説明

車両運行情報処理方法及び車両運行情報処理システム

【課題】
利用実績情報を活用した乗降車停留所の簡便な入力方法を確立し、運営コストがかからない車両運行情報処理方法、車両運行情報処理装置及び車両運行情報処理システムを提供する。
【解決手段】
利用実績データベース管理装置37が、利用実績データベース60から、受付依頼者の発信電話番号に該当する発生頻度順乗降車停留所候補一覧表又は乗車停留所に該当する発生頻度順降車停留所候補一覧表を作成し、受付操作画面に表示して、その選択だけで乗降車停留所の入力作業を済ませ、従来の停留所名の検索入力方式を簡略化する。また、電話番号を暗号化して取り扱うことにより、個人情報の保護に考慮した車両運行情報処理方法とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運行情報処理方法及び車両運行情報処理システムに係り、より詳しくは、利用者からのデマンドに応じ、該記デマンドで指定された乗降車予定停留所を巡る車両の運行情報の処理を行なう車両運行情報処理方法及び車両運行情報処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自家用車の普及等により、通常のバスやタクシの運行方法では経営が困難なまでにバスやタクシ(以下、「バス等」と総称する)の利用が落ち込んだ地域が増え、これらの地域においては、利用者のデマンドに応じて運行するデマンドバスやデマンド乗合タクシシステム(以下、「デマンド車両システム」と総称する)が普及し始めている。かかるデマンド車両システムは、デマンドを電話等で受け付け、デマンドに応じて運行予定を組み、バス等を運行するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうしたシステムを運用するにあたっては、デマンドを受け付ける際に個々の乗降車停留所をシステムに手入力するのに手間がかかり、規模が大きくなるにつれて、操作の人件費コストの負担が伴ってきていた。
【0004】
この為もあって、一部のデマンド車両システムでは、利用者を会員登録制とし、CTI(Computer Telephony Integration)により利用者からの電話番号を自動取得して、利用者の利用履歴情報を表示して、乗降車停留所の入力を簡素化する方法もとられている。しかし、この場合には、会員登録制にすることにより、デマンド車両システムには必要ないような個人情報まで知られてしまうことへの不安感や、そもそもの登録自体への抵抗感があった。
【0005】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、利用時の乗車及び降車という共起ペア情報の蓄積データを多面的に解析して、各種の条件により情報を抽出表示することにより、場面に応じた乗降車停留所の候補ペアを提示して停留所設定を簡素化し、デマンドに基づいた運行計画を自動的に作成できるような、車両運行情報処理方法、車両運行情報処理装置及び車両運行情報処理システムに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1の観点からすると、道路網に沿って配置された複数の停留所のうちから選択された希望乗降車停留所及び希望乗車時刻を含むデマンドを利用者から受けて、前記複数の停留所における少なくとも2つを巡る車両の運行情報の作成を行う車両運行情報処理方法であって、前記デマンドの受付時において、前記乗降車予定停留所の設定作業を簡素化するための候補乗降車停留所情報を、過去のデマンドの累積であるデマンド実績を基にして導出する候補停留所情報導出工程と;前記候補停留所情報導出工程において導出された前記候補乗降車停留所情報を提示する候補停留所情報提示工程と;提示された前記候補乗降車停留所情報が参照されつつ設定された候補乗車停留所及び候補降車停留所を含む受付デマンド情報に基づいて、前記複数の停留所における2以上の停留所を巡る車両の新たな運行計画を自動的に作成するデマンド処理工程と;前記デマンド処理工程において作成された前記新たな運行計画を、前記車両に対して通知する運行計画通知工程と;を含む車両運行情報処理方法である。
【0007】
本発明の車両運行情報処理方法では、まず、候補停留所情報導出工程において、デマンドの受付時に、乗降車予定停留所の設定作業を簡素化するための候補乗降車停留所情報を、過去のデマンドの累積であるデマンド実績を基にして導出する。かかるデマンドの累積は、乗降車停留所情報に所定の利用条件情報を付加した利用実績データベースを作成しておき、デマンドの受付時に当該データベースにデマンド内容を登録することに行われる。
【0008】
次に、候補停留所情報提示工程において、導出された前記候補乗降車停留所情報を提示する。
【0009】
続いて、デマンド処理工程において、受付デマンド情報に基づいて、候補乗車停留所及び候補降車停留所を含む2以上の停留所を巡る車両の運行計画を自動的に作成する。ここにおいては、既存の運行計画があれば、その運行に新規の受付デマンド情報に基づく運行を織り込むようにして、機械化された方法で、運行経路を作成する。また、既存の運行計画がなければ、新規の受付デマンド情報に基づく運行が適宜作成される。
【0010】
そして、運行計画通知工程において、新たな運行計画を、車両に対して通知する。車両は、通知された当該運行計画に従って、車両を運行させることになる。
【0011】
よって、このような方法によれば、過去のデマンド実績を用いることで停留所設定を簡素化するとともに、デマンドに基づいた運行計画を自動的に作成することができ、人的資源等を極小化して、簡易にデマンドによる運行を実現することができる。
【0012】
本発明の車両運行情報処理方法では、前記候補停留所情報導出工程においては、前記デマンドの受付時に通知されたアクセス情報を基にして、前記デマンド実績より、前記アクセス情報に関連づけられている乗車停留所情報及び降車停留所情報のリストを作成することができる。
【0013】
この場合には、アクセス情報とは、例えば、電話による受付ならば電話番号、インターネットによる受付ならば接続している端末を特定するようなアクセス情報等とすることができる。また、利用者を特定する、IDとパスワード等の認証情報であるとしてもよい。デマンド実績より、このようなアクセス情報から過去に受け付けた実績のあるデマンドにおいて要求された、乗降車停留所の組合せのリストを抽出し、提示する。
【0014】
前記アクセス情報は、電話番号を暗号化した情報である、とすることができる。こうすることで、個人情報の保護が図られるからである。また、前記電話番号を暗号化した情報は、一方向暗号化がなされており、復号化できない、とすることができる。かかる場合には、管理者にも元の電話番号を取得できないようにできるので、個人情報の保護を更に厚くすることができる。
【0015】
本発明の車両運行情報処理方法では、前記候補停留所情報導出工程においては、前記デマンドの受付時に通知された希望乗車停留所を基にして、前記デマンド実績より、前記希望乗車停留所である乗車停留所情報に対して関連づけられている降車停留所情報のリストを作成し、候補乗降車停留所情報として提示することができる。この場合には、希望乗車停留所として指定される停留所が乗車停留所である情報をデマンド実績から読出し、当該乗車停留所に対する降車停留所のリストを提示する。
【0016】
本発明の車両運行情報処理方法では、前記候補停留所情報導出工程においては、前記候補乗降車停留所情報の導出に際して、前記デマンド実績において登録されている情報であって、月、曜日、時間帯、天候のうち少なくとも一つを含む利用条件情報を更に考慮する、とすることができる。
【0017】
利用条件情報として提示した月、曜日、時間帯、天候等は、いずれも、利用者の車両の利用傾向に影響を与える要素である。したがって、デマンド実績からのリストを基に、所定の利用条件データによって曜日や時間帯などが合う場合には2倍または3倍などの重み付けを行い、デマンド受付時の状況に応じてデマンドに合致する蓋然性の高いものを優先的に抽出することができる。
【0018】
本発明の車両運行情報処理方法では、前記候補停留所情報提示工程においては、前記候補乗降車停留所情報が、前記デマンド実績において、集計された件数が多い順に提示される、とすることができる。これにより、デマンドに合致する蓋然性の高いものを優先的に提示することができる。
【0019】
本発明は、第2の観点からすると、道路網に沿って配置された停留所のうちから選択された希望乗降車停留所及び希望乗車時刻を含むデマンドを利用者から受けて、前記複数の停留所における少なくとも2つを巡る車両の運行情報の作成を行う車両運行情報処理装置であって、前記デマンドの受付時において、候補乗降車停留所情報を、過去のデマンドの累積であるデマンド実績を基にして導出する候補停留所情報導出手段と;前記候補乗降車停留所情報を提示する候補停留所情報提示工程と;前記候補乗降車停留所情報が参照されつつ設定された候補乗車停留所及び候補降車停留所を含む受付デマンド情報に基づいて、前記複数の停留所における2以上の停留所を巡る車両の新たな運行計画を自動的に作成するデマンド処理手段と;前記新たな運行計画を、前記車両に対して通知する運行計画通知手段と;を備える車両運行情報処理装置である。
【0020】
まず、デマンドの受付時に、車両の新たな運行計画を作成する作業を簡素化するための候補乗降車停留所情報を、過去のデマンドの累積であるデマンド実績を基にして導出する。次に、導出された前記候補乗降車停留所情報を提示する。
【0021】
続いて、受付デマンド情報に基づいて、2以上の停留所を巡る車両の新たな運行計画を自動的に作成する。ここにおいては、既存の運行計画があれば、その運行に新規の受付情報に基づく運行を織り込むようにして、機械化された方法で、運行経路を作成する。また、既存の運行計画がなければ、新規の受付情報に基づく運行が適宜作成される。
【0022】
そして、更新された運行計画の内容を、車両に対して通知する。車両は、通知された当該運行計画に従って、車両を運行させることになる。
【0023】
よって、このような装置によれば、過去のデマンド実績を用いることで停留所設定を簡素化するとともに、デマンドに基づいた運行計画を自動的に作成することができ、人的資源等を極小化して、簡易にデマンドによる運行を実現することができる。
【0024】
本発明は、第3の観点からすると、本発明の車両運行情報処理装置と;前記車両運行情報処理装置から無線通信により通知された新たな運行計画に従って、道路網に配置された複数の停留所における2以上の停留所を巡る車両と;を備える車両運行情報処理システムである。
【0025】
この車両運行情報処理システムでは、上述した本発明の車両運行情報処理方法を使用して、車両運行情報処理を行う。これによれば、過去のデマンド実績を用いることで停留所設定を簡素化するとともに、デマンドに基づいた運行計画を自動的に作成することができ、人的資源等を極小化して、簡易にデマンドによる運行を実現することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明の車両運行情報処理方法、車両運行情報処理装置及びシステムによれば、デマンドの予約作業を軽減できるとともに自動で車両運行計画を作成でき、利用者の利便性の確保及び運営コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図1〜図5を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
【0028】
[構成]
図1には、本実施形態に係る車両運行情報システムとしてのデマンドバスシステムの構成の概略が模式的に示されている。図1に示されるように、このデマンドバスシステム10は、(a)道路網RDNTを走行するバス20と、(b)デマンドバスシステム10を統轄して管理する管理センタ30と、(c)道路網RDNTの所定位置に配置され、利用者が乗降するバス停留所40j(j=1〜N)と、(d)利用者の多い施設に据え付けられたデマンド受付端末装置52とを備えている。
【0029】
本実施形態のデマンドバスシステム10では、管理センタ30からバス20へ向けて、運行経路指示データRTDが、携帯電話網を介して送信されるようになっている。
【0030】
また、本実施形態のデマンドバスシステム10では、利用者が保有する電話機51、利用者の多い施設に設置される受付端末装置52又は利用者が保有する携帯電話53等から管理センタ30に対して、バス利用者のデマンドDMD1、DMD2、DMD3等を依頼又は通知することができるようになっている。ここで、電話機51から公衆回線網を介して依頼又は通知されるデマンドをデマンドDMD1と、受付端末装置52からデータ通信網を介して通知されるデマンドをデマンドDMD2と、また携帯電話53から公衆回線網を介して依頼又は通知されるデマンドをデマンドDMD3と表記している。
【0031】
なお、図1ではバス20が1台だけ示されているが、複数台であってもよいことは勿論である。
【0032】
上述したデマンドバスシステム10の要素それぞれの構成が、ブロック図にて図2に示されている。この図2に示されるように、管理センタ30は、(a)利用者の電話機51又は携帯電話53からの公衆回線網を介して依頼されるデマンドDMD1、DMD3を管理センタ30に常駐するオペレータが受ける電話機31と、(b)受付端末装置52からインターネット等のデータ通信網を介して通知されるデマンドDMD2を受信する通信装置32と、(c)電話機31で受け付けるオペレータが入力するデマンド又は通信装置32が通知するデマンドに対応又は処理し、バスの運行計画を作成するとともに、後述するデマンドバスの利用実績データベース60を作成及び操作するデマンド受付処理装置35と、(d)デマンド受付処理装置35で作成された運行経路指示データRTDを、携帯電話網を介して送信する送信装置34とを備えている。
【0033】
また、管理センタ30は、各種データを格納する記憶装置38、オペレータがデータや指令をデマンド処理装置33へ入力するキーボードやマウス等の入力装置39T及びデマンド受付処理装置35からの情報を表示する液晶ディスプレイ等の表示装置40Dを備えている。なお、入力装置39T及び表示装置40Dは、デマンド処理装置33に接続されている。さらに、記憶装置38は利用実績データベース60を内部に備えている。
【0034】
デマンド処理装置33は、(i)バス利用者が電話機51、携帯電話53から管理センタのオペレータが電話機31で受け付けるデマンドDMD1、デマンドDMD3及び利用者が多い施設に設置される受付端末装置52から通知され、通信装置32で受信されるデマンドDMD2の受付の応答及び処理を行なうデマンド受付処理装置35と、(ii)デマンド受付処理装置35で入力されたデマンドDMD1、DMD2及びDMD3に対して、対応可能なバスの運行計画を作成し、デマンド受付処理装置にその運行計画によるバスの乗車停留所への到着時刻を返すとともに、送信装置34を介してバス20に設置されている携帯電話に運行経路指示データRTDを送信する運行計画算出装置36と、(iii)デマンド受付処理装置35からデマンド受付データと利用条件データを取得し、利用実績データベース60を作成及び操作する利用実績データベース管理装置37とを備えている。
【0035】
利用実績データベース60の構成については、図3に示されている。利用実績データベース60には、暗号化された一の電話番号に対して複数のデマンド情報が登録されている。図には代表的に「電話番号」100が示されている。各デマンド情報101jは、それぞれ111jから116jのデータ項目を有している。「乗車停留所」111jは、デマンドにおいて指定された乗車停留所である。「降車停留所」112jは、デマンドにおいて指定された希望降車停留所である。「乗車月」113jは、デマンドが発行されたときの月を、管理センタ30内で設定されているシステム日付から取得したものである。「乗車曜日」114jは、デマンドが発行されたときの曜日を、同様に取得したものである。「乗車時間帯」115jは、デマンドにおいて指定された乗車希望時間から、適宜時間帯を取得したものである。天候情報116jは、当日の天候を適宜取得し、登録したものである。なお、デマンドによっては、電話番号がCTIより入って来ない場合もあるが、その場合は電話番号にはダミー値が設定される。
【0036】
なお、上述した暗号化を一方向暗号化とし、暗号化された電話番号は、システム管理者によっても復号化できないようにすることもできる。
【0037】
[動作]
次に、上記のように構成されたデマンドバスシステムにおけるバス運行情報の処理について説明する。なお、説明の簡略化のため、バスが、バス20一台のみである場合を例にとって説明する。
【0038】
前提として、利用実績データベース60内には、十分な利用実績データが格納されているものとする。導入初期では、実際の利用データだけではなく、利用することが多いと予測される乗降車停留所ペアを仮想データとして与えておくこともできる。
【0039】
<<電話機51からのデマンドDMD1を処理する場合>>
オペレータは、受付業務を開始するとき、当日の天候を入力しておく。天候によりバスの運行状況が影響を受けることもあるからである。なお、この入力は、インターネットからの気象情報の取得で代替し、自動化することもできる。また、デマンド受付処理装置35に接続されている、キーボードやマウス等の入力装置39T及び液晶ディスプレイ等の表示装置40Dは、オペレータが介在する場合であるデマンドDMD1又はDMD3を処理するときにのみ、使用される。
【0040】
まず、利用者が電話機51から管理センタに電話をかけた場合には、オペレータが電話機31で応答する。そのときデマンド受付処理装置35がその装置内のCTIが機能してかかってきた電話番号を取得し、この番号を暗号化したものに変更する。以下、暗号化された電話番号を単に「電話番号」という。暗号化するのは、個人情報の保護のためである。暗号化前の電話番号はオペレータにも分からないようにする。また、後述する利用実績データベース60にも暗号化された状態で登録される。
【0041】
デマンド受付処理装置35は、電話番号を利用実績データベース管理装置37に送り、利用実績データベース管理装置37はその電話番号で利用実績データベース60より抽出し、発生頻度順にソートした乗降車停留所ペアリストを、デマンド受付処理装置35に返す。
【0042】
電話番号で抽出した発生頻度順別の乗降車停留所ペアリストが複雑で多すぎる場合には、オペレータからの指示又は利用実績データベース管理装置37内に設定された内容に従って、利用実績データベース管理装置37は、「月」、「曜日」、「時間帯」、「天候」の少なくとも一つから成る利用条件について、項目の重みを付けてフィルタリングすることができる。また、逆に少ない場合には、入力された電話番号をキーとして抽出された乗降車停留所ペアに限定せずに、当該電話番号から特定される乗車停留所あるいは当該乗車停留所が含まれる乗車地区に関する頻出の乗降車停留所ペアを相当数抽出し、抽出された降車停留所のリストを出すこともできる。なお、このような実績データが存在しない場合には、オペレータが、乗降車停留所名を直接聞いて、名称や住所の読み等をキーとして検索し、乗降車停留所を入力することになる。
【0043】
このような処理の結果、表示されるのが、図4に示すような乗降車停留所一覧表120である。これは、基本的には、利用実績データベース60から、入力された電話番号を基に検索し、利用された実績の集計が多い順に、乗車停留所と降車停留所のペアを並べたものである。当該実績データは、オペレータの入力作業に供するものであるので、「乗車停留所候補」121kと、「降車停留所候補」122kとして表示される。
【0044】
次に、オペレータは利用者に乗車停留所と降車停留所を聞き、乗降車停留所一覧表120に該当するものが見つかれば、その項目を指定することにより、入力処理を行うことができる。
【0045】
指定は、乗車停留所又は降車停留所のそれぞれについて行うことができる。また、指定するのはいずれか一方のみでもよく、その場合には未入力の停留所について、名称や住所のよみ等で検索入力を行なう。
【0046】
乗降車停留所の入力が終われば、オペレータは利用者に乗車希望時刻を聞いて入力する。入力がなされると、デマンド受付処理装置35は、前述の乗降車停留所と入力された乗車希望時刻をデマンド受付情報として運行計画算出装置36に渡す。
【0047】
運行計画算出装置36は、事前の運行計画に新規デマンド需要を加えて、改訂運行計画を自動で作成する。当該作成においては、まず、既存の運行計画で既に決まっている、利用者が乗車する停留所と停留所への到着時間を変更せずに、新規のデマンドにおける乗車希望停留所を乗車希望時間に通過できるかを算出する。算出に当たっては、停留所間の道路と距離を直接用いる。算出の結果が肯定的なものであれば、デマンドにおける乗車希望時間を可能乗車時刻とする。一方、算出の結果が否定的なものであれば、当該乗車希望停留所の通過可能時間を算出し、可能乗車時刻とする。そして、算出された、新規のデマンド受付情報に対応する可能乗車時刻を、デマンド受付処理装置35に返す。
【0048】
オペレータは、返された可能乗車時刻を利用者に告げる。利用者がオペレータに対し、告げられた可能乗車時刻を受け入れる旨を伝えた場合には受付完了とし、受け入れられない旨を伝えた場合には、受付破棄とする。
【0049】
受付が完了した場合には、デマンド受付処理装置35は再度、運行計画算出装置36に、確定した乗降車停留所と可能乗車時刻を送信する。すると、運行計画算出装置36は、送信装置34を介して、バス20に設置されている携帯電話に最新の運行経路指示データRTDを送信する。バス20は当該改定後の情報を含んだRTDの指示に沿って運行することになる。デマンドは、バスが運行中であっても、乗車希望停留所を通過する予定時刻の近くまで受け付けることができる。
【0050】
さらに、デマンド受付処理装置35は、受付完了又は受付破棄にかかわらず、デマンド受付情報を利用実績データベース管理装置37に渡し、利用実績データベース管理装置37は、記憶装置38への実績データの追加と、各利用条件項目によるソート及び集計の定期処理を行なう。以上を以って、デマンドDMD1の処理が終了する。
【0051】
また、上記の処理では、CTIによる電話番号が得られない場合には、乗車停留所名を利用者から聞いて検索入力するが、その際は、デマンド受付処理装置35は、乗車停留所名を利用実績データベース管理装置37に渡す。そして、利用実績データベース管理装置37は、図5に示すような、その乗車停留所と対応する降車停留所の発生頻度順リストである降車停留所一覧表130を、利用実績データベース60から読み出し、デマンド受付処理装置35に返す。オペレータは、降車停留所候補132mを選択することで、降車停留所を指定することで入力処理を行うことができる。こうすることで、デマンド受付処理装置35における降車停留所の入力作業を簡略化できる。
【0052】
<<携帯電話53からのデマンドDMD3を処理する場合>>
携帯電話53からの利用の場合には、CTIによる電話番号情報と固定した場所との対応関係は必ずしも成立しないが、利用者それぞれの行動範囲など特定の傾向は出るため、電話機51からの場合と同様に、発生頻度順乗降車停留所ペアリストを役に立てることができる。動作はデマンドDMD1を処理する場合と同様である。
【0053】
<<受付端末装置52からのデマンドDMD2を処理する場合>>
利用者が多い施設に設置される受付端末装置52では、受付開始要求を出すと、データ通信回線及び通信装置32を介して、デマンド受付処理装置35に開始要求を送信する。この場合は、オペレータを介さず、利用者の受付端末装置52の画面上の操作によってデマンドを送受信する。デマンドDMD3を受信したデマンド受付処理装置35は、まず利用実績データベース管理装置37に受付端末装置52の設置場所情報を伝える。利用実績データベース管理装置37は、受付端末装置52の設置場所の最寄りの乗車停留所から利用された実績のある降車停留所リストを、利用実績データベース60より抽出して、これを発生頻度順にソートし、デマンド受付処理装置35に返す。
【0054】
ここで、抽出した発生頻度順別の乗降車停留所ペアリストが複雑で多すぎる場合には、DMD1の処理の場合と同様、利用実績データベース管理装置37内に設定された内容に従って、利用実績データベース管理装置37は、「月」、「曜日」、「時間帯」、「天候」の少なくとも一つから成る利用条件に基づいて絞込むことができる。逆に少ない場合には、乗車停留所の属する地区の頻出の、入力された乗車停留所に対応する乗降車停留所ペアを相当数抽出し、追加して提示することもできる。この場合は、停留所が属する地区を登録しておく必要がある。
【0055】
デマンド受付処理装置35は通信装置32を介して受付端末装置52に発生頻度順降車停留所リストを送る。この場合、乗車停留所が決まっているので、図5と同様の降車停留所候補一覧表130が画面に表示される。
【0056】
利用者は、そのリストの中に目的地があれば、その項目を選択することで希望降車停留所の入力処理を行い、更に乗車希望時刻を入力する。目的地が降車停留所候補一覧表130にない場合には、停留所名称での検索入力を行なう。
【0057】
降車停留所と乗車希望時刻を入力すると、受付端末装置52から管理センタのデマンド受付処理装置35にそのデータが送信される。デマンド受付処理装置35は乗車停留所を受付端末装置から最寄りの乗車停留所とした受付情報を、運行計画算出装置36に渡す。運行計画算出装置36は、事前の運行計画に新規デマンド需要を加えて、デマンドDMD1を処理する場合と同様に、改訂運行計画を作成し、前記デマンド受付情報に対する可能乗車時刻をデマンド受付処理装置35に返す。デマンド受付処理装置35は、通信装置32を介して受付端末装置52に可能乗車時刻を送信する。
【0058】
これを画面上で確認した利用者が、受付端末装置52に対し操作をした結果、受付端末装置52から受け入れる旨の回答があった場合には受付完了とし、受け入れられない旨の回答があった場合には受付破棄とする。デマンド受付処理装置35は、電話機51からの場合と同様に、受付完了及び受付破棄に関わらず、受付情報を利用実績データベース管理装置37に渡す。利用実績データベース管理装置37は、当該受付情報を、利用実績データベース60に対して反映させる。
【0059】
以上説明したように、本発明の実施形態においては、まず、デマンドの受付時に、乗降車予定停留所の設定作業を簡素化するための候補乗降車停留所情報を、過去のデマンドの累積であるデマンド実績を基にして導出する。次に、候補乗降車停留所情報を基にして、候補乗車停留所及び候補降車停留所を含む受付情報を設定する。
【0060】
続いて、受付情報に基づいて、乗降車予定停留所を含む1以上の乗降車予定停留所を巡る車両の運行計画を自動的に作成する。ここにおいては、既存の運行計画があれば、その運行に新規の受付情報に基づく運行を織り込むようにして、機械化された方法で、運行経路を作成する。また、既存の運行計画がなければ、新規の受付情報に基づく運行が適宜作成される。そして、運行計画通知工程において、更新された運行計画の内容を、車両に対して通知する。車両は、通知された当該運行計画に従って、車両を運行させることになる。
【0061】
よって、このような方法によれば、過去のデマンド実績を用いることで停留所設定を簡素化するとともに、デマンドに基づいた運行計画を自動的に作成することができ、人的資源等を極小化して、簡易にデマンドによる運行を実現することができる。
【0062】
本発明の車両運行情報処理方法では、通知されたアクセス情報を基にして、デマンド実績より、アクセス情報に関連づけられている乗車停留所情報及び降車停留所情報のリストを作成し、候補乗降車停留所情報として提示する。
【0063】
アクセス情報は、一つには電話番号を暗号化したものである。こうすることで、個人情報の保護が図られるからである。また、当該暗号化方法は、後で復元できない方式のものである。
【0064】
本発明の実施形態では、通知された希望乗車停留所を基にして、デマンド実績より、希望乗車停留所である乗車停留所情報に対して関連づけられている降車停留所情報のリストを作成し、候補乗降車停留所情報として提示する。この場合には、希望乗車停留所として指定される停留所が乗車停留所である情報をデマンド実績から読出し、当該乗車停留所に対する降車停留所のリストを提示する。
【0065】
本発明の実施形態では、候補乗降車停留所情報を基に、デマンド実績において登録されている情報であって、月、曜日、時間帯、天候のうち少なくとも一つを含む利用条件情報を更に考慮して作成した利用条件抽出リストを提示することもできる。したがって、デマンド実績からのリストを基に、所定の利用条件データによって曜日や時間帯などが合う場合には2倍または3倍などの重み付けを行い、デマンド受付時の状況に応じてデマンドに合致する蓋然性の高いものを優先的に抽出することができる。
【0066】
本発明の実施形態では、候補乗降車停留所情報は、デマンド実績において、集計された件数が多い順に提示される。これにより、デマンドに合致する蓋然性の高いものを優先的に提示することができる。
【0067】
[実施形態の変形]
なお、上記の本実施形態では、デマンド処理装置33を上述のように各種装置を組み合わせて構成したが、運行計画算出装置36を含む管理センタ30を計算機システムとして構成し、デマンド処理装置33を構成する各種装置の機能をプログラムにより実現することもできる。
【0068】
また、上記の本実施形態では、電話による受付であるデマンドDMD1及びデマンドDMD3の処理はすべてオペレータとの対話によるものとしたが、自動音声応答装置による自動応答方式とすることもできる。あるいは、システム化された画面上の情報提示によって行うこともできる。
【0069】
また、上記の本実施形態では、デマンド受付処理装置35とオペレータの電話機31は1台ずつとしたが、これを複数として、同一建物内ではLAN結合、異なる建物間ではインターネット連携として複数箇所受付方式とすることもできる。なお、その場合には運行計画に矛盾が生じないよう、受付のトランザクション処理が必要である。
【0070】
また、上記の本実施形態では、デマンドは電話や所定の施設に設定された受付端末装置から行われるとしたが、利用者等の情報通信端末装置からなされるとしてもよい。この場合、当該端末からのアクセス情報を基にデマンド処理を行うこともできる。また、特定又は不特定の端末からのデマンドであっても、利用者に対して設定可能なIDとパスワード等の認証情報等により、デマンド処理を行うこともできる。
【0071】
また、上記の本実施形態では、改訂運行計画の作成では、算出に当たっては、停留所間の道路と距離を直接用いるとしたが、停留所と地区との対応表を作成しておき、デマンドを地区毎に集約して処理することもできる。
【0072】
また、上記の本実施形態では、バス20に代表される車両に搭載されるものは携帯電話であるとしたが、携帯電話以外の移動通信端末装置を利用することもできるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の車両運行情報処理方法、車両運行情報処理装置及び車両運行情報処理システムは、デマンドによる車両運行に関する情報処理システムに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態に係るデマンドバスシステムの構成を模式的に示す図である。
【図2】図1のデマンドバスシステムにおける各構成要素の構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】図1のデマンドバスシステムに使用される利用実績データベースのデータ構成を示す図である。
【図4】図1のデマンドバスシステムにおいて提示される、乗降車停留所候補一覧表の構成を示す図である。
【図5】図1のデマンドバスシステムにおいて提示される、降車停留所候補一覧表の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
10…デマンドバスシステム(車両運行情報処理システム)、20…バス(車両)、30…管理センタ(車両運行情報処理装置)、31…電話機、32…通信装置、33…デマンド処理装置、34…送信装置(運行計画通知手段)、35…デマンド受付処理装置(乗降車情報設定手段、デマンド処理手段の一部)、36…運行計画算出装置(デマンド処理手段の一部)、37…利用実績データベース管理装置(候補停留所情報導出手段)、38…記憶装置、39T…入力装置、40D…表示装置、51…電話機、52…受付端末装置、53…携帯電話、60…利用実績データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路網に沿って配置された複数の停留所のうちから選択された希望乗降車停留所及び希望乗車時刻を含むデマンドを利用者から受けて、前記複数の停留所における少なくとも2つを巡る車両の運行情報の作成を行う車両運行情報処理方法であって、
前記デマンドの受付時において、候補乗降車停留所情報を、過去のデマンドの累積であるデマンド実績を基にして導出する候補停留所情報導出工程と;
前記候補停留所情報導出工程において導出された前記候補乗降車停留所情報を提示する候補停留所情報提示工程と;
前記候補乗降車停留所情報提示された前記候補乗降車停留所情報が参照されつつ設定された候補乗車停留所及び候補降車停留所を含む受付デマンド情報に基づいて、前記複数の停留所における2以上の停留所を巡る車両の新たな運行計画を自動的に作成するデマンド処理工程と;
前記デマンド処理工程において作成された前記新たな運行計画を、前記車両に対して通知する運行計画通知工程と;を含む車両運行情報処理方法。
【請求項2】
前記候補停留所情報導出工程では、
前記デマンドの受付時に通知されたアクセス情報を基にして、前記デマンド実績より、前記アクセス情報に関連づけられている乗車停留所情報及び降車停留所情報のリストを作成する、ことを特徴とする請求項1に記載の車両運行情報処理方法。
【請求項3】
前記アクセス情報は、電話番号を暗号化した情報である、ことを特徴とする請求項2に記載の車両運行情報処理方法。
【請求項4】
前記電話番号を暗号化した情報は復号化できない、ことを特徴とする請求項3に記載の車両運行情報処理方法。
【請求項5】
前記候補停留所情報導出工程では、
前記デマンドの受付時に通知された希望乗車停留所を基にして、前記デマンド実績より、前記希望乗車停留所である乗車停留所情報に対して関連づけられている降車停留所情報のリストを作成し、候補乗降車停留所情報として提示する、ことを特徴とする請求項1に記載の車両運行情報処理方法。
【請求項6】
前記候補停留所情報導出工程では、
前記候補乗降車停留所情報の導出に際して、前記デマンド実績において登録されている情報であって、月、曜日、時間帯、天候のうち少なくとも一つを含む利用条件情報を更に考慮する、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両運行情報処理方法。
【請求項7】
候補停留所情報提示工程では、前記候補乗降車停留所情報が、前記デマンド実績において集計された件数が多い順に提示される、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両運行情報処理方法。
【請求項8】
道路網に沿って配置された停留所のうちから選択された希望乗降車停留所及び希望乗車時刻を含むデマンドを利用者から受けて、前記複数の停留所における少なくとも2つを巡る車両の運行情報の作成を行う車両運行情報処理装置であって、
前記デマンドの受付時において、候補乗降車停留所情報を、過去のデマンドの累積であるデマンド実績を基にして導出する候補停留所情報導出手段と;
前記候補乗降車停留所情報を提示する候補停留所情報提示工程と;
前記候補乗降車停留所情報が参照されつつ設定された候補乗車停留所及び候補降車停留所を含む受付デマンド情報に基づいて、前記複数の停留所における2以上の停留所を巡る車両の新たな運行計画を自動的に作成するデマンド処理手段と;
前記新たな運行計画を、前記車両に対して通知する運行計画通知手段と;を備える車両運行情報処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車両運行情報処理装置と;
前記車両運行情報処理装置から無線通信により通知された新たな運行計画に従って、道路網に配置された複数の停留所における2以上の停留所を巡る車両と;を備える車両運行情報処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−249952(P2007−249952A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31863(P2007−31863)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(301032023)株式会社エイブイプランニングセンター (5)
【Fターム(参考)】