説明

車載型の風力発電装置

【課題】車載型の風力発電装置に関し、車両の前後方向に作用する抗力を増加させるとなく発電を行う。
【解決手段】車両10の左側部に設けられる左側導風口11aと、車両10の右側部に設けられる右側導風口11bと、左側導風口11aと右側導風口11bとを接続するとともに、車両10が受風する風を車幅方向に流通させる風流路12と、風流路12に設けられ、車幅方向に流通する風で回転される風車13,14と、車両10に設けられ、風車13,14の回転により駆動される発電機15とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載型の風力発電装置に関し、特に車両が受風する風を利用して発電する車載型の風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に風車を搭載し、走行風を利用して風車を回転させることで発電を行う車載型の風力発電装置が提案されている。また、一般的にトラックなど荷台上部がキャブ上部よりも高い車両においては、この段差部分に走行風による大きな渦が生まれ抗力を発生している。そのため、このような抗力によるエネルギ損失の一部を利用して発電することに着目し、キャブ上部のエアディフレクタ内に風車を設けた車載型の風力発電装置も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−16489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来例の走行風を主として利用する車載型の風力発電装置においては、エアディフレクタの前面に設けられた導風口から流れ込む走行風で風車を回転させている。そのため、発電による駆動抵抗の増加に伴い、車両の前後方向に作用する抗力も増加される可能性がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、その目的は、車載型の風力発電装置に関し、車両の前後方向に作用する抗力を増加させることなく発電を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明の車載型の風力発電装置は、車両が受風する風を利用して発電する車載型の風力発電装置であって、前記車両の左側部に設けられる左側導風口と、前記車両の右側部に設けられる右側導風口と、前記左側導風口と前記右側導風口とを接続するとともに、前記車両が受風する風を車幅方向に流通させる風流路と、前記風流路に設けられ、車幅方向に流通する風で回転される風車と、前記車両に設けられ、前記風車の回転により駆動される発電機と、を備えることを特徴とする。
【0007】
前記車両は、荷台上部がキャブ上部よりも上方に位置するトラックであって、前記左側導風口は、前記キャブの上部に設けられるエアディフレクタの左側部に設けられ、前記右側導風口は、前記エアディフレクタの右側部に設けられてもよい。
【0008】
また、前記発電機で発電された電力を蓄電するバッテリをさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車載型の風力発電装置によれば、車両の前後方向に作用する抗力を増加させることなく発電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る車載型の風力発電装置が適用されたトラックを示す模式的な左側面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車載型の風力発電装置による制御内容を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る車載型の風力発電装置において、トラックが受風した自然風の風流変化を示す模式的な平面図である。
【図5】他の実施形態に係る車載型の風力発電装置が適用されたトラックを示す模式的な左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1〜4に基づいて、本発明の一実施形態に係る車載型の風力発電装置について説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0012】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る車載型の風力発電装置1は、例えば荷台10bの上部がキャブ10aの上部よりも高く、この段差部分にエアディフレクタ11を設けたトラック10等に搭載されるものである。
【0013】
風力発電装置1は、図2に示すようにエアディフレクタ11に設けられた風流路12と、風流路12内を流通する自然風により回転する左右一対のプロペラ型風車13,14と、プロペラ型風車13,14の回転により駆動する発電機15と、発電機15により発電された電力を蓄電するバッテリ16と、電子制御ユニット20とを備えている。
【0014】
エアディフレクタ11は、図1に示すようにキャブ10aの上部に搭載されており、キャブ10aの前端上部から荷台10bの前端上部に向かって流線形に湾曲して形成されている。また、エアディフレクタ11は、図2に示すように車幅方向の長さが前方から後方に向かって大きくなるように形成されている。さらに、エアディフレクタ11の左側部には左側導風口11aが形成され、右側部には右側導風口11bが形成されている。
【0015】
風流路12は、図2に示すようにエアディフレクタ11内を車幅方向に略水平に延びて、左側導風口11aと右側導風口11bとを接続する。すなわち、風流路12は、エアディフレクタ11内を左側部から右側部に向かって貫通形成されており、トラック10が受風する自然風の一部を車幅方向に確実に流通させる。
【0016】
回転軸17は、その軸方向を車幅方向に向けた状態で、風流路12内に設けられた発電機15に回転可能に挿通されている。また、発電機15に挿入された回転軸17の外周面には図示しないロータが取り付けられている。
【0017】
左右一対のプロペラ型風車13,14は、図2に示すように回転軸17の両端部にそれぞれ取り付け固定されて風流路12内に収容されている。すなわち、プロペラ型風車13,14は、風流路12内を流通する自然風によって回転軸17と一体回転可能に構成されている。
【0018】
発電機15は、図2に示すように回転軸17を挿通した状態で風流路12内の略中央に設けられている。また、発電機15の内部には、回転軸17のロータの周囲に隣接させてステータ(不図示)が配設されている。さらに、発電機15は、電気配線により整流器30を経由してバッテリ16に接続されている。すなわち、プロペラ型風車13,14の回転エネルギは、発電機15により電気エネルギ(交流電力)へと変換されるとともに、整流器30で直流電力に変換された後にバッテリ16に供給されるように構成されている。
【0019】
バッテリ16は、発電機15で発電された電力やトラック10の図示しないエンジンで駆動されるオルタネータ(不図示)により発電された電力を蓄電するとともに、蓄電した電力をトラック10の図示しない電装系に供給する。また、バッテリ16には、残充電量(State Of Charge:以下、SOCという)を検出するバッテリセンサ31が設けられている。
【0020】
電子制御ユニット(ECU)20は、トラック10の各種制御を行うもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。この各種制御を行うために、電子制御ユニット20には、図示しないエンジン回転センサ、アクセル開度センサ、バッテリセンサ31等の各種センサの出力信号がA/D変換された後に入力される。また、電子制御ユニット20は、バッテリ16の充電量を制御するバッテリ充電量制御部21を一部の機能要素として含んでいる。
【0021】
バッテリ充電量制御部21は、バッテリセンサ31検出値のSOCが所定の閾値(例えば、50%)以下で、かつ発電機15が発電している場合は、オルタネータを駆動させることなく発電機15による電力をバッテリ16に供給するように制御する。一方、バッテリ充電量制御部21は、SOCが所定の閾値(例えば、50%)以下で、発電機15が発電していない場合は、オルタネータによる電力をバッテリ16に供給するように制御する。なお、本実施形態において、バッテリ充電量制御部21は電子制御ユニット20と一体のハードウェアに含まれるものとして説明したが、別体のハードウェアに設けてもよい。
【0022】
本発明の一実施形態に係る車載型の風力発電装置1は、以上のように構成されているので、例えば図3に示すフローチャートに従って以下のような制御が行われる。この制御は、エンジンの始動(キー操作ON)と同時にスタートする。
【0023】
ステップ(以下、ステップを単にSと記載する)100では、バッテリセンサ31の検出値がバッテリ充電量制御部21に読み込まれ、SOCが所定の閾値以下であるか否かが確認される。SOCが所定の閾値(50%)以下の場合はS110へと進む。一方、SOCが所定の閾値(50%)よりも大きい場合はリターンされる。
【0024】
S110では、バッテリ充電量制御部21により発電機15が発電を行っているか否かが確認される。発電機15が発電を行っている場合、すなわち、トラック10がプロペラ型風車13,14を回転し得る自然風を受風している場合はS120へと進む。一方、発電機15が発電を行っていない場合、すなわち、トラック10がプロペラ型風車13,14を回転し得る自然風を受風していない場合はS140へと進む。
【0025】
S120では、オルタネータを駆動させることなく、発電機15により発電された交流電力が整流器30で直流電力に変換された後にバッテリ16に供給される。
【0026】
S130では、バッテリセンサ31の検出値が再びバッテリ充電量制御部21に読み込まれ、SOCが所定の上限値(例えば、90%)に達したか否かが確認される。SOCが所定の上限値(90%)に達している場合はリターンされる。一方、SOCが所定の上限値(90%)未満の場合、本制御は前述のS110に戻される。
【0027】
前述のS110で、発電機15が発電を行っていないと判定された場合、S140において、SOCが所定の上限値(90%)に達するまで、オルタネータによる電力がバッテリ16に供給されて本制御はリターンされる。その後、本制御の各フローは、エンジンが停止(キー操作OFF)されるまで繰り返し行われる。
【0028】
以上のような構成により、本発明の一実施形態に係る車載型の風力発電装置1によれば以下のような作用効果を奏する。
【0029】
例えば、図4に示すように、停車中もしくは走行中のトラック10に破線矢印で示す自然風が吹き付けると、エアディフレクタ11の左側導風口11aには動圧がかかるとともに、エアディフレクタ11の右側導風口11bには高い負圧が発生する。そして、左側導風口11aと右側導風口11bとに生じる大きな差圧により、エアディフレクタ11内の風流路12には大量の自然風が流通されることになる。すなわち、風流路12内に設けられたプロペラ型風車13,14は車幅方向に流通する自然風により回転され、このプロペラ型風車13,14の回転エネルギは発電機15により効果的に電気エネルギへと変換される。
【0030】
したがって、トラック10が受風する自然風の少なくとも一部を車両前後方向ではなく車幅方向に流通させることで、トラック10の前後方向に作用する抗力を増加させることなく発電を効果的に行うことが可能となる。
【0031】
また、発電に利用する自然風が流通される風流路12はエアディフレクタ11内を車幅方向に延びて設けられているので、キャブ10a上部と荷台10b上部の段差部分に生じる大きな渦を低減させるエアディフレクタ11の本来の機能を妨げることなく発電を行うことができる。
【0032】
また、発電機15により自然風を利用して発電された交流電力は、整流器30で直流電力に変換された後にバッテリ16に効果的に蓄電される。
【0033】
したがって、トラック10に搭載されたオルタネータの発電負荷を低減することが可能となり、トラック10の燃費を効果的に向上することができる。
【0034】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0035】
上述の実施形態において、風流路12はエアディフレクタ11内に設けられるものとして説明したが、例えば図5に示すように、キャブ10aの後方側部を車幅方向に貫通するように設けてもよい。
【0036】
また、プロペラ型風車13,14は必ずしも左右一対である必要はなく、左右の何れか一方のみを備える構成としてもよい。
【0037】
また、車載型の風力発電装置1が搭載される車両は、トラック10に限定されず、バスや一般乗用車など一方の側部から他方の側部に貫通する風流路12を形成できる車両であれば、広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 車載型の風力発電装置
10 トラック(車両)
10a キャブ
10b 荷台
11 エアディフレクタ
11a 左側導風口
11b 右側導風口
12 風流路
13,14 プロペラ型風車(風車)
15 発電機
16 バッテリ
20 電子制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が受風する風を利用して発電する車載型の風力発電装置であって、
前記車両の左側部に設けられる左側導風口と、
前記車両の右側部に設けられる右側導風口と、
前記左側導風口と前記右側導風口とを接続するとともに、前記車両が受風する風を車幅方向に流通させる風流路と、
前記風流路に設けられ、車幅方向に流通する風で回転される風車と、
前記車両に設けられ、前記風車の回転により駆動される発電機と、を備える
ことを特徴とする車載型の風力発電装置。
【請求項2】
前記車両は、荷台上部がキャブ上部よりも上方に位置するトラックであって、
前記左側導風口は、前記キャブの上部に設けられるエアディフレクタの左側部に設けられ、
前記右側導風口は、前記エアディフレクタの右側部に設けられる
ことを特徴とする請求項1記載の車載型の風力発電装置。
【請求項3】
前記発電機で発電された電力を蓄電するバッテリをさらに備える
ことを特徴とする請求項1又は2記載の車載型の風力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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