説明

車両通信装置および車両間通信システム

【課題】 簡単な構成で対向車両についての状況を取得でき、かつ混信を生じない車両間通信システムを提供する。
【解決手段】 車両間通信システム1は、複数の車両間通信装置10によって構成される。車両通信装置10は、車両周辺を撮像する撮像部12と、撮像部12にて撮像された画像から、他の車両が前照灯20の光に重畳して送信した通信信号を検出し、通信信号にて示される他の車両の状態を検出する通信信号検出部14と、通信信号検出部14にて通信信号を検出したときに車両の前照灯20を下向きにする照明制御部18とを備えた構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の車両間において車両情報を通信できる車両通信装置および車両間通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
社会の発展に応じて道路交通の需要は急激に増加してきており、それに伴い道路交通の安全性を向上させることは今後の大きな課題となってきている。
【0003】
こうした中で渋滞などの交通状況の収集や車両走行に異常をきたす事象などの情報を早期に検出し運転者に通知するために、車線や前方を撮像した情報を無線で送信する車両間通信システムが提案されている。例えば、特許文献1に記載された車両間通信システムでは、車両に取り付けたカメラにて車両の周辺の状況を撮像し、撮像された周辺の画像から交通状況および異常事象を検出する。そして、車両は、検出した走行関連情報を他車両に無線装置を用いて送信すると共に、他車両から無線送信されてきた走行情報を受信し運転者に表示することで、周辺の状況に応じた運転が可能となり、交通安全性を向上させることができる。
【0004】
また、特許文献2は、運転支援の一つとして、車両に取り付けたカメラにて自車両および他車両の照明状態を検出し、前照灯の状態を自動的に制御して運転者に対する眩惑を減少するヘッドライトの制御システムを提案している。この制御システムでは、2つのスペクトル帯域を選択的に透過するように構成された光学システムによって前照灯と尾灯を区別し、カメラ画像から他車両の前照灯の状態を検出する。これに基づいて、自車両の前照灯の角度と距離を自動的に制御し、他車両に対しての眩惑を減少させる。
【0005】
また、特許文献2の制御システムでは、自車両の前照灯の輝度変化を画像から検出して検出した輝度変化に基づいて前照灯を制御する。さらに、街灯や電気的に照らされた道路標識による光を画像を輝度変化に基づいて検出し、前照灯の光と区別することにより、最適な前照灯状態を制御する。
【特許文献1】特開2001−283381号
【特許文献2】特許第3568210号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1のように、走行関連情報を通信するために無線を用いると、複数の車両が存在する場合に無線が混信する可能性がある。また、無線通信のための送信装置および受信装置を新たに設けなくてはならず、コストがかかってしまうという課題があった。
【0007】
また、上記した特許文献2のヘッドライトの制御システムは、異なるスペクトルを分離する光学システムの構成が複雑である。すなわち、赤外線のみを通過するフィルタによって尾灯を検出するためには、高い精度で光学システムを構成する必要がある。加えて、ヘッドランプ検知に悪影響を与える街灯や道路標識からの光を検出するために複雑な画像処理が必要である。このため、処理時間が増加し、車両通行状態を瞬時に判断することが難しくなり、前照灯の制御の応答性が低下するおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、上記背景に鑑み、混信を生じさせずに他の車両の状態を示す情報を取得し、取得した情報を用いて前照灯を制御してドライバの眩惑を低減できる車両通信装置および車両間通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両通信装置は、車両周辺を撮像する撮像部と、前記撮像部にて撮像された画像から、他の車両が前照灯の光に重畳して送信した通信信号を検出し、前記通信信号にて示される前記他の車両の状態を検出する通信信号検出部と、前記通信信号検出部にて通信信号を検出したときに車両の前照灯を下向きにする照明制御部とを備えた構成を有する。
【0010】
この構成により、前照灯の光に重畳して送信された通信信号の検出によって他の車両の存在を検出したときに、自車両の前照灯を下向きに制御するので、他の車両のドライバの眩惑を低減することができる。
【0011】
本発明の車両通信装置において、前記照明制御部は、前記通信信号検出部にて通信信号を検出したときに車両の前照灯を点灯する構成を有する。
【0012】
この構成により、前照灯の光に重畳して送信された通信信号の検出によって他の車両の存在を検出したときに、前照灯を点灯して自車両の存在を知らせることができる。
【0013】
本発明の車両通信装置は、前記撮像部にて撮像した画像を表示する画像表示部と、前記通信信号検出部にて他の車両の前照灯が上向きであることを検知した場合に、前記撮像部にて撮像した画像を補正し、補正した画像を前記画像表示部に入力する画像制御部とを備えた構成を有する。
【0014】
他の車両の前照灯が上向きの場合には、他の車両の前照灯の光が撮像部に入射し、適切な画像が得られない場合がある。本発明の構成により、他の車両の前照灯が上向きの場合に、撮像した画像を補正することにより、他の車両の前照灯の光の影響を低減した画像を表示することができる。
【0015】
本発明の他の態様に係る車両通信装置は、車両の状態を検出する車両状態検出部と、前記車両状態検出部にて検出された車両の状態を示す通信信号を生成する通信信号生成部と、前記通信信号生成部で生成された通信信号を重畳した光を照射する前照灯とを備えた構成を有する。
【0016】
この構成により、車両の状態を示す通信信号を前照灯が照射する光に重畳して他の車両に送信するので、通信信号が混信することなく、自車両の状態を他の車両に通知できる。
【0017】
本発明の他の態様に係る車両通信装置は、他の車両から発せられた赤外線信号を受信する赤外線信号受信部と、前記赤外線信号受信部にて受信した赤外線信号に基づいて、前記他の車両の状態を検出する通信信号検出部と、前記通信信号検出部にて通信信号を検出したときに車両の前照灯を下向きにする照明制御部とを備えた構成を有する。
【0018】
この構成により、赤外線信号の検出によって他の車両の存在を検出したときに、前照灯を下向きに制御するので、他の車両のドライバの眩惑を低減することができる。
【0019】
本発明の車両間通信システムは、複数の車両のそれぞれに備えられた車両通信装置によって構成される車両通信システムであって、各車両間通信装置は、車両の状態を検出する車両状態検出部と、前記車両状態検出部にて検出された車両の状態を示す通信信号を生成する通信信号生成部と、前記通信信号生成部で生成された通信信号を重畳した光を照射する前照灯と、車両周辺を撮像する撮像部と、前記撮像部にて撮像された画像から、他の車両が前照灯の照明光に重畳して送信した通信信号を検出し、前記通信信号にて示される他の車両の状態を検出する通信信号検出部と、前記通信信号検出部にて通信信号を検出したときに車両の前照灯を下向きにする照明制御部とを備えた車両通信システム。
【0020】
この構成により、本発明の車両通信装置と同様に、前照灯の光に重畳して送信された通信信号の検出によって他の車両の存在を検出したときに前照灯を下向きに制御するので、他の車両のドライバの眩惑を低減することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、前照灯の光に重畳して送信された通信信号の検出によって他の車両の存在を検出したときに前照灯を下向きに制御するので、他の車両のドライバの眩惑を低減することができるというすぐれた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、実施の形態における車両間通信システム1の構成を示すブロック図である。車両間通信システム1は、複数の車両通信装置10によって構成される。図1では記載を省略しているが、それぞれの車両通信装置10は車両に搭載されている。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態の車両通信装置10は、車両周辺を撮像するための撮像部12と、撮像された画像信号から通信信号を検出する通信信号検出部14と、通信信号検出部14にて検出された通信信号に基づいて車両状態を制御する車両制御部16と、車両制御部16にて制御された照明パルスで発光させる前照灯20と、撮像部12にて撮像された画像を表示する際の表示状態を制御する画像制御部22と、画像制御部22にて制御された画像を表示する画像表示部24とを有している。
【0024】
撮像部12は、車体に取り付けられ、車両周辺の画像を撮像する。撮像部12は、撮像によって得られた画像信号を通信信号検出部14および画像制御部22に入力する。
【0025】
通信信号検出部14は、撮像部12より入力された画像信号から通信信号を検出する。撮像部12にて撮影した画像に基づいて、他の車両(例えば対向車両)の前照灯20に重畳された点滅パルス光から通信信号を検出する。具体的には、通信信号検出部14は、撮像部12にて撮像された画像の各フレームの明暗によって点滅パルス光を抽出する。例えば、各フレームに映る対向車両の前照灯20の平均輝度を求め、平均輝度の変化に基づいて点滅パルスの値(1または0)を読み取る。通信信号検出部14は、検出した通信信号をデコードし、デコードされた通信信号を車両制御部16に入力する。
【0026】
車両制御部16は、車体の電気系統を制御するECUなどで構成されている。車両制御部16は、通信信号検出部14から入力された通信信号に基づいて車両を制御する機能を有する。車両制御部16は、前照灯20を制御する照明制御部18を有している。照明制御部18は、通信信号検出部14から通信信号が入力されると、通信信号が示す内容にかかわらず、前照灯20を点灯する制御、および、前照灯20を下向きにする制御を行う。前照灯20を点灯することにより、対向車両に対して自車両の存在を知らせることができる。また、前照灯20を下向きにすることにより、自車両の前照灯20による対向車両の運転者の眩惑を減少させることができる。車両制御部16は、前照灯20の他にも様々な制御を行うことができる。例えば、特許文献1に示すように、対向車両から走行関連情報を取得し、取得した走行関連情報を運転車に知らせてもよい。
【0027】
前照灯20は、照明制御部18から受信した制御信号に基づいて前照灯20を点灯あるいは消灯させる。また、前照灯20は、照明制御部18から受信した制御信号に基づいて、前照灯20の照射方向を変える。
【0028】
画像制御部22は、撮像部12にて取得した画像信号と、通信信号検出部14にて検出した通信信号とが入力される。画像制御部22は、通信信号が示す内容に基づいて画像信号を処理し、画像の表示状態を制御する。すなわち、対向車両の前照灯20が上向きの状態であることを検出した場合、撮像部12にて撮像した画像が、対向車両の前照灯20の光の影響を受けて、いわゆる「逆光」になっていると判断し、画像制御部22は撮像部12から入力された画像に対して輝度補正等を行って、逆光状態の画像を見やすくするための画像処理を行う。画像制御部22は、補正した画像信号を画像表示部24に入力する。画像表示部24は、画像制御部22から入力された画像信号に基づいて画像を表示する。
【0029】
また、車両通信装置10は、自車両の状態を示す情報を他の車両に送信する構成を有する。すなわち、車両通信装置10は、車両の状態を検出する車両状態検出部26と、車両状態検出部26にて検出した車両状態を示す通信信号を生成する通信信号生成部28とを有している。
【0030】
車両状態検出部26は、車両状態として、例えば、車両の速度、前照灯20の向き等の情報を検出する。車両状態検出部26は、車両状態の情報を通信信号生成部28に入力する。通信信号生成部28は、車両状態を「1」,「0」のデジタル信号からなる通信信号に変換する。これにより、デジタル信号に対応した明暗の点滅によって前照灯20から通信信号を送信することができる。通信信号生成部28は生成した通信信号を前照灯20に入力する。前照灯20は、通信信号に基づいて、照射光の明暗を変化させ、通信信号を他の車両に送信する。例えば、前照灯20は、一部に通信信号を送出するためのLEDもしくは電球を設けておき、通信信号用の可視光を発光する。これにより、パルス光と照射光とが重畳されて、他の車両に通信信号が送信される。
【0031】
図2は、第1の実施の形態の車両通信装置10の動作を示す図である。図2を用いて車両通信装置10の動作について説明する。
【0032】
車両通信装置10は、撮像部12にて車両の周辺を撮像し(S10)、撮像によって得られた画像信号を通信信号検出部14および画像制御部22に入力する。車両通信装置10の通信信号検出部12は、入力された画像信号から通信信号を検出し、検出した通信信号をデコードする(S12)。通信信号検出部14は、デコードした通信信号を車両制御部16および画像制御部22に入力する。
【0033】
車両通信装置10の照明制御部18は、通信信号が入力されたか否かに基づいて対向車両の前照灯20を検出したか否かを判定する(S14)。通信信号は前照灯20の照射光に重畳して送信されてくるので、照明制御部18に通信信号が入力された場合には、対向車の前照灯20が点灯していることが分かる。対向車の前照灯20を検出した場合(S14でYES)、照明制御部18は、自車両の前照灯20が点灯しているか否かを判定し(S16)、点灯していないと判定された場合には(S16でNO)、自車両の前照灯20を点灯させる(S18)。自車両の前照灯20が点灯していると判定された場合には(S16でYES)、照明制御部18は、前照灯20を点灯させた状態を保つ。次に、照明制御部18は、自車両の前照灯20の向きを制御する。すなわち、照明制御部18は、自車両の前照灯20の向きを検出し(S20)、前照灯20の向きが上向きと検出された場合には、前照灯20を下向きに制御する(S22)。前照灯20の向きが下向きと判定された場合、照明制御部18は、前照灯20を下向きにした状態を保つ。
【0034】
続いて、車両通信装置10は、撮像部12にて撮像した画像を画像表示部24に表示する処理を行う。車両通信装置10の画像制御部22は、通信信号検出部14から入力された通信信号に基づいて、対向車両の前照灯20の向きを検出する(S24)。対向車両の前照灯20の向きが上向きの場合には、画像制御部22は、撮像部12から入力された画像信号に対して逆光補正を行い(S26)、逆光補正後の画像信号を画像表示部24に入力する。画像表示部24は、入力された画像信号に基づいて画像を表示する(S28)。対向車両の前照灯20の向きの検出の結果、対向車両の前照灯20の向きが下向きの場合には、画像制御部22は、逆光補正を行わないで、画像表示部24に画像信号を入力し、画像表示部24にて画像を表示する。
【0035】
次に、車両通信装置10は、自車両の状態を他の車両に送信する処理を行う。車両通信装置10の車両状態検出部26は、自車両の状態を検出する。例えば、車両状態検出部26は、前照灯20の向きを検出する。車両状態検出部26は、検出した車両状態を示す情報を通信信号生成部28に入力する。通信信号生成部28は、車両状態検出部26から入力された車両状態を示す情報に基づいて通信信号を生成し(S30)、生成した通信信号を前照灯20に入力する。前照灯20は、車両状態を示す通信信号を照明光に重畳する(S32)。
【0036】
なお、図2では、自車両の前照灯20の制御(S14〜S22)、画像の表示(S24〜S28)、車両状態を示す通信信号の送信(S30,S32)の順に動作を行う例を挙げているが、図2に示す処理の順番は一例であって、処理の順番は図2に示す例に限定されない。例えば、自車両の前照灯20の制御、画像の表示、通信信号の送信を同時に行ってもよい。
以上、第1の実施の形態の車両間通信システム1および車両通信装置10の構成および動作について説明した。
【0037】
本実施の形態の車両通信装置10は、撮像部12にて撮像した画像信号に基づいて、他の車両の前照灯20の光に重畳された通信信号を検出したときに自車両の前照灯20を点灯するので、他の車両に対して自車両の存在を知らせることができる。
【0038】
本実施の形態の車両通信装置10は、通信信号検出部14にて通信信号を検出したときに、前照灯20を下向きに制御するので、他の車両のドライバの眩惑を低減することができる。
【0039】
本実施の形態の車両通信装置10は、通信信号検出部14にて検出した通信信号に基づいて、他の車両の前照灯20が上向きであることを検知した場合に、撮像部12にて撮像した画像を補正することにより、他の車両の前照灯20に起因する逆光の影響を低減した画像を表示することができる。
【0040】
本実施の形態の車両通信装置10は、車両の状態を示す通信信号を前照灯20から照射する光に重畳して他の車両に送信する。各車両通信装置10がこの構成を採用することにより、通信信号が混信することなく、互いの車両の状態を適切に他の車両に通知できる。
【0041】
(第2の実施の形態)
図3は、第2の実施の形態の車両間通信システム2の構成を示す図である。第2の実施の形態の車両間通信システム2の基本的な構成は、第1の実施の形態の車両間通信システム1と同じであるが、第2の実施の形態の車両間通信システム2は、赤外線通信によって車両間通信を行う点が異なる。
【0042】
図3に示すように、車両間通信システム2は、複数の車両通信装置30によって構成される。車両通信装置30は、第1の実施の形態の車両通信装置10の構成に加え、赤外線通信部32を備えている。
【0043】
第2の実施の形態では、通信信号生成部26は、生成した通信信号を赤外線通信部32に入力する。赤外線通信部32は、入力された通信信号を赤外線通信によって他の車両に送信する。また、赤外線通信部32は、他の車両から送信された赤外線信号を受信し、受信した赤外線信号を通信信号検出部14に入力する。
【0044】
図4は、第2の実施の形態の車両間通信システム2の動作を示す図である。第2の実施の形態の車両間通信システム2の基本的な動作は、第1の実施の形態の車両間通信システム2の動作と同じである。
【0045】
車両通信装置30は、赤外線通信部32にて受信した赤外光を受信し(S40)、受信した赤外光を通信信号検出部14に入力する。車両通信装置30の通信信号検出部14は、入力された画像信号から通信信号を検出し、検出した通信信号をデコードする(S42)。通信信号検出部14は、デコードした通信信号を車両制御部16および画像制御部22に入力する。
【0046】
車両通信装置30の照明制御部18は、入力された通信信号に基づいて対向車の検出を行う(S44)。対向車を検出した場合(S44でYES)、照明制御部18は、自車両の前照灯20を点灯する処理を行う。すなわち、照明制御部18は、自車両の前照灯20が点灯しているか否かを判定し(S46)、点灯していないと判定された場合には(S46でNO)、自車両の前照灯20を点灯させる(S48)。自車両の前照灯20が点灯していると判定された場合には(S46でYES)、照明制御部18は、前照灯20を点灯させた状態を保つ。次に、照明制御部18は、自車両の前照灯20の向きを制御する。すなわち、照明制御部18は、自車両の前照灯20の向きを検出し(S50)、前照灯20の向きが上向きと検出された場合には、前照灯20を下向きに制御する(S52)。前照灯20の向きが下向きと判定された場合には、照明制御部18は、前照灯20を下向きにした状態を保つ。
【0047】
続いて、車両通信装置30は、撮像部12にて車両周辺を撮像し(S54)、撮像した画像を画像表示部24に表示する処理を行う。車両通信装置30の画像制御部22は、通信信号検出部14から入力された通信信号に基づいて、対向車両が前照灯20を上向きに照射しているか否かを検出する(S56)。対向車両が前照灯20を上向きに照射している場合には(S56でYES)、画像制御部22は、撮像部12にて撮像した画像に対して逆光補正を行い(S58)、逆光補正後の画像信号を画像表示部24に入力する。画像表示部24は、入力された画像信号に基づいて画像を表示する(S60)。対向車両の前照灯20の状態を判定した結果、対向車両が前照灯20を下向きに照射している場合には、画像制御部22は、逆光補正を行わないで、画像表示部24に画像信号を入力し、画像表示部24にて画像を表示する(S60)。
【0048】
次に、車両通信装置30は、自車両の状態を他の車両に送信する処理を行う。車両通信装置30の車両状態検出部26は、自車両の状態を検出する。例えば、車両状態検出部26は、前照灯20の向きを検出する。車両状態検出部26は、検出した車両状態を示す情報を通信信号生成部28に入力する。通信信号生成部28は、車両状態検出部26から入力された車両状態を示す情報を基づいて通信信号を生成し(S62)、生成した通信信号を赤外線通信部32に入力する。赤外線通信部32は、車両状態を示す通信信号を赤外線によって送信する(S64)。
以上、第2の実施の形態の車両間通信システム2および車両通信装置30について説明した。
【0049】
第2の実施の形態の車両間通信システム2は、赤外線通信部32を備え、赤外線通信を用いて互いの車両の状態を示す情報を送信するので、通信信号が混信することなく、車両の状態を適切に他の車両に通知できる。
【0050】
また、第2の実施の形態の車両間通信システム2は、第1の実施の形態と同様に、他の車両を検出したときに、自車両の前照灯20を点灯し、かつ前照灯20を下に向ける処理を行うので、他の車両のドライバに自車両の存在を知らせると共に、自車両の前照灯20による眩惑を低減できる。
【0051】
以上、本発明の車両間通信システムおよび車両通信装置について、実施の形態を挙げて詳細に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではない。
【0052】
上記した実施の形態では、通信信号検出部14にて通信信号を検出したときに、前照灯20を点灯させ、また、前照灯20を下向きに制御する例について説明したが、通信信号の内容に応じて前照灯20を制御することとしてもよい。例えば、他の車両からの通信信号によって前方にトンネルがあることを検知した場合に、前照灯20を点灯する制御を行うこととしてもよい。
【0053】
また、上記した実施の形態では、他の車両から受信した通信信号に基づいて、前照灯20および画面制御部22を制御する例について説明したが、車両通信装置10,30は、他の車両からの通信信号に基づいて、上記した以外の機器を制御することとしてもよい。
【0054】
なお、上記した実施の形態においては、対向車両の前照灯からの照射光に重畳される通信信号を検出する例を挙げたが、後方車両の前照灯からの光に重畳される通信信号を検出し、検出した通信信号に基づいて車両を制御してもよい。例えば、後方車両から送信された通信信号に基づいて後方車両の速度を検出し、後方車両が急速に接近している場合には、アラートを発して、ドライバに注意を喚起する等してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したように、本発明は、他の車両のドライバの眩惑を低減することができ、安全運転に資することができるというすぐれた効果を有し、複数の車両間において車両情報を通信できる車両間通信システム等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1の実施の形態の車両間通信システムの構成を示す図
【図2】第1の実施の形態に車両間通信システムの動作を示す図
【図3】第2の実施の形態の車両間通信システムの構成を示す図
【図4】第2の実施の形態に車両間通信システムの動作を示す図
【符号の説明】
【0057】
1,2 車両間通信システム
10 車両通信装置
12 撮像部
14 通信信号検出部
16 車両制御部
18 照明制御部
20 前照灯
22 画像制御部
24 画像表示部
26 車両状態検出部
28 通信信号生成部
30 車両通信装置
32 赤外線通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周辺を撮像する撮像部と、
前記撮像部にて撮像された画像から、他の車両が前照灯の光に重畳して送信した通信信号を検出し、前記通信信号にて示される前記他の車両の状態を検出する通信信号検出部と、
前記通信信号検出部にて通信信号を検出したときに車両の前照灯を下向きにする照明制御部と、
を備えた車両通信装置。
【請求項2】
前記照明制御部は、前記通信信号検出部にて通信信号を検出したときに車両の前照灯を点灯する請求項1に記載の車両通信装置。
【請求項3】
前記撮像部にて撮像した画像を表示する画像表示部と、
前記通信信号検出部にて他の車両の前照灯が上向きであることを検知した場合に、前記撮像部にて撮像した画像を補正し、補正した画像を前記画像表示部に入力する画像制御部と、
を備えた請求項1または2に記載の車両通信装置。
【請求項4】
車両の状態を検出する車両状態検出部と、
前記車両状態検出部にて検出された車両の状態を示す通信信号を生成する通信信号生成部と、
前記通信信号生成部で生成された通信信号を重畳した光を照射する前照灯と、
を備えた車両通信装置。
【請求項5】
他の車両から発せられた赤外線信号を受信する赤外線信号受信部と、
前記赤外線信号受信部にて受信した赤外線信号に基づいて、前記他の車両の状態を検出する通信信号検出部と、
前記通信信号検出部にて通信信号を検出したときに車両の前照灯を下向きにする照明制御部と、
を備えた車両通信装置。
【請求項6】
複数の車両のそれぞれに備えられた車両通信装置によって構成される車両通信システムであって、
各車両間通信装置は、
車両の状態を検出する車両状態検出部と、
前記車両状態検出部にて検出された車両の状態を示す通信信号を生成する通信信号生成部と、
前記通信信号生成部で生成された通信信号を重畳した光を照射する前照灯と、
車両周辺を撮像する撮像部と、
前記撮像部にて撮像された画像から、他の車両が前照灯の照明光に重畳して送信した通信信号を検出し、前記通信信号にて示される他の車両の状態を検出する通信信号検出部と、
前記通信信号検出部にて通信信号を検出したときに車両の前照灯を下向きにする照明制御部と、
を備えた車両間通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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