造を簡素なものとして、軸受及び周辺の支持構造が占有する空間を小さく抑えることが可能となる。
【0011】
上記のように、前記動力伝達部材が、前記軸方向延在部と前記第一径方向延在部と前記第二径方向延在部とを備える構成において、前記ロータ部材を前記支持壁部に対して回転可能な状態で前記径方向に支持する第三軸受を更に備え、前記ロータ部材と前記第二径方向延在部とが、前記軸方向に相対移動可能な状態で連結されている構成とすると好適である。
【0012】
この構成によれば、継手部材側から作用する軸方向の荷重が、ロータ部材に作用することを抑制することができるため、ロータ部材の軸方向位置を一定に維持するのが容易となる。よって、ロータ部材と第二径方向延在部とが軸方向に相対移動不能な状態で駆動連結されている場合に比べて、ロータ部材が有するロータ本体の軸方向長さを短く抑えることができ、結果、回転電機の小型化を図ることができる。また、第三軸受にて軸方向の大きな荷重を受ける必要がないため、第三軸受にて軸方向の大きな荷重を受ける必要がある場合に比べて、第三軸受の小型化を図ることができる。
【0013】
また、前記軸方向延在部は、前記第一径方向延在部と一体的に形成された第一部分と、前記第二径方向延在部と一体的に形成された第二部分とが、前記軸方向に延びるスプライン歯によるスプライン嵌合により互いに連結されて構成されていると共に、前記第一部分と前記第二部分との前記軸方向の相対移動を規制する移動規制機構を備えている構成とすると好適である。
【0014】
この構成によれば、動力伝達部材における支持壁部より軸第一方向側に配置される部分と、動力伝達部材における支持壁部より軸第二方向側に配置される部分とが、互いに独立した別部材とされるため、動力伝達部材をケース内に組み付けるための工程を簡素なものとすることができる。具体的には、支持壁部より軸第一方向側に配置された第一径方向延在部と、支持壁部より軸第二方向側に配置された第二径方向延在部とを、互いに軸方向に近づけた後に、移動規制機構を組み付けることで、動力伝達部材における少なくとも軸方向延在部、第一径方向延在部、及び第二径方向延在部を含む部分を形成することができる。
【0015】
また、前記第一軸受が、前記支持壁部と前記第一径方向延在部とが前記軸方向に対向する部分に配置されたスラスト軸受であり、前記第二軸受が、前記支持壁部と前記第二径方向延在部とが前記軸方向に対向する部分に配置されたスラスト軸受である構成とすると好適である。
【0016】
この構成によれば、第一軸受及び第二軸受の各軸受が配置される空間を、共に径方向に延びる側壁部により軸方向の両側から囲まれた空間とすることができる。すなわち、第一軸受及び第二軸受として、一般的な構成のスラスト軸受を用いることができるとともに、各軸受を、支持壁部に対して直接的に支持対象部を支持するように配置することができる。よって、簡素な構成で、動力伝達部材を適切に軸方向に支持することができる。
【0017】
また、前記支持壁部が第一支持壁部であり、前記ケースは、前記回転電機より前記軸第二方向側において前記径方向に延びる第二支持壁部を備え、前記動力伝達部材を前記第二支持壁部に対して回転可能な状態で前記径方向に支持する第四軸受を更に備え、前記第一径方向延在部と前記第一支持壁部との間に設けられる前記軸方向の隙間の総和が、前記第二径方向延在部と前記第二支持壁部との間に設けられる前記軸方向の隙間の総和より小さく設定されている構成とすると好適である。
【0018】
この構成によれば、動力伝達部材に対して軸第二方向側への荷重が作用した場合に、第二径方向延在部と第二支持壁部との間の軸方向の隙間が詰まる前に、第一径方向延在部と第一支持壁部との間の軸方向の隙間が詰まる構成とすることができる。よって、動力伝達部材に対して作用する軸第二方向側への荷重を、主に第一軸受により受け止めることができ、第四軸受に対して大きな軸方向荷重が作用することを抑制することができる。これにより、第四軸受に対して大きな軸方向荷重が作用する場合に比べて、第四軸受の小型化を図ることができる。
【0019】
上記のように、前記軸方向延在部が、前記第一部分と前記第二部分とがスプライン嵌合により互いに連結されて構成されていると共に、前記第一部分と前記第二部分との前記軸方向の相対移動を規制する前記移動規制機構を備える構成において、前記第一部分は、前記第一径方向延在部から前記軸第二方向側に突出する筒状部分であって、外周面に第一スプライン歯が形成された第一筒状突出部を備え、前記第二部分は、前記第二径方向延在部から前記軸第一方向側に突出する筒状部分であって、内周面に前記第一スプライン歯と係合する第二スプライン歯が形成された第二筒状突出部を備え、前記第二筒状突出部の前記軸第一方向側の端面が前記第一径方向延在部に当接すると共に、前記第一部分に締結固定された締結部材の前記軸第一方向側を向く面が前記第二筒状突出部の前記軸第二方向側を向く面に当接することにより、前記移動規制機構が構成されている構成とすると好適である。
【0020】
この構成によれば、移動規制機構の構成を簡素なものとしつつ、第一筒状突出部と第二筒状突出部との間の軸心精度が適切に確保された状態で、第一部分と第二部分とをガタなく強固に連結することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の部分断面図である。
【図3】図2の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、特に区別して明記している場合を除き、「軸方向L」、「径方向R」、「周方向」は、回転電機MGの回転軸心(図2に示す軸心X)を基準として定義している。そして、「軸第一方向L1」は、軸方向Lに沿って回転電機MGからトルクコンバータTC側へ向かう方向(図2における右側)を表し、「軸第二方向L2」は、軸第一方向L1とは反対方向(図2における左側)を表す。また、「径内方向R1」は、径方向Rの内側へ向かう方向を表し、「径外方向R2」は、径方向Rの外側へ向かう方向を表す。なお、各部材についての方向は、当該部材が車両用駆動装置1に組み付けられた状態での方向を表す。また、各部材についての方向や位置等に関する用語は、製造上許容され得る誤差による差異を有する状態も含む概念として用いている。
【0023】
1.車両用駆動装置の全体構成
図1は、本実施形態に係る車両用駆動装置1の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、この車両用駆動装置1は、回転電機MGと、トルクコンバータTCと、回転電機MG及びトルクコンバータTCを収容するケース3(図2参照)と、を備えている。トルクコンバータTCは、回転電機MGに駆動連結されており、具体的には、回転電機MGと出力軸Oとの間の動力伝達経路に設けられている。出力軸Oは、出力用差動歯車装置DFを介して車輪Wに駆動連結されており、出力軸Oに伝達された回転及びトルクは、出力用差動歯車装置DFを介して左右2つの車輪Wに分配されて伝達される。これにより、車両用駆動装置1は、回転電機MGのトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させることができる。本実施形態では、トルクコンバータTCが本発明における「流体継手」に相当する。
【0024】
本実施形態に係る車両用駆動装置1は、内燃機関Eのトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させることも可能に構成されている。すなわち、車両用駆動装置1は、内燃機関Eに駆動連結される入力軸Iを備えており、図1に示すように、内燃機関Eと車輪Wとを結ぶ動力伝達経路において、内燃機関Eの側から順に、入力軸I、回転電機MG、トルクコンバータTC、及び出力軸Oが設けられている。これにより、本実施形態に係る車両用駆動装置1は、車両の駆動力源として内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方を用いるハイブリッド車両用の駆動装置(ハイブリッド駆動装置)、具体的には、いわゆる1モータパラレル方式のハイブリッド駆動装置として構成されている。
【0025】
なお、内燃機関Eは、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機であり、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等を用いることができる。また、本実施形態では、入力軸Iはダンパ16(図2参照、図1では省略)を介して内燃機関Eの出力軸(クランクシャフト等)に駆動連結されている。入力軸Iが、ダンパ16を介さずに内燃機関Eの出力軸に駆動連結された構成とすることもできる。
【0026】
本実施形態では、図1に示すように、動力伝達経路における入力軸Iと回転電機MGとの間には、車輪Wから内燃機関Eを切り離す内燃機関切離用クラッチとして機能する第一クラッチC1が配置されている。また、動力伝達経路におけるトルクコンバータTCと出力軸Oとの間には、変速機構TMが配置されている。変速機構TMは、変速比を段階的に或いは無段階に変更可能な機構(例えば自動有段変速機構等)で構成され、中間軸M(変速入力軸)の回転速度を所定の変速比で変速して出力軸O(変速出力軸)へ伝達する。
【0027】
本実施形態では、入力軸I、第一クラッチC1、回転電機MG、トルクコンバータTC、変速機構TM、及び出力軸Oは、いずれも軸心X(図2参照)上に配置されており、本実施形態に係る車両用駆動装置1は、FR(Front Engine Rear Drive)方式の車両に搭載される場合に適した一軸構成とされている。
【0028】
2.駆動装置の各部の構成
次に、本実施形態に係る車両用駆動装置1の各部の構成について、図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は、本実施形態に係る車両用駆動装置1の一部を、軸心Xを含む平面に沿って切断した断面図であり、図3は図2の一部拡大図である。
【0029】
2−1.ケース
ケース3は、本実施形態では図2に示すように、第一支持壁部31と、第二支持壁部32と、第三支持壁部33と、周壁部34と、を備えている。周壁部34は、回転電機MG、第一クラッチC1、トルクコンバータTC等の外周を覆う概略円筒状に形成されている。また、周壁部34の径内方向R1側に形成されるケース内空間を軸方向Lに区画するように、第二支持壁部32、第一支持壁部31、及び第三支持壁部33が、軸第二方向L2側から記載の順に配置されている。本実施形態では、第一支持壁部31が本発明における「支持壁部」に相当する。
【0030】
図2に示すように、ケース3内における第一支持壁部31と第二支持壁部32との間の空間に、回転電機MG及び第一クラッチC1が収容されている。なお、第一支持壁部31と第二支持壁部32との間の空間は、本実施形態では、径内方向R1側の部分が径外方向R2側の部分より軸方向Lの長さが短い形状に形成されている。また、ケース3内における第一支持壁部31と第三支持壁部33との間の空間に、トルクコンバータTCが収容されている。さらに、ケース3内における第二支持壁部32より軸第二方向L2側の空間に、ダンパ16が収容されている。
【0031】
第一支持壁部31は、軸方向Lにおける回転電機MGとトルクコンバータTCとの間で、径方向Rに延びるように形成されている。本実施形態では、第一支持壁部31は、径方向Rに加えて周方向にも延びる円板状の壁部とされており、径方向Rの中心部に、軸方向Lに貫通する貫通孔(以下、「第一貫通孔」という。)が形成されている。第一支持壁部31は、径内方向R1側の部分が全体として径外方向R2側の部分よりも軸第二方向L2側に位置するように、軸方向Lにオフセットされた形状を有している。
【0032】
第一支持壁部31は、軸第二方向L2側に向かって突出する第一筒状突出部40を備えている。本実施形態では、第一筒状突出部40は、第一支持壁部31の径方向Rの中心部において、軸心Xと同軸上に配置されており、第一筒状突出部40の内周面40b(図3参照)が、上記第一貫通孔の外縁部を形成している。すなわち、第一筒状突出部40は、第一支持壁部31の径内方向R1側の端部に形成された、軸方向Lに所定厚さを有する肉厚部(ボス部)とされている。
【0033】
第一筒状突出部40は、後述するロータ部材21より径内方向R1側であって、径方向Rに見てロータ部材21と重複する部分を有する位置に配置されている。なお、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「所定方向に見て重複する部分を有する」とは、当該所定方向を視線方向として当該視線方向に直交する各方向に視点を移動させた場合に、2つの部材が重なって見える視点が少なくとも一部の領域に存在することを指す。
【0034】
本実施形態では図3に示すように、第一筒状突出部40の軸第二方向L2側の先端部40aが、回転電機MGの軸方向Lの中央部領域と径方向Rに見て重なる軸方向Lの位置に配置され、第一筒状突出部40の軸第一方向L1側の基端部は、ロータ部材21の軸第一方向L1側の端部より軸第一方向L1側に位置する。そして、第一筒状突出部40の径内方向R1側に、すなわち、第一貫通孔の内部に、後述する動力伝達部材Tの一部が配置されている。また、第一筒状突出部40の軸第一方向L1側の側面部には、径内方向R1側を向く面(本例では円筒状面)を有する段差部40dが形成されている。
【0035】
また、第一支持壁部31は、第一筒状突出部40よりも大径の第二筒状突出部41を備えている。第二筒状突出部41は、第一筒状突出部40と同じく、軸第二方向L2側に向かって突出するように形成されているとともに、軸心Xと同軸上に配置されている。図3に示すように、第二筒状突出部41の突出量は第一筒状突出部40の突出量より少なく、第二筒状突出部41の軸第二方向L2側の先端部41aは、第一筒状突出部40の先端部40aより軸第一方向L1側に位置する。また、第二筒状突出部41は、第一筒状突出部40より径方向Rの厚さが小さく形成されている。第二筒状突出部41の内周面41bには、軸第二方向L2側を向く面(本例では円環状面)を有する内周段差部41dが形成されている。この内周段差部41dを境界として、当該内周段差部41dより軸第二方向L2側の部分が大径部とされ、当該内周段差部41dより軸第一方向L1側の部分が小径部とされている。
【0036】
第二支持壁部32は、図2に示すように、回転電機MGより軸第二方向L2側(本例では、軸方向Lにおける回転電機MGとダンパ16との間)において径方向Rに延びるように形成されている。本実施形態では、第二支持壁部32は、径方向Rに加えて周方向にも延びる円板状の壁部とされており、径方向Rの中心部に軸方向Lの貫通孔(以下、「第二貫通孔」という。)が形成されている。この第二貫通孔に、入力軸Iが挿通されている。第二支持壁部32は、径内方向R1側の部分が全体として径外方向R2側の部分よりも軸第一方向L1側に位置するように、軸方向Lにオフセットされた形状を有している。図3に示すように、上記第二貫通孔の外縁部を形成する第二支持壁部32の径内方向R1側の部分の内周面32bには、軸第一方向L1側を向く面(本例では円環状面)を有する内周段差部32dが形成されている。この内周段差部32dを境界として、当該内周段差部32dより軸第一方向L1側の部分が大径部とされ、当該内周段差部32dより軸第二方向L2側の部分が小径部とされている。
【0037】
第三支持壁部33は、図2に示すように、トルクコンバータTCより軸第一方向L1側(本例では、軸方向LにおけるトルクコンバータTCと変速機構TM(図1参照)との間)において径方向Rに延びるように形成されている。本実施形態では、第三支持壁部33は、径方向Rに加えて周方向にも延びる平坦な円板状の壁部とされており、径方向Rの中心部に軸方向Lの貫通孔(以下、「第三貫通孔」という。)が形成されている。この第三貫通孔に、中間軸Mが挿通されている。第三支持壁部33には、オイルポンプ9が設けられており、オイルポンプ9を駆動するポンプ駆動軸67は、トルクコンバータTCの後述するポンプインペラ61と一体回転するように駆動連結されている。これにより、ポンプインペラ61の回転に伴い、オイルポンプ9は油を吐出し、車両用駆動装置1の各部に油を供給するための油圧を発生させる。なお、ポンプ駆動軸67は、第九軸受79(本例ではニードルベアリング)及びポンプケースを介して、第三支持壁部33に対して回転可能な状態で径方向Rに支持されている。
【0038】
2−2.回転電機
回転電機MGは、図2に示すように、軸方向Lにおける第一支持壁部31と第二支持壁部32との間に配置されている。本実施形態では、第一支持壁部31と第二支持壁部32とにより軸方向Lの両側を区画され、周壁部34により径外方向R2側を区画される空間には、オイルポンプ9により吐出された油が供給されるように構成されており、当該油により回転電機MGが冷却される構成となっている。
【0039】
回転電機MGは、図2に示すように、ケース3に固定されたステータStと、ロータ部材21と、を備えている。ステータStは、軸方向Lの両側にコイルエンド部Ceを備えている。ロータ部材21は、ロータRoと、当該ロータRoから径内方向R1側に延びて当該ロータRoを支持するロータ支持部材22と、を備えている。ロータRoは、ステータStの径内方向R1側に配置されるとともに、当該ロータRoと一体回転するロータ支持部材22を介して、ケース3に対して回転可能に支持されている。
【0040】
ロータ支持部材22は、ロータRoを径内方向R1側から支持する部材であり、本実施形態では、ロータRoを保持するロータ保持部25と、径方向延在部26と、を備えている。ロータ保持部25は、軸心Xと同軸上に配置され、ロータRoの内周面に接する外周部及びロータRoの軸方向Lの両側面に接するフランジ部を有する円筒状に形成されている。径方向延在部26は、ロータ保持部25と一体的に形成され、ロータ保持部25の軸方向Lの中央部に対して軸第一方向L1側の部分から径内方向R1側に延びるように形成されている。径方向延在部26は、径方向Rに加えて周方向にも延びる円環板状部とされている。本実施形態では、径方向延在部26は、径方向Rに平行に延びるとともに、径内方向R1側の端部が、第一筒状突出部40の外周面に対して径外方向R2側に位置するように形成されている。なお、本実施形態では、図3に示すように、径方向延在部26の径内方向R1側の端部(本例では、後述する第二軸方向突出部24の内周面)と、第一筒状突出部40の外周面との間の径方向Rの隙間には、第一スリーブ部材94が配置されている。この第一スリーブ部材94は、当該隙間を油が軸方向Lに流通することを規制するために設けられている。
【0041】
径方向延在部26は、軸第一方向L1側に向かって突出する筒状の突出部である第一軸方向突出部23を備えている。第一軸方向突出部23は、軸心Xと同軸上に配置され、本実施形態では、径方向延在部26の径内方向R1側の端部において、径方向延在部26と一体的に形成されている。図3に示すように、第一軸方向突出部23は、径方向Rにおける第一筒状突出部40と第二筒状突出部41との間において、径方向Rに見て第二筒状突出部41と重複する部分を有する位置に配置されている。そして、第一軸方向突出部23の外周面23cと第二筒状突出部41の内周面41bとにより径方向Rの両側を区画される空間であって、径方向延在部26と第一支持壁部31(第二筒状突出部41の内周段差部41d)とにより軸方向Lの両側を区画される空間が、後述する第五軸受75を配置するための軸受配置空間となっている。
【0042】
また、径方向延在部26は、軸第二方向L2側に向かって突出する筒状の突出部である第二軸方向突出部24を備えている。第二軸方向突出部24は、軸心Xと同軸上に配置され、本実施形態では、径方向延在部26の径内方向R1側の端部において、径方向延在部26と一体的に形成されている。図3に示すように、第二軸方向突出部24の軸第二方向側の先端部24aは、第一筒状突出部40の先端部40aより軸第二方向L2側に位置する。
【0043】
ロータ支持部材22には、板状部材27が取り付けられている。板状部材27は、径方向Rに加えて周方向にも延びる円環板状部材とされている。そして、本実施形態では、図3に示すように、ロータ保持部25における軸方向Lの中央部よりも軸第二方向L2側の部分の内周面に対して、板状部材27の外周面が嵌合(本例ではスプライン嵌合)するように設けられている。これにより、板状部材27はロータ支持部材22と一体回転する。ロータ保持部25の内周面には、軸第二方向L2側を向く面(本例では円環状面)を有する内周段差部25dが形成されている。この内周段差部25dを境界として、当該内周段差部25dより軸第二方向L2側の部分が大径部とされ、当該内周段差部25dより軸第一方向L1側の部分が小径部とされている。また、ロータ保持部25の内周面における、板状部材27の外周面に対して軸方向Lにおける内周段差部25dとは反対側の部分には、スナップリング93が係止されている。そして、ロータ保持部25に取り付けられた状態の板状部材27は、ロータ保持部25に対する軸方向Lの移動がある程度許容される状態で、軸第一方向L1側への移動は内周段差部25dにより規制され、軸第二方向L2側への移動はスナップリング93により規制される。なお、図3には、板状部材27が内周段差部25dの軸第二方向L2側を向く面に当接した状態で、板状部材27とスナップリング93との間に軸方向Lの隙間(第四隙間D4)がある状態を示している。
【0044】
本実施形態では、板状部材27は、径内方向R1側の部分が全体として径外方向R2側の部分よりも軸第二方向L2側に位置するように、軸方向Lにオフセットされた形状を有している。板状部材27における径内方向R1側の端部には、径外方向R2側の部分に比べて軸方向Lの厚さが大きい肉厚部28が形成されており、この肉厚部28の外周面28cには、軸第二方向L2側を向く面(本例では円環状面)を有する外周段差部28dが形成されている。この外周段差部28dを境界として、当該外周段差部28dより軸第一方向L1側の部分が大径部とされ、当該外周段差部28dより軸第二方向L2側の部分が小径部とされている。この板状部材27の外周段差部28dは、第二支持壁部32の内周段差部32dより軸第一方向L1側に位置する。そして、板状部材27の肉厚部28の外周面28cと第二支持壁部32の内周面32bとにより径方向Rの両側を区画される空間であって、板状部材27の外周段差部28dと第二支持壁部32の内周段差部32dとにより軸方向Lの両側を区画される空間が、後述する第七軸受77を配置するための軸受配置空間となっている。
【0045】
2−3.第一クラッチ
第一クラッチC1は、入力軸Iとロータ部材21との間の動力伝達経路に設けられて係合の状態を変化させることが可能な装置である。すなわち、第一クラッチC1は、当該第一クラッチC1によって係合される2つの係合部材の係合の状態を、当該2つの係合部材が係合した状態(スリップ係合した状態を含む)と、当該2つの係合部材が係合しない状態(解放した状態)とに切り替え可能に構成されている。そして、当該2つの係合部材が係合した状態では、入力軸Iとロータ部材21との間で駆動力の伝達が行われ、当該2つの係合部材が解放した状態では、入力軸Iとロータ部材21との間で駆動力の伝達が行われない。
【0046】
図3に示すように、第一クラッチC1は、軸方向Lにおける径方向延在部26と板状部材27との間に配置されている。また、第一クラッチC1は、ロータRoより径内方向R1側であって、径方向Rに見てロータRoと重複する部分を有する位置に配置されている。本実施形態では、第一クラッチC1は、ロータRoの軸方向Lの中央部領域と径方向Rに見て重なる軸方向Lの位置に配置されている。
【0047】
本実施形態では、第一クラッチC1は、クラッチハブ51、摩擦部材53、及びピストン54を備え、湿式多板クラッチ機構として構成されている。本実施形態では、ロータ支持部材22のロータ保持部25が、クラッチドラムとして機能する。第一クラッチC1は、摩擦部材53として、対となる入力側摩擦部材と出力側摩擦部材とを有し、入力側摩擦部材はクラッチハブ51の外周部により径内方向R1側から支持され、出力側摩擦部材はロータ保持部25の内周部により径外方向R2側から支持されている。
【0048】
クラッチハブ51における摩擦部材53の保持部を除く部分は、径方向R及び周方向に延びる円環板状部とされ、径内方向R1側の端部が入力軸Iのフランジ部Iaに連結(本例では溶接による接合)されている。なお、径方向延在部26と板状部材27とにより軸方向Lの両側を区画され、ロータ保持部25により径外方向R2側を区画される空間には、オイルポンプ9より吐出された油が供給されるように構成されており、当該油により摩擦部材53が冷却される構成となっている。
【0049】
2−4.トルクコンバータ
トルクコンバータTCは、図2に示すように、回転電機MGに対して軸第一方向L1側にて当該回転電機MGと同軸上に配置されている。トルクコンバータTCは、軸方向Lにおける第一支持壁部31と第三支持壁部33との間に配置されている。トルクコンバータTCは、回転電機MGのロータ部材21に駆動連結される継手入力部材2と、車輪Wに駆動連結される継手出力部材4と、を備えている。
【0050】
図2に示すように、トルクコンバータTCは、ポンプインペラ61、タービンランナ62、ロックアップクラッチとしての第二クラッチC2、及びこれらを収容するカバー部63を備えている。カバー部63は、内側に配置されたポンプインペラ61と一体回転するように連結されている。また、カバー部63には、上述したようにポンプ駆動軸67が一体回転するように連結されている。本実施形態では、これらのポンプインペラ61、カバー部63、及びポンプ駆動軸67により継手入力部材2が構成されている。詳細は後述するが、本実施形態では、継手入力部材2は、連結部材10を介してロータ部材21に駆動連結されている。また、後述するように、本実施形態では、継手入力部材2とロータ部材21とは、軸方向に相対移動可能な状態で駆動連結されている。
【0051】
継手出力部材4はタービンランナ62により構成され、このタービンランナ62は中間軸Mに駆動連結されている。これにより、継手出力部材4は、図1に示すように、中間軸M、変速機構TM、出力軸O、及び出力用差動歯車装置DFを介して、車輪Wに駆動連結されている。本実施形態では、タービンランナ62と中間軸Mとは、軸方向Lに相対移動可能であるとともに周方向にある程度のバックラッシ(遊び)を有する状態で一体回転するように、スプライン嵌合により駆動連結されている。
【0052】
カバー部63は、図3に示すように、第一支持壁部31に対して軸第一方向L1側において径方向Rに延在するカバー径方向延在部65と、カバー径方向延在部65(本例では、カバー径方向延在部65の径内方向R1側端部)から軸第二方向L2側に突出する筒状のカバー筒状突出部64と、を備えている。カバー径方向延在部65は、カバー筒状突出部64の軸第一方向L1側の端部から径外方向R2側へ延びるように形成され、本例では、径方向Rに加えて周方向にも延びる円環板状部とされている。そして、カバー径方向延在部65におけるカバー筒状突出部64側の部分には、径外方向R2側の部分に比べて軸方向Lの厚さが大きい肉厚部66が形成されている。カバー筒状突出部64は、軸心Xと同軸上に配置されており、カバー筒状突出部64の外周面(本例では、基端部側の部分のみ)には、軸方向Lに延びる第一スプライン歯91が形成されている。また、カバー筒状突出部64の径内方向R1側部分に、締結部材90を締結固定するための締結孔64eが形成されている。これらカバー径方向延在部65とカバー筒状突出部64とは、本実施形態では一体的に形成されている。本実施形態では、カバー径方向延在部65が本発明における「第一径方向延在部」に相当する。また、本実施形態では、カバー筒状突出部64が本発明における「第一筒状突出部」に相当し、カバー筒状突出部64を含む部分(本例ではカバー筒状突出部64と同一)が本発明における「第一部分」に相当する。
【0053】
図3に示すように、カバー径方向延在部65は、第一支持壁部31との間に軸方向Lの隙間が形成されるように第一支持壁部31とは離間して配置されている。そして、カバー径方向延在部65の軸第二方向L2側の側面部と、第一支持壁部31の軸第一方向L1側の側面部との間の軸方向Lの隙間が、後述する第一軸受71を配置するための軸受配置空間とされている。具体的には、上記のように、第一支持壁部31の第一筒状突出部40の軸第一方向L1側の側面部には、段差部40dが形成されている。そして、カバー径方向延在部65における当該段差部40dより径内方向R1側に位置する軸第二方向L2側の側面部には、径外方向R2側を向く面(本例では円筒状面)を有する段差部66dが形成されている。本例では、この段差部66dは、カバー径方向延在部65が備える肉厚部66に形成されている。そして、第一支持壁部31(具体的には第一筒状突出部40)の段差部40dと、カバー径方向延在部65(具体的には肉厚部66)の段差部66dとにより径方向Rの両側を区画される空間であって、第一支持壁部31(具体的には第一筒状突出部40)とカバー径方向延在部65(具体的には肉厚部66)とにより軸方向Lの両側を区画される空間が、後述する第一軸受71を配置するための軸受配置空間となっている。
【0054】
2−5.動力伝達部材
動力伝達部材Tは、ロータ部材21と継手入力部材2とが連動して回転するように連結されて構成されている。ここで、「連動して」とは、ロータ部材21と継手入力部材2との回転速度の比が一意に定まる状態を意味する。本実施形態では、ロータ部材21と継手入力部材2とが一体回転するように連結されて、動力伝達部材Tが構成されている。なお、本実施形態では、ロータ部材21と継手入力部材2とは、以下に述べる連結部材10を介して連結されている。すなわち、本実施形態では、動力伝達部材Tは、ロータ部材21、継手入力部材2、及び連結部材10を含んで構成されている。
【0055】
連結部材10は、図3に示すように、第一筒状突出部40の径内方向R1側を通って軸方向Lに延びるとともに、第一筒状突出部40の先端部40aより軸第二方向L2側において当該第一筒状突出部40より径外方向R2側まで延びるように形成されている。言い換えれば、連結部材10は、第一支持壁部31に対して軸第二方向L2側において径方向Rに延在する連結径方向延在部12と、連結径方向延在部12から軸第一方向L1側に突出する筒状の連結筒状突出部11と、を備えている。そして、連結筒状突出部11は、第一筒状突出部40の径内方向R1側に配置されており、連結径方向延在部12が、連結筒状突出部11の軸第二方向L2側の端部から径外方向R2側へ延びるように形成されている。本例では、連結径方向延在部12は、径方向Rに加えて周方向にも延びる円環板状部とされている。これら連結径方向延在部12と連結筒状突出部11とは、本実施形態では一体的に形成されている。本実施形態では、連結径方向延在部12が本発明における「第二径方向延在部」に相当する。また、本実施形態では、連結筒状突出部11が本発明における「第二筒状突出部」に相当し、連結筒状突出部11を含む部分(本例では連結筒状突出部11と同一)が本発明における「第二部分」に相当する。
【0056】
連結筒状突出部11は、軸心Xと同軸上に配置されており、連結筒状突出部11の内周面(本例では、先端部側の部分のみ)には、軸方向Lに延びる第二スプライン歯92が形成されている。この第二スプライン歯92は、カバー筒状突出部64の外周面に形成された第一スプライン歯91と係合するように構成されている。そして、図3に示すように、連結筒状突出部11の内周面をカバー筒状突出部64の外周面に外嵌させた状態で、カバー部63と連結部材10とが、スプライン歯91,92によるスプライン嵌合により互いに連結されている。すなわち、カバー部63(継手入力部材2)と連結部材10とが、一体回転するように互いに連結されている。そして、このようにスプライン嵌合により互いに連結されたカバー筒状突出部64と連結筒状突出部11とにより、第一支持壁部31の径内方向R1側を通って軸方向Lに延びる、動力伝達部材Tの軸方向延在部5が形成されている。
【0057】
ここで、カバー筒状突出部64と連結筒状突出部11との連結は、軸方向Lに延びるスプライン歯91,92によるスプライン連結であるため、カバー筒状突出部64と一体的に形成されたカバー径方向延在部65と、連結筒状突出部11と一体的に形成された連結径方向延在部12との間の軸方向Lの相対移動は、当該スプライン連結によっては規制されない。この点に関し、本実施形態では、継手入力部材2の軸第一方向L1側への移動と、継手入力部材2の軸第二方向L2側への移動との双方を、第一支持壁部31(具体的には、第一筒状突出部40)により規制すべく、第一筒状突出部40を挟んだ軸方向Lの両側に配置されるカバー径方向延在部65と連結径方向延在部12とが、軸方向延在部5を介しての軸方向Lの相対移動が規制される状態で連結される構成を採用している。このような構成は、以下に説明する移動規制機構MRを設けることで実現されている。
【0058】
移動規制機構MRは、カバー筒状突出部64と連結筒状突出部11との軸方向Lの相対移動を規制する機構である。本実施形態では、図3に示すように、連結筒状突出部11の軸第一方向L1側の端面(先端部11a)がカバー径方向延在部65(本例では肉厚部66)に当接すると共に、カバー筒状突出部64に締結固定された締結部材90の軸第一方向L1側を向く面が連結筒状突出部11の軸第二方向L2側を向く面に当接することにより、移動規制機構MRが構成されている。具体的には、本実施形態では、連結筒状突出部11の内周面には、軸第二方向L2側を向く面(本例では円環状面)を有する内周段差部11dが形成されている。また、締結部材90(本例では締結ボルト)は、カバー筒状突出部64の締結孔64eに締結固定された状態で、カバー筒状突出部64の外周面より径外方向R2側に突出する円環状部(本例ではフランジ付ボルトのボルト頭部)を有し、当該円環状部が内周段差部11dの軸第二方向L2側を向く面に当接することにより、移動規制機構MRが構成されている。
【0059】
連結径方向延在部12は、第一筒状突出部40より径外方向R2側において、ロータ支持部材22に連結されている。本実施形態では、連結径方向延在部12の径外方向R2側の端部と、ロータ支持部材22の第二軸方向突出部24の軸第二方向L2側の端部(先端部24a)とが、軸方向Lに相対移動可能な状態で一体回転するように連結(係合)されている。具体的には、連結径方向延在部12の径外方向R2側の端部は、径外方向R2側に突出する係合片が周方向に複数分散配置された外歯の係合部とされている。また、第二軸方向突出部24の先端部24aは、当該係合片を挿入可能な周方向の幅及び軸方向Lの長さを有する径方向Rの貫通孔が、周方向に複数(当該係合片と同数)分散配置された円筒状係合部とされている。本例では、この貫通孔は、第二軸方向突出部24の軸第二方向L2側の端縁に開口するとともに、軸方向Lの長さが上記係合片の軸方向L長さより大きい、径方向Rに見てU字状の貫通孔とされている。このようなスプライン状の係合機構により、第二軸方向突出部24と連結径方向延在部12とが、軸方向Lに相対移動可能な状態で一体回転するよう連結されており、その結果、ロータ部材21と連結径方向延在部12とが、言い換えれば、ロータ部材21と継手入力部材2とが、軸方向Lに相対移動可能な状態で駆動連結されている。
【0060】
なお、連結筒状突出部11の外周面は、第一筒状突出部40の内周面40bより径内方向R1側に配置され、連結筒状突出部11の外周面と第一筒状突出部40の内周面40bとの間の径方向Rの隙間が、後述する第六軸受76を配置するための軸受配置空間となっている。また、この隙間における第六軸受76より軸第二方向L2側には、第二スリーブ部材95が配置されている。この第二スリーブ部材95は、当該隙間を油が軸方向Lに流通することを規制するために設けられている。
【0061】
また、連結径方向延在部12は、第一筒状突出部40の先端部40aとの間に軸方向Lの隙間が形成されるように、軸第一方向L1側の側面部が当該先端部40aより軸第二方向L2側に位置するように配置されている。そして、連結径方向延在部12の軸第一方向L1側の側面部と第一筒状突出部40の先端部40aとの間の軸方向Lの隙間が、後述する第二軸受72を配置するための軸受配置空間となっている。なお、本実施形態では、連結径方向延在部12の軸第一方向L1側の側面部には、径内方向R1側を向く面(本例では円筒状面)を有する段差部12dが形成されている。また、第二スリーブ部材95は、第一筒状突出部40の先端部40aより軸第二方向L2側に突出する部分を有するように配置されている。本実施形態では、第二軸受72を配置するための上記軸受配置空間は、連結径方向延在部12の段差部12dと、第二スリーブ部材95の外周面とにより径方向Rの両側を区画される空間とされている。
【0062】
3.各構成部材の支持構造
次に、本実施形態に係る車両用駆動装置1における各構成部材の支持構造について、動力伝達部材Tの支持構造を中心に説明する。
【0063】
3−1.径方向の支持構造
図2及び図3に示すように、車両用駆動装置1は、ロータ部材21を径方向Rに支持する軸受として、第五軸受75と第七軸受77とを備えており、ロータ部材21はこれらの第五軸受75及び第七軸受77により、軸方向Lの両側で径方向Rに支持されている。第五軸受75は、ロータ部材21を第一支持壁部31に対して回転可能な状態で径方向Rに支持する軸受であり、径方向Rの荷重を受けることが可能なラジアル軸受(本例ではボールベアリング)が用いられる。第七軸受77は、ロータ部材21を第二支持壁部32に対して回転可能な状態で径方向Rに支持する軸受であり、径方向Rの荷重を受けることが可能なラジアル軸受(本例ではボールベアリング)が用いられる。本実施形態では、第五軸受75が本発明における「第三軸受」に相当し、第七軸受77が本発明における「第四軸受」に相当する。
【0064】
本実施形態では、第五軸受75は、第一支持壁部31の第一筒状突出部40より径外方向R2側に配置されており、具体的には、第一支持壁部31の第二筒状突出部41の内周面41bと、ロータ支持部材22の第一軸方向突出部23の外周面23cとに接するように配置されている。これにより、ロータ部材21は、第五軸受75を介して、第二筒状突出部41の内周面41bに支持されている。このように、本実施形態では、第一軸方向突出部23の外周面23cが、第五軸受75により第一支持壁部31に対して支持される被支持部とされている。図3に示す例では、第五軸受75は、第二筒状突出部41の内周段差部41dの軸第二方向L2側を向く面に接するように配置されている。なお、図3に示すように、第一クラッチC1は、軸方向Lに見てこの第五軸受75と重複する部分を有する位置に配置されている。具体的には、クラッチハブ51の径外方向R2側部分と当該クラッチハブ51に支持される摩擦部材53の径内方向R1側部分とが、第五軸受75と同じ径方向Rの位置に配置されている。
【0065】
本実施形態では、第七軸受77は、第五軸受75より径内方向R1側に配置され、具体的には、軸方向Lに見て第一筒状突出部40と重複する部分を有する位置に配置されている。より具体的には、第七軸受77は、第二支持壁部32の径内方向R1側の部分の内周面32bと、ロータ支持部材22に取り付けられた板状部材27の肉厚部28の外周面28cとに接するように配置されている。これにより、ロータ部材21は、板状部材27及び第七軸受77を介して、第二支持壁部32の内周面32bに支持されている。このように、第七軸受77は、ロータ部材21が構成する動力伝達部材Tを第二支持壁部32に対して回転可能な状態で径方向Rに支持している。なお、本例では、この径方向Rの支持は、板状部材27を介した間接的な支持である。
【0066】
第七軸受77は、本実施形態では、第二支持壁部32の内周面32bに対して圧入(しまり嵌め)されており、当該内周面32bに形成された内周段差部32dの軸第一方向L1側を向く面に当接した状態で、第二支持壁部32に固定されている。一方、第七軸受77は、板状部材27の肉厚部28の外周面28cに対しては、軸方向Lの移動がある程度許容される状態で嵌合(すきま嵌め)されている。図3には、板状部材27が第七軸受77に当接する位置から軸第一方向L1側に僅かに移動し、肉厚部28の外周面28cに形成された外周段差部28dの軸第二方向L2側を向く面と第七軸受77との間に軸方向Lの隙間(第三隙間D3)がある状態を示している。
【0067】
なお、本実施形態では、第七軸受77より径内方向R1側には、入力軸Iを第二支持壁部32に対して回転可能な状態で径方向Rに支持する第八軸受78(本例ではニードルベアリング)が配置されている。第八軸受78は、入力軸Iの外周面と、板状部材27の肉厚部28の内周面とに接するように配置されており、入力軸Iは、第八軸受78に加えて当該肉厚部28及び第七軸受77を介して、第二支持壁部32の内周面32bに支持されている。
【0068】
また、車両用駆動装置1は、継手入力部材2を径方向Rに支持する軸受として、第六軸受76と第九軸受79(図2参照)とを備えており、継手入力部材2はこれらの第六軸受76及び第九軸受79により、軸方向Lの両側で径方向Rに支持されている。第六軸受76は、図3に示すように、継手入力部材2を第一支持壁部31に対して回転可能な状態で径方向Rに支持する軸受であり、径方向Rの荷重を受けることが可能なラジアル軸受(本例ではニードルベアリング)が用いられる。
【0069】
本実施形態では、第六軸受76は、第一支持壁部31の第一筒状突出部40より径内方向R1側に配置されており、具体的には、第一筒状突出部40の内周面40bと、連結筒状突出部11の外周面とに接するように配置されている。これにより、継手入力部材2は、一体回転するように連結されるとともに移動規制機構MRにより軸方向Lに相対移動不能に固定された連結部材10を介して、第一筒状突出部40の内周面40bに支持されている。
【0070】
上記のように、第五軸受75は、第一支持壁部31の第一筒状突出部40より径外方向R2側に配置されており、第六軸受76は、第一支持壁部31の第一筒状突出部40より径内方向R1側に配置されている。すなわち、第五軸受75と第六軸受76とは、径方向Rの異なる位置に配置されている。そして、本実施形態では、第六軸受76は、径方向Rに見て第五軸受75と重複する部分を有する位置に配置されている。具体的には、第六軸受76は、軸第一方向L1側の部分が第五軸受75の軸第二方向L2側の部分と同じ軸方向Lの位置となるように、第五軸受75に対して軸第二方向L2側に僅かにずらして配置されている。
【0071】
3−2.軸方向の支持構造
図2及び図3に示すように、車両用駆動装置1は、動力伝達部材Tを第一支持壁部31に対して軸方向Lに支持する軸受として、第一軸受71と第二軸受72とを備えている。第一軸受71は、動力伝達部材Tを第一支持壁部31に対して回転可能な状態で軸第二方向L2側から支持する軸受であり、軸方向Lの荷重を受けることが可能な軸受(本例ではスラスト軸受)が用いられる。第二軸受72は、動力伝達部材Tを第一支持壁部31に対して回転可能な状態で軸第一方向L1側から支持する軸受であり、軸方向Lの荷重を受けることが可能な軸受(本例ではスラスト軸受)が用いられる。
【0072】
本実施形態では、第一軸受71と第二軸受72とは、動力伝達部材Tを構成する部材の内、軸方向Lに相対移動不能に固定された継手入力部材2と連結部材10とを、第一支持壁部31に対して支持する。具体的には、図3に示すように、第一軸受71はカバー径方向延在部65を軸第二方向L2側から支持し、第二軸受72は連結径方向延在部12を軸第一方向L1側から支持している。後述するように、第一軸受71及び第二軸受72は、軸方向Lの両側に配置される部材の、軸方向Lに互いに離れる方向の相対移動を禁止しない構成とされている。
【0073】
第一軸受71は、図3に示すように、第一支持壁部31とカバー径方向延在部65とが軸方向Lに対向する部分に配置されている。具体的には、第一軸受71は、第一支持壁部31が備える第一筒状突出部40の軸第一方向L1側の側面部と、カバー径方向延在部65が備える肉厚部66の軸第二方向L2側の側面部とが対向する部分に配置されている。本実施形態では、この対向部分は、第一筒状突出部40の段差部40dと肉厚部66の段差部66dとにより径方向Rの両側を区画される空間に位置する。そして、第一軸受71は、肉厚部66の段差部66dの径外方向R2側を向く面、及び第一筒状突出部40の段差部40dの径内方向R1側を向く面の少なくとも一方の面に対して、軸方向Lの移動がある程度許容される状態で嵌合(すきま嵌め)されている。よって、第一軸受71は、第一支持壁部31に対する継手入力部材2の軸第一方向L1側の移動を禁止しない。図3においては、第一軸受71の配設部位における軸方向Lの隙間(クリアランス)が詰められた状態から、継手入力部材2が軸第一方向L1側に僅かに移動して、第一筒状突出部40の軸第一方向L1側の側面部と第一軸受71との間に軸方向Lの隙間(第一隙間D1)がある状態を示している。
【0074】
第二軸受72は、図3に示すように、第一支持壁部31と連結径方向延在部12とが軸方向Lに対向する部分に配置されている。具体的には、第二軸受72は、第一支持壁部31が備える第一筒状突出部40の先端部40aと、連結径方向延在部12の軸第一方向L1側の側面部とが対向する部分に配置されている。本実施形態では、この対向部分は、連結径方向延在部12の段差部12dと第二スリーブ部材95の外周面とにより径方向Rの両側を区画される空間に位置する。そして、第二軸受72は、連結径方向延在部12の段差部12dの径内方向R1側を向く面、及び第二スリーブ部材95の外周面の少なくとも一方の面に対して、軸方向Lの移動がある程度許容される状態で嵌合(すきま嵌め)されている。よって、第二軸受72は、第一支持壁部31に対する連結部材10の軸第二方向L2側の移動を禁止しない。図3においては、第二軸受72の配設部位における軸方向Lの隙間が詰められており、第二軸受72が第一筒状突出部40の先端部40aと連結径方向延在部12の軸第一方向L1側の側面部との双方に接している状態を示している。
【0075】
本実施形態では、更に、軸方向Lにおける連結径方向延在部12と入力軸Iのフランジ部Iaとの間に、軸方向Lの荷重を受けることが可能な第三軸受73(本例ではスラスト軸受)が配置されているとともに、軸方向Lにおける入力軸Iのフランジ部Iaと板状部材27の肉厚部28との間に、軸方向Lの荷重を受けることが可能な第四軸受74(本例ではスラスト軸受)が配置されている。これらの第三軸受73及び第四軸受74も、軸方向Lの両側に配置される部材の、軸方向Lに互いに離れる方向の相対移動を禁止しない構成とされている。図3においては、第三軸受73の配設部位における軸方向Lの隙間が詰められており、第四軸受74の配設部位においては、第四軸受74と肉厚部28との間に軸方向Lの隙間(第二隙間D2)がある状態を示している。
【0076】
図3に示すように、本実施形態では、第一軸受71は、軸方向Lに見て第二軸受72と重複する部分を有するように配置されている。本実施形態では、第一軸受71は、更に、第三軸受73、第四軸受74、及び第七軸受77に対しても、軸方向Lに見て重複する部分を有するように配置されている。本例では、第一軸受71が位置する径方向Rの範囲、第二軸受72が位置する径方向Rの範囲、第三軸受73が位置する径方向Rの範囲、第四軸受74が位置する径方向Rの範囲、及び第七軸受77が位置する径方向Rの範囲の全ての範囲に含まれる径方向Rの位置が存在するように、各軸受が配置されている。
【0077】
ところで、トルクコンバータTCにおけるポンプインペラ61とタービンランナ62との間に回転速度差が生じている場合には、当該回転速度差によりポンプインペラ61とタービンランナ62とを相互に近接させる引力が生じる。この際、タービンランナ62は、軸方向Lに相対移動可能に中間軸Mに駆動連結されているため、基本的には、ポンプインペラ61には大きな軸方向荷重は作用しない。しかし、場合によっては、タービンランナ62の軸第一方向L1側への移動が阻害され、ポンプインペラ61に対して軸第二方向L2側への大きな荷重が作用する場合がある。
【0078】
本実施形態では、ポンプインペラ61に対して作用し得るこのような軸第二方向L2側への荷重を、主に、スラスト軸受である第一軸受71により受け止める構成としている。これにより、ラジアル軸受である第七軸受77に対して大きな軸方向荷重が作用することを抑制することができ、第七軸受77として、大きな軸方向荷重が作用する場合に比べて小型の軸受を採用することが可能となっている。なお、このような構成は、以下に説明するように、カバー径方向延在部65と第一支持壁部31との間に設けられる軸方向Lの隙間の総和(以下、「第一総和S1」とする。)を、連結径方向延在部12と第二支持壁部32との間に設けられる軸方向Lの隙間の総和(以下、「第二総和S2」とする。)より小さく設定することで実現されている。なお、第一総和S1は、カバー径方向延在部65が、当該カバー径方向延在部65の軸方向Lの移動可能範囲における最も軸第一方向L1側に位置する場合の隙間により決定される。第二総和S2は、連結径方向延在部12が、当該連結径方向延在部12の軸方向Lの移動可能範囲における最も軸第一方向L1側に位置する場合の隙間により決定される。
【0079】
具体的には、本実施形態では、ロータ部材21とカバー径方向延在部65(継手入力部材2)とが、軸方向Lに相対移動可能な状態で駆動連結されている。よって、ポンプインペラ61に対して作用する軸第二方向L2側への荷重はロータ部材21にはほとんど伝達されず、この場合の軸方向荷重は、図3から明らかなように、第一軸受71、第二軸受72、第三軸受73、第四軸受74、及び第七軸受77の少なくとも何れかによって受け止められる必要がある。すなわち、本実施形態では、第一総和S1に寄与する隙間には、第一軸受71の配設部位における軸方向Lの隙間のみが含まれる。また、第二総和S2に寄与する隙間には、第二軸受72の配設部位における軸方向Lの隙間、第三軸受73の配設部位における軸方向Lの隙間、第四軸受74の配設部位における軸方向Lの隙間、及び第七軸受77の配設部位における軸方向Lの隙間が含まれる。なお、このような各軸受の配設部位における隙間には、当該軸受の内部に存在する隙間であって、当該軸受を構成する部材間の軸方向Lの相対移動を許容する隙間も含まれる。
【0080】
図3に基づきより具体的に説明すると、図3は、軸方向Lに相対移動不能に連結された継手入力部材2及び連結部材10が、軸方向Lの移動可能範囲における最も軸第一方向L1側に位置している状況を示している。そのため、第二軸受72の配設部位における軸方向Lの隙間は詰められ、第一軸受71の配設部位に軸方向Lの隙間(第一隙間D1)が存在している。この場合、第一総和S1は「D1」となる。また、図3は、第三軸受73の配設部位における軸方向Lの隙間が詰められ、第四軸受74の配設部位に軸方向Lの隙間(第二隙間D2)が存在するとともに、第七軸受77の配設部位に軸方向Lの隙間(第三隙間D3)が存在する状態を示している。この場合、第二総和S2は「D2+D3」となる。
【0081】
そして、本実施形態では、第一総和S1が第二総和S2より小さく(D1<D2+D3)設定されている。よって、ポンプインペラ61に対して軸第二方向L2側への大きな荷重が作用した場合であっても、連結径方向延在部12と第二支持壁部32との間に存在する軸方向Lの隙間が詰まる前に、カバー径方向延在部65と第一支持壁部31との間に存在する軸方向Lの隙間が詰まるため、当該荷重を第一軸受71により受け止めて、第七軸受77に対して大きな軸方向荷重が作用することを抑制することが可能となっている。
【0082】
更に、本実施形態では、ポンプインペラ61に対して軸第二方向L2側への大きな荷重が作用した場合に、当該荷重が、第七軸受77だけでなくロータ保持部25に係止されたスナップリング93に作用するのも抑制すべく、以下のような構成を採用している。すなわち、第一総和S1が、図3に示す場合における板状部材27とスナップリング93との間の軸方向Lの隙間(第四隙間D4)より小さく(D1<D4)設定されている。なお図3では、ロータ部材21が第五軸受75に接するように配置されているとともに、板状部材27が、当該板状部材27の軸方向Lの移動可能範囲における最も軸第一方向L1側(内周段差部25dに当接する位置)に位置している。このような場合において、「D4>D2+D3」の関係が満たされるように各部を設計することで、スナップリング93に軸方向Lの荷重が作用することをより一層抑制することが可能となる。
【0083】
4.その他の実施形態
最後に、本発明に係る車両用駆動装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。
【0084】
(1)上記の実施形態では、ロータ部材21と連結径方向延在部12(継手入力部材2)とが、軸方向Lに相対移動可能な状態で駆動連結されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、連結部材10とロータ支持部材22とが軸方向Lに相対移動不能な状態で連結されることで、ロータ部材21と継手入力部材2とが、軸方向Lに相対移動不能な状態で駆動連結されている構成とすることもできる。この場合、連結部材10をロータ支持部材22とは別体(独立した別部材)とせずに、連結部材10がロータ支持部材22と一体的に形成された構成とすることもできる。また、この場合、図3に示す例における第二総和S2は「D3」となり、(D1<D3)の関係が満たされるように各部を設計すると好適である。
【0085】
(2)上記の実施形態では、連結部材10が、第一筒状突出部40より径外方向R2側まで延びる連結径方向延在部12を有し、連結部材10とロータ支持部材22との係合部が、第一筒状突出部40より径外方向R2側に位置する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、ロータ支持部材22が、第一筒状突出部40より径内方向R1側まで延びる部分を有し、連結部材10とロータ支持部材22との係合部が、第一筒状突出部40より径内方向R1側に位置する構成とすることもできる。この場合、連結部材10が、連結筒状突出部11のみを備える構成としても良い。
【0086】
(3)上記の実施形態では、連結部材10が、継手入力部材2とは別体である構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、連結部材10が継手入力部材2に一体的に形成された構成とすることもできる。
【0087】
(4)上記の実施形態では、連結筒状突出部11の内周面に内周段差部11dが形成され、カバー筒状突出部64に締結固定された締結部材90の軸第一方向L1側を向く面が、当該内周段差部11dの軸第二方向L2側を向く面に当接することにより、移動規制機構MRが構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、連結筒状突出部11が内周段差部11dを備えず、締結部材90の軸第一方向L1側を向く面が、連結筒状突出部11の軸第二方向L2側の基端部の軸第二方向L2側を向く面に当接する構成とすることもできる。また、移動規制機構MRが、スナップリング等を用いてカバー筒状突出部64と連結筒状突出部11との軸方向Lの相対移動を規制する機構であっても良い。
【0088】
(5)上記の実施形態では、連結筒状突出部11の内周面をカバー筒状突出部64の外周面に外嵌させた状態で、カバー部63と連結部材10とがスプライン嵌合により互いに連結されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、カバー筒状突出部64が内周面にスプライン歯を有するともに、連結筒状突出部11が外周面にスプライン歯を有し、カバー筒状突出部64の内周面を連結筒状突出部11の外周面に外嵌させた状態で、カバー部63と連結部材10とがスプライン嵌合により互いに連結される構成とすることもできる。
【0089】
(6)上記の実施形態では、第五軸受75が第一筒状突出部40の径外方向R2側に配置されているとともに、第六軸受76が第一筒状突出部40の径内方向R1側に配置されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第五軸受75と第六軸受76とが、第一筒状突出部40に対して径方向Rの同じ側に配置された構成とすることもできる。
【0090】
(7)上記の実施形態では、第一クラッチC1が軸方向Lに見て第五軸受75と重複する部分を有する位置に配置された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、第一クラッチC1が、軸方向Lに見て第五軸受75と重複する部分を有さないように、第五軸受75とは径方向Rの異なる位置(例えば第五軸受75より径内方向R1側)に配置された構成とすることもできる。
【0091】
(8)上記の実施形態では、第一クラッチC1が、ロータRoより径内方向R1側であって、径方向Rに見てロータRoと重複する部分を有する位置に配置された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一クラッチC1が、径方向Rに見てロータRoと重複する部分を有さないように、ロータRoより軸第一方向L1側や軸第二方向L2側に配置された構成や、第一クラッチC1がロータRoより径外方向R2側に配置された構成とすることもできる。
【0092】
(9)上記の実施形態では、第六軸受76が、径方向Rに見て第五軸受75と重複する部分を有する位置に配置されている構成を例として説明したが、第六軸受76が、径方向Rに見て第五軸受75と重複する部分を有さないように、第五軸受75とは軸方向Lの異なる位置に配置された構成とすることもできる。
【0093】
(10)上記の実施形態では、連結径方向延在部12の径外方向R2側の端部が、径外方向R2側に突出する係合片を周方向に複数分散配置した外歯の係合部とされ、第二軸方向突出部24の先端部24aが、当該係合片を挿入可能な周方向の幅及び軸方向Lの長さを有する径方向Rの貫通孔を、周方向に複数(当該係合片と同数)分散配置した円筒状係合部とされている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、第二軸方向突出部24の先端部24aが、上記貫通孔に代えて径内方向R1側に突出する係合片を周方向に複数分散配置した内歯の係合部とされる構成とすることができる。このような構成では上記実施形態とは異なり、第二軸方向突出部24は、先端部24aにおいても全周に亘って連続する円環状の本体部を有する。
【0094】
(11)上記の実施形態では、ロータ支持部材22の第一軸方向突出部23の外周面23cが、第五軸受75により第一支持壁部31に対して支持される被支持部である構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第五軸受75が、第一軸方向突出部23の内周面23bと第一支持壁部31の外周面(例えば、第一筒状突出部40の外周面)とに接するように配置される構成、すなわち、第一軸方向突出部23の内周面23bが、第五軸受75により第一支持壁部31に対して支持される被支持部である構成とすることもできる。また、ロータ支持部材22における第一軸方向突出部23以外の部分(例えば、第二軸方向突出部24の内周面等)が、軸受により第一支持壁部31に対して支持される被支持部である構成とすることもできる。この場合、ロータ支持部材22が第一軸方向突出部23を備えない構成とすることもできる。
【0095】
(12)上記の実施形態では、ロータ支持部材22の第一軸方向突出部23が、径方向延在部26の径内方向R1側の端部に形成されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一軸方向突出部23が、径方向延在部26の径方向Rにおける中間部(例えば、第二筒状突出部41より径外方向R2側)に形成されている構成とすることもできる。
【0096】
(13)上記の実施形態では、第一軸受71や第二軸受72が、第一支持壁部31の第一筒状突出部40に対して動力伝達部材Tを支持する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一軸受71及び第二軸受72の少なくとも一方が、第一支持壁部31における軸方向Lの厚さが一様な部分に対して動力伝達部材Tを支持する構成とすることもできる。このような構成では、第一支持壁部31が第一筒状突出部40を備えない構成とすることもできる。
【0097】
(14)上記の実施形態では、車両用駆動装置1が一軸構成とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、車両用駆動装置1を、例えばカウンタギヤ機構等を備えた複軸構成の駆動装置とすることもできる。このような構成は、FF(Front Engine Front Drive)方式の車両に搭載される場合に適している。
【0098】
(15)上記の実施形態では、車両用駆動装置1が、内燃機関Eに駆動連結される入力軸I、及び第一クラッチC1を備えた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、車両用駆動装置1が、入力軸Iや第一クラッチC1を備えない構成とすることも可能である。
【0099】
(16)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載されていない構成に関しては、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、回転電機と、回転電機と同軸上に配置される流体継手と、回転電機及び流体継手を収容するケースと、を備え、流体継手が、回転電機のロータ部材に駆動連結される継手入力部材と、車輪に駆動連結される継手出力部材と、を備える車両用駆動装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1:車両用駆動装置
2:継手入力部材
3:ケース
4:継手出力部材
5:軸方向延在部
11:連結筒状突出部(第二部分、第二筒状突出部)
12:連結径方向延在部(第二径方向延在部)
21:ロータ部材
31:第一支持壁部(支持壁部)
32:第二支持壁部
64:カバー筒状突出部(第一部分、第一筒状突出部)
65:カバー径方向延在部(第一径方向延在部)
71:第一軸受
72:第二軸受
75:第五軸受(第三軸受)
77:第七軸受(第四軸受)
90:締結部材
91:第一スプライン歯(スプライン歯)
92:第二スプライン歯(スプライン歯)
L:軸方向
L1:軸第一方向
L2:軸第二方向
MG:回転電機
MR:移動規制機構
R:径方向
T:動力伝達部材
TC:トルクコンバータ(流体継手)
W:車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と、当該回転電機に対して当該回転電機の軸方向の一方側である軸第一方向側にて、当該回転電機と同軸上に配置される流体継手と、前記回転電機及び前記流体継手を収容するケースと、を備え、前記流体継手が、前記回転電機のロータ部材に駆動連結される継手入力部材と、車輪に駆動連結される継手出力部材と、を備える車両用駆動装置であって、
前記ケースは、前記軸方向における前記回転電機と前記流体継手との間で、前記回転電機の径方向に延びる支持壁部を備え、
前記ロータ部材と前記継手入力部材とが連動して回転するように連結されて動力伝達部材を構成し、
前記動力伝達部材を前記支持壁部に対して回転可能な状態で前記軸第一方向とは反対方向の軸第二方向側から支持する第一軸受と、前記動力伝達部材を前記支持壁部に対して回転可能な状態で前記軸第一方向側から支持する第二軸受と、を備える車両用駆動装置。
【請求項2】
前記動力伝達部材は、前記支持壁部の前記径方向の内側を通って前記軸方向に延びる軸方向延在部と、前記支持壁部に対して前記軸第一方向側において前記径方向の外側へ延びる第一径方向延在部と、前記支持壁部に対して前記軸第二方向側において前記径方向の外側へ延びる第二径方向延在部と、を備えると共に、前記第一径方向延在部と第二径方向延在部とが、前記軸方向延在部を介しての前記軸方向の相対移動が規制された状態で連結されており、
前記第一軸受は前記第一径方向延在部を前記軸第二方向側から支持し、前記第二軸受は前記第二径方向延在部を前記軸第一方向側から支持している請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記ロータ部材を前記支持壁部に対して回転可能な状態で前記径方向に支持する第三軸受を更に備え、
前記ロータ部材と前記第二径方向延在部とが、前記軸方向に相対移動可能な状態で連結されている請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記軸方向延在部は、前記第一径方向延在部と一体的に形成された第一部分と、前記第二径方向延在部と一体的に形成された第二部分とが、前記軸方向に延びるスプライン歯によるスプライン嵌合により互いに連結されて構成されていると共に、前記第一部分と前記第二部分との前記軸方向の相対移動を規制する移動規制機構を備えている請求項2又は3に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記第一軸受が、前記支持壁部と前記第一径方向延在部とが前記軸方向に対向する部分に配置されたスラスト軸受であり、前記第二軸受が、前記支持壁部と前記第二径方向延在部とが前記軸方向に対向する部分に配置されたスラスト軸受である請求項2から4のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記支持壁部が第一支持壁部であり、前記ケースは、前記回転電機より前記軸第二方向側において前記径方向に延びる第二支持壁部を備え、
前記動力伝達部材を前記第二支持壁部に対して回転可能な状態で前記径方向に支持する第四軸受を更に備え、
前記第一径方向延在部と前記第一支持壁部との間に設けられる前記軸方向の隙間の総和が、前記第二径方向延在部と前記第二支持壁部との間に設けられる前記軸方向の隙間の総和より小さく設定されている請求項2から5のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
前記第一部分は、前記第一径方向延在部から前記軸第二方向側に突出する筒状部分であって、外周面に第一スプライン歯が形成された第一筒状突出部を備え、
前記第二部分は、前記第二径方向延在部から前記軸第一方向側に突出する筒状部分であって、内周面に前記第一スプライン歯と係合する第二スプライン歯が形成された第二筒状突出部を備え、
前記第二筒状突出部の前記軸第一方向側の端面が前記第一径方向延在部に当接すると共に、前記第一部分に締結固定された締結部材の前記軸第一方向側を向く面が前記第二筒状突出部の前記軸第二方向側を向く面に当接することにより、前記移動規制機構が構成されている請求項4に記載の車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−96552(P2013−96552A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242702(P2011−242702)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】