説明

車体後部構造

【課題】 コスト増大、重量増大を抑えて、車両後部に設けられる牽引フックの剛性を高くする。
【解決手段】 車体後部に設けられたサイドメンバ2の後端部とエンドクロスメンバ4とに跨って牽引フック5を取り付けたので、サイドメンバ2のみに取り付けられている牽引フックに比べて、牽引フック5の剛性が向上する。よって、牽引フック5の剛性を高くするために板厚を厚くする必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引フックを備えた車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の乗用車などの車両の車体後部に設けられる牽引フックとして、特許文献1には、板状部材によって形成された牽引フックが開示されている。この牽引フックは、車体後部に車両前後方向に沿って延設されたサイドメンバの側面と底面とに固定されている。
【特許文献1】特開2003−160068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示された牽引フックは、リアサイドメンバのみに取り付けられているため、剛性が低いという問題がある。この剛性を補うために、単純に牽引フックの板厚を厚くすると、コスト増大、重量増大を招いてしまう。
【0004】
本発明の目的は、コスト増大、重量増大を抑えて、車両後部に設けられる牽引フックの剛性を高くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車体後部に車両前後方向に沿って左右一対のサイドメンバを延設し、これらのサイドメンバの後端部同士を車幅方向に延びるエンドクロスメンバによって連結し、前記サイドメンバの後端部と前記エンドクロスメンバとに跨って牽引フックを取り付けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、牽引フックがサイドメンバとエンドクロスメンバとに跨って取り付けたので、牽引フックがサイドメンバのみに取り付けられている場合に比べて、牽引フックの剛性が向上する。従って、牽引フックの剛性を高くするために板厚を厚くする必要がないので、コスト増大、重量増大を抑えて、車両後部に設けられる牽引フックの剛性を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の第1の実施の形態を図1ないし図4に基づいて説明する。
【0008】
図1は、本実施の形態の車体後部構造を示す平面図である。図1に示すように、本実施の形態の車体後部構造1は、車体後部に車両前後方向に沿って延設された左右一対のサイドメンバ2,3と、これらのサイドメンバ2,3の後端部同士を連結した車幅方向に延びるエンドクロスメンバ4と、左側のサイドメンバ2の後端部とエンドクロスメンバ4とに跨って取り付けられた牽引フック5とを備えている。
【0009】
図2は、車体後部構造1を示す側面図、図3は、牽引フック5及びその周囲を示す背面図、図4は、その斜視図である。
【0010】
図2ないし図4に示すように、サイドメンバ2,3は、一対の側壁11とこれらの側壁11の下端部同士を連結する底壁12とを備えて、上方開口の断面コ字状に形成されている。これらのサイドメンバ2,3は、その上面をリアフロアパネル6に閉止されて、このリアフロアパネル6とともに閉断面を形成している。サイドメンバ2,3では、側壁11の上端に設けられたフランジ13がリアフロアパネル6に接合されている。また、サイドメンバ2,3の側壁11の後端部には、側方に延出したフランジ14が設けられる一方、底壁12の後端部には、下方に延出したフランジ15が設けられ、これらのフランジ14,15が、エンドクロスメンバ4の前側縦面23に接合されている。ここで、接合は、例えば、スポット溶接によりなされている。
【0011】
エンドクロスメンバ4は、前側パネル21と後側パネル22とが接合されて閉断面に形成されている。
【0012】
牽引フック5は、折り曲げ加工された板部材によって形成されており、車幅方向に間隔をあけて車両前後方向に延びる一対の側壁31と、該側壁31の後端部同士を連結する連結壁32とを備えている。連結壁32は、車両上下左右方向を面方向にとして形成されており、この連結壁32には、他のフック(図示せず)と係合するフック孔部36が形成されている。
【0013】
牽引フック5は、その一部がサイドメンバ2及びエンドクロスメンバ4の下方に位置するように配置され、その前部をサイドメンバ2に固定されると共に、その後部をエンドクロスメンバ4に固定されている。
【0014】
具体的には、牽引フック5の両側壁31でサイドメンバ2を挟み込んだ状態で、牽引フック5の両側壁31とサイドメンバの側壁11とが接合されている。また、牽引フック5の両側壁31には、側方に延出して形成されエンドクロスメンバ4の前側縦面23に当接するフランジ33と、側方に延出して形成されエンドクロスメンバ4の底面24に当接するフランジ34とが設けられている。これらのフランジ33,34は、エンドクロスメンバ4の前側縦面23、底面24に接合されている。また、連結壁32の上端部には、後方へ延出したフランジ35が設けられており、このフランジ35は、エンドクロスメンバ4の底面24に接合されている。
【0015】
また、牽引フック5には、板部材であって下方開口の断面コ字状の補強部材37が設けられている。この補強部材37は、両側壁31と連結壁32とに接合されて、両側壁31と連結壁32とを互いに橋渡して結合している。
【0016】
このような構成では、牽引フック5がサイドメンバ2とエンドクロスメンバ4とに跨って取り付けられているので、牽引フック5がサイドメンバ2のみに取り付けられている場合に比べて、牽引フック5の剛性が向上する。従って、牽引フック5の剛性を高くするために板厚を厚くする必要がないので、コスト増大、重量増大を抑えて、牽引フック5の剛性を高くすることができる。
【0017】
また、図2に示すように、牽引フック5のフック孔部36に他のフックが係合されて、牽引フック5に後方への荷重F1が作用した場合には、この荷重F1は、牽引フック5によって、サイドメンバ2を下方へ引っ張る力F2と、エンドクロスメンバ4を後方に押す力F3とに分解される。また、図3に示すように、牽引フック5に斜め後方への荷重が作用した場合における左右方向への荷重F4又はF5は、牽引フック5によって、エンドクロスメンバ4に伝わりエンドクロスメンバ4を右又は左方向へ押す力と、サイドメンバ2に伝わりサイドメンバ2を捻る力とに分解される。このように、本実施の形態では、牽引フック5に作用する荷重F1,F4,F5を、サイドメンバ2及びエンドクロスメンバ4に効率よく伝えることができる。
【0018】
また、本実施の形態においては、牽引フック5の前部をサイドメンバ2に固定すると共に、牽引フック5の後部をエンドクロスメンバ4に固定したことにより、牽引フック5の全長に亘って剛性を高くすることができる。
【0019】
また、本実施の形態においては、牽引フック5の後部を、エンドクロスメンバ4の前側縦面23と底面24との双方に固定したことにより、例えば牽引フックの後部をエンドクロスメンバ4の前側縦面、底面のうちのいずれか一方にのみ固定した場合に比べて、牽引フック5とエンドクロスメンバ4との結合が高くなり、牽引フック5の剛性が高くなる。
【0020】
また、本実施の形態においては、牽引フック5は、車幅方向に間隔をあけて車両前後方向に延びる一対の側壁31と、該側壁31の後端部同士を連結する連結壁32とを備えた構造であるので、牽引フック5を例えば板金を用いて容易に製造することができる。
【0021】
また、本実施の形態においては、牽引フック5の一対の側壁31と連結壁32とを互いに橋渡して結合する補強部材37を設けたことにより、牽引フック5の剛性がさらに高くなる。
【0022】
次に、本発明の第2の実施の形態を図5に基づいて説明する。なお、前述した実施の形態と同じ部分は、同一符号で示し説明も省略する。
【0023】
図5は、本実施の形態の牽引フック及びその周囲を示す斜視図である。本実施の形態は、エンドクロスメンバ4aの前側パネル21aに形成された底面24aが、前方斜め上方に向けて傾斜している。これに伴い、牽引フック5aの一対の側壁31aには、第1の実施の形態のフランジ33,34,35に代えて、エンドクロスメンバ4aの底面24aに当接するフランジ38が側方へ延出して設けられている。これらのフランジ38は、エンドクロスメンバ4aの底面24aに接合されている。
【0024】
また、本実施の形態では、エンドクロスメンバ4aの底面24aが、前方斜め上方に向けて傾斜して形成されているのに伴い、エンドクロスメンバの前側縦面23aの高さが、第1の実施の形態の前側側壁に対して低くなっている。これに合わせて、サイドメンバ2aの後端部から下方に延出したフランジ15aの長さも第1の実施の形態に比べて短くされている。
【0025】
このような構成では、牽引フック5aがサイドメンバ2aとエンドクロスメンバ4aとに跨って取り付けられているので、牽引フック5aがサイドメンバ2aのみに取り付けられている場合に比べて、牽引フック5aの剛性が向上する。よって、第1の実施の形態と同様に、牽引フック5aの剛性を高くするために板厚を厚くする必要がないので、コスト増大、重量増大を抑えて、牽引フック5aの剛性を高くすることができる。
【0026】
次に、上述した実施の形態に対する牽引フックの変形例を図6に基づいて説明する。図6は、変形例の牽引フック及びその周囲を示す斜視図である。
【0027】
この変形例は、前述した第1及び第2の実施の形態の牽引フック5,5aのいずれにも適用できるが、図6では、第1の実施の形態の牽引フック5に適用した例を示している。図6に示すように、この変形例の牽引フック5bでは、前述したフック孔部36に代えて、上方開口のU字状のフック部材39が設けられている。このフック部材39は、その上部を補強部材37bを介して連結壁32bに取り付けられている。この構成では、フック部材39が他のフックと係合する。
【0028】
なお、本発明は、本実施の形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施の形態を各種採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施の形態の車体後部構造を示す平面図である。
【図2】その側面図である。
【図3】牽引フック及びその周囲を示す背面図である。
【図4】その斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態の牽引フック及びその周囲を示す斜視図である。
【図6】変形例の牽引フック及びその周囲を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 車体後部構造
2 サイドメンバ
2a サイドメンバ
3 サイドメンバ
4 エンドクロスメンバ
4a エンドクロスメンバ
5 牽引フック
5a 牽引フック
5b 牽引フック
23 前側縦面
23a 前側縦面
24 底面
24a 底面
31 側壁
31a 側壁
32 連結壁
32a 連結壁
32b 連結壁
32c 連結壁
37 補強部材
37b 補強部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部に車両前後方向に沿って左右一対のサイドメンバを延設し、これらのサイドメンバの後端部同士を車幅方向に延びるエンドクロスメンバによって連結し、前記サイドメンバの後端部と前記エンドクロスメンバとに跨って牽引フックを取り付けたことを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記牽引フックの前部を前記サイドメンバに固定すると共に、前記牽引フックの後部を前記エンドクロスメンバに固定したことを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記牽引フックの後部を、前記エンドクロスメンバの前側縦面と底面との双方に固定したことを特徴とする請求項2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記エンドクロスメンバの底面を前方斜め上方に向けて傾斜させ、この底面に前記牽引フックの後部を固定したことを特徴とする請求項2に記載の車体後部構造。
【請求項5】
前記牽引フックは、車幅方向に間隔をあけて車両前後方向に延びる一対の側壁と、該側壁の後端部同士を連結する連結壁とを備えていることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の車体後部構造。
【請求項6】
前記一対の側壁と前記連結壁とを互いに橋渡して結合する補強部材を設けたことを特徴とする請求項5に記載の車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−282055(P2006−282055A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106469(P2005−106469)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】