説明

車載式保冷庫、該車載式保冷庫を備えた宅配用保冷車、該車載式保冷庫を備えた冷却システム及び該冷却システムを使用した車載式保冷庫の冷却方法

【課題】安価な構造で効率の良い冷却効果が得られ、配送車両の燃費の向上、耐用年数の長大化、電気代の節約を図ることができる車載式保冷庫を提供する。
【解決手段】本発明の車載式保冷庫1は、配送車両9の運行待機時に保冷剤23を収容し、所定の温度に冷却して凍結させる冷凍室19と、配送車両9の運行時に被保冷品25と保冷剤23を収容し、所定の温度に保った状態で保管する冷蔵室15と、を備え、前記冷凍室19と冷蔵室15との間に冷却された冷凍室19内の温度の冷蔵室15内への伝搬を許容する仕切り壁27を設け、該仕切り壁27からの温度の伝搬によって冷蔵室15内の温度を冷却するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛乳等の被保冷品を一定の温度に保った状態で保管する車載式保冷庫、該車載式保冷庫を荷台に搭載して被保冷品の宅配に使用される宅配用保冷車、該車載式保冷庫を所定の温度に冷却する車載式保冷庫を備えた冷却システム及び該冷却システムを使用した車載式保冷庫の冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
牛乳等の被保冷品の宅配には、小回りの利く軽自動車が多く使用されており、該軽自動車の車体に上記被保冷品を一定の温度に保った状態で保管する車載式保冷庫と、該車載式保冷庫を冷却するための冷却装置とが搭載されている。
また、配送基地には、保冷剤を冷凍するための冷凍庫と、被保冷品となる商品等を保管するための冷蔵庫が別途備えられており、商品の配達時に配送基地にある冷凍庫から必要な数の保冷剤を取り出し、冷蔵庫から所定数量の商品等を取り出して、上記車載式保冷庫に積み込んで宅配業務を行っていた。
【0003】
そして配送中は、上記軽自動車のエンジンから動力を受けて上記冷却装置を駆動して上記車載式保冷庫の庫内温度を一定の温度に保つようにしていた。
この他、従来の宅配用保冷車には、下記の特許文献1に示すように上記冷却装置の荷重の嵩む本体部分を配送基地に設置し、該冷却装置の本体部分によって冷却した潜熱蓋冷材を充填するコールドプレートのみを宅配用保冷車の保冷庫内に設置するようにした宅配用保冷車も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−207974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したように配送基地に保冷剤冷凍用の冷蔵庫と商品保管用の冷蔵庫の両方を設置する場合には、大きな設置スペースが必要になり、設備費用が多額に及んでしまう。
また、上記冷凍庫と冷蔵庫は24時間稼働させなければならないため、電気代もばかにならない。
また、冷却装置のすべてあるいは上記コールドプレートのように熱変換器を内包した冷却装置の一部の部材を搭載している宅配用保冷車の場合には、当該搭載している冷却装置の分だけ重量が重くなるため宅配用保冷車の燃費が悪くなってしまう。
また、冷却装置を配送車両に搭載している場合には、冷却装置の動力を配送車量のエンジンから受けている場合が多いからエンジンの消耗によって配送車両の耐用年数が短くなってしまう。
【0006】
本発明は、このような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、配送車両の運行時に車載式保冷庫内を直接、冷却する冷却装置を排除することによって配送車両の軽量化を図って燃費の向上と耐用年数の長大化を達成すると共に、配送車両の運行時間帯に合わせた効率の良い安価な冷却システムの構築によって配送基地に設置する設備の設置スペースの縮小と設備費用及び消費電力の削減とを図ることができる車載式保冷庫、該車載式保冷庫を備えた宅配用保冷車、該車載式保冷庫の冷却システム及び該冷却システムを使用した車載式保冷庫の冷却方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく本発明の請求項1による車載式保冷庫は、被保冷品を一定の温度に保った状態で保管する車載式保冷庫において、配送車両の運行待機時に保冷剤を収容し、所定の温度に冷却して凍結させる冷凍室と、配送車両の運行時に被保冷品と保冷剤を収容し、所定の温度に保った状態で保管する冷蔵室と、を備え、前記冷凍室と冷蔵室との間には、冷却された冷凍室内の温度の冷蔵室内への伝搬を許容する仕切り壁が設けられており、該仕切り壁からの温度の伝搬によって冷蔵室内の温度を冷却するように構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2による車載式保冷庫は、請求項1記載の車載式保冷庫において、前記冷凍室には、車載式保冷庫の外部に設置されている冷却装置から供給される冷気を給気用エアーダクトを介して冷凍室内に流入させる開閉可能な給気口と、前記冷凍室内に流入され、温められた空気を排気用エアーダクトを介して再び前記冷却装置に戻す開閉可能な排気口と、保冷剤の搬入搬出口となる開閉可能な取出し口と、が備えられていることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項3による車載式保冷庫は、請求項2記載の車載式保冷庫において、前記給気口と排気口には、インナーフランジとアウターフランジを段差状に備えるマグネット脱着式のジョイント構造が設けられており、該ジョイント構造と前記給気用エアーダクトないし排気用エアーダクトとの接続部には耐冷パッキンが取り付けられていることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項4による車載式保冷庫を備えた宅配用保冷車は、車載式保冷庫の一部また
はすべてを配送車両の荷台に搭載して被保冷品の宅配に使用される宅配用保冷車において、前記配送車両には車載式保冷庫を冷却する冷却装置は搭載されておらず、前記車載式保冷庫は、請求項1〜3のいずれかに記載の車載式保冷庫であることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項5による車載式保冷庫を備えた宅配用保冷車は、請求項4記載の車載式保冷庫を備えた宅配用保冷車において、前記配送車両の荷台上の前室に前記車載式保冷庫の冷蔵室が配設され、前記配送車両の荷台上の後室に前記車載式保冷庫の冷凍室が配設されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項6による車載式保冷庫を備えた冷却システムは、車載式保冷庫を所定の温度に冷却する車載式保冷庫を備えた冷却システムにおいて、被保冷品を一定の温度に保った状態で保管する冷蔵室と保冷剤を冷凍する冷凍室とを備えた車載式保冷庫と、前記車載式保冷庫と切り離して、その外部に設置され、前記車載式保冷庫の冷凍室内に冷気を供給する冷却装置と、前記冷凍室の給気口と前記冷却装置とを接続する着脱可能な給気用エアーダクトと、前記冷凍室の排気口と前記冷却装置とを接続する着脱可能な排気用エアーダクトと、を具備し、前記車載式保冷庫は、請求項1〜3のいずれかに記載の車載式保冷庫であることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項7による車載式保冷庫の冷却方法は、車載式保冷庫を備えた冷却システムを使用した車載式保冷庫の冷却方法において、車載式保冷庫を搭載して配送を行う配送車両の運行待機時において、冷凍室内に保冷剤を収容し、冷却装置を駆動して冷凍室内に冷気を供給して保冷剤を所定の温度に冷却して凍結させる一次冷却工程と、前記一次冷却工程で冷却された冷凍室内の温度の冷蔵室内への伝搬を利用して冷蔵庫内の温度を所定の温度に冷却する二次冷却工程と、前記二次冷却工程で冷却された冷蔵室内に被保冷品と前記一次冷却工程で凍結された保冷剤を収容し、前記配送車両の運行時において、前記二次冷却工程での冷却と前記保冷剤の保冷作用とによって冷蔵室を所定の温度に保ちながら配送する保冷配送工程と、を備え、前記冷却システムとして、請求項6記載の車載式保冷庫を備えた冷却システムを使用したことを特徴とするものである。
【0014】
そして、上記手段によって以下のような作用が得られる。まず、車載式保冷庫においては、冷凍室と冷蔵室との間に、冷却された冷凍室内の温度の冷蔵室内への伝搬を許容する仕切り壁を設けたことによって、冷凍室を冷却すると仕切り壁を介して冷蔵室が二次的に冷却されるようになる。
従って、冷蔵室を冷却するための独立した冷却装置を別途設ける必要はないから設備費用の削減と、設備の設置スペースの縮小を通じて土地の賃借料等の管理費用の削減とが図られる。
【0015】
また、冷凍室内の冷却を、車載式保冷庫の外部に設置される冷却装置から供給される冷気を利用して行うようにした場合には、冷凍室内に熱交換器等を設ける必要がないから、冷凍室内の空間を広く利用でき、収容できる保冷剤の数量が増大する。
また、冷凍室の給気口と排気口に、インナーフランジとアウターフランジを段差状に備えるマグネット脱着式のジョイント構造を設け、該ジョイント構造と給気用エアーダクトないし排気用エアーダクトとの接続部に耐冷パッキンを取り付けた場合には、配送車両の運行待機時に行う給気用エアーダクトと排気用エアーダクトの脱着作業が簡単に行えるようになり、当該給気用エアーダクトと排気用エアーダクトの接続時の気密性が冷凍環境下でも良好に保たれるようになる。
【0016】
また、車載式保冷庫を備えた宅配用保冷車においては、配送車両に車載式保冷庫を冷却する冷却装置が設けられていないから、当該冷却装置の分だけ配送車両の重量が軽くなって配送車両の燃費が向上する。
また、冷却装置の動力は配送車両のエンジン以外から受けることになるから、エンジンの消耗を少なくして配送車両の耐用年数の長大化を図ることが可能になる。
【0017】
また、前記冷蔵室を配送車両の荷台上の前室に配設し、前記冷凍室を配送車両の荷台上の後室に配設した場合には、配送車両の運行待機時に行う冷凍室と冷却装置との接続が容易になり、給気用エアーダクトと排気用エアーダクトの長さを短くして冷凍室の冷却効率を高めることが可能なる。
また、車載式保冷庫を備えた冷却システムにおいては、冷蔵室と冷凍室を備えた車載式保冷庫と、冷凍室のみを冷却するための冷却装置と、給気用エアーダクトと、排気用エアーダクトと、を具備することによって構成されているから、配送基地に別途用意されていた車載式保冷庫とは別の冷凍庫と冷蔵庫が不要になり、配送基地に設置する設備費用の削減と、設備の設置スペースをより小さくして設置スペースの有効利用を図ることが可能になる。
【0018】
また、冷却システムを使用した車載式保冷庫の冷却方法においては、直接、冷却装置を駆動して冷却するのは、配送車両の運行待機時において、冷凍室に対して行う一次冷却工程のみであり、配送車両の運行待機時において冷蔵室に対して行う二次冷却工程と、配送車両の運行時において冷蔵室に対して行う保冷配送工程とについては、上記冷却装置を使用しないで行っている。
従って、宅配を行っていない配送車両の運行待機時の時間帯を有効に活用して、冷却装置の短い稼働時間で効率良く冷凍室内の冷却と保冷剤の凍結とを行え、電気代等の節約が図られる。
【0019】
また、配送車両の運行待機時には、冷蔵室の冷却を行う二次冷却工程が上記一次冷却工程と並行して実行されるため、配送車両の運行開始に当たって、冷蔵室内に被保冷品と保冷剤を収容する時には、冷蔵室内の温度はこれらを保管するのに必要な所定の温度まで引き下げられている。
従って、配送車両の運行への速やかな移行が可能であり、配送車両の運行時の冷蔵室内での温度上昇も、保冷剤による保冷効果と相俟って小さく抑えられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の車載式保冷庫、該車載式保冷庫を備えた宅配用保冷車、該車載式保冷庫を備えた冷却システム及び該冷却システムを使用した車載式保冷庫の冷却方法によると、配送車両の運行時に車載式保冷庫内を直接、冷却する冷却装置が排除されているから、配送車両の軽量化により配送車両の燃費の向上と耐用年数の長大化が図られる。
また、配送車両の運行時間帯に合わせた効率の良い安価な冷却システムの構築によって配送基地に設置する設備の設置スペースの縮小と設備費用及び消費電力の削減が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態を示す図で、車載式保冷庫を備えた宅配用保冷車の運行時の状態を示す斜め後方からの斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す図で、車載式保冷庫を備えた宅配用保冷車の運行待機時の状態を示す斜め前方からの斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態を示す図で、車載式保冷庫を備えた宅配用保冷車を示す側面図である。
【図4】本発明の実施の形態を示す図で、車載式保冷庫を備えた宅配用保冷車を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態を示す図で、車載式保冷庫を備えた宅配用保冷車を示す背面図である。
【図6】本発明の実施の形態を示す図で、図3中のA部の拡大断面図である。
【図7】本発明の実施の形態を示す図で、冷却装置を示す正面図である。
【図8】本発明の実施の形態を示す図で、冷却装置を示す側面図である。
【図9】本発明の実施の形態を示す図で、冷却装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1〜図9に示す実施の形態を例にとって本発明を実施するための形態を説明する。
尚、以下の説明では、最初に本発明の車載式保冷庫を備えた宅配用保冷車3について、本発明の車載式保冷庫1の構成を中心に説明し、次に本発明の車載式保冷庫を備えた冷却システム5について、冷却装置7の構成を中心に説明する。そして、最後に該冷却システム5を使用することによって実行される本発明の車載式保冷庫の冷却方法について説明する。
【0023】
(1)車載式保冷庫と宅配用保冷車の構成
本実施の形態による宅配用保冷車3は、配送車両9の荷台11上に車載式保冷庫1を搭載することによって構成されている。そして、配送車両9の荷台11上の前室13に以下詳述する車載式保冷庫1の冷蔵室15が配設され、配送車両9の荷台11上の後室17に車載式保冷庫1の冷凍室19が配設されている。
また、上記配送車両9には、車載式保冷庫1の冷蔵室15ないし冷凍室19を冷却する車載式の冷却装置は搭載されておらず、本実施の形態では、冷却システム5の構成部材として、配送基地21において、冷凍室19内を冷却する据置き型の冷却装置7が配設されている。
【0024】
尚、宅配用保冷車3用の配送車両9としては、狭い路地にも進入できる小回りの利く軽荷物自動車が一例として適用できる。
また、車載式保冷庫1は、上記配送車両9の運行待機時に保冷剤23を収容し、所定の温度に冷却して凍結させる冷凍室19と、上記配送車両9の運行時に被保冷品25と上記保冷剤23を収容し、所定の温度に保った状態で保管する冷蔵室15と、を備えることによって基本的に構成されている。
【0025】
そして、本発明の車載式保冷庫1の特徴的構成の一つとして、前記冷凍室19と冷蔵室15との間には、冷却された冷凍室19内の温度の冷蔵室15内への伝搬を許容する仕切り壁27が設けられており、該仕切り壁27からの温度の伝搬によって冷蔵室15内の温度を冷却するように構成されている。
尚、配送車両9の運行待機時とは、被保冷品25の宅配を終了し、配送車両9が配送基地21に戻って来てから翌日の宅配に出発するまでの一例として18:00〜9:00の15時間であり、このうち12時間程度の時間を利用して冷凍室19内に収容した保冷剤23を−25℃程度まで冷やして凍結させる。
【0026】
一方、配送車両9の運行時とは、被保冷品25の宅配を行うために配送基地21を出発してから被保冷品25の宅配を終了し、配送基地21に戻って来るまでの一例として9:00〜18:00の9時間であり、この間冷蔵室15内の温度を10℃程度以下に保って被保冷品25及び保冷剤25の宅配と回収を行う。
また、冷凍室19となる後室17の天板29と底板31、左右の側板33、35と背面板37は一例として約95mm厚の厚手の断熱パネルによって構成されており、このうち背面板37の図5中、左上方のコーナ部に後述する冷却装置7から供給される冷気Aを給気用エアーダクト39を介して冷凍室19内に流入する給気口41と、該給気口41を塞ぐ一例として片開き方式の開閉蓋43が設けられている。
【0027】
また、上記背面板37の図5中、右下方のコーナ部に冷凍室19内に流入され、温められた空気Aを排気用エアーダクト45を介して再び後述する冷却装置7に戻す排気口47と、該排気口47を塞ぐ一例として片開き方式の開閉蓋49が設けられている。
更に、上記背面板37の図5中、左下方のコーナ部から背面板37の中央部にかけて矩形状に切り欠かれた口径の大きな取出し口51が形成されており、該取出し口51が保冷剤23の搬入搬出口になっている。また、上記取出し口51には、該取出し口51を塞ぐ一例として片開き方式の開閉扉53が取り付けられている。
【0028】
また、上記給気口41と排気口47には、図6(a)に示すように背面視円形のインナーフランジ55と背面視矩形のアウターフランジ57を段差状に備えるマグネット脱着式のジョイント構造59が設けられており、該ジョイント構造59と前記給気用エアーダクト39ないし排気用エアーダクト45との接続部には耐冷パッキン61が取り付けられている。
因みに、このようなジョイント構造59と耐冷パッキン61を設けることによって、給気用エアーダクト39と排気用エアーダクト45の円滑な脱着操作が可能になり、接続時の良好な気密性が確保される。
また、上記ジョイント構造59のアウターフランジ57には給気口41及び排気口47を閉塞する際、図6(b)に示すように上記開閉蓋43及び開閉蓋49が収容されて後室17の背面に凹凸が出ないように構成されている。
【0029】
また、冷蔵室15となる前室13は、上記後室17よりも幾分大きめに形成されている。そして上記前室13の天板29と底板31及び前方から見て右側の側板35は、前記後室17と同じ、約95mm厚の厚手の断熱パネルによって一例として構成されており、前方から見て左側の側板33Aが約25mm厚の薄手の断熱パネル、前面板38が約50mm厚の中間の厚さの断熱パネルによって一例として構成されている。
尚、前室13の左側の側板33Aには、冷蔵室15に収容されている被保冷品25と保冷剤23を出し入れする際に使用する口径の大きな矩形状の開口部63が形成されており、該開口部63の外方に前後方向にスライドするスライド扉65が宛がわれて、上記開口部63を閉塞し得るように構成されている。
【0030】
ここで、上記冷蔵室15内に収容される被保冷品25としては、10℃以下の保冷が必要な牛乳、ヨーグルト等の乳製品、ジュース、健康食品、生鮮食料品、加工食品等、種々の商品が適用可能である。
また、上記被保冷品25といっしょに冷蔵庫15に入れる保冷剤23は、冷蔵庫15内の温度を所定の温度に保つために使う他、各家庭に置かれるミルクボックス等の宅配用の保冷ボックス内に入れる保冷剤としても使用可能である。
【0031】
また、前記冷凍室19と冷蔵室15との間に設けられる仕切り壁27としては、厚さが50mm程度の断熱パネルを一例として使用でき、冷凍室19の他の壁面を構成している天板29、底板31、左右の側板33、35及び背面板37よりも厚さを薄くすることで冷凍室19内の温度の冷蔵室15内への伝搬を可能にしている。
そして、冷蔵室15の冷却形態として上記仕切り壁27を介しての二次的な冷却形態を使用することによって、配送車両9の軽量化を実現し、配送車両9の燃費の向上と耐用年数の長大化とが図られている。
【0032】
(2)冷却システムの構成
本実施の形態による冷却システム5は、上記構成の車載式保冷庫1を備えた車載式保冷庫1用の冷却システムである。
具体的には、前述した車載式保冷庫1と、該車載式保冷庫1と切り離して、その外部に設置され、該車載式保冷庫1の冷凍室19内に冷気Aを供給する冷却装置7と、前記冷凍室19の給気口41と上記冷却装置7とを接続する着脱可能な給気用エアーダクト39と、前記冷凍室19の排気口47と上記冷却装置7とを接続する着脱可能な排気用エアーダクト45と、を具備することによってこの冷却システム5は構成されている。
【0033】
冷却装置7は、配送基地21に設けられる軽自動車2台分程度の設置スペースに設置されている。具体的には、図7〜図9に示すように、脚部67によって上方に支持された矩形枠状の支持フレーム69と、該支持フレーム69内に設置される熱交換器、給送ファン等が内部に備えられた冷気供給ユニット71と、上記支持フレーム69の下方空間に設けられ、上記熱交換器によって温められた空気Aを外部に放出する排気ファン等が内部に備えられた排気ユニット73と、を備えることによって冷却装置7は構成されている。
【0034】
また、上記冷気供給ユニット71には生成した冷気Aを前記冷凍室19に向けて送り出す送出口75が一例として前面に形成されており、前記冷凍室19内の空気Aを冷気供給ユニット71内に再び取り込む取込み口77が一例として向って左側の側面に形成されている。
そして、上記冷気供給ユニット71の送出口75と前記冷凍室19の給気口41とを給気用エアーダクト39で接続し、前記冷凍室19の排気口47と上記冷気供給ユニット71の取込み口77とを排気用エアーダクト45で接続することによって、前記冷凍室19と冷気供給ユニット71との間に冷気ないし空気Aの循環経路が形成されるように構成されている。
【0035】
また、上記給気用エアーダクト39と排気用エアーダクト45は、外周側に断熱層79が形成された口径が300mm程度の円管状のフレキシブルダクトによって構成されている。
また、上記給気用エアーダクト39の基端部は、上記冷気供給ユニット71の送出口75に固定状態で常時、取り付けられており、上記給気用エアーダクト39の先端部は、前述したジョイント構造59を介して前記冷凍室19の給気口41に対して脱着可能な状態で接続されるように構成されている。
【0036】
同様に、上記排気用エアーダクト45の基端部は、上記冷気供給ユニット71の取込み口77に固定状態で常時、取り付けられており、上記排気用エアーダクト39の先端部は、前述したジョイント構造59を介して前記冷凍室19の排気口47に対して脱着可能な状態で接続されるように構成されている。
そして、本発明では、宅配用保冷車3に搭載された車載式保冷庫1の冷凍室19内を冷却するためだけに上記冷却システム5を使用しているため、冷却装置7を極めてコンパクトに構成でき、冷却装置7の設置スペースも上述したような狭いスペースで足りるように構成されている。
【0037】
(3)車載式保冷庫の冷却方法
次に、前記冷却システム5を使用することによって実行される本発明の車載式保冷庫の冷却方法と、該冷却方法で冷却した車載式保冷庫1を搭載した宅配用保冷庫3を使用した宅配業務の流れについて説明する。
即ち、本発明の車載式保冷庫の冷却方法は、宅配用保冷車3の運行待機時において実行される(A)一次冷却工程及び(B)二次冷却工程と、宅配用保冷車3の運行時において実行される(C)保冷配送工程と、を備えることによって構成されている。
【0038】
(A)一次冷却工程
一次冷却工程は、前記冷凍室19内に保冷剤23を収容し、前記冷却装置7を駆動して冷凍室19内に冷気Aを供給して保冷剤23を前述した所定の温度に冷却して凍結させる工程である。
本工程では、先ず、宅配を終えて戻って来た宅配用保冷車3を冷却装置7が設置されている所定の位置に移動させて停車させる。次に、冷却装置7から延びている給気用エアーダクト39を冷凍室19の給気口41に接続し、同じく冷却装置7から延びている排気用エアーダクト45を冷凍室19の排気口47に接続する。
【0039】
また、冷凍室19には開閉扉53を開けて、必要な個数(例えば300〜400個)の保冷剤23を入れておく。
そして、冷却装置7を駆動させて冷気供給ユニット71から約−35℃の冷気Aを発生させ、給気用エアーダクト39を介して冷凍室19内に冷気Aを供給する。
また、冷凍室19内の空気Aは排気用エアーダクト45を介して再び冷気供給ユニット71内に戻され、冷凍室19と冷気供給ユニット71との間に冷気Aを循環させる。
そして、上記冷気Aの循環を12時間程度続けると、冷凍室19内の温度は−25℃程度まで下がり、冷凍室19内の保冷剤23が凍結する。
【0040】
(B)二次冷却工程
二次冷却工程は、上記一次冷却工程で冷却された冷凍室19内の温度の冷蔵室15内への伝搬を利用して冷蔵室15内の温度を前述した所定の温度に冷却する工程である。
即ち、本工程では直接、冷蔵室15内を冷却するのではなく、上記一次冷却工程で冷却した冷凍室19自体を冷却手段として利用し、間接的に冷蔵室15内を冷却するという構成を採用している。
【0041】
従って、本工程の実行に当たっては、独立した別途の冷却手段が不要であるから設備費用の大幅な削減が図れ、当該別途の冷却手段を駆動するための一切の操作が不要になるから、何らの手間もかからない。
そして、本工程の実行によって、冷蔵室15内の温度は10℃以下まで下がり、被保冷品25の保管可能温度に達する。
【0042】
(C)保冷配送工程
保冷配送工程は、上記二次冷却工程で冷却された冷蔵室15内に被保冷品25と、上記一次冷却工程で凍結された保冷剤23を収容し、前記配送車両9の運行時において、上記二次冷却工程での冷却と前記保冷剤23の保冷作用とによって冷蔵室15を前述した所定の温度に保ちながら配送する工程である。
本工程では、上記二次冷却工程によって保管可能温度に達した冷蔵室15内にスライド扉65を開けて、被保冷品25と上記一次冷却工程とによって凍結された保冷剤23を収容し、再びスライド扉65を閉めて宅配保冷車3を配送基地21から出発させる。
【0043】
配送基地21を出発した宅配用保冷車3の冷蔵室15内では、保冷剤23による保冷作用によって引き続き、冷蔵室15内の温度は、10℃以下の温度に保たれている。
配送地に宅配用保冷車が到達すると、冷蔵室15のスライド扉65を開け、冷蔵室15内の被保冷品25と保冷剤23を必要な数だけ取り出して、配送地となる各家庭に置いてある保冷ボックス内に入れ、飲み終わったあるいは使用済みの、目的を終えた被保冷品25及び保冷剤23を回収してくる。
【0044】
尚、回収した被保冷品25は冷蔵室15内に入れ、回収した保冷剤23は冷凍室19内に入れて次の冷却に備える。
すべての配送地を回って一日の配達が終了すると、宅配用保冷車3は、再び配送基地21に戻り、冷蔵室15から目的を終えた被保冷品25を取り出し、給気用エアーダクト39と排気用エアーダクト45を冷凍室19に接続して次のサイクルの一次冷却工程、二次冷却工程、保冷配送工程へと移行する。
【0045】
従って、本発明の車載式保冷庫の冷却方法によれば、宅配を行っていない配送車両9の運行待機時の時間帯を有効に活用して、冷却装置7の短い稼働時間で効率良く冷凍室19内及び冷蔵室15内の冷却と保冷剤23の凍結とを同時に実行することができるから電気代等の節約が図られる。
また、上記二次冷却手段によって冷蔵室15は保管可能温度に達しているから、配送車両9の運行への速やかな移行が可能であり、配送車両9の運行時の冷蔵室15内の温度も保冷剤23による保冷効果も作用して引き続き保管可能温度である10℃以下の温度に保たれている。
【0046】
尚、本発明の車載式保冷庫1、該車載式保冷庫を備えた宅配用保冷車3、該車載式保冷庫を備えた冷却システム5及び該冷却システムを使用した車載式保冷庫の冷却方法は、上記の実施の形態のものに限定されず、その発明の要旨内での変更が可能である。
例えば、冷蔵室15と冷凍室19を仕切り壁27を介して前後に配設した前記実施の形態で述べた一体構造の車載式保冷庫1に限らず、冷蔵室15を構成する複数の面に仕切り壁27を形成して、より広い面積が冷凍室19によって覆われた配設態様の一体構造の車載式保冷庫1とすることも可能である。
【0047】
また、冷蔵室15と冷凍室19を分断させた別体構造の車載式保冷庫1とし、前記一次冷却工程と二次冷却工程の実行時に冷蔵室15と冷凍室19を密着させて両者の間に仕切り壁27が形成されるようにし、前記保冷配送工程の実行時に冷蔵室15と冷凍室19とを切り離して被保冷品25と保冷剤23とを収容した冷蔵室15のみを配送車両9の荷台11上に搭載して配送作業を行うようにすることも可能である。
【0048】
また、前記実施の形態で述べた車載式保冷庫1において、冷凍室19に入れる保冷剤23の数を増やし、凍結させた保冷剤23のすべてを冷蔵室15に移動させるのではなく、その一部を冷凍室19内に残して置くことも可能である。このようにすれば、より低い温度に冷却されている冷凍室19内に残された保冷剤23の方が溶けにくいから、その日の温度が高い場合や宅配時間が長くなる時に、冷蔵室15内で溶けてしまった保冷剤23と冷凍庫19内の保冷剤23を入れ替えて冷蔵室15内の温度を調節するようにすることも可能である。
【0049】
この他、前記仕切り壁27の有する温度伝搬機能は、仕切り壁27の厚さを薄くすることによって構成する場合に限らず、仕切り壁27の材質や構造(例えば微細な通気孔や目の細かな網を一部に形成する等の構造)を異ならせることによって実現することが可能である。
更に、冷却装置7の構成も前記実施の形態の構成に限らず、種々の構成の冷却装置7が適用可能であり、配送基地21に別途の冷却設備を備えている場合には、当該冷却設備を利用して冷凍室19内の冷却を図るようにすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の車載式保冷庫、該車載式保冷庫を備えた宅配用保冷車、該車載式保冷庫を備えた冷却システム及び該冷却システムを使用した車載式保冷庫の冷却方法は、被保冷品を一定の温度に保った状態で保管する車載式保冷庫等の製造、使用分野等で利用でき、特に安価な構造で効率の良い冷却効果が得られ、配送車両の燃費の向上と耐用年数の長大化と電気代の節約とを図りたい場合に利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0051】
1 車載式保冷庫
3 宅配用保冷車
5 冷却システム
7 冷却装置
9 配送車両
11 荷台
13 前室
15 冷蔵室
17 後室
19 冷凍室
21 配送基地
23 保冷剤
25 被保冷品
27 仕切り壁
29 天板
31 底板
33 側板
35 側板
37 背面板
38 前面板
39 給気用エアーダクト
41 給気口
43 開閉蓋
45 排気用エアーダクト
47 排気口
49 開閉蓋
51 取出し口
53 開閉扉
55 インナーフランジ
57 アウターフランジ
59 ジョイント構造
61 耐冷パッキン
63 開口部
65 スライド扉
67 脚部
69 支持フレーム
71 冷気供給ユニット
73 排気ユニット
75 送出口
77 取込み口
79 断熱層
A 冷気(空気)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被保冷品を一定の温度に保った状態で保管する車載式保冷庫において、
配送車両の運行待機時に保冷剤を収容し、所定の温度に冷却して凍結させる冷凍室と、
配送車両の運行時に被保冷品と保冷剤を収容し、所定の温度に保った状態で保管する冷蔵室と、を備え、
前記冷凍室と冷蔵室との間には、冷却された冷凍室内の温度の冷蔵室内への伝搬を許容する仕切り壁が設けられており、該仕切り壁からの温度の伝搬によって冷蔵室内の温度を冷却するように構成されていることを特徴とする車載式保冷庫。
【請求項2】
前記冷凍室には、車載式保冷庫の外部に設置されている冷却装置から供給される冷気を給気用エアーダクトを介して冷凍室内に流入させる開閉可能な給気口と、
前記冷凍室内に流入され、温められた空気を排気用エアーダクトを介して再び前記冷却装置に戻す開閉可能な排気口と、
保冷剤の搬入搬出口となる開閉可能な取出し口と、が備えられていることを特徴とする請求項1記載の車載式保冷庫
【請求項3】
前記給気口と排気口には、インナーフランジとアウターフランジを段差状に備えるマグネット脱着式のジョイント構造が設けられており、
該ジョイント構造と前記給気用エアーダクトないし排気用エアーダクトとの接続部には耐冷パッキンが取り付けられていることを特徴とする請求項2記載の車載式保冷庫。
【請求項4】
車載式保冷庫の一部またはすべてを配送車両の荷台に搭載して被保冷品の宅配に使用される宅配用保冷車において、
前記配送車両には車載式保冷庫を冷却する冷却装置は搭載されておらず、前記車載式保冷庫は、請求項1〜3のいずれかに記載の車載式保冷庫であることを特徴とする車載式保冷庫を備えた宅配用保冷車。
【請求項5】
前記配送車両の荷台上の前室に前記車載式保冷庫の冷蔵室が配設され、
前記配送車両の荷台上の後室に前記車載式保冷庫の冷凍室が配設されていることを特徴とする請求項4記載の車載式保冷庫を備えた宅配用保冷車。
【請求項6】
車載式保冷庫を所定の温度に冷却する車載式保冷庫を備えた冷却システムにおいて、
被保冷品を一定の温度に保った状態で保管する冷蔵室と保冷剤を冷凍する冷凍室とを備えた車載式保冷庫と、
前記車載式保冷庫と切り離して、その外部に設置され、前記車載式保冷庫の冷凍室内に冷気を供給する冷却装置と、
前記冷凍室の給気口と前記冷却装置とを接続する着脱可能な給気用エアーダクトと、
前記冷凍室の排気口と前記冷却装置とを接続する着脱可能な排気用エアーダクトと、を具備し、
前記車載式保冷庫は、請求項1〜3のいずれかに記載の車載式保冷庫であることを特徴とする車載式保冷庫を備えた冷却システム。
【請求項7】
車載式保冷庫を備えた冷却システムを使用した車載式保冷庫の冷却方法において、
車載式保冷庫を搭載して配送を行う配送車両の運行待機時において、冷凍室内に保冷剤を収容し、冷却装置を駆動して冷凍室内に冷気を供給して保冷剤を所定の温度に冷却して凍結させる一次冷却工程と、
前記一次冷却工程で冷却された冷凍室内の温度の冷蔵室内への伝搬を利用して冷蔵庫内の温度を所定の温度に冷却する二次冷却工程と、
前記二次冷却工程で冷却された冷蔵室内に被保冷品と前記一次冷却工程で凍結された保冷剤を収容し、前記配送車両の運行時において、前記二次冷却工程での冷却と前記保冷剤の保冷作用とによって冷蔵室を所定の温度に保ちながら配送する保冷配送工程と、を備え、
前記冷却システムとして、請求項6記載の車載式保冷庫を備えた冷却システムを使用したことを特徴とする車載式保冷庫の冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−83398(P2013−83398A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223589(P2011−223589)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(511244908)株式会社サンワコーポレーション (1)
【Fターム(参考)】