説明

車両監視カメラ用投光器

【課題】現場施工時における投光方向の調整作業を容易にするとともに、機器のコンパクト化を可能にする。
【解決手段】2次元可動機構の雲台20に取り付けられ、一方の垂直面に開口部11を有する略方形箱形状の筐体10内部に、それぞれ多数の赤外線LEDを配列した上部LED基板121と下部LED基板122からなる面状発光部を設ける。上部LED基板121は、その上縁に可視光を発光するレーザポインタが配置されており、且つ筐体10の内方に回動可能に支承される。下部LED基板122は筐体に対して固定保持される。投光方向の調整に際して、上部LED基板を回動させるだけで、レーザ光線を大型車および小型車の基準位置に照射して、それぞれ雲台と上部LED基板を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路上等において監視カメラで撮像する車両を照明するための車両監視カメラ用投光器に関する。
【背景技術】
【0002】
路上等において車両のナンバープレートや運転者を撮像する車両監視カメラが知られている。この車両監視カメラは、昼夜を問わず使用されるため、赤外線を発光する発光ダイオード(以下、「LED」と略記する)を光源とした投光器で被写体を照明する。LEDを光源とした投光器について種々の研究がなされている。例えば、車線内に侵入する車両を検知するためのレーザ反射式車両検知装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
道路には多様なサイズの車両が走行しており、車両監視カメラによってこれら車両の全てを鮮明に撮像するためには、投光器から照射される光を分散させ、或いは、特定のエリアにおける照度を上げる必要がある。
そこで、面状発光体で構成された照明装置を具備した監視カメラ用投光器も提案されている(特許文献2)。
従来は、光源にレンズ機構を設けて照明光を集中させることにより、特定エリアの照度を上げることが一般的に行われてきたが、そのためには照射エリアを細分化する必要があった。例えば、図6に示すように、略方形箱形状の筐体30にそれぞれレンズを備えた複数の光源を面状に配列した複数の面状発光部321、322、323を車両のサイズに対応して設けた車両監視カメラ用投光器がある。
【0004】
面状発光部321、322、323は、筐体内部において回動可能であり、設置時にその投光方向を車両のサイズに合わせて調整する必要がある。そのために、面状発光部321、322、323にそれぞれレーザポインタを仮固定し、対応するサイズの車両にレーザ光線が当たるように、面状発光部321、322、323の角度を調整することが行われる。
【0005】
しかしながら、面状発光部321、322、323の投光方向を車両のサイズ毎に独立して調整するのは極めて煩瑣であり、設置時において多くの調整作業工数を要するという問題点があった。また、筐体内部において、面状発光部321、322、323それぞれにレーザポインタを仮固定し、回動するための相当の空間を必要とするので、機器のコンパクト化に障害となっていた。また取り付け時に正確な位置設定をするのが困難であるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−24987号公報
【特許文献2】特開2001−325696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたもので、設置時に投光方向を調整するための作業工数を低減できるとともに、機器のコンパクト化が可能な車両監視カメラ用投光器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一方の垂直面に開口部を有する方形箱形状の筐体と、前記筐体の開口部近傍に設けられ、少なくとも一部が回動可能に支承される複数の面状発光体とを具備した車両監視カメラ用投光器であって、前記筐体は、水平及び垂直の各方向に回動可能に支承され、前記面状発光体のうち、前記筐体に前記回動可能に支承される面状発光体の一部には、可視光を発光するレーザ指示器が配置されている。
【0009】
この構成により、レーザ指示器が回動可能な面状発光ユニット内に配置されていることで投光方向を明確に設定することができる。レーザ指示器を個別に用意する必要がない。
すなわち、機器の設置時に、回動可能な面状発光体と回動不能な面状発光体の各発光面を同一面とした状態で、筐体を水平及び垂直の各方向に回動してレーザ指示器から発光するレーザを、例えば大型車両に照準し、次いで、回動可能な面状発光体を回動させてレーザ指示器から発光するレーザを、例えば小型車両に照準することにより、少ない調整作業工数であらゆるサイズの車両に対して適切かつ正確に投光することが可能となる。
【0010】
また、本発明は、上記の車両監視カメラ用投光器において、前記回動可能に支承される面状発光体は、前記筐体の内方にのみ回動可能であるものを含む。
【0011】
この構成により、全ての面状発光体が回動可能ではないので、機器をコンパクトに構成することができる。また、筐体の開口部近傍に前面パネルを設けるような場合であっても、干渉することがないので、機器のコンパクト化が可能となる。
【0012】
更に、本発明は、上記の車両監視カメラ用投光器において、前記面状発光体は、複数の赤外線LEDを平面状に配列したLED基板から構成されるものを含む。
【0013】
この構成により、面状発光体をコンパクトに構成することができるとともに、監視カメラによって昼夜を問わず、且つ、運転者に気づかれることなく車両を撮像することができる。
【0014】
また、本発明は、上記の車両監視カメラ用投光器において、前記筐体の開口部上方に設けられ、垂直方向に回動可能な第1のLED基板と、前記筐体の開口部下方に設けられ、前記筐体に対して固定された第2のLED基板と、を備えるものを含む。
【0015】
この構成により、機器の設置時に、第1のLED基板にレーザ指示器が固定されておりし、第1のLED基板と第2のLED基板の各発光面を同一面とした状態で、筐体を水平及び垂直の各方向に回動してレーザ指示器から発光するレーザを、例えば大型車両に照準し、次いで、第1のLED基板を回動させてレーザ指示器から発光するレーザを、例えば小型車両に照準することにより、少ない調整作業工数であらゆるサイズの車両に対して適切に投光することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、設置時に投光方向を調整するための作業工数を低減できるとともに、正確な位置決めが可能で機器のコンパクト化が可能な車両監視カメラ用投光器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両監視カメラ用投光器の外観を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態に係る車両監視カメラ用投光器において、筐体の内部構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態に係る車両監視カメラ用投光器を示す図であり、(a)は側面図、(b)はこの正面図
【図4】本発明の実施の形態に係る車両監視カメラ用投光器の調整作業手順を説明するためのフローチャート
【図5】本発明の実施の形態に係る車両監視カメラ用投光器が用いられるETCゲートを示す説明図
【図6】従来の車両監視カメラ用投光器の外観を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る車両監視カメラ用投光器について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る車両監視カメラ用投光器の外観を示す斜視図である。同図に示すように、本実施形態の車両監視カメラ用投光器1は、一方の垂直面に開口部11を有する略方形箱形状の筐体10が2次元可動機構の雲台20に取り付けられた構成である。そして、面状発光体を構成する上部LED基板121及び下部LED基板122を有し、これらのうちこの筐体10に対し、前記回動可能に支承される面状発光体の一部には、可視光を発光するレーザ指示器としてのレーザポインタ123が配置されたことを特徴とする。
【0020】
開口部11近傍の筐体10内部には、後述する面状発光部12の上部LED基板121及び下部LED基板122が設けられ、上部LED基板121及び下部LED基板122の表面で発光した光が開口部11を介して不図示の監視カメラによる撮像方向に照射される。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態に係る車両監視カメラ用投光器の筐体10の内部構成を示すブロック図である。図3(a)および(b)はこの車両監視カメラ用投光器の側面図および正面図である。図2において、本実施形態の車両監視カメラ用投光器1は、面状発光部12と制御部13、及び電源部14を有する構成である。
【0022】
図3(a)および(b)に示すように、面状発光部12は、上部LED基板121及び下部LED基板122から構成されている。
【0023】
上部LED基板121は、基板の表面に特定の波長領域で発光する多数の赤外線LED100を、例えば千鳥格子状に密に配列して構成されている。この上部LED基板121は、矢印で示すように、支軸124によって筐体10の内方に回動可能に支承されている。
【0024】
また、上部LED基板121は面状発光体のうちその上縁に位置する一つの発光体が、可視光、例えば黄緑色の光を発光するレーザポインタを構成している。
【0025】
下部LED基板122は、上部LED基板121と同様に、基板の表面に多数の赤外線LED100が配列されている。この下部LED基板122は、筐体10に対して不図示の保持部材によって固定されている。
【0026】
制御部13は、外部から供給される同期信号に基づいて、上部LED基板121及び下部LED基板122を監視カメラが必要とする輝度で連続、又は間欠点灯するよう制御する。
【0027】
電源部14は、赤外線LED100を点灯するための電源を生成して制御部13に供給する。
【0028】
次に、このように構成された本発明の実施形態に係る車両監視カメラ用投光器を、ETCゲートに設置する場合を例にして、その投光方向を調整する作業手順を説明する。図4は、車両監視カメラ用投光器の投光方向の調整作業手順を説明するためのフローチャートである。
【0029】
車両監視カメラ用投光器1は、面状発光部12の上部LED基板121及び下部LED基板122が同一面上に保持された状態で雲台20を介してポール等の取付用構造物に設置される。
【0030】
まず、ステップS101において、筐体10からカバーを取り外し、上部LED基板121及び下部LED基板122等筐体10の内部を開放する。
【0031】
次いで、上部LED基板121を支軸124に対して回動させ(ステップS102)、レーザ光の放射を開始する(ステップS103)。なお、このとき上部LED基板121の照射光の光軸と、レーザポインタ123から放射されるレーザの光軸は一致している。
【0032】
ステップS104では、ETCレーンにおける大型車の所定の基準位置にレーザ光が当たるように、雲台20を垂直および水平方向に動かして調整し、定まったところでねじ等により雲台20を固定する(ステップS105)。
【0033】
続いて、レーザ光線が小型車の所定の基準位置に当たるように、上部LED基板121を筐体10の内方に傾けて調整する(ステップS106)。
【0034】
調整が終わると上部LED基板121を固定し(ステップS107)、次いでレーザポインタ123のレーザ光放射を停止する(ステップS108)。
【0035】
筐体10のカバーを取り付けて(ステップS109)、投光方向の調整作業を終了する。
【0036】
このような手順で調整作業を行うことによって、車両監視カメラ用投光器1は、図5に示すようなETC300においてETCゲート301を通過する大型車から小型車に至るあらゆるサイズの車両200に適切に照射光を投光することができ、監視カメラで車両を鮮明に撮像することが可能となる。
【0037】
以上説明したように、このような本発明の実施形態に係る車両監視カメラ用投光器によれば、2次元可動機構の雲台に取り付けられ、一方の垂直面に開口部を有する略方形箱形状の筐体内部に、それぞれ多数の赤外線LEDを配列した上部LED基板と下部LED基板からなる面状発光部を設ける。上部LED基板は、その上縁に可視光を発光するレーザポインタが配列されており、且つ、筐体の内方に回動可能に支承される。また、下部LED基板は筐体に対して固定保持される。
【0038】
投光方向の調整に際して、レーザ光線を大型車および小型車に照射し、それぞれ雲台と上部LED基板を回動させて調整することにより、あらゆるサイズの車両に対して、面状発光部で発光した赤外線光を適切に照射することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 車両監視カメラ用投光器
10 筐体
11 開口部
12 面状発光部
121 上部LED基板
122 下部LED基板
123 レーザポインタ
13 制御部
14 電源部
20 雲台
100 LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の垂直面に開口部を有する方形箱形状の筐体と、前記筐体の開口部近傍に設けられ、少なくとも一部が回動可能に支承される複数の面状発光体とを具備した車両監視カメラ用投光器であって、
前記筐体は、
水平及び垂直の各方向に回動可能に支承され、
前記面状発光体のうち、前記回動可能に支承される面状発光体の一部には、
可視光を発光するレーザ指示器が配置された車両監視カメラ用投光器。
【請求項2】
請求項1に記載の車両監視カメラ用投光器であって、
前記回動可能に支承される面状発光体は、
前記筐体の内方にのみ回動可能である、
車両監視カメラ用投光器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両監視カメラ用投光器であって、
前記面状発光体は、
複数の赤外線LEDを平面状に配列したLED基板から構成される、
車両監視カメラ用投光器。
【請求項4】
請求項3に記載の車両監視カメラ用投光器であって、
前記筐体の開口部上方に設けられ、垂直方向に回動可能な第1のLED基板と、
前記筐体の開口部下方に設けられ、前記筐体に対して固定された第2のLED基板と、
を備える車両監視カメラ用投光器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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