説明

車体フロア構造

【課題】車両側面衝突時に衝撃荷重が作用してもフロアトンネルにおいて折れを生ずることがない車体フロア構造を提供する。
【解決手段】左右のフロアパネル2L,2R間にフロアトンネル部3を設け、フロアトンネル部3を、車体幅方向に設けた断面コの字状のフロアクロスメンバ6が貫通し、フロアクロスメンバ6は下方が開放した断面形状に形成されて左右のフロアパネル2L,2R上に接合され各フロアパネル2L,2Rとの間に車体幅方向に閉断面構造部13を形成し、フロアトンネル部3の内部において、フロアクロスメンバ6にこのフロアクロスメンバ6の下方から閉塞する蓋部材22を設け、蓋部材22により閉断面構造部13に連続するフロアトンネル下閉断面構造部25を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体フロア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体フロア構造の中には、フロアトンネルを挟んでフロアパネル上のフロアトンネルの両側部に車体幅方向に沿ってクロスメンバを設け、フロアトンネルの内面をレインフォースメントで補強し、レインフォースメントを連結クロスバーで補強する構造が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4032725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の車体フロア構造においては、レインフォースメントによりフロアトンネルを補強でき、フロアトンネルの強度を高めることができるが、車両側面衝突時に車体側部から大きな荷重が作用すると、左右に設けたクロスメンバがフロアトンネルで分断されているため、折れを生じてしまうという課題がある。
【0005】
そこで、この発明は、車両側面衝突時に衝撃荷重が作用してもフロアトンネルにおいて折れを生ずることがない車体フロア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、フロアパネル(例えば、実施形態におけるフロアパネル2)の車体幅方向中央部に車体前後方向に沿ってフロアトンネル部(例えば、実施形態におけるフロアトンネル部3)を設け、前記フロアトンネル部の左右であって左右のサイドシル(例えば、実施形態におけるサイドシル1L,1R)との間に各々左右のフロアパネル(例えば、実施形態におけるフロアパネル2L,2R)を配置し、前記フロアトンネル部を、車体幅方向に設けた断面コの字状のフロアクロスメンバ(例えば、実施形態におけるフロアクロスメンバ6)が貫通し、前記フロアクロスメンバは下方が開放した断面形状に形成されて前記左右のフロアパネル上に接合され各フロアパネルとの間に車体幅方向に閉断面構造部(例えば、実施形態における閉断面構造部13)を形成し、前記フロアトンネル部の内部において、前記フロアクロスメンバにこのフロアクロスメンバの下方から閉塞する蓋部材(例えば、実施形態における蓋部材22)を設け、この蓋部材により前記閉断面構造部に連続するフロアトンネル下閉断面構造部(例えば、実施形態におけるフロアトンネル下閉断面構造部25)を形成したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載した発明は、前記フロアトンネル部を欠損部(例えば、実施形態における欠損部7)により前フロアトンネル部(例えば、実施形態における前フロアトンネル部8)と後フロアトンネル部(例えば、実施形態における後フロアトンネル部9)とに分割し、前記欠損部に前記フロアクロスメンバを通過させ、前記欠損部をトンネル連結部材(例えば、実施形態におけるトンネル連結部材16)により閉塞して前フロアトンネル部と後フロアトンネル部とを連結したことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載した発明は、前記フロアクロスメンバを左右メンバ部(例えば、実施形態における左メンバ部60、右メンバ部61)と前記フロアトンネル部を横切るトンネルメンバ部(例えば、実施形態におけるトンネルメンバ部62)とに分割構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載した発明は、前記トンネルメンバ部を前記フロアパネルよりも高強度材によって形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載した発明は、前記トンネルメンバ部をフロアトンネル部の側壁よりも外側に延長したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載した発明によれば、フロアトンネル部をフロアクロスメンバが貫通することにより、車両側面衝突時において作用する荷重に対してフロアクロスメンバに折れが生じないようにし、衝撃荷重による入力を曲げモーメントを生じさせることなく、車体幅方向に形成された閉断面構造部により強度的に有利な座屈方向で対抗させる。
請求項2に記載した発明によれば、フロアクロスメンバによって形成された閉断面構造部を左右のサイドシル間にフロアトンネル部を跨いで形成することができる。
請求項3に記載された発明によれば、トンネルメンバ部の材質、板厚として左右メンバ部の材質、板厚よりも強度的に有利なものを選択できる。
請求項4に記載した発明によれば、車両側面衝突時においてフロアクロスメンバにおいて最も曲げのたわみが大きくなる中央部を高強度のトンネルメンバ部で受けることができるため、車両側面衝突時のフロアクロスメンバの折れを確実に防止することができる。
請求項5に記載された発明によれば、フロアクロスメンバの折れをより一層確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施形態の平面図である。
【図2】図1の要部斜視図である。
【図3】図1のフロアパネルを取り外した状態で下から見た斜視図である。
【図4】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図5】図3のB−B線に沿う断面図である。
【図6】図2のC−C線に沿う断面図である。
【図7】この発明の第2実施形態の図3に相当する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図6はこの発明の第1実施形態を示している。
図1に示すように、自動車の左右両側部には車体前後方向に沿って左右のサイドシル1L,1Rが設けられ、図2にも示すように、左右のサイドシル1L,1Rに各々左右のフロアパネル2L,2R(総称してフロアパネル2ともいう)の外側縁が接合されている。左右のフロアパネル2L,2R間には車体幅方向中央部に車体前後方向に沿ってフロアトンネル部3が設けられている。ここで、図中「FR」は車体前側を示す。
【0014】
フロアトンネル部3は上に凸となり下方が開放された部材であって、左側壁4Lと右側壁4Rの下縁に各々設けたフランジ5が左右のフロアパネル2L,2Rの内側縁に接合されている。フロアトンネル部3にはフロアクロスメンバ6が貫通して設けられている。
具体的には、フロアトンネル部3は欠損部7により前フロアトンネル部8と後フロアトンネル部9とに分割構成され、この欠損部7に車体幅方向に設けた断面コの字状のフロアクロスメンバ6を通過させている。
【0015】
フロアクロスメンバ6は上壁部24と前壁部10と後壁部11とにより下方が開放した断面形状に形成され、前壁部10と後壁部11の下縁に設けたフランジ部12,12が左右のフロアパネル2L,2R上に接合され各フロアパネル2L,2Rとの間に車体幅方向に沿う閉断面構造部13を形成している(図4参照)。フロアクロスメンバ6の両端部はサイドシル1L,1Rの内側壁に接合されている。
【0016】
左右のフロアパネル2L,2Rには各々フロアクロスメンバ6の前側に車体前後方向に沿って前フロアフレーム14が、フロアクロスメンバ6の後側に各前フロアフレーム14に連続する位置に後フロアフレーム15が接合されている。後フロアフレーム15は平面視で外側に屈曲して各々左右のサイドシル1L,1Rに接続されている。前フロアフレーム14も後フロアフレーム15も左右のフロアパネル2L,2Rとの間に閉断面構造を形成している。前フロアフレーム14の後端部はフロアクロスメンバ6の前壁部10に接合され、後フロアフレーム15の前端部はフロアクロスメンバ6の後壁部11に接合されている。
【0017】
前フロアトンネル部8と後フロアトンネル部9とは欠損部7を閉塞するトンネル連結部材16により連結されている。トンネル連結部材16はフロアクロスメンバ6の上壁部24を覆い、トンネル連結部材16の両側部ではフロアクロスメンバ6の前壁部10、後壁部11をも覆うように車体側部に向かって外側に延びて取り付けられている。トンネル連結部材16の前縁17と後縁18は前フロアトンネル部8の後縁部19と後フロアトンネル部9の前縁部20に接合され、トンネル連結部材16の両側縁部21はフロアクロスメンバ6の上壁部24及び前壁部10、後壁部11に接合されている。
【0018】
図3に示すように、フロアトンネル部3の内部には、フロアクロスメンバ6の下方を閉塞する蓋部材22がフロアクロスメンバ6に取り付けられている。具体的には図5に示すように、前後に設けた下向きの接合フランジ23,23を各々フロアトンネル部3の前壁部10と後壁部11の裏面に接合してフロアトンネル下閉断面構造部25を形成している。
したがって、このフロアトンネル下閉断面構造部25は左右のフロアパネル2L,2Rとフロアクロスメンバ6とで形成された閉断面構造部13(図4参照)に連続して左右のサイドシル1L,1Rを繋ぐ骨格部材となる。
【0019】
図6に示すように、フロアトンネル部3の下方に位置するフロアクロスメンバ6の下方にはエキゾーストパイプ26が配索され、このエキゾーストパイプ26と干渉しない位置にフロアクロスメンバ6が配置されている。
【0020】
上記実施形態によれば、フロアトンネル部3をフロアクロスメンバ6が貫通することにより、車両側面衝突時においてサイドシル1L,1Rから荷重が作用しても車体幅方向に連続して形成された閉断面構造部13とフロアトンネル下閉断面構造部25とにより、フロアクロスメンバ6に折れが生じないようにできる。したがって、曲げモーメントの発生を防止し、衝撃荷重に対して閉断面構造部13とフロアトンネル下閉断面構造部25とが強度的に有利な座屈方向で対抗し車体全体で衝撃荷重を受けることができる。
【0021】
とりわけ、フロアクロスメンバ6によって形成された一連の閉断面構造部13とフロアトンネル下閉断面構造部25を左右のサイドシル1L,1R間にフロアトンネル部3を跨いで形成することができるため、車両側面衝突時に作用する衝撃荷重をフロアパネル2を含めた車体床面全体、つまりフロアオアネル2に接続された車体部材を介して車体全体で受けることができる。したがって、各部の板材の肉厚を増加したり、特別な材質を用いることなく側面衝突に対する強度剛性を高めることができる。
【0022】
また、蓋部材22は下向きの接合フランジ23,23をフロアトンネル部3の下のフロアクロスメンバ6の内部に接合して取り付けられているため、車両側面衝突時においてフロアクロスメンバ6が下向きに凸となるようなモーメントが作用した場合に、接合フランジ23,23とフロアクロスメンバ6との接合部に強度的に有利な剪断方向の力として受けることができるので、フロアクロスメンバ6による折れ防止機能を最大限に発揮することができる。
【0023】
次に、この発明の第2実施形態を図1〜図5を援用し図7に基づいて説明する。尚、以下の説明において、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
【0024】
この実施形態は、第1実施形態におけるフロアクロスメンバ6を左右のメンバ部60,61と前記フロアトンネル部3を横切るトンネルメンバ部62とに分割構成している。トンネルメンバ部62は左右のフロアパネル2L,2Rよりも高強度な部材により形成され、かつトンネルメンバ部62はフロアトンネル部3の左側壁4Lと右側壁4Rの配置位置よりも外側に端部63を延長している。この端部63の近傍でフロアトンネル部3の左側壁4Lと右側壁4Rの配置位置よりも外側に蓋部材22が接合され、蓋部材22とトンネルメンバ部62とで囲まれた空間にフロアトンネル下閉断面構造部25が形成されている。ここで、蓋部材22が取り付けられているフロアクロスメンバ6の後壁部11の下縁にはフランジ部12は設けられていない。
【0025】
尚、トンネルメンバ部62はフロアトンネル部3の左側壁4Lと右側壁4Rの配置位置よりも外側に端部63を延長している場合には、メンバ部60,61と同様の材質、板厚の部材で形成してもよい。
【0026】
第2実施形態によれば、上記第1実施形態の効果に加え、フロアクロスメンバ6を左右のメンバ部60,61とフロアトンネル部3を横切るトンネルメンバ部62とに分割構成したため、トンネルメンバ部62の材質、板厚として左右メンバ部60,61の材質、板厚よりも強度的に有利なものを選択できるため、設定の自由度を高められる。
【0027】
とりわけ、車両側面衝突時においてフロアクロスメンバ6が最も曲げのたわみが大きくなる中央部で大きく撓もうとする傾向にあるが、この中央部を高強度のトンネルメンバ部62で受けることができるため、車両側面衝突時のフロアクロスメンバ6の折れを確実に防止することができる。
特に、トンネルメンバ部62はフロアトンネル部3の左側壁4Lと右側壁4Rの配置位置よりも外側に端部を延長しているため、撓み難い部分をより長く確保できフロアクロスメンバ6の折れをより一層確実に防止することができる。
【0028】
尚、この発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、車体の種類に応じて蓋部材の板厚や材質を変更する等自由に設定することができる。
【符号の説明】
【0029】
1L 左サイドシル
1R 右サイドシル
2 フロアパネル
2L 左フロアパネル
2R 右フロアパネル
3 フロアトンネル部
6 フロアクロスメンバ
7 欠損部
8 前フロアトンネル部
9 後フロアトンネル部
13 閉断面構造部
16 トンネル連結部材
22 蓋部材
25 フロアトンネル下閉断面構造部
60 左メンバ部
61 右メンバ部
62 トンネルメンバ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの車体幅方向中央部に車体前後方向に沿ってフロアトンネル部を設け、前記フロアトンネル部の左右であって左右のサイドシルとの間に各々左右のフロアパネルを配置し、前記フロアトンネル部を、車体幅方向に設けた断面コの字状のフロアクロスメンバが貫通し、前記フロアクロスメンバは下方が開放した断面形状に形成されて前記左右のフロアパネル上に接合され各フロアパネルとの間に車体幅方向に閉断面構造部を形成し、前記フロアトンネル部の内部において、前記フロアクロスメンバにこのフロアクロスメンバの下方から閉塞する蓋部材を設け、この蓋部材により前記閉断面構造部に連続するフロアトンネル下閉断面構造部を形成したことを特徴とする車体フロア構造。
【請求項2】
前記フロアトンネル部を欠損部により前フロアトンネル部と後フロアトンネル部とに分割し、前記欠損部に前記フロアクロスメンバを通過させ、前記欠損部をトンネル連結部材により閉塞して前フロアトンネル部と後フロアトンネル部とを連結したことを特徴とする請求項1記載の車体フロア構造。
【請求項3】
前記フロアクロスメンバを左右メンバ部と前記フロアトンネル部を横切るトンネルメンバ部とに分割構成したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の車体フロア構造。
【請求項4】
前記トンネルメンバ部を前記フロアパネルよりも高強度材によって形成したことを特徴とする請求項3の何れかに記載の車体フロア構造。
【請求項5】
前記トンネルメンバ部をフロアトンネル部の側壁よりも外側に延長したことを特徴とする請求項3又は請求項4記載の車体フロア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−183893(P2011−183893A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49612(P2010−49612)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】