説明

車載レーダ装置用の電源装置

【課題】発熱を低減し、かつ電源部で発生するノイズによってレーダ検出性能が損なわれない車載レーダ装置用の電源装置を提供する。
【解決手段】スイッチングレギュレータ(1a、1b、・・・2)が直列に複数段接続されたスイッチングレギュレータの接続体と、出力電源電圧と所定の基準電圧を比較して比較結果を出力する電圧比較手段4と、当該車載レーダ装置が電波を送信/受信していない期間に出力パルスのHi/Lowを切替えるパルス生成手段3を備え、パルス生成手段3から出力するパルスによって最終段のスイッチングレギュレータ2をスイッチ駆動すると共に、電圧比較手段4の比較結果をパルス生成手段3が出力するパルスでスイッチ駆動されない最終段以外のスイッチングレギュレータにフィードバックする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車載用のレーダ装置(以下、車載レーダ装置と記す)に関し、特に車載レーダ装置内部に配置するスイッチング方式の電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スイッチング方式の電源装置の構成に関する従来技術としては、例えば、特開2007−124886号公報に記載されたものがある。
特開2007−124886号公報には、目標電圧に応じた基準スイッチング周波数でスイッチング手段を動作させることにより、入力電圧を前記目標電圧に調整して出力するスイッチング電源装置において、スイッチング手段を基準スイッチング周波数で動作させる際に発生するノイズを低減化するため、基準スイッチング周波数を含む所定周波数の範囲で、スイッチング手段を動作させるスイッチング周波数を変更するスイッチング周波数変更手段を備えることが記載されている。
【0003】
また、パルス幅変調波で動作を制御する機器において、スイッチングノイズによる車載機器への悪影響を除去するため、制御パルスよりも低い周波数で制御パルスを周波数変調し、これにより制御パルスの高調波成分のスペクトルを拡散する方法が知られている。
しかし、この方法では、受信周波数帯域内にも拡散されたノイズ成分が残留しており、この残留成分を除去する必要がある。
特開2006−136138号公報には、このような残留成分を除去するため、高調波スペクトルを拡散するための第1の発振器と、オフセット電圧を重畳するための第2の発振器とを設け、これら両発振器出力を加算し、これによりノイズスペクトルを所望の周波数帯域外にシフトする方法が記載されている。
【0004】
まず、車載レーダ装置について簡単に説明し、次にこの車載レーダ装置に採用する電源装置の構成などについての課題を述べる。
車載レーダ装置は、レーダ装置が電波を送信してから当該レーダ装置のシステム上検出できる最大検出可能距離に存在するターゲットで反射した反射信号を前記レーダ装置が受信するまでに必要な時間を「観測期間」とし、この観測期間でレーダ装置の検出距離内に存在するターゲットから反射した微小な反射信号を受信することによってターゲットの有無を検出し、検出したターゲットまでの相対距離・相対速度・方向などの情報を得る。
車載レーダ装置は、上記のような電波の送信と受信の一連の動作を定期的に実施する。
車載レーダ装置には、電波を送信あるいは受信するためのモジュールが備えられていて、このモジュールは、例えば、発振器、増幅器、分配器、逓倍器、パルスON(オン)/OFF(オフ)スイッチなどから成る。
【0005】
前記モジュール内の発振器で生成された所望の周波数信号を分配器にて送信用、受信用に分配し、送信用に分配された信号は逓倍器で逓倍された後、増幅器で増幅され、パルスON/OFFスイッチ、アンテナを介して電波として送信される。このとき、パルスON/OFFスイッチにより電波を送信するか停止かを切替える。
前方のターゲットから得られる反射信号と分配器で受信用に分配した信号とをミキシングし、反射信号の周波数を中間周波数帯(数100kHz〜数10MHz)にダウンコンバートし、この信号をビート信号としてモジュールから取り出す。
このビート信号は、所望の信号レベルまでIF増幅器(周波数帯域:数100kHz〜数10MHz、利得:数10dB)で増幅され、この信号を信号処理演算することによりターゲットの相対距離、相対速度、方向などを得る。
【0006】
このような車載レーダ装置においては、内部に配置した電源装置から前記IF増幅器への電源供給やモジュールへのバイアス供給を行うが、この際に、電源装置から発生するノイズが前記IF増幅器やモジュールへ影響を与えないようにする必要がある。
【0007】
車載レーダ装置用の電源装置を実現するための主要な電源方式としては、スイッチングレギュレータ方式、シリーズレギュレータ方式あるいはシャントレギュレータ方式などがある。
スイッチングレギュレータ方式は,電源装置に供給した電源電圧(電源入力)をスイッチ素子でON/OFF切替え、そのスイッチ素子の出力をダイオードで整流し、コイル及びコンデンサを用いて平滑化することで、電源装置に供給した電源電圧を昇/降圧して所望の出力電圧を生成する。
【0008】
スイッチングレギュレータ方式は、「電力の変換損失が少ない」というメリットがある反面、スイッチ動作の基準周波数(数100kH〜数MHz程度)に起因するノイズが発生するという課題がある。
一方、シリーズレギュレータやシャントレギュレータの方式は、電源装置の入出力間に直列あるいは並列に設けたFETやトランジスタなどの制御素子によって電源電圧を降圧し,所望の出力電圧を得る。
シリーズレギュレータ方式やシャントレギュレータ方式は、スイッチングレギュレータ方式のようにスイッチ素子のON/OFF動作がないので、スイッチ動作に伴うノイズが発生しない。従って、スイッチングレギュレータ方式と比較してノイズ性能が良い。
しかし,制御素子での電圧降下による発熱や電力変換効率が悪いといった課題がある。
【0009】
また、スイッチングレギュレータ方式の電源装置を車載レーダ装置内のIF増幅器や発振器の付近に配置すると、スイッチ動作の基準周波数に起因するノイズが電源回路や増幅器等の周辺回路へ輻射する、あるいは前記ビート信号に重畳して車載レーダ装置のターゲット検出性能に悪影響を与えるという問題がある。
そのため、従来の車載レーダ装置では、図10に示すようにスイッチングレギュレータ100の出力をシリーズレギュレータ200を介して電源回路や増幅器などの周辺回路へ供給する構成としてきた。
しかし、このような従来の構成では、シリーズレギュレータ200の部分で電力変換効率が悪く、発熱が大きいことから、部品への熱ストレスによる耐久性の低下や特性劣化という点で課題が残る。
【0010】
また、このような課題に対して、特開2007−124886号公報や特開2006−136138号公報に記載されている手法を取り入れたとしても、スイッチ動作の基準周波数(数100kH〜数MHz程度)と前記ビート信号や前記IF増幅器の周波数帯域(数100kHz〜数10MHz)が重なるので、スイッチングレギュレータのスイッチ動作に起因するノイズの周波数帯域を、「当該車載レーダ装置が検出範囲内にターゲットが存在するかどうかを検出するために設けた期間(即ち、上記観測期間)のビート信号」に混入しないようにしなくてはらないという課題がある。
【0011】
このような背景から、車載レーダ装置における増幅器の電源やモジュールへ直接電源を供給するバイアス電圧源には、電力変換効率の良い前者のスイッチングレギュレータを採用できず、電力損失の大きい後者のシリーズレギュレータを採用する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−124886号公報
【特許文献2】特開2006−136138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前述したような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、車載レーダ装置において、前記IF増幅器やモジュールなどへ所望の電圧を供給するために配置された電源装置の発熱量を低減し、かつ車載レーダ装置に配置された電源装置が発生するノイズによって車載レーダ装置の検出性能が損なわれるのを防ぐことができる「車載レーダ装置用の電源装置」を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に係る車載レーダ装置用の電源装置は、電波を送受する車載レーダ装置用の電源装置であって、前記電源装置は、入力電圧をスイッチ素子でON/OFFし、前記スイッチ素子の出力を整流・平滑化することにより前記入力電圧を昇圧/降圧して所望の出力電圧を生成するスイッチングレギュレータが直列に複数段接続されたスイッチングレギュレータの接続体と、前記電源装置が出力する出力電源電圧と所定の基準電圧を比較して比較結果を出力する電圧比較手段と、当該車載レーダ装置が電波を送信あるいは受信していない期間に、出力パルスのHi/Lowを切替えるパルス生成手段を備え、前記パルス生成手段から出力するパルスによって前記接続体の最終段のスイッチングレギュレータをスイッチ駆動すると共に、前記電圧比較手段の比較結果を前記パルス生成手段が出力するパルスでスイッチ駆動されない最終段以外のスイッチングレギュレータにフィードバックすることによって所定の出力電源電圧を得るように構成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数のスイッチングレギュレータを直列に接続した構成であっても、最終段スイッチングレギュレータが発生するノイズによって車載レーダ装置の検出性能が低下するのを防ぎ、かつ所定の電源電圧を得ることができる。
さらに、シリーズレギュレータと比較して電力変換効率の良いスイッチングレギュレータを用いるので、電力損失や発熱が低減され、低消費電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1による車載レーダ装置用の電源装置の構成を概念的に示す図である。
【図2】実施の形態1によるパルス生成手段の構成を示す図である。
【図3】電圧比較手段の構成例を示す図である。
【図4】実施の形態1におけるパルス生成手段の動作を説明するための図である。
【図5】実施の形態2におけるパルス生成手段の動作を説明するための図である。
【図6】実施の形態3による車載レーダ装置用の電源装置の構成を概念的に示す図である。
【図7】実施の形態4よる車載レーダ装置用の電源装置の構成を示す図である。
【図8】実施の形態4におけるパルス生成手段の動作を説明するための図である。
【図9】実施の形態4においてパルス生成手段の出力波形をどのように生成するのかを説明するための図である。
【図10】従来の車載レーダ装置の構成例を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明の一実施の形態例について説明する。
なお、各図間において、同一符合は、同一あるいは相当のものであることを表す。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による車載レーダ装置用の電源装置の構成例を概念的に示す図である。
図1において、1は後述する最終段以外のスイッチングレギュレータであり、第1スイッチングレギュレータ1a、第2スイッチングレギュレータ1b、・・・・の複数のスイッチングレギュレータで構成されている。2は最終段のスイッチングレギュレータである第Nスイッチングレギュレータ、3はパルス生成手段(パルス生成回路)、4は電圧比較手段(電圧比較回路)である。
【0018】
なお、図1では、最終段以外のスイッチングレギュレータ1は、2つ以上の複数のスイッチングレギュレータ(第1スイッチングレギュレータ1a、第2スイッチングレギュレータ1b、・・・)で構成されている場合を示しているが、最終段以外のスイッチングレギュレータ1は、単独のスイッチングレギュレータ(例えば第1スイッチングレギュレータ1aのみ)で構成されていてもよい。この場合は、N=2となる。
第1スイッチングレギュレータ1a、第2スイッチングレギュレータ1b・・・・から最終断の第Nスイッチングレギュレータ2のそれぞれは、その内部に設けたスイッチ素子をON/OFF制御することにより、供給された入力電圧からスイッチング電圧を生成し、コイル、コンデンサ等のフィルタにより前記スイッチング電圧を平滑化した後、出力するスイッチングレギュレータである。
【0019】
このようなスイッチングレギュレータを用いて、前段のスイッチングレギュレータ出力を後段のスイッチングレギュレータの入力として、第1スイッチングレギュレータ1aから最終段の第Nのスイッチングレギュレータまで直列に接続されている。
最終段スイッチングレギュレータ(第Nスイッチングレギュレータ)2は、パルス生成手段(パルス生成回路)3が生成するパルス信号によって内部に設けたスイッチ素子が駆動されると共に、最終段スイッチレギュレータ2の出力は電圧比較手段(電圧比較回路)4へ入力される。
本実施の形態におけるパルス生成手段3は、車載レーダ装置がビート信号の観測期間(即ち、当該車載レーダ装置が検出範囲内にターゲットが存在するかどうかを検出するために設けた期間)を経過してから次の送信を開始するまでの間に、第Nスイッチングレギュレータ2に設けたスイッチ素子を1回のみON/OFF制御するための手段である。
【0020】
図2は、本実施の形態におけるパルス生成手段3の構成を示す図であり、パルス生成手段3は、送信/受信検出部31、遅延回路32及びパルス生成器33から構成される。
パルス生成手段3は、前述した電波を送信あるいは受信するためのモジュールのパルスON/OFFスイッチの制御信号をトリガとして、送信/受信検出部31によって当該車載レーダ装置が電波を送信あるいは受信を開始したことを検出し、遅延回路32によってパルス生成器33が出力する出力信号の出力タイミングを制御する。このときの出力タイミングは、車載レーダ装置がビート信号の観測期間を経過してから次の電波送信を開始するまでの間に前記スイッチ素子の状態を1回のみ切替えるように設定する。
【0021】
図3は、電圧比較手段(電圧比較回路)4の構成例を示す図である。
電圧比較手段4は、その内部あるいは外部から与えられた基準電圧41と、最終段の第Nスイッチングレギュレータ2の出力電圧を所定の比で分圧する分圧抵抗42と、分圧抵抗42で分圧された電圧値(即ち、抵抗42aと抵抗42bとで分圧された電圧)と前記基準電圧41との差電圧を比較して増幅する演算増幅器43と、演算増幅器43の出力を入力するPWM回路44とで構成されている。
PWM回路44では、両者(即ち、分圧抵抗42で分圧された電圧値と基準電圧)の差分に依存したデューティー比のパルス波形を出力する。
このPMW回路44の出力を用いて、パルス生成手段3によって制御される最終段の第Nスイッチングレギュレータ2以外のスイッチングレギュレータ1(即ち、第1スイッチングレギュレータ1a、第2スイッチングレギュレータ1b、・・・)に設けられたスイッチ素子を駆動する。
【0022】
図4は、本実施の形態におけるパルス生成手段3の動作を説明するための図である。
図4(a)はパルス生成手段3に入力するパルスON/OFFスイッチの制御信号、図4(b)は電波の送信/受信期間、図4(c)はパルス生成手段3の出力波形(即ち、パルス生成手段3から出力するパルス信号の波形)を示している。
なお、図4(b)の“TA”は、電波を送信あるいは受信をともにしない期間を示している。
パルス生成手段3から出力されるパルス信号は、図4に示したように、電波を送信あるいは受信をともにしない期間TA内に、「立ち上がり」あるいは「立ち下がり」の変化が1度のみの出力されるパルスである。
即ち、期間TA内でパルス生成手段3から出力されるパルス信号は、HiまたはLoに切替わる。
【0023】
本実施の形態では、最終段の第Nスイッチングレギュレータ2は、当該車載レーダ装置が電波を送信あるいは受信ともにしていない間にスイッチング駆動され、最終段の第Nスイッチングレギュレータ2の入力が降圧されたものを出力するのであるが、最終段の第Nスイッチングレギュレータ2の出力が所定の電源電圧(出力電圧)となるように電圧比較回路4の出力パルスのデューティー比を制御し、パルス生成手段3により生成されたパルスで駆動されないスイッチングレギュレータ(即ち、第1スイッチングレギュレータ1a、第2スイッチングレギュレータ1b・・・)をスイッチング駆動することによって、最終的に第Nスイッチングレギュレータ2の入力が制御され、所定の電源電圧を得ることができる。
また、最終段の第Nスイッチングレギュレータ2のスイッチング駆動が、「電波を送信、あるいは受信ともにしない期間」に同期して行われるので、本来、スイッチングによってHi/Lo切替わる瞬間に多く発生するノイズは、当該車載レーダ装置のターゲット検出性能に影響を及ぼさない期間で発生する。
従って、車載レーダ装置、特に低いノイズ性能を必要とする増幅器や前記モジュールへの電源として直接スイッチングレギュレータを用いることができるので、電源回路部での発熱量を低減し、かつ、電源回路部でのノイズ性能によって当該車載レーダ装置のノイズ検出性能が低下するのを抑制できる。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態による車載レーダ装置用の電源装置は、電波を送受する車載レーダ装置用の電源装置であって、電源装置は、入力電圧をスイッチ素子でON/OFFし、スイッチ素子の出力を整流・平滑化することにより入力電圧を昇圧/降圧して所望の出力電圧を生成するスイッチングレギュレータ(1a、1b・・・2)が直列に複数段接続されたスイッチングレギュレータの接続体と、電源装置が出力する出力電源電圧と所定の基準電圧を比較して比較結果を出力する電圧比較手段4と、当該車載レーダ装置が電波を送信あるいは受信していない期間に出力パルスのHi/Lowを切替えるパルス生成手段3を備え、パルス生成手段3から出力するパルスによって前記スイッチングレギュレータの接続体の最終段のスイッチングレギュレータ2をスイッチ駆動すると共に、電圧比較手段4の比較結果をパルス生成手段3が出力するパルスでスイッチ駆動されない最終段以外のスイッチングレギュレータ(1a、1b・・・)にフィードバックすることによって所定の出力電源電圧を得るように構成されている。
【0025】
従って、本実施の形態によれば、シリーズレギュレータは用いずに電力変換効率の良い複数個のスイッチングレギュレータを直列接続した構成としているので、電源部での損失や発熱が低減され、低消費電力化することができる。
さらに、車載レーダ装置が電波を送信あるいは受信していない期間にパルス生成手段で生成されるパルスによって最終段のスイッチングレギュレータのスイッチング駆動がなされるので、最終段のスイッチングレギュレータのスイッチ動作時に発生するノイズは、車
載レーダ装置の検出性能に影響を及ぼさない期間に発生する。
従って、最終段のスイッチングレギュレータが発生するノイズにより車載レーダ装置の検出性能が低下するのを防ぐことができる。
【0026】
また、本実施の形態によれば、パルス生成手段3は、車載レーダ装置が電波を送信あるいは受信していない期間に、立ち上がりか立ち下がりのいずれかの変化が1度のみのパルスを出力するので、第1のスイッチングレギュレータ1a(初段のスイッチングレギュレータ)の入力と最終段のスイッチングレギュレータ2の出力電圧との電位差が小さい場合により有効である。
【0027】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2におけるパルス生成手段3の動作を説明するための図である。
図5(a)はパルス生成手段3に入力するパルスON/OFFスイッチの制御信号、図5(b)は電波の送信/受信期間、図5(c)はパルス生成手段3から出力するパルス信号の波形を示している。
なお、図5(b)の“TA”は、電波を送信あるいは受信をともにしない期間を示している。
前述した実施の形態1では、パルス生成手段3から出力されるパルス信号は、電波を送信あるいは受信をともにしない期間TAに出力される「立ち上がり」か「立ち下がり」のいずれかの変化が1度のみのパルスとしたが、図5に示したように、車載レーダ装置が送信あるいは受信ともにしていない期間TA内に「立ち上がり」と「立下り」の両方の変化を発生するパルスとしても構わない。
なお、図5では、一例として前記パルス生成手段3の「立ち上がり」及び「立ち下がり」のパルス数は5パルスとしたが、パルスの数はいくつであっても良い。
また、図5において、電波を送受/受信している間のパルス生成手段3の出力は、Loとしているが、この期間で、パルス生成手段3の出力はHiであっても構わない。
【0028】
電源装置に供給した電源電圧(電源入力)と最終段の第Nスイッチングレギュレータ2の出力電圧との電位差が小さい場合には、スイッチングレギュレータのスイッチ素子における電圧降下が小さいため発熱や電力変換効率が問題とならい。
従って、実施の形態1で示した電源装置の構成は、電源装置に供給した電源電圧と最終段レギュレータ出力電圧との出力電位差が小さい場合に有効である。
一方、電源装置に供給した電源電圧と最終段レギュレータの出力電圧との出力電位差が大きい場合には、スイッチングレギュレータのスイッチ素子における電圧降下が大きくなり、発熱や電力変換効率が悪くなる。
そこで,スイッチングレギュレータのスイッチ素子の駆動動作を速くし、スイッチ素子のON時間を短くすることによりスイッチ素子での発熱を抑制させる必要がある。
従って、実施の形態2で示した電源装置の構成は、電源装置に供給した電源電圧と最終段レギュレータ出力電圧との出力電位差が大きい場合に有効である。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態による車載レーダ装置用の電源装置のパルス生成手段3は、車載レーダ装置が電波を送信あるいは受信していない期間に、「立ち上がり」と「立ち下がり」の両方の変化を発生するパルスを出力することを特徴とする。
従って、本実施の形態によれば、スイッチングレギュレータのスイッチ素子の駆動動作を速くし、スイッチ素子のON時間を短くすることが可能であり、スイッチ素子での発熱をより抑制することができる。
特に、第1のスイッチングレギュレータの入力と最終段のスイッチングレギュレータの出力電位差が大きい場合により有効である。
【0030】
実施の形態3.
図6は、実施の形態3による車載レーダ装置用の電源装置の構成例を概念的に示す図である。
本実施の形態による車載レーダ装置においては、図6に示すように前記電圧比較手段4の出力を第1段目のスイッチングレギュレータ1aのみにフィードバックさせてスイッチングを駆動させる構成とする。
電源装置から出力するべき所定の電源出力電圧と最終段のスイッチングレギュレータ(即ち、第Nスイッチングレギュレータ2)から出力する電圧との誤差を補うために、電圧比較手段4において、基準電圧41と電源出力電圧を分圧抵抗42で分圧した電圧値を比較し、PMW回路44の出力パルスのデューティー比を制御してスイッチングレギュレータのスイッチ素子を駆動させるのであるが、この際のスイッチング電圧変動が出力に現れてしまう。
【0031】
実施の形態1の場合には、最終段のスイッチングレギュレータ以外には一様に電圧比較手段4の出力を各スイッチングレギュレータへフィードバックさせているため、スイッチング電圧変動が後段になっても発生してしまう。
一方、本実施の形態のように第1番目のスイッチングレギュレータ(第1スイッチングレギュレータ1a)のみに電圧比較手段4の出力(比較結果)をフィードバックさせた場合には、電源装置から出力するべき所定の電源出力電圧と最終段レギュレータ出力電圧との誤差の大部分が第1番目のスイッチングレギュレータで吸収されるので、後段のスイッチングレギュレータへ伝搬するほどスイッチング電圧の変動は小さく、かつ、フィルタ等で平滑され小さくなる。
従って、最終的に得られる電源電圧は、さらに低ノイズで安定した出力が得られる。
なお、上記実施の形態1〜3では、電波を送信あるいは受信ともにしない領域において、パルスの立ち上がり、立ち下がりを行っていたが、回路設計や基板設計上の都合で、電波を送信をしない期間あるいは受信しない期間だけで、パルスの立ち上がり、立ち下がりを行う構成としても、一定の効果が得られる。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態による車載レーダ装置用の電源装置は、電圧比較手段4の比較結果を、第1段のスイッチングレギュレータ1aのみにフィードバックすることことによって所定の出力電源電圧を得るように構成している。
本実施の形態によれば、電圧比較手段で出力電圧の誤差を検出し、第1のスイッチングレギュレータへフィードバッグすることによって出力電圧に発生するスイッチング電圧変動が、後段のスイッチングレギュレータへ伝搬するほどスイッチング電圧の変動はフィルタ等で平滑され小さくなる。従って、最終的に得られる電源電圧は、より低ノイズで安定した出力が得られる。
【0033】
実施の形態4.
図7は、実施の形態4による車載レーダ装置用の電源装置の構成例を概念的に示す図である。
前述した実施の形態1〜3では、「パルス生成手段3で生成されたパルスによって駆動されないスイッチングレギュレータ」に、電圧比較手段4の比較結果をフィードバックしていたが、本実施の形態では、「パルス生成手段3で生成されたパルスで駆動されるスイッチングレギュレータ」に、電圧比較手段4の比較結果をフィードバックする場合について述べる。
前述の実施の形態1と同様に、図7中の第スイッチングレギュレータ1a、第2スイッチングレギュレータ1b・・・・から最終段の第Nスイッチングレギュレータ2のそれぞれは、入出力間に備えたスイッチ素子をON/OFF制御することで、当該電源装置に入力した電源入力からスイッチング電圧を生成し、コイル、コンデンサ等のフィルタで前記スイッチング電圧を平滑化した後、出力するスイッチングレギュレータである。
このようなスイッチングレギュレータを用いて、前段のスイッチングレギュレータ出力
を後段スイッチングレギュレータの入力として、直列に第1から最終段の第Nまで接続されている。
【0034】
最終段の第Nスイッチングレギュレータ2は、パルス生成手段3が生成するパルス信号によって内部のスイッチ素子を駆動すると共に、最終段の第Nスイッチレギュレータ2の出力を電圧比較回路4へ入力する。
図8は、実施の形態4におけるパルス生成手段3の動作を説明するための図である。
図8(a)はパルス生成手段3に入力するパルスON/OFFスイッチの制御信号、図8(b)は電波の送信/送信しない期間、図8(c)はパルス生成手段3の出力波形を示している。
なお、図8(b)の“TB”は、電波を送信しない期間を示している。
パルス生成手段3は、電波を送信しない期間TBを、例えば、図8のように前記パルスON/OFFスイッチの制御信号をトリガとして、当該車載レーダ装置が電波を送信しない期間を検出し、この期間TBでパルスを出力する構成とする。
なお、本実施の形態では、パルス生成手段3は、電波を送信しない期間TBにパルス信号を出力すればよいので、出力パルスのDutyの自由度が大きい。
【0035】
電圧比較手段4の構成は、前述した実施の形態1での電圧比較手段の構成と同様であり、基準電圧41、分圧抵抗42、演算増幅器43、入力電圧に依存したディーティ比のパルスを生成するPWM制御回路44から構成する。
電圧比較回路4の内部あるいは外部から与えた前記基準電圧41と、入力を所定の出力電圧と基準電圧41から決定される定数比で抵抗分圧し得られる電圧値を演算増幅器43で比較し、両者の差分に依存したデューティー比のパルス波形を出力する。
電圧比較回路4の出力は、パルス生成手段3に入力され、パルス生成手段3から出力するパルス信号によって最終段のスイッチングレギュレータのスイッチングを駆動する。
【0036】
図9は、パルス生成手段3の出力波形をどのようにして生成するのかを説明するための図である。
パルス生成手段3は、パルスON/OFFスイッチの制御信号がONからOFFへの切替り時をトリガとして、パルスON検出部(図示なし)にて検出し、遅延回路32を介してAND回路であるパルス生成器33へ入力する。
ここで、遅延回路32の入力にHiが入力されてから所定時間遅延して遅延回路出力が立ち上がり、設定した期間のみHiを出力するよう動作する。
従って、この遅延回路32の立ち上がり遅延時間とHiを出力する期間によって、パルス生成手段3のパルス出力するタイミングを「電波を送信しない期間」とするか、「電波を受信しない期間」とするかを設定する。
一方、電圧比較手段4の出力は、パルス生成器33の他方の入力端子に接続されており、遅延回路32の出力がHiのときに電圧比較手段4の出力によりスイッチングレギュレータのスイッチ素子をON/OFF駆動する。このようにして、図8に示す出力波形を生成する。
【0037】
なお、前記パルス生成手段3のパルス信号は、電波を送信しない期間に、立ち上がりか立ち下がりの変化が1度のみの出力であっても構わないし、複数のパルスが存在しても構わない。
また、「電波を送信しない期間」を「電波を受信しない期間」としても同様の効果が得られる。
また、本実施の形態では、パルス生成手段3で駆動されるスイッチングレギュレータは、第Nの最終段のみであるが、パルス生成手段3で駆動されるスイッチングレギュレータは複数あっても構わない。
このようにした場合、最終段のスイッチングレギュレータ2は、車載レーダ装置が電波
を送信していない間にスイッチング駆動され、最終段のスイッチングレギュレータ2の入力が降圧されたものを出力するが、本構成の場合は、電波を送信していない期間の範囲が比較的広いため、前記パルス生成手段3のDutyをこの期間内で変化させることで、安定した所定の電源電圧を得るように構成することが可能になる。
【0038】
ところで、車載レーダ装置の方式の1つであるパルスレーダ方式場合には、 送信した
パルス信号とターゲットから反射してきたパルス信号との時間差を測定することで、距離を検出する。
このような方式の場合には、レーダ装置の検出できる距離分解能を上げるため、送信パルスのパルス幅を短くする必要がある。
また、レーダ装置が遠くにあるターゲットを観測するためには、送信したパルス信号が反射して戻ってくるまで次の送信を行えないので、送信していない期間の範囲が比較的広くなる。
なお、以上は、パルスレーダ方式の場合について説明したが、パルスレーダ方式に限定されるものではない。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態による車載レーダ装置用の電源装置は、電圧比較手段4の比較結果を、最終段のスイッチングレギュレータ2をスイッチ駆動するパルス生成手段3にフィードバックし、当該車載レーダ装置が電波を送信していない期間にパルス生成手段3の出力パルスのHi/Lowを切替えることによって所定の出力電源電圧を得るように構成されている。
本実施の形態によれば、「電波を送信していない期間」に余裕がある場合は、パルス生成手段3が出力する出力パルスのDutyを変化させる自由度が向上するため、より柔軟な出力電圧設定ができ、負荷変動に対しロバスト(robust:強健)な電源構成を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、車載レーダ装置内に配置される電源装置の発熱量を低減し、かつ、電源装置が発生するノイズによって車載レーダ装置のターゲット検出性能が損なわれるのを防ぐことができる車載レーダ装置用の電源装置の実現に有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 最終段以外のスイッチングレギュレータ
1a 第1スイッチングレギュレータ
1b 第2スイッチングレギュレータ
2 最終段のスイッチングレギュレータ
3 パルス生成手段
31 送信/受信検出部 32 遅延回路 33 パルス生成器
4 電圧比較手段
41 基準電圧 42 分圧抵抗 43 演算増幅器
44 PWM回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送受する車載レーダ装置用の電源装置であって、
前記電源装置は、入力電圧をスイッチ素子でON/OFFし、前記スイッチ素子の出力を整流・平滑化することにより前記入力電圧を昇圧/降圧して所望の出力電圧を生成するスイッチングレギュレータが直列に複数段接続されたスイッチングレギュレータの接続体と、
前記電源装置が出力する出力電源電圧と所定の基準電圧を比較して比較結果を出力する電圧比較手段と、
当該車載レーダ装置が電波を送信あるいは受信していない期間に、出力パルスのHi/Lowを切替えるパルス生成手段を備え、
前記パルス生成手段から出力するパルスによって前記接続体の最終段のスイッチングレギュレータをスイッチ駆動すると共に、前記電圧比較手段の比較結果を前記パルス生成手段が出力するパルスでスイッチ駆動されない最終段以外のスイッチングレギュレータにフィードバックすることによって、所定の出力電源電圧を得るように構成されていることを特徴とする車載レーダ装置用の電源装置。
【請求項2】
前記パルス生成手段は、当該車載レーダ装置が電波を送信あるいは受信していない期間に、立ち上がりか立ち下がりのいずれかの変化が1度のみのパルスを出力することを特徴とする請求項1に記載の車載レーダ装置用の電源装置。
【請求項3】
前記パルス生成手段は、前記車載レーダ装置が電波を送信あるいは受信していない期間に、立ち上がりと立ち下がりの両方の変化を発生するパルスを出力することを特徴とする請求項1に記載の車載レーダ装置用の電源装置。
【請求項4】
前記電圧比較手段の比較結果を、第1段のスイッチングレギュレータにフィードバックすることことによって所定の出力電源電圧を得るように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車載レーダ装置用の電源装置。
【請求項5】
前記電圧比較手段の比較結果を、前記最終段のスイッチングレギュレータをスイッチ駆動するパルス生成手段にフィードバックし、当該車載レーダ装置が電波を送信していない期間に前記パルス生成手段の出力パルスのHi/Lowを切替えることによって所定の出力電源電圧を得るように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車載レーダ装置用の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−99676(P2011−99676A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252521(P2009−252521)
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】