説明

車室内音制御装置

【課題】車外への騒音がなく、車室内で聞こえる音を効果的に低減しながら特定の車室内領域においてはその音が聞こえるようにして、静粛性とドライバーのドライビングフィールを満足させることが可能な車室内音制御装置を提供する。
【解決手段】第1の出力部13aから車両1の車室2内に音を発生させる第1の音発生手段3と、第1の出力部13aとは離れた第2の出力部14aから第1の音発生手段で発生される音と逆位相の音を車室内に発生させる第2の音発生手段4とを備え、第1及び第2の出力部13a,14aを、助手席8の着座ポイントP1までの距離L1,L2が互いに等しくなるように配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内で聞こえる音を効果的に低減しながら車室内領域において消音領域と非消音領域を形成する車室内音制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両の車室内には、ロードノイズ、風切り音、エンジン音や排気音等の様々な音が侵入してくる。車室内の静粛性を確保するためには、一般に、これら音の侵入経路に吸音材や遮音材を配置して、車室内へ侵入する音のレベルを低くする手法や、車室内で聞こえる音の周波数と逆位相の音を車室内で発生させて、乗員に聞こえないようにする手法がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、内燃機関の吸気経路と排気経路とを接続管で接続し、この接続管の途中に配置した媒介器内に吸気経路と排気経路とを区画する振動板を設け、この振動板の排気経路側に吸気経路中の吸気脈動の周期と180°に近く位相をずらした周期と、吸気脈動の振幅とほぼ同一の振幅とを有する脈動が供給されるように設定した吸気消音装置が記載されている。
特許文献2には、内燃機関の機関負荷情報と機関回転数情報と吸気温度又は排気温度とから、吸気系又は排気系における発生音の逆位相・同音圧の制御音信号を生成し、内燃機関の発生音の伝播経路に制御音信号が入力されることでその信号に応じた制御音を発する発音アクチュエータを配置した電子デバイスを用いた騒音制御装置が記載されている。
【0004】
【特許文献1】実開平5−96463号公報
【特許文献2】特開平8−158966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両では、車室内に侵入する音を効果的に演出することにより乗員、特にドライバーのドライビングフィールを高める場合がある。例えば、スポーツ性の高い車種においては、排気音やエンジン音が聞こえることは車両の性質上、ドライバーには好まれる傾向にある。このため、車種によっては排気音やエンジン音などを意図的に車室内で聞こえるように設定する場合がある。しかし、ドライバーに心地良い音は、他の乗員に対しては必ずしも心地よい音ではなく、単なる騒音に聞こえる場合もあり、2つの異なる要素を満たすことが要望されている。
【0006】
特許文献1,2に記載のものは、車室内で聞こえる音と逆位相の音を機械的、あるいは電子デバイスを用いて発生させているので、車室内全体の静粛性を高めるには適しているが、特定の車室内領域において特定の音を聞こえるようにすることは難しい。
【0007】
また、排気音を演出して車室内に聞こえるようにする場合、その多くはマフラーを改良して行うことが多く、車室内で心地よく聞こえるようにするには、その音量が大きくなる傾向となり、車外に対する騒音となり兼ねない。
本発明は、車外への騒音が少なく、車室内で聞こえる音を効果的に低減しながら特定の車室内領域においてはその音が聞こえるようにして、静粛性とドライバーのドライビングフィールを満足させることが可能な車室内音制御装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1の発明は、第1の出力部から車両の車室内に音を発生させる第1の音発生手段と、第1の出力部とは離れた第2の出力部から、第1の音発生手段で発生される音と逆位相の音を車室内に発生させる第2の音発生手段とを備え、第1及び第2の出力部は、助手席の着座ポイントまでの距離が互いに等しくなるように配置されていることを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明は、第1及び第2の出力部が運転席と助手席の間に配置されていることを特徴としている。
【0010】
請求項3の発明は、第1及び第2の出力部が上方に向くように配置されていることを特徴としている。
【0011】
請求項4の発明は、前記第1及び第2の音発生手段が、第1出力部に接続されている第1の連通部が設けられる第1の空間部と、第2の出力部に接続されている第2の連通部が設けられる第2の空間部と、吸気導入側に接続されている第3の連通部が設けられる第3の空間部とを備えたケースであり、ケースが、第3の空間部を2室に仕切るともに、第1の空間部と前記第2の空間部とを仕切るようにケースに揺動可能に支持され、第3の空間部の圧力変動により揺動する仕切部材とを更に備え、仕切部材の揺動によって、互いに逆位相の音を第1及び第2の空間部を介して第1及び第2の出力部へ伝達するよう構成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項5の発明は、第2の出力部が、車室内で音を発生させるスピーカーであり、第1の出力部から発生される音と逆位相の音を、スピーカーから発生させる制御手段を更に備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1の出力部から車両の車室内に音を発生させる第1の音発生手段と、第1の出力部とは離れた第2の出力部から第1の音発生手段で発生される音と逆位相の音を車室内に発生させる第2の音発生手段とを備え、第1及び第2の出力部は、助手席の着座ポイントまでの距離が互いに等しくなるように配置したので、助手席側では第1の出力部からの音が第2の出力部からの音によって打ち消されて助手席周辺に消音領域が形成されるので、助手席側では静粛性を確保できる。また、運転席側では第1の出力部からの音が第2の出力部からの音によって打ち消される事がないので、運転席周辺では、ドライバーに意図した音を聞かせることで、エンジンパワー感、加速感などのドライビングフィーリングを満足させることができる。
【0014】
本発明によれば、第1及び第2の出力部を運転席と助手席の間に配置したので、音の反射部材と成り得る車室内のドアインナパネルから各出力部を離すことができ、反射音による音の位相ずれが低減されるため、意図した車室内空間に消音領域と非消音領域を確実に形成でき、車外への騒音がなく、静粛性とドライバーのドライビングフィールをより満足させることができる。
【0015】
本発明によれば、第1及び第2の出力部を上方に向くように配置したので、音の反射部材と成り得る車室内のルーフインナパネルから各出力部を離すことができ、反射音による音の位相ずれが低減されるため、意図した車室内空間に消音領域と非消音領域を確実に形成でき、車外への騒音がなく、静粛性とドライバーのドライビングフィールをより満足させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
図1に示す車室内音制御装置10は、メカニカルな構成により互いに180度異なる位相の音を発生させるものである。車室内音制御装置10は、車両1の車室内2に配置され、第1の出力部13aから車室2内に音を発生させる第1の音発生手段3と、第1の出力部13aとは離れた車室内2に配置された第2の出力部14aから、第1の音発生手段3で発生される音と逆位相の音を車室2内に発生させる第2の音発生手段4とを備えている。車室内音制御装置10は、車室内2に、第1及び第2の音発生手段3,4から発せられた互いの音を干渉させて打ち消しあって騒音レベルが低減する消音領域5と、騒音レベルが消音領域5よりも大きい非消音領域6を発生させている。
【0017】
本形態において、第1及び第2の音発生手段3,4は、図3,図4に示すように、エンジン20への吸気導入側となる吸気通路19に接続する第3の連通部11が設けられ第3の空間部12と車室内2にそれぞれ連通する第1及び第2の連通部13,14が設けられた第1及第2の空間部15,16を備えたケース17と、第3の空間部12を2室12A,12Bに仕切るともに、第1の空間部15と第2の空間部16とを仕切るようにケース17に揺動可能に支持された仕切部材としてのパドル18とを備えている。
【0018】
図1に示すように、第1の連通部13の出力部13aと第2の連通部14の出力部14aはそれぞれ開口されていて、運転席7と助手席8の間の空間9内で、運転席7側が非消音領域6となるように配置されている。すなわち、運転席7と助手席8の間にはセンターコンソール21が配置されていて、第1の連通部13の先端13aがセンターコンソール21よりも運転席7側に、第2の連通部14の先端14aがセンターコンソール21を挟んで反対側となる助手席5側の近傍には、その開口が上方となる車室内2の天井(上方)を向くように配置されている。図中22はハンドルを示す。
【0019】
本形態において、第1及び第2の音発生手段3,4は、図2に示すように、各出力部となる第1の連通部13の出力部13a及び第2の連通部14の出力部14aから助手席8の着座ポイントP1までの距離L1,L2が互いに等しく(等距離)なり、出力部13a及び出力部14aから運転席7の着座ポイントP2までの距離L3,L4が不等距離となるように配置されている。ここで言う、着座ポイントP1、P2とは、各座席に乗員が座った時の頭の中心位置をそれぞれ示す。出力部13aと出力部14aは、車両上方から見て(平面的に見て)着座ポイントP1を中心として同一円周上に位置するように配置されている。
【0020】
図4に示すように、ケース17は、内部に空間を有する2つのケース170,171を各ケースにそれぞれ形成されたフランジ部170A,171Aを接合させて図示しないボルトとナットなどの締結部材で締め付けることで一体化されている。ケース170,171は樹脂製であって、それぞれの内部空間を2分割するように隔壁170B,171Bが空間中央部に形成されている。図3は一方のケース170側の内部構成を示している。ケース171の内部構造もケース170と同様とされている。ケース170とケース171の違いは、ケース170には第3の連通部11と第2の連通路14が接続され、ケース171には第2の連通部13が接続されている点にある。ケース170,171の容積は略同一量とされている。
【0021】
本形態の車室内音制御装置10では、第3の連通部11が吸気通路19、詳しくは吸気通路19に設けられた図示しない周知のスロットル弁よりも吸気上流側で吸気通路19と接続しており、エンジン20が始動することで負圧化されるように構成されている。このため、第3の連通路11及び第3の空間部12Aの負圧は、エンジン20の運転状態が変化する事で増減するように構成されている。
【0022】
パドル18は、金属製もしくは樹脂製の薄い板材で形成されていて、その中央にはパドル18を横切るように支持軸18Bが溶接や溶着などで固定もしくは一体成形されている。支持軸18Bは、ケース170,171を接合する際に、フランジ部170A,171Aに挟み込まれてケース17の中心に位置されて回動自在に支持される。このため、パドル18は、第3の空間部12の圧力が変動することにより空間部12Aと空間部12Bの容積を変動するとともに、第1の空間部15と第2の空間部16の容積を変動するように構成されている。パドル18における第3の空間部12と対向する部位には、空間部12A,12Bを連通させる穴18Aが形成されている。このため、パドル18は、空間部12A,12Bの圧力状態に応じて、図4に示すように第1の空間部15側の容積が第2の空間部16よりも大きくなる第1作用位置と、図5に示すように第1の空間部15側の容積が第2の空間部16よりも小さくなる第2作用位置とを占めるように構成されている。
【0023】
このような構成の車室内音制御装置10では、パドル18が第3の連通部11から伝わる音振動によって振動して揺動する際に発する共振周波数とダクトとしての第1及び第2の連通路13,14長さで決まる気柱共鳴周波数とをコントロールすることで、エンジン回転上昇時(加速時)にある回転数でエンジン次数(周波数帯)の音圧を上昇させることができる。
【0024】
エンジン20が始動すると、吸気通路19に吸気音が発生し、第3の連通路11から伝わる音圧変動によりケース17の中心にあるパドル18が揺動される。これにより、第1の連通路13と第2の連通路14側から車室内2まで音圧変動が伝わり吸気音となって車室内2に侵入する。このとき、出力部13aから助手席8の着座ポイントP1までの距離L1と出力部14aから着座ポイントP1までの距離L2が等距離、すなわちL1=L2に設定されているので、侵入する音は、図6(a)に示すように、助手席8の乗員23には、位相差が180度異なる音として伝達されるので、その音は図6(b)に示すように、互いに打ち消し合うように作用する。このため、助手席8周辺に消音領域5が形成され、助手席8の乗員23には吸気音が聞こえなくなり、静粛性が確保される。
【0025】
一方、運転席7側においては、図7(a)に示すように、出力部13aから助手席8の着座ポイントP2までの距離L3と出力部14aから着座ポイントP2までの距離L4が不等距離に設定されているので、運転席7の周辺では、図7(b)に示すように吸気音の位相が互いに打ち消し合うことがない。このため、運転席9の乗員(ドライバー)24には吸気音が聞こえるようになり、乗員(ドライバー)24の加速感を満足させることができる。つまり、助手席8の静粛性を保ちつつも、運転席7側では力強いドライビングフィールを得ることができる。また、本形態では、排気音を車室内2に取り込んで、加速時のドライビングフィールを得ていないので、排気マフラーによる排気音のチューニングの必要がなく、車外に対する騒音を抑制することができる。
【0026】
ところで、車室内侵入した吸気音の音圧レベルは、パドル18の共振周波数と各連通路13,14の気柱共鳴周波数でチューニングでき、そのチューニング領域で音圧が上下する。エンジン回転数とスロットル開度の兼ね合いにより、ある回転数領域になると音圧レベルが上昇することから、力強く官能的な加速時のドライビングフィールを得られる。このような効果を出すエンジン回転数については、ケース17のチューニングを要し、ケース17のチューニングの効果が主に発揮されるのは、加速時であり、定常走行・減速時においては、その効果は発揮されない。
本実施形態では、運転席7と助手席8の間にセンターコンソール21が配置される場合を説明したが、センターコンソール21を配置しない仕様の場合は、車室2内の床面から各出力部を配置してもよい。
(第2の実施形態)
図8に示す車室内音制御装置30は、電子デバイスにより互いに180度異なる位相の音を発生させるものである。車室内音制御装置30は、車両1の車室内2に配置され、音を発生させる第1の音発生手段としてのスピーカー31、車室内2に配置されスピーカー31で発生される音と逆位相の音を発生させる第2の音発生手段としてのスピーカー32とを備えている。車室内音制御装置30は、車室内2にスピーカー31及び32から発せられた互いの音を干渉させて打ち消しあって騒音レベルが低減する消音領域50と、騒音レベルが消音領域50も大きい非消音領域60を発生させている。
【0027】
各スピーカー31,32のコーン部は出力部31a,32aとなり、運転席7と助手席8の間の空間9内に、運転席7側が非消音領域60となり、助手席8側が消音領域50となるように配置されている。すなわち、スピーカー31は運転席7と助手席8の間に設けたセンターコンソール21よりも運転席7側に、スピーカー32はセンターコンソール21を挟んで反対側となる助手席8側の近傍に、コーン部が車室内2の天井(上方)を向くようにそれぞれ配置されている。
【0028】
図9に示すように、スピーカー31,32は、各出力部31a,32aから助手席8の着座ポイントP1までの距離L1a,L2aが等距離となり、出力部31a,32aから運転席7の着座ポイントP2までの距離L3a,L4aが不等距離となるように配置されている。出力部31aと出力部32aは、車両上方から見て(平面的に見て)着座ポイントP1を中心として同一円周上に位置するようにした。
【0029】
各スピーカー31,32は増幅部としてのアンプ36に接続されている。このアンプ36は、制御手段37と接続されている。制御手段37は、周知のコンピュータで構成されていて、アンプ36の出力をエンジン20の運転状態に応じて増減するように制御している。エンジン20の運転状態は、例えばエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段としてのセンサ38からの信号で判断している。制御手段37は、エンジン20が始動すると、エンジン回転数に応じた出力量の、互いに180度位相野となる音をスピーカー31,32から発するようにアンプ36を制御している。
【0030】
エンジン20が始動すると、スピーカー31,32からは、助手席8の着座ポイントP1に向かって位相差が180度異なる音がそれぞれ発せられる。このとき、スピーカー31の出力部31aから助手席8の着座ポイントP1までの距離L1aとスピーカー32の出力部32aから着座ポイントP1までの距離L2aが互いに等しい距離に設定されているので、スピーカー31,32から発せられた音は、図6(b)に示すように、互いに打ち消し合うように作用する。このため、助手席8周辺が消音領域50となり、助手席8の乗員23には吸気音が聞こえなくなり、静粛性が確保される。
【0031】
一方、運転席7側においては、スピーカー31の出力部31aから運転席7の着座ポイントP2までの距離L3aとスピーカー32の出力部32aから着座ポイントP2までの距離L4aが不等距離に設定されているので、運転席7の周辺では、図7(b)に示すようにスピーカー31,32から発せられた音の位相が互いに打ち消し合うことがない。このため、運転席7の乗員(ドライバー)24にはスピーカー31からの音が聞こえるようになり、乗員(ドライバー)24の加速感を満足させることができる。つまり、助手席8の静粛性を保ちつつも、運転席7側では力強いドライビングフィールを得ることができる。また、本形態では、排気音を車室内2に取り込んで加速時のドライビングフィールを得ていないので、排気マフラーによる排気音のチューニングの必要がなく、車外に対する騒音を抑制することができる。
【0032】
第1及び第2の実施形態において、出力部13a,14a及び出力部31a,32aは、車両上方から見て(平面的に見て)着座ポイントP1を中心として同一円周上に配置するようにしたが、出力点の配置場所は、このような平面的な位置に限定されるものではなく、着座ポイントP1を中心として立体的に描く球状の周面上に位置するように配置されていれば、各出力点から着座ポイントP1までの距離を同一距離とすることができるので好ましい。
【0033】
この考えに基づけば、各出力点をセンターコンソール21側ではなく、助手席8とサイドドアとの間に配置することも可能であり、基本的にはこのような配置でもよい。ただ、サイドドアの近傍に配置する場合、設置スペースが狭く限られてしまう点、出力部からの音がサイドドアやサイドウインドなどで反射されて、その反射音による音の位相ずれが想定されるので、このようなことを考慮すると、運転席7と助手席8の間のような車室内2の中央寄りに配置するのが好ましいと言える。
【0034】
第1及び第2の実施形態では右ハンドルの場合を説明し、左ハンドルの車両の場合には、第1の音発生手段の出力部がセンターコンソール21よりも左側の後方よりに、第2の音発生手段の出力部をセンターコンソール21よりも右側の前方寄りに配置することで、右ハンドルの場合と同様の効果を得ることができる。
【0035】
次に、図10を用いて本願発明者が行った車室内騒音の計測結果について説明する。図10は、第1の実施形態の構成による車室内騒音を測定したものである。図10において縦軸は音圧レベルを示し、横軸はエンジン回転数を示す。試験は、運転席7と助手席8の乗員の耳の位置にマイクを設置し、エンジン回転数を上昇させながら加速しているときのマイクからの出力値を記録した。図10において、太い実線は運転席7の窓側の耳(運席窓耳)に相当する位置でのマイクからの出力値を示し、細い実線は運転席7の車幅方向中央側の耳(運席中耳)に相当する位置でのマイクからの出力値を示す。太い鎖線は助手席8の窓側の耳(助手席窓耳)に相当する位置でのマイクからの出力値を示し、細い鎖線は助手席8の車幅方向中央側の耳(助手席中耳)に相当する位置でのマイクからの出力値を示すものである。計測結果を考察してみると、運転席7側の音圧レベルよりも助手席8側の音圧レベルが明らかに低く、助手席8側に消音領域5が形成され、運転席7側に非消音領域6が形成されているものと推察できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態が適用された車両と車室内音制御装置の概略構成を示す平面視図である。
【図2】第1の実施形態における出力部の配置を示す拡大図である。
【図3】第1の実施形態の構成であるケースの一部と仕切部材の構成を示す分解斜視図である。
【図4】仕切部材の揺動とそれにより発生する周波数の関係を示す拡大図である。
【図5】仕切部材の揺動とそれにより発生する周波数が逆転した関係を示す拡大図である。
【図6】第1の実施形態による助手席側での消音作用を示す平面視図である。
【図7】第1の実施形態による運転席側での音波作用を示す平面視図である。である。
【図8】本発明の第2の実施形態が適用された車両と車室内音制御装置の概略構成を示す平面視図である。
【図9】第2の実施形態における出力部の配置を示す拡大図である。
【図10】本発明が適用された車両における運転席側と助手席側の音圧レベルの特性図である。
【符号の説明】
【0037】
1 車両
2 車室内
3 第1の音発生手段
4 第2の音発生手段
7 運転席
8 助手席
8 吸気導入側
10 車室内音制御装置
11 第1の連通部
12 第1の空間部
13 第2の連通部
13a 出力部
14 第3の連通部
14a 出力部
15 第2の空間部
16 第3の空間部
17 ケース
18 仕切部材
21 センターコンソール
30 車室内音制御装置
31 スピーカー
32 スピーカー
31a 出力部
32a 出力部
37 制御手段
L1,L2 距離
L3,L4 距離
L1a,L2a 距離
L3a,L4a 距離
P1 着座ポイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の出力部から、車両の車室内に音を発生させる第1の音発生手段と、
前記第1の出力部とは離れた第2の出力部から、前記第1の音発生手段で発生される音と逆位相の音を前記車室内に発生させる第2の音発生手段とを備え、
前記第1及び第2の出力部は、前記助手席の着座ポイントまでの距離が互いに等しくなるように配置されていることを特徴とする車室内音制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車室内音制御装置において、
前記第1及び第2の出力部は、前記運転席と助手席の間に配置されていることを特徴とする車室内音制御装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の車室内音制御装置において、
前記第1及び第2の出力部は、上方に向くように配置されていることを特徴とする車室内音制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかに記載の車室内音抑制装置において、
前記第1及び第2の音発生手段は、
前記第1出力部に接続されている第1の連通部が設けられる第1の空間部と、
前記第2の出力部に接続されている第2の連通部が設けられる第2の空間部と、
吸気導入側に接続されている第3の連通部が設けられる第3の空間部とを備えたケースであり、
前記ケースは、前記第3の空間部を2室に仕切るともに、前記第1の空間部と前記第2の空間部とを仕切るように前記ケースに揺動可能に支持され、前記第3の空間部の圧力変動により揺動する仕切部材とを更に備え、
前記仕切部材の揺動によって、互いに逆位相の音を前記第1及び第2の空間部を介して前記第1及び第2の出力部へ伝達するよう構成されていることを特徴とする車室内音制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし3の何れかに記載の車室内音抑制装置において、
前記第2の出力部は、前記車室内で音を発生させるスピーカーであり、
前記第1の出力部から発生される音と逆位相の音を、前記スピーカーから発生させる制御手段を更に備えていることを特徴とする車室内音制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−62718(P2008−62718A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240771(P2006−240771)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】