説明

車載クレーン

【課題】車内外の比較的自由な位置から車椅子の積み降ろしのみならず、身障者をも乗降させることができる車両屋根上格納式の車載クレーンを提供する。
【解決手段】吊下げ対象物に先端が連結可能なベルト2を前端から繰り出し及び巻取り可能に設けた水平アーム3と、該水平アーム3の後端を下端に直交配置した支柱4と、該支柱4を回転自在に支持するホルダー5と、車両Cの屋根R上で支柱4をその軸線が車幅方向Lに一致した水平倒伏状態にホルダー5を介して支持すると共に、車幅方向Lに往復動自在に設け、その往路終点で車両乗降口Pに対向して支柱4を垂下状態にホルダー5を介して支持する姿勢制御手段6とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身障者の乗降や車椅子の積み降ろしを行うための車載クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車内のドアの近傍におけるフロアに支柱を立設し、その支柱の上端からこれを中心に回動可能なアームを延出させると共に、そのアームの先端から繰り出し及び巻取り自在なベルトを垂下した車両用の車椅子の積降し装置が開示されているが、この装置は、車椅子を積み込む車内に設置される構成のため車内スペースが狭くなる欠点を有していた。
【0003】
又、特許文献2には、車両の屋根に搭載する車椅子の格納装置が開示されている。
この装置は車両の屋根上に設けたベースに車体幅方向にスライド及び回動可能な折り畳み構成の3組のレールからなるレール機構を配置し、該レール機構を車両屋根からドアに沿う様に展開させ、最先端の第3レールに取付けた係止機構に車椅子を係止し、この状態からレール機構を折り畳み状態に戻し、車椅子を屋根上に格納する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−43634号公報
【特許文献2】特公平1−34176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示された車椅子格納装置は、屋根上に車椅子を積み降ろすため、特許文献1のものとは異なり、車内スペースが狭まらず、その車内を有効に利用できる。
しかしながら、この装置では、屋根上に折り畳まれたレールを展開して、これに車椅子を固定するため、車椅子を定位置に配置せねば成らず不便であると共に、車椅子格納専用のため、車両乗降のために身障者に使用することはできず、車椅子利用者は自身で車椅子から車両へ移乗するか、又は介護者に抱き抱えられるなどして車椅子から車両へと移乗させられねばならなかった。
【0006】
そこで、本発明では、車内外の比較的自由な位置から車椅子の積み降ろしのみならず、身障者をも乗降させることができる車両屋根上格納式の車載クレーンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明の車載クレーンは、吊下げ対象物に先端が連結可能なベルトを前端から繰り出し及び巻取り可能に設けた水平アームと、該水平アームの後端を下端に直交配置した支柱と、該支柱を回転自在に支持するホルダーと、車両の屋根上で支柱をその軸線が車幅方向に一致した水平倒伏状態にホルダーを介して支持すると共に、車幅方向に往復動自在に設け、その往路終点で車両乗降口に対向して支柱を垂下状態にホルダーを介して支持する姿勢制御手段とから成ることを特徴とする。
又、姿勢制御手段は、車両屋根上を車幅方向に水平に往復動自在に設けると共に、ホルダーの後端を車幅方向に回動自在に枢着し、ホルダーと共に回動する支柱が挿脱可能な切欠を底板前端側に凹設したリニアガイドと、ホルダーの側壁後部に設けた転子と、該転子が転動する軌道であって、その往路始点から往路終点の近傍位置までの区間はホルダーの直立状態をリニアガイド上で保持する様に車両屋根に平行な水平高さを維持し、往路終点の近傍位置から往路終点の直前位置までの区間はホルダーを前記直立状態からリニアガイド上でこれに平行な水平状態へ回動させる様に往路終点の直前位置へ向って下り傾斜し、往路終点の直前位置から往路終点までの区間はホルダーの前記水平状態を保持する様に傾斜下端と同一水平高さを維持するレールカムと、ホルダーの前端下部に、その幅方向に沿ってリニアガイド底板の介入間隔を設けて前板を配置し、該前板の両側に後方へ延設すると共に、前端に転子が線接触可能な外向き突片を設けた側板をホルダー側壁に前後摺動自在に装着し、バネにて前板をホルダー前端より前方へ所定間隔を以て離間する様に付勢して成るホルダー回動規制体と、転子が軌道の往路終点の直前位置に位置した時に外向き突片が軌道の往路終点の直近前方で当接掛止される当止板と、から成ることを特徴とする。
そして、軌道の往路終点に到達した転子は当止板とによりこれに当接掛止したホルダー回動規制体の外向き突片を挟持したことを特徴とする。
更に、ベルトは水平アームと支柱の内部を挿通し、支柱と共に回転自在にその上端に設置されたウインチに取付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
要するに本発明は、車椅子や身障者等の吊下げ対象物に先端が連結可能なベルトを前端から繰り出し及び巻取り可能に設けた水平アームと、該水平アームの後端を下端に直交配置した支柱と、該支柱を回転自在に支持するホルダーと、車両の屋根上で支柱をその軸線が車幅方向に一致した水平倒伏状態にホルダーを介して支持すると共に、車幅方向に往復動自在に設け、その往路終点で車両乗降口に対向して支柱を垂下状態にホルダーを介して支持する姿勢制御手段とから成るので、車両の屋根上に装置一式を設置できるため、トランクルームを含む車内でかかる装置の設置スペースを考慮する必要がなく、車内スペースを狭めずそのスペースを有効に利用できる。
又、使用時には姿勢制御手段によりこれの往路終点で車両乗降口に対向して支柱を垂下状態にホルダーを介して支持することにて、支柱下端より直角に伸びる水平アームを支柱を中心に自由に回転させられるので、車内外の比較的自由な位置から車椅子の積み降ろしのみならず、身障者をも乗降させることができる。
【0009】
姿勢制御手段は、車両屋根上を車幅方向に水平に往復動自在に設けたリニアガイドにホルダーの後端を車幅方向に回動自在に枢着することにより、支柱を水平倒伏状態と成すホルダーの直立状態と支柱を垂下状態と成すホルダーの水平状態とに支持できると共に、リニアガイドの底板前端側にホルダーと共に回動する支柱を挿脱可能な切欠を凹設したので、水平状態のホルダーがリニアガイドの底板前方に載置された時に支柱は切欠を上下に貫通するため、支柱の垂下状態を支障なく支持できる。
又、ホルダーの側壁後部に設けた転子が転動する軌道であって、その往路始点から往路終点の近傍位置までの区間はホルダーの直立状態をリニアガイド上で保持する様に車両屋根に平行な水平高さを維持し、往路終点の近傍位置から往路終点の直前位置までの区間はホルダーを前記直立状態からリニアガイド上で平行な水平状態へ回動させる様に往路終点の直前位置へ向って下り傾斜し、往路終点の直前位置から往路終点までの区間はホルダーの前記水平状態を保持する様に傾斜下端と同一水平高さを維持するレールカムを設けたので、リニアガイドの往路移動に伴って転子が軌道上をその起伏に倣って移動することにより、ホルダーの姿勢(リニアガイドに対する角度)を往路終点付近で直立状態から水平状態へと転換(回動)させられ、これにより屋根上で水平倒伏状態の支柱を車両乗降口との対向位置で垂下状態へと姿勢を転換でき、よってリニアガイドの往復動に連動してホルダー(支柱及び水平アームを含む)を所望位置で俯仰させることができ、この一連の動作をリニアガイドの往復動のための動力源のみで可能としている。
又、ホルダーの前端下部の幅方向に沿ってリニアガイド底板の介入間隔を設けて前板を配置し、該前板の両側に後方へ延設すると共に、前端に転子が線接触可能な外向き突片を設けた側板をホルダー側壁に前後摺動自在に装着すると共に、バネにて前板をホルダー前端より前方へ所定間隔を以て離間する様に付勢して成るホルダー回動規制体を設け、転子が軌道の往路終点の直前位置に位置して支柱がリニアガイドの切欠に下方貫通すると共に、ホルダーがリニアガイド上に水平載置された時に、ホルダー回動規制体の外向き突片を軌道の往路終点の直近前方に設けた当止板に当接掛止させたので、これ以後、ホルダー回動規制体は往路進行方向への移動が抑止されるが、ホルダーはこれを水平状態に載置したリニアガイドと共にこれらの往路終点までバネの付勢力に抗して移動でき、これによりホルダー回動規制体の前板上にリニアガイド底板前端を介してホルダー前端が配置され、クレーンを使用可能と成すことができ、かかる使用可能状態ではホルダーを水平載置するリニアガイド底板の前端下部にホルダーと側板で連結一体化されたホルダー回動規制体の前板が掛止するため、ホルダーの上下の回動が阻止される。
したがって、ベルトを介して吊下げ対象物を連結した水平アームの回転による吊下げ対象物の車内外への移動に際し、特に水平アームを車内へ回転すると、吊下げ対象物の重量によってホルダーがその後端のリニアガイドとの枢着部を支点として浮き上がろうとするが、上記の通りホルダーの上下の回動が阻止されているので、常に安定した吊り下げ状態を保持でき、安全である。
【0010】
又、軌道の往路終点に到達した転子は当止板とによりこれに当接掛止したホルダー回動規制体の外向き突片を当止板とで挟持したので、ホルダー回動規制体の上記往動抑止をより強固に保持でき、ホルダーを水平載置したリニアガイド底板の前端下部に対する前板の上記掛止状態をより堅固に保持でき、より一層の安定した吊り下げ状態を保持できる。
【0011】
ベルトは水平アームと支柱の内部を挿通したので、ベルトの途中が障害物に引っ掛かることが無く、しかもベルトは支柱と共に回転可能にその上端に設置されたウインチに取付けられているので、ウインチと支柱及び水平アームは共に回転するため、ベルトは捻じれることがなく、常に整然と巻取り又は繰り出しできる。
又、比較的重いウインチを支柱上端に設けることで、支柱下端の水平アームにウインチを設けたものに比し、ホルダー(支柱及び水平アームを含む)の移動に要する動力を軽減できる等その実用的効果甚だ大である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】車両に装備した車載クレーンの使用状態を示す斜視図である。
【図2】車両に装備した車載クレーンの格納状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示す車載クレーンの平面図である。
【図4】同上一部破断正面図である。
【図5】同上左側面図である。
【図6】図1のA−A断面図である。
【図7】図1のB−B要部断面図である。
【図8】図2に示す車載クレーンの平面図である。
【図9】同上正面図である。
【図10】同上左側面図である。
【図11】転子がこれの軌道の往路始点に位置した時の状態を示す要部断面図である。
【図12】転子がこれの軌道の往路終点の近傍位置から往路終点の直前位置の区間に位置した時の状態を示す要部断面図である。
【図13】転子がこれの軌道の往路終点の直前位置(傾斜下端)に位置した時の状態を示す要部断面図である。
【図14】転子がこれの軌道の往路終点に位置した時の状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施の一形態例を図面に基づいて説明する。
本発明に係る車載クレーンは、図1、2に示す様に、車両Cの後部座席に対応した屋根R上に方形板状のベース1を介して設置されるものにして、車椅子や身障者などの吊下げ対象物(図示せず)に先端が連結可能なベルト2を前端から繰り出し及び巻取り可能に設けた水平アーム3と、該水平アーム3の後端を下端に直交配置した支柱4と、該支柱4の上方を回転自在に支持するホルダー5と、車両Cの屋根R上で水平アーム3前端を車両Cの後方へ指向させ、且つ支柱4をその軸線が車幅方向Lに一致させた水平倒伏状態にホルダー5を介して支持すると共に、車幅方向Lに往復動自在に設け、その往路終点で車両乗降口Pに対向して支柱4を垂下状態にホルダー5を介して支持する姿勢制御手段6とから主に構成している。
尚、本発明において姿勢制御手段6の往路と復路はその方向が間逆であるだけで車幅方向Lに設定された同一路線であり、便宜上、往路を中心に説明する。
【0014】
ベルト2は、合成繊維製の薄肉帯からなり、ベルト2の先端には折り畳まれた車椅子のフレーム適所に掛止するフック2aを設けている。
尚、人体を吊り上げる場合には、フック2aに掛止される専用のスリング(図示せず)を用いる。
そして、ベルト2は水平アーム3と支柱4の内部を挿通し、支柱4と共に回転自在にその上端に設置されたウインチ7に取付けられている。
【0015】
水平アーム3は前後方向に長い中空な直方体から成り、底部前端にベルト2が挿通するスリット状の出入口を設けている。
支柱4は円筒状に形成され、その下端を水平アーム3の後端に突入して固定すると共に、水平アーム3内の支柱4下端の前方半周壁を切欠して、水平アーム3と支柱4内部をベルト2が挿通可能に連通し、水平アーム3内の前後には、ベルト2の方向転換ローラー及び上下一対の案内ローラーを配置している(図4参照)。
尚、水平アーム3の底部後方には、不使用時にフック2aを繋止するクリップを設置している。
又、水平アーム3の底部後端及び左右側部前端には、水平アーム3の手動操作時に使用する把手を設けている。
【0016】
ホルダー5は、後方が幅小の平面視凸状の上面部5aと、該上面部5aの下部中央に前後に長い凹溝状に形成され、その左右側壁が後方に延設されて軸孔を有する基幹部5bと、上面部5aにおいて後方の幅小部を除く幅広部の左右側縁に垂下され、その後端下半分が後方へ所定長さ延設されると共に、姿勢制御手段6の一構成部材である所定径の転子(ローラー)8を外装した側壁9と、上面部5aと基幹部5bの底面部の前方寄りに貫設した円形孔に上端を挿嵌固定した支柱4の外筒10とから主に構成されている。
そして、外筒10に支柱4を回転自在に挿通することにより、ホルダー5に支柱4が装着される。
上面部5aから突出する支柱4の上方は、スラスト軸受11を介して上面部5aに回転自在に取付けられている。
【0017】
支柱4の垂下状態において、水平アーム3の軸線が車両Cの前後方向に合致すると共に、水平アーム3の前端が車両C後方へ指向した状態を格納姿勢としており、この状態においてウインチ7下部に設けた垂下棒7aが、上面部5aの適所に設置したマイクロスイッチ12のスイッチレバーをオンすることにより、姿勢制御手段6の後述する駆動源13を作動可能状態と成す様に設定している。
【0018】
又、外筒10の下方には、支柱4の上記格納姿勢を保持するための姿勢保持杆14を格納姿勢の水平アーム3の上方で平行に突設している。
この姿勢保持杆14は、水平アーム3の格納姿勢において、外筒10と支柱4に連通一致する様に貫設した貫通孔15、16のうち、外筒10に設けた貫通孔15に先端口が連通するシリンダ17を外筒10に突設し、該シリンダ17には、その先端口より出没自在なプランジャ18を挿嵌している。
【0019】
プランジャ18は、これをシリンダ17内で外嵌し、且つプランジャ18とシリンダ17との間に抜止め介装された圧縮コイルバネ(図示せず)にて突出方向に付勢され、シリンダ17先端口からの突出長さは外筒10と支柱4の肉厚以上に設定されている。
シリンダ17基端口にはプランジャ18を出没操作するノブ18aが突出し、該ノブ18aとプランジャ18との間にはシリンダ17内径と同径の円形連結部を設け、該円形連結部には、シリンダ17の基端口端面の一直径方向に円形連結部と同長に刻設した一対の凹状切欠17aの夫々に挿脱自在な突条18bを設けている。
【0020】
そして、上記圧縮コイルバネの付勢力に抗してノブ18aを引っ張り、凹状切欠17aから突条18bを離脱させて、ノブ18aをその軸心を中心に回転(図示例では90度位相)し、該突条18bの先端面をシリンダ17の基端口の端面上に掛止することにより、プランジャ18を貫通孔16から離脱し、外筒10内で支柱4を回転自在と成し、前記と逆の手順で突条18bを凹状切欠17aに挿入することで貫通孔16にプランジャ18を突入掛止し、水平アーム3を格納姿勢に保持する。
【0021】
尚、外筒10において姿勢保持杆14の若干上方で180度位相した位置には支柱4の回転位置決め杆14aを突設している。
回転位置決め杆14aは、姿勢保持杆14と同一構造であるので、姿勢保持杆14と同一又は相当部分には同一の符合を図4中に附し、その構造説明は省略する。
回転位置決め杆14aが、姿勢保持杆14と異なる点は、支柱4に設けた貫通孔16が同一円周上に間隔を置いて複数あり、姿勢保持杆14のプランジャ18を貫通孔16から離脱した状態において、回転位置決め杆14aのプランジャ18を任意の貫通孔16に突入掛止することで、水平アーム3をその格納姿勢から所定角度位相した位置でその姿勢を保持し、この様に回転位置決め杆14aと姿勢保持杆14の夫々の貫通孔16に対するプランジャ18の挿脱で支柱4及び水平アーム3の回転操作とその規制を行う。
【0022】
ホルダー5は、姿勢制御手段6の構成部材の1つであるリニアガイド19に取付けられる。
リニアガイド19は、ホルダー5の基幹部5bより幅広で側壁9の間隔よりも狭くて前後に長い凹溝状に形成した本体19aと、該本体19aの半分長さにして、本体19aよりも幅広で側壁9の間隔より若干幅小な凹溝状の補強体19bとから成り、本体19a前半部の底板下面を補強体19bの底板上面の中央に重ね合わせることにより、本体19a前半部と補強体19bの左右の夫々に上端が同一高さで左右平行と成し、且つ前記各上端にホルダー5の上面部5a左右を載置可能な二重側壁19cを構成している。
又、リニアガイド19(本体19aと補強体19b)の底板前端側には、後述の如くリニアガイド19に枢着されたホルダー5と共に回動する支柱4(外筒10)が挿脱可能なU字状の切欠19dを凹設している。以後では、外筒10を含めて支柱4とも称する。
【0023】
又、ベース1上において車両C前方に相当する部位(図3の下側)には、車幅方向Lに長い一条のリニアレール20を設置し、該リニアレール20には、リニアガイド19の底板下部の中心軸線上の前後に設けた跨座式スライダー21を装着している。
リニアガイド19の駆動源13は電動モータから成り、リニアガイド19の往路始点近傍であって、ベース1上におけるリニアガイド19の往路進行方向の左側(図3、8においてベース1上の中央の左側)に設置されている。
【0024】
駆動源13の前方(図3の右側)で車幅方向Lの前後には、各車軸がベース1上に直立した一対のベルト車を配置すると共に、該ベルト車にタイミングベルトを掛け渡し、駆動源13に近接するベルト車と同軸の歯車22に駆動源13の駆動軸に軸着した駆動歯車23を噛合している。
そして、タイミングベルトの適所とリニアガイド19の本体19aの左側壁適所とを連結板24にて連結し、駆動源13の作動で、正逆回転する駆動歯車23によりタイミングベルトを介してリニアガイド19を車幅方向Lに水平に往復動自在に設けている。
【0025】
リニアガイド本体19aの一側壁後端には前向きの後退停止レバー25と後ろ向きの前進停止レバー25aを垂設し、各レバー25、25aの軌道上の前後に設置した後退停止用マイクロスイッチ26と、前進停止用マイクロスイッチ26aを設置し、往路を前進するリニアガイド19が往路終点に位置した時に、前進停止レバー25aが前進停止用マイクロスイッチ26aのスイッチレバーを押圧することにより駆動源13を停止し、往路を後退(復路を前進)するリニアガイド19が往路始点(復路終点)に位置した時に、後退停止レバー25が後退停止用マイクロスイッチ26のスイッチレバーを押圧することにより駆動源13を停止する様に設定している。
【0026】
尚、駆動源13は、故障時に駆動歯車23の歯車22との噛合を解除できる様に、歯車22に対し前後動自在に設けており、その操作は駆動源13に連繋してベース1の後方に突出したレバー13aの前後動により成し得る。
【0027】
そして、ホルダー5において基幹部5bの左右側壁後端に設けた軸孔に挿通固定した支軸27をリニアガイド本体19aの左右側壁中間部に枢着することにより、リニアガイド19に対しホルダー5を車幅方向Lに回動自在に設け、これによりリニアガイド19は支柱4を水平倒伏状態と成すホルダー5の直立状態と、支柱4を垂下状態と成すホルダー5の水平状態とへの姿勢転換が可能と成り、この水平状態では、リニアガイド19前端とホルダー5前端とは同一垂直面上に有する様に設定している。
尚、支軸27において、ホルダー基幹部5b側壁とリニアガイド本体19a側壁間にはねじりコイルばね28を外嵌し、該ねじりコイルばね28の各端部をホルダー基幹部5b側壁とリニアガイド本体19a側壁に固定し、ホルダー5を直立させる方向に付勢している。
【0028】
ベース1上において、ホルダー5の往復路左右には、姿勢制御手段6の構成部材の1つであって、ホルダー5の側壁9後部に設けた転子8が転動するレールカム29をベース1上の車幅方向L全域に渡って設置している。
このレールカム29は、転子8の軌道(以下、軌道29とも称する。)であって、その往路始点(図10においてレールカム29の中間部)Wから往路終点(図10においてベース1上面の右側縁)Zの近傍位置Xまでの区間WXはホルダー5の直立状態をリニアガイド19上で保持する様に車両屋根Rに平行な水平高さを維持し、往路終点Zの近傍位置Xから往路終点Zの直前位置Yまでの区間XYはホルダー5を前記直立状態からリニアガイド19上で平行な水平状態へ回動させる様に往路終点Zの直前位置Yへ向って下り傾斜し、往路終点Zの直前位置Yから往路終点Zまでの区間YZはホルダー5の前記水平状態を保持する様に傾斜下端(ベース1上面)Yと同一水平高さを維持する様に設定している。
この様に構成することにより、リニアガイド19の往路移動に伴って転子8が軌道29上をその起伏に倣って移動すると、ホルダー5の姿勢(リニアガイド19に対する角度)を往路終点Z付近で直立状態から水平状態へと転換(回動)させられ、これにより車両屋根R上で水平倒伏状態の支柱4を車両乗降口Pとの対向位置で垂下状態へと姿勢を転換できる。
よってリニアガイド19の往復動に連動してホルダー5(支柱4及び水平アーム3を含む)を所望位置(往路終点Z又は復路始点Z付近)で俯仰させられ、この一連の動作をリニアガイド19の往復動のための駆動源13の動力源のみで可能としている。
【0029】
又、ホルダー5には、姿勢制御手段6の一構成部材となるホルダー回動規制体30を備えている。
ホルダー回動規制体30は、ホルダー5における基幹部5b底板の前端下部の幅方向に沿ってリニアガイド19(本体19aと補強体19b)の底板の介入間隔を設けて前板31を配置し、該前板31の両側に後方へ延設すると共に、前端に転子8が線接触可能な外向き突片32を設けた側板33をホルダー5の側壁9に前後摺動自在に装着すると共に、ホルダー側壁9と側板33の適所に設けたバネ掛け突片の夫々に端部を掛止した引張バネ34にて前板31をホルダー5前端より前方へ所定間隔を以て離間する様に付勢している。
【0030】
更に、ベース1において、軌道29の往路終点Zの直近前方には、姿勢制御手段6の一構成部材となる当止板35を立設している。
この当止板35は、転子8が軌道29の往路終点Zの直前位置(傾斜下端)Yに位置してホルダー5がリニアガイド19上で水平状態に回動した時に、ホルダー回動規制体30の外向き突片32を当接掛止するものであり、該外向き突片32の当止板35への掛止状態では、これ以後ホルダー回動規制体30自身は往動できないが、リニアガイド19とホルダー5とはこれらの前端が前板31上に配置されるまでのホルダー5前端と前板31との離間間隔分だけ往動が可能であり、この往動にて軌道29の往路終点Zに到達した転子8と当止板35とにより外向き突片32を挟持する様に成している。
【0031】
尚、図中、36はリニアガイド19の往路始点でリニアガイド19の後端を当止めする様に、ベース1上でリニアレール20の後端延長線上に設けたストッパー、37、37aはリニアガイド19の底板下面の左右適所に垂下した凸部38、38aをリニアガイド19の往路終点で当止めする様に、ベース1上でリニアレール20の左右適所に設けたストッパー、39はリニアガイド19の切欠19dに挿入されて垂下する支柱4(外筒10)を当止めするストッパーである。
【0032】
上記の様に構成された車載クレーンは、図2、8〜11に示す格納状態において、車両屋根R上でリニアガイド19の後端がストッパー36に当止めされている。
かかる状態では、転子8はその軌道29上の往路始点Wに位置し、これによりリニアガイド19上でのホルダー5の直立状態を保持しており、支柱4及び水平アーム3は、支柱4下端をリニアガイド19の往路終点へ指向させた水平倒伏状態で平面視L字状にホルダー5に支持されている。
【0033】
上記格納状態の車載クレーンを使用するには、先ず駆動源13を作動させることにより、タイミングベルト、連結板24を介してリニアガイド19をリニアレール20に沿って往路進行方向へ前進させる。
同時に転子8も軌道29上を往路進行方向へ前進する。
転子8は往路終点Zの近傍位置Xまでの区間WXは、その軌道29が車両屋根Rに平行な水平高さを維持されているから上記の如く前進中のリニアガイド19上でホルダー5の直立状態と支柱4及び水平アーム3の水平倒伏状態が保持されている。
【0034】
そして、リニアガイド19がその往路を進行して車両屋根R上で車幅方向端部(図8の右側)に差し掛かり、図12に示す様に、転子8が往路終点Zの近傍位置Xから往路終点Zの直前位置Yまでの区間XYに入ると、その軌道29が下り傾斜しているため、その高さ位置に応じリニアガイド19上のホルダー5は直立状態から徐々にその進行方向へ向かって前傾し、支柱4も水平アーム3を下向きに傾斜する。
次いで、図13に示す様に、転子8が往路終点Zの直前位置Y(傾斜区間XYの傾斜下端Y)に位置した時に、リニアガイド19上のホルダー5は水平状態へ転換され、これによりホルダー5に支持された支柱4は車両乗降口Pに対向して垂下し、その下端の水平アーム3は前端を車両Cへ指向させた状態となる。
【0035】
かかる状態では、ホルダー5にあっては、その上面部5aの左右がリニアガイド19の二重側壁19c上に配置されると共に、基幹部5bの底板がリニアガイド19の底板上に重ね合わさってホルダー5とリニアガイド19の前端が一致し、リニアガイド19の切欠19d内に支柱4が挿入され、ストッパー39にて支柱4が当止めされる。
又、ホルダー回動規制体30は、ホルダー5と共にそのままの状態で回動し、その前板31がホルダー基幹部5b底板の前端下部の前方にリニアガイド19の底板の介入間隔を設けて配置し、後端の外向き突片32が当止板35の内面に当接掛止される。
【0036】
そして、当止板35に外向き突片32が掛止しているホルダー回動規制体30はリニアガイド19が更に前進しても前進できず、その状態が維持されるが、ホルダー5は更なるリニアガイド19の前進により、引張バネ34の付勢力に抗して、リニアガイド19と共に、その往路を転子8が軌道29上の往路終点Zまで前進して外向き突片32を圧接するまで前進する(図14参照)。
この時点でストッパー37、37aにリニアガイド19底板に垂下した凸部38、38aが当止めされ、前進停止レバー25aが前進停止用マイクロスイッチ26aのスイッチレバーを押圧することにより駆動源13を停止させる。
【0037】
かかる状態では転子8は外向き突片32を当止板35とにより強固に挟持してその状態を堅固に保持しており、ホルダー回動規制体30の前板31上にリニアガイド19底板前端を介してホルダー5前端が配置されることにより、ホルダー5を水平載置するリニアガイド19の底板の前端下部にホルダー5と側板33で連結一体化されたホルダー回動規制体30の前板31が掛止するため、ホルダー5の上下の回動が阻止される。
【0038】
ここで車載クレーンは、車両乗降口Pに対向して支柱4を垂下させると共に、水平アーム3前端が車両C後方へ指向した格納姿勢となる。
この状態から姿勢保持杆14と回転位置決め杆14aのノブ18aを引っ張った後に90度回転させて各ノブ18aの引っ張り状態を保持し、各プランジャ18を支柱4の貫通孔16から離脱させることにより、水平アーム3及び支柱4の回転規制を解除し、水平アーム3を支柱4を軸として自由に手動回転させ、水平アーム3前端を車外の任意位置で待機している吊下げ対象物へ指向させて、回転位置決め杆14aのノブ18aを復帰して一旦水平アーム3の回転を規制する。
次に、水平アーム3底部のクリップで繋止されたフック2aを外し、ウインチ7を作動させて、ベルト2を繰り出してフック2aを吊下げ対象物まで下降させ、吊下げ対象物が身障者であればフック2aにスリングを取付けてこれを、そうでない場合は直接フック2aを吊下げ対象物に掛止する。
【0039】
その後、ウインチ7の作動でベルト2を巻き戻して吊下げ対象物を車両フロア又は車両座席(助手席又は後部座席)の座面まで持ち上げる。
次いで、回転位置決め杆14aを再度引っ張り保持して水平アーム3の回転規制を解除し、水平アーム3を手動で回転させて車内の車両フロア又は車両座席へ吊下げ対象物を移動させる。
【0040】
この時、ウインチ7から繰り出されているベルト2は水平アーム3と支柱4の内部を挿通しているので、ベルト2の途中が障害物に引っ掛かることが無く、しかもベルト2は支柱4と共に回転可能にその上端に設置されたウインチ7に取付けられ、ウインチ7と支柱4及び水平アーム3は共に回転するため、ベルト2は捻じれることがない。
水平アーム3の上記回転による吊下げ対象物の車内への移動に際しては、上述の如く、ホルダー5を水平載置するリニアガイド19の底板の前端下部に、ホルダー5と側板33で連結一体化されたホルダー回動規制体30の前板31が掛止するため、吊下げ対象物の重量によってホルダー5がその後端のリニアガイド19との枢着部(支軸27)を支点として上下に回動することが阻止されており、特に水平アーム3が車内へ回転した時に吊下げ対象物の重量によって支軸27を支点とするホルダー5の浮き上がりが未然に防止され、常に安定した吊下げ状態を保持できる。
【0041】
そして、ウインチ7の作動にて、ベルト2を繰り出し、吊下げ対象物を車両フロア又は車両座席へ降ろして、吊下げ対象物に対するフック2a又はスリングによる掛止を解除し、ウインチ7により、ベルト2を巻き戻し、フック2aを水平アーム3底部のクリップで繋止する。
その後は、水平アーム3をその前端が車両C後方へ指向した格納姿勢へ回転させて、姿勢保持杆14と回転位置決め杆14aを復帰させ、これらの各プランジャ18を各貫通孔16へ挿通掛止する。
支柱4が格納姿勢に復帰すると、ウインチ7下部の垂下棒7aがマイクロスイッチ12のスイッチレバーをオンするため、駆動源13は作動可能状態と成り、該駆動源13を上記と逆回転に作動させる。
【0042】
駆動源13の上記作動により、上記と逆の手順で、リニアガイド19が後退することにより、車両屋根R上でホルダー5は水平状態から直立状態へと回動し、支柱4と水平アーム3を水平倒伏状態と成し、リニアガイド19の後端がストッパー36に当止めされた時に、後退停止レバー25が後退停止用マイクロスイッチ26のスイッチレバーを押圧することにより、駆動源13は停止し、車載クレーンの車両屋根R上での格納が完了する。
【符号の説明】
【0043】
2 ベルト
3 水平アーム
4 支柱
5 ホルダー
6 姿勢制御手段
7 ウインチ
8 転子
9 (ホルダー)側壁
19 リニアガイド
19d 切欠
20 レールカム(軌道)
30 ホルダー回動規制体
31 前板
32 外向き突片
33 側板
34 バネ
35 当止板
C 車両
L 車幅方向
P 車両乗降口
R (車両)屋根
W 往路始点
X 近傍位置
Y 直前位置(傾斜下端)
Z 往路終点
WX 区間
XY 区間
YZ 区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊下げ対象物に先端が連結可能なベルトを前端から繰り出し及び巻取り可能に設けた水平アームと、該水平アームの後端を下端に直交配置した支柱と、該支柱を回転自在に支持するホルダーと、車両の屋根上で支柱をその軸線が車幅方向に一致した水平倒伏状態にホルダーを介して支持すると共に、車幅方向に往復動自在に設け、その往路終点で車両乗降口に対向して支柱を垂下状態にホルダーを介して支持する姿勢制御手段とから成ることを特徴とする車載クレーン。
【請求項2】
姿勢制御手段は、車両屋根上を車幅方向に水平に往復動自在に設けると共に、ホルダーの後端を車幅方向に回動自在に枢着し、ホルダーと共に回動する支柱が挿脱可能な切欠を底板前端側に凹設したリニアガイドと、ホルダーの側壁後部に設けた転子と、該転子が転動する軌道であって、その往路始点から往路終点の近傍位置までの区間はホルダーの直立状態をリニアガイド上で保持する様に車両屋根に平行な水平高さを維持し、往路終点の近傍位置から往路終点の直前位置までの区間はホルダーを前記直立状態からリニアガイド上でこれに平行な水平状態へ回動させる様に往路終点の直前位置へ向って下り傾斜し、往路終点の直前位置から往路終点までの区間はホルダーの前記水平状態を保持する様に傾斜下端と同一水平高さを維持するレールカムと、ホルダーの前端下部に、その幅方向に沿ってリニアガイド底板の介入間隔を設けて前板を配置し、該前板の両側に後方へ延設すると共に、前端に転子が線接触可能な外向き突片を設けた側板をホルダー側壁に前後摺動自在に装着し、バネにて前板をホルダー前端より前方へ所定間隔を以て離間する様に付勢して成るホルダー回動規制体と、転子が軌道の往路終点の直前位置に位置した時に外向き突片が軌道の往路終点の直近前方で当接掛止される当止板と、から成ることを特徴とする請求項1記載の車載クレーン。
【請求項3】
軌道の往路終点に到達した転子は当止板とによりこれに当接掛止したホルダー回動規制体の外向き突片を挟持したことを特徴とする請求項2記載の車載クレーン。
【請求項4】
ベルトは水平アームと支柱の内部を挿通し、支柱と共に回転自在にその上端に設置されたウインチに取付けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の車載クレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−18348(P2013−18348A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152867(P2011−152867)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(393020122)トーシンテック株式会社 (20)
【Fターム(参考)】