説明

車体強度制御装置

【課題】 車体ビームの強度状態を適切に制御する。
【解決手段】 制御装置75は、外界センサ62および車両状態量センサ63から入力される各信号に基づき、自車両が他の物体に衝突あるいは接触した際に生じる衝突エネルギを推定し、自車両と他の物体との衝突あるいは接触が生じる可能性が有ると判定された時点、あるいは、実際に自車両と他の物体との衝突あるいは接触が検出された時点で、予め推定した衝突エネルギを吸収するために必要とされる強度可変装置22の強度に対応した強度モードにてアクチュエータ46を駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、衝突形態や衝突対象物に応じた衝突エネルギを適切に吸収するように車体のフレーム等の強度を制御する車体強度制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車体の強度を制御する車体強度調整装置として、車両の左右に配設されるフレームの車両前方から受ける衝突荷重に抗する力を変更するために、圧電素子、形状記憶合金をアクチュエータとし、あるいは可動のスティフナーなどを用いて衝突形態を検知し、異なる衝突形態に対応するようにフレームの強度を切り換えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的に、この装置は、車体の前面が全体的に衝突する衝突形態(フルラップ衝突)ではフレームの強度を低下させ、一方のフレームに衝突荷重が集中する衝突形態(オフセット衝突)ではフレームの強度を増大させる構造となっている。
また、例えば加速度センサ等の検出結果に基づき衝突発生の有無を判定し、衝突発生時にフレームの変形を促すようにして、フレームの一部を破損させて強度を低下させる装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−291951号公報
【特許文献2】特表2001−504413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術に係る車体強度調整装置では、衝突発生の有無、あるいは衝突形態の検知結果から所定の衝突荷重に抗する力、すなわち衝突荷重に変更するまでの時間が短いため、アクチュエータを高速で作動させるために大きな電力と速い応答性が必要となる。このため、アクチュエータ自体が大型化してしまったり、また、特に応答性の向上のために電力伝達は低抵抗とすることが必須であるため、電源ケーブル径の大型化や、電極面積を増すことにより、アクチュエータに電力を供給する電源バッテリが大型化してしまうという問題が生じる。
また、上記従来技術に係るフレームの一部を破損させる装置では、衝突発生時に常に所定の程度だけフレームの強度を低下させるだけであって、衝突の程度や衝突対象物に応じて適切に強度を変更することができないという問題が生じる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、車体の強度を適切なタイミングで制御することが可能な車体強度制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の車体強度制御装置は、外部から入力される衝突エネルギを吸収可能な衝突エネルギ吸収部材(例えば、実施の形態での強度可変装置22)と、自車両の状態に係る車両状態量を検出する車両状態量センサ(例えば、実施の形態での車両状態量センサ63)と、前記車両状態量センサにて検出された車両状態量に基づき適宜の物体と自車両との接触あるいは衝突の発生を予測あるいは検出する衝突検知手段(例えば、実施の形態でのステップS12、車両状態量センサ63)と、前記車両状態量センサにて検出された車両状態量に基づき適宜の物体と自車両との接触あるいは衝突時に自車両に入力される衝突エネルギ(例えば、実施の形態での衝突エネルギ)を算出する衝突エネルギ算出手段(例えば、実施の形態でのステップS05、ステップS09)と、前記衝突検知手段による予測あるいは検出結果と、前記衝突エネルギ算出手段にて算出された前記衝突エネルギとに基づき、前記衝突エネルギ吸収部材の強度を変更する強度変更手段(例えば、実施の形態でのステップS29)とを備えることを特徴とする。
【0005】
上記構成の車体強度制御装置によれば、衝突検知手段による予測あるいは検出結果と、衝突エネルギ算出手段にて算出された衝突エネルギとに基づき、衝突エネルギ吸収部材の強度を変更することから、過剰な頻度で衝突エネルギ吸収部材の強度が変更されてしまうことを防止しつつ、適切なタイミングかつ適切な強度で外部から入力される衝突エネルギを吸収することができる。
【0006】
また、請求項2に記載の本発明の車体強度制御装置は、外部から入力される衝突エネルギを吸収可能な衝突エネルギ吸収部材(例えば、実施の形態での強度可変装置22)と、自車両の外部の物体を検知する物体検知手段(例えば、実施の形態での外界センサ62)と、前記物体検知手段にて検知された物体と自車両との接触あるいは衝突の発生を予測あるいは検出する衝突検知手段(例えば、実施の形態でのステップS12、車両状態量センサ63)と、前記物体検知手段にて検知された物体と自車両との接触あるいは衝突時に自車両に入力される衝突エネルギ(例えば、実施の形態での衝突エネルギ)を算出する衝突エネルギ算出手段(例えば、実施の形態でのステップS05、ステップS09)と、前記衝突検知手段による予測あるいは検出結果と、前記衝突エネルギ算出手段にて算出された前記衝突エネルギとに基づき、前記衝突エネルギ吸収部材の強度を変更する強度変更手段(例えば、実施の形態でのステップS29)とを備えることを特徴としている。
【0007】
上記構成の車体強度制御装置によれば、衝突検知手段による予測あるいは検出結果と、衝突エネルギ算出手段にて算出された衝突エネルギとに基づき、衝突エネルギ吸収部材の強度を変更することから、過剰な頻度で衝突エネルギ吸収部材の強度が変更されてしまうことを防止しつつ物体検知手段にて衝突する物体を検出するので、適切なタイミングかつ適切な強度で外部から入力される衝突エネルギを吸収することができる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の本発明の車体強度制御装置によれば、過剰な頻度で衝突エネルギ吸収部材の強度が変更されてしまうことを防止しつつ、適切なタイミングかつ適切な強度で外部から入力される衝突エネルギを吸収することができる。
また、請求項2に記載の本発明の車体強度制御装置によれば、過剰な頻度で衝突エネルギ吸収部材の強度が変更されてしまうことを防止しつつ物体検知手段にて衝突する物体を検出するので、適切なタイミングかつ適切な強度で外部から入力される衝突エネルギを吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る車体強度制御装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による車体強度制御装置は、例えば車体ビーム構造の強度を変更可能に制御するものであって、この車体ビーム構造は、例えば図1に示すように、車体前部1に配置されたフロントバンパビーム10とされ、この車体前部には、例えば、車体骨格部材であるフロントサイドフレーム11が車体前後方向に沿う状態で車幅方向に離間して一対設けられている。これら1対のフロントサイドフレーム11,11は、各先端部がブラケット等の接続部材10aを介して車幅方向に沿うフロントバンパビーム10に連結され、各基端部が車幅方向に沿う車体骨格部材であるダッシュボードロアクロスメンバ14と交差して、車体前後方向に沿う車体骨格部材であるフロアフレーム15に個別に連結されている。
【0010】
この実施の形態によるフロントバンパビーム10は、例えば図2に示すように、車体前後方向に沿って対向配置された1対の板状のビーム部材21,21と、これらの1対のビーム部材21,21により車体前後方向の両側から挟み込まれるようにして接続された複数の強度可変装置22,…,22とを備えて構成されている
【0011】
強度可変装置22は、例えば図3および図4に示すように、1対のビーム部材21,21により車体前後方向の両側から挟み込まれるようにして接続された複数(例えば、3つ)の形状記憶合金からなる板状部材31,31,31と、各板状部材31の長手方向に沿った所定位置において、各板状部材31に対して分離可能に接続される複数(例えば、2つ)の接続分離部材32,32とを備えて構成され、さらに、各接続分離部材32は、各板状部材31毎に具備された接続部材42を介して複数の板状部材31,31,31を分離可能に接続するベース部材43と、ベース部材43に具備された複数対のピンガイド44,…,44および可動ピン部材45,…,45と、制御装置(図示略)により制御される複数(例えば、2つ)のアクチュエータ46,46とを備えて構成されている。
【0012】
各板状部材31毎に具備された接続部材42は、例えば両端部42a,42aが同方向に屈曲した板状に形成され、板状部材31の表面31A上にボルト等により固定されると共に、屈曲した両端部42a、42aが板状部材31の裏面31B上から突出している。
そして、接続部材42の各端部42aには、後述する可動ピン部材45を挿入可能な挿入孔42bが形成されている。
【0013】
アクチュエータ46は、例えばラック・ピニオン機構により、図5および図6(a)に示すように可動ピン部材45,45をピンガイド44,44内から外部に向かい突出、あるいは、図5および図6(b)に示すように可動ピン部材35,35をピンガイド44,44内に埋没させるようにして進退させる。すなわち、制御装置(図示略)により駆動制御されるモータ46aの回転軸に連結されたピニオン46bはラック軸46c,46cのラック歯に噛合っており、モータ46aから入力された回転運動は、ピニオン46bを介してラック軸46c,46cの往復運動に変換され、各ラック軸46c,46cの両端に接続された可動ピン部材45,45をピンガイド44,44に沿って進退させる。
【0014】
そして、アクチュエータ46により、ベース部材43に具備される1対の可動ピン部材45,45を1対のピンガイド44、44に沿って進退させることで、1対の可動ピン部材45、45が板状部材31に具備された接続部材42の1対の挿入孔42b、42b内に挿入あるいは挿入孔42b内から抜き出され、1対の可動ピン部材45、45が1対の挿入孔42b、42b内に挿入された際には板状部材31とベース部材43とが接続固定され、1対の可動ピン部材45、45が1対の挿入孔42b、42b内から抜き出された際には板状部材31とベース部材43とが分離されるようになっている。
【0015】
そして、各板状部材31に対して、複数(例えば、2つ)の接続分離部材32,32が備えられていることで、各接続分離部材32,32の固定状態および分離状態の組み合わせに応じて、各板状部材31に長手方向に沿った荷重が作用した際の各板状部材31の変形状態が変化するようになっている。
例えば図7(a)に示すように、板状部材31に対して、2つの接続分離部材32,32が分離された状態では、板状部材31の長手方向に沿った強度が最も低下し、1つの腹51aを有するようにして座屈する1次変形モードとなり、例えば図7(b)に示すように、2つの接続分離部材32,32のうち何れか一方が接続状態とされ、他方が分離状態とされた場合には、板状部材31の長手方向に沿った強度が相対的に増大し、2つの腹51b,51bを有するようにして座屈する2次変形モードとなり、例えば図7(c)に示すように、2つの接続分離部材32,32の両方が接続状態とされた場合には、板状部材31の長手方向に沿った強度が最も増大し、3つの腹51c,51c,51cを有するようにして座屈する3次変形モードとなる。
そして、形状記憶合金からなる板状部材31に対しては、例えば図8に示すように、2つの接続分離部材32,32の両方が接続状態とされて板状部材31が3次変形モードにて座屈する際に、座屈の発生以後(例えば、図8に示す変位が所定の変位x1よりも大きい領域)に一時的に低下した強度が、変位の増大に伴い増加傾向に変化するようになっている。
【0016】
本実施の形態に係る車体強度制御装置60は、例えば図9に示すように、例えばCPU等を含む電子回路により構成された強度制御装置61と、外界センサ62と、車両状態量センサ63と、強度可変装置22と、ブレーキデバイス64とを備えて構成されている。
【0017】
外界センサ62は、例えば自車両のボディのノーズ部や車室内のフロントウィンド近傍等に配置されており、例えば、カメラ71と画像処理部72と、レーダ73とレーダ制御部74とを備えて構成されている。
カメラ71は、例えば可視光領域や赤外線領域にて撮像可能なCCDカメラやC−MOSカメラ等であって、強度制御装置61から入力される制御指令に応じて車両進行方向等の適宜の検知方向での外界を撮影する。
そして、画像処理部72は、カメラ71から出力される画像を画像処理して、例えば自車両周辺の他の車両や歩行者等の移動体や障害物や標識等を検出し、これらの検出結果と共に、例えば自車両から認識した各物体までの相対距離や相対速度や移動方向等を算出し、これらの算出結果を強度制御装置61へ出力する。
【0018】
レーダ73は、例えば自車両のボディのノーズ部や車室内のフロントウィンド近傍等に配置されており、強度制御装置61から入力される制御指令に応じて、レーザ光やミリ波等の発信信号を適宜の検知方向に向けて発信すると共に、この発信信号が自車両の外部の物体(検知対象物)によって反射されることで生じた反射信号を受信し、反射信号と発信信号とを混合してビート信号を発生させ、このビート信号をレーダ制御部74へ出力する。
レーダ制御部74は、強度制御装置61から入力される制御指令に応じて、レーダ73から適宜の検知方向に向けて発信信号を発信させると共に、レーダ73から出力されるビート信号の周波数f(「ビート周波数」)に基づいて、所定の検知エリア内の領域における検知対象物までの相対距離や相対速度や移動軌跡(または移動方向)等を算出し、これらの算出結果を強度制御装置61へ出力する。
【0019】
なお、カメラ71と画像処理部72と、レーダ73とレーダ制御部74とは必ずしも両方を備える必要はなく、どちらか一方でもよい。また、両方を備える場合は両方の処理結果を合わせて自車両周辺の他の車両や歩行者等の移動体や障害物や標識等を検出し、自車両から認識した各物体までの相対距離や相対速度や移動方向や移動軌跡等を算出し、これらの算出結果を強度制御装置61へ出力してもよい。
【0020】
車両状態量センサ63は、自車両の車両状態量を検出する各種センサ、例えば接触センサ、衝撃センサ、車体変形センサ、荷重センサ、車速センサ、横加速度センサ、前後加速度センサ、ヨーレートセンサ、例えばイグニッションスイッチおよびシフトポジションおよびパーキングブレーキ等の各作動状態を検知するセンサ、乗員の有無を検知する着座センサ等を備えて構成され、各センサから出力される検出信号は強度制御装置61へ出力されている。
【0021】
ブレーキデバイス64は、強度制御装置61の制御によって自車両の急激な挙動変化の発生を抑制するものであって、例えば、滑りやすい路面等での駆動輪の空転を防止したり、オーバーステアやアンダーステア等の横すべリの発生を抑制(走行挙動安定化動作)したり、制動時に駆動輪がロック状態となることを防止(アンチロックブレーキ動作)して、自車両の所望の駆動力および操舵能力を確保し、自車両の姿勢を安定化させると共に、クリープ力による走行を補助し、例えば内燃機関の停止時における勾配路での後退防止等を行う。また、ブレーキデバイス64は、自車両が他の物体に衝突あるいは接触する際の衝撃を軽減する(衝撃軽減ブレーキ動作)ようにして制動力を作用させる。
【0022】
そして、強度制御装置61は、例えば、制御装置75と、ブレーキデバイス制御装置76とを備えて構成されている。
制御装置75は、後述するように、外界センサ62および車両状態量センサ63から入力される各信号に基づき、強度可変装置22の強度を設定し、設定した強度に制御するための制御信号を強度可変装置22のアクチュエータ46へ出力する。
また、ブレーキデバイス制御装置76は、外界センサ62および車両状態量センサ63から入力される各信号に基づき、ブレーキデバイス64を制御する。
【0023】
本実施の形態による車体強度制御装置60は上記構成を備えており、次に、この車体強度制御装置60の動作について説明する。
【0024】
本実施の形態による車体強度制御装置60はイグニッションがオンになったことによりシステムを作動させる。
【0025】
先ず、例えば図10に示すステップS01においては、各強度可変装置22のアクチュエータ46の作動状態を取得する。ここで、各アクチュエータ46の作動状態は、各モータ46aの回転力により進退する可動ピン部材45、45の位置状態に応じた各接続分離部材32,32の板状部材31に対する固定状態および分離状態、つまり強度可変装置22の強度に係る情報となる。
【0026】
ステップS02においては、取得したアクチュエータ46の作動状態が、強度可変装置22の強度が最大の強度となる状態に対応した最大強度モードであるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、後述するステップS04に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS03に進む。
ステップS03においては、アクチュエータ46の作動状態が最大強度モードとなるように駆動制御する。これによってイグニッションがオフで車両が停止している状態を含む通常時のアクチュエータ46の作動状態は強度可変装置22の強度が最大である最大強度モードとなる。
【0027】
そして、ステップS04においては、外界センサ62から検出信号が入力されたか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS05に進み、このステップS05において、車両状態量センサ63の車速センサにて検出される自車両の速度(車速)に基づき、自車両が適宜の他の物体に衝突あるいは接触した際に生じる衝突エネルギを推定し、後述するステップS10に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS06に進む。
【0028】
ステップS06においては、外界センサ63から入力される検出信号に基づき、自車両の外界に存在する他の物体を検知し、物体の種別を判別する。
そして、ステップS07においては、検知した物体のうち、自車両の走行の支障となる可能性がある物体が存在するか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、上述したステップS05に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS08に進む。
ステップS08においては、自車両の走行の支障となる物体の相対速度(自車両と物体との速度差)を検出する。
そして、ステップS09においては、検出した物体の種別と、検出した物体の相対速度とに基づき、自車両がこの物体に衝突あるいは接触した際に生じる衝突エネルギを推定し、ステップS10に進む。
【0029】
ステップS10においては、推定した衝突エネルギに基づき、この衝突エネルギを適切に吸収するために必要とされる強度可変装置22の強度を算出する。
次に、ステップS11においては、車両状態量センサ63から出力される検出信号、例えば車速、横加速度、前後加速度、ヨーレート等に基づき、自車両の走行挙動に係る走行状態を検出する。
次に、ステップS12においては、検出した自車両の走行状態に基づき、自車両と、適宜の他の物体あるいは外界センサ62にて検出された自車両の走行の支障となる物体との衝突あるいは接触が生じる可能性を算出する。
【0030】
次に、例えば図11に示すステップS21においては、衝突あるいは接触が生じる可能性が有るか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、後述するステップS27に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS22に進む。
次に、ステップS22においては、検出した自車両の走行状態が所定閾状態、例えば過剰な減速状態等を超えたか否かを判定する。
ステップS22の判定結果が「YES」の場合には、後述するステップS27に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS23に進む。
【0031】
次に、ステップS23においては、アンチロックブレーキ動作が作動したか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、後述するステップS27に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS24に進む。
次に、ステップS24においては、走行挙動安定化動作が作動したか否かを判定する。
ステップS24の判定結果が「YES」の場合には、後述するステップS27に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS25に進む。
【0032】
次に、ステップS25においては、衝撃軽減ブレーキ動作が作動したか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、後述するステップS27に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS26に進む。
次に、ステップS26においては、車両状態量センサ63から出力される検出信号、例えば車体に作用する他の物体との接触、衝撃、荷重、車体変形等に基づき、衝突あるいは接触の発生を検知したか否かを判定する。
ステップS26の判定結果が「YES」の場合には、後述するステップS27に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
【0033】
また、ステップS27においては、算出した強度可変装置22の強度に対応した強度モードにてアクチュエータ46を駆動させる。
そして、ステップS28においては、衝突あるいは接触が終了したか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS29に進む。
ステップS29においては、車両状態量センサ63から出力される検出信号、例えば車体に作用する衝撃、荷重、車体変形等に基づき、必要とされる強度可変装置22の強度を再度算出し、上述したステップS27に戻る。
【0034】
上述したように、本実施の形態による車体強度制御装置60によれば、自車両と他の物体との衝突あるいは接触が生じる可能性が有ると判定された時点、あるいは、実際に自車両と他の物体との衝突あるいは接触が検出された時点で、予め推定した衝突エネルギを吸収するために必要とされる強度可変装置22の強度に対応した強度モードにてアクチュエータ46を駆動させることから、例えば過剰な頻度でアクチュエータ46が駆動することによって各部材の摩耗や破損が生じてしまうことを防止し、適切なタイミングかつ適切な強度で外部から入力される衝突エネルギを吸収することができる。
しかも、衝突あるいは接触が発生している期間において車両状態量センサ63から出力される検出信号に基づいて強度可変装置22の強度を変更することから、より一層、適切かつ効率よくアクチュエータ46を駆動させることができる。
【0035】
なお、上述した実施の形態においては、複数の強度可変装置22,…,22を1対のビーム部材21,21により車体前後方向の両側から挟み込むとしたが、これに限定されず、例えば図12に示すように、中空筒状のフロントバンパビーム本体10bと1対のフロントサイドフレーム11,11とを接続する接続部材として強度可変装置22を備えてもよく、この場合には、各板状部材31の両端部がフロントバンパビーム本体10bとフロントサイドフレーム11とに接続される。さらに、上述した実施の形態において接続部材10aを強度可変装置22としてもよい。
また、車体構造の他の箇所に強度可変装置22を備えてもよい。例えば車幅方向に沿うリヤバンパビームの内部または外部に設けて後面衝突時の衝突エネルギ吸収を行ったり、車体前後方向に沿うサイドシル内に設けて側面衝突時の衝突エネルギ吸収を行ったり、上下方向に沿うピラー内に設けて側面衝突時の衝突エネルギ吸収を行ったりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係る車体前部構造の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフロントバンパビームの斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る強度可変装置の斜視図である。
【図4】図3に示す強度可変装置の平面図である。
【図5】図3に示すアクチュエータの平面図である。
【図6】図6(a),(b)は図3に示すアクチュエータの側面図である。
【図7】図7(a)〜(c)は図3に示す板状部材の断面を模式的に示す図である。
【図8】図3に示す板状部材の荷重に応じた変位の変化の一例を示すグラフ図である。
【図9】本発明の実施形態に係る車体強度制御装置の構成図である。
【図10】図9に示す車体強度制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】図9に示す車体強度制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】本実施形態の変形例に係るフロントバンパビームの斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
10 フロントバンパビーム
10a フロントバンパビーム本体
21 ビーム部材
22 強度可変装置(衝突エネルギ吸収部材)
31 板状部材
62 外界センサ(物体検知手段)
63 車両状態量センサ(衝突検知手段、車両状態量センサ)
ステップS05、ステップS09 衝突エネルギ算出手段
ステップS12 衝突検知手段
ステップS29 強度変更手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から入力される衝突エネルギを吸収可能な衝突エネルギ吸収部材と、
自車両の状態に係る車両状態量を検出する車両状態量センサと、
前記車両状態量センサにて検出された車両状態量に基づき適宜の物体と自車両との接触あるいは衝突の発生を予測あるいは検出する衝突検知手段と、
前記車両状態量センサにて検出された車両状態量に基づき適宜の物体と自車両との接触あるいは衝突時に自車両に入力される衝突エネルギを算出する衝突エネルギ算出手段と、
前記衝突検知手段による予測あるいは検出結果と、前記衝突エネルギ算出手段にて算出された前記衝突エネルギとに基づき、前記衝突エネルギ吸収部材の強度を変更する強度変更手段と
を備えることを特徴とする車体強度制御装置。
【請求項2】
外部から入力される衝突エネルギを吸収可能な衝突エネルギ吸収部材と、
自車両の外部の物体を検知する物体検知手段と、
前記物体検知手段にて検知された物体と自車両との接触あるいは衝突の発生を予測あるいは検出する衝突検知手段と、
前記物体検知手段にて検知された物体と自車両との接触あるいは衝突時に自車両に入力される入力エネルギを算出するエネルギ算出手段と、
前記衝突検知手段による予測あるいは検出結果と、前記エネルギ算出手段にて算出された前記入力エネルギとに基づき、前記エネルギ吸収部材の強度を変更する強度変更手段と
を備えることを特徴とする車体強度制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−8108(P2006−8108A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117033(P2005−117033)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】