説明

車両補助装置の制御方法および制御システム

【課題】車両に搭載された補助装置の制御方法および制御システムにおいて、補助装置の作動時間の正確かつ柔軟な自動決定を可能とし、車両の使用者による少なくとも1つの家電製品の使用時間を決定し、少なくとも1つの家電製品の使用時間に基づいて車両の出発時間を決定し、車両の決定された出発時間に基づいて前記補助装置の始動時間を決定する車両補助装置の制御方法および制御システムを提供する。
【解決手段】補助装置は、車両の推定出発時間に基づいて決定される始動時間に自動的に始動される。特に、事前空調(PAC)においては、電気自動車またはハイブリッド自動車の推定出発時間に基づいて、空調装置が自動的に始動され出発時に適正状態に設定が完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の推定出発時間に基づいて決定される始動時間に補助装置を自動的に始動する、車両補助装置の制御方法および制御システムに関する。特に、本発明は事前空調(Pre Air Conditioning:PAC)のために、電気自動車またはハイブリッド自動車の推定出発時間に基づいて自動的に始動する空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車では、バッテリの容量が制限されるため、車両の最大走行距離が制限される。走行中に空調機が使用される場合、この空調機は本来運転に利用されるエネルギーを消費してしまう。その結果として、空調機を使用することにより最大走行距離が短くなる。
【0003】
車両がバッテリの充填のために外部電源に接続される間に、事前空調(PAC)を用いることが可能である。電気自動車の推定出発時間前のプログラム可能な開始時間に事前空調が開始される。車両がバッテリ充電器に接続される間、空調機がバッテリではなくバッテリ充電器の接続部から直接エネルギーを引き出し、事前空調により車両の客室が冷却または加熱される。その結果、出発時間に客室の空調が完了し、車両が走行時に空調機によって消費されるエネルギー量を低減し得る。その結果、最大走行距離を長くすることが可能である。
【0004】
しかし、車両の出発時間は多くの場合不明であるので、空調装置の動作の最適な始動時間を推定することは困難である。例えば運転者の通勤時であっても、不規則な事象によって車両の基本的に定期的な使用が妨害される可能性がある。
【0005】
通常のタイマの制御内で事前空調の開始時間を決定することができる。運転者は自分の出発時間を予め手動で指定することが可能であり、それに応じて車両が事前空調動作を開始する。運転者が事前空調動作の開始時間を直接プログラムすることも可能である。しかし、運転者が、運転の都度、出発時間または事前空調の開始時間を手動で指定することは不便である。
【0006】
事前空調の開始時間が正確に決定されない場合には、エネルギーは非効率的に用いられる可能性がある。事前空調があまりにも早く開始された場合には、空調機は長すぎる時間間隔で動作しエネルギーを過度に用いるか、または所定の時間後に停止して車両の温度が最初の温度に戻ってしまうので入力されたエネルギーが無駄になり、他方では事前空調の時間が短すぎて出発時間に適切な温度にならない可能性がある。これらの問題により、現実には車両出発後に車両の貴重なバッテリ電力を用いる必要性が生じる。より寒い気候を有する国々で頻繁に使用されるプログラム可能なシートヒータまたは補助ヒータを有する車両でも同様の問題が発生する場合がある。
【0007】
一般的に言えば、その問題は電力を消費する車両の任意の補助装置に関連し、補助装置の始動時間は車両の出発時間に依存する場合がある。例えば、車両運転者は、自分の自動車で出発する直前に、自分の車両マルチメディアファイルやeメール等と、自分のホームネットワークからのデータとを同期させることを望むかもしれない。非電気自動車では、バッテリ電力の問題は電気自動車ほど重要ではないが、間違ったタイマプログラミングにより、同様にエネルギーの損失または快適性の低下が生じる可能性がある。
【0008】
特許文献1は、周波数関数に基づき統計的方法を用いて車両の空調装置を始動する空調機制御装置を開示している。しかし、この装置は運転者の習慣の変化、例えば運転者が通常よりも遅くまたは早く出発する場合等に対応することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−269161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、車両の走行距離および運転者の利便性を向上させるために、補助装置の作動時間のより柔軟で正確な自動決定を可能にする、少なくとも1つの車両の補助装置の制御方法および制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、車両の少なくとも1つの補助装置の制御方法に関する。好ましくは、補助装置は、車両の加熱装置、冷却装置または空調装置の1つである。さらに、加熱装置はプログラム可能なシートヒータまたは補助ヒータ(パーキングヒータ)等である。さらに、補助装置はオンボードマルチメディア装置が可能であり、この装置のデータベースを運転者のホームネットワークのマルチメディアデータベースと同期させることができる。特に、車両は電気自動車またはハイブリッド自動車とすることができる。
【0012】
本制御方法は、車両の使用者の少なくとも1つの家電製品の使用時間を決定するステップを含むことができる。本制御方法は、少なくとも1つの家電製品の使用時間に基づいて車両の出発時間を決定するステップを含むことができる。本制御方法は、車両の決定された出発時間に基づいて、少なくとも1つの補助装置の必要な始動時間を決定するステップを含むことができる。
【0013】
運転者が毎日の自分の出発時間を変える場合、車両の使用と1つ以上の家電製品の使用との強い時間的相関がある。車両との強い時間的相関で使用される家電製品は、電気湯沸かし器、トースター、冷蔵庫、クッキングヒータ、ルームライト、テレビ、ドア用の電子キー、エレベータ、目覚まし時計、シャワー、トイレ等を含むことが可能である。
【0014】
使用者は、朝起床したときに、ルームライトを付け、例えばTVでいくつかのニュースをチェックし、湯沸かし器で水を沸騰させ、コーヒーメーカーまたはティーメーカーを使用し、冷蔵庫を開けて食品を取り出し、クッキングヒータまたはトースターで朝食を用意し、そして車両で自分のオフィスに行く。
【0015】
これらのステップは、一般的に自分用に最適化され通常は仕事日に行われる。休日および休暇には異なる任意のスケジュールを用いることができる。したがって、少なくとも仕事日において、車両の出発時間と家電製品の使用時間との間には、一般的に強い相関がある。運転者が7時30分に自宅から出かける必要がある場合、その運転者は、例えば約6時30分にクッキングヒータを使用し、一方、運転者が8時00分に出かける必要がある場合には、クッキングヒータが7時00分に使用されるであろう。本発明は、車両の出発時間を正確かつ柔軟に相対的に決定するために、車両の出発時間と少なくとも1つの家電製品の使用時間との関連する相関を用いる。本発明は、車両の補助装置の始動時間または作動時間に絶対的な固定時間を用いる代わりに、始動時間の相対的決定を可能にする。
【0016】
この出発時間を用いて、車両の推定出発時間前に、ある時間間隔で少なくとも1つの補助装置、例えば事前空調用の空調機をスイッチオンすることが可能である。
【0017】
車両が、バッテリによって動作される電気自動車またはハイブリッド自動車である場合、車両が充電器電源に接続されるときにのみ、補助装置の自動的始動が用いられる。この場合、エネルギー効率の向上を達成することができる。
【0018】
車両の出発時間を決定するステップは、それぞれの使用データベースに記憶された少なくとも1つの家電製品および車両の使用データに基づいて、少なくとも1つの家電製品の先行する使用時間と車両の引き続く出発時間との間の時間差を決定するステップを含むことが可能である。次に、特定の家電製品の使用時間と車両の引き続く出発時間との間の平均時間差を得るために、決定された時間差を平均化し得る。家電製品制御システムまたは電気自動車の記憶システムに、使用データを記憶することが可能である。
【0019】
言い換えれば、少なくとも1つの家電製品の先行する使用、例えば、過去の日、週、または月における使用等を示すデータがデータベースに記憶され、それらのデータを、車両のそれぞれの出発時間、すなわち、少なくとも1つの家電製品の過去の使用に続く車両の引き続く出発時間に関する記憶されたデータと組み合わせて用いて、家電製品のそれぞれの使用と車両の実際の出発時間との間の平均時間差を決定することが可能である。
【0020】
少なくとも1つの家電製品に関する平均時間差が決定され、決定された平均時間差をこの家電製品の現在の使用時間に加算することによって、車両の引き続く出発時間を推定し得る。したがって、決定された出発時間は、実際の出発時間からなお僅かにずれている可能性がある、推定出発時間である。この平均化によって、最適化された平均エネルギー消費を可能にする時間に予熱動作または予冷動作を開始することが可能であり、それと同時に運転者の利便性が向上する。
【0021】
出発時間の決定の精度および信頼性をさらに向上させるために、複数の家電製品毎に前記時間差の変動値を決定することが可能であり、この場合には、時間差の最小変動値を有する車両の出発時間を決定するために使用される家電製品が、トリガ機器になる。最小変動値を示す家電製品は1つであり、この家電製品の使用が車両の使用に最も相関する。この家電製品は、出発時間の信頼できる予測を可能にするように選択される。複数の家電製品の使用と車両の出発時間との間の平均時間差に基づいて、出発時間を推定することができ、この場合、種々の家電製品から得られた値の重み付けされたある平均値を用いて、出発時間を推定することが可能である。
【0022】
2つ以上の家電製品が、それらの変動値または相関値に基づいてトリガ機器の可能性があるものとして選択され優先される。この場合選択可能なトリガ機器は出発時間を推定するのに不適切な家電製品を除外するために、所定値よりも小さい決定された変動値を有する家電製品となる。使用者によって使用される機器のうち、最後に使用されるトリガ機器が、実際のトリガ機器として選択され得る。
【0023】
運転者が、長時間にわたって異なる機器を使用する場合に、または運転者が第2の家電製品に対してより高い変動値を有する第1の機器を使用した後に、より低い変動値を有する第2の家電製品を使用する場合に、2つ以上の可能なトリガ機器を有することが有利である。次に、第2の機器の使用時間に基づいて、補助装置の始動時間を更新することが可能であり、車両の出発時間のより正確な予測が可能になる。
【0024】
例えば、運転者の動作を評価するニューラルネットワークに基づいて、あるいは車両および家電製品に関する使用データが統計的誤差を示す場合に統計的異常を低く評価しまたは除外する相関アルゴリズムを用いることによって、推定出発時間を決定する多少複雑なアルゴリズムを実行することが可能である。一例では、運転者は、コーヒーを作る代わりにランニングする水曜日を除いて、月曜日から金曜日まで、車両で出発する前にコーヒーメーカーを約30分使用する可能性がある。ここで、このような統計的異常を認識し、それを低く評価しまたは除外するアルゴリズムは、水曜日以外の平日毎に、最も確実なトリガ機器としてコーヒーメーカーを識別し得る。従って、水曜日はコーヒーメーカーの代わりに他のトリガ機器が使用される。
【0025】
特に、車両の出発時間を決定する前記ステップが、1つ以上のデータベースに記憶された少なくとも1つの家電製品および車両の使用データに基づいて、少なくとも1つの家電製品の先行する使用時間と車両の引き続く出発時間との相関を決定するステップを含むことができることが提案される。
【0026】
平均値、変動値または相関が仕事日に関する記憶された使用データに基づいて決定される場合、仕事日および休日を混合することによる推定の偏りを回避することができる。
【0027】
運転者のスケジュールが仕事日で変わる場合、異なる仕事日または時間間隔毎に、平均値または変動値を別々に計算することができる。休日中の出発時間を予測するために、休日のみのために得られた異なるデータを用いることが可能である。精度をさらに向上させるために、日、週、または月の所定の期間にわたって車両の使用に対する最小変動値および最良の相関を示す家電製品を選択することにより、異なる期間にわたって、異なるトリガ家電製品を優先し得る。
【0028】
変動値または相関の決定は、運転者の変化する優先度に対処するために、一定の間隔で、例えば毎週繰り返すことが可能である。
【0029】
さらに、トリガ機器として選択された家電製品の使用タイプに基づいて、車両の出発時間を予測することが可能である。例えば、運転者が、コーヒーメーカーを使用してエスプレッソを作る場合、運転者が急いでおり出発が間近に迫っていることを示している可能性があり、コーヒーメーカーを使用してカプチーノを作る場合には、時間スケジュールにより余裕があることを示している可能性がある。このタイプの相関は、特に制御システムで実現されるニューラルネットワークによって学習することができる。
【0030】
本発明の他の態様によれば、本制御方法は、車両を使用する前に複数の家電製品の使用の順序を決定するステップと、車両の出発時間をより正確に決定するために、決定された順序に基づいてトリガ機器を選択するステップとを含む。例えば、車両運転者が自分の寝室のルームライトを切り換え、それに続いて浴室のルームライトを切り換え、それに続いてコーヒーメーカーの使用等の仕事日における規則的なスケジュールを行った場合に、その車両運転者は通常、家電製品の第1の順序を用いる。しかし、運転者のスケジュールにより余裕があった場合にはその運転者は第2の順序を用いる可能性があり、その運転者は浴室に入る前にコーヒーメーカーを使用し、朝食をとる。車両の決定された推定出発時間の精度を向上させるために、全ての決定された順序毎に、異なるトリガ機器または異なる平均時間差を決定することが可能である。
【0031】
本発明の別の態様は、車両の少なくとも1つの補助装置を制御する制御システムに関する。この場合、制御システムが上記方法を実現する。補助装置は、特に、加熱装置、冷却装置、または空調装置の少なくとも1つである。
【0032】
制御システムは、車両の使用者の少なくとも1つの家電製品の使用時間を決定する手段と、少なくとも1つの家電製品の使用時間に基づいて、車両の出発時間を決定する制御手段とを含むことが可能である。さらに、車両の決定された出発時間に基づいて補助装置の始動時間を決定するように、および決定された始動時間に補助装置を自動的に始動するように、制御手段を構成することが可能である。
【0033】
制御システムは電気自動車またはハイブリッド自動車のために使用することができ、この場合、補助装置は加熱装置、冷却装置、または空調装置の少なくとも1つであることが可能であり、さらに、システムは、車両のバッテリを充電する充電器電源への接続部を備え、車両が充電器電源に接続される場合にのみ装置の動作の前記始動時間に補助装置を始動するように、制御手段を構成することが可能である。
【0034】
充電器電源が車両に接続されることを示すデータ接続は、運転者の家電製品を制御する制御システムに組み込まれる。充電器電源への接続部は、車両と家庭用制御システムとの間の通信をアクティブにしまたは可能にする制御信号接続部として使用することが可能であり、これにより、制御信号接続部を介して補助装置を始動することが可能である。
【0035】
制御システムは、さらに車両の先行する出発時間または少なくとも1つの家電製品の先行する使用時間を記憶する使用データベースを含むことが可能であり、この場合、制御手段は、少なくとも1つの家電製品の先行する使用時間と車両の引き続く出発時間との間の平均時間差を決定して、車両の出発時間を推定するように構成される。使用データベースを家庭用電子制御システムに接続することが可能である。さらに、別々の機器と機器および車両の使用時間を記憶する車両使用データベースとを使用することが可能である。
【0036】
この使用データベースを用いて、少なくとも1つの家電製品の使用と車両の出発時間との相関を評価し得る。専用の信号接続部を介して、車両の使用データを車両から車両使用データベースにアップロードすることが可能である。
【0037】
制御システムは、さらに、補助装置の動作の開始時間の温度に依存する決定を可能にするために、車両の内部温度または外気温度を測定する温度センサを含むことができる。
【0038】
本発明の別の特徴および利点は、本発明の好ましい実施形態の以下の説明から明らかとなるであろう。この説明および特許請求の範囲は特定の組み合わせの複数の特徴を含む。当業者は、本制御方法または制御システムを本発明の別の可能な応用分野に適合させるために、実施形態の特徴の別の組み合わせを考慮するであろう。
【発明の効果】
【0039】
本発明は、車両の少なくとも1つの補助装置の制御方法において、車両の使用者の少なくとも1つの家電製品の使用時間を決定するステップと、少なくとも1つの家電製品の前記使用時間に基づいて車両の出発時間を決定するステップと、前記車両の前記決定された出発時間に基づいて前記補助装置の始動時間を決定するステップとにより車両の出発時間を適切に予想し、車両の補助装置の出発前の始動開始時間をより正確に自動的に決定して、エネルギーを効率的に用いつつ車両状態を快適に調節することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】電気自動車および住宅制御ネットワークのブロック図
【図2】機器の使用時間と電気自動車の実際の出発時間とを記憶するデータベースの模式図
【図3】機器の使用と電気自動車の出発との時間間隔計算を示す説明図
【図4】数日間にわたる、機器の使用時間と電気自動車の出発時間との時間間隔ならびに平均値および変動値を示す説明図
【図5】PACの補助装置の制御に関するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、本発明の実施形態を図面について説明する。
〔システムの基本構成〕
図1は、ホームネットワークを含む住宅110および電気自動車等の車両100のブロック図を示している。住宅110は、車両100の補助装置101の補助装置コントローラ102を作動させる手段を備え、補助装置コントローラ102は、例えば車両100の客室を加熱または冷却する補助装置101を制御する。補助装置101は空調システム(Air Conditioner:AC)であることができ、車両100が電気的な接続手段107を介して車両充電器電源117に接続される場合、電気自動車100のバッテリ104または住宅の車両充電器電源117によって、この空調システムにエネルギーを供給することができる。
【0042】
接続手段107は、バッテリ104を充電する送電線108と、低電圧制御信号を伝送する信号線109a、109bとを含む。信号線109aは、住宅110の制御ユニットに配置された車両スケジューラ116と、車両100に配置された補助装置コントローラ102との間の通信を可能にする。信号線109bは、車両100のナビゲーション装置105と、住宅110に配置された車両使用データベース114との間の通信を可能にする。車両100が車庫等に到着した際にコネクタを接続することによって、接続手段107が作動される場合、車両100の使用データを住宅110の車両使用データベース114にアップロードして記録することができる。住宅110は、調理器、湯沸かし器、白熱電球、温水準備システム、コーヒーメーカー、冷蔵庫等を含む複数の家電製品からなる機器111を備える。車両100と住宅110との間の上記信号接続を、無線データ接続に置き換えることが可能である。
【0043】
機器111の動作は機器モニタ112を介して検出される。機器モニタ112によって検出される使用データ、特に機器の使用の開始時間および終了時間が機器使用データベース113に記憶される。機器使用データベース113および車両使用データベース114のデータに基づいて、機器セレクタ115は、機器111の使用と車両の実際の出発時間との間の時間間隔の平均値および変動値を計算する。機器セレクタ115は、上記計算に基づき、補助装置例えば車両100の空調装置の作動をトリガするトリガ機器として、機器111の1つを選択する。
【0044】
車両スケジューラ116は機器モニタ112とトリガ条件メモリ118とに接続される。機器モニタ112が機器の使用を検出し、機器のIDがトリガ条件メモリ118に記憶されたIDと同じである場合、車両スケジューラ116は、現在の時間とトリガ条件メモリ118に記憶された平均時間間隔とを加算した車両の出発時間を予測する。次に、車両の予測出発時間が、車両100の補助装置コントローラ102例えばACコントローラに送信される。
〔機器使用データベース〕
図2は、例えば車両使用データベース114に記憶された車両の出発時間に対する、例えば機器使用データベース113に記憶されている機器の使用時間を示している。図2の表から理解できるように、それぞれの機器A、B、Cの使用は、各日付1、2、3、4、5毎に異なり、この場合に日付1は月曜日を表し、日付2は火曜日を表すことが可能である。図2からわかるように、車両の実際の出発時間は各日付毎に異なる。
【0045】
図2に示したデータを用いて、図3のスケジュールを評価することができる。日付1において、例えば、機器Cの使用と車両の実際の出発との間の時間は30分であることが理解できる。機器Aの使用と車両の出発との間の時間は60分であり、機器Bの使用と車両の出発との間の時間は70分である。機器の使用と車両の出発との間のこれらの時間間隔は、各関連日付毎の各関連機器毎に計算される。
【0046】
上記のような時間間隔が、図4において異なる日付および異なる機器毎に示されている。最後の2つの行には、上記のような機器セレクタ115によって行われている平均値および変動値の計算の結果が示されている。
【0047】
周知のように、平均値および変動値は互いに著しく異なる。変動値が大きい場合、機器の使用時間と車両の実際の出発時間との相関が弱くなる。他方、変動値が小さい場合、機器の使用時間と車両の実際の出発時間との相関が強くなる。この結果に基づいて、機器セレクタ115は、最小変動値を有する機器111をトリガ機器として選択して、補助装置101の作動を開始し、例えば事前空調を開始することができる。機器セレクタ115はそれぞれの機器111(例えば、機器A、B、C...)のIDをトリガ条件メモリ118に記憶することができる。さらに、機器セレクタ115は、選択された機器111のそれぞれの平均時間間隔をトリガ条件メモリ118に記憶することができる。
【0048】
図4の例では、機器Aがトリガ機器として選択され、平均時間間隔は59分である。平均値および変動値の計算に基づくトリガ機器の選択は、周期的に、例えば1日1回、週1回または月1回(周期期間)行うことができる。上記のように、トリガ機器の選択および決定、ならびにその平均時間間隔は、運転者による車両の使用の特定の変化による影響を受けることもある。例えば、同じトリガ機器が使用され、そして車両の出発時間を予測するために、計算された同じ平均時間間隔が用いられる。例えば1週間の周期期間内において、車両の実際の出発時間が2つ以上の所定値による推定出発時間からずれた場合に、これらのデータの周期的な使用が停止され、新たな計算が開始されることが可能である。このような所定値は、例えば、予測および事前記憶された時間間隔の10%(図4の場合、59分の10%)である。
【0049】
予め選択された周期が新たな計算によって停止された後、予め選択された周期を再び開始することができる。さらに、車両の実際の出発時間と車両の推定された(計算された)出発時間との比較に応じて、周期を長くするかまたは短くすることが可能である。
【0050】
適切な変動値の計算に関して、図2の各行は同じ日付および同じ期間のデータであり、車両の実際の出発時間が、図3に示したような機器B、A、Cの使用直後の時間である。
〔出発時間予測〕
上記のように、機器モニタ112が機器の使用を検出し、機器のIDがトリガ条件メモリ118に記憶されたIDと同じである場合、車両スケジューラ116は、現在の時間と、トリガ条件メモリ118に記憶された平均時間間隔とを加算した車両の出発時間を予測する。次に、車両の予測出発時間が、車両100の補助装置コントローラ102、例えばACコントローラに送信され、その結果、補助装置コントローラ102は運転者によって指定された時間の代わりに、車両の予測出発時間により補助装置104の始動時間を決定することができる。
【0051】
車両スケジューラ116からダウンロードされた空調装置101の作動時間または始動時間を記憶するマップ103を設けることができる。車両100が接続手段107を介して接続されるときに、マップ103を更新する。
【0052】
したがって、本発明は、車両100の補助装置101の始動時間または作動時間を固定する代わりに、補助装置の始動時間の相対的な決定を提供する。このことは、補助装置101の始動時間または作動時間の決定の精度を大きく向上させ、これにより、上記のようにエネルギー効率が向上する。
【0053】
補助装置コントローラ102は、例えば、車両100の推定出発時間前に、適切な時間間隔で空調装置を始動するタイマ106と相互作用する。この時間間隔は、外気温度と、適切な温度センサ(図示せず)を使用して決定し得る車両100の内部温度とによる影響を受ける可能性がある。
【0054】
機器モニタ112が、特定の1つのトリガ機器111の使用、例えば、電気湯沸かし器、冷蔵庫、クッキングヒータ、ルームライト、テレビ、ドアまたはエレベータ用の電子キーの使用を検出した場合、車両スケジューラ116は、機器111の動作と車両100の出発との間の事前記憶された平均時間差を実際の時間に加算することによって、車両100の推定出発時間を計算する。
【0055】
機器使用データベース113は、機器モニタ112によって検出された各機器の使用時間を記録する。車両使用データベース114は、例えば、車両100に配置されたナビゲーション装置115によって検出される車両の出発時間を記録する。機器セレクタ115は、補助装置101の事前空調動作の開始をトリガする特定のトリガ機器を選択するために、機器の使用と車両の出発時間との間の時間間隔の平均値および変動値を計算する。適切ならば、データベース113、114を1つのデータベースに統合することも可能である。
【0056】
図4に示したように、機器A、B、Cの使用と車両の出発との間の時間間隔/時間差が記録される。この表を車両スケジューラ116に設けることができる。各機器毎におよび各日付毎に、機器の使用時間と車両の出発との間の時間間隔が記憶される。これらのデータが一対の日付毎に記録される場合、システムは、各機器A、B、C毎に、平均的な時間間隔と時間間隔の変動値とを計算し、これらのデータを表の追加の行に書き込む。変動値に基づいて、機器セレクタ115は最小変動値を有する機器を複数の機器から選択し、これらの機器のデータは図4による表に記憶される。この場合、例えば、客室を所望の温度に空調するのに必要な最小時間間隔よりも短い平均的な時間間隔を有する機器を、この選択から除外することができる。この最小時間を車両の内部温度または外気温度に適合させ得る。この選択後に、現在の時間と、選択されたトリガ機器に関連する平均時間とを加算して、車両の推定出発時間が決定される。
【0057】
本発明の他の実施形態では、上記のようなトリガ機器として使用される複数の機器毎に、推定出発時間を計算することが可能である。次に、個々のトリガ機器に基づいて計算された出発時間の重み付けされた平均値を用いて、実際の推定出発時間を計算することができる。例えば、運転者が、ある特定の日付に特定の1つの機器を使用しない場合、この機器を平均値から除外することが可能であり、推定出発時間値を適切に適合させることができる。
【0058】
図4の実施形態では、機器Aは最小変動値を有するため指標として安定しており、トリガ機器として選択される。機器Aに関連する平均時間間隔は59分である。トリガ機器の選択は一定の間隔で、例えば、1日1回または週1回行われる。使用者が、例えば午前に1回および午後に1回、車両100を使用する場合、異なるトリガ機器を午前におよび午後に使用することができる。平均使用データを計算するために使用される図4の行のデータは、特定の種類の日付、例えば仕事日または休日に関連する。平均値を計算する場合、仕事日と休日が混合されないことが望ましい。
〔制御方法のステップ処理〕
図5は、機器111の使用の検出から、例えば補助装置101の事前空調動作の開始までの手順のプロセスフローを示している。ステップ501では、車両スケジューラ116が機器モニタ112からの入力を待っている。ステップ502では、機器モニタ112から検出信号を得た後に、検出された機器111の識別番号が、トリガ条件メモリ118に記憶されたトリガ機器111の識別番号と比較され、識別番号が同じである場合、プロセスがステップ503に進む。識別番号が互いに一致しない場合には、プロセスが事前のステップ501に戻る。
【0059】
ステップ503では、車両スケジューラ116が、トリガ条件メモリ118のデータに基づいて車両の出発時間を予測する。ステップ504では、車両の予測出発時間に基づき、補助装置コントローラ102がマップ103を使用して補助装置101の始動時間を決定する。ステップ505では、始動時間に達するまで、タイマ106が待機する。ステップ506では、現在の時間が始動時間に達したときに、タイマ106が始動信号を補助装置コントローラ102に送信し、補助装置コントローラ102が、住宅の車両充電器電源117から供給されおよびバッテリ104から供給されない電力を用いて、空調装置101を始動する。
【0060】
車両充電器電源117が車両100に接続されない場合、車両100のバッテリエネルギーをセーブするために、補助装置101の動作は休止される。
【0061】
上記実施形態の構造の特徴、構成要素および特定の詳細を交換するかまたは組み合わせて、それぞれの用途のために最適化された別の実施形態を形成することが可能である。それらの変形例が当業者に明らかである限り、それらの変形例は、可能なあらゆる組み合わせを明示的に指定することなく、上記説明によって暗黙的に開示されるべきである。
【符号の説明】
【0062】
100: 車両
101: 補助装置
102: 補助装置コントローラ
104: バッテリ
110: 住宅
111: 機器
112: 機器モニタ
113: 機器使用データベース
118: トリガ条件メモリ
115: 機器セレクタ
116: 車両スケジューラ
117: 車両充電器電源
114: 車両使用データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の少なくとも1つの補助装置の制御方法であって、
前記車両の使用者の少なくとも1つの家電製品の使用時間を決定するステップと、
前記少なくとも1つの家電製品の前記使用時間に基づいて、前記車両の出発時間を決定するステップと、
前記車両の前記決定された出発時間に基づいて、前記補助装置の始動時間を決定するステップと
を含むことを特徴とする車両補助装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両補助装置の制御方法において、前記補助装置が加熱装置、冷却装置、または空調装置の少なくとも1つであることを特徴とする車両補助装置の制御方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両補助装置の制御方法において、
前記車両が前記車両用の充電器電源に接続される場合にのみ、前記決定された始動時間に前記補助装置を自動的に始動するステップ
をさらに含むことを特徴とする車両補助装置の制御方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両補助装置の制御方法において、前記車両の出発時間を決定する前記ステップが、
使用データベースに記憶された前記少なくとも1つの家電製品および前記車両の使用データに基づいて、少なくとも1つの家電製品の先行する使用時間と前記車両の引き続く出発時間との間の時間差を決定するステップと、
前記時間差の平均時間差を決定するステップ
とを含むことを特徴とする車両補助装置の制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の車両補助装置の制御方法において、前記時間差の変動値が複数の家電製品毎に決定され、前記時間差の最小変動値を有する前記車両の前記出発時間を決定するために使用される前記家電製品が、トリガ機器として選択されることを特徴とする車両補助装置の制御方法。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両補助装置の制御方法において、前記車両の前記出発時間を決定する前記ステップが、
使用データベースに記憶された前記少なくとも1つの家電製品および前記車両の使用データに基づいて、少なくとも1つの家電製品の先行する使用時間と前記車両の引き続く出発時間との相関を決定するステップ
を含むことを特徴とする車両補助装置の制御方法。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載の車両補助装置の制御方法において、前記平均時間差または前記変動値または前記相関が、仕事日に関する記憶された使用データに基づいて決定されることを特徴とする車両補助装置の制御方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の車両補助装置の制御方法において、前記変動値または前記相関を決定する前記ステップが一定の間隔で繰り返されることを特徴とする車両補助装置の制御方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の車両補助装置の制御方法において、前記補助装置が、事前空調のために前記始動時間に始動される空調装置であることを特徴とする車両補助装置の制御方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の車両補助装置の制御方法において、前記車両の前記出発時間が、少なくとも1つの家電製品の使用タイプまたは複数の家電製品の一連の使用に基づいて決定されることを特徴とする車両補助装置の制御方法。
【請求項11】
車両の少なくとも1つの補助装置の制御システムであって、前記車両の使用者の少なくとも1つの家電製品の使用時間を決定する機器モニタ手段と、前記少なくとも1つの家電製品の前記使用時間に基づいて、前記車両の出発時間を決定し、前記車両の前記決定された出発時間に基づいて、前記補助装置の始動時間を決定するとともに、前記決定された始動時間に前記補助装置を自動的に始動する制御手段とを含むことを特徴とする車両補助装置の制御システム。
【請求項12】
請求項11に記載された車両補助装置の制御システムにおいて、前記制御手段は、少なくとも1つの家電製品の使用時間に基づいて前記車両の出発時間を決定し決定された出発時間に基づいて前記補助装置の始動時間を決定する車両スケジューラと、決定された始動時間に前記補助装置を自動的に始動する補助装置コントローラを含むことを特徴とする車両補助装置の制御システム。
【請求項13】
請求項11または12に記載の車両補助装置の制御システムにおいて、前記車両が電気自動車またはハイブリッド自動車であり、前記補助装置が加熱装置、冷却装置または空調装置の少なくとも1つであり、前記制御システムがさらに前記車両のバッテリを充電する充電器電源を接続する送電線を含む接続手段を備え、前記車両が前記充電器電源に接続される場合にのみ、前記制御手段が前記補助装置の始動時間に補助装置を始動するように構成されることを特徴とする車両補助装置の制御システム。
【請求項14】
前請求項13に記載の車両補助装置の制御システムにおいて、前記接続手段が、前記始動時間に前記補助装置を始動する始動信号を送信する信号線を含むことを特徴とする車両補助装置の制御システム。
【請求項15】
請求項11乃至14のいずれか1項に記載の車両補助装置の制御システムにおいて、前記車両の内部温度または外気温度を測定する温度センサと、前記車両の先行する出発時間または前記少なくとも1つの家電製品の先行する使用時間を記憶する少なくとも1つの使用データベースとをさらに含み、前記制御手段が、少なくとも1つの家電製品の先行する使用時間と前記車両の引き続く出発時間との間の平均時間差を決定して、前記車両の前記出発時間を推定するように構成されることを特徴とする車両補助装置の制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−25917(P2011−25917A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150686(P2010−150686)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】