説明

車体のアッパーボデー構造

【課題】ルーフへの入力の際、センターピラーの変形開始後はセンターピラーとフロントピラーとで荷重を分担する軽量な車体のアッパーボデー構造を提供する。
【解決手段】車体10が地面Gなどで上方からの荷重を受けた場合、ルーフ16、ルーフサイドレール30が荷重を受けて変形した後に地面Gからの荷重を受ける部位はセンターピラー14の上端部14A、および車体10の車体前方上側の入力箇所11の2点を結ぶ線上に位置する。上端部14Aと入力箇所11とを結ぶ線がディビジョンバー20と交わる点を剛性変曲点21とし、ディビジョンバー20において剛性変曲点21より上側を低剛性部25、下側を高剛性部23とする。剛性変曲点21を境界として車体下側を剛性の高い高剛性部23、車体上側を剛性の低い低剛性部25とする際、剛性変曲点21は、例えば高剛性部23を積層厚さ3.0mm、低剛性部25を積層厚さ1.0mmとすることで設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車体のアッパーボデー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、転倒時などルーフに入力のあった際、構造物の変形で衝撃を吸収し、且つ室内空間を確保するボデー構造が存在する。例えばフロントピラーの一部を薄肉化し他の部位を肉厚化することで、必要な剛性を維持しながら、荷重入力時にはフロントピラーの変形で荷重を吸収し他の部位の変形を防止する構造が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
あるいは変形抑制部材でピラー補強部材の変形を抑制し、ピラーへの入力をルーフボウへ伝達することで、ピラーおよび室内空間の変形を抑えながら入力を吸収する構造が開示されている(例えば、特許文献2参照)。さらにフロントピラーに設けられたピラーレインフォースメントでフロントピラーを補強し、倒れ防止により室内空間を確保する構造が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2001−151148号公報
【特許文献2】特開平10−16816号公報
【特許文献3】特開2005−319846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車体上方からルーフに荷重が入力された際、室内空間を確保するためにはアッパーボデーの変形において、変形量が所定のストロークに達するまでに十分な荷重を発生させる必要があるが、例えば図11に示すF−S特性の場合、破線Aで示すように早期に十分な荷重を立ち上げる場合、すなわちフロントピラーおよび近傍の構造物で荷重を発生させるにはルーフサイドレール、ディビジョンバー、フロントヘッダなどの補強が必要となり、部品の重量増加に繋がる虞がある。
【0005】
あるいは破線Bで示すように、フロントピラーまわりの変形が終了した後にセンターピラーまわりの構造物で十分な荷重を発生させるにはセンターピラーなどの補強が必要となり、同様に部品の重量増加に繋がる虞がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、ルーフへの入力の際、センターピラーの変形開始後はセンターピラーとフロントピラーとで荷重を分担する軽量な車体のアッパーボデー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明における車体のアッパーボデー構造は、強度部材としてフロントピラーの後方にディビジョンバーを備える車体のアッパボデー構造であって、前記ディビジョンバーには、車両上方からの荷重が入力された際に該荷重を支持する車両前端上部とセンターピラー上端部とを結ぶ線が前記ディビジョンバーと交差する箇所に剛性変曲点が設けられ、前記ディビジョンバーにおいて前記剛性変曲点よりも上側の低剛性部は、前記剛性変曲点よりも下側の高剛性部よりも剛性が低いことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、ルーフへの入力でディビジョンバーの剛性変曲点までの低剛性部分とフロントピラーとが変形し、初期荷重が発生したのちにセンターピラーの変形が始まると、ディビジョンバーの剛性変曲点以降の高剛性部分を含むフロントピラーと、センターピラーとが同時に変形することで荷重を分担し、効率よく室内空間を確保することができる。
【0009】
請求項2記載の本発明における車体のアッパーボデー構造は、請求項1記載の構成に於いて前記剛性変曲点の位置は前記ディビジョンバーの積層枚数変更位置であることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、特に追加部品を設けることなくディビジョンバーの剛性変曲点を設定できるので、部品の重量増加を抑えることができ、軽量な車体のアッパーボデー構造とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記構成としたので、ルーフへの入力の際、センターピラーの変形開始後はセンターピラーとフロントピラーとで荷重を分担する軽量な車体のアッパーボデー構造とすることができるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<構成>
【0013】
本発明における車体のアッパーボデー構造の実施形態を図1〜図3に従って説明する。
【0014】
なお、各図面において矢印FRは車体前部方向を、矢印REは車体後方方向を、矢印UPは車体上方方向を、矢印OUTは車幅方向外側を示す。
【0015】
図1〜3には、本発明に係る車体のアッパーボデー構造を備えた車両が示されている。
【0016】
図1〜3に示されるように、車体10は、車体上方に凸となり室内空間を確保したルーフ16と、ルーフ16の車幅方向両端に略車両前後方向に沿って延在するルーフサイドレール30と、このルーフサイドレール30の前端と結合されると共に略車両上下方向に沿って立設されたフロントピラー12と、このルーフサイドレール30と結合されると共に略車両上下方向に沿って立設されたセンターピラー14と、ルーフサイドレール30の前端近傍でシール部材32を介して支持されるウインドシールド40と、ルーフ16の車体前方端でウインドシールド40の上端を支持するフロントヘッダ18と、を含んで構成されている。
【0017】
図2のA−A断面である図3に示すように、アウタパネル22にはディビジョンバー20が車体幅方向内側から沿う形で一体的に接合され、かつルーフサイドレール30と接合され、ウインドシールド40の車幅方向両側および図示しないフロントドア前端近傍の強度を確保する強度部材とされている。
【0018】
ここで車体10が地面などにより上方からの荷重を受けた際に、ルーフ16、ルーフサイドレール30が荷重を受けて変形した後に、センターピラー14の上端部14Aと共に車体前方上側で地面からの荷重を受ける箇所を入力箇所11とする。
【0019】
側面視において上記の上端部14Aと入力箇所11とを結ぶ線がディビジョンバー20と交わる点がディビジョンバー20の剛性変曲点21とされている。このときディビジョンバー20の剛性変曲点21より上側は低剛性部25、下側は低剛性部25よりも剛性の高い高剛性部23とされている。
【0020】
図6に示すように、剛性変曲点21を境界として車体下側を剛性の高い高剛性部23、車体上側を剛性の低い低剛性部25とする際、剛性変曲点21は、例えば高剛性部23を積層枚数により厚さt=3.0mm、低剛性部25を厚さt=1.0mmとすることで設定される。
【0021】
<作用効果>
【0022】
次に本実施形態について詳細に説明する。
【0023】
図5に示すように、車体10が地面Gなどで上方からの荷重を受けた場合、一旦ルーフ16、ルーフサイドレール30が荷重を受けて変形する。その後に地面Gからの荷重を受ける部位は、側面視でセンターピラー14の上端部14A、および車体10の車体前方上側の入力箇所11の2点を結ぶ線上に位置する。より詳細には、図4に示すように、まずルーフ16が変形し、次いでフロントヘッダ18、ルーフサイドレール30が変形することで入力を吸収し、さらに図中にAで示すディビジョンバー20の車体上側に設けられた低剛性部25が変形することで室内空間を確保しながら所定の荷重を発生させる。次いでセンターピラー14が変形することで荷重を発生させる。
【0024】
従来構造との対比で説明すると、図10に示す対比例では地面Gからの入力があった場合、まずルーフサイドレール130、ディビジョンバー120、フロントヘッダ118などのフロントピラー周辺構造物で荷重を発生させている。
【0025】
従来のF−S特性を示す図11に破線Aで示したように、変形初期の段階でフロントピラー周辺の構造物によって所定の荷重を発生させるには早期に荷重を立ち上げる必要があり、これにはまずルーフサイドレール130、ディビジョンバー120、フロントヘッダ118などのフロントピラー周辺構造物の補強が必要なため、重量増加の虞がある。
【0026】
また破線Bで示すようにフロントピラー周辺の構造物が変形を終了したのち、センターピラー周辺の構造物で所定の荷重を発生させるためには、同様にセンターピラー周辺の補強が必要であるため、やはり重量増加の虞がある。
【0027】
そこで本願発明では図6に示すように、センターピラー14の強度部材であるディビジョンバー20を剛性の違いによって2つの部位に区分し、入力時に一旦変形して荷重を発生した後に、再度荷重を発生する構成としている。具体的には剛性変曲点21を境界として車体下側を剛性の高い高剛性部23、車体上側を剛性の低い低剛性部25とする構成とされている。
【0028】
これにより、車体後方向からの断面図である図7に示すように、地面Gからの入力でディビジョンバー20の低剛性部25が変形を終了したのち、再度高剛性部23が変形することでさらに荷重を発生させる。
【0029】
このとき図8に実線で示すF−S特性のように(a)でルーフサイドレール30が変形すると共にディビジョンバー20の低剛性部25が変形し、早期に荷重を発生する。
【0030】
次いで地面Gによる入力がセンターピラー14を変形させるまでストロークが進むと、(b)ではセンターピラー14の変形に合わせてディビジョンバー20の高剛性部23が変形を開始し、センターピラー14と高剛性部23とで荷重を分担することにより、破線で示した従来のセンターピラー14のみの荷重に比較して実線のように荷重を上乗せすることができる。
【0031】
上記のようなF−S特性をアッパーボデー構造に持たせるために、ディビジョンバー20は以下のような段階を経て変形し、荷重を発生する。すなわち、図9に示すように地面Gからの入力があった場合、(A)から(B)へ至る段階では図8のF−S特性グラフ(a)部分でルーフサイドレール30が折れると共にディビジョンバー20の剛性変曲点21より上の低剛性部25が折れ、初期の荷重が発生する。このとき両者は略同時に折れるので、破線で示すような従来例の荷重(c)は発生しない。
【0032】
次いで変形が進み、図9(B)から(C)へと至る段階ではセンターピラー14が地面Gからの入力に対して反力を発生しつつ変形し、荷重を発生する際、低剛性部25が折れたことで一旦は荷重の発生が終了していたディビジョンバー20の、剛性変曲点21よりも下の高剛性部23がセンターピラー14と同時に変形を開始し、図8(b)部分にて荷重を分担する。高剛性部23は低剛性部25よりも剛性が高いため、センターピラー14と同時に荷重を発生し、かつ図8(b)に示すように(低剛性部25と異なり)折れることなく荷重を発生し続ける。
【0033】
これによりセンターピラー14とディビジョンバー20(高剛性部23)の2点で荷重を発生させることが出来、追加部品の設定などを行わずに十分な荷重を発生させることができる。
【0034】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【0035】
すなわち本実施形態ではフロントピラーのディビジョンバーを例に挙げて説明したが、これ以外にも例えば車体後部に設けられるリアピラーなど、車体長さ方向でセンターピラーと並列に設けられる強度部材であれば本発明を適用し、軽量で十分な荷重を発生する構成とすることができる。
【0036】
あるいは低剛性部を積層厚さではなく、その形状や材質で高剛性部よりも低剛性としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態に係るアッパーボデー構造を備える車体を示す斜視図である。
【図2】図1に示されるアッパーボデー構造を拡大して構造を示した測面図である。
【図3】図2に示されるアッパーボデー構造を拡大して構造を示した断面図である。
【図4】従来例および本実施形態に係るアッパーボデー構造に掛かる衝突時荷重の位置を示した図である。
【図5】本実施形態に係るディビジョンバーの剛性変曲点を示した側面図および正面図である。
【図6】本実施形態に係るディビジョンバーの剛性変曲点を示した拡大図である。
【図7】本実施形態に係るアッパーボデー構造の荷重による変形を示した断面図である。
【図8】本実施形態に係るアッパーボデー構造の作用効果を示したグラフである。
【図9】本実施形態に係るアッパーボデー構造の荷重による変形を時系列で示した断面図である。
【図10】従来のアッパーボデー構造の荷重による変形を示した断面図である。
【図11】従来のアッパーボデー構造のF−S特性を示したグラフである。
【符号の説明】
【0038】
10 車体
11 入力箇所
12 フロントピラー
14 センターピラー
14A 上端部
16 ルーフ
18 フロントヘッダ
20 ディビジョンバー
21 剛性変曲点
22 アウタパネル
23 高剛性部
25 低剛性部
30 ルーフサイドレール
32 シール部材
40 ウインドシールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強度部材としてフロントピラーの後方にディビジョンバーを備える車体のアッパボデー構造であって、
前記ディビジョンバーには、車両上方からの荷重が入力された際に該荷重を支持する車両前端上部とセンターピラー上端部とを結ぶ線が前記ディビジョンバーと交差する箇所に剛性変曲点が設けられ、
前記ディビジョンバーにおいて前記剛性変曲点よりも上側の低剛性部は、前記剛性変曲点よりも下側の高剛性部よりも剛性が低いことを特徴とする車体のアッパボデー構造。
【請求項2】
前記剛性変曲点は前記ディビジョンバーの積層枚数変更位置であることを特徴とする請求項1に記載の車体のアッパボデー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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