説明

車椅子収納装置

【課題】車椅子の回動軌跡を小さくして、収納ケースを小さくできる車椅子収納装置を提供すること。
【解決手段】収納ボックス10に対する移動手段30を、収容位置S−1から所定の角度をなす第1中間位置S−2までその先端を下方へ回動させつつ、車両側方の第2中間位置S−3まで移動させ、さらに下方へ回動させることにより取出位置S−4まで移動させ、取出位置S−4から逆の動作で第2中間位置S−3から上方へ回動させながら第1中間位置S−2を経由して収容位置S−1へ移動させるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の屋根上に設けた収納ボックスに車椅子を収納する車椅子収納装置に関し、特に、収納ボックスから車椅子が出入りするときの張出量を小さくできる車椅子収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の屋根上に車椅子を格納する車椅子格納装置が、特許文献1、2等に開示されている。特許文献1に記載の車椅子格納装置は、車両の屋根に固定された支持部材3、3に取り付けられた取付部材2に、車椅子20を格納する装置本体5が取り付けられている。装置本体5に車両側方にスライドするスライダ7が設けられ、スライダ7に車椅子20を吊り上げるための昇降モータ10が取り付けられている。
【0003】
そして、その図8、図9に示されるように、装置本体7(27)が車両Aの後方側に振り込んだ格納位置(図8)と車椅子20の昇降位置(図9)との間で往復回転できるようになっている。
スライダ7には軸体14が設けられ、この軸体14に逆U字状の車椅子保持体12がその頂部から偏心した位置で支持されている。車椅子保持体12の頂部にベルト13が挿通できる孔2aが設けられている。
【0004】
このように構成された車椅子格納装置による車椅子の格納動作は、スライダ7をガイドレール6に沿って車両の右方側に移動させ、完全に車両の屋根から突出させる。そしてベルト13のフック13aを車椅子20に引っ掛け、昇降モータ10を逆駆動させて車椅子20を吊り上げる。
すると車椅子20は折り畳まれながら上昇し、車椅子保持体12内に挿入されながら軸体14を中心に回動し、車椅子20が横向きになってスライダ7内に収容される。
そして、スライダ移動用モータ11を逆駆動させて、スライダ7を車両の屋根側に移動させて格納状態とする。
車椅子20を格納した装置本体5を車両の屋根と平行な方向で後方側に回動させることにより格納される。
【0005】
特許文献2の車椅子格納装置は、車両の屋根に固定されたベースフレーム11に対して横方向にスライドする第1フレーム20が組み付けられ、この第1フレーム20に横方向にスライドかつ回動可能に第2フレーム40が組み付けられている。
そして、第2フレーム40には第3フレーム60がスライド可能に、さらに第3フレーム60に第4フレーム70がスライド可能に取り付けられ、第4フレーム70の先端に設けた保持板73に車椅子100を保持するように構成している。
【0006】
このように構成された車椅子格納装置による車椅子の格納動作は、第1フレーム20をベースフレーム11から車両横方向に伸張させ、第2フレーム40が第1フレーム20の先端部位置で垂下している状態で、第3フレーム60と第4フレーム70をそれぞれ下限位置まで下降させ、ベルト35の先端の吊り金具37を車椅子100に接続し、電動プーリ38を駆動してベルト35を巻き上げる。
すると車椅子100は折り畳まれながら上昇し、保持板73に係止されながら第4フレーム70を押し上げ、さらに第3フレーム60がスライドして上昇する。
【0007】
そして、第4フレーム70に設けられた第2アーム75のベルトガイド76が、第2フレーム40に設けられたベルトガイド48に当接し、さらにベルト35が巻き取られると、第2フレーム40がスライド回動ローラ41を軸として回動を始め、車椅子100は水平方向へ回動する。そして、第1フレーム20内へ引き込まれる形で格納される。
なお、上記符号は特許文献1、2のそれぞれの符号を示し、後述する本件発明の符号とは合致しない。
【特許文献1】特開2000−237238号公報
【特許文献2】特開平11−20554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記特許文献1、2の車椅子格納装置では、車椅子をその上昇端から水平状態に回動する際、あるいは水平状態から垂直状態に回動する際に、回動軸となるスライダ7(フレーム20)を、車椅子が降下したときに車両の外板に接触しないように外側に位置させ、その位置で車椅子を回動する必要から、車椅子の回動軌跡が大きくなり、その分、車椅子の収納ケースが大きくなり、格納状態で無駄なスペースとなり重量も増すという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、車椅子の回動軌跡を小さくして、収納ケースを小さくできる車椅子収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る請求項1に記載の車椅子収納装置は、折り畳まれた状態の車椅子を収容可能で、下方に開放する出入口を有し、該出入口が車両の屋根上に位置する格納位置と、該出入口が車両側方に位置する出入位置との間で移動可能に車両に取り付けられる収納ボックスと、前記収納ボックス内に配置され、折り畳まれた状態の車椅子を保持可能な保持部材と、前記収納ボックスが前記出入位置にあるとき、前記保持部材を、保持した車椅子が前記出入口を経て前記車両側面に沿って垂下した状態となる取出位置と、保持した車椅子がその下部を車両側方へ向けて前記収納ボックス内で横倒し状態となる収容位置とに移動させるための移動手段と、前記収納ボックスが出入位置にあり、かつ前記保持部材が取出位置にある状態で、車椅子を前記保持部材から分離して路面上に位置する下降位置と前記保持部材に保持可能な上昇位置との間で昇降させる昇降手段と、を備えた車椅子収納装置であって、前記移動手段が、前記保持部材を、前記収容位置から所定の角度をなす第1中間位置までその先端を下方へ回動させた後、その角度を維持した状態で第2中間位置まで移動させ、該第2中間位置でさらに下方へ回動させることにより取出位置まで移動させ、取出位置から逆の動作で第2中間位置から所定の角度上方へ回動させ、その角度を維持した状態で第1中間位置を経由して収容位置へ移動させるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
よって、請求項1に記載の発明によれば、収容位置と取出位置の間で、保持部材に保持された車椅子が所定の角度をなした状態で第1中間位置と第2中間位置との間を移動させられるので、車椅子を90°回転させて移動させる軌跡より小さな回動軌跡で取り出し、収容が可能となり、収納ボックスの小型化と軽量化を図ることができる。
【0012】
また、本発明に係る請求項2に記載の車椅子収納装置は、請求項1に記載の車椅子収納装置であって、前記移動手段が、一端が前記保持部材に回動可能に連結され他端が前記収納ボックスに連結され、前記保持部材のスライド方向に略平行な方向で伸縮するアクチュエータと、前記保持部材に固定され、該保持部材と前記アクチュエータとの連結部に対して上下方向で偏心した位置に摺動部を有するアーム部材と、前記収納ボックスに設けられ、前記保持部材が収容位置にあるとき前記アーム部材の摺動部が位置し、前記アクチュエータの伸張により前記保持部材が前記収容位置から所定角度をなす第1中間位置まで下方へ回動するように前記アーム部材の回動を許容しつつスライドを規制する第1ガイド部と、前記保持部材が前記第1中間位置に回動したとき、更なる前記アクチュエータの伸張により前記保持部材が車両側方の第2中間位置までスライドするように前記アーム部材の回動を規制しつつ車両側方へのスライドを許容する第2ガイド部と、前記保持部材が前記第2中間位置にスライドしたとき、更なる前記アクチュエータの伸張により前記保持部材が取出位置まで回動するように前記アーム部材の回動を許容しつつスライドを規制する第3ガイド部とを有するガイド部材と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
よって、請求項3に記載の発明によれば、ガイド部材に第1、2、3ガイド部を一体的に設け、このガイド部にアーム部材の摺動部を係合させ、アーム部材にアクチュエータを連結したので、ベルトやチェーンによる駆動機構に比較して構造が単純な装置とすることができ、重量、コストの低減ができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車椅子収納装置によれば、車両の屋根上に格納された車椅子を出入位置に移動させた直後にアクチュエータを作動させて所定の角度をなす第1中間位置まで回動させ、この所定の角度を維持したまま第2中間位置までスライドさせるので、車椅子の回動軌跡が車両側方から大きく張り出さず、収納ボックスを小型化でき、また、車椅子の回動と移動をガイド部材とアーム部材と一のアクチュエータとにより構成するので、部品点数の少ない軽量な装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明に係る車椅子収納装置の一の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態の車椅子収納装置は、小型乗用車の屋根上に設けられたものである。
ここで、図1は、車椅子収納装置の収納ボックスを出入位置に回動した状態の車両の斜視図であり、図2は、移動手段の移動過程を示す側面図である。
【実施例】
【0016】
車椅子収納装置の構成について説明する。車椅子収納装置1は、図1に示すように、車両2のルーフ部21に設けたルーフキャリア3に取り付けられたフレーム50と、該フレーム50に取り付けられた図略の回動装置と、該回動装置により水平方向に回動可能に前記フレーム50に支持された収納ボックス10と、該収納ボックス10内に配置され、折り畳まれた状態の車椅子4(図1では略)を保持可能な保持部材20と、該保持部材20を移動させる移動手段30と、車椅子4を昇降させる昇降手段40(図6参照)と、を備えている。
【0017】
収納ボックス10は、折り畳まれた状態の車椅子4を収容可能で、下方に開放する出入口11を有し、収納ボックス10が前記回動装置により図1に示す矢印と反対方向に回動されて、該出入口11が車両2のルーフ部21と重複する位置に来る格納位置B−1(図5参照、以下同じ)と、図1に示す矢印の方向に回動されて該出入口11が車両2の側方上方(ルーフ部21と重複しない位置)に位置する出入位置B−2との間で回動可能にフレーム50に取り付けられる。
【0018】
保持部材20は、前記収納ボックス10内にスライド移動可能に配置され、折り畳まれた状態の車椅子4の最外側となる要部(通常は大車輪の外側に取り付けられ、手で回されるリング)を係合金具21に係合し、該係合金具21と保持部材20の平板部とで車椅子4を保持する平板状のものである。
移動手段30は、詳細を後述するように、前記収納ボックス10が出入位置B−2にあるとき、保持部材20を、保持した車椅子4が出入口11を経て車両2の側面に沿って垂下した状態となる取出位置S−4と、保持した車椅子4がその下部を車両2の側方へ向けて収納ボックス10内で横倒し状態となる収容位置S−1との間を移動させることが可能な機能を備えたものである。
【0019】
昇降手段40は、収納ボックス10が出入位置B−2にあり、かつ保持部材20が取出位置S−4にある状態で、車椅子4を保持部材20から分離して路面上に位置する下降位置W−2と、保持部材20に保持可能な上昇位置W−1との間で昇降させるもので、駆動モータとベルトからなる一般的なものである。
【0020】
本発明は、前記移動手段30に特徴を有するので、この部分について詳述する。移動手段30は、図1、図4に示すように、一端が前記保持部材20に回動可能に連結され他端が前記収納ボックス10に連結され、保持部材20のスライド方向に略平行な方向で伸縮するアクチュエータ31と、保持部材20に固定され、該保持部材20とアクチュエータ31とをその上端に設けた連結部321で連結する連結部材32と、該連結部321に対して上下方向で偏心した位置に摺動部を有し、保持部材20の左右両側に固定されたアーム部材33と、さらに、図2に示すように、収納ボックス10に設けられ、前記アーム部材33が係合し、保持部材20を収容位置S−1から取出位置S−4まで回動を規制しながら案内するガイド孔350を有するガイド部材35と、を備えている。
【0021】
連結部材32は、保持部材20の略中央部に、該保持部材20の上面から150°の角度で傾斜してアクチュエータ31に向かって取り付けられ、その上部先端の連結部321でアクチュエータ31とピンにより回動可能に連結されている。
【0022】
アーム部材33は、図3(B)に示すように、板材からなるアーム333と、該アーム333の一端に該アーム333を貫通して取り付けられた第1摺動ピン331と、該アーム333の他端で該アーム333から起立するように取り付けられた第2摺動ピン332とを備えている。
アーム333を貫通する第1摺動ピン331は、前記第2摺動ピン332が起立する側が該第2摺動ピン332と同一高さで貫通し、その反対側はそれより長い長さを有し、保持部材20の下面に溶接等で固定されている。
【0023】
第2摺動ピン332は、第1摺動ピン331からアクチュエータ31と反対側に向かって保持部材20の上面と60°の角度となるようにアーム333の他端に取り付けられている。
そして、第1摺動ピン331と第2摺動ピン332は、保持部材20の左右両端に、その外側に突出するように取り付けられ、そのピッチは、後述するガイド部材35の第1ガイド部351におよび第3ガイド部353に係合するようになっている。なお、これらの第1摺動ピン331、第2摺動ピン332が請求項の摺動部を構成する。
【0024】
ガイド部材35は、図1、図3ならびに図4に示すように、収納ボックス10の両側壁に取り付けられる板状のもので、中央部に図4に示すガイド孔350が設けられている。
ガイド孔350は、図2、図3に示すように、保持部材20が収容位置S−1にあるときアーム部材33の摺動部が位置し、アクチュエータ31の伸張により保持部材20が第1中間位置S−2まで回動するようにアーム部材33の回動を許容しつつスライドを規制する第1ガイド部351と、保持部材20が第1中間位置S−2に回動したとき、更なるアクチュエータ31の伸張により保持部材20が第2中間位置S−3までスライドするようにアーム部材33の回動を規制しつつ車両側方へのスライドを許容する第2ガイド部352と、保持部材20が第2中間位置S−3にスライドしたとき、更なるアクチュエータ33の伸張により保持部材20が取出位置S−4まで回動するようにアーム部材の回動を許容しつつスライドを規制する第3ガイド部353とを備えている。
【0025】
すなわち、第1ガイド部351は、第2ガイド部352の下辺より下方に削られ、保持部材20が収容位置S−1にあるとき第1摺動ピン331が係合する第1凹部351aと、該第1凹部351aから上方に連続し、第1摺動ピン331と第2摺動ピン332との外径間の距離を直径とする第1円弧部351bと、該第1円弧部351bに連続し、保持部材20が第1中間位置S−2に回動したとき第1摺動ピン331が係合する第2凹部351cと、該第2凹部351cの上部と連続する前記第2ガイド部352の上辺の延長線351dと、第2ガイド部352の上辺より上方に削られ、保持部材20が収容位置S−1にあるときの、第1摺動ピン331と第2摺動ピン332との外径を結ぶ線と平行な第1直線部351eと、該第1直線部351eに連続し、保持部材20が収容位置S−1にあるとき第2摺動ピン332が係合する第3凹部351fと、該第3凹部351fから下方に連続し、第1摺動ピン331と第2摺動ピン332との外径間の距離を直径とする第2円弧部351gと、該第2円弧部351gが前記第2ガイド部352の上辺に至る角部351hとを備えている。
【0026】
第2ガイド部352は、前記第1ガイド部351に連続し、保持部材20が第1中間位置S−2から第2中間位置S−3にスライド移動する際に、第1摺動ピン331と第2摺動ピン332が摺動する基本的に直線状の孔である。
【0027】
第3ガイド部353は、前記第2ガイド部352の、第1ガイド部351と反対側に連続して設けられ、保持部材20が第2中間位置S−3に達したときに第2ガイド部352と略同一高さ位置で第2摺動ピン332が係合する第4凹部353cと、該第4凹部353cから下方に連続し、保持部材20が取出位置S−4に回動したときに第1摺動ピン331と第2摺動ピン332との外径間の距離を直径とする第3円弧353bと、該第3円弧353bと連続し、保持部材20が取出位置S−4に回動したときに第2摺動ピン332が係合する第5凹部353aと、保持部材20が取出位置S−4にあるときに第1摺動ピン331と第2摺動ピン332との外径を結ぶ線と平行で第2ガイド部352の下辺と交差する第2直線部353gと、一方、前記第4凹部353cの上部と連続する前記第2ガイド部352の上辺の延長線353dと、第2ガイド部352の上辺より上方に削られ、保持部材20が取出位置S−4に回動したときに第1摺動ピン331と第2摺動ピン332との外径を結ぶ線と平行で第2ガイド部352の上辺の延長線353dと交差する第3直線部353eと、同じく保持部材20が取出位置S−4に回動したときに第1摺動ピン331が係合する第6凹部353fと、該第6凹部353fが前記第2ガイド部352の上辺に至る角部353hとを備えている。
【0028】
以上のように構成された本実施の形態の車椅子収納装置の作用について説明する。折り畳まれた状態の車椅子4が収納ボックス10内で車両2の屋根21上に格納された格納位置B−1から、水平方向に回動されて車椅子4が収納ボックス10の出入口11から出入り可能な出入位置B−2にある図6の状態では、アクチュエータ31は最も短縮した位置にあり、アーム部材33の第1、第2摺動ピン331、332がガイド孔350の第1ガイド部351に係合している。また、昇降手段40によりベルト41が巻き取られて最も短縮した状態にある。
すなわち、図2、図6(B)に示すように、第1摺動ピン331は第1ガイド部351の第1凹部351aに、第2摺動ピン332は同じく第3凹部351fにそれぞれ係合して、時計回りのこれ以上の回動は規制され、保持部材20が略水平の収容位置S−1にあって、車椅子4を水平状態に収容している。
【0029】
図6の収容位置S−1からアクチュエータ31を伸張させると、図7に示すように、アーム部材33の第1摺動ピン331が第1ガイド部351の第1円弧351bに沿い、また、第2摺動ピン332が第2円弧351gに沿って反時計回りに回動し、やがて第1摺動ピン331は第2凹部351cに、第2摺動ピン332は角部351hで第2円弧351gから外れて第2ガイド部352に至り、アーム部材33が略水平で連結部材32が略垂直に立ち上がった図2、図7(B)の状態となる。
【0030】
この連結部材32が略垂直に立ち上がった状態では、保持部材20ならびにこれに保持された車椅子4は、先端が水平位置から60°の角度をなす第1中間位置S−2まで下方へ回動する。すなわち、車椅子4は車両2に近い位置で、その側面の傾斜に略沿う形に回動された状態となる。
したがって、アーム部材33が車両側面に近い第1ガイド部351を回動中心として回動するので、車椅子4の回動軌跡が車両側面に近くなり、収納ボックス10の大きさが小さくできる。
【0031】
保持部材20が第1中間位置S−2にある状態から更にアクチュエータ31を伸張させると、アーム部材33が略水平で連結部材32が略垂直に立ち上がった状態を維持したままで、第1摺動ピン331と第2摺動ピン332が第2ガイド部352を図示左方に摺動し、図2、図8(B)に示すように、第2摺動ピン332が第3ガイド部の第4凹部353cに係合して、アーム部材33のこれ以上の摺動が規制され、第2中間位置S−3に位置する。
【0032】
この第2中間位置S−3からさらにアクチュエータ31の伸張を継続させると、アーム部材33の移動が規制された状態で連結部材32の連結部321が押圧されるので、アーム部材33が第3ガイド部353を中心として回動する。すなわち、第1摺動ピン331が第4凹部353cから出て第3円弧部353bを摺動して第5凹部353aに至ると同時に、第1摺動ピン331が第6凹部351fに嵌合して図9の状態で停止する。
この状態が、保持部材20が垂直となる取出位置S−4となるので、車椅子4を降下しても車両側面と所定の距離離れた位置で着地できる状態となる。
保持部材20に保持された車椅子4は上昇位置W−1にあるので、昇降手段40を作動させてベルト41を伸張させると、車椅子4は徐々に下降し、やがて地上に着地して下降位置W−2に至る。
その後、車椅子4からベルト41を外し、折り畳まれた車椅子4を広げて使用すればよい。以上により、車椅子4が使用可能な状態となる。
【0033】
次に、車椅子4を収納する手順を説明する。車椅子4を図9に示す下降位置W−2に置き、昇降手段40を作動させてベルト41を伸張させて、その先端のフック(図略)を降下させて車椅子4の座部の中央部に係合させ、昇降手段40を逆に作動させてベルト41を巻き上げる。
すると、フックが上昇するとともに車椅子4が折り畳まれながら上昇し、車椅子4の最外側となる要部が垂直状態にある保持部材20に設けられた係合金具21に係合し、図9(A)に示す上昇位置W−1に至る。
【0034】
この上昇位置W−1で、アクチュエータ31を短縮させると、まず、第2摺動ピン332が、第6凹部353fに係合している第1摺動ピン331を中心として時計回りに回動し、第3円弧353bに沿って摺動し、第4凹部353cに至り、さらに第1摺動ピン331が第6凹部353fから角部353hを通過して外れ第2ガイド部352に至る図8(B)の状態となる。
この状態では、アーム部材33が略水平となり、連結部材32が垂直となり、保持部材20が垂直から30°回動した第2中間位置S−3となる。
【0035】
この第2中間位置S−3からさらにアクチュエータ31を短縮させると、第1摺動ピン331と第2摺動ピン332は保持部材20を30°に保ったまま第2ガイド部352を図示右方に摺動し、やがて、第1摺動ピン331が第1凹部351aに入る。
第1摺動ピン331が第1凹部351aに入ると、第2摺動ピン332が角部351hを通過して第2円弧部351gを、第1摺動ピン331を回動中心として回動するように摺動し、第3凹部351fに至り、車椅子4は図6(A)に示す収容位置S−1に位置し、収容ボックス10内に収容される。
この後は、収容ボックス10をルーフ部21と平行に水平に回動して格納位置B−1とし、車椅子4を格納する。
【0036】
このように、本実施の形態の車椅子収納装置1によれば、収納ボックス10に対する移動手段30を、収容位置S−1から所定の角度をなす第1中間位置S−2までその先端を下方へ回動させつつ、車両側方の第2中間位置S−3まで移動させ、さらに下方へ回動させることにより取出位置S−4まで移動させ、取出位置S−4から逆の動作で第2中間位置S−3から上方へ回動させながら第1中間位置S−2を経由して収容位置S−1へ移動させるように構成したので、車椅子4の最外側の回動軌跡を小さくすることができ、その分収納ボックスの長さを短縮できるので、小型の乗用車、特にバックドアが跳ね上げ式の小型乗用車等の屋根の小さな車両の屋根上にも設置することが可能となった。
【0037】
なお、本発明は前記実施の形態のものに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施の形態では、収納ボックスを屋根上の格納位置と車両側方上部の出入位置とに移動させる手段として、収納ボックスを水平に回動して、車椅子の前後方向を車両の前後方向と交差する方向で格納するもので説明したが、特許文献2に記載されているように水平にスライドさせて車椅子の前後方向が車両の前後方向と平行に格納されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車椅子収納装置の、収納ボックスを出入位置に回動した状態の車両の斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る車椅子収納装置の、移動手段の移動過程を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る車椅子収納装置の移動手段に用いる、(A)はガイド部材の側面図であり、(B)はアーム部材の斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る車椅子収納装置の、保持部材と移動手段を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る車椅子収納装置の、収納ボックス、移動手段ならびに車椅子の移動過程を示す正面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る車椅子収納装置の、(A)は車椅子を収容した収納ボックスを出入位置に回動した正面図であり、(B)はそのときの移動手段の拡大図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る車椅子収納装置の、(A)は車移動手段により保持部材を第1中間位置に移動した正面図で、(B)はそのときの移動手段の拡大図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る車椅子収納装置の、(A)は車移動手段により保持部材を第2中間位置に移動した正面図で、(B)はそのときの移動手段の拡大図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る車椅子収納装置の、(A)は車移動手段により保持部材を取出位置に移動し、車椅子を上昇位置から下降位置に降ろす正面図で、(B)はそのときの移動手段の拡大図である。
【符号の説明】
【0039】
1 車椅子収納装置
10 収納ボックス
2 車両
20 保持部材
3 ルーフキャリア
30 移動手段
31 アクチュエータ
32 連結部材
33 アーム部材
35 ガイド部材
350 ガイド孔
4 車椅子
40 昇降手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれた状態の車椅子を収容可能で、下方に開放する出入口を有し、該出入口が車両の屋根上に位置する格納位置と、該出入口が車両側方に位置する出入位置との間で移動可能に車両に取り付けられる収納ボックスと、
前記収納ボックス内に配置され、折り畳まれた状態の車椅子を保持可能な保持部材と、
前記収納ボックスが前記出入位置にあるとき、前記保持部材を、保持した車椅子が前記出入口を経て前記車両側面に沿って垂下した状態となる取出位置と、保持した車椅子がその下部を車両側方へ向けて前記収納ボックス内で横倒し状態となる収容位置とに移動させるための移動手段と、
前記収納ボックスが出入位置にあり、かつ前記保持部材が取出位置にある状態で、車椅子を前記保持部材から分離して路面上に位置する下降位置と前記保持部材に保持可能な上昇位置との間で昇降させる昇降手段と、
を備えた車椅子収納装置であって、
前記移動手段が、
前記保持部材を、前記収容位置から所定の角度をなす第1中間位置までその先端を下方へ回動させた後、その角度を維持した状態で第2中間位置まで移動させ、該第2中間位置でさらに下方へ回動させることにより取出位置まで移動させ、取出位置から逆の動作で第2中間位置から所定の角度上方へ回動させ、その角度を維持した状態で第1中間位置を経由して収容位置へ移動させるように構成されていることを特徴とする車椅子収納装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車椅子収納装置であって、
前記移動手段が、
一端が前記保持部材に回動可能に連結され他端が前記収納ボックスに連結され、前記保持部材のスライド方向に略平行な方向で伸縮するアクチュエータと、
前記保持部材に固定され、該保持部材と前記アクチュエータとの連結部に対して上下方向で偏心した位置に摺動部を有するアーム部材と、
前記収納ボックスに設けられ、前記保持部材が収容位置にあるとき前記アーム部材の摺動部が位置し、前記アクチュエータの伸張により前記保持部材が前記収容位置から所定角度をなす第1中間位置まで下方へ回動するように前記アーム部材の回動を許容しつつスライドを規制する第1ガイド部と、
前記保持部材が前記第1中間位置に回動したとき、更なる前記アクチュエータの伸張により前記保持部材が車両側方の第2中間位置までスライドするように前記アーム部材の回動を規制しつつ車両側方へのスライドを許容する第2ガイド部と、
前記保持部材が前記第2中間位置にスライドしたとき、更なる前記アクチュエータの伸張により前記保持部材が取出位置まで回動するように前記アーム部材の回動を許容しつつスライドを規制する第3ガイド部とを有するガイド部材と、
を備えていることを特徴とする車椅子収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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