車体前部構造
【課題】着座した乗員の足元近傍のスペースを確保しつつ、前面衝突時におけるダッシュパネルの後退を抑制することができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車室内の前端に配設されると共に、所定大きさの開口部17が設けられたダッシュパネル1と、該ダッシュパネル1の下端部1aから車両後方に延びるフロアパネル3と、前記ダッシュパネル1の開口部17近傍におけるフロアパネル3の部位に配設されて車両前後方向に延びる帯状の補強パネル11とを備えた車体前部構造である。
【解決手段】車室内の前端に配設されると共に、所定大きさの開口部17が設けられたダッシュパネル1と、該ダッシュパネル1の下端部1aから車両後方に延びるフロアパネル3と、前記ダッシュパネル1の開口部17近傍におけるフロアパネル3の部位に配設されて車両前後方向に延びる帯状の補強パネル11とを備えた車体前部構造である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関し、更に詳しくは、ダッシュパネルの開口部近傍に配設されたフロアパネルの補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車体前部構造としては、車室内の前端に配設されて、左右のフロントピラー同士を車幅方向に連結するダッシュクロスメンバと、前端がダッシュクロスメンバに接続されて車両後方に延びるフロアトンネルと、該フロアトンネルの左右両側に所定間隔をおいて前後方向に延びる左右一対のサイドシルと、これらのフロアトンネルおよびサイドシルを車幅方向に連結するクロスメンバとによって構成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載された車体構造では、車体前部に後方に向かう荷重が入力された場合に、前記ダッシュクロスメンバからフロアトンネルを介して前記クロスメンバに伝達されたのち、サイドシルに伝わる。
【特許文献1】特開2004−284532号公報(第6頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車体前部構造では、着座した乗員の足元近傍のフロアパネル上に前記クロスメンバが配設されているため、足元のスペースが縮小し、ブレーキペダルやアクセルペダル等の操作性が低下するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、着座した乗員の足元近傍のスペースを確保しつつ、前面衝突時におけるダッシュパネルの後退を抑制することができる車体前部構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車体前部構造は、車室内の前端に、所定大きさの開口部を有するダッシュパネルを設け、該ダッシュパネルの下端部から車両後方に延びるフロアパネルを設け、前記ダッシュパネルの開口部近傍におけるフロアパネルの部位に、車両前後方向に延びる帯状の補強部材を配設したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車体前部構造によれば、フロアパネルに帯状の補強部材を配設しており、該補強部材は車室内に突出する高さが低いため、乗員の足元近傍のスペースが狭まることが抑制されると共に、前面衝突時におけるダッシュパネルの後退量を抑制することができる。
【0008】
また、補強部材は、ダッシュパネルの開口部近傍におけるフロアパネルの部位に設けられているため、ダッシュパネルの剛性が低い部位である開口部近傍を確実に補強することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0010】
図1〜図4は本発明にかかる車体前部構造の一実施形態を示し、図1は本発明の実施形態による車体前部を示す斜視図、図2は図1のA−A線による断面図、図3は図1のB−B線による断面図、および図4は本発明の実施形態による補強パネルを示す斜視図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態による車室内の前部には、車幅方向に亘って配置され、上下方向に延設されたダッシュパネル1と、その前端部がダッシュパネル1の下端部1aに接合され、このダッシュパネル1の下端部1aから車両後方に延設されたフロアパネル3と、ダッシュパネル1の車幅方向中央から車両後方に延びるセンターフロアパネル5と、該センターフロアパネル5の上面5aを覆うように配設されたアッパーパネル7と、前記フロアパネル3の上面に設けられ、車両前後方向に延びる床上メンバ9と、車両右側に配置されたフロアパネル3の上面に、前記センターフロアパネル5および床上メンバ9の間に配設された補強部材である断面が略ハット状の補強パネル11と、フロアパネル3の側端に設けられて車両前後方向に延びるサイドシル13と、これらのサイドシル13とセンターフロアパネル5を車幅方向に連結するクロスメンバ15とを備えている。
【0012】
前記ダッシュパネル1は、車室内の前端に配設されており、車両右側の下部に所定大きさの開口部17が形成されている。また、図3に示すように、フロアパネル3の前端部は前方斜め上方になだらかに湾曲した断面略J字状に形成されており、その前端部3aはダッシュパネル1の下端部1aの上に接合されている。
【0013】
前記補強パネル11は、図2〜図4に示すように、車両右側のフロアパネル3の前端部に配設され前後方向に沿って延設された帯状の部材であり、車幅方向に所定間隔をおいて前後方向に延びる左右一対の凸面19,21と、左右の凸面19,21の間に配置されて前後方向に沿って延びる凹面23とが形成されている。即ち、前記凸面19,21は、図2に示すように上側に突出して形成され、凹面23は下側に凹んで形成されている。また、補強パネル11の車内側、後方側および車外側の外周には、前記凸面19,21を囲むようにフランジ25,27が形成されている。このフランジ25,27がフロアパネル3の上面に接合されることによって、補強パネル11がフロアパネル3に固定される。なお、凹面23には、前後に貫通孔49,51が穿設されている。
【0014】
前記フロアトンネル29は、図2に示すように、センターフロアパネル5とセンターフロアパネル5の上面を覆うように配設されたアッパーパネル7とから構成されている。センターフロアパネル5の下端部は、フロアパネル3よりも下側に突出する凹部31に形成され、該凹部31を前記フロアパネル3で覆うことによって、これらのフロアパネル3とセンターフロアパネル5とで断面略矩形状の第1閉断面部33が形成されている。このように、フロアトンネル29の下部に第1閉断面部33が形成されている。
【0015】
また、前記補強パネル11の車両右側には、上方に凸の断面略ハット状に形成された床上メンバ9が配設されている。この床上メンバ9の左側のフランジ35は、補強パネル11の右側のフランジ27の上に載置されて取り付けられている。床上メンバ9の下方には、フロアパネル3を挟んで床下メンバ37が下方に突出して配設されている。この床下メンバ37は、上側の第1メンバ39と下側の第2メンバ41とから構成されており、これらの上側の第1メンバ39、下側の第2メンバ41とフロアパネル3とによって第2閉断面部43が形成されている。そして、前記第1閉断面部33と第2閉断面部43とはフロアパネル3と補強パネル11によって連結されている。
【0016】
具体的には、第1閉断面部33を構成するセンターフロアパネル5の車外側端部に配置されたフランジ45と、補強パネル11の車内側端部に配置されたフランジ25と、でフロアパネル3を挟み込むように構成されている。前記第2閉断面部43を構成する第1メンバ39の車内側の端部に配置されたフランジ47と、補強パネル11の車外側端部に配置されたフランジ27と、でフロアパネル3を挟み込むように構成されている。なお、第2メンバ41の右側には、エクステンションパネル53が接合されている。
【0017】
以下に、本発明の実施形態による作用効果を説明する。
(1)車室内の前端に配設されると共に、所定大きさの開口部17が設けられたダッシュパネル1と、該ダッシュパネル1の下端部1aから車両後方に延びるフロアパネル3と、前記ダッシュパネル1の開口部17近傍におけるフロアパネル3の部位に配設されて車両前後方向に延びる帯状の補強部材である補強パネル11とを備えている。
【0018】
このように、フロアパネル3に帯状の補強パネル11を配設しており、該補強パネル11は車室内に突出する高さが低いため、乗員の足元近傍のスペースが狭まることが抑制されると共に、前面衝突時におけるダッシュパネル1の後退量を抑制することができる。また、前面衝突時においては、フロアトンネル29が左右に開くことを効果的に防止することができ、側面衝突時および前面衝突時に、剛性が低い開口部17の周辺部分から変形することを効果的に抑制することができる。
【0019】
(2)前記補強パネル11は、車幅方向に沿った断面形状が略ハット状に形成され、上方に向けて凸状に形成された左右一対の凸面19,21と、これらの凸面同士19,21の間に配置されて下方に向けて凹状に形成された凹面23とから一体に形成され、前記凸面19,21および凹面23は車両前後方向に沿って延設されている。
【0020】
このように、凸面19,21および凹面23の組合せによって補強パネル11の剛性を効率的に向上させることができる。
【0021】
(3)車両前後方向に延びるフロアトンネル29の下部に下方に凹む凹部31が設けられ、該凹部31がフロアパネル3で覆われることによって前記フロアトンネル29の下部に第1閉断面部33が形成される一方、前記補強パネル11の車幅方向外側におけるフロアパネル3の下部に、下方に突出する床下メンバ37とフロアパネル3によって第2閉断面部43が設けられ、これらの第1閉断面部33と第2閉断面部43とを前記補強パネル11を介して連結している。
【0022】
このように、2つの閉断面部33,43をフロアパネル3と前記補強パネル11を介して連結することにより、車体の床面の剛性をさらに高めることができる。
【実施例】
【0023】
次いで、本実施形態による補強パネル11を配設した車両と、この補強パネル11を配設しない比較例に係る車両とで、衝突実験を行った結果を簡単に説明する。
【0024】
図5は本発明の実施形態による補強パネルを配設した車両について比較的小さな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す平面図、および、図6は図5に対応する比較例の概略図であり、補強パネルを配設しない車両について比較的小さな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す平面図である。なお、本発明の内容を明瞭にするため、補強パネル近傍における荷重分布のみを示すこととする。
【0025】
図5に示すように、比較的小さい荷重で前面衝突が生じた場合には、ダッシュパネル1の前後位置はあまり変化せず、補強パネル11近傍には衝突荷重による応力分布S1があまりみられなかった。一方、図6に示すように、補強パネル11を配設しない車両では、フロアパネル3の前端部に衝突荷重が伝達されて、床上メンバ9、クロスメンバ15およびセンターフロアパネル5で囲まれた部位に大きな応力分布S2がされることが判明した。
【0026】
また、図7は本発明の実施形態による補強パネルを配設した車両について比較的大きな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す平面図、図8は図7に対応する比較例の概略図であり、補強パネルを配設しない車両について比較的大きな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す平面図である。
【0027】
図7に示すように、比較的大きな衝突荷重を受けた場合においても、補強パネル11近傍およびフロアトンネル29には衝突荷重があまり伝達されず、応力分布S3が小さい範囲でのみみられた。一方、図8に示すように、補強パネル11を配設しない車両では、フロアパネル3の前端部およびフロアトンネル29に衝突荷重が伝達されて広い範囲での応力分布S4がみられ、従って、フロアトンネル29が車幅方向に開きやすくなることが判明した。
【0028】
また、図9は本発明の実施形態による補強パネルを配設した車両について比較的大きな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す斜視図、図10は図9に対応する比較例の概略図であり、補強パネルを配設しない車両について比較的大きな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す斜視図である。
【0029】
図9に示すように、比較的大きな衝突荷重を受けた場合においても、補強パネル11近傍および床上メンバ9には衝突荷重があまり伝達されず、応力分布S5もあまり大きくなかった。一方、図10に示すように、補強パネル11を配設しない車両では、フロアパネル3の前端部および床上メンバ9に衝突荷重が伝達されて大きな応力分布S6がみられ、従って、床上メンバ9が前後方向途中で折れやすくなることが判明した。
【0030】
また、図11は本発明の実施形態による補強パネルを配設した車両について側面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す斜視図、および、図12は図11に対応する比較例の概略図であり、補強パネルを配設しない車両について側面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す斜視図である。
【0031】
このように、側面衝突が生じた場合においても、本実施形態による補強パネル11を設けた場合には、補強パネル11近傍に衝突荷重がほとんど伝達されず小さな応力分布S7となり、補強パネル11を配設しない場合には、フロアパネル3前端部に衝突荷重が伝達されて大きくかつ広い範囲での応力分布S8がみられることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態による車体前部を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線による断面図である。
【図3】図1のB−B線による断面図である。
【図4】本発明の実施形態による補強パネルを示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態による補強パネルを配設した車両について比較的小さな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す平面図である。
【図6】図5に対応する比較例の概略図であり、補強パネルを配設しない車両について比較的小さな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す平面図である。
【図7】本発明の実施形態による補強パネルを配設した車両について比較的大きな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す平面図である。
【図8】図7に対応する比較例の概略図であり、補強パネルを配設しない車両について比較的大きな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す平面図である。
【図9】本発明の実施形態による補強パネルを配設した車両について比較的大きな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す斜視図である。
【図10】図9に対応する比較例の概略図であり、補強パネルを配設しない車両について比較的大きな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す斜視図である。
【図11】本発明の実施形態による補強パネルを配設した車両について側面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す斜視図である。
【図12】図11に対応する比較例の概略図であり、補強パネルを配設しない車両について側面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1…ダッシュパネル
3…フロアパネル
11…補強パネル(補強部材)
17…開口部
19,21…凸面
23…凹面
29…フロアトンネル
31…凹部
33…第1閉断面部
35…フランジ
37…床下メンバ
43…第2閉断面部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関し、更に詳しくは、ダッシュパネルの開口部近傍に配設されたフロアパネルの補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車体前部構造としては、車室内の前端に配設されて、左右のフロントピラー同士を車幅方向に連結するダッシュクロスメンバと、前端がダッシュクロスメンバに接続されて車両後方に延びるフロアトンネルと、該フロアトンネルの左右両側に所定間隔をおいて前後方向に延びる左右一対のサイドシルと、これらのフロアトンネルおよびサイドシルを車幅方向に連結するクロスメンバとによって構成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載された車体構造では、車体前部に後方に向かう荷重が入力された場合に、前記ダッシュクロスメンバからフロアトンネルを介して前記クロスメンバに伝達されたのち、サイドシルに伝わる。
【特許文献1】特開2004−284532号公報(第6頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車体前部構造では、着座した乗員の足元近傍のフロアパネル上に前記クロスメンバが配設されているため、足元のスペースが縮小し、ブレーキペダルやアクセルペダル等の操作性が低下するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、着座した乗員の足元近傍のスペースを確保しつつ、前面衝突時におけるダッシュパネルの後退を抑制することができる車体前部構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車体前部構造は、車室内の前端に、所定大きさの開口部を有するダッシュパネルを設け、該ダッシュパネルの下端部から車両後方に延びるフロアパネルを設け、前記ダッシュパネルの開口部近傍におけるフロアパネルの部位に、車両前後方向に延びる帯状の補強部材を配設したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車体前部構造によれば、フロアパネルに帯状の補強部材を配設しており、該補強部材は車室内に突出する高さが低いため、乗員の足元近傍のスペースが狭まることが抑制されると共に、前面衝突時におけるダッシュパネルの後退量を抑制することができる。
【0008】
また、補強部材は、ダッシュパネルの開口部近傍におけるフロアパネルの部位に設けられているため、ダッシュパネルの剛性が低い部位である開口部近傍を確実に補強することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0010】
図1〜図4は本発明にかかる車体前部構造の一実施形態を示し、図1は本発明の実施形態による車体前部を示す斜視図、図2は図1のA−A線による断面図、図3は図1のB−B線による断面図、および図4は本発明の実施形態による補強パネルを示す斜視図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態による車室内の前部には、車幅方向に亘って配置され、上下方向に延設されたダッシュパネル1と、その前端部がダッシュパネル1の下端部1aに接合され、このダッシュパネル1の下端部1aから車両後方に延設されたフロアパネル3と、ダッシュパネル1の車幅方向中央から車両後方に延びるセンターフロアパネル5と、該センターフロアパネル5の上面5aを覆うように配設されたアッパーパネル7と、前記フロアパネル3の上面に設けられ、車両前後方向に延びる床上メンバ9と、車両右側に配置されたフロアパネル3の上面に、前記センターフロアパネル5および床上メンバ9の間に配設された補強部材である断面が略ハット状の補強パネル11と、フロアパネル3の側端に設けられて車両前後方向に延びるサイドシル13と、これらのサイドシル13とセンターフロアパネル5を車幅方向に連結するクロスメンバ15とを備えている。
【0012】
前記ダッシュパネル1は、車室内の前端に配設されており、車両右側の下部に所定大きさの開口部17が形成されている。また、図3に示すように、フロアパネル3の前端部は前方斜め上方になだらかに湾曲した断面略J字状に形成されており、その前端部3aはダッシュパネル1の下端部1aの上に接合されている。
【0013】
前記補強パネル11は、図2〜図4に示すように、車両右側のフロアパネル3の前端部に配設され前後方向に沿って延設された帯状の部材であり、車幅方向に所定間隔をおいて前後方向に延びる左右一対の凸面19,21と、左右の凸面19,21の間に配置されて前後方向に沿って延びる凹面23とが形成されている。即ち、前記凸面19,21は、図2に示すように上側に突出して形成され、凹面23は下側に凹んで形成されている。また、補強パネル11の車内側、後方側および車外側の外周には、前記凸面19,21を囲むようにフランジ25,27が形成されている。このフランジ25,27がフロアパネル3の上面に接合されることによって、補強パネル11がフロアパネル3に固定される。なお、凹面23には、前後に貫通孔49,51が穿設されている。
【0014】
前記フロアトンネル29は、図2に示すように、センターフロアパネル5とセンターフロアパネル5の上面を覆うように配設されたアッパーパネル7とから構成されている。センターフロアパネル5の下端部は、フロアパネル3よりも下側に突出する凹部31に形成され、該凹部31を前記フロアパネル3で覆うことによって、これらのフロアパネル3とセンターフロアパネル5とで断面略矩形状の第1閉断面部33が形成されている。このように、フロアトンネル29の下部に第1閉断面部33が形成されている。
【0015】
また、前記補強パネル11の車両右側には、上方に凸の断面略ハット状に形成された床上メンバ9が配設されている。この床上メンバ9の左側のフランジ35は、補強パネル11の右側のフランジ27の上に載置されて取り付けられている。床上メンバ9の下方には、フロアパネル3を挟んで床下メンバ37が下方に突出して配設されている。この床下メンバ37は、上側の第1メンバ39と下側の第2メンバ41とから構成されており、これらの上側の第1メンバ39、下側の第2メンバ41とフロアパネル3とによって第2閉断面部43が形成されている。そして、前記第1閉断面部33と第2閉断面部43とはフロアパネル3と補強パネル11によって連結されている。
【0016】
具体的には、第1閉断面部33を構成するセンターフロアパネル5の車外側端部に配置されたフランジ45と、補強パネル11の車内側端部に配置されたフランジ25と、でフロアパネル3を挟み込むように構成されている。前記第2閉断面部43を構成する第1メンバ39の車内側の端部に配置されたフランジ47と、補強パネル11の車外側端部に配置されたフランジ27と、でフロアパネル3を挟み込むように構成されている。なお、第2メンバ41の右側には、エクステンションパネル53が接合されている。
【0017】
以下に、本発明の実施形態による作用効果を説明する。
(1)車室内の前端に配設されると共に、所定大きさの開口部17が設けられたダッシュパネル1と、該ダッシュパネル1の下端部1aから車両後方に延びるフロアパネル3と、前記ダッシュパネル1の開口部17近傍におけるフロアパネル3の部位に配設されて車両前後方向に延びる帯状の補強部材である補強パネル11とを備えている。
【0018】
このように、フロアパネル3に帯状の補強パネル11を配設しており、該補強パネル11は車室内に突出する高さが低いため、乗員の足元近傍のスペースが狭まることが抑制されると共に、前面衝突時におけるダッシュパネル1の後退量を抑制することができる。また、前面衝突時においては、フロアトンネル29が左右に開くことを効果的に防止することができ、側面衝突時および前面衝突時に、剛性が低い開口部17の周辺部分から変形することを効果的に抑制することができる。
【0019】
(2)前記補強パネル11は、車幅方向に沿った断面形状が略ハット状に形成され、上方に向けて凸状に形成された左右一対の凸面19,21と、これらの凸面同士19,21の間に配置されて下方に向けて凹状に形成された凹面23とから一体に形成され、前記凸面19,21および凹面23は車両前後方向に沿って延設されている。
【0020】
このように、凸面19,21および凹面23の組合せによって補強パネル11の剛性を効率的に向上させることができる。
【0021】
(3)車両前後方向に延びるフロアトンネル29の下部に下方に凹む凹部31が設けられ、該凹部31がフロアパネル3で覆われることによって前記フロアトンネル29の下部に第1閉断面部33が形成される一方、前記補強パネル11の車幅方向外側におけるフロアパネル3の下部に、下方に突出する床下メンバ37とフロアパネル3によって第2閉断面部43が設けられ、これらの第1閉断面部33と第2閉断面部43とを前記補強パネル11を介して連結している。
【0022】
このように、2つの閉断面部33,43をフロアパネル3と前記補強パネル11を介して連結することにより、車体の床面の剛性をさらに高めることができる。
【実施例】
【0023】
次いで、本実施形態による補強パネル11を配設した車両と、この補強パネル11を配設しない比較例に係る車両とで、衝突実験を行った結果を簡単に説明する。
【0024】
図5は本発明の実施形態による補強パネルを配設した車両について比較的小さな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す平面図、および、図6は図5に対応する比較例の概略図であり、補強パネルを配設しない車両について比較的小さな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す平面図である。なお、本発明の内容を明瞭にするため、補強パネル近傍における荷重分布のみを示すこととする。
【0025】
図5に示すように、比較的小さい荷重で前面衝突が生じた場合には、ダッシュパネル1の前後位置はあまり変化せず、補強パネル11近傍には衝突荷重による応力分布S1があまりみられなかった。一方、図6に示すように、補強パネル11を配設しない車両では、フロアパネル3の前端部に衝突荷重が伝達されて、床上メンバ9、クロスメンバ15およびセンターフロアパネル5で囲まれた部位に大きな応力分布S2がされることが判明した。
【0026】
また、図7は本発明の実施形態による補強パネルを配設した車両について比較的大きな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す平面図、図8は図7に対応する比較例の概略図であり、補強パネルを配設しない車両について比較的大きな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す平面図である。
【0027】
図7に示すように、比較的大きな衝突荷重を受けた場合においても、補強パネル11近傍およびフロアトンネル29には衝突荷重があまり伝達されず、応力分布S3が小さい範囲でのみみられた。一方、図8に示すように、補強パネル11を配設しない車両では、フロアパネル3の前端部およびフロアトンネル29に衝突荷重が伝達されて広い範囲での応力分布S4がみられ、従って、フロアトンネル29が車幅方向に開きやすくなることが判明した。
【0028】
また、図9は本発明の実施形態による補強パネルを配設した車両について比較的大きな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す斜視図、図10は図9に対応する比較例の概略図であり、補強パネルを配設しない車両について比較的大きな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す斜視図である。
【0029】
図9に示すように、比較的大きな衝突荷重を受けた場合においても、補強パネル11近傍および床上メンバ9には衝突荷重があまり伝達されず、応力分布S5もあまり大きくなかった。一方、図10に示すように、補強パネル11を配設しない車両では、フロアパネル3の前端部および床上メンバ9に衝突荷重が伝達されて大きな応力分布S6がみられ、従って、床上メンバ9が前後方向途中で折れやすくなることが判明した。
【0030】
また、図11は本発明の実施形態による補強パネルを配設した車両について側面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す斜視図、および、図12は図11に対応する比較例の概略図であり、補強パネルを配設しない車両について側面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す斜視図である。
【0031】
このように、側面衝突が生じた場合においても、本実施形態による補強パネル11を設けた場合には、補強パネル11近傍に衝突荷重がほとんど伝達されず小さな応力分布S7となり、補強パネル11を配設しない場合には、フロアパネル3前端部に衝突荷重が伝達されて大きくかつ広い範囲での応力分布S8がみられることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態による車体前部を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線による断面図である。
【図3】図1のB−B線による断面図である。
【図4】本発明の実施形態による補強パネルを示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態による補強パネルを配設した車両について比較的小さな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す平面図である。
【図6】図5に対応する比較例の概略図であり、補強パネルを配設しない車両について比較的小さな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す平面図である。
【図7】本発明の実施形態による補強パネルを配設した車両について比較的大きな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す平面図である。
【図8】図7に対応する比較例の概略図であり、補強パネルを配設しない車両について比較的大きな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す平面図である。
【図9】本発明の実施形態による補強パネルを配設した車両について比較的大きな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す斜視図である。
【図10】図9に対応する比較例の概略図であり、補強パネルを配設しない車両について比較的大きな荷重で前面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す斜視図である。
【図11】本発明の実施形態による補強パネルを配設した車両について側面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す斜視図である。
【図12】図11に対応する比較例の概略図であり、補強パネルを配設しない車両について側面衝突実験を行ったときの荷重分布を概略的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1…ダッシュパネル
3…フロアパネル
11…補強パネル(補強部材)
17…開口部
19,21…凸面
23…凹面
29…フロアトンネル
31…凹部
33…第1閉断面部
35…フランジ
37…床下メンバ
43…第2閉断面部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の前端に配設されると共に、所定大きさの開口部が設けられたダッシュパネルと、該ダッシュパネルの下端部から車両後方に延びるフロアパネルと、前記ダッシュパネルの開口部近傍におけるフロアパネルの部位に配設されて車両前後方向に延びる帯状の補強部材とを備えたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記補強部材は、車幅方向に沿った断面形状が略ハット状に形成され、上方に向けて凸状に形成された左右一対の凸面と、これらの凸面同士の間に配置されて下方に向けて凹状に形成された凹面とから一体に形成され、前記凸面および凹面は車両前後方向に沿って延設されていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
車両前後方向に延びるフロアトンネルの下部に下方に凹む凹部が設けられ、該凹部がフロアパネルで覆われることによって前記フロアトンネルの下部に第1閉断面部が形成される一方、
前記補強部材の車幅方向外側におけるフロアパネルの下部に、下方に突出する床下メンバとフロアパネルによって第2閉断面部が設けられ、
これらの第1閉断面部と第2閉断面部とを前記補強部材を介して連結したことを特徴とする請求項1または2に記載の車体前部構造。
【請求項1】
車室内の前端に配設されると共に、所定大きさの開口部が設けられたダッシュパネルと、該ダッシュパネルの下端部から車両後方に延びるフロアパネルと、前記ダッシュパネルの開口部近傍におけるフロアパネルの部位に配設されて車両前後方向に延びる帯状の補強部材とを備えたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記補強部材は、車幅方向に沿った断面形状が略ハット状に形成され、上方に向けて凸状に形成された左右一対の凸面と、これらの凸面同士の間に配置されて下方に向けて凹状に形成された凹面とから一体に形成され、前記凸面および凹面は車両前後方向に沿って延設されていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
車両前後方向に延びるフロアトンネルの下部に下方に凹む凹部が設けられ、該凹部がフロアパネルで覆われることによって前記フロアトンネルの下部に第1閉断面部が形成される一方、
前記補強部材の車幅方向外側におけるフロアパネルの下部に、下方に突出する床下メンバとフロアパネルによって第2閉断面部が設けられ、
これらの第1閉断面部と第2閉断面部とを前記補強部材を介して連結したことを特徴とする請求項1または2に記載の車体前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−137636(P2010−137636A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314244(P2008−314244)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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