説明

車窓透過率制御装置

【課題】本発明は、トンネルを通行する際のドライバーの視覚的違和感を解消することができる、車窓透過率制御装置の提供を目的とする。
【解決手段】車両外の光量を検出する照度センサ1と、車両の走行路上に存在するトンネルを検出するナビゲーション装置4と、照度センサ1によって検出された光量を用いて算出されたトンネル内外の光量差に基づいて、車両がナビゲーション装置4によって検出されたトンネルに進入する前後の車両用調光ガラス6の透過率又はナビゲーション装置4によって検出されたトンネルから脱出する前後の車両用調光ガラス6の透過率を変化させる調光ECU5と、を備えることを特徴とする、車窓透過率制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルを通行する際の車窓の透過率を制御する、車窓透過率制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルへの車両の進入またはトンネルからの車両の脱出に応じて、車窓の透過度を変化させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された従来技術は、トンネルまでの所要時間が所定時間に達した地点から透過度をトンネルまでの距離に応じて徐々に下げていきトンネルまでの距離が零になる時点で透過度が約50%になるように制御し、トンネルに進入したことを検知した時、透過度を100%に戻すように制御する。一方、トンネルからの脱出を検知した場合に、透過度を約50%まで下げ、徐々に100%に戻すようにしている。
【特許文献1】特開2004−182006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、トンネル毎にその内部の照度は異なる。また、トンネルの外の照度は天候や季節や時刻などによって異なる。これらの相違があるにもかかわらず、上述の従来技術のように、可変させる透過度の目標値を一律に設定すると、必ずしも適正な透過度に調整されているとは限らず、ドライバーに視覚的違和感を与えるおそれがある。
【0004】
そこで、本発明は、トンネルを通行する際のドライバーの視覚的違和感を解消できる車窓透過率制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の車窓透過率制御装置は、
車両外の光量を検出する光量検出手段と、
車両の走行路上に存在するトンネルを検出するトンネル検出手段と、
前記光量検出手段によって検出された光量を用いて算出されたトンネル内外の光量差に基づいて、車両が前記トンネル検出手段によって検出されたトンネルに進入する前後の車窓の透過率又は前記トンネル検出手段によって検出されたトンネルから脱出する前後の車窓の透過率を変化させる透過率制御手段と、を備えることを特徴とする。これによって、トンネル毎にその内部の照度が異なっても、また、トンネルの外の照度が天候や季節や時刻などによって異なっても、トンネル内外の光量差に基づいて車窓の透過率が変化することで、トンネルの出入口を通過する際の相対的な光量変化によるドライバーの視覚的違和感を解消することができる。例えば、光量の絶対値が大きくなくても、相対的な光量変化が大きければ、その変化量によるドライバーの視覚的違和感が解消されるように車窓の透過率を適正値に制御することができる。
【0006】
ここで、前記透過率制御手段は、各地のトンネル内の光量を統計することによって算出された基準値と前記光量検出手段によってトンネル外で検出された光量との光量差に基づいて、トンネル進入前の車窓の透過率を変化させると好ましい。統計によってトンネル内の光量に関する平均値等の基準値を用いることによって実際のトンネル内の光量を近似することができる。したがって、そのような基準値を求めておき、トンネル外の光量との偏差に基づいて透過率を制御することにより実際の光量差の近似値に基づく透過率の制御を行うことができる。また、トンネルに進入する前のためにトンネル内の光量が検出できなくても、そのような基準値とトンネル進入前に検出された光量との光量差に基づいて、トンネル内外の光量差によるドライバーの視覚的違和感を解消することができるように、トンネルの入口に到達する前の車窓の透過率を適正値に制御することができる。
【0007】
また、車両の前方を撮影する撮影手段と、前記撮影手段によって撮影された画像の輝度に基づいて光量を推定する光量推定手段とを備え、前記透過率制御手段は、前記撮影手段によって撮影されたトンネルの画像の輝度に基づいて前記光量推定手段によって推定されたトンネル内の光量推定値と前記光量検出手段によってトンネル外で検出された光量との光量差に基づいて、トンネル進入前の車窓の透過率を変化させると好ましい。車両前方のトンネルが撮影された画像のうちトンネル部分の輝度からトンネル内部の光量を推定することができる。したがって、そのような光量推定値とトンネル外の光量との光量差に基づいて透過率を制御することにより実際の光量差の近似値に基づく透過率の制御を行うことができる。また、トンネルに進入する前のためにトンネル内の光量が検出できなくても、そのような光量推定値とトンネル進入前に検出された光量との光量差に基づいて、トンネル内外の光量差によるドライバーの視覚的違和感を解消することができるように、トンネルの入口に到達する前の車窓の透過率を適正値に制御することができる。
【0008】
また、前記透過率制御手段は、前記光量検出手段によってトンネル進入前に検出された光量と前記光量検出手段によってトンネル内で検出された光量との光量差に基づいて、トンネル進入後の車窓の透過率を変化させると好ましい。これによって、トンネル進入前後における光量変化に応じてトンネル進入後の車窓の透過率が変化するので、トンネル進入後のドライバーの視覚的違和感を解消することができる。
【0009】
また、前記透過率制御手段は、前記光量検出手段によってトンネル進入前に検出された光量と前記光量検出手段によってトンネル内で検出された光量との光量差に基づいて、トンネル脱出前の車窓の透過率を変化させると好ましい。これによって、トンネル進入前に検出された光量を脱出後のトンネル外の光量として代用して、トンネル内で検出された光量との差に基づいてトンネル脱出前の車窓の透過率を変化させることができる。したがって、トンネルから脱出する前のためにトンネルから脱出した後のトンネル外の光量が検出できなくても、そのような代用値とトンネル脱出前のトンネル内で検出された光量との光量差に基づいて、トンネル内外の光量差によるドライバーの視覚的違和感を解消することができるように、トンネルの出口に到達する前の車窓の透過率を適正値に制御することができる。
【0010】
また、前記透過率制御手段は、前記光量検出手段によってトンネル内で検出された光量と前記光量検出手段によってトンネル脱出後に検出された光量との光量差に基づいて、トンネル脱出後の車窓の透過率を変化させると好ましい。これによって、トンネル脱出前後における光量変化に応じてトンネル脱出後の車窓の透過率が変化するので、トンネル脱出後のドライバーの視覚的違和感を解消することができる。
【0011】
また、前記透過率制御手段は、前記光量差に基づいて車窓の透過率の目標値である目標透過率を算出し、更には、前記光量差に基づいて前記目標透過率まで車窓の透過率を変化させる時間を算出すると好ましい。このように算出された目標透過率や変化させる時間に従って車窓の透過率を変化させることで、トンネル内外の光量差によるドライバーの視覚的違和感を解消する車窓の透過率に適正に制御することができる。
【0012】
また、前記透過率制御手段は、前記目標透過率まで車窓の透過率を変化させた後には前記光量検出手段によって検出された光量に応じて車窓の透過率を変化させると好ましい。これによって、上記のように算出された目標透過率まで車窓の透過率を変化させた後は、車両がトンネル内部を走行している場合であってもトンネル外部を走行している場合であっても、走行中に検出される光量に応じた適正な車窓の透過率に制御することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トンネルを走行する際のドライバーの視覚的違和感を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。図1は、本発明に係る車窓透過率制御装置の一実施形態を示すブロック図である。車両に搭載される本実施形態の車窓透過率制御装置は、トンネルの入口や出口といった車両周囲の明るさが急激に変化するような状況において発生する現象(例えば、明るさの変化に目が追いつかず見えにくくなったり、まぶしくなったりする現象やトンネルの暗さが背景となることによって車窓が鏡面化する現象)を抑制することによって、ドライバーの視界を確保して視覚的違和感を解消し、運転の安全性を向上させるものである。
【0015】
照度センサ1は、車両の周囲の照度(光量)を検出するセンサであって、入射される光に照らされている面の明るさの度合いを検出するものである。照度センサ1は、検出された照度に応じた信号を出力する。照度センサ1は、例えば、検出された照度に応じて出力信号の周波数を変化させる集積回路を備え、検出照度が増加するにつれて出力するパルス信号の周波数を高くする。また、照度センサ1は、検出照度に応じて出力信号の出力電圧を変化させるものでもよく、例えば検出照度が増加するにつれて出力信号の電圧値を高くする。照度センサ1は、車両周囲の照度を検知しやすい場所に取付けられることが望ましく、例えば、車室内のインストルメントパネル上部といったフロントウィンドシールド周辺部や、リヤウィンドシールド周辺部に取付けられる。
【0016】
ボデーECU2は、照度センサ1の出力信号に基づいて、車両の周囲の照度の検出値を算出し、CANバス等の車載LAN3を介してその算出された照度検出値を調光ECU5に送信する。照度センサ1が演算装置や通信インターフェースなどを内蔵するインテリジェントタイプの場合には、ボデーECU2はなくてもよい。
【0017】
ナビゲーション装置4は、GPS装置と地図DB(データベース)を有している。GPS装置は、GPS受信機によるGPS衛星からの受信情報に基づいて、自車の位置を2次元若しくは3次元の座標データによって特定する装置である。一方、地図DBは、高精度の地図情報を記憶している。高精度の地図情報には、直線路、カーブ、分岐路、路面傾斜及びカント等の道路形状や地形に関する情報や、トンネル、交差点、踏切、駐車場、有料道路の料金所(ETCレーン)などの構造物の存在地点の情報がその地点の座標データとともに含まれている。ナビゲーション装置4の地図情報には、特に各トンネルの入口地点や出口地点の座標データ等の位置情報が含まれ、更には各トンネルの総延長距離やその内部の照度情報が含まれてもよい。地図DB内の地図情報は、車車間通信や路車間通信や所定の管理センターなどの外部との通信を介してリアルタイムに更新可能にしてもよく、あるいは、CDやDVDなどの媒体を介して更新可能にしてもよい。したがって、ナビゲーション装置4は、GPS装置により検出された車両位置と地図DB内の地図情報に基づいて、自車が地図上のどのような地点に位置しているのかを把握することができる。また、ナビゲーション装置4は、GPS装置により検出された車両位置に基づいて車両の進行している方向に存在するトンネルの出入口に関する座標データ等の位置情報を地図DBから抽出し、現在地点からトンネルの入口地点又は出口地点までの到達距離を算出することができる。また、ナビゲーション装置4は、例えば車速センサからの車速信号と地図情報を用いることによってGPS装置が使用できないトンネル内の走行位置や、現在地点からトンネルの入口地点又は出口地点までの所要時間を算出することができる。
【0018】
調光ECU5は、車載LAN3を介して、照度センサ1又はボデーECU2から照度検出値を取得したり、ナビゲーション装置4から到達距離や所要時間や地図情報を取得したりすることによって、調光ガラス6の透過率を変化させる調光制御を実行する。調光ECU5は、所定の周期で照度センサ1又はボデーECU2から照度検出値をサンプリングする。また、調光ECU5は、例えばナビゲーション装置4からの到達距離や所要時間並びに照度センサ1又はボデーECU2からの照度検出値に基づいて、調光ガラス6の目標透過率を算出するとともに、調光ガラス6の透過率の変更速度(目標透過率まで変化させる制御時間)を算出する。
【0019】
また、調光ECU5は、照度センサ1又はボデーECU2からの照度検出値に基づいて車両周囲の明るさの変化判定を行う。ボデーECU2が、車両周囲の明るさの変化判定をしてもよい。調光ECU5は、照度検出値を所定の周期でサンプリングし、照度検出値の変化速度が急激な照度変化とみなす所定の閾値以上になった場合には、車両がトンネルの入口地点又は出口地点を通過したと判断する。この閾値は、トンネル内と日中のトンネル外とが判別できる程度の値に設定される。ナビゲーション装置4が有する入口地点又は出口地点と自車の現在地点との関係に基づいて、車両がトンネルの入口地点又は出口地点を通過したか否かを判断することも可能である。また、照度センサ1等による照度検出値とナビゲーション装置4の位置情報とを併せて、トンネルの出入口の通過有無を判断してもよい。
【0020】
調光ガラス6は、制御ECU5から指令された制御量に応じてその透過率を変更する。調光ガラス6は、車両に設置された窓ガラスであって、例えばフロントガラス、リヤガラス、サイドガラスが挙げられる。調光ガラス6は、例えば、透明基板間の液晶層又はEL(エレクトロルミネッセンス)層の光学特性を制御ECU5からの制御量に従って電気的に変化させることによって透過率を変更することが可能なものである。
【0021】
それでは、車両周囲が暗くなる場合に(すなわち、トンネルに進入する場合)に本実施形態の車窓透過率制御装置がどのように動作するかについて説明する。
【0022】
図2は、ナビゲーション装置4が実行するトンネル入口判定処理を示すフローである。図2に示される入口判定処理は、例えば5msec周期の定期割り込み処理である。ナビゲーション装置4は、上述のように自車位置と地図情報と車速信号などに基づいて車両がトンネルの入口地点に到達するまでの所要時間又は到達距離を算出する(ステップ10)。所要時間又は到達距離が所定値以下の場合には、車両がトンネル入口地点付近を走行しているとして、トンネル入口判定フラグをオンにする(ステップ12)。所要時間又は到達距離がその所定値より大きい場合には、車両がトンネルの入口地点付近を走行していないとして、トンネル入口判定フラグをオフにする(ステップ14)。
【0023】
図3は、トンネル入口付近での調光ECU5が実行する調光制御開始判定処理を示すフローである。図3に示される調光制御開始判定処理は、例えば30msec周期の定期割り込み処理である。調光ECU5は、ナビゲーション装置4からトンネル入口判定フラグを受信し(ステップ20)、トンネル入口判定フラグがオンかオフかを判断する(ステップ22)。トンネル入口判定フラグがオンの場合には調光制御を開始する(ステップ24)。
【0024】
一方、図4は、調光ECU5が実行する調光制御終了判定処理を示すフローである。図4に示される調光制御終了判定処理は、例えば5msec周期の定期割り込み処理を示すフローである。調光ECU5は、照度センサ1又はボデーECU2から照度検出値を受信し(ステップ30)、車両周囲の明るさ変化判定を行う(ステップ32)。少なくとも前回以前に受信した照度検出値から今回受信した照度検出値を引いた値が所定の閾値以上の場合には、トンネルの入口地点の通過(トンネルへの進入)により急激に暗くなったとして、調光制御を終了する(ステップ34)。
【0025】
図5は、トンネル進入前に調光ECU5が実行する調光制御を示すフローである。図5に示される調光制御は、割り込み処理である。図3のステップ24においてトンネル入口判定フラグのオンにより調光制御が開始するとなると、調光ECU5は、ナビゲーション装置5によって算出された所要時間又は到達距離と照度センサ1によって検出された照度検出値に基づいて、調光制御を実行する制御時間tとトンネルの入口地点での目標とする最終透過率γを算出する(ステップ40)。制御時間tと最終透過率γは、図6のように示される。図6は、トンネルの入口地点OIN付近の調光ガラス6の透過率の変移を示した図である。そして、タイマカウンタTの値を零に設定し(ステップ42)、タイマカウンタTの値が図5のフローが繰り返されるたびにインクリメントされる。そして、ステップ46に記載の演算式に従って、調光ガラス6の透過率を初期透過率1から制御時間tの経過時に最終透過率γ(<1)となるように徐々に減少させる(ステップ44,46)。
【0026】
ここで、ステップ40における最終透過率γと制御時間tは、トンネル内外の光量差に基づいて算出される。ドライバーの視覚的違和感を抑制できるトンネル内外の光量差と最終透過率γ(又は制御時間t)との関係をシミュレーションや事前評価等によって予め求めておき、その関係を定めたマップに基づいて、トンネル内外の光量差に適した最終透過率γ及び制御時間tが算出され得る。したがって、トンネル内の光量やトンネル外の光量に応じて最終透過率γや制御時間tは異なる。
【0027】
トンネル内外の光量差を算出するにあたり、車両がトンネルの入口地点に到達する前の時点では、例えば、トンネル外の光量は照度センサ1によって検出し、トンネル内の光量は、各地に点在するトンネル内の光量の平均値を代用する。また、車両前方を撮影するカメラによる画像のトンネル部分の輝度に基づいて、トンネル内の光量を推定し、その推定値をトンネル内外の光量差の算出にあててもよい。トンネル部分の輝度とトンネル内の光量との対応関係は、学習やシミュレーション等によって構築すればよい。また、トンネル内の照度情報(光量情報)は、路車間通信や車車間通信等の車外との通信によって取得してもよい。また、トンネル通過毎に照度センサ1によって内部照度を計測して記憶保持したものを使用してもよい。
【0028】
なお、トンネルの入口地点の通過後は、トンネル内の光量を照度センサ1によって検出可能となるので、照度センサ1によって検出されたトンネル入口地点通過前後における光量差に基づいてトンネル進入後の制御時間s(図6参照)や目標透過率(図6の場合では、「1」)を算出し、それらの算出値に従って調光ガラス6の透過率を制御してもよい。
【0029】
それでは、車両周囲が明るくなる場合に(すなわち、トンネルから脱出する場合)に本実施形態の車窓透過率制御装置がどのように動作するかについて説明する。
【0030】
図7は、ナビゲーション装置4が実行するトンネル出口判定処理を示すフローである。図7に示される出口判定処理は、例えば30msec周期の定期割り込み処理である。ナビゲーション装置4は、上述のように地図情報と車速信号に基づいてトンネル内の車両の走行位置又はトンネルの出口地点に到達するまでの所要時間又は到達距離を算出する(ステップ50)。所要時間又は到達距離が所定値以下の場合には、車両がトンネル出口地点付近を走行しているとして、トンネル出口判定フラグをオンにする(ステップ52)。所要時間又は到達距離がその所定値より大きい場合には、車両がトンネルの出口地点付近を走行していないとして、トンネル出口判定フラグをオフにする(ステップ54)。
【0031】
図8は、調光ECU5が実行するトンネル脱出前の透過率算出処理を示すフローである。図8に示される透過率算出処理は、例えば30msec周期の定期割り込み処理である。調光ECU5は、ナビゲーション装置4からトンネル出口判定フラグを受信し(ステップ60)、トンネル出口判定フラグがオンかオフかを判断する(ステップ62)。トンネル出口判定フラグがオンの場合には、調光ガラス6の目標透過率をα(<1)に決定し(ステップ64)、調光ガラス6の透過率を一定の透過率αに変化させる調光制御を実行する(ステップ66)。この際、トンネル内での透過率の減少に対してドライバーの目を慣れさせるため、透過率αまでの減少を徐々に行うのが好ましい。
【0032】
ここで、ステップ64,66における目標透過率αは、トンネル内外の光量差に基づいて算出される。ドライバーの視覚的違和感を抑制できるトンネル内外の光量差と目標透過率αとの関係をシミュレーションや事前評価等によって予め求めておき、その関係を定めたマップに基づいて、トンネル内外の光量差に適した目標透過率αが算出され得る。したがって、トンネル内の光量やトンネル外の光量に応じて目標透過率αは異なる。
【0033】
トンネル内外の光量差を算出するにあたり、車両がトンネルの出口地点に到達する前の時点では、例えば、トンネル内の光量は照度センサ1によって検出し、トンネル出口地点側のトンネル外の光量は、照度センサ1によって検出されたトンネル入口地点側のトンネル外の光量を代用する。また、トンネル内外の光量差は、各地に点在するトンネルにおけるその内外の光量の差を統計することによって得られた平均値を代用してもよい。
【0034】
図9は、トンネル出口付近での調光ECU5が実行する調光制御開始判定処理を示すフローである。図9に示される調光制御開始判定処理は、例えば5msec周期の定期割り込み処理である。調光ECU5は、照度センサ1又はボデーECU2から照度検出値を受信し(ステップ70)、車両周囲の明るさ変化判定を行う(ステップ72)。今回受信した照度検出値から少なくとも前回以前に受信した照度検出値を引いた値が所定の閾値以上の場合には、トンネルの出口地点の通過(トンネルからの脱出)により急激に明るくなったとして、調光制御を開始する(ステップ74)。
【0035】
図10は、トンネル脱出後に調光ECU5が実行する調光制御を示すフローである。図10に示される調光制御は、割り込み処理である。図9のステップ74において急激に明るくなったと判定されると、調光ECU5は、ナビゲーション装置5によって算出された所要時間又は到達距離と照度センサ1によって検出された照度検出値に基づいて、調光制御を実行する制御時間tとトンネルの出口地点での初期透過率β(αとの大小関係は問わない)を算出する(ステップ80)。図11は、トンネルの出口地点OOUT付近の調光ガラス6の透過率の変移を示した図である。そして、タイマカウンタTの値を零に設定し(ステップ82)、タイマカウンタTの値が図10のフローが繰り返されるたびにインクリメントされる。そして、ステップ86に記載の演算式に従って、調光ガラス6の透過率を初期透過率βから制御時間tの経過時に目標透過率1となるように徐々に増加させる(ステップ84,86)。
【0036】
ここで、ステップ80における初期透過率βと制御時間tは、トンネル内外の光量差に基づいて算出される。ドライバーの視覚的違和感を抑制できるトンネル内外の光量差と初期透過率βとの関係をシミュレーションや事前評価等によって予め求めておき、その関係を定めたマップに基づいて、トンネル内外の光量差に適した初期透過率β及び制御時間tが算出され得る。したがって、トンネル内の光量やトンネル外の光量に応じて初期透過率βや制御時間tは異なる。
【0037】
なお、トンネルの出口地点の通過後は、トンネル外の光量を照度センサ1によって検出可能となるので、照度センサ1によって検出されたトンネル出口地点通過前後における光量差に基づいてトンネル脱出後の制御時間t(図11参照)や目標透過率(図11の場合では、「1」)を算出し、それらの算出値に従って調光ガラス6の透過率を制御してもよい。
【0038】
したがって、上述の実施形態によれば、トンネル毎にその内部の照度が異なっても、また、トンネルの外の照度が天候や季節や時刻などによって異なっても、トンネル内外の光量差に基づいて車窓の透過率が変化することで、トンネルの出入口を通過する際の相対的な光量変化によるドライバーの視覚的違和感を解消することができる。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0040】
例えば、トンネルに限らず、外光が制限される暗所を通行する前後の車窓の透過率を変化させてもよい。暗所として、ビルや鉄塔等の高層建造物の影ができる場所や高架下が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る車窓透過率制御装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】ナビゲーション装置4が実行するトンネル入口判定処理を示すフローである。
【図3】トンネル入口付近での調光ECU5が実行する調光制御開始判定処理を示すフローである。
【図4】調光ECU5が実行する調光制御終了判定処理を示すフローである。
【図5】トンネル進入前に調光ECU5が実行する調光制御を示すフローである。
【図6】トンネルの入口地点OIN付近の調光ガラス6の透過率の変移を示した図である。
【図7】ナビゲーション装置4が実行するトンネル出口判定処理を示すフローである。
【図8】調光ECU5が実行するトンネル脱出前の透過率算出処理を示すフローである。
【図9】トンネル出口付近での調光ECU5が実行する調光制御開始判定処理を示すフローである。
【図10】トンネル脱出後に調光ECU5が実行する調光制御を示すフローである。
【図11】トンネルの出口地点OOUT付近の調光ガラス6の透過率の変移を示した図である。
【符号の説明】
【0042】
1 照度センサ
2 ボデーECU
3 車載LAN
4 ナビゲーション装置
5 調光ECU
6 調光ガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外の光量を検出する光量検出手段と、
車両の走行路上に存在するトンネルを検出するトンネル検出手段と、
前記光量検出手段によって検出された光量を用いて算出されたトンネル内外の光量差に基づいて、車両が前記トンネル検出手段によって検出されたトンネルに進入する前後の車窓の透過率又は前記トンネル検出手段によって検出されたトンネルから脱出する前後の車窓の透過率を変化させる透過率制御手段と、を備えることを特徴とする、車窓透過率制御装置。
【請求項2】
前記透過率制御手段は、各地のトンネル内の光量を統計することによって算出された基準値と前記光量検出手段によってトンネル外で検出された光量との光量差に基づいて、トンネル進入前の車窓の透過率を変化させる、請求項1に記載の車窓透過率制御装置。
【請求項3】
車両の前方を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段によって撮影された画像の輝度に基づいて光量を推定する光量推定手段とを備え、
前記透過率制御手段は、前記撮影手段によって撮影されたトンネルの画像の輝度に基づいて前記光量推定手段によって推定されたトンネル内の光量推定値と前記光量検出手段によってトンネル外で検出された光量との光量差に基づいて、トンネル進入前の車窓の透過率を変化させる、請求項1に記載の車窓透過率制御装置。
【請求項4】
前記透過率制御手段は、前記光量検出手段によってトンネル進入前に検出された光量と前記光量検出手段によってトンネル内で検出された光量との光量差に基づいて、トンネル進入後の車窓の透過率を変化させる、請求項1に記載の車窓透過率制御装置。
【請求項5】
前記透過率制御手段は、前記光量検出手段によってトンネル進入前に検出された光量と前記光量検出手段によってトンネル内で検出された光量との光量差に基づいて、トンネル脱出前の車窓の透過率を変化させる、請求項1に記載の車窓透過率制御装置。
【請求項6】
前記透過率制御手段は、前記光量検出手段によってトンネル内で検出された光量と前記光量検出手段によってトンネル脱出後に検出された光量との光量差に基づいて、トンネル脱出後の車窓の透過率を変化させる、請求項1に記載の車窓透過率制御装置。
【請求項7】
前記透過率制御手段は、前記光量差に基づいて車窓の透過率の目標値である目標透過率を算出する、請求項1から6のいずれかに記載の車窓透過率制御装置。
【請求項8】
前記透過率制御手段は、前記光量差に基づいて前記目標透過率まで車窓の透過率を変化させる時間を算出する、請求項7に記載の車窓透過率制御装置
【請求項9】
前記透過率制御手段は、前記目標透過率まで車窓の透過率を変化させた後には前記光量検出手段によって検出された光量に応じて車窓の透過率を変化させる、請求項7又は8に記載の車窓透過率制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−126905(P2008−126905A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316086(P2006−316086)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】