説明

車載充電制御装置

【課題】搭乗者の意思を反映しながら電池の充電制御を行う。
【解決手段】車載充電制御装置10が一方的に負荷を遮断または出力制限するのではなく、負荷15a〜15fをオフまたは出力制限するのか、燃費を低下させても充電量をアップするのか、あるいは、単数または複数の負荷15a〜15fを自由に選択してオフまたは出力制限するのか、過去の選択履歴に基づいて出力制限負荷を自動的にオフまたは出力制限するのか、といった電池11の充電についての処理動作について、タッチパネル等の表示入力装置13を通じて搭乗者の意思を確認してから実際の処理を行う。搭乗者の意思に背いて快適性を損なうことを防止しながら、必要な充電量を確保できる。特にオフする負荷15a〜15fを選択できるので便利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の充電状態を制御する車載充電制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、図7の如く、エンジン1が回転しているときに、発電機3によってエンジン1の回転力を電流エネルギーに変換し、ここで発生した電力を各種の負荷5に供給するとともに、余剰の電力を用いて電池(バッテリ)7の充電を図る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、電池7の状態が満充電に近い状態であれば、自動車内の各種負荷5を動作させる上で問題はないが、電池7が過放電状態の場合は、そのままエンジン1をオフにすると、次にスタータキーをオンにしても、スタータの駆動電圧に満たないくらいに電池7の電圧が低下してしまい、いわゆる電池切れの状態が発生するおそれがある。
【0004】
かかる事態を防止するため、例えば電池切れの状態が発生しそうな場合に、負荷5の一部を自動的に遮断するよう設定することが可能である。
【0005】
例えば、自動車の負荷5には、走る、曲がる、止まる等の制御系電子ユニットと、車室内の快適性を確保するなどの付加機能系電子ユニットとがあり、自動車走行の安全性等を考慮すると、制御系電子ユニットは重要度が高いのに対して、付加機能系電子ユニットは緊急性が低いものがほとんどである。したがって、必要に応じて付加機能系電子ユニットを遮断しても差し支えない場合が多い。このため、電池切れの状態が発生しそうな場合には、付加機能系電子ユニットを自動的に遮断して省電力モードに切り替わるよう設定することが可能である。
【0006】
しかしながら、例えば、搭乗者であるユーザーによっては、カーオーディオはオフにしてもよいが、可能であればカーエアコン(空気調和機)をオンのままにしておきたい場合がある。あるいは、状況によっては、カーエアコン(空気調和機)は自動的にオフまたは出力制限してもよいが、AC100V電源に接続されたパーソナルコンピュータはオンのままにしておきたい場合もある。
【0007】
このような場合に、緊急性の低い付加機能系電子ユニットであっても、搭乗者の意思に基づくことなく強制的に遮断されると、搭乗者は一方的に快適性を損なうというデメリットがあるため好ましくない場合が多く、自動車全体の商品性が低下するおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、搭乗者の意思を反映しながら、電池の充電制御を行う車載充電制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、自動車に搭載された電池の充電状態を判定し、前記電池の充電状態が低下している場合に、前記電池の充電のための搭乗者の意思を所定の入力手段からの信号に基づいて確認し、当該信号に基づいて、前記電池を充電するための複数の処理のうちのいずれかを選択的に実行する制御回路部を備えるものである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車載充電制御装置であって、前記電池を充電するための処理が、自動車に搭載された複数の負荷のうちの単数または複数の電源をオフまたは出力制限することを含み、前記制御回路部が、前記入力手段を通じて選択された負荷の電源をオフまたは出力制限するものである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車載充電制御装置であって、前記制御回路部が、自動車に搭載された所定の報知手段に対して、前記電池から遮断または出力制限する負荷の選択候補を搭乗者に報知するよう制御するものである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の車載充電制御装置であって、前記電池を充電するための処理が、発電機から出力される充電電圧を制御する充電制御指令と、自動車に搭載された負荷を前記電池から遮断または出力制限する負荷制限指令とを含むものである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の車載充電制御装置であって、前記制御回路部が、自動車に搭載された所定の報知手段に対して、選択候補としての前記充電制御指令及び前記負荷制限指令を搭乗者に報知するよう前記報知手段を制御するものである。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項3または請求項5に記載の車載充電制御装置であって、前記入力手段及び前記報知手段が、タッチパネルとして一体化されたものである。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の車載充電制御装置であって、前記入力手段を通じて選択された負荷の選択履歴を記録する記録手段をさらに備え、前記制御回路部が、前記記録手段に記録された前記選択履歴に基づいて負荷を自動的に選択し遮断または出力制限することが可能とされたものである。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項3に記載の車載充電制御装置であって、前記入力手段を通じて選択された負荷の選択履歴を記録する記録手段をさらに備え、前記制御回路部が、前記記録手段に記録された前記選択履歴に基づいて、負荷の選択候補の報知順序を変更するものである。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の車載充電制御装置であって、前記制御回路部が、前記電池の充電状態が良好な状態に復帰したときに、自動的にまたは前記入力手段からの信号に基づいて、前記電池の充電のために実行されている処理を停止するものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明の車載充電制御装置は、電池の充電についての処理について、搭乗者の意思を確認してから実際の処理を行うので、搭乗者の意思に背いて快適性を損なうことを防止しながら、必要な充電量を確保できる。
【0019】
請求項2に記載の発明の車載充電制御装置は、入力手段により搭乗者が負荷を自由に選択してオフまたは出力制限することが可能なので、搭乗者の好みやそのときの都合に合わせて負荷を遮断または出力制限でき、快適性を損なうのを防止できて便利である。
【0020】
請求項3に記載の発明の車載充電制御装置は、負荷を選択する際に、その選択候補が報知手段によって報知されるので、これらの選択候補を搭乗者が選択するだけでよいため、搭乗者の労力を軽減できる。
【0021】
請求項4に記載の発明の車載充電制御装置は、電池を充電するための処理が、発電機から出力される充電電圧を制御する充電制御指令と、自動車に搭載された負荷を電池から遮断または出力制限する負荷制限指令とを含むので、充電制御指令による燃費の低下と、負荷制限指令による快適性阻害を容易に選択することができ便利である。
【0022】
請求項5に記載の発明の車載充電制御装置は、充電制御指令と負荷制限指令といった選択候補が報知手段によって報知されるので、これらの選択候補を搭乗者が選択するだけでよいため、搭乗者の労力を軽減できる。
【0023】
請求項6に記載の発明の車載充電制御装置は、入力手段と報知手段がタッチパネルとして一体化されているので、搭乗者にとっては極めて操作が容易となる利点がある。
【0024】
請求項7に記載の発明の車載充電制御装置は、入力手段を通じて選択された負荷の選択履歴を記録手段に記録し、その選択履歴に基づいて負荷を自動的に選択し遮断または出力制限することが可能なので、搭乗者の好みや性向に応じた負荷の遮断または出力制限を自動的に行うことができ便利である。
【0025】
請求項8に記載の発明の車載充電制御装置は、入力手段を通じて選択された負荷の選択履歴を記録手段に記録し、その選択履歴に基づいて負荷の選択候補の報知順序を変更するので、選択操作が容易になる利点がある。
【0026】
請求項9に記載の発明の車載充電制御装置は、電池の充電状態が良好な状態に復帰したときに、自動的にまたは入力手段からの信号に基づいて、電池の充電のために実行されている処理を停止するので、不必要な快適性阻害を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
{第1実施形態}
<構成>
図1は本発明の第1実施形態に係る車載充電制御装置10が自動車に搭載された状態を示すブロック図である。この車載充電制御装置10は、図1の如く、電池(バッテリ)11の充電状態(SOC)を検出し、電池11の充電量が一定量まで低下したときに、所定の表示入力装置13を通じて搭乗者の意思の確認を行いながら、負荷15a〜15f及び発電機(オルタネータ)17に対して電池11の充電に関わる種々の制御を行うものである。
【0028】
表示入力装置13は、電池11の充電のための搭乗者の意思表示を入力する入力手段と電池11の充電のための処置を促したり選択候補を搭乗者に示したりする報知手段とが一体化されたもので、例えば、液晶ディスプレイ及び画像表示制御回路を備えた画像出力デバイスと、抵抗膜方式、静電容量方式、電磁誘導方式または超音波表面弾性波(SAW)等が使用されたタッチ操作式入力デバイスとが一体化されたタッチパネルが適用される。即ち、この表示入力装置13は、搭乗者が、出力デバイスに表示された画像を視認しながら同時にタッチ操作を行うことが可能に構成されている。尚、この表示入力装置13は、例えばカーナビゲーション装置(図示省略)の表示部と兼用される。即ち、車載充電制御のための後述の各種画面34,36,41(図2〜図5)が表示されていないときには、カーナビゲーション装置の地図案内画面等の種々の機能画面が随時表示される。
【0029】
複数の負荷15a〜15fは、自動車に搭載されるもののうち、走る、曲がる、止まる等の制御系電子ユニットを除いた付加機能系電子ユニットであり、例えば、カーオーディオ装置やカーエアコン装置(車載空気調和機)等の車室内の快適性を確保する等の電気機器が適用される。
【0030】
また、複数の負荷15a〜15fのうち、一部の負荷15a〜15cは、通常は外部のスイッチ22a〜22cから入力される信号に基づいてオンオフするのに対して、他の負荷15d〜15fは、負荷制御装置16d〜16fによって電源のオンオフ及び出力調整が行われる。そして、前者の負荷15a〜15cの電源は、車載充電制御装置10を通じて供給され、後者の負荷15d〜15fの電源は、各負荷制御装置16d〜16fを通じて供給される。
【0031】
発電機17は、内部にレギュレータ17aを備えており、このレギュレータ17aを制御することで、エンジン18の回転力から発生される充電電力を制御できるようになっている。
【0032】
そして、この車載充電制御装置10は、外部のスイッチ22a〜22cのオンオフ状態に拘わらず、一部の負荷15a〜15cに対してその電源供給のオフまたは出力制限を行う負荷供給スイッチ部21と、表示入力装置13からの信号に基づいて電池11の充電状態検知を行いながら発電機17のレギュレータ17a、各負荷制御装置16d〜16f及び負荷供給スイッチ部21の制御を行う制御回路部23と、フラッシュROM等の書き換え可能な不揮発性メモリ(記録手段)25とを備える。
【0033】
負荷供給スイッチ部21は、電池11及び発電機17に共通に接続された給電線27と各負荷15a〜15cとの間に接続された複数のスイッチ21a〜21cで構成される。各スイッチ21a〜21cは、例えばパワーMOSFETやリレー等が使用され、例えば、初期的にはオン状態となって各負荷15a〜15cと給電線27とが接続状態とされ、制御回路部23からの負荷制限指令により給電線27から個別に遮断または出力制限されるなど、制御回路部23での制御により個別にオンオフ及び出力調整するようになっている。これにより、各負荷15a〜15cは、外部のスイッチ22a〜22cによってオンオフが切り替えられるとともに、この外部の各スイッチ22a〜22cがオン状態であっても、制御回路部23での制御により各スイッチ21a〜21cの制御が行われて、各負荷15a〜15cのオフまたは出力制限が行われる。
【0034】
制御回路部23は、例えばROM及びRAMが内蔵されたCPU(マイクロプロセッサ)を備え、例えばROM内に記録された所定のソフトウェアプログラムを読み出してRAM内に転送し、このソフトウェアプログラムによって動作する機能部品である。ソフトウェアプログラムによって定義される制御回路部23の機能としては、電池11の充電状態を検知判定する電池状態判定機能と、表示入力装置13との信号の送受信を行いながら発電機17のレギュレータ17aの制御を行う充電制御指令機能と、同じく表示入力装置13との信号の送受信を行いながら各負荷制御装置16d〜16f及び負荷供給スイッチ部21の制御を行う負荷制限指令機能とがある。
【0035】
電池状態判定機能は、電池11の出力端子の電圧(放電電圧)や、電池11の出力端子に接続された電流センサ(図示省略)及び温度センサ(図示省略)から与えられた電気量に基づいて、電池11の充電状態を検知し、この電池11の充電状態と、単一または複数の基準状態とを比較し、この基準状態よりも電池11の充電状態が低下(例えば、電池11の出力電圧や放電電流量の低下)しているか否かを判定する機能である。
【0036】
そして、この電池状態判定機能は、電池11の充電状態が基準状態よりも低下している旨を判定したときに、この制御回路部23は、図2の如く、電池11の充電状態が低下している旨のメッセージ表示31と、後述の充電制御指令機能と負荷制限指令機能のいずれをアクティブにするかの選択候補(第1及び第2のアイコン)32,33とを含む第1の画面34を、表示入力装置13に強制的に表示するよう指示するようになっている。
【0037】
ここで、図2の第1の画面34中の第1のアイコン32は、充電制御指令機能をアクティブにするための例えば「充電量のアップ」と記されたアイコンであり、望ましくは、後述のように自動車の燃費が悪化する可能性がある旨のメッセージ32aが附記される。また、図2の第1の画面34中の第2のアイコン33は、後述の負荷制限指令機能をアクティブにするための例えば「負荷制限」と記されたアイコンであり、望ましくは、一部の負荷が遮断または出力制限される旨のメッセージ33aが附記される。
【0038】
制御回路部23の充電制御指令機能は、当該充電制御指令機能がアクティブになっている限りにおいて、発電機17のレギュレータ17aを制御することで、例えば電池11の充電状態が低下している場合には、発電機17から電池11に与えられる回生電力量を例えば最大限に増大させるようにし、また電池11の充電状態が良好である場合には発電機17から電池11に与えられる回生電力量を適正に制御するようになっている。
【0039】
ここで、電池11の充電状態が低下している場合には、発電機17から電池11に与えられる回生電力を増大させると、エンジンの回転エネルギーから多くのエネルギーが電力に変換されるため、自動車の走行燃費が低下することになる。したがって、この制御回路部23の充電制御指令機能は、電池11の充電状態が良好な場合以外は、図2の第1の画面34中の第1のアイコン32でモード選択された場合に限ってアクティブになる。
【0040】
尚、図2の第1の画面34中の第1のアイコン32が一旦選択された後は、電池11の充電状態が上記の基準状態以上に復帰するまでの間、制御回路部23の充電制御指令機能がアクティブになり、表示入力装置13のカーナビゲーション画面等の画面表示の一部に、例えば「充電量のアップ中」等の所定の表示(図示省略)を行うようになっている。そして、電池11の充電状態が上記の基準状態以上に復帰した時点で、制御回路部23の充電制御指令機能は、表示入力装置13の一部の例えば「充電量のアップ中」といった表示を消去し、この充電制御指令機能がノンアクティブ状態となるようになっている。
【0041】
制御回路部23の負荷制限指令機能は、付加機能系電子ユニットとしての負荷15a〜15fを一部遮断または出力制限することで、電力消費量を抑制し、発電機17からの電力を電池11の充電用に有効利用するための機能であり、一部の負荷15a〜15fを遮断または出力制限することから搭乗者が不便となるため、この負荷制限指令機能は、図2の第1の画面34中の第2のアイコン33でモード選択された場合に限ってアクティブになる。
【0042】
この負荷制限指令機能は、遮断または出力制限する負荷15a〜15f(以下「出力制限負荷」と称する)を搭乗者が選択して遮断または出力制限する負荷選択制限モードと、過去の遮断または出力制限した負荷15a〜15fの選択履歴に基づいて自動的に出力制限負荷を選択遮断または選択出力制限する負荷自動制限モードとがあり、この負荷制限指令機能は、負荷選択制限モードと負荷自動制限モードとを搭乗者に選択させるための第2の画面36(図3)を表示入力装置13に表示する機能を含んでいる。ここで、第2の画面36は、負荷選択制限モードをタッチ操作で選択するための選択候補である第3のアイコン37と、負荷自動制限モードをタッチ操作で選択するための選択候補である第4のアイコン38とを含む。
【0043】
また、この負荷制限指令機能は、第2の画面36で第3のアイコン37(負荷選択制限モード)がタッチ操作で選択された場合に、さらにタッチ操作により出力制限負荷を搭乗者に選択させるように促すための第3の画面41(図4)を表示入力装置13に表示する機能を含んでいる。ここで、第3の画面41は、出力制限負荷をタッチ操作で選択するための選択候補(制限候補)である複数の負荷選択アイコン42a〜42gと、出力制限負荷を選択した後の確認用アイコン43とを含む。
【0044】
尚、この図4に示した第3の画面41は、制限候補の負荷15a〜15f(出力制限負荷)をタッチ操作で選択するための画面であるが、例えば図5のように、遮断(切断)または出力制限したくない負荷15a〜15fをタッチ操作で選択するための画面であっても差し支えない。この場合、タッチ操作されていないアイコン42a〜42gに対応する負荷15a〜15fが、出力制限負荷として選択された負荷15a〜15fとなる。
【0045】
また、負荷制限指令機能の負荷選択制限モードでは、第3の画面41において、表示された負荷選択アイコン42a〜42gのうちの複数を搭乗者がタッチ操作して選択できるようになっており、選択された負荷選択アイコン42a〜42gは、反転表示や色変更などにより選択されたことを容易に視認できるように変化するようになっている。
【0046】
そして、負荷制限指令機能の負荷選択制限モードでは、負荷選択アイコン42a〜42gが選択された状態で、確認用アイコン43がタッチ操作された時点で、制御回路部23は選択された出力制限負荷に対応する各負荷制御装置16d〜16f及び負荷供給スイッチ部21に対して、出力制限負荷の電源をオフまたは出力制限するよう指令するようになっている。この場合、出力制限負荷として選択された全ての負荷15a〜15fの電源をオフまたは出力制限するように、各負荷制御装置16d〜16f及び負荷供給スイッチ部21に指令信号を出力する。
【0047】
尚、負荷制限指令機能の負荷選択制限モードにおいては、電池11の充電を行うのに必要なだけ出力制限負荷の電源をオフまたは出力制限するまで、図4または図5に示した第3の画面41を繰り返し表示して、出力制限負荷の選択個数を増やすように案内を行うようになっている。
【0048】
そして、制御回路部23は、負荷選択制限モードでのタッチ操作により選択された出力制限負荷の選択履歴を、不揮発性メモリ25(記録手段)に記録する。即ち、不揮発性メモリ25には、出力制限負荷の選択回数等が更新的に記録される。尚、不揮発性メモリ25には、出力制限負荷として選択可能な負荷15a〜15fの例えば平均消費電力等の情報が予め記録されている。
【0049】
そして、負荷制限指令機能の負荷選択制限モードにおいては、図4または図5に示した第3の画面41に選択可能な制限候補となる出力制限負荷を表示する場合に、不揮発性メモリ25に更新的に記録された出力制限負荷の選択履歴に基づいて、例えば過去の選択回数が多い順番に表示する。これにより、各搭乗者の出力制限負荷についての選択の好みに応じた制限候補の順番で第3の画面41の表示を行うことができる。
【0050】
制御回路部23の負荷制限指令機能の負荷自動制限モードは、第2の画面36で第4のアイコン38がタッチ操作で選択された場合にアクティブになり、不揮発性メモリ25に更新的に記録された出力制限負荷の選択履歴に基づいて、例えば各出力制限負荷の過去の選択回数が多い出力制限負荷を高い優先順位で自動的に選択し、この優先順位の高い出力制限負荷を自動的に選択し負荷15a〜15fの電源をオフまたは出力制限するように、各負荷制御装置16d〜16f及び負荷供給スイッチ部21に指令信号を出力する。
【0051】
この場合、電池11の充電を行うのに必要なだけ出力制限負荷の電源をオフまたは出力制限するまで、出力制限負荷の選択個数をそれぞれの優先順位に従って自動的に増やすようになっている。
【0052】
尚、負荷制限指令機能がアクティブになっている間は、電池11の充電状態が上記の基準状態以上に復帰するまでの間、表示入力装置13のカーナビゲーション画面等の画面表示の一部に、例えば「負荷制限中」等の所定の表示(図示省略)を行うようになっている。そして、電池11の充電状態が上記の基準状態以上に復帰した時点で、制御回路部23の負荷制限指令機能は、表示入力装置13の一部の例えば「負荷制限中」といった表示を消去し、この負荷制限指令機能がノンアクティブ状態となるようになっている。
【0053】
<動作>
上記構成の車載充電制御装置10の動作を図6のフローチャートに沿って説明する。
【0054】
まず、図6中のステップS01において、車載充電制御装置10の制御回路部23は、電池11の出力端子の電圧(放電電圧)や、電池11の出力端子に接続された電流センサ(図示省略)及び温度センサ(図示省略)から与えられた電気量に基づいて、電池11の充電状態を検知し、この電池11の充電状態と、単一または複数の基準状態とを比較し、この基準状態よりも電池11の充電状態が低下(例えば、電池11の出力電圧や放電電流量の低下)しているか否かを判定する。
【0055】
そして、ステップS02で、制御回路部23は、電池11の充電状態が所定の基準状態に比して充分である(即ち「過負荷状態」でない)と判定した場合に、ステップS03に進み、発電機17のレギュレータ17aを制御することで、発電機17から電池11に与えられる回生電力量を適正に制御する。
【0056】
一方、ステップS02で、制御回路部23は、電池11の充電状態が所定の基準状態に比して低下している(即ち「過負荷状態」である)と判定した場合に、次のステップS04に進む。
【0057】
ステップS04では、不揮発性メモリ25に記録された出力制限負荷の選択履歴に基づいて、例えば各出力制限負荷の過去の選択回数が多い出力制限負荷を高い優先順位で自動的に選択し、この優先順位の高い出力制限負荷を制限候補負荷として判定(認定)する。
【0058】
次に、ステップS05において、制御回路部23は、図2に示した第1の画面34を、表示入力装置13に強制的に表示し、この第1の画面34に示されたメッセージ表示31により、電池11の充電状態が低下している旨を搭乗者に報知し、搭乗者による指令入力(タッチ操作)を待つ状態となる。
【0059】
続いて、ステップS06において、搭乗者が、第1の画面34中の第1のアイコン32をタッチ操作して選択すると、ステップS07に進み、制御回路部23は、その充電制御指令機能をアクティブにして過負荷充電制御を実行し、発電機17のレギュレータ17aを制御することで、発電機17から電池11に与えられる回生電力量を例えば最大限に増大させる。
【0060】
尚、制御回路部23の充電制御指令機能がアクティブになると、電池11の充電状態が上記の基準状態以上に復帰するまでの間、表示入力装置13のカーナビゲーション画面等の画面表示の一部に、例えば「充電量のアップ中」等の所定の表示(図示省略)を重ねて行う。
【0061】
一方、ステップS06において、搭乗者が、第1の画面34中の第2のアイコン33をタッチ操作して選択すると、ステップS08に進み、制御回路部23は、その負荷制限指令機能を実行し、付加機能系電子ユニットとしての負荷15a〜15fを一部遮断または出力制限することで、電力消費量を抑制して、発電機17からの電力を電池11の充電用に有効利用する。この場合、一部の負荷15a〜15fを遮断または出力制限することから搭乗者が不便となるため、さらに図3に示した第2の画面36を表示入力装置13に表示し、負荷選択制限モードと負荷自動制限モードとの選択を搭乗者に促す。
【0062】
ここで、第2の画面36で第3のアイコン37(負荷選択制限モード)がタッチ操作で選択された場合には、さらに図4または図5に示した第3の画面41を表示入力装置13に表示して、出力制限負荷を搭乗者に選択させるように促す。
【0063】
この場合、制御回路部23は、不揮発性メモリ25に更新的に記録された出力制限負荷の選択履歴に基づいて、図4または図5に示した第3の画面41に選択可能な制限候補を、例えば過去の選択回数が多い順番に表示する。これにより、各搭乗者の出力制限負荷についての選択の好みに応じた制限候補の順番で第3の画面41の表示を行うことができる。
【0064】
搭乗者が第3の画面41中の負荷選択アイコン42a〜42gのいずれか単数または複数をタッチ操作して選択し、確認用アイコン43がタッチ操作された時点で、ステップS08に進み、制御回路部23は、選択された出力制限負荷に対応する各負荷制御装置16d〜16f及び負荷供給スイッチ部21に対して、出力制限負荷の電源をオフまたは出力制限するよう指令する。
【0065】
この際、制御回路部23は、負荷選択制限モードでのタッチ操作により選択された出力制限負荷の選択履歴を、不揮発性メモリ25に記録する。即ち、不揮発性メモリ25には、出力制限負荷の選択回数等が更新的に記録される。
【0066】
一方、ステップS06で第2の画面36(図3)を表示入力装置13に表示したときに、搭乗者が第2の画面36で第4のアイコン38をタッチ操作した場合は、負荷制限指令機能の負荷自動制限モードが選択される。そして、不揮発性メモリ25に更新的に記録された出力制限負荷の選択履歴に基づいて、まだ出力制限負荷として選択されていない負荷15a〜15fのうち、例えば各出力制限負荷の過去の選択回数が多い出力制限負荷を高い優先順位のものとして自動的に選択する。
【0067】
この場合、制御回路部23は、不揮発性メモリ25内に記憶された各負荷15a〜15fの平均消費電力の情報を読み出して、選択された出力制限負荷の平均消費電力を考慮しながら、電池11の充電を行うのに必要なだけ出力制限負荷を選択し終えるまで、出力制限負荷の選択個数をそれぞれの優先順位に従って自動的に増やす。
【0068】
そして、ステップS08に進み、制御回路部23は、選択した出力制限負荷に対応する各負荷制御装置16d〜16f及び負荷供給スイッチ部21に対して、出力制限負荷の電源をオフまたは出力制限するよう指令する。
【0069】
尚、出力制限負荷の電源をオフまたは出力制限している間は、電池11の充電状態が上記の基準状態以上に復帰するまで、表示入力装置13のカーナビゲーション画面等の画面表示の一部に、例えば「負荷制限中」等の所定の表示(図示省略)を重ねて行う。
【0070】
このようにして、ステップS07またはステップS08の処理を行った後、ステップS09に進み、制御回路部23は、イグニションスイッチ(IG)がオフになっていないかどうかを判断し、イグニションスイッチ(IG)がオフになっていない場合には、ステップS01に戻って、上述のステップS01〜ステップS09の動作を繰り返す。
【0071】
ステップS01〜ステップS09の動作を繰り返すことで、搭乗者は、電池11の充電を行うのに必要なだけ出力制限負荷の電源をオフまたは出力制限するまで、図4または図5に示した第3の画面41で出力制限負荷の選択個数を増やすように選択できる。したがって、確実に電池11の充電を行うことができる。
【0072】
また、ステップS01〜ステップS09の動作を繰り返す間、電池11が充分に充電されて、ステップS02で過負荷状態が解除されると、ステップS03に進み、その旨を音声や画面表示により搭乗者に報知する。そして、ステップS07の処理が継続している場合は、このステップS07の過負荷充電制御の処理を解除する。
【0073】
さらに、ステップS03に進んだ時点で、ステップS08の処理が継続している場合は、それまで遮断または出力制限していた出力制限負荷を図4または図5と同様の画面で選択可能に表示し、搭乗者のタッチ操作により、それまで遮断または出力制限していた負荷15a〜15fのなかから復帰させたい負荷15a〜15fをタッチ操作するなどして選択させ、その選択された負荷15a〜15fの電源をオンする。
【0074】
あるいは、ステップS03に進んだ時点で、ステップS08の処理が継続している場合に、電池11が充分に充電された時点で、それまで遮断または出力制限していた負荷15a〜15fを自動的に復帰する旨を音声や画面表示で搭乗者に報知し、その後にそれまで遮断または出力制限していた全ての負荷15a〜15fを自動的に復帰するようにしてもよい。
【0075】
このように、車載充電制御装置10が一方的に負荷を遮断または出力制限するのではなく、負荷15a〜15fをオフまたは出力制限するのか、燃費を低下させても充電量をアップするのか、あるいは、単数または複数の負荷15a〜15fを自由に選択してオフまたは出力制限するのか、過去の選択履歴に基づいて出力制限負荷を自動的にオフまたは出力制限するのか、といった電池11の充電についての処理動作についての搭乗者の意思を確認してから実際の処理を行うので、搭乗者の意思に背いて快適性を損なうことを防止しながら、必要な充電量を確保できる。
【0076】
そして、これらの選択候補が、報知手段としての表示入力装置13に表示(報知)され、これらの選択候補を搭乗者が選択するだけでよいので、搭乗者の操作が容易である。
【0077】
また、負荷選択制限モードにおいては、自由に選択して負荷15a〜15fをオフまたは出力制限することが可能なので、例えば、カーオーディオはオフまたは出力制限にしてもよいが、可能であればカーエアコン(空気調和機)をオンのままにしておきたい場合や、あるいは、カーエアコン(空気調和機)は自動的にオフまたは出力制限してもよいが、AC100V電源に接続されたパーソナルコンピュータはオンのままにしておきたい場合等のように、搭乗者の好みやそのときの都合に合わせて負荷15a〜15fを遮断または出力制限でき、快適性を損なうのを防止できて便利である。
【0078】
さらに、負荷自動制限モードにおいては、過去の出力制限負荷の選択履歴に基づいて自動的に負荷15a〜15fを遮断または出力制限することも可能なので、搭乗者の好みや性向に応じた負荷15a〜15fの遮断または出力制限を自動的に行うことができ便利である。また負荷選択制限モードにおいても、表示入力装置13における表示順序を変更することで、選択操作が容易になる利点がある。
【0079】
さらにまた、モード選択により充電制御指令機能がアクティブになったときには、一切の負荷15a〜15fを遮断または出力制限することなく、発電機17からの充電電圧を増加させて電池11の充電を行うことができるので、燃費が低下するものの、搭乗者の快適性を損なうのを防止できる。
【0080】
さらに、負荷15a〜15fの遮断または出力制限や燃費を犠牲にした充電制御を行っている場合に、電池11が充分に充電した時点で、搭乗者の意思に基づいて、または自動的に、負荷15a〜15fへの給電を復帰させたり燃費犠牲の充電制御を解除したりできるので、不必要な快適性阻害を防止できる。
【0081】
尚、上記実施の形態では、電池11の充電のための搭乗者の意思表示を入力する入力手段として、表示入力装置であるタッチパネルを適用していたが、その他、例えばマイクロフォンで音声入力して音声認識を行う音声入力装置や、押しボタンまたはジョイスティック等の所定の機械的操作を行う機械的入力装置を使用しても差し支えない。
【0082】
また、電池11の充電のための処置を促したり選択候補を搭乗者に示したりする報知手段として、表示入力装置であるタッチパネルを適用していたが、その他、予め録音しておいた音声を出力する音声出力装置や、非タッチパネル式の表示装置を用いても差し支えない。
【0083】
ただし、入力手段と報知手段とが、タッチパネルである表示入力装置13として一体化されていることで、搭乗者にとっては極めて操作が容易となる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車載充電制御装置が自動車に搭載された状態を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る車載充電制御装置が表示入力装置に表示する第1の画面を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る車載充電制御装置が表示入力装置に表示する第2の画面を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る車載充電制御装置が表示入力装置に表示する第3の画面の一例を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る車載充電制御装置が表示入力装置に表示する第3の画面の他の例を示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る車載充電制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】一般的な自動車の電源系統を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0085】
10 車載充電制御装置
11 電池
13 表示入力装置
15a〜15f 負荷
16d〜16f 負荷制御装置
17 発電機
17a レギュレータ
18 エンジン
21 負荷供給スイッチ部
23 制御回路部
25 不揮発性メモリ
27 給電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載された電池の充電状態を判定し、前記電池の充電状態が低下している場合に、前記電池の充電のための搭乗者の意思を所定の入力手段からの信号に基づいて確認し、当該信号に基づいて、前記電池を充電するための複数の処理のうちのいずれかを選択的に実行する制御回路部を備える車載充電制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載充電制御装置であって、
前記電池を充電するための処理が、自動車に搭載された複数の負荷のうちの単数または複数の電源をオフまたは出力制限することを含み、
前記制御回路部が、前記入力手段を通じて選択された負荷の電源をオフまたは出力制限することを特徴とする車載充電制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車載充電制御装置であって、
前記制御回路部が、自動車に搭載された所定の報知手段に対して、前記電池から遮断または出力制限する負荷の選択候補を搭乗者に報知するよう制御することを特徴とする車載充電制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車載充電制御装置であって、
前記電池を充電するための処理が、発電機から出力される充電電圧を制御する充電制御指令と、自動車に搭載された負荷を前記電池から遮断または出力制限する負荷制限指令とを含むことを特徴とする車載充電制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車載充電制御装置であって、
前記制御回路部が、自動車に搭載された所定の報知手段に対して、選択候補としての前記充電制御指令及び前記負荷制限指令を搭乗者に報知するよう前記報知手段を制御することを特徴とする車載充電制御装置。
【請求項6】
請求項3または請求項5に記載の車載充電制御装置であって、
前記入力手段及び前記報知手段が、タッチパネルとして一体化されたことを特徴とする車載充電制御装置。
【請求項7】
請求項2または請求項3に記載の車載充電制御装置であって、
前記入力手段を通じて選択された負荷の選択履歴を記録する記録手段をさらに備え、
前記制御回路部が、前記記録手段に記録された前記選択履歴に基づいて負荷を自動的に選択し遮断または出力制限することが可能とされたことを特徴とする車載充電制御装置。
【請求項8】
請求項3に記載の車載充電制御装置であって、
前記入力手段を通じて選択された負荷の選択履歴を記録する記録手段をさらに備え、
前記制御回路部が、前記記録手段に記録された前記選択履歴に基づいて、負荷の選択候補の報知順序を変更することを特徴とする車載充電制御装置。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の車載充電制御装置であって、
前記制御回路部が、前記電池の充電状態が良好な状態に復帰したときに、自動的にまたは前記入力手段からの信号に基づいて、前記電池の充電のために実行されている処理を停止することを特徴とする車載充電制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−88865(P2006−88865A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276541(P2004−276541)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】