説明

車載カメラ表示装置及び画像処理装置

【課題】車両の旋回状態に応じて、所望の領域を表示させること。
【解決手段】画像処理部は、第1の旋回量判定部からの出力に基づいて、カメラによる撮像画像のうち車両の旋回状態に応じた部分を切出した領域の画像を含む表示用画像データを生成する。表示器は表示用画像データに基づいて表示用画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両周辺景色を撮像するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車外に設けた車載カメラにより車両周辺の死角となる景色を撮像し、この撮像画像を車室内のモニタに表示するようにした技術がある。
【0003】
この場合に、撮像画像にガイド線などを重畳して表示させる技術がある。また、運転者にわかりやすい画像とするために、撮像画像に対して画面分割や拡大、所定領域の切出し等の画像処理を施して、モニタに表示させる技術もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような車載カメラとして広角カメラを用いると、単一のカメラでより広い領域を撮像してこれを車室内のモニタに映し出す事が可能となる。
【0005】
しかしながら、このような広角カメラによる映像は歪みが大きいため、そのままモニタに表示させると、現実世界との違和感を運転者に与える可能性がある。そこで、撮像した広角な領域のうち監視の必要性の高い領域を切出して、これに適宜歪み補正処理等を施してモニタに表示させるようにする技術が提案されている。監視の必要性の高い領域の例としては、車両後方を撮像するバックカメラを想定すると、車両の後方斜め下方領域や、車両の後部側方領域等である。つまり、車両の後方斜め下方領域画像は、当該領域に障害物が無いかどうかを確認するための画像として供される。また、車両の後部側方領域画像は、車両が駐車エリアから道路に出て行く場合等に、当該道路に車両が走行していないか否かを確認するための画像として供される。
【0006】
ところが、車両が駐車エリアから道路上に出て行く場合を考えると、上記のようなバックカメラでは、車両の旋回に伴い、車両の後部側方領域画像に必要な道路領域が表示されなくなってしまう。つまり、駐車エリアにおいて車両が道路に対して略垂直な姿勢である初期状態では、車両の後部側方領域画像に監視対象となる道路が表示される。しかしながら、車両が旋回しつつ道路上に出て行くと、道路に対する車両の相対的な角度が変ってしまい、車両の後部側方領域画像に監視対象となる道路が表示されなくなってしまうのである。
【0007】
そこで、本発明は、車両の旋回状態に応じて、所望の領域を表示させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る車載カメラ表示装置は、車両周辺景色を撮像する撮像手段と、前記撮像手段による撮像画像に対して画像処理を施して表示用画像データを生成する画像処理手段と、前記表示用画像データに基づいて表示用画像を表示する表示手段と、車両の旋回状態を取得する旋回状態取得手段と、を備え、前記画像処理手段は、前記表示用画像データとして、前記旋回状態取得手段からの出力に基づいて、前記撮像手段による撮像画像のうち車両の旋回状態に応じた部分を切出した画像を含む画像データを生成するものである。
【0009】
この場合に、前記旋回状態取得手段は、車両が回転する角速度を検出するヨーレートセンサからの出力に基づいて車両の旋回量を求める第1の旋回量判定手段を有するものであってもよい。
【0010】
また、旋回状態取得手段は、前記撮像手段による撮像画像に基づいて車両の旋回量を求める第2の旋回量判定手段を有するものであってもよい。
【0011】
また、前記第2の旋回量判定手段は、基準タイミングにおいて撮像された画像の一部を含む基準画像データと、前記基準画像データに対して車両旋回量に応じた変換処理を施した少なくとも一つの旋回量比較用画像データとを予め生成し、前記撮像手段により撮像された画像データと前記基準画像データ及び前記旋回量比較用画像データとに基づいて車両の旋回量を求めるものであってもよい。
【0012】
さらに、前記基準画像データは、車両から斜め下方領域の画像を含むものであってもよい。
【0013】
また、前記撮像手段は、車両の側方を含む領域を撮像可能な手段であり、前記画像処理手段は、車両の旋回量が大きくなるに伴って、車両の側方から車両幅方向中央よりの領域を順次又は段階的に切出して前記表示用画像データを生成するようにしてもよい。
【0014】
また、前記旋回状態取得手段は、車両停止状態からの車両の挙動開始時を起点として車両の旋回状態を取得してもよい。
【0015】
また、この発明に係る画像処理装置は、入力された撮像画像に対して画像処理を施して表示用画像データを生成して出力する画像処理手段と、車両の旋回状態を取得する旋回状態取得手段と、を備え、前記画像処理手段は、前記表示用画像データとして、前記旋回状態取得手段からの出力に基づいて、前記撮像手段による撮像画像のうち車両の旋回状態に応じた部分を切出した画像を含む画像データを生成するものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明の車載カメラ表示装置によると、画像処理手段は、表示用画像データとして、旋回状態取得手段からの出力に基づいて、前記撮像手段による撮像画像のうち車両の旋回状態に応じた部分を切出した画像を含む画像データを生成するため、車両の旋回状態に応じて所望の領域を表示手段に表示させることができる。
【0017】
また、前記旋回状態取得手段は、車両が回転する角速度を検出するヨーレートセンサの出力に基づいて車両の旋回量を求める第1の旋回量算判定段とを有していると、ヨーレートセンサに基づいて車両の旋回量を求めることができる。
【0018】
さらに、旋回状態取得手段は、前記撮像手段による撮像画像に基づいて車両の旋回角を求める第2の旋回量判定手段を有すると、他のセンサ等に接続することなく、車両の旋回量を求めることができる。
【0019】
また、前記第2の旋回量判定手段は、基準タイミングにおいて撮像された画像の一部を含む基準画像データと、前記基準画像データに対して車両旋回量に応じた変換処理を施した少なくとも一つの旋回量比較用画像データとを予め生成し、前記撮像手段により撮像された画像データと前記基準画像データ及び前記旋回量比較用画像データとに基づいて車両の旋回量を求めるようにすると、比較的迅速に旋回量を求めることができる。
【0020】
また、基準画像データが車両から斜め下方領域の画像を含むと、車両の旋回量をより正確に求めることができる。
【0021】
また、前記撮像手段は、車両の側方を含む領域を撮像可能な手段であり、前記画像処理手段は、車両の旋回量が大きくなるに伴って、車両の側方から車両幅方向中央よりの領域を順次又は段階的に切出して前記表示用画像データを生成すると、車両が横道に進入する場合に、その横道を継続して表示させるのに適する。
【0022】
前記旋回状態取得手段は、車両停止状態からの車両の挙動開始時を起点として車両の旋回状態を取得すると、その車両停止状態を基準とする所望の領域を表示し続けることができる。
【0023】
また、この発明の画像処理装置によると、画像処理手段は、表示用画像データとして、旋回状態取得手段からの出力に基づいて、前記撮像手段による撮像画像のうち車両の旋回状態に応じた部分を切出した画像を含む画像データを生成するため、車両の旋回状態に応じて所望の領域を含む画像データを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
{実施形態}
以下、この発明の実施形態に係る車載カメラ表示装置について説明する。図1は車載カメラ表示装置の設置例を示す図であり、図2は車載カメラ表示装置を示すブロック図である。
【0025】
この車載カメラ表示装置は、カメラ10と画像処理ユニット20と表示器30とを備えている。
【0026】
カメラ10は、車両2の周辺景色を撮像する撮像手段である。より具体的には、カメラ10は、CCD素子等の撮像素子と光学レンズ等を備えている。ここでは、カメラ10は、単一の撮像素子と、魚眼レンズ又は広角レンズ等の広角なレンズとを備えており、単一の撮像素子により車両周辺における所定の広角な領域を撮像可能な構成とされている。また、このカメラ10は、車両後部の幅方向略中央部に、車両後方に指向する姿勢で設置されている。そして、車両2後方の所定領域、ここでは、車両後部の左右両側方領域及び後方斜め下方領域を含む広角な領域(図1の斜線領域参照)を撮像可能に設置されている。このカメラ10により、図3に示すように、車両後部の左右両側方領域及び後方斜め下方領域を含む広角な撮像画像が得られる。
【0027】
なお、カメラ10は、複数の撮像素子により、又は、プリズムとレンズとの組合わせにより、車両の両側方領域を含む範囲を撮像する構成であってもよい。
【0028】
画像処理ユニット20は、画像処理部22と、メモリ24と、第1の旋回量判定部26とを備えている。
【0029】
画像処理部22は、上記カメラ10による撮像画像に対して画像処理を施して表示用画像データを生成する画像処理手段であり、画像処理用IC等により構成されている。この画像処理部22は、通常状態では、図4に示すように、カメラ10で撮像された撮像画像(図3参照)のうち車両2の車両後部の左右両側方領域画像及び後方斜め下方領域画像を切出し、これにメモリ24に格納された変換テーブルを用いて歪み補正処理等を施して表示用画像データを生成する。また、車両2の後方進行中には、第1の旋回量判定部26からの出力に基づいて、上記撮像画像のうち旋回状態に応じた部分を切出した画像を含む表示用画像データを生成する。後者の処理については後に詳述する。
【0030】
メモリ24は、例えばEPROMまたはフラッシュROM等の書き換え可能な不揮発性メモリであり、上記画像処理部22における歪み補正等に用いられる変換テーブルが格納されている。
【0031】
第1の旋回量判定部26は、車両2の旋回状態を取得する旋回状態取得手段であり、ここでは、車両が回転する速度を検出するヨーレートセンサ4からの出力に基づいて車両の旋回量を求める第1の旋回量判定手段として機能する。この第1の旋回量判定部26による旋回量判定処理については後に詳述する。
【0032】
表示器30は、画像処理部22で生成された表示用画像データに基づいて表示用画像を表示する表示手段であり、液晶表示装置等により構成されて車室内に設置されている。
【0033】
ここで、図5及び図6に示すように、この車載カメラ表示装置を搭載した車両2が、駐車エリア6から道路8に出て行く場合の表示範囲を考えてみる。なお、駐車エリア6は道路8に直接面しており、かつ、駐車エリア6内で車両2は道路8に略直交する姿勢で前向き駐車されている。そして、車両2は後ろ向きで駐車エリア6から道路8に出て行くとする。
【0034】
この場合、駐車エリア6から道路8に出て行く場合の初期状態では、車両2は道路8に対して略直交しているので、図5に示すように、車両2の後部の両側方領域と道路8とは重なりあっている。従って、図4に示すように、表示器30における車両2の後部の両側方領域画像に道路8が映し出される。このため、運転者は、表示器30を通じて道路8における車両2の走行有無を確認しつつ道路8に出て行くように運転することができる。
【0035】
そして、車両2が駐車エリア6からある程度出てしまうと、道路8に対する車両2の傾きが変ってしまう。すると、車両2の後部側方領域(図6の2点鎖線で囲まれる領域参照R1)と道路8とはずれてしまう。このため、上記初期状態のままの表示を継続すると、表示器30には道路8が映し出されなくなってしまう。
【0036】
そこで、本車載カメラ表示装置では、車両2の旋回状態に応じた部分を切出した画像を含むように画像データを生成して、表示器30に継続して道路8を映し出すようにしている。
【0037】
まず、第1の旋回量判定部26が車両2の旋回量を判定する処理について説明する。
【0038】
すなわち、第1の旋回量判定部26は、車両2に設けられたヨーレートセンサ4に接続されている。このヨーレートセンサ4は、角速度センサ等により構成されており、車両2に設置されて該車両2が回転する角速度を検出する手段である。このヨーレートセンサ4による検出結果は、例えば、CAN等の車載LANを通じて第1の旋回量判定部26に与えられる。例えば、図5及び図6に示すように、車両2が駐車エリア6から道路8に出て行く場合には、図7に示すように、左右に微調整されるように旋回しつつ、全体としては一方向に大きく旋回する(ここでは旋回角が+(プラス)になるような挙動)ような車両2の挙動を示す検出信号が出力される。そして、第1の旋回量判定部26が、ヨーレートセンサ4から与えられる検出結果に基づいて、所定の基準タイミングから所定の旋回量判定時までの間で、旋回角0゜を基準に車両2の角速度の積分値を算出することで、車両2の旋回量を求める。ここで所定の基準タイミングは、車両2が駐車エリア6に停止した状態から道路8に出て行く際の挙動開始時であり、例えば、シフトレバーのポジションセンサに基づいて車両のギヤをバックに入れたと判定されたタイミングや、ギヤをバックに入れた後やエンジン始動後或は車両2の一旦停止後に、速度センサや加速度センサ、ヨーレートセンサ等の出力に基づき車両2が実際に動き始めたと判定されるタイミング等、或は、カメラ10で撮像された撮像画像に基づいて車両2の移動が検出されたタイミング等である。ここでは、車両のギヤをバックに入れたタイミングが挙動開始時であるとして説明する。このようにして、駐車エリア6に車両2が駐車された姿勢を基準として、車両2の旋回量が求められ、この旋回量を示す信号が画像処理部22に与えられる。
【0039】
次に、画像処理部22が車両2の旋回状態に応じた部分を切出した画像を含むように画像データを生成する処理について説明する。
【0040】
すなわち、画像処理部22は、第1の旋回量判定部26の検出結果に基づいて、車両2の旋回量が大きくなるのに伴って、車両2の側方から車両2の幅方向中央よりの領域を順次又は段階的に切出して表示用画像データを生成する。
【0041】
図8はカメラによる撮像画像に対する切出領域の変化例を示す図であり、図9(a)〜図9(d)はカメラによる水平面内撮像領域における表示領域の変化例を示す図である。
【0042】
すなわち、車両2の一方側方領域(図8及び図9において車両後方に向けて右側に旋回する場合)に関する処理を中心に説明すると、カメラ10による撮像画像に対して複数(ここでは4つ)の切出領域D1,D2,D3,D4が予め設定されている。各切出領域D1,D2,D3,D4は、車両2の側方領域(換言すれば撮像画像の側方領域)から車両2の幅方向中央よりの領域に段階的に向う範囲に設定されている。
【0043】
なお、上記各切出領域D1,D2,D3,D4に対して歪み等を補正する変換テーブルが予め準備されてメモリ24内に格納されている。各変換テーブルは例えば事前に次のようなキャリブレーションを行うことで生成される。すなわち、図9(a)〜図9(d)に示すように、格子パターン50を、各切出領域D1,D2,D3,D4に対応する仮想光軸A1,A2,A3、A4と略垂直姿勢で、かつ、切出領域D1,D2,D3,D4全体に映り込むように配設する。そして、カメラ10により格子パターン50を撮像し、撮像された格子パターン50の歪みを除去できるような各画素の変換値を算出することで、上記変換テーブルを生成する。このように、各切出領域D1,D2,D3,D4毎に別々にキャリブレーションを行ってそれぞれ別々に変換テーブルを生成準備しておくことで、それぞれの各切出領域D1,D2,D3,D4に応じた適切な補正画像を得ることができる。なお、このようなキャリブレーション処理自体は、周知技術を含む適用可能な技術によって実施可能であるので、ここではその詳細な説明は省略する。
【0044】
また、車両2が後方に向けて右方向に旋回しつつ後進する場合を想定すると、旋回量の範囲は複数(ここでは4つ)の範囲に分割されており、それぞれの範囲が各切出領域D1,D2,D3,D4に対応づけられており、この対応関係データが上記メモリ24に格納されている。例えば、旋回量を示す0゜〜90゜の範囲が、(0゜〜θ1)、(θ1〜θ2)、(θ2〜θ3)、(θ3〜90゜)の範囲(但し、0゜<θ1<θ2<θ3<90゜に分割されており、それぞれ切出領域D1,D2,D3,D4に対応づけられている。例えば、各切出領域D1,D2,D3,D4に対応する各仮想光軸A1,A2,A3、A4が、それぞれ(0゜〜θ1)、(θ1〜θ2)、(θ2〜θ3)、(θ3〜90゜)の範囲に属するように対応づけて設定される。そして、画像処理部22は、第1の旋回量判定部26の検出結果及び上記対応関係データに基づいて、切出領域D1,D2,D3,D4の中から旋回量に応じたもの一つを選択して、カメラ10による撮像画像のうち対応する画像を切出す。切出された画像は上記変換テーブルを用いて補正され、車両2の側方領域画像を本来表示されるべき部分に重畳される。これにより、車両2の旋回状態に応じた部分を切出した画像を含む画像データが生成される。なお、旋回量が上記各範囲の閾値である場合には、その前後のいずれの切出領域D1,D2,D3,D4を選択するようにしてもよい。
【0045】
なお、車両2の他方側方領域(図8及び図9において車両後方に向けて左側に旋回する場合)に関する処理を中心に説明すると、上記と逆の側方領域に関して上記と同様の切出し等の画像処理を行って、表示用画像データを生成する。
【0046】
また、車両2が後進する場合の旋回方向と反対側の側方画像については、車両2に対する側方画像をそのまま継続して表示してもよいし、或は、表示自体をやめてもよい。
【0047】
このように構成された車載カメラ表示装置の動作について図10のフローチャートを参照して説明する。
【0048】
まず、ステップS1において、画像処理部22は、シフトレバーのポジションセンサからの検出結果に基づいてバックギヤに入れられたか否かを判定する。ここで、バックギヤに入れられていないと判定されるとステップS1の処理を繰返し、バックギヤに入れられたと判定されると、次ステップS2に進む。
【0049】
ステップS2では、第1の旋回量判定部26がヨーレートセンサ4からの検出結果に基づいて車両2の旋回量を判定し、求められた旋回量を示す信号を画像処理部22に与える。
【0050】
続くステップS3では、画像処理部22は、求められた旋回量に応じた切出領域D1,D2,D3,D4を決定し、次ステップS4に進む。
【0051】
ステップS4では、画像処理部22は、カメラ10による撮像画像のうち決定された切出領域D1,D2,D3,D4に対応する領域を切出すと共に、これに対応する変換テーブルをメモリ24から読出す。そして、切出された画像データに対して変換テーブルを用いた所定の画像変換処理を行って補正し、補正された切出し画像を含む表示用画像データを生成して出力する。出力された表示用画像データは表示器30に与えられて監視用の表示画像として車室内の運転者等に対して表示される。
【0052】
続くステップS6では、画像処理部22は、シフトレバーのポジションセンサからの検出結果に基づいてバックギヤが解除されたか否かを判定する。そして、バックギヤが解除されていないと判定すると、ステップS2に戻りステップS2〜ステップS6の処理を繰返し、車両2の旋回量に応じた切出領域D1,D2,D3,D4の表示を継続する。これにより、道路8に対する車両2の旋回量が大きくなるほど、切出領域D1,D2,D3,D4のうちより中央よりのものが選択されて表示器30に表示されるようになり、道路8を含む領域R2の画像が継続的に表示されることになる。
【0053】
そして、ステップS6において、画像処理部22がバックギヤが解除されたと判定すると、旋回量に応じた表示を行う処理を終了する。
【0054】
以上のように構成された車載カメラ表示装置によると、画像処理部22は、第1の旋回量判定部26のからの出力に基づいて、カメラ10の撮像画像のうち車両2の旋回状態に応じた部分を切出した領域D1,D2,D3,D4の画像を含む表示用画像データを生成するため、車両2の旋回状態に応じて所望の領域を表示器30に表示させることができる。
【0055】
より具体的には、カメラ10は車両2の側方を含む領域を撮像可能に構成されており、画像処理部22は、車両2の旋回量が大きくなるに伴って、車両2の側方から車両幅方向中央よりの領域を段階的に切出して表示用画像データを生成しているため、例えば、道路8に対して略垂直姿勢の車両2が該道路8に進入する場合に、その道路8を継続して表示させるのに適している。
【0056】
特に、第1の旋回量判定部26は、ヨーレートセンサ4の出力に基づいて車両2の旋回量を求めるため、比較的正確に車両2の旋回量を求めることができる。
【0057】
また、車両2が駐車エリア6に停止した状態から車両2の挙動開始時を起点として、車両2の旋回量を求めているため、その車両停止状態を基準とする所望の領域、即ち、車両2の側方領域を表示し続けることができる。
【0058】
{変形例}
上記実施形態では、第1の旋回量判定部26がヨーレートセンサからの検出結果に基づいて車両2の旋回量を判定したが、必ずしもその必要はない。
【0059】
以下に車両の旋回量判定に係る変形例を説明する。図11は変形例に係る車載カメラ表示装置を示すブロック図である。
【0060】
この車載カメラ表示装置では、上記画像処理ユニット20に対応する画像処理ユニット20Bが、第1の旋回量判定部26に換えて、第2の旋回量判定部26Bを備えると共に、メモリ40を備える構成となっている。
【0061】
第2の旋回量判定部26Bは、カメラ10による撮像画像に基づいて車両の旋回量を求める手段であり、画像処理用IC等により構成されている。
【0062】
メモリ40は、例えば、SDRAM等の揮発性メモリ等により構成されており、上記第1の旋回量判定部26Bにおける旋回量判定処理に用いられる判定用画像データを一時的に格納できるようになっている。
【0063】
第2の旋回量判定部26Bにおける旋回量の判定処理について説明する。
【0064】
すなわち、車両2が駐車エリア6に停止した状態から道路8に出て行く際の挙動開始時である基準タイミングにおいて、カメラ10による撮像画像が画像処理部22を通じて第2の旋回量判定部26Bに与えられる。すると、第2の旋回量判定部26Bは、該基準タイミングにおける撮像画像の一部を含む基準画像データを生成する。ここでは、図12の枠内に示すように、撮像画像のうち車両後方の斜め下方領域を含む基準画像データを生成する。より具体的には、車両後方の斜め下方領域を俯瞰画像(上方から見た画像、トップビュー画像ともいう)に変換して基準画像データT0を生成する。この基準画像データT0には、道路の模様や白線等が含まれる。
【0065】
また、第2の旋回量判定部26Bは、図13(a)、図13(b)、図13(c)に示すように、該基準画像データT0に対して車両2の旋回量に応じた回転処理等の変換処理を施して少なくとも一つ(ここでは3つ)の旋回量比較用画像データT1,T2,T3を生成する。なお、基準画像データT0に対する回転処理の回転角度d1゜,d2゜,d3゜,d4゜は、例えば、0゜<d1゜<θ1、θ1<d2゜<θ2、θ2<d3゜<θ3、θ3<d4゜<90゜の範囲で設定される。ここでの変換処理で使われる回転角度に応じた変換テーブルは、不揮発性メモリ内に格納されている。
【0066】
そして、これらの基準画像データT0及び旋回量比較用画像データT1,T2,T3は、上記各回転角度d1゜,d2゜,d3゜,d4゜と対応づけられて判定用画像データとしてメモリ40内に一時的に格納される。
【0067】
そして、車両2の旋回量を判定するときには、カメラ10による撮像画像が画像処理部22を通じて第2の旋回量判定部26Bに与えられる。すると、第2の旋回量判定部26Bは、カメラ10による撮像画像に対して各基準画像データT0及び旋回量比較用画像データT1,T2,T3を基準とするマッチング処理等を行い、各基準画像データT0及び旋回量比較用画像データT1,T2,T3に最も類似する画像領域を抽出する。そして、第2の旋回量判定部26Bは、抽出された各画像領域と対応する各基準画像データT0及び旋回量比較用画像データT1,T2,T3との間で相関値を求め、最も相関度の高い基準画像データT0及び旋回量比較用画像データT1,T2,T3を決定し、対応する回転角度d1゜,d2゜,d3゜,d4゜のうちの一つを決定する。そして、決定された一つの回転角度d1゜,d2゜,d3゜,d4゜を含む信号を画像処理部22に与える。
【0068】
この変形例に係る車載カメラ表示装置の動作について図14のフローチャートを参照して説明する。
【0069】
まず、ステップS11において、画像処理部22は、バックギヤに入れられたか否かを判定する。ここで、バックギヤに入れられていないと判定されるとステップS11の処理を繰返し、バックギヤに入れられたと判定されると、次ステップS12に進む。
【0070】
ステップS12では、第2の旋回量判定部26Bは、カメラ10による撮像画像及び変換テーブルに基づいて、基準画像データT0及び旋回量比較用画像データT1,T2,T3を生成し、これらを判定用画像データとしてメモリ40内に格納する。
【0071】
次ステップS13では、第2の旋回量判定部26Bは、カメラ10による撮像画像データ及びメモリ40に格納された判定用画像データに基づいて、車両2の旋回量を判定し、この旋回量を示す信号を画像処理部22に与える。
【0072】
この後、画像処理部22は、図10のフローチャートにおけるステップS3〜S6と同様の処理を実行する。これにより、車両2の旋回量に応じた画像データが表示器30に与えられて監視用の表示画像として車室内の運転者等に向けて表示される。そして、ステップS6で、画像処理部22が、バックギヤが解除されたと判定すると、ステップS12に戻りステップS12,ステップS13,ステップS3〜ステップS6の処理を繰返し、車両2の旋回量に応じた切出領域D1,D2,D3,D4の表示を継続する。一方、バックギヤが解除されたと判定すると、処理を終了する。
【0073】
この変形例に係る車載カメラ表示装置によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
加えて、第2の旋回量判定部26Bは、カメラ10による撮像画像に基づいて車両2の旋回角を求めるため、ヨーレートセンサ等の他のセンサに接続することなく、車両2の旋回量を求めることができるという利点がある。
【0075】
また、第2の旋回量判定部26Bは、基準タイミングにおいて撮像された画像の一部を含む基準画像データと、この基準画像データに対して旋回量に応じた変換処理を施した旋回量比較用画像データとを予め生成し、これらの画像データとカメラ10により撮像された撮像画像画像データとに基づいて車両の旋回量を求めるようにしているため、旋回量の各判定段階での処理量を少なくすることができ、比較的迅速に旋回量を求めることができる。
【0076】
また、基準画像データは車両2から斜め下方領域の画像を含むため、カメラ10と被写体との間の距離の影響を可及的に排除して、比較的正確に車両の旋回量を判定することができる。
【0077】
なお、本変形例において、撮像素子及びレンズ等を有する撮像部10Cと画像処理部22と第2の旋回量判定部26Bとメモリ24,40とを単一のケース内に収容する等して単一の車載カメラ装置20Cとして構成してもよい。これにより、本車載カメラ装置を車両に取付けて映像出力を車内の表示器30に接続することで、容易に車両に組込むことができる。
【0078】
また、車両2の旋回状態を取得する旋回状態取得手段は上記実施形態及び上記変形例に係る構成に限られない。例えば、ハンドルの切れ角を検出するセンサや磁気方位センサ等に基づいて車両の旋回量を求めるようにしてもよい。
【0079】
また、本実施形態及び上記変形例では、車両の後方を撮像するバックカメラに適用した例で説明したが、適用例はこれに限られない。例えば、車両の前部側方を撮像するフロントカメラにも適用できる。
【0080】
なお、本実施形態及び上記変形例では、予め複数の切出領域D1,D2,D3,D4を設定しておき、車両2の旋回量に応じて一つの切出領域D1,D2,D3,D4を選択する構成を採用したが必ずしもその必要はない。車両2の側方領域に対応する切出領域を基準にして、車両2の旋回量に応じて該切出領域を連続的に中央よりの方向へ移動させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】実施形態に係る車載カメラ表示装置の設置例を示す図である。
【図2】車載カメラ表示装置を示すブロック図である。
【図3】カメラによる撮像画像例を示す図である。
【図4】表示器による表示画像例を示す図である。
【図5】車両が駐車エリアから道路に出て行く様子を示す図である。
【図6】車両が駐車エリアから道路に出て行く他の様子を示す図である。
【図7】ヨーレートセンサにより検出された旋回角の変化例を示す図である。
【図8】カメラによる撮像画像に対する切出領域の変化例を示す図である。
【図9】図9(a),図9(b),図9(c),図9(d)はカメラによる水平面内撮像領域における表示領域の変化例を示す図である。
【図10】車載カメラ表示装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】変形例に係る車載カメラ表示装置を示すブロック図である。
【図12】基準画像データに含まれる対象画像を示す図である。
【図13】図13(a),図13(b),図13(c)は、旋回量比較用画像データの例を示す図である。
【図14】変形例に係る車載カメラ表示装置の動作を示すフローチャートである。
【図15】他の変形例に係る車載カメラ表示装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0082】
2 車両
4 ヨーレートセンサ
10 カメラ
20 画像処理ユニット
22 画像処理部
24,40 メモリ
26 第1の旋回量判定部
26B 第2の旋回量判定部
30 表示器
D1,D2,D3,D4 切出領域
T0 基準画像データ
T1,T2,T3 旋回量比較用画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周辺景色を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段による撮像画像に対して画像処理を施して表示用画像データを生成する画像処理手段と、
前記表示用画像データに基づいて表示用画像を表示する表示手段と、
車両の旋回状態を取得する旋回状態取得手段と、
を備え、
前記画像処理手段は、前記表示用画像データとして、前記旋回状態取得手段からの出力に基づいて、前記撮像手段による撮像画像のうち車両の旋回状態に応じた部分を切出した画像を含む画像データを生成する、車載カメラ表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の車載カメラ表示装置であって、
前記旋回状態取得手段は、車両が回転する角速度を検出するヨーレートセンサからの出力に基づいて車両の旋回量を求める第1の旋回量判定手段を有する、車載カメラ表示装置。
【請求項3】
請求項1記載の車載カメラ表示装置であって、
前記旋回状態取得手段は、前記撮像手段による撮像画像に基づいて車両の旋回量を求める第2の旋回量判定手段を有する、車載カメラ表示装置。
【請求項4】
請求項3記載の車載カメラ表示装置であって、
前記第2の旋回量判定手段は、基準タイミングにおいて撮像された画像の一部を含む基準画像データと、前記基準画像データに対して車両旋回量に応じた変換処理を施した少なくとも一つの旋回量比較用画像データとを予め生成し、前記撮像手段により撮像された画像データと前記基準画像データ及び前記旋回量比較用画像データとに基づいて車両の旋回量を求める、車載カメラ表示装置。
【請求項5】
請求項4記載の車載カメラ表示装置であって、
前記基準画像データは、車両から斜め下方領域の画像を含む、車載カメラ表示装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の車載カメラ表示装置であって、
前記撮像手段は、車両の側方を含む領域を撮像可能な手段であり、
前記画像処理手段は、車両の旋回量が大きくなるに伴って、車両の側方から車両幅方向中央よりの領域を順次又は段階的に切出して前記表示用画像データを生成する、車載カメラ表示装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の車載カメラ表示装置であって、
前記旋回状態取得手段は、車両停止状態からの車両の挙動開始時を起点として車両の旋回状態を取得する、車載カメラ表示装置。
【請求項8】
入力された撮像画像に対して画像処理を施して表示用画像データを生成して出力する画像処理手段と、
車両の旋回状態を取得する旋回状態取得手段と、
を備え、
前記画像処理手段は、前記表示用画像データとして、前記旋回状態取得手段からの出力に基づいて、前記撮像手段による撮像画像のうち車両の旋回状態に応じた部分を切出した画像を含む画像データを生成する、画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図3】
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【図4】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−221199(P2007−221199A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36130(P2006−36130)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】