車車間通信システム、車載装置、車車間通信方法及びプログラム
【課題】セキュリティ機能を実現するための認証処理を効率的に行なうことが可能な車車間通信技術を提供する。
【解決手段】本実施形態によれば、車両に搭載される車載装置は、無線通信装置と、認証情報取得装置と、情報送受信装置と、コントローラとを備えた構成である。認証情報取得装置は、前記無線通信装置を介して路側装置との間で認証処理を実行し、道路の特定エリアでの正当性を示す認証情報を取得する。情報送受信装置は、前記無線通信装置を介して、他の車両に搭載された他の車載装置との間で前記認証情報を含む情報の送受信を行なう。コントローラは、前記認証情報に基づいて、前記情報送受信装置による前記認証情報以外の情報の送受信を制御する。
【解決手段】本実施形態によれば、車両に搭載される車載装置は、無線通信装置と、認証情報取得装置と、情報送受信装置と、コントローラとを備えた構成である。認証情報取得装置は、前記無線通信装置を介して路側装置との間で認証処理を実行し、道路の特定エリアでの正当性を示す認証情報を取得する。情報送受信装置は、前記無線通信装置を介して、他の車両に搭載された他の車載装置との間で前記認証情報を含む情報の送受信を行なう。コントローラは、前記認証情報に基づいて、前記情報送受信装置による前記認証情報以外の情報の送受信を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、セキュリティ機能を有する車車間通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば700MHz帯や5.8GHz帯などの電波を使用して、各車両に搭載された車載器間で無線通信を行なう車車間通信技術の開発が検討されている。このような車車間通信を利用することにより、道路を走行している車両のユーザは、他の車両の車載器から交通安全上の情報、安全運転支援の情報や交通状況の情報を取得することが可能となる。
【0003】
具体例としては、例えば道路の交差点において、見通しの悪い角に位置している車両や建物の陰に存在する車両に対して、交通安全上の注意を与えるための情報を提供することが可能となる。また、走行方向の前方にいる車両から、例えばブレーキ情報、ウィンカー情報、走行速度情報などの事象情報を受信することにより、前方の道路上での車両の状態や交通渋滞などを認識することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−60789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車車間通信では、交通安全上の情報、安全運転支援の情報や交通状況の情報を交換するため、不特定または不適切な車両の車載器との通信を回避し、通信の相手方が正当であることを検証するセキュリティ機能を実現するための認証処理が必要である。
【0006】
しかしながら、各車載器間での無線通信による認証処理は、実際の道路上においては困難であることが予想される。例えば交差点や渋滞した道路上では、緊急的な情報を送る必要があるため、認証処理に要する通信も含めて、できるだけ通信トラフィックを抑制することが望ましい。
【0007】
具体的には、緊急情報を受信する度に、相手方の正当性をチェックするための認証処理を実行することは、時間的なオーバーヘッドが増大する。また、交差点などにおいて、短時間に現れては走り去る車両との認証処理は、実際上不可能である。特に、多くの車両が渋滞状態にあり、追突防止をしようとすれば、1台の車両が複数の車両と認証しなければならない。また、受信側も最初の1回の認証のままでは、相手が何時走り去るかは予想できないなどの課題がある。そこで、セキュリティ機能を実現するための認証処理を効率的に行なうことが可能な車車間通信技術が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態によれば、車両に搭載される車載装置は、無線通信手段と、認証情報取得手段と、情報送受信手段と、制御手段とを備えた構成である。認証情報取得手段は、前記無線通信手段を介して路側装置との間で認証処理を実行し、道路の特定エリアでの正当性を示す認証情報を取得する。情報送受信手段は、前記無線通信手段を介して、他の車両に搭載された他の車載装置との間で前記認証情報を含む情報の送受信を行なう。制御手段は、前記認証情報に基づいて、前記情報送受信手段による前記認証情報以外の情報の送受信を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に関するシステムの構成を説明するためのブロック図。
【図2】実施形態に関する車車間通信の効果を説明するための図。
【図3】実施形態に関する車車間通信と交通状況の関係を説明するための図。
【図4】実施形態に関するシステムの動作を説明するための図。
【図5】実施形態に関する路側装置の動作を説明するためのフローチャート。
【図6】実施形態に関する車載器の動作を説明するためのフローチャート。
【図7】実施形態に関する車載器の情報送信動作を説明するためのフローチャート。
【図8】実施形態に関する車載器の情報受信動作を説明するためのフローチャート。
【図9】実施形態に関するシステムの動作を説明するためのタイミングチャート。
【図10】他の実施形態に関する車載器の動作を説明するためのフローチャート。
【図11】他の実施形態に関する車載器の動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面を参照して、実施形態を説明する。
【0011】
[システムの構成]
本実施形態のシステムは大別して、各車両に搭載された車載器10A,10Bと、路側装置20とからなる情報通信システムである。ここでは、便宜的に、一方の車両に搭載された車載器10Aに対して、他方の車両に搭載された車載器10Bが通信相手の車載器とする。各車載器10A,10B及び路側装置20はそれぞれ、電波を受発信するためのアンテナを含む無線通信装置11A,11B,21を有する。これらの無線通信装置11A,11B,21は、例えばDSRC(dedicated short range communication)と呼ばれる狭域無線通信方式で、車載器間(車車間)または車載器と路側装置間(路車間)での情報通信を行うための無線通信装置である。
【0012】
車載器10A,10Bはそれぞれ、GPS(global positioning system)装置12A,12B、コントローラ13A,13B、及びメモリ14A,14Bを有する。GPS装置12A,12Bは、車両の現在位置を示す位置情報を出力する。コントローラ13A,13Bは、コンピュータから構成されており、後述する認証情報、位置情報、及び事象情報を含む情報を処理する情報処理機能及び装置全体の制御機能を有する。メモリ14A,14Bは、コントローラ13A,13Bにより制御されて、認証情報、位置情報、及び事象情報を記憶する。
【0013】
また、コントローラ13A,13Bは、外付けされた表示装置30A,30Bを制御し、GPS装置12A,12Bから出力された位置情報や、無線通信装置11A,11Bにより受信した事象情報などをディスプレイ上に表示させる。
【0014】
なお、車載器10A,10Bは、DSRC方式の無線通信装置11A,11Bだけでなく、赤外線通信方式による通信装置を有し、相互に情報通信を行なう構成でも良い。
【0015】
[システムの動作]
以下、本実施形態のシステムの動作を説明する。
【0016】
まず、本実施形態のシステムは、図2及び図3に示すように、道路上の特定エリアである交差点300での車車間通信に有効である。即ち、図2に示すように、交差点300に接近する各車両100A,100Bが存在している場合に、建物200により、各車両100A,100Bのユーザが互いに確認できない状態になることがある。このような場合に、各車載器10A,10B間の車車間通信により、相互に、例えば交差点300に接近することを示す情報を送信することができる。
【0017】
さらに、図3に示すように、交差点300及びその近傍エリアにおいて、多くの車両100A〜100Fが渋滞状態で走行している場合に、本実施形態のシステムは、各車載器10A〜10F間での認証処理を効率的に行なう上で有効である。
【0018】
以下、図4から図9を参照して、本実施形態のシステムの動作を具体的に説明する。
【0019】
図4に示すように、道路上の交差点及びその近傍エリアにおいて、予め決められた位置に複数の路側装置20が配置されている。なお、図4は便宜的に、路側装置20の本体は図示せずに、それぞれの無線通信装置21A〜21Dを示す。また、1台の路側装置20が例えば交差点の近傍で図示しない場所に設置されており、各無線通信装置21A〜21Dが1台の路側装置20に接続されている構成でもよい。各無線通信装置21A〜21Dはそれぞれ、所定の範囲210A〜210D内での狭域無線通信により路車間通信を行なう。
【0020】
このような路側装置20と、走行する各車両に搭載している車載器との間で、本実施形態の車車間通信に必要な認証処理を、図5、6のフローチャート及び図9のタイミングチャートを参照して説明する。以下、フローチャートの各ステップをSnで示し、図9のタイミングチャートのタイミングをTnで示す。
【0021】
路側装置20は、無線通信装置21Aを介して、狭域無線通信範囲210Aに存在する例えば車両100Aの車載器10Aとの間で通信を開始する(S1、T1)。路側装置20は、所定の手順に基づいて認証処理を実行する(S2、T2)。具体的には、路側装置20は、車載器10AからID情報などを受信し、当該ID情報が正当であるか否かを判定する(S3)。なお、本実施形態では、路側装置20は、各車両と比較して正当性を確保することが容易であるため、予め正当であることを前提とする。また、路側装置20及び正当な車載器はそれぞれ、相互に認証処理を実行する周知の機器認証機能(機器認証のための鍵情報の管理機能も含む)を有する。
【0022】
路側装置20は、認証処理により、通信相手の車載器10Aが正当であると判定した場合には、特定エリアで有効となる認証情報(K)を発行し、車載器10Aに送信する(S4、T3)。ここで、特定エリアとは、例えば、図4に示すような道路上の交差点及びその近傍エリアである。路側装置20は、認証処理により正当でないと判定した場合には、認証情報(K)を発行せずに、所定のエラー処理を実行する(S3のNO、S5)。エラー処理としては、例えば認証できない旨のメッセージを車載器10Aに送信するなどの処理である。
【0023】
一方、図6に示すように、車両100Aの車載器10Aは、無線通信装置11Aを介して、路側装置20との間で通信を開始する(S11)。車載器10Aは、路側装置20との認証処理により正当であると判定された場合には、路側装置20から送信される認証情報(K)を受信する(S12〜S14)。車載器10Aのコントローラ13Aは、無線通信装置11Aを介して、受信した認証情報(K)をメモリ14Aに格納する(T4)。
【0024】
このような路側装置20との認証処理は、図4に示すように、例えば狭域無線通信範囲210Bを通過した車両100Bの車載器10Bに対しても実行される。車両100Bの車載器10Bは、路側装置20との認証処理により正当であると判定された場合には、車両100Aの車載器10Aと同様に、路側装置20から送信される認証情報(K)を受信する。即ち、車載器10Bのコントローラ13Bは、無線通信装置11Bを介して、受信した認証情報(K)をメモリ14Bに格納する。この認証情報(K)は、前述したように、図4に示すような道路上の交差点及びその近傍エリアで有効な認証情報である。
【0025】
次に、図7及び図8のフローチャートを参照して、認証された車載器10A,10B間での車車間通信の手順を具体的に説明する。
【0026】
ここでは、図4に示すように、車両100Aが交差点に向かって走行中に、例えば前方の車両100Eが交差点に入ってきたので、ユーザがブレーキを操作したとする。即ち、図7に示すように、ブレーキの操作という事象が発生したものとする(S21のYES、T5)。車載器10Aのコントローラ13Aは、当該ブレーキを操作したことを示すブレーキ情報を事象情報として生成する。
【0027】
さらに、コントローラ13Aは、メモリ14Aに格納されている認証情報(K)及びGPS装置12Aからの位置情報を取得し、事象情報、認証情報(K)及び位置情報を含む送信用情報を生成する(S22)。車載器10Aのコントローラ13Aは、生成した送信用情報を、無線通信装置11Aを介して送信(発信)する(S23、T6)。
【0028】
一方、図4に示すように、車両100Bは車両100Eの後方に位置している。車両100Bのユーザは、建物200により、交差点に向かって走行中の車両100Aを確認できない状態とする。図8に示すように、車両100Bの車載器10Bは、無線通信装置11Bを介して、車載器10Aから送信された事象情報、認証情報(K)及び位置情報を含む送信用情報を受信する(S31のYES、T7)。
【0029】
ここで、車両100Aの車載器10Aから発信された送信用情報は、車両100Bの車載器10Bだけでなく、これ以外の車両100C〜100Fの車載器10C〜10Fのいずれかも受信する可能性がある。
【0030】
車両100Bの車載器10Bは、受信した情報から車載器10Aの認証情報(K)を取り出して、認証情報の判別処理を実行する(S32、T8)。即ち、車載器10Bのコントローラ13Bは、メモリ14Bに格納されている認証情報(K)を取り出して、車載器10Aの認証情報(K)との比較処理を行なう(S33)。
【0031】
車載器10Bのコントローラ13Bは、比較結果により各認証情報(K)が同一であれば、図4に示すような道路上の交差点及びその近傍エリアで、車両100Aの車載器10Aが正当に認証されたものであると判定する(S33のYES)。一方、比較結果により各認証情報(K)が不一致の場合には、車載器10Bのコントローラ13Bは、車載器10Aが正当に認証されていないものとして判定する(S33のNO、T11)。具体的には、コントローラ13Bは、車載器10Aから受信した情報の全てを無効として処理する。
【0032】
車載器10Bのコントローラ13Bは、車載器10Aが正当に認証されている場合には、受信した情報を有効として、所定の処理を実行する(S34、T10)。即ち、コントローラ13Bは、受信した情報から位置情報と事象情報を取り出して、解析処理を実行する(T9)。具体的には、コントローラ13Bは、位置情報及び事象情報の解析結果に基づいて、図4に示すように、車建物200で視覚的には確認できないが、交差点に向かって走行中の車両100Aの存在と、その車両100がブレーキを操作したことを確認できる。
【0033】
コントローラ13Bは、表示装置30Bを制御し、位置情報及び事象情報の解析結果をディスプレイ上に表示してもよい。これにより、車載器10Bのユーザは、ディスプレイ上で、交差点に接近している車両100Aの存在などを視覚的に確認することが可能となる。従って、車両100Bのユーザは、交差点に接近する車両100Aを意識しながら、スピードを落とすことが可能となる。
【0034】
以上のようにして、例えば道路上の交差点及びその近傍エリアという特定エリアにおいて、走行中の各車両は、それぞれの搭載している車載器間の車車間通信により、車両の位置情報及び事象情報を送受信できる。これにより、各車載器は、受信した情報に含まれる位置情報及び事象情報の解析し、解析結果に基づいて交差点に接近する車両の存在などを確認できる。なお、事象情報としては、ブレーキ情報以外にも、ウィンカー情報や走行速度情報なども含まれる。
【0035】
各車載器は、車車間通信により受信した情報を解析することにより、車両のユーザに対して、例えば交差点でのほかの車両の存在や走行状態などを通知して、安全運転支援を行なうことが可能となる。具体的には、他の車両に注意を与えることや、前方や後方の車両がどのような状態であるかを通知することも可能であるため、安全運転支援などに有効である。また、特定エリアが交通渋滞の頻発エリアでは、各車載器は、車車間通信により受信した情報を解析することにより、各車両の走行速度の平均値を算出することにより、渋滞の程度などを確認できる。さらに、特定エリアが急カーブで見通しの悪い場所では、各車載器は、受信した情報を解析することにより、接近する対向車両の存在を確認できる。
【0036】
ここで、車車間通信を行なうできる各車載器は、正当性を確保された路側装置20により正当性を認証されている。従って、正当性が証明されない不正な車載器とは、車車間通信による情報交換は無効となるため、セキュリティを確実に確保することができる。具体的には、特定エリアで有効な認証を受けた車載器間の情報送受信が有効となるため、特定エリア以外に存在する車両の車載器が送信した情報を、誤って利用するような事態を回避することができる。又逆に、特定エリア以外に存在する車両の車載器が、有効ではない情報を受信するような事態を回避することができる。
【0037】
更に、本実施形態の認証方式は、車車間通信で特定エリアでの認証処理を実行せずに、路車間通信での認証処理の結果を利用する方式である。即ち、路車間通信での認証処理を、いわば代替認証処理とする間接的な車車間通信での認証処理を行なう。換言すれば、車車間での間接的相互認証機能を実現することができる。従って、特定エリアにおいて、多数の車載器間での認証処理を省略し、かつ車載器間での認証機能を確保できるため、車車間通信での認証処理の効率を向上させることができる。
【0038】
なお、路側装置20は、暗号情報を含む認証情報を発行する方式でもよい。具体的には、送信側の車載器(10A)は、当該暗号情報により暗号化した送信用情報を送信する。一方、送信側の車載器(10B)は、認証情報により正当性が認証された場合に、受信した情報を、認証情報に含まれる暗号情報により復号化する。暗号情報は、共通鍵方式の暗号情報または公開鍵方式の暗号情報でもよい。
【0039】
[他の実施形態]
図10及び図11のフローチャートは、他の実施形態を説明するためのフローチャートである。なお、システムの構成は、図1に示すものと同様のため説明を省略する。また、路車間の認証処理は、図5及び図6のフローチャートに示すものと同様のため説明を省略する。
【0040】
図10のフローチャートを参照して、道路上の特定エリアとして、例えば太鼓橋のような前方の見通しが悪いエリアを想定した場合のシステムの動作を説明する。
【0041】
ここでは、車両100Aが太鼓橋の前方に位置し、車両100Bが後方に位置している場合とする。車両100Aの車載器10Aは、無線通信装置11Aを介して、認証情報(K)、位置情報、事象情報を含む送信用情報を送信する。後方の車両100Bの車載器10Bは、無線通信装置11Bを介して送信用情報を受信し、認証情報(K)に基づいて前述のような間接的相互認証を行なう。
【0042】
後方の車両100Bの車載器10Bは、前方の車両100Aの車載器10Aが正当であると判定すると、受信した情報に含まれる事象情報を解析し、前方の車両100Aの走行速度情報を取得する(ステップS41)。さらに、車載器10Bは、前方の車両100Aの位置情報を使用して、当該車両100Aと自身との車間距離を算出する(ステップS42)。車載器10Bは、前方の車両100Aの走行速度情報及び車間距離を、表示装置30Bのディスプレイ上に表示する(ステップS43)。これにより、車載器10Bのユーザは、ディスプレイ上で、前方の車両100Aの存在、その走行速度、及び車間距離を視覚的に確認することが可能となる。従って、車両100Bのユーザは、前方の見通しが悪い太鼓橋での交通渋滞の状況を推測できる。
【0043】
このような車車間通信による情報の送受信により、後方の車両100Bの車載器10Bは、前方の車両100Aの走行速度情報と車間距離に基づいて、前方の見通しが悪い太鼓橋のようなエリアでの交通渋滞の状況を認識できる。即ち、例えば、前方の車両100Aの走行速度が低速であり、その車間距離が相対的に長い場合には、かなり渋滞している状況を把握することが可能となる。又、逆に、前方の車両100Aの車載器10Aは、後方の車両100Bの走行速度情報と車間距離に基づいて、太鼓橋のようなエリアでの交通渋滞の状況を認識できる。
【0044】
次に、図11のフローチャートを参照して、道路上の特定エリアとして、例えば高速道路や有料道路のある入口から出口までのエリアを想定した場合のシステムの動作を説明する。
【0045】
例えば車両100Aが有料道路の入口ゲートを通過するときに、車両100Aの車載器10Aは、当該入口ゲートに設置された路側装置20との間で認証処理を実行する。車載器10Aは、正当であると判定された場合には、入口ゲートの路側装置20から送信される認証情報を受信する(ステップS51)。車載器10Aのコントローラ13Aは、受信した認証情報をメモリ14Aに格納する(ステップS52)。
【0046】
ここで、車両100Aの車載器10Aは、当該入口ゲートの路側装置20から同一の認証情報を受信した例えば車両100Bの車載器10Bとの間で、前述したような車車間通信により位置情報や事象情報の交換を行なうことができる。
【0047】
次に、車両100Aが有料道路の出口ゲートを通過するときに、車両100Aの車載器10Aは、当該出口ゲートに設置された路側装置20との間で通信する。路側装置20は、車載器10Aに対して、入口ゲートで受信した認証情報を消去するためのコマンドを送信する。これにより、車載器10Aのコントローラ13Aは、受信した認証情報をメモリ14Aから消去する(ステップS53)。
【0048】
このような路車間通信により、例えば高速道路や有料道路の特定エリア(指定の入口ゲートから出口ゲートまでの有効範囲)から外れた場合には、車両100Aの車載器10Aから、路側装置20から受信した認証情報を消去できる。これにより、車両100Aの車載器10Aは、高速道路や有料道路から一般道路に移行したときには、高速道路や有料道路を走行している車両100Bの車載器10Bとの車車間通信を無効にすることができる。
【0049】
高速道路や有料道路は、必ずしも一般道路と離れた位置にあるとは限らず、場所によっては近接している場合もある。このような場合に、一般道路に移行した車両の車載器が、高速道路や有料道路で受信した認証情報をそのまま維持していると、高速道路や有料道路を走行している車両の車載器から不要な情報を受信する可能性がある。不要な情報を有効な情報として受信すると、一般道路に移行した車両のユーザに対して、走行している一般道路の交通状況とは全く無関係な情報を提供するという不都合がある。従って、このような不都合を、本実施形態の認証情報の消去機能を実現することにより回避することができる。
【0050】
なお、本実施形態の認証情報の消去機能は、特定エリアとして入口と出口により有効範囲を限定できる駐車場のような場合に有効である。この場合には、車両が駐車場の中に存在する場合に車車間通信を有効とし、駐車場から一般道路に移行した場合には車車間通信を無効にすることができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
10A〜10F…車載器、11A,11B…無線通信装置、
12A,12B…GPS装置、13A,13B…コントローラ、
14A,14B…メモリ、20…路側装置、21…無線通信装置、
30A,30B…表示装置、100A〜100F…車両。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、セキュリティ機能を有する車車間通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば700MHz帯や5.8GHz帯などの電波を使用して、各車両に搭載された車載器間で無線通信を行なう車車間通信技術の開発が検討されている。このような車車間通信を利用することにより、道路を走行している車両のユーザは、他の車両の車載器から交通安全上の情報、安全運転支援の情報や交通状況の情報を取得することが可能となる。
【0003】
具体例としては、例えば道路の交差点において、見通しの悪い角に位置している車両や建物の陰に存在する車両に対して、交通安全上の注意を与えるための情報を提供することが可能となる。また、走行方向の前方にいる車両から、例えばブレーキ情報、ウィンカー情報、走行速度情報などの事象情報を受信することにより、前方の道路上での車両の状態や交通渋滞などを認識することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−60789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車車間通信では、交通安全上の情報、安全運転支援の情報や交通状況の情報を交換するため、不特定または不適切な車両の車載器との通信を回避し、通信の相手方が正当であることを検証するセキュリティ機能を実現するための認証処理が必要である。
【0006】
しかしながら、各車載器間での無線通信による認証処理は、実際の道路上においては困難であることが予想される。例えば交差点や渋滞した道路上では、緊急的な情報を送る必要があるため、認証処理に要する通信も含めて、できるだけ通信トラフィックを抑制することが望ましい。
【0007】
具体的には、緊急情報を受信する度に、相手方の正当性をチェックするための認証処理を実行することは、時間的なオーバーヘッドが増大する。また、交差点などにおいて、短時間に現れては走り去る車両との認証処理は、実際上不可能である。特に、多くの車両が渋滞状態にあり、追突防止をしようとすれば、1台の車両が複数の車両と認証しなければならない。また、受信側も最初の1回の認証のままでは、相手が何時走り去るかは予想できないなどの課題がある。そこで、セキュリティ機能を実現するための認証処理を効率的に行なうことが可能な車車間通信技術が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態によれば、車両に搭載される車載装置は、無線通信手段と、認証情報取得手段と、情報送受信手段と、制御手段とを備えた構成である。認証情報取得手段は、前記無線通信手段を介して路側装置との間で認証処理を実行し、道路の特定エリアでの正当性を示す認証情報を取得する。情報送受信手段は、前記無線通信手段を介して、他の車両に搭載された他の車載装置との間で前記認証情報を含む情報の送受信を行なう。制御手段は、前記認証情報に基づいて、前記情報送受信手段による前記認証情報以外の情報の送受信を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に関するシステムの構成を説明するためのブロック図。
【図2】実施形態に関する車車間通信の効果を説明するための図。
【図3】実施形態に関する車車間通信と交通状況の関係を説明するための図。
【図4】実施形態に関するシステムの動作を説明するための図。
【図5】実施形態に関する路側装置の動作を説明するためのフローチャート。
【図6】実施形態に関する車載器の動作を説明するためのフローチャート。
【図7】実施形態に関する車載器の情報送信動作を説明するためのフローチャート。
【図8】実施形態に関する車載器の情報受信動作を説明するためのフローチャート。
【図9】実施形態に関するシステムの動作を説明するためのタイミングチャート。
【図10】他の実施形態に関する車載器の動作を説明するためのフローチャート。
【図11】他の実施形態に関する車載器の動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面を参照して、実施形態を説明する。
【0011】
[システムの構成]
本実施形態のシステムは大別して、各車両に搭載された車載器10A,10Bと、路側装置20とからなる情報通信システムである。ここでは、便宜的に、一方の車両に搭載された車載器10Aに対して、他方の車両に搭載された車載器10Bが通信相手の車載器とする。各車載器10A,10B及び路側装置20はそれぞれ、電波を受発信するためのアンテナを含む無線通信装置11A,11B,21を有する。これらの無線通信装置11A,11B,21は、例えばDSRC(dedicated short range communication)と呼ばれる狭域無線通信方式で、車載器間(車車間)または車載器と路側装置間(路車間)での情報通信を行うための無線通信装置である。
【0012】
車載器10A,10Bはそれぞれ、GPS(global positioning system)装置12A,12B、コントローラ13A,13B、及びメモリ14A,14Bを有する。GPS装置12A,12Bは、車両の現在位置を示す位置情報を出力する。コントローラ13A,13Bは、コンピュータから構成されており、後述する認証情報、位置情報、及び事象情報を含む情報を処理する情報処理機能及び装置全体の制御機能を有する。メモリ14A,14Bは、コントローラ13A,13Bにより制御されて、認証情報、位置情報、及び事象情報を記憶する。
【0013】
また、コントローラ13A,13Bは、外付けされた表示装置30A,30Bを制御し、GPS装置12A,12Bから出力された位置情報や、無線通信装置11A,11Bにより受信した事象情報などをディスプレイ上に表示させる。
【0014】
なお、車載器10A,10Bは、DSRC方式の無線通信装置11A,11Bだけでなく、赤外線通信方式による通信装置を有し、相互に情報通信を行なう構成でも良い。
【0015】
[システムの動作]
以下、本実施形態のシステムの動作を説明する。
【0016】
まず、本実施形態のシステムは、図2及び図3に示すように、道路上の特定エリアである交差点300での車車間通信に有効である。即ち、図2に示すように、交差点300に接近する各車両100A,100Bが存在している場合に、建物200により、各車両100A,100Bのユーザが互いに確認できない状態になることがある。このような場合に、各車載器10A,10B間の車車間通信により、相互に、例えば交差点300に接近することを示す情報を送信することができる。
【0017】
さらに、図3に示すように、交差点300及びその近傍エリアにおいて、多くの車両100A〜100Fが渋滞状態で走行している場合に、本実施形態のシステムは、各車載器10A〜10F間での認証処理を効率的に行なう上で有効である。
【0018】
以下、図4から図9を参照して、本実施形態のシステムの動作を具体的に説明する。
【0019】
図4に示すように、道路上の交差点及びその近傍エリアにおいて、予め決められた位置に複数の路側装置20が配置されている。なお、図4は便宜的に、路側装置20の本体は図示せずに、それぞれの無線通信装置21A〜21Dを示す。また、1台の路側装置20が例えば交差点の近傍で図示しない場所に設置されており、各無線通信装置21A〜21Dが1台の路側装置20に接続されている構成でもよい。各無線通信装置21A〜21Dはそれぞれ、所定の範囲210A〜210D内での狭域無線通信により路車間通信を行なう。
【0020】
このような路側装置20と、走行する各車両に搭載している車載器との間で、本実施形態の車車間通信に必要な認証処理を、図5、6のフローチャート及び図9のタイミングチャートを参照して説明する。以下、フローチャートの各ステップをSnで示し、図9のタイミングチャートのタイミングをTnで示す。
【0021】
路側装置20は、無線通信装置21Aを介して、狭域無線通信範囲210Aに存在する例えば車両100Aの車載器10Aとの間で通信を開始する(S1、T1)。路側装置20は、所定の手順に基づいて認証処理を実行する(S2、T2)。具体的には、路側装置20は、車載器10AからID情報などを受信し、当該ID情報が正当であるか否かを判定する(S3)。なお、本実施形態では、路側装置20は、各車両と比較して正当性を確保することが容易であるため、予め正当であることを前提とする。また、路側装置20及び正当な車載器はそれぞれ、相互に認証処理を実行する周知の機器認証機能(機器認証のための鍵情報の管理機能も含む)を有する。
【0022】
路側装置20は、認証処理により、通信相手の車載器10Aが正当であると判定した場合には、特定エリアで有効となる認証情報(K)を発行し、車載器10Aに送信する(S4、T3)。ここで、特定エリアとは、例えば、図4に示すような道路上の交差点及びその近傍エリアである。路側装置20は、認証処理により正当でないと判定した場合には、認証情報(K)を発行せずに、所定のエラー処理を実行する(S3のNO、S5)。エラー処理としては、例えば認証できない旨のメッセージを車載器10Aに送信するなどの処理である。
【0023】
一方、図6に示すように、車両100Aの車載器10Aは、無線通信装置11Aを介して、路側装置20との間で通信を開始する(S11)。車載器10Aは、路側装置20との認証処理により正当であると判定された場合には、路側装置20から送信される認証情報(K)を受信する(S12〜S14)。車載器10Aのコントローラ13Aは、無線通信装置11Aを介して、受信した認証情報(K)をメモリ14Aに格納する(T4)。
【0024】
このような路側装置20との認証処理は、図4に示すように、例えば狭域無線通信範囲210Bを通過した車両100Bの車載器10Bに対しても実行される。車両100Bの車載器10Bは、路側装置20との認証処理により正当であると判定された場合には、車両100Aの車載器10Aと同様に、路側装置20から送信される認証情報(K)を受信する。即ち、車載器10Bのコントローラ13Bは、無線通信装置11Bを介して、受信した認証情報(K)をメモリ14Bに格納する。この認証情報(K)は、前述したように、図4に示すような道路上の交差点及びその近傍エリアで有効な認証情報である。
【0025】
次に、図7及び図8のフローチャートを参照して、認証された車載器10A,10B間での車車間通信の手順を具体的に説明する。
【0026】
ここでは、図4に示すように、車両100Aが交差点に向かって走行中に、例えば前方の車両100Eが交差点に入ってきたので、ユーザがブレーキを操作したとする。即ち、図7に示すように、ブレーキの操作という事象が発生したものとする(S21のYES、T5)。車載器10Aのコントローラ13Aは、当該ブレーキを操作したことを示すブレーキ情報を事象情報として生成する。
【0027】
さらに、コントローラ13Aは、メモリ14Aに格納されている認証情報(K)及びGPS装置12Aからの位置情報を取得し、事象情報、認証情報(K)及び位置情報を含む送信用情報を生成する(S22)。車載器10Aのコントローラ13Aは、生成した送信用情報を、無線通信装置11Aを介して送信(発信)する(S23、T6)。
【0028】
一方、図4に示すように、車両100Bは車両100Eの後方に位置している。車両100Bのユーザは、建物200により、交差点に向かって走行中の車両100Aを確認できない状態とする。図8に示すように、車両100Bの車載器10Bは、無線通信装置11Bを介して、車載器10Aから送信された事象情報、認証情報(K)及び位置情報を含む送信用情報を受信する(S31のYES、T7)。
【0029】
ここで、車両100Aの車載器10Aから発信された送信用情報は、車両100Bの車載器10Bだけでなく、これ以外の車両100C〜100Fの車載器10C〜10Fのいずれかも受信する可能性がある。
【0030】
車両100Bの車載器10Bは、受信した情報から車載器10Aの認証情報(K)を取り出して、認証情報の判別処理を実行する(S32、T8)。即ち、車載器10Bのコントローラ13Bは、メモリ14Bに格納されている認証情報(K)を取り出して、車載器10Aの認証情報(K)との比較処理を行なう(S33)。
【0031】
車載器10Bのコントローラ13Bは、比較結果により各認証情報(K)が同一であれば、図4に示すような道路上の交差点及びその近傍エリアで、車両100Aの車載器10Aが正当に認証されたものであると判定する(S33のYES)。一方、比較結果により各認証情報(K)が不一致の場合には、車載器10Bのコントローラ13Bは、車載器10Aが正当に認証されていないものとして判定する(S33のNO、T11)。具体的には、コントローラ13Bは、車載器10Aから受信した情報の全てを無効として処理する。
【0032】
車載器10Bのコントローラ13Bは、車載器10Aが正当に認証されている場合には、受信した情報を有効として、所定の処理を実行する(S34、T10)。即ち、コントローラ13Bは、受信した情報から位置情報と事象情報を取り出して、解析処理を実行する(T9)。具体的には、コントローラ13Bは、位置情報及び事象情報の解析結果に基づいて、図4に示すように、車建物200で視覚的には確認できないが、交差点に向かって走行中の車両100Aの存在と、その車両100がブレーキを操作したことを確認できる。
【0033】
コントローラ13Bは、表示装置30Bを制御し、位置情報及び事象情報の解析結果をディスプレイ上に表示してもよい。これにより、車載器10Bのユーザは、ディスプレイ上で、交差点に接近している車両100Aの存在などを視覚的に確認することが可能となる。従って、車両100Bのユーザは、交差点に接近する車両100Aを意識しながら、スピードを落とすことが可能となる。
【0034】
以上のようにして、例えば道路上の交差点及びその近傍エリアという特定エリアにおいて、走行中の各車両は、それぞれの搭載している車載器間の車車間通信により、車両の位置情報及び事象情報を送受信できる。これにより、各車載器は、受信した情報に含まれる位置情報及び事象情報の解析し、解析結果に基づいて交差点に接近する車両の存在などを確認できる。なお、事象情報としては、ブレーキ情報以外にも、ウィンカー情報や走行速度情報なども含まれる。
【0035】
各車載器は、車車間通信により受信した情報を解析することにより、車両のユーザに対して、例えば交差点でのほかの車両の存在や走行状態などを通知して、安全運転支援を行なうことが可能となる。具体的には、他の車両に注意を与えることや、前方や後方の車両がどのような状態であるかを通知することも可能であるため、安全運転支援などに有効である。また、特定エリアが交通渋滞の頻発エリアでは、各車載器は、車車間通信により受信した情報を解析することにより、各車両の走行速度の平均値を算出することにより、渋滞の程度などを確認できる。さらに、特定エリアが急カーブで見通しの悪い場所では、各車載器は、受信した情報を解析することにより、接近する対向車両の存在を確認できる。
【0036】
ここで、車車間通信を行なうできる各車載器は、正当性を確保された路側装置20により正当性を認証されている。従って、正当性が証明されない不正な車載器とは、車車間通信による情報交換は無効となるため、セキュリティを確実に確保することができる。具体的には、特定エリアで有効な認証を受けた車載器間の情報送受信が有効となるため、特定エリア以外に存在する車両の車載器が送信した情報を、誤って利用するような事態を回避することができる。又逆に、特定エリア以外に存在する車両の車載器が、有効ではない情報を受信するような事態を回避することができる。
【0037】
更に、本実施形態の認証方式は、車車間通信で特定エリアでの認証処理を実行せずに、路車間通信での認証処理の結果を利用する方式である。即ち、路車間通信での認証処理を、いわば代替認証処理とする間接的な車車間通信での認証処理を行なう。換言すれば、車車間での間接的相互認証機能を実現することができる。従って、特定エリアにおいて、多数の車載器間での認証処理を省略し、かつ車載器間での認証機能を確保できるため、車車間通信での認証処理の効率を向上させることができる。
【0038】
なお、路側装置20は、暗号情報を含む認証情報を発行する方式でもよい。具体的には、送信側の車載器(10A)は、当該暗号情報により暗号化した送信用情報を送信する。一方、送信側の車載器(10B)は、認証情報により正当性が認証された場合に、受信した情報を、認証情報に含まれる暗号情報により復号化する。暗号情報は、共通鍵方式の暗号情報または公開鍵方式の暗号情報でもよい。
【0039】
[他の実施形態]
図10及び図11のフローチャートは、他の実施形態を説明するためのフローチャートである。なお、システムの構成は、図1に示すものと同様のため説明を省略する。また、路車間の認証処理は、図5及び図6のフローチャートに示すものと同様のため説明を省略する。
【0040】
図10のフローチャートを参照して、道路上の特定エリアとして、例えば太鼓橋のような前方の見通しが悪いエリアを想定した場合のシステムの動作を説明する。
【0041】
ここでは、車両100Aが太鼓橋の前方に位置し、車両100Bが後方に位置している場合とする。車両100Aの車載器10Aは、無線通信装置11Aを介して、認証情報(K)、位置情報、事象情報を含む送信用情報を送信する。後方の車両100Bの車載器10Bは、無線通信装置11Bを介して送信用情報を受信し、認証情報(K)に基づいて前述のような間接的相互認証を行なう。
【0042】
後方の車両100Bの車載器10Bは、前方の車両100Aの車載器10Aが正当であると判定すると、受信した情報に含まれる事象情報を解析し、前方の車両100Aの走行速度情報を取得する(ステップS41)。さらに、車載器10Bは、前方の車両100Aの位置情報を使用して、当該車両100Aと自身との車間距離を算出する(ステップS42)。車載器10Bは、前方の車両100Aの走行速度情報及び車間距離を、表示装置30Bのディスプレイ上に表示する(ステップS43)。これにより、車載器10Bのユーザは、ディスプレイ上で、前方の車両100Aの存在、その走行速度、及び車間距離を視覚的に確認することが可能となる。従って、車両100Bのユーザは、前方の見通しが悪い太鼓橋での交通渋滞の状況を推測できる。
【0043】
このような車車間通信による情報の送受信により、後方の車両100Bの車載器10Bは、前方の車両100Aの走行速度情報と車間距離に基づいて、前方の見通しが悪い太鼓橋のようなエリアでの交通渋滞の状況を認識できる。即ち、例えば、前方の車両100Aの走行速度が低速であり、その車間距離が相対的に長い場合には、かなり渋滞している状況を把握することが可能となる。又、逆に、前方の車両100Aの車載器10Aは、後方の車両100Bの走行速度情報と車間距離に基づいて、太鼓橋のようなエリアでの交通渋滞の状況を認識できる。
【0044】
次に、図11のフローチャートを参照して、道路上の特定エリアとして、例えば高速道路や有料道路のある入口から出口までのエリアを想定した場合のシステムの動作を説明する。
【0045】
例えば車両100Aが有料道路の入口ゲートを通過するときに、車両100Aの車載器10Aは、当該入口ゲートに設置された路側装置20との間で認証処理を実行する。車載器10Aは、正当であると判定された場合には、入口ゲートの路側装置20から送信される認証情報を受信する(ステップS51)。車載器10Aのコントローラ13Aは、受信した認証情報をメモリ14Aに格納する(ステップS52)。
【0046】
ここで、車両100Aの車載器10Aは、当該入口ゲートの路側装置20から同一の認証情報を受信した例えば車両100Bの車載器10Bとの間で、前述したような車車間通信により位置情報や事象情報の交換を行なうことができる。
【0047】
次に、車両100Aが有料道路の出口ゲートを通過するときに、車両100Aの車載器10Aは、当該出口ゲートに設置された路側装置20との間で通信する。路側装置20は、車載器10Aに対して、入口ゲートで受信した認証情報を消去するためのコマンドを送信する。これにより、車載器10Aのコントローラ13Aは、受信した認証情報をメモリ14Aから消去する(ステップS53)。
【0048】
このような路車間通信により、例えば高速道路や有料道路の特定エリア(指定の入口ゲートから出口ゲートまでの有効範囲)から外れた場合には、車両100Aの車載器10Aから、路側装置20から受信した認証情報を消去できる。これにより、車両100Aの車載器10Aは、高速道路や有料道路から一般道路に移行したときには、高速道路や有料道路を走行している車両100Bの車載器10Bとの車車間通信を無効にすることができる。
【0049】
高速道路や有料道路は、必ずしも一般道路と離れた位置にあるとは限らず、場所によっては近接している場合もある。このような場合に、一般道路に移行した車両の車載器が、高速道路や有料道路で受信した認証情報をそのまま維持していると、高速道路や有料道路を走行している車両の車載器から不要な情報を受信する可能性がある。不要な情報を有効な情報として受信すると、一般道路に移行した車両のユーザに対して、走行している一般道路の交通状況とは全く無関係な情報を提供するという不都合がある。従って、このような不都合を、本実施形態の認証情報の消去機能を実現することにより回避することができる。
【0050】
なお、本実施形態の認証情報の消去機能は、特定エリアとして入口と出口により有効範囲を限定できる駐車場のような場合に有効である。この場合には、車両が駐車場の中に存在する場合に車車間通信を有効とし、駐車場から一般道路に移行した場合には車車間通信を無効にすることができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
10A〜10F…車載器、11A,11B…無線通信装置、
12A,12B…GPS装置、13A,13B…コントローラ、
14A,14B…メモリ、20…路側装置、21…無線通信装置、
30A,30B…表示装置、100A〜100F…車両。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載装置であって、
無線通信手段と、
前記無線通信手段を介して路側装置との間で認証処理を実行し、道路の特定エリアでの正当性を示す認証情報を取得する認証情報取得手段と、
前記無線通信手段を介して、他の車両に搭載された他の車載装置との間で前記認証情報を含む情報の送受信を行なう情報送受信手段と、
前記認証情報に基づいて、前記情報送受信手段による前記認証情報以外の情報の送受信を制御する制御手段と
を具備したことを特徴とする車載装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記認証情報取得手段により取得された認証情報と、前記他の車載装置から送信された認証情報とが一致するか否かを判定し、
前記判定結果が一致の場合に前記認証情報以外の情報の送受信を有効にし、前記判定結果が不一致の場合に当該送受信を無効にするように制御することを特徴とする請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記情報送受信手段により受信された情報を処理する情報処理手段を有し、
前記情報処理手段は、
前記受信された情報から前記特定エリアでの交通状況を認識する情報を作成するように構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項4】
前記情報送受信手段は、
前記認証情報以外の情報として、車載装置の位置を示す位置情報及び車両の状態を示す事象情報を含む情報を送受信するように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項5】
前記情報処理手段は、
前記情報送受信手段から受信された車載装置の位置を示す位置情報及び車両の状態を示す事象情報を使用して、前記特定エリアでの前記他の車両との相互距離、接近状況、交通混雑状況のいずれかを示す情報を作成するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の車載装置。
【請求項6】
前記認証情報取得手段は、前記認証情報とそれに含まれる暗号情報を取得し、
前記情報送受信手段は、前記認証情報に含まれる暗号情報により暗号化された暗号化情報を受信し、
前記制御手段は、前記認証情報に基づいて正当性が認証された前記他の車載装置から送信された暗号化情報を、前記認証情報取得手段により取得された暗号情報を使用して復号化するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車載装置。
【請求項7】
前記認証情報取得手段は、
前記特定エリアが有料道路の場合に、当該有料道路の入口で前記認証情報を取得してメモリに記憶し、
前記有料道路の出口で前記メモリから前記認証情報を消去するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車載装置。
【請求項8】
車両のそれぞれに搭載された各車載装置の間で無線通信による情報通信を行なう車車間通信システムであって、
前記無線通信により各車載装置のそれぞれに、道路の特定エリアでの正当性を示す認証情報を送信する路側装置を有し、
前記各車載装置は、
前記路側装置から送信された前記認証情報を受信する手段と、
前記無線通信により他の車載装置との間で前記認証情報を含む情報の送受信を行なう情報送受信手段と、
前記認証情報に基づいて、前記情報送受信手段による前記認証情報以外の情報の送受信を制御する制御手段と
を具備したことを特徴とする車車間通信システム。
【請求項9】
前記制御手段は、
前記認証情報取得手段により取得された認証情報と、前記他の車載装置から送信された認証情報とが一致するか否かを判定し、
前記判定結果が一致の場合に前記認証情報以外の情報の送受信を有効にし、前記判定結果が不一致の場合に当該送受信を無効にするように制御することを特徴とする請求項8に記載の車載装置。
【請求項10】
車両のそれぞれに搭載された各車載装置の間で無線通信による情報通信を行なう車車間通信システムに適用する通信方法であって、
前記各車載装置は、
前記無線通信により、道路の特定エリアでの正当性を示す認証情報を路側装置から受信する処理と、
前記無線通信により他の車載装置との間で前記認証情報を含む情報の送受信を行なう処理と、
前記認証情報に基づいて前記認証情報以外の情報の送受信を制御する処理と
を実行することを特徴とする車車間通信方法。
【請求項11】
車両に搭載される車載装置に組み込まれるコンピュータにより実行されるプログラムであって、
前記無線通信により、道路の特定エリアでの正当性を示す認証情報を路側装置から受信する手段と、
前記無線通信により他の車載装置との間で前記認証情報を含む情報の送受信を行なう手段と、
前記認証情報に基づいて前記認証情報以外の情報の送受信を制御する手段と
して動作させるプログラム。
【請求項1】
車両に搭載される車載装置であって、
無線通信手段と、
前記無線通信手段を介して路側装置との間で認証処理を実行し、道路の特定エリアでの正当性を示す認証情報を取得する認証情報取得手段と、
前記無線通信手段を介して、他の車両に搭載された他の車載装置との間で前記認証情報を含む情報の送受信を行なう情報送受信手段と、
前記認証情報に基づいて、前記情報送受信手段による前記認証情報以外の情報の送受信を制御する制御手段と
を具備したことを特徴とする車載装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記認証情報取得手段により取得された認証情報と、前記他の車載装置から送信された認証情報とが一致するか否かを判定し、
前記判定結果が一致の場合に前記認証情報以外の情報の送受信を有効にし、前記判定結果が不一致の場合に当該送受信を無効にするように制御することを特徴とする請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記情報送受信手段により受信された情報を処理する情報処理手段を有し、
前記情報処理手段は、
前記受信された情報から前記特定エリアでの交通状況を認識する情報を作成するように構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項4】
前記情報送受信手段は、
前記認証情報以外の情報として、車載装置の位置を示す位置情報及び車両の状態を示す事象情報を含む情報を送受信するように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項5】
前記情報処理手段は、
前記情報送受信手段から受信された車載装置の位置を示す位置情報及び車両の状態を示す事象情報を使用して、前記特定エリアでの前記他の車両との相互距離、接近状況、交通混雑状況のいずれかを示す情報を作成するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の車載装置。
【請求項6】
前記認証情報取得手段は、前記認証情報とそれに含まれる暗号情報を取得し、
前記情報送受信手段は、前記認証情報に含まれる暗号情報により暗号化された暗号化情報を受信し、
前記制御手段は、前記認証情報に基づいて正当性が認証された前記他の車載装置から送信された暗号化情報を、前記認証情報取得手段により取得された暗号情報を使用して復号化するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車載装置。
【請求項7】
前記認証情報取得手段は、
前記特定エリアが有料道路の場合に、当該有料道路の入口で前記認証情報を取得してメモリに記憶し、
前記有料道路の出口で前記メモリから前記認証情報を消去するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車載装置。
【請求項8】
車両のそれぞれに搭載された各車載装置の間で無線通信による情報通信を行なう車車間通信システムであって、
前記無線通信により各車載装置のそれぞれに、道路の特定エリアでの正当性を示す認証情報を送信する路側装置を有し、
前記各車載装置は、
前記路側装置から送信された前記認証情報を受信する手段と、
前記無線通信により他の車載装置との間で前記認証情報を含む情報の送受信を行なう情報送受信手段と、
前記認証情報に基づいて、前記情報送受信手段による前記認証情報以外の情報の送受信を制御する制御手段と
を具備したことを特徴とする車車間通信システム。
【請求項9】
前記制御手段は、
前記認証情報取得手段により取得された認証情報と、前記他の車載装置から送信された認証情報とが一致するか否かを判定し、
前記判定結果が一致の場合に前記認証情報以外の情報の送受信を有効にし、前記判定結果が不一致の場合に当該送受信を無効にするように制御することを特徴とする請求項8に記載の車載装置。
【請求項10】
車両のそれぞれに搭載された各車載装置の間で無線通信による情報通信を行なう車車間通信システムに適用する通信方法であって、
前記各車載装置は、
前記無線通信により、道路の特定エリアでの正当性を示す認証情報を路側装置から受信する処理と、
前記無線通信により他の車載装置との間で前記認証情報を含む情報の送受信を行なう処理と、
前記認証情報に基づいて前記認証情報以外の情報の送受信を制御する処理と
を実行することを特徴とする車車間通信方法。
【請求項11】
車両に搭載される車載装置に組み込まれるコンピュータにより実行されるプログラムであって、
前記無線通信により、道路の特定エリアでの正当性を示す認証情報を路側装置から受信する手段と、
前記無線通信により他の車載装置との間で前記認証情報を含む情報の送受信を行なう手段と、
前記認証情報に基づいて前記認証情報以外の情報の送受信を制御する手段と
して動作させるプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−37940(P2012−37940A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174806(P2010−174806)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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