説明

車載カメラ

【課題】筐体上へ落下した水滴のレンズへの付着を防止できる車載カメラを提供すること。
【解決手段】筐体7の上面9にレンズ13が露出し、前記上面9がフロントガラス21に対向するように車室内に取り付けられる車載カメラ1であって、前記上面9は、前記レンズ13に向って下がる傾斜部9aを有しており、前記傾斜部9aは、前記傾斜部9aにおける傾斜方向Cを横切るように設けられた水滴よけ構造15、17を備えることを特徴とする車載カメラ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車載カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に車載カメラを搭載し、その車載カメラで撮影した映像により、車両の運転の補助等を行う技術が実用化されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−32191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載カメラは、車両のフロントガラスに取り付けられることがある。このタイプの車載カメラは、筐体の上面がフロントガラスに対向するように取り付けられる。また、筐体の上面は、フロントガラスの傾斜に応じて前下がりに傾斜しており、そこにカメラのレンズが露出している。
【0005】
そのため、フロントガラスの表面で結露した水滴が筐体の上面に落下すると、その水滴が筐体の上面の傾斜によって流れ、車載カメラのレンズに付着してしまうことがある。この場合、車載カメラの認識性能が悪化したり、認識不能になったりする。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、筐体上へ落下した水滴のレンズへの付着を防止できる車載カメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車載カメラは、筐体の上面にレンズが露出し、前記上面がフロントガラスに対向するように車室内に取り付けられる車載カメラであって、前記上面は、前記レンズに向って下がる傾斜部を有しており、前記傾斜部は、前記傾斜部における傾斜方向を横切るように設けられた水滴よけ構造を備える。
【0008】
本発明の車載カメラは、フロントガラスから筐体の上面に水滴が落下した場合でも、水滴よけ構造を備えることにより、水滴がレンズに付着してしまうことを防止できる。
前記水滴よけ構造としては、例えば、堤、溝、又は段差の形状を有するものが挙げられる。水滴よけ構造がこれらの形状を有することにより、水滴がレンズに付着してしまうことを防止する効果が一層高い。
【0009】
前記堤、溝、又は段差の断面形状は、端部にRが付けられた形状であることが好ましい。そのことにより、筐体を成型(例えばダイカスト成型)で製造する場合、型の寿命が長くなる。また、上記のような形状とすることにより、レンズへの水滴の付着を防止する効果が一層高い。
【0010】
本発明の車載カメラとしては、例えば、筐体を保持するブラケットを備え、そのブラケットをフロントガラスに取り付けることで、車両に搭載されるものが挙げられる。このブラケットとしては、例えば、ブラケットにおけるフロントガラスへの取付面と、筐体の上面とが対向するものが挙げられる。
【0011】
上記のブラケットを備える車載カメラは、車両への取り付けが容易である。また、この車載カメラでは、フロントガラスから直接、あるいは、フロントガラスからブラケットの取付面を介して、水滴が筐体の上面に落下することがあるが、水滴よけ構造により、落下した水滴がレンズに付着してしまうことを防止できる。
【0012】
前記傾斜部は、前記水滴よけ構造を多段に備えることが好ましい。こうすることで、水滴がレンズに付着してしまうことを防止する効果が一層高い。
前記多段の水滴よけ構造は、間隔を空けて設けられていることが好ましい。そのことにより、筐体を成型(例えばダイカスト成型)で製造する場合、型の寿命が長くなる。また、間隔が空けられていることにより、レンズへの水滴の付着を防止する効果が一層高い。
【0013】
前記水滴よけ構造を上面視したときの形状は、前記レンズ側に開口した略V字形状を含むことが好ましい。こうすることにより、筐体の上面をレンズに向って流れてきた水滴の方向を、略V字形状の水滴よけ構造によって左右のいずれかに変えることができ、結果として、水滴がレンズに付着してしまうことを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車載カメラ1の一部である本体部3の斜視図である。
【図2】車載カメラ1の上面図である。
【図3】車載カメラ1の正面図である。
【図4】図2におけるA−A断面での側断面図である。
【図5】(a)〜(c)は、図1におけるB-B断面での、水滴よけ構造15、17付近の断面図であり、(d)は、図1におけるB-B断面での、水滴よけ構造15付近の断面図である。
【図6】車載カメラ1の効果を確認するための試験の方法を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
1.車載カメラ1の構成
車載カメラ1の構成を図1〜図5に基づいて説明する。図1は、車載カメラ1の一部である、後述する本体部3の斜視図である。図2は、車載カメラ1の上面図である。図3は、車載カメラ1の正面図である。図4は、図2におけるA−A断面での側断面図である。図5は図1におけるB-B断面での、後述する水滴よけ構造15、17付近の断面図である。
【0016】
車載カメラ1は、本体部3とブラケット5とから構成される。本体部3は、図1に示すように、筐体7と、その内部に収容された周知のカメラの構成要素(図示略)とを備える。筐体7の上面9は、全体として、前方(図1における左手前方向)が下がるように傾斜している。なお、以下ではこの傾斜方向を傾斜方向Cとする。
【0017】
上面9は、その前方の端部を含む部分に、その周囲より低く窪んだ凹部11を備えている。凹部11は、上面9におけるその他の部分よりも傾斜が緩やかな凹部内上面11aと、凹部内上面11aよりも後方において、ほぼ鉛直に切り立ち、前方に向いているレンズ取付面11bと、左右一対の側面11c、11dとを備える。レンズ取付面11bには、カメラのレンズ13が取り付けられている。すなわち、レンズ13は、上面9において外部に露出している。
【0018】
上面9には、上から見たとき、前方を除く3方において凹部11を囲むように、水滴よけ構造15、17が設けられている。すなわち、水滴よけ構造15、17は、上面9のうち、凹部11よりも後方側の部分である傾斜部9a(レンズ13から傾斜方向Cに沿って登った部分)において、傾斜方向Cを横切るように延びているとともに、凹部11の側面11c、11dに沿って、上面9の前端まで達している。
【0019】
また、水滴よけ構造15、17を上から見たとき、水滴よけ構造15、17のうち、傾斜部9aにある部分(レンズ13から傾斜方向Cに沿って登った部分)の形状は、レンズ13側に開口した略V字形状となっている。また、このV字の先端部分(中央の屈曲部分であって、傾斜方向Cの上側に向いた部分)の形状は、Rが付けられた形状になっている。
【0020】
図1におけるB-B断面での、水滴よけ構造15、17付近の断面形状を図5(a)に示す。水滴よけ構造15、17は、それぞれ、上面9における周囲よりも一段高くなった堤である。すなわち、水滴よけ構造15、17は、その全体として、2つの堤が多段に設けられた構造となっている。なお、水滴よけ構造15、17の断面形状は、水滴よけ構造15、17のどの部分でも同様である。
【0021】
また、水滴よけ構造15、17の断面形状において、図5(a)に示すように、各端部にはRが付けられている。すなわち、堤の先端及び根元において屈曲する部分は、曲面形状となっている。また、水滴よけ構造15と水滴よけ構造17との間には、間隔(堤や溝等がなく、平坦な部分)19が設けられている。
【0022】
車載カメラ1の本体部3は、ブラケット5によりフロントガラス21に取り付けられる。ブラケット5は、図2〜4に示すように、平板な板状の取付部23と、取付部23の両端において下方に垂れ下がる一対の板状部材である保持片25、27とから構成される。ブラケット5は、図3に示すように、保持片25、27を本体部3の両側面に固定することで、本体部3を保持する。また、ブラケット5は、取付部23の上面を車両のフロントガラス21に接着することにより、フロントガラス21に取り付けられる。
【0023】
車載カメラ1がブラケット5によりフロントガラス1に取り付けられたとき、車載カメラ1のレンズ13は車両の前方を向き、上面9は、車両の前方にゆくほど下がるように傾斜した状態となる。また、このとき、図3に示すように、ブラケット5の取付部23と、本体部3の上面9とが、所定の間隔をおいて対向する。また、本体部3の上面9は、取付部23を間において、フロントガラス21とも対向する。
【0024】
ブラケット5の取付部23では、図2に示すように、凹部11に対応する凹部対応部23aが切り欠かれている。このことにより、レンズ13の画角がブラケット5により制限されてしまうようなことがない。
【0025】
2.車載カメラ1が奏する効果
(1)フロントガラス21とブラケット5の取付部23とは、それぞれ、車載カメラ1の上面9に対向する。そのため、フロントガラス21から直接、あるいは、フロントガラス21から取付部23を介して、水滴が上面9に落下するおそれがある。上面9は前下がりに傾斜しているので、上面9のうち、レンズ13よりも後方側の傾斜部9aに水滴が落下した場合、水滴はレンズ13の方へ流れようとする。
【0026】
この場合でも、車載カメラ1は、レンズ13が取り付けられた凹部11を囲むように設けられた水滴よけ構造15、17により、水滴がレンズ13に付着してしまうことを防止できる。
(2)水滴よけ構造15、17は、2つの堤が多段に設けられた構造となっているので、水滴の流れを止める効果が一層高い。
(3)上から見たとき、水滴よけ構造15、17の中央部における形状は、レンズ13側に開口した略V字形状となっている。そのため、傾斜部9aからレンズ13に向って流れてきた水滴の方向を、左右のいずれかに変えることができ、結果として、水滴がレンズ13に付着してしまうことを防止できる。
(4)水滴よけ構造15と水滴よけ構造17との間には間隔19が設けられている。そのことにより、筐体7を成型で製造する場合、型の寿命が長くなる。また、間隔19が設けられていることにより、レンズ13への水滴の付着を防止する効果が一層高い。
(5)水滴よけ構造15、17の断面形状は、各端部にはRが付けられた形状である。また、水滴よけ構造15、17を上から見たときの略V字形状の先端にもRが付けられている。そのことにより、筐体7を成型で製造する場合、型の寿命が長くなる。また、上記のような形状とすることにより、レンズ13への水滴の付着を防止する効果が一層高い。
【0027】
3.車載カメラ1が奏する効果を確かめるための試験
図5に示すように、本体部3における3箇所P、Q、Rに水滴を落とし、水滴の流れ方を観察した。P、Q、Rのいずれに水滴を落とした場合でも、水滴は水滴よけ構造15、17によって、凹部11に入ることが防止された。
【0028】
一方、基本的には本体部3と同様のものであるが、水滴よけ構造15、17を備えないものについても同様の試験をしたところ、水滴は凹部11内に入った。特に、P、Qに落とされた水滴は、凹部11内に入り、レンズ13に付着した。
【0029】
尚、本発明は前記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、図5(b)に示すように、水滴よけ構造15、17は、上面9における周囲よりも一段低くなった溝でもよい。また、図5(c)に示すように、水滴よけ構造15は堤であり、水滴よけ構造17は、上面9における周囲よりも一段低くなった溝でもよい。また、その逆に、水滴よけ構造15は溝であり、水滴よけ構造17は堤であってもよい。
【0030】
また、図5(d)に示すように、水滴よけ構造15は、傾斜方向Cにおける上側に比べて一段高くなった段差であってもよい。
また、前記実施の形態では、水滴よけ構造15と水滴よけ構造17との2段であったが、それには限定されず、例えば、水滴よけ構造の段数は、1段、3段、4段、5段・・・・のいずれであってもよい。
【0031】
また、水滴よけ構造15、17の端部における断面形状は、Rが付いていないもの(いわゆるピン角形状)であってもよい。
また、水滴よけ構造15、17を上から見たときの形状は略V字に限定されず、他の形状であってもよい。例えば、レンズ13側に開口した略U字型とすることができる。
【0032】
また、水滴よけ構造15、17の間に間隔がなくてもよい。
また、ブラケット5は、車室の天井に取り付けてもよいし、フロントガラス21と車室の天井とに跨って取り付けてもよい。また、車載カメラ1は、リアウインド又はその付近に取り付け、車両の後方を撮影するものであってもよい。その場合、車載カメラ1の向きは、フロントガラス21に取り付ける場合とは反対になる。さらに、車載カメラ1は、サイドウインド又はその付近に取り付け、車両の側方を撮影するものであってもよい。その場合、車載カメラ1の向きは、フロントガラス21に取り付ける場合の向きから約90度回転した向きになる。
【0033】
また、水滴よけ構造15、17は、凹部11の3方を全て囲んでいなくてもよい。例えば、傾斜部9aにおいて、凹部11(又はレンズ13)の幅をカバーできる範囲のみに設けてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1・・・車載カメラ、3・・・本体部、5・・・ブラケット、7・・・筐体、
9・・・上面、9a・・・傾斜部、11・・・凹部、11a・・・凹部内上面、
11b・・・レンズ取付面、11c、11d・・・側面、13・・・レンズ、
15、17・・・水滴よけ構造、19・・・間隔、21・・・フロントガラス、
23・・・取付部、23a・・・凹部対応部、25、27・・・保持片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の上面にレンズが露出し、前記上面がフロントガラスに対向するように車室内に取り付けられる車載カメラであって、
前記上面は、前記レンズに向って下がる傾斜部を有しており、
前記傾斜部は、前記傾斜部における傾斜方向を横切るように設けられた水滴よけ構造を備えることを特徴とする車載カメラ。
【請求項2】
前記水滴よけ構造は、堤、溝、又は段差の形状を有することを特徴とする請求項1記載の車載カメラ。
【請求項3】
前記堤、溝、又は段差の断面形状は、端部にRが付けられた形状であることを特徴とする請求項2に記載の車載カメラ。
【請求項4】
前記フロントガラスに取り付けられるとともに、前記筐体を保持するブラケットを備え、
前記ブラケットにおける前記フロントガラスへの取付面と、前記上面とが対向することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車載カメラ。
【請求項5】
前記傾斜部は、前記水滴よけ構造を、多段に備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車載カメラ。
【請求項6】
前記多段の水滴よけ構造は、間隔を空けて設けられていることを特徴とする請求項5に記載の車載カメラ。
【請求項7】
前記水滴よけ構造を上面視したときの形状は、前記レンズ側に開口した略V字形状を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車載カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−133100(P2012−133100A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284773(P2010−284773)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】