車載機器用高周波ノイズフィルタ、ワイヤハーネス及び駆動回路
【課題】使用する部品の数や接続点の数の増加を抑制すると共に、中波放送の周波数帯とFM放送の周波数帯のように複数の周波数帯のそれぞれについて高周波ノイズを十分に低減する。
【解決手段】上流側端子11と下流側端子12との間を接続する線状導電体13と、自己共振型のコンデンサで構成され一端が前記電気導体上の第1接続点P1と電気的に接続され他端が接地可能な第1のコンデンサ14と、前記第1のコンデンサとは静電容量が異なる自己共振型のコンデンサで構成され一端が前記電気導体上の第2接続点P2と電気的に接続され他端が接地可能な第2のコンデンサ15とを備える。前記接続点の間に電気導体を囲むリング型フェライトコアを備える。
【解決手段】上流側端子11と下流側端子12との間を接続する線状導電体13と、自己共振型のコンデンサで構成され一端が前記電気導体上の第1接続点P1と電気的に接続され他端が接地可能な第1のコンデンサ14と、前記第1のコンデンサとは静電容量が異なる自己共振型のコンデンサで構成され一端が前記電気導体上の第2接続点P2と電気的に接続され他端が接地可能な第2のコンデンサ15とを備える。前記接続点の間に電気導体を囲むリング型フェライトコアを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載機器用高周波ノイズフィルタに関し、例えばラジオ放送の周波数帯で発生する高周波ノイズを低減するために利用される。
【背景技術】
【0002】
例えば、車載ラジオ受信機で中波放送(520kHz〜1650kHzの周波数帯のAM(振幅変調)放送)の電波を受信し聴取する場合、車上の機器から発生する高周波の電磁ノイズの周波数が放送の周波数帯と重なるため、このノイズが車載ラジオ受信機のアンテナで受信され、受信した放送にノイズが混入し、スピーカから出力される音響にノイズが現れる。
【0003】
車両上にはエンジンの周囲などに電流のスイッチングを行う様々な機器やスイッチ等が搭載されているので、これらがノイズ源となって高周波の電磁ノイズが発生する。また、車載ラジオ用のアンテナの近傍には、リアデフォッガー(後部窓用の結露防止器)やハイマウントストップランプなどが存在している場合が多い。
【0004】
従って、車両上のノイズ源で発生した高周波の電磁ノイズは、電源ラインを経由してリアデフォッガーやハイマウントストップランプなどの負荷に伝搬する。そして、このような負荷から輻射される電磁ノイズは、その近傍に存在するアンテナで受信され、車載ラジオ用の入力に混入して悪影響を及ぼす。
【0005】
そこで、高周波ノイズの輻射を低減するために、ノイズが伝搬するリアデフォッガー等の負荷と接続される電源ラインには、ノイズフィルタを挿入するのが一般的である(特許文献1)。このような用途に用いられるノイズフィルタは、図8に示すように構成されている。このノイズフィルタは、外観上は図8に示すように1個のコンデンサで構成されているが、このコンデンサが内部に残留インダクタンスを有しているので、等価的には図9に示すように1個のコンデンサの容量(キャパシタンス)成分(C)と残留インダクタンス成分(L)とが直列に接続された回路を形成しており、自己共振型トラップフィルタになっている。つまり、共振周波数の近傍で回路のインピーダンスが小さくなるので、電源ラインとアースの間にこのノイズフィルタを接続することにより、共振周波数の近傍の高周波ノイズ成分だけが濾波され、輻射される電磁波(ノイズ)が低減される。
【0006】
また、この種のノイズフィルタに関する他の従来技術として、例えば特許文献2〜特許文献4が知られている。
特許文献2においては、フィルタとして用いるフェライトの外周表面に金属磁性体膜を形成することにより、同じ大きさで大きいインピーダンスを得ることを提案している。また、金属磁性体の膜厚や異方性を変えて周波数帯を制御することを示唆している。
【0007】
特許文献3においては、コイルの空芯部にコアとコネクタ端子を同時に収容するボビンケースを設けてコイルとコネクタ端子とを直接接合する構成を提案している。これにより、フィルタ部とコネクタ部を一体化し、インピーダンス特性のばらつきを抑制すると共に、小型化や低コスト化が実現する。
【0008】
特許文献4においては、特許文献1と同様のコンデンサを用いたノイズフィルタをジョイントコネクタに内蔵し、配線量や配線作業数を減らすことを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−238529号公報
【特許文献2】特開平8−250334号公報
【特許文献3】特開2009−54713号公報
【特許文献4】特開2009−146570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のコンデンサ型ノイズフィルタを用いる場合であっても、例えば、車載ラジオ受信機が受信する中波放送の周波数帯(520kHz〜1650kHz)のほぼ全域に渡って、電磁ノイズをある程度低減することができる。
【0011】
従来は、車両上の機器から発生しリアデフォッガーや、ハイマウントストップランプなどの負荷の近傍から輻射される電磁ノイズの周波数は、中波放送の受信に影響を及ぼす程度の周波数帯までであり、それ以上の高い周波数帯、例えばFM放送やアナログテレビ放送の低域周波数帯(76MHz〜108MHz)に車両上で発生した電磁ノイズが影響を及ぼすことはなかった。
【0012】
ところが、例えば近年になって生産されるようになったハイブリッド自動車においては、エンジンと電気モータの両方を駆動源としており、電気モータの制御のためにインバータを搭載している。このようなインバータは、大電流を高速で常時スイッチングしているので、大きな電磁ノイズの発生源となる。しかも、インバータから発生する電磁ノイズの周波数成分には、FM放送やアナログテレビ放送の低域周波数帯(76MHz〜108MHz)に影響を及ぼす成分も含まれる可能性がある。
【0013】
しかしながら、上記の様な従来のノイズフィルタを用いる場合には、高い周波数帯(76MHz〜108MHz)の電磁ノイズを抑制できない。そのため、車載ラジオ受信機で中波放送の電波を受信し聴取する時には問題ないが、FM放送やアナログテレビ放送の電波を受信して聴取しようとする時に、インバータによって発生した電磁ノイズの影響を受けることになる。
【0014】
ノイズフィルタについては、上記のコンデンサ型に限らず様々な構成や特性のものが従来より存在している。しかし、高性能の特性が得られるノイズフィルタは、それを構成する部品の数が多くなって部品コストが高くなったり、接続箇所が多くなって製造コストや取り付け作業のコストが嵩むという問題がある。
【0015】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用する部品の数や接続点の数の増加を抑制すると共に、中波放送の周波数帯とFM放送の周波数帯のように複数の周波数帯のそれぞれについて高周波ノイズを十分に低減することが可能な車載機器用高周波ノイズフィルタ、ワイヤハーネス及び駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車載機器用高周波ノイズフィルタは、下記(1)〜(5)を特徴としている。
(1) 所定の静電容量と自己インダクタンスを等価的に含む自己共振型のコンデンサを備える車載機器用高周波ノイズフィルタであって、
電源と負荷の間の一区間に位置し、前記電源と前記負荷とを電気的に接続する電気導体と、
前記自己共振型のコンデンサで構成され、一端が前記電気導体上の第1接続点と電気的に接続され、他端が接地可能な第1のコンデンサと、
前記第1のコンデンサとは静電容量が異なる自己共振型のコンデンサで構成され、一端が前記電気導体上の第2接続点と電気的に接続され、他端が接地可能な第2のコンデンサと
を備えること。
(2) 上記(1)に記載の車載機器用高周波ノイズフィルタであって、
前記電気導体上の前記第1接続点から第2接続点までの範囲内に対向する位置に配置され、磁性損失を発生する機能を有する磁性材料を更に備えること。
(3) 上記(2)に記載の車載機器用高周波ノイズフィルタであって、
前記磁性材料としてフェライトコアを用いたこと。
(4) 上記(3)に記載の車載機器用高周波ノイズフィルタであって、
前記フェライトコアはリング状に形成され、前記電気導体は前記フェライトコアのリングの中央部を貫通するように配置されたこと。
(5) 上記(1)に記載の車載機器用高周波ノイズフィルタであって、
前記電気導体の前記第1接続点から第2接続点までの範囲には、リング状に形成されたフェライトコアを、その中央部が該電気導体によって貫通されるように配置可能であること。
【0017】
上記(1)の構成の車載機器用高周波ノイズフィルタによれば、比較的低い周波数帯と高い周波数帯とのそれぞれについて高周波ノイズを十分に低減することが可能になる。すなわち、前記第1のコンデンサにおける共振と第2のコンデンサにおける共振との組み合わせにより、異なる2つの周波数帯についてノイズを低減できる。
上記(2)の構成の車載機器用高周波ノイズフィルタによれば、比較的高い周波数帯においてより効果的に電磁ノイズを低減できる。前記磁性材料が存在しない場合には、第2のコンデンサの共振周波数から比較的近い周波数領域においてノイズ減衰量が小さくなる傾向があるが、前記磁性材料を設けると磁性損失の働きにより広い周波数範囲に渡って十分に大きいノイズ減衰量が得られる。
上記(3)の構成の車載機器用高周波ノイズフィルタによれば、前記磁性材料として用いるフェライトコアが高周波領域において磁性損失を発生する機能を有しているので、比較的高い周波数帯においてより効果的に電磁ノイズを低減できる。
上記(4)の構成の車載機器用高周波ノイズフィルタによれば、前記電気導体の周囲を前記フェライトコアで覆って閉磁路を形成するので、より効果的に電磁ノイズを低減できる。すなわち、閉磁路を形成することにより前記フェライトコアの透磁率が増大し、磁性損失も増大する傾向がある。
上記(5)の構成の車載機器用高周波ノイズフィルタによれば、車載機器用高周波ノイズフィルタを小型化することができる。
【0018】
前述した目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスは、下記(6)を特徴としている。
(6) 上記(1)から(5)のいずれか一つの構成の車載機器用高周波ノイズフィルタを備えるワイヤハーネスであって、
前記電気導体は、該ワイヤハーネスを構成する電線のうちの一部の電線の芯線によって構成され、
前記芯線は、該芯線上の第1接続点にて前記第1のコンデンサの一端に電気的に接続され、該芯線上の第2接続点にて前記第2のコンデンサの一端に電気的に接続される、
こと。
【0019】
上記(6)の構成のワイヤハーネスによれば、比較的低い周波数帯と高い周波数帯とのそれぞれについて高周波ノイズを十分に低減することが可能になる。すなわち、前記第1のコンデンサにおける共振と第2のコンデンサにおける共振との組み合わせにより、異なる2つの周波数帯についてノイズを低減できる。
【0020】
前述した目的を達成するために、本発明に係る駆動回路は、下記(7)を特徴としている。
(7) 所定の静電容量と自己インダクタンスを等価的に含む自己共振型のコンデンサを備えるノイズフィルタを回路構成に含む駆動回路であって、
電源と、
負荷と、
前記電源と前記負荷とを電気的に接続する電気導体と、
前記自己共振型のコンデンサで構成され、一端が前記電気導体上の第1接続点と電気的に接続される第1のコンデンサと、
前記第1のコンデンサとは静電容量が異なる自己共振型のコンデンサで構成され、一端が前記電気導体上の第2接続点と電気的に接続される第2のコンデンサと、
前記第1のコンデンサの他端に接続される第1のグランドと、
前記第2のコンデンサの他端に接続される第2のグランドと、
を備えること。
【0021】
上記(7)の構成の駆動回路によれば、比較的低い周波数帯と高い周波数帯とのそれぞれについて高周波ノイズを十分に低減することが可能になる。すなわち、前記第1のコンデンサにおける共振と第2のコンデンサにおける共振との組み合わせにより、異なる2つの周波数帯についてノイズを低減できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、多数の部品を使用することなく、中波放送の周波数帯(520kHz〜1650kHz)とFM放送等の周波数帯(76MHz〜108MHz)のように複数の周波数帯のそれぞれについて高周波ノイズを十分に低減することが可能である。
【0023】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態のノイズフィルタの構成を示す結線図である。
【図2】図1に示したノイズフィルタの等価回路を示す電気回路図である。
【図3】第2実施形態のノイズフィルタの構成を示す結線図である。
【図4】図3に示したノイズフィルタの等価回路を示す電気回路図である。
【図5】図3のノイズフィルタに含まれるリング型フェライトコアの外観を示す斜視図である。
【図6】第3実施形態のノイズフィルタの構成を示す結線図である。
【図7】各ノイズフィルタの減衰量の周波数特性を対比して示すグラフである。
【図8】従来例のコンデンサ型ノイズフィルタの構成を示す結線図である。
【図9】図8のノイズフィルタの等価回路を示す電気回路図である。
【図10】図8のノイズフィルタの変形例を示す結線図である。
【図11】各ノイズフィルタの減衰量の周波数特性を測定するために用いた測定回路の構成を示す結線図である。
【図12】図1に示したノイズフィルタの減衰量の周波数特性を示すグラフである。
【図13】図3に示したノイズフィルタの減衰量の周波数特性を示すグラフである。
【図14】図3のノイズフィルタに含まれるリング型フェライトコアに関するインピーダンス成分毎に分解した特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の車載機器用高周波ノイズフィルタに関する具体的な実施の形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0026】
(第1実施形態)
第1実施形態のノイズフィルタ10の構成(結線図)が図1に示されている。また、図1に示したノイズフィルタ10の等価回路が図2に示されている。このノイズフィルタ10は、車両に搭載された様々な機器から発生する高周波の電磁ノイズが車載ラジオ等の受信機に混入し、ノイズ音の出力等の悪影響が生じるのを抑制するために利用することを想定して設計されている。特に、このノイズフィルタ10は、ラジオの中波放送のように比較的周波数の低い周波数帯と、FM放送のように比較的周波数の高い周波数帯との両方に対して電磁ノイズを十分に低減できるように構成してある。
【0027】
具体的なノイズ源となる車載機器としては、各種インバータやコンバータのようにトランジスタ等の電子スイッチを用いて大電流を高速でスイッチングする回路を内蔵した機器や、各種機器の電源スイッチのように大電流のオンオフを切り替えるスイッチや、車両の駆動源として動作する電気モータなどがある。
【0028】
このようなノイズ源で発生した電磁ノイズは、その機器と接続されたワイヤハーネス等を経由して、それと近接する位置に存在する各種電源ラインに伝搬する。そして、これらの電源ラインに接続された負荷、例えばリアデフォッガーやハイマウントストップランプなどの箇所から電磁ノイズが輻射される。リアデフォッガーやハイマウントストップランプの近傍には、車載ラジオ用のアンテナが配置されている場合が多いので、これらの負荷から輻射された電磁ノイズがアンテナから車載ラジオの入力に混入する。車載ラジオに混入した電磁ノイズは、ラジオ放送等の電波の受信状況に悪影響を及ぼしたり、ノイズ音としてスピーカから出力される。
【0029】
このような電磁ノイズの影響を抑制するために、電磁ノイズを輻射するリアデフォッガーやハイマウントストップランプの負荷と電源ラインとの接続箇所の近傍に、ノイズフィルタ10を接続する。ノイズフィルタ10は、ノイズ源から電源ライン上に伝搬した電磁ノイズを減衰させることができるので、リアデフォッガーやハイマウントストップランプからの電磁ノイズの輻射を抑制できる。
【0030】
図1に示すノイズフィルタ10は、線状導電体13、第1のコンデンサ14、および第2のコンデンサ15、を備えている。このノイズフィルタ10を実際に使用する場合には、電磁ノイズを輻射する負荷、例えばリアデフォッガの熱線とそれに電力を供給する電源とを接続する電源ライン(例えば+12Vライン)上の一区間にノイズフィルタ10を挿入する(負荷及び電源は図示せず)。すなわち、線状導電体13の一端と電源ラインの上流側端子11(ノイズフィルタ10からみて電源側に位置する端子)と接続し、線状導電体13の他端と電源ラインの下流側端子12(ノイズフィルタ10からみて負荷側に位置する端子)と接続する。また、第1のコンデンサ14、および第2のコンデンサ15は、車体の金属部分などを介して車上電源のアース電極(バッテリーのマイナス側端子などのグランド)16と接続する。このとき、第1のコンデンサ14、および第2のコンデンサ15は、別々のアース電極に接続するようにしてもよい。
【0031】
図1に示すように、電源ラインの上流側端子11と下流側端子12との間は、線状導電体13、すなわち電線を介して電気的に接続されている。第1のコンデンサ14は、一端が線状導電体13上の第1接続点P1に接続され、他端が車上電源のアース電極16と接続されている。第2のコンデンサ15は、一端が線状導電体13上の第2接続点P2に接続され、他端が車上電源のアース電極16と接続されている。尚、本実施形態では、上流側端子11と下流側端子12との間を結ぶ導体を線状のものとしたが、これに限られない。各種形状の電気導体を適用することができ、具体的にはバスバーなどをその導体として用いることができる。また、上流側端子11と下流側端子12との間をワイヤハーネスに備わる電線で接続する場合には、電線に備わる芯線をその導体として用いても構わない。また、第1のコンデンサ14の一端及び第2のコンデンサ15の一端を線状導電体13としての芯線に接続するにあたっては次のような手法が例えば考えられる。すなわち、芯線を覆う外皮を一部剥ぎ取り、それにより外皮から露出した芯線の一部と、上記コンデンサの一端から延びるリードと、を圧着端子によって加締める手法である。また、例えば、圧接端子の刃状の切片を電線に食い込ませるとともに、圧接接端子の刃状の切片を上記コンデンサの一端から延びるリードにも食い込ませる手法である。尚、第1のコンデンサ14の一端及び第2のコンデンサ15の一端を線状導電体13に接続する手法は、これらの手法に限られるものではない。
【0032】
第1接続点P1と第2接続点P2との間は距離Lxが確保されるように間隔をあけてある。距離Lxの具体例としては、55mmや、110mmが想定される。第1接続点P1と第2接続点P2との間に間隔をあけることにより、第1のコンデンサ14と第2のコンデンサ15との干渉を防止できる。また、例えばフェライトコアなどを装着するための空間を確保することもできる。尚、距離Lxを確保することは本発明を実施する上で必須のものではない。距離Lxが0であっても第1のコンデンサ14と第2のコンデンサ15との干渉を防止することができる。
【0033】
第1のコンデンサ14は、自己共振型のフィルタとして利用できる。すなわち、図2の等価回路中に示すように、第1のコンデンサ14はキャパシタ14aとインダクタ14bとを直列に接続したのと等価な電気的特性を有している。従って、キャパシタ14aとインダクタ14bの特性により定まる周波数で共振し、共振点近傍の周波数においてインピーダンスが非常に小さくなる。これにより、共振点近傍の周波数帯において、電磁ノイズを減衰させることができる。
【0034】
図1、図2に示す構成例では、ラジオの中波放送の周波数帯(520kHz〜1650kHz)で電磁ノイズを減衰させるために、第1のコンデンサ14として2.0μFの静電容量を有する部品を利用している。尚、ラジオの中波放送の周波数帯での電磁ノイズを減衰させるにあたって、第1のコンデンサ14のリードの長さによっても静電容量を調整することができることから、第1のコンデンサ14の静電容量は、2.0μFに限られるものではない。第1接続点P1から第1のコンデンサ14を経由しアース電極16に至る区間において、所定の周波数帯での電磁ノイズを減衰させられればよい。
【0035】
また第2のコンデンサ15も、自己共振型のフィルタとして利用できる。すなわち、図2の等価回路中に示すように、第2のコンデンサ15はキャパシタ15aとインダクタ15bとを直列に接続したのと等価な電気的特性を有している。従って、キャパシタ15aとインダクタ15bの特性により定まる周波数で共振し、共振点近傍の周波数においてインピーダンスが非常に小さくなる。これにより、共振点近傍の周波数帯において、電磁ノイズを減衰させることができる。
【0036】
上述のように負荷と電源とを接続する電源ライン上の一区間にノイズフィルタ10を挿入した状態で、電源から負荷に電力を供給し負荷を駆動する。このように、電源、負荷、線状導電体13、第1のコンデンサ14、第2のコンデンサ15、アース電極16を含む回路によって駆動回路を構成する。
【0037】
図1、図2に示す構成例では、ラジオのFM放送の周波数帯とアナログテレビ放送の下位バンドとを含む範囲(76MHz〜108MHz)の周波数帯で電磁ノイズを減衰させるために、第2のコンデンサ15として、220pFの静電容量を有する部品を利用している。図1、図2に示したノイズフィルタ10の具体的なノイズ減衰特性については後で詳細に説明する。尚、ラジオのFM放送の周波数帯とアナログテレビ放送の下位バンドとを含む周波数帯での電磁ノイズを減衰させるにあたって、第2のコンデンサ15のリードの長さによっても静電容量を調整することができることから、第2のコンデンサ15の静電容量は、220pFに限られるものではない。第2接続点P2から第2のコンデンサ15を経由しアース電極16に至る区間において、所定の周波数帯での電磁ノイズを減衰させられればよい。
【0038】
(第2実施形態)
第2実施形態のノイズフィルタ10Bの構成(結線図)が図3に示されている。また、図3に示したノイズフィルタ10Bの等価回路が図4に示されている。このノイズフィルタ10Bは、図1、図2に示したノイズフィルタ10の変形例であり、ノイズフィルタ10と同じ用途に用いることを想定して構成してある。なお、図3、図4において第1実施形態と対応する構成要素は同一の符号を付けて示してある。
【0039】
図3に示すノイズフィルタ10Bは、線状導電体13、第1のコンデンサ14、第2のコンデンサ15、およびリング型フェライトコア20を備えている。
【0040】
図3に示すように、電源ラインの上流側端子11と下流側端子12との間は、線状導電体13、すなわち電線を介して電気的に接続されている。この線状導電体13の周囲を囲むようにリング型フェライトコア20が配置されている。尚、本実施形態では、上流側端子11と下流側端子12との間を結ぶ導体を線状のものとしたが、これに限られない。各種形状の導体を適用することができ、具体的にはバスバーなどをその導体として用いることができる。また、上流側端子11と下流側端子12との間をワイヤハーネスに備わる電線で接続する場合には、電線に備わる芯線をその導体として用いても構わない。
【0041】
このリング型フェライトコア20は図5に示すようにリング状に形成されており、その中央部に形成された貫通孔20aを線状導電体13が貫通するように構成されている。なお、図3においてリング型フェライトコア20はその断面が示されている。
【0042】
リング型フェライトコア20は、EMI(不要輻射)対策のために用いられる磁性体コアであり、具体例として、透磁率μが800程度の酸化ニッケルジンク系のフェライトコアを用いる。一般的なフェライト材料は、各種酸化金属のパウダーを混合したもので構成され、主成分は酸化第二鉄である。最終形状にプレスされたものを900〜1000℃の高温で焼結し形成される。EMI対策用のフェライト材料は、鉄以外に酸化ニッケルと酸化亜鉛を含み、これらの比率で材質の透磁率μが決定される。
【0043】
フェライトの磁性体の特性については、交流的には「複素透磁率(透磁率)μ」があり、μには「実数部透磁率μ’」と「磁性損失項(虚数部透磁率)μ”」とがある。これらの関係は次式で表される。
μ=μ’−jμ” ・・・(1)
また、磁性体の特徴的な実数部透磁率μ’と、相反する磁性損失項μ”の関係は次式で表される。
tanσ=μ”/μ’ ・・・(2)
tanσが損失係数と定められている。
【0044】
実数部透磁率μ’は周波数の低い領域で作用する透磁率である。例えば、コイルを作成する場合にフェライトコアを用いると、実数部透磁率μ’の働きによって少ない巻数でも多く巻いたのと同様の結果が得られる。一方、周波数が極端に高くなると、電磁誘導が追いつかず、損失となってしまう。この損失が「磁性損失項μ”」である。この磁性損失によって高周波の電磁ノイズが熱に変換され消費されるため、電磁ノイズが抑制されると一般的に考えられている。
【0045】
また、一般的に透磁率μの大きいフェライト材料は「磁性損失項μ”」も大きく、EMIノイズ抑制効果が高いとされている。また、透磁率μの大きいフェライト材料は比較的周波数の低い領域についてもEMIノイズ抑制効果が得られる。特に、リング状のフェライト材料は、閉磁路を形成するため、透磁率μが大きくなり、「磁性損失項μ”」も大きくなる。
【0046】
なお、図3に示すようにノイズフィルタ10Bの場合には、線状導電体13がリング型フェライトコア20の貫通孔20aを貫通するように構成する必要があるので、図5に示すようなリング型フェライトコア20を用いる場合には、ノイズフィルタ10Bの組み付けの際の作業性が悪い。作業性を良くするために、予め複数の部位に分割された材料を組み合わせて図5のような形状のリング型フェライトコア20を構成しても良い。但し、その場合には分割された部材同士の接合面の面精度を高めて透磁率μの劣化を防止しないと電磁ノイズの抑制能力も低下してしまう。
【0047】
本実施形態では、30MHz以上の周波数帯における電磁ノイズを低減するためにリング型フェライトコア20を利用している。つまり、リング型フェライトコア20が高周波の電磁ノイズを低減する原理については、磁性体の「透磁率μ」に応じたインダクタンスの影響ではなく、前述の「磁性損失項μ”」の影響を利用している。
【0048】
図3に示すように、第1のコンデンサ14は、一端が線状導電体13上の第1接続点P1に接続され、他端が車上電源のアース電極16と接続されている。第2のコンデンサ15は、一端が線状導電体13上の第2接続点P2に接続され、他端が車上電源のアース電極16と接続されている。このとき、第1のコンデンサ14、および第2のコンデンサ15は、別々のアース電極に接続するようにしてもよい。
【0049】
第1接続点P1と第2接続点P2との間は十分な距離Lxが確保されるように間隔をあけてある。距離Lxの具体例としては、55mmや、110mmが想定される。第1接続点P1と第2接続点P2との間に十分な間隔をあけることにより、この間にリング型フェライトコア20を配置するための空間を確保できる。尚、距離Lxを確保することは本発明を実施する上で必須のものではない。距離Lxが0であっても第1のコンデンサ14と第2のコンデンサ15との干渉を防止することができる。
【0050】
第1のコンデンサ14は、自己共振型のフィルタとして利用できる。すなわち、図4の等価回路中に示すように、第1のコンデンサ14はキャパシタ14aとインダクタ14bとを直列に接続したのと等価な電気的特性を有している。従って、キャパシタ14aとインダクタ14bの特性により定まる周波数で共振し、共振点近傍の周波数においてインピーダンスが非常に小さくなる。これにより、共振点近傍の周波数帯において、電磁ノイズを減衰させることができる。
【0051】
図3、図4に示す構成例では、ラジオの中波放送の周波数帯(520kHz〜1650kHz)で電磁ノイズを減衰させるために、第1のコンデンサ14として2.0μFの静電容量を有する部品を利用している。尚、ラジオの中波放送の周波数帯での電磁ノイズを減衰させるにあたって、第1のコンデンサ14のリードの長さによっても静電容量を調整することができることから、第1のコンデンサ14の静電容量は、2.0μFに限られるものではない。第1接続点P1から第1のコンデンサ14を経由しアース電極16に至る区間において、所定の周波数帯での電磁ノイズを減衰させられればよい。
【0052】
また第2のコンデンサ15も、自己共振型のフィルタとして利用できる。すなわち、図4の等価回路中に示すように、第2のコンデンサ15はキャパシタ15aとインダクタ15bとを直列に接続したのと等価な電気的特性を有している。従って、キャパシタ15aとインダクタ15bの特性により定まる周波数で共振し、共振点近傍の周波数においてインピーダンスが非常に小さくなる。これにより、共振点近傍の周波数帯において、電磁ノイズを減衰させることができる。
【0053】
図3、図4に示す構成例では、ラジオのFM放送の周波数帯とアナログテレビ放送の下位バンドとを含む範囲(76MHz〜108MHz)の周波数帯で電磁ノイズを減衰させるために、第2のコンデンサ15として、220pFの静電容量を有する部品を利用している。尚、ラジオのFM放送の周波数帯とアナログテレビ放送の下位バンドとを含む周波数帯での電磁ノイズを減衰させるにあたって、第2のコンデンサ15のリードの長さによっても静電容量を調整することができることから、第2のコンデンサ15の静電容量は、220pFに限られるものではない。第2接続点P2から第2のコンデンサ15を経由しアース電極16に至る区間において、所定の周波数帯での電磁ノイズを減衰させられればよい。
【0054】
図3に示すリング型フェライトコア20の影響については、図4に示すように、抵抗成分20Rと、インダクタンス成分20Lと、キャパシタンス成分20Cとを含む並列共振回路と等価な回路として扱うことができる。
【0055】
電気線路の周囲をリング状の磁性体で覆う時には、電磁誘導作用でインダクタンスが大きくなる。このインダクタンスに応じたリアクタンスは周波数が高くなるにつれて大きくなり、更にインピーダンスも大きくなる。インピーダンスZは次式で表される。
Z=R+jXL ・・・(3)
XL=2πfL ・・・(4)
但し、R:抵抗,f:周波数,XL:リアクタンス,L:インダクタンス
【0056】
また、コアのインピーダンス「|Z1|」と材質のインピーダンス「|Z2|」との間には次式の関係がある。
|Z1|=(Ae/Le)N2・|Z2| ・・・(5)
Ae:コアの平均断面長,Le:コアの平均磁路長,N:巻数
【0057】
すなわち、リング型フェライトコア20の実質的なインピーダンスについては、リング状のコアの外形寸法と内径寸法との比率が大きくなるほど、並びに長さが長くなるほど大きくなる傾向がある。
【0058】
本実施形態で用いたリング型フェライトコア20の影響に関する電気的特性のインピーダンスZと、Zに含まれる抵抗成分Rおよびリアクタンス成分XL(XC)の周波数特性が図14に示されている。図14において、リアクタンス成分が正の領域ではインダクタンス成分20Lの影響がキャパシタンス成分20Cよりも大きく(誘導性リアクタンスXLとして機能する。)、リアクタンス成分が負の領域ではインダクタンス成分20Lの影響がキャパシタンス成分20Cよりも小さい(容量性リアクタンスXCとして機能する。)。また、リアクタンス成分が0になる周波数f0が共振点であり、共振点のインピーダンスZは抵抗成分20Rの影響だけを含む。また、リアクタンス成分XLと抵抗成分Rの大きさが一致するクロスポイントの周波数fcは、リング型フェライトコア20の磁性材料としての固有の特性を表している。なお、クロスポイントの周波数fcは、「実数部透磁率μ’」の影響と「磁性損失項μ”」の影響とが一致するクロスポイントの周波数とほぼ一致する。
【0059】
本実施形態では、クロスポイントの周波数fcよりも高く、共振点の周波数f0よりも低い周波数の範囲内で特にリング型フェライトコア20の特性を利用している。つまり、リング型フェライトコア20の影響によるインピーダンスZに関しては、前記第(3)式で示すように、抵抗成分20Rとインダクタンス成分20Lによるリアクタンス成分との影響を受ける。また、EMIノイズの抑制に効果があるのは抵抗成分20Rであると言える。
【0060】
上述のように負荷と電源とを接続する電源ライン上の一区間にノイズフィルタ10Bを挿入した状態で、電源から負荷に電力を供給し負荷を駆動する。このように、電源、負荷、線状導電体13、第1のコンデンサ14、第2のコンデンサ15、アース電極16、リング型フェライトコア20を含む回路によって駆動回路を構成する。
【0061】
(第3実施形態)
ところで、例えばリアデフォッガーの電源ラインにノイズフィルタを挿入しようとする場合には、この負荷(熱線)に非常に大きな電流が流れるので太い電線(例えば断面積が3mm2の電線)を用いる必要がある。このような太い電線でフィルタ用のコイルを形成するのは難しい。また、第2実施形態のノイズフィルタ10Bのようにリング型フェライトコア20によってインダクタンス成分を形成する構成であっても、そのリング型フェライトコア20の大きさの分、ノイズフィルタ10Bの大型化が避けられない。そこで、第3実施形態のノイズフィルタ10Cでは、リング型フェライトコア20の貫通孔20aに電線を通すだけで実質的にインダクタンス成分を含む回路素子を電源ラインの途中に挿入できる点に着目し、ノイズフィルタ10Cの構成にリング型フェライトコア20を含めない形態について説明する。第3実施形態のノイズフィルタ10Cの構成(結線図)が図6に示されている。なお、図6において第2実施形態と対応する構成要素は同一の符号を付けて示してある。
【0062】
図6に示すノイズフィルタ10Cは、線状導電体13、第1のコンデンサ14、および第2のコンデンサ15を備えている。
【0063】
図6に示すように、電源ラインの上流側端子11と下流側端子12との間は、線状導電体13、すなわち電線を介して電気的に接続されている。この線状導電体13の周囲を囲むようにリング型フェライトコア20Bが配置されている。線状導電体13にリング型フェライトコア20Bを組み付けるにあたっては、例えば、線状導電体13を、線状導電体13、第1のコンデンサ14、および第2のコンデンサ15を内部に収容するノイズフィルタ10Cのケースから一部露出させておき、この露出した一部に対して2つの半割体に分割されたリング型フェライトコア20Bを、リング型フェライトコア20Bの貫通孔20aに線状導電体13を通すようにして組み付ける、ことが考えられる。
【0064】
このリング型フェライトコア20Bは図5に示すようにリング状に形成されており、その中央部に形成された貫通孔20aを線状導電体13が貫通するように構成されている。なお、図6においてリング型フェライトコア20Bはその断面が示されている。
【0065】
図6に示すようにノイズフィルタ10Cの場合には、作業性を良くするために、予め複数の部位に分割された材料を組み合わせて図5のような形状のリング型フェライトコア20Bを構成することが好ましい。但し、その場合には分割された部材同士の接合面の面精度を高めて透磁率μの劣化を防止しないと電磁ノイズの抑制能力も低下してしまう。
【0066】
図6に示すように、第1のコンデンサ14は、一端が線状導電体13上の第1接続点P1に接続され、他端が車上電源のアース電極16と接続されている。第2のコンデンサ15は、一端が線状導電体13上の第2接続点P2に接続され、他端が車上電源のアース電極16と接続されている。このとき、第1のコンデンサ14、および第2のコンデンサ15は、別々のアース電極に接続するようにしてもよい。
【0067】
第1接続点P1と第2接続点P2との間は十分な距離Lxが確保されるように間隔をあけてある。距離Lxの具体例としては、55mmや、110mmが想定される。第1接続点P1と第2接続点P2との間に十分な間隔をあけることにより、この間にリング型フェライトコア20Bを配置するための空間を確保できる。
【0068】
第1のコンデンサ14は、自己共振型のフィルタとして利用できる。すなわち、図4の等価回路中に示すように(第2実施形態と第3実施形態において等価回路は共通。)、第1のコンデンサ14はキャパシタ14aとインダクタ14bとを直列に接続したのと等価な電気的特性を有している。従って、キャパシタ14aとインダクタ14bの特性により定まる周波数で共振し、共振点近傍の周波数においてインピーダンスが非常に小さくなる。これにより、共振点近傍の周波数帯において、電磁ノイズを減衰させることができる。
【0069】
図6に示す構成例では、ラジオの中波放送の周波数帯(520kHz〜1650kHz)で電磁ノイズを減衰させるために、第1のコンデンサ14として2.0μFの静電容量を有する部品を利用している。尚、ラジオの中波放送の周波数帯での電磁ノイズを減衰させるにあたって、第1のコンデンサ14のリードの長さによっても静電容量を調整することができることから、第1のコンデンサ14の静電容量は、2.0μFに限られるものではない。第1接続点P1から第1のコンデンサ14を経由しアース電極16に至る区間において、所定の周波数帯での電磁ノイズを減衰させられればよい。
【0070】
また第2のコンデンサ15も、自己共振型のフィルタとして利用できる。すなわち、図4の等価回路中に示すように、第2のコンデンサ15はキャパシタ15aと第2のコンデンサ15bとを直列に接続したのと等価な電気的特性を有している。従って、キャパシタ15aとインダクタ15bの特性により定まる周波数で共振し、共振点近傍の周波数においてインピーダンスが非常に小さくなる。これにより、共振点近傍の周波数帯において、電磁ノイズを減衰させることができる。
【0071】
図6に示す構成例では、ラジオのFM放送の周波数帯とアナログテレビ放送の下位バンドとを含む範囲(76MHz〜108MHz)の周波数帯で電磁ノイズを減衰させるために、第2のコンデンサ15として、220pFの静電容量を有する部品を利用している。尚、ラジオのFM放送の周波数帯とアナログテレビ放送の下位バンドとを含む周波数帯での電磁ノイズを減衰させるにあたって、第2のコンデンサ15のリードの長さによっても静電容量を調整することができることから、第2のコンデンサ15の静電容量は、220pFに限られるものではない。第2接続点P2から第2のコンデンサ15を経由しアース電極16に至る区間において、所定の周波数帯での電磁ノイズを減衰させられればよい。
【0072】
図6に示すリング型フェライトコア20Bの影響については、図4に示すように、抵抗成分20Rと、インダクタンス成分20Lと、キャパシタンス成分20Cとを含む並列共振回路と等価な回路として扱うことができる。
【0073】
以上、本実施形態のノイズフィルタ10Cによれば、その構成にリング型フェライトコア20Bを含ませない分、ノイズフィルタ10Cの小型化を実現することができる。
【0074】
次に、前述のノイズフィルタ10、10Bの具体的な特性について説明する。尚、ノイズフィルタ10Cの特性は、ノイズフィルタ10Bと同様であるため説明を省略する。
4種類のノイズフィルタのそれぞれの減衰量に関する周波数特性が図7に示されている。図7に示す特性カーブCV1およびCV2は、それぞれ図8および図10に示したノイズフィルタの特性を表している。また、図7に示す特性カーブCV3およびCV4は、それぞれノイズフィルタ10および10Bの特性を表している。図8に示したノイズフィルタは単一の自己共振型コンデンサで構成してある。また、図10に示したノイズフィルタは、単一の自己共振型コンデンサとこれよりも負荷側の電源ラインを囲むように配置したフェライトコアFCとで構成してある。
【0075】
また、ノイズフィルタ10単独の減衰量に関する周波数特性が図12に示されている。また、ノイズフィルタ10B単独の減衰量に関する周波数特性が図13に示されている。
【0076】
なお、図7、図12、図13に示した各ノイズフィルタの特性に関しては、図11に示した構成の測定回路を用いて測定した結果を表している。図11の測定回路においては、各ノイズフィルタに相当する試料回路の入力側に50Ωの入力抵抗と疑似ノイズ源とを接続し、出力側に負荷に相当する50Ωの抵抗を接続して終端してある。つまり、各ノイズフィルタの入力側と出力側との間でノイズのレベルがどれだけ減衰するのかを周波数毎に測定している。
【0077】
図7に示すように、従来のノイズフィルタの特性カーブCV1では、ラジオの中波放送の周波数帯(520kHz〜1650kHz)に相当する比較的低い周波数帯では十分に大きい減衰量が得られているが、FM放送やアナログテレビ放送の低域周波数帯に相当する高域の周波数帯(76MHz〜108MHz)では10dB程度の減衰量しか得られない。また、フェライトコアFCを用いたノイズフィルタの特性カーブCV2では、高域の周波数帯(76MHz〜108MHz)における減衰量が20dB程度に増大しているがこの程度では不十分である。
【0078】
一方、図7に示すノイズフィルタ10の特性カーブCV3では、低域の周波数帯以外に、100MHz近傍の周波数に共振点があり、この共振点の近傍で大きな減衰量が得られている。従って、FM放送やアナログテレビ放送の低域周波数帯に影響を及ぼす高域の周波数帯(76MHz〜108MHz)で電磁ノイズをかなり抑制することができる。
【0079】
但し、図7に示すノイズフィルタ10の特性カーブCV3では、40MHzの近傍に反共振点が現れているため、この影響を受けて80MHz以下の周波数帯では減衰量が25dB以下にとどまっている。一方、図7に示すノイズフィルタ10Bの特性カーブCV4では、CV3における反共振点の発生が解消されており、広い周波数範囲に渡って、特にFM放送やアナログテレビ放送の低域周波数帯に影響を及ぼす高域の周波数帯(76MHz〜108MHz)で大きな減衰量が得られている。
【0080】
一方、ノイズフィルタ10の特性を表す図12の特性カーブCV3と、ノイズフィルタ10Bの特性を表す図13の特性カーブCV4とを対比すると次のような違いが分かる。すなわち、特性カーブCV3に現れる反共振点(40MHz近傍の減衰量の急激な減少)の影響が特性カーブCV4ではほぼ解消されている。従って、ラジオの中波放送の周波数帯(520kHz〜1650kHz)だけでなく、FM放送やアナログテレビ放送の低域周波数帯に影響を及ぼす高域の周波数帯(76MHz〜108MHz)の全体についても、電磁ノイズを十分に減衰させることができる。
【0081】
なお、ノイズフィルタ10、10B、10Cを構成する第1のコンデンサ14の静電容量や、第2のコンデンサ15の静電容量や、距離Lxなどの具体的な数値については、必要とされるフィルタの減衰量−周波数特性に合わせて適宜変更できる。
【0082】
以上のように、本発明の車載機器用高周波ノイズフィルタは、車両上で電磁ノイズを輻射するリアデフォッガーやハイマウントストップランプなどの機器の電源ラインに挿入して使用することが想定される。本発明の実施により、ラジオの中波放送の周波数帯(520kHz〜1650kHz)だけでなく、FM放送やアナログテレビ放送の低域周波数帯に影響を及ぼす高域の周波数帯(76MHz〜108MHz)の全体についても、電磁ノイズを十分に減衰させることができるので、ハイブリッドカーなどに搭載して使用することが想定される。
【符号の説明】
【0083】
10,10B,10C ノイズフィルタ
11 上流側端子
12 下流側端子
13 線状導電体
14 第1のコンデンサ
15 第2のコンデンサ
14a,15a キャパシタ
14b,15b インダクタ
16 アース電極
20,20B リング型フェライトコア
20a 貫通孔
P1 第1接続点
P2 第2接続点
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載機器用高周波ノイズフィルタに関し、例えばラジオ放送の周波数帯で発生する高周波ノイズを低減するために利用される。
【背景技術】
【0002】
例えば、車載ラジオ受信機で中波放送(520kHz〜1650kHzの周波数帯のAM(振幅変調)放送)の電波を受信し聴取する場合、車上の機器から発生する高周波の電磁ノイズの周波数が放送の周波数帯と重なるため、このノイズが車載ラジオ受信機のアンテナで受信され、受信した放送にノイズが混入し、スピーカから出力される音響にノイズが現れる。
【0003】
車両上にはエンジンの周囲などに電流のスイッチングを行う様々な機器やスイッチ等が搭載されているので、これらがノイズ源となって高周波の電磁ノイズが発生する。また、車載ラジオ用のアンテナの近傍には、リアデフォッガー(後部窓用の結露防止器)やハイマウントストップランプなどが存在している場合が多い。
【0004】
従って、車両上のノイズ源で発生した高周波の電磁ノイズは、電源ラインを経由してリアデフォッガーやハイマウントストップランプなどの負荷に伝搬する。そして、このような負荷から輻射される電磁ノイズは、その近傍に存在するアンテナで受信され、車載ラジオ用の入力に混入して悪影響を及ぼす。
【0005】
そこで、高周波ノイズの輻射を低減するために、ノイズが伝搬するリアデフォッガー等の負荷と接続される電源ラインには、ノイズフィルタを挿入するのが一般的である(特許文献1)。このような用途に用いられるノイズフィルタは、図8に示すように構成されている。このノイズフィルタは、外観上は図8に示すように1個のコンデンサで構成されているが、このコンデンサが内部に残留インダクタンスを有しているので、等価的には図9に示すように1個のコンデンサの容量(キャパシタンス)成分(C)と残留インダクタンス成分(L)とが直列に接続された回路を形成しており、自己共振型トラップフィルタになっている。つまり、共振周波数の近傍で回路のインピーダンスが小さくなるので、電源ラインとアースの間にこのノイズフィルタを接続することにより、共振周波数の近傍の高周波ノイズ成分だけが濾波され、輻射される電磁波(ノイズ)が低減される。
【0006】
また、この種のノイズフィルタに関する他の従来技術として、例えば特許文献2〜特許文献4が知られている。
特許文献2においては、フィルタとして用いるフェライトの外周表面に金属磁性体膜を形成することにより、同じ大きさで大きいインピーダンスを得ることを提案している。また、金属磁性体の膜厚や異方性を変えて周波数帯を制御することを示唆している。
【0007】
特許文献3においては、コイルの空芯部にコアとコネクタ端子を同時に収容するボビンケースを設けてコイルとコネクタ端子とを直接接合する構成を提案している。これにより、フィルタ部とコネクタ部を一体化し、インピーダンス特性のばらつきを抑制すると共に、小型化や低コスト化が実現する。
【0008】
特許文献4においては、特許文献1と同様のコンデンサを用いたノイズフィルタをジョイントコネクタに内蔵し、配線量や配線作業数を減らすことを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−238529号公報
【特許文献2】特開平8−250334号公報
【特許文献3】特開2009−54713号公報
【特許文献4】特開2009−146570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のコンデンサ型ノイズフィルタを用いる場合であっても、例えば、車載ラジオ受信機が受信する中波放送の周波数帯(520kHz〜1650kHz)のほぼ全域に渡って、電磁ノイズをある程度低減することができる。
【0011】
従来は、車両上の機器から発生しリアデフォッガーや、ハイマウントストップランプなどの負荷の近傍から輻射される電磁ノイズの周波数は、中波放送の受信に影響を及ぼす程度の周波数帯までであり、それ以上の高い周波数帯、例えばFM放送やアナログテレビ放送の低域周波数帯(76MHz〜108MHz)に車両上で発生した電磁ノイズが影響を及ぼすことはなかった。
【0012】
ところが、例えば近年になって生産されるようになったハイブリッド自動車においては、エンジンと電気モータの両方を駆動源としており、電気モータの制御のためにインバータを搭載している。このようなインバータは、大電流を高速で常時スイッチングしているので、大きな電磁ノイズの発生源となる。しかも、インバータから発生する電磁ノイズの周波数成分には、FM放送やアナログテレビ放送の低域周波数帯(76MHz〜108MHz)に影響を及ぼす成分も含まれる可能性がある。
【0013】
しかしながら、上記の様な従来のノイズフィルタを用いる場合には、高い周波数帯(76MHz〜108MHz)の電磁ノイズを抑制できない。そのため、車載ラジオ受信機で中波放送の電波を受信し聴取する時には問題ないが、FM放送やアナログテレビ放送の電波を受信して聴取しようとする時に、インバータによって発生した電磁ノイズの影響を受けることになる。
【0014】
ノイズフィルタについては、上記のコンデンサ型に限らず様々な構成や特性のものが従来より存在している。しかし、高性能の特性が得られるノイズフィルタは、それを構成する部品の数が多くなって部品コストが高くなったり、接続箇所が多くなって製造コストや取り付け作業のコストが嵩むという問題がある。
【0015】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用する部品の数や接続点の数の増加を抑制すると共に、中波放送の周波数帯とFM放送の周波数帯のように複数の周波数帯のそれぞれについて高周波ノイズを十分に低減することが可能な車載機器用高周波ノイズフィルタ、ワイヤハーネス及び駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車載機器用高周波ノイズフィルタは、下記(1)〜(5)を特徴としている。
(1) 所定の静電容量と自己インダクタンスを等価的に含む自己共振型のコンデンサを備える車載機器用高周波ノイズフィルタであって、
電源と負荷の間の一区間に位置し、前記電源と前記負荷とを電気的に接続する電気導体と、
前記自己共振型のコンデンサで構成され、一端が前記電気導体上の第1接続点と電気的に接続され、他端が接地可能な第1のコンデンサと、
前記第1のコンデンサとは静電容量が異なる自己共振型のコンデンサで構成され、一端が前記電気導体上の第2接続点と電気的に接続され、他端が接地可能な第2のコンデンサと
を備えること。
(2) 上記(1)に記載の車載機器用高周波ノイズフィルタであって、
前記電気導体上の前記第1接続点から第2接続点までの範囲内に対向する位置に配置され、磁性損失を発生する機能を有する磁性材料を更に備えること。
(3) 上記(2)に記載の車載機器用高周波ノイズフィルタであって、
前記磁性材料としてフェライトコアを用いたこと。
(4) 上記(3)に記載の車載機器用高周波ノイズフィルタであって、
前記フェライトコアはリング状に形成され、前記電気導体は前記フェライトコアのリングの中央部を貫通するように配置されたこと。
(5) 上記(1)に記載の車載機器用高周波ノイズフィルタであって、
前記電気導体の前記第1接続点から第2接続点までの範囲には、リング状に形成されたフェライトコアを、その中央部が該電気導体によって貫通されるように配置可能であること。
【0017】
上記(1)の構成の車載機器用高周波ノイズフィルタによれば、比較的低い周波数帯と高い周波数帯とのそれぞれについて高周波ノイズを十分に低減することが可能になる。すなわち、前記第1のコンデンサにおける共振と第2のコンデンサにおける共振との組み合わせにより、異なる2つの周波数帯についてノイズを低減できる。
上記(2)の構成の車載機器用高周波ノイズフィルタによれば、比較的高い周波数帯においてより効果的に電磁ノイズを低減できる。前記磁性材料が存在しない場合には、第2のコンデンサの共振周波数から比較的近い周波数領域においてノイズ減衰量が小さくなる傾向があるが、前記磁性材料を設けると磁性損失の働きにより広い周波数範囲に渡って十分に大きいノイズ減衰量が得られる。
上記(3)の構成の車載機器用高周波ノイズフィルタによれば、前記磁性材料として用いるフェライトコアが高周波領域において磁性損失を発生する機能を有しているので、比較的高い周波数帯においてより効果的に電磁ノイズを低減できる。
上記(4)の構成の車載機器用高周波ノイズフィルタによれば、前記電気導体の周囲を前記フェライトコアで覆って閉磁路を形成するので、より効果的に電磁ノイズを低減できる。すなわち、閉磁路を形成することにより前記フェライトコアの透磁率が増大し、磁性損失も増大する傾向がある。
上記(5)の構成の車載機器用高周波ノイズフィルタによれば、車載機器用高周波ノイズフィルタを小型化することができる。
【0018】
前述した目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスは、下記(6)を特徴としている。
(6) 上記(1)から(5)のいずれか一つの構成の車載機器用高周波ノイズフィルタを備えるワイヤハーネスであって、
前記電気導体は、該ワイヤハーネスを構成する電線のうちの一部の電線の芯線によって構成され、
前記芯線は、該芯線上の第1接続点にて前記第1のコンデンサの一端に電気的に接続され、該芯線上の第2接続点にて前記第2のコンデンサの一端に電気的に接続される、
こと。
【0019】
上記(6)の構成のワイヤハーネスによれば、比較的低い周波数帯と高い周波数帯とのそれぞれについて高周波ノイズを十分に低減することが可能になる。すなわち、前記第1のコンデンサにおける共振と第2のコンデンサにおける共振との組み合わせにより、異なる2つの周波数帯についてノイズを低減できる。
【0020】
前述した目的を達成するために、本発明に係る駆動回路は、下記(7)を特徴としている。
(7) 所定の静電容量と自己インダクタンスを等価的に含む自己共振型のコンデンサを備えるノイズフィルタを回路構成に含む駆動回路であって、
電源と、
負荷と、
前記電源と前記負荷とを電気的に接続する電気導体と、
前記自己共振型のコンデンサで構成され、一端が前記電気導体上の第1接続点と電気的に接続される第1のコンデンサと、
前記第1のコンデンサとは静電容量が異なる自己共振型のコンデンサで構成され、一端が前記電気導体上の第2接続点と電気的に接続される第2のコンデンサと、
前記第1のコンデンサの他端に接続される第1のグランドと、
前記第2のコンデンサの他端に接続される第2のグランドと、
を備えること。
【0021】
上記(7)の構成の駆動回路によれば、比較的低い周波数帯と高い周波数帯とのそれぞれについて高周波ノイズを十分に低減することが可能になる。すなわち、前記第1のコンデンサにおける共振と第2のコンデンサにおける共振との組み合わせにより、異なる2つの周波数帯についてノイズを低減できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、多数の部品を使用することなく、中波放送の周波数帯(520kHz〜1650kHz)とFM放送等の周波数帯(76MHz〜108MHz)のように複数の周波数帯のそれぞれについて高周波ノイズを十分に低減することが可能である。
【0023】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態のノイズフィルタの構成を示す結線図である。
【図2】図1に示したノイズフィルタの等価回路を示す電気回路図である。
【図3】第2実施形態のノイズフィルタの構成を示す結線図である。
【図4】図3に示したノイズフィルタの等価回路を示す電気回路図である。
【図5】図3のノイズフィルタに含まれるリング型フェライトコアの外観を示す斜視図である。
【図6】第3実施形態のノイズフィルタの構成を示す結線図である。
【図7】各ノイズフィルタの減衰量の周波数特性を対比して示すグラフである。
【図8】従来例のコンデンサ型ノイズフィルタの構成を示す結線図である。
【図9】図8のノイズフィルタの等価回路を示す電気回路図である。
【図10】図8のノイズフィルタの変形例を示す結線図である。
【図11】各ノイズフィルタの減衰量の周波数特性を測定するために用いた測定回路の構成を示す結線図である。
【図12】図1に示したノイズフィルタの減衰量の周波数特性を示すグラフである。
【図13】図3に示したノイズフィルタの減衰量の周波数特性を示すグラフである。
【図14】図3のノイズフィルタに含まれるリング型フェライトコアに関するインピーダンス成分毎に分解した特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の車載機器用高周波ノイズフィルタに関する具体的な実施の形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0026】
(第1実施形態)
第1実施形態のノイズフィルタ10の構成(結線図)が図1に示されている。また、図1に示したノイズフィルタ10の等価回路が図2に示されている。このノイズフィルタ10は、車両に搭載された様々な機器から発生する高周波の電磁ノイズが車載ラジオ等の受信機に混入し、ノイズ音の出力等の悪影響が生じるのを抑制するために利用することを想定して設計されている。特に、このノイズフィルタ10は、ラジオの中波放送のように比較的周波数の低い周波数帯と、FM放送のように比較的周波数の高い周波数帯との両方に対して電磁ノイズを十分に低減できるように構成してある。
【0027】
具体的なノイズ源となる車載機器としては、各種インバータやコンバータのようにトランジスタ等の電子スイッチを用いて大電流を高速でスイッチングする回路を内蔵した機器や、各種機器の電源スイッチのように大電流のオンオフを切り替えるスイッチや、車両の駆動源として動作する電気モータなどがある。
【0028】
このようなノイズ源で発生した電磁ノイズは、その機器と接続されたワイヤハーネス等を経由して、それと近接する位置に存在する各種電源ラインに伝搬する。そして、これらの電源ラインに接続された負荷、例えばリアデフォッガーやハイマウントストップランプなどの箇所から電磁ノイズが輻射される。リアデフォッガーやハイマウントストップランプの近傍には、車載ラジオ用のアンテナが配置されている場合が多いので、これらの負荷から輻射された電磁ノイズがアンテナから車載ラジオの入力に混入する。車載ラジオに混入した電磁ノイズは、ラジオ放送等の電波の受信状況に悪影響を及ぼしたり、ノイズ音としてスピーカから出力される。
【0029】
このような電磁ノイズの影響を抑制するために、電磁ノイズを輻射するリアデフォッガーやハイマウントストップランプの負荷と電源ラインとの接続箇所の近傍に、ノイズフィルタ10を接続する。ノイズフィルタ10は、ノイズ源から電源ライン上に伝搬した電磁ノイズを減衰させることができるので、リアデフォッガーやハイマウントストップランプからの電磁ノイズの輻射を抑制できる。
【0030】
図1に示すノイズフィルタ10は、線状導電体13、第1のコンデンサ14、および第2のコンデンサ15、を備えている。このノイズフィルタ10を実際に使用する場合には、電磁ノイズを輻射する負荷、例えばリアデフォッガの熱線とそれに電力を供給する電源とを接続する電源ライン(例えば+12Vライン)上の一区間にノイズフィルタ10を挿入する(負荷及び電源は図示せず)。すなわち、線状導電体13の一端と電源ラインの上流側端子11(ノイズフィルタ10からみて電源側に位置する端子)と接続し、線状導電体13の他端と電源ラインの下流側端子12(ノイズフィルタ10からみて負荷側に位置する端子)と接続する。また、第1のコンデンサ14、および第2のコンデンサ15は、車体の金属部分などを介して車上電源のアース電極(バッテリーのマイナス側端子などのグランド)16と接続する。このとき、第1のコンデンサ14、および第2のコンデンサ15は、別々のアース電極に接続するようにしてもよい。
【0031】
図1に示すように、電源ラインの上流側端子11と下流側端子12との間は、線状導電体13、すなわち電線を介して電気的に接続されている。第1のコンデンサ14は、一端が線状導電体13上の第1接続点P1に接続され、他端が車上電源のアース電極16と接続されている。第2のコンデンサ15は、一端が線状導電体13上の第2接続点P2に接続され、他端が車上電源のアース電極16と接続されている。尚、本実施形態では、上流側端子11と下流側端子12との間を結ぶ導体を線状のものとしたが、これに限られない。各種形状の電気導体を適用することができ、具体的にはバスバーなどをその導体として用いることができる。また、上流側端子11と下流側端子12との間をワイヤハーネスに備わる電線で接続する場合には、電線に備わる芯線をその導体として用いても構わない。また、第1のコンデンサ14の一端及び第2のコンデンサ15の一端を線状導電体13としての芯線に接続するにあたっては次のような手法が例えば考えられる。すなわち、芯線を覆う外皮を一部剥ぎ取り、それにより外皮から露出した芯線の一部と、上記コンデンサの一端から延びるリードと、を圧着端子によって加締める手法である。また、例えば、圧接端子の刃状の切片を電線に食い込ませるとともに、圧接接端子の刃状の切片を上記コンデンサの一端から延びるリードにも食い込ませる手法である。尚、第1のコンデンサ14の一端及び第2のコンデンサ15の一端を線状導電体13に接続する手法は、これらの手法に限られるものではない。
【0032】
第1接続点P1と第2接続点P2との間は距離Lxが確保されるように間隔をあけてある。距離Lxの具体例としては、55mmや、110mmが想定される。第1接続点P1と第2接続点P2との間に間隔をあけることにより、第1のコンデンサ14と第2のコンデンサ15との干渉を防止できる。また、例えばフェライトコアなどを装着するための空間を確保することもできる。尚、距離Lxを確保することは本発明を実施する上で必須のものではない。距離Lxが0であっても第1のコンデンサ14と第2のコンデンサ15との干渉を防止することができる。
【0033】
第1のコンデンサ14は、自己共振型のフィルタとして利用できる。すなわち、図2の等価回路中に示すように、第1のコンデンサ14はキャパシタ14aとインダクタ14bとを直列に接続したのと等価な電気的特性を有している。従って、キャパシタ14aとインダクタ14bの特性により定まる周波数で共振し、共振点近傍の周波数においてインピーダンスが非常に小さくなる。これにより、共振点近傍の周波数帯において、電磁ノイズを減衰させることができる。
【0034】
図1、図2に示す構成例では、ラジオの中波放送の周波数帯(520kHz〜1650kHz)で電磁ノイズを減衰させるために、第1のコンデンサ14として2.0μFの静電容量を有する部品を利用している。尚、ラジオの中波放送の周波数帯での電磁ノイズを減衰させるにあたって、第1のコンデンサ14のリードの長さによっても静電容量を調整することができることから、第1のコンデンサ14の静電容量は、2.0μFに限られるものではない。第1接続点P1から第1のコンデンサ14を経由しアース電極16に至る区間において、所定の周波数帯での電磁ノイズを減衰させられればよい。
【0035】
また第2のコンデンサ15も、自己共振型のフィルタとして利用できる。すなわち、図2の等価回路中に示すように、第2のコンデンサ15はキャパシタ15aとインダクタ15bとを直列に接続したのと等価な電気的特性を有している。従って、キャパシタ15aとインダクタ15bの特性により定まる周波数で共振し、共振点近傍の周波数においてインピーダンスが非常に小さくなる。これにより、共振点近傍の周波数帯において、電磁ノイズを減衰させることができる。
【0036】
上述のように負荷と電源とを接続する電源ライン上の一区間にノイズフィルタ10を挿入した状態で、電源から負荷に電力を供給し負荷を駆動する。このように、電源、負荷、線状導電体13、第1のコンデンサ14、第2のコンデンサ15、アース電極16を含む回路によって駆動回路を構成する。
【0037】
図1、図2に示す構成例では、ラジオのFM放送の周波数帯とアナログテレビ放送の下位バンドとを含む範囲(76MHz〜108MHz)の周波数帯で電磁ノイズを減衰させるために、第2のコンデンサ15として、220pFの静電容量を有する部品を利用している。図1、図2に示したノイズフィルタ10の具体的なノイズ減衰特性については後で詳細に説明する。尚、ラジオのFM放送の周波数帯とアナログテレビ放送の下位バンドとを含む周波数帯での電磁ノイズを減衰させるにあたって、第2のコンデンサ15のリードの長さによっても静電容量を調整することができることから、第2のコンデンサ15の静電容量は、220pFに限られるものではない。第2接続点P2から第2のコンデンサ15を経由しアース電極16に至る区間において、所定の周波数帯での電磁ノイズを減衰させられればよい。
【0038】
(第2実施形態)
第2実施形態のノイズフィルタ10Bの構成(結線図)が図3に示されている。また、図3に示したノイズフィルタ10Bの等価回路が図4に示されている。このノイズフィルタ10Bは、図1、図2に示したノイズフィルタ10の変形例であり、ノイズフィルタ10と同じ用途に用いることを想定して構成してある。なお、図3、図4において第1実施形態と対応する構成要素は同一の符号を付けて示してある。
【0039】
図3に示すノイズフィルタ10Bは、線状導電体13、第1のコンデンサ14、第2のコンデンサ15、およびリング型フェライトコア20を備えている。
【0040】
図3に示すように、電源ラインの上流側端子11と下流側端子12との間は、線状導電体13、すなわち電線を介して電気的に接続されている。この線状導電体13の周囲を囲むようにリング型フェライトコア20が配置されている。尚、本実施形態では、上流側端子11と下流側端子12との間を結ぶ導体を線状のものとしたが、これに限られない。各種形状の導体を適用することができ、具体的にはバスバーなどをその導体として用いることができる。また、上流側端子11と下流側端子12との間をワイヤハーネスに備わる電線で接続する場合には、電線に備わる芯線をその導体として用いても構わない。
【0041】
このリング型フェライトコア20は図5に示すようにリング状に形成されており、その中央部に形成された貫通孔20aを線状導電体13が貫通するように構成されている。なお、図3においてリング型フェライトコア20はその断面が示されている。
【0042】
リング型フェライトコア20は、EMI(不要輻射)対策のために用いられる磁性体コアであり、具体例として、透磁率μが800程度の酸化ニッケルジンク系のフェライトコアを用いる。一般的なフェライト材料は、各種酸化金属のパウダーを混合したもので構成され、主成分は酸化第二鉄である。最終形状にプレスされたものを900〜1000℃の高温で焼結し形成される。EMI対策用のフェライト材料は、鉄以外に酸化ニッケルと酸化亜鉛を含み、これらの比率で材質の透磁率μが決定される。
【0043】
フェライトの磁性体の特性については、交流的には「複素透磁率(透磁率)μ」があり、μには「実数部透磁率μ’」と「磁性損失項(虚数部透磁率)μ”」とがある。これらの関係は次式で表される。
μ=μ’−jμ” ・・・(1)
また、磁性体の特徴的な実数部透磁率μ’と、相反する磁性損失項μ”の関係は次式で表される。
tanσ=μ”/μ’ ・・・(2)
tanσが損失係数と定められている。
【0044】
実数部透磁率μ’は周波数の低い領域で作用する透磁率である。例えば、コイルを作成する場合にフェライトコアを用いると、実数部透磁率μ’の働きによって少ない巻数でも多く巻いたのと同様の結果が得られる。一方、周波数が極端に高くなると、電磁誘導が追いつかず、損失となってしまう。この損失が「磁性損失項μ”」である。この磁性損失によって高周波の電磁ノイズが熱に変換され消費されるため、電磁ノイズが抑制されると一般的に考えられている。
【0045】
また、一般的に透磁率μの大きいフェライト材料は「磁性損失項μ”」も大きく、EMIノイズ抑制効果が高いとされている。また、透磁率μの大きいフェライト材料は比較的周波数の低い領域についてもEMIノイズ抑制効果が得られる。特に、リング状のフェライト材料は、閉磁路を形成するため、透磁率μが大きくなり、「磁性損失項μ”」も大きくなる。
【0046】
なお、図3に示すようにノイズフィルタ10Bの場合には、線状導電体13がリング型フェライトコア20の貫通孔20aを貫通するように構成する必要があるので、図5に示すようなリング型フェライトコア20を用いる場合には、ノイズフィルタ10Bの組み付けの際の作業性が悪い。作業性を良くするために、予め複数の部位に分割された材料を組み合わせて図5のような形状のリング型フェライトコア20を構成しても良い。但し、その場合には分割された部材同士の接合面の面精度を高めて透磁率μの劣化を防止しないと電磁ノイズの抑制能力も低下してしまう。
【0047】
本実施形態では、30MHz以上の周波数帯における電磁ノイズを低減するためにリング型フェライトコア20を利用している。つまり、リング型フェライトコア20が高周波の電磁ノイズを低減する原理については、磁性体の「透磁率μ」に応じたインダクタンスの影響ではなく、前述の「磁性損失項μ”」の影響を利用している。
【0048】
図3に示すように、第1のコンデンサ14は、一端が線状導電体13上の第1接続点P1に接続され、他端が車上電源のアース電極16と接続されている。第2のコンデンサ15は、一端が線状導電体13上の第2接続点P2に接続され、他端が車上電源のアース電極16と接続されている。このとき、第1のコンデンサ14、および第2のコンデンサ15は、別々のアース電極に接続するようにしてもよい。
【0049】
第1接続点P1と第2接続点P2との間は十分な距離Lxが確保されるように間隔をあけてある。距離Lxの具体例としては、55mmや、110mmが想定される。第1接続点P1と第2接続点P2との間に十分な間隔をあけることにより、この間にリング型フェライトコア20を配置するための空間を確保できる。尚、距離Lxを確保することは本発明を実施する上で必須のものではない。距離Lxが0であっても第1のコンデンサ14と第2のコンデンサ15との干渉を防止することができる。
【0050】
第1のコンデンサ14は、自己共振型のフィルタとして利用できる。すなわち、図4の等価回路中に示すように、第1のコンデンサ14はキャパシタ14aとインダクタ14bとを直列に接続したのと等価な電気的特性を有している。従って、キャパシタ14aとインダクタ14bの特性により定まる周波数で共振し、共振点近傍の周波数においてインピーダンスが非常に小さくなる。これにより、共振点近傍の周波数帯において、電磁ノイズを減衰させることができる。
【0051】
図3、図4に示す構成例では、ラジオの中波放送の周波数帯(520kHz〜1650kHz)で電磁ノイズを減衰させるために、第1のコンデンサ14として2.0μFの静電容量を有する部品を利用している。尚、ラジオの中波放送の周波数帯での電磁ノイズを減衰させるにあたって、第1のコンデンサ14のリードの長さによっても静電容量を調整することができることから、第1のコンデンサ14の静電容量は、2.0μFに限られるものではない。第1接続点P1から第1のコンデンサ14を経由しアース電極16に至る区間において、所定の周波数帯での電磁ノイズを減衰させられればよい。
【0052】
また第2のコンデンサ15も、自己共振型のフィルタとして利用できる。すなわち、図4の等価回路中に示すように、第2のコンデンサ15はキャパシタ15aとインダクタ15bとを直列に接続したのと等価な電気的特性を有している。従って、キャパシタ15aとインダクタ15bの特性により定まる周波数で共振し、共振点近傍の周波数においてインピーダンスが非常に小さくなる。これにより、共振点近傍の周波数帯において、電磁ノイズを減衰させることができる。
【0053】
図3、図4に示す構成例では、ラジオのFM放送の周波数帯とアナログテレビ放送の下位バンドとを含む範囲(76MHz〜108MHz)の周波数帯で電磁ノイズを減衰させるために、第2のコンデンサ15として、220pFの静電容量を有する部品を利用している。尚、ラジオのFM放送の周波数帯とアナログテレビ放送の下位バンドとを含む周波数帯での電磁ノイズを減衰させるにあたって、第2のコンデンサ15のリードの長さによっても静電容量を調整することができることから、第2のコンデンサ15の静電容量は、220pFに限られるものではない。第2接続点P2から第2のコンデンサ15を経由しアース電極16に至る区間において、所定の周波数帯での電磁ノイズを減衰させられればよい。
【0054】
図3に示すリング型フェライトコア20の影響については、図4に示すように、抵抗成分20Rと、インダクタンス成分20Lと、キャパシタンス成分20Cとを含む並列共振回路と等価な回路として扱うことができる。
【0055】
電気線路の周囲をリング状の磁性体で覆う時には、電磁誘導作用でインダクタンスが大きくなる。このインダクタンスに応じたリアクタンスは周波数が高くなるにつれて大きくなり、更にインピーダンスも大きくなる。インピーダンスZは次式で表される。
Z=R+jXL ・・・(3)
XL=2πfL ・・・(4)
但し、R:抵抗,f:周波数,XL:リアクタンス,L:インダクタンス
【0056】
また、コアのインピーダンス「|Z1|」と材質のインピーダンス「|Z2|」との間には次式の関係がある。
|Z1|=(Ae/Le)N2・|Z2| ・・・(5)
Ae:コアの平均断面長,Le:コアの平均磁路長,N:巻数
【0057】
すなわち、リング型フェライトコア20の実質的なインピーダンスについては、リング状のコアの外形寸法と内径寸法との比率が大きくなるほど、並びに長さが長くなるほど大きくなる傾向がある。
【0058】
本実施形態で用いたリング型フェライトコア20の影響に関する電気的特性のインピーダンスZと、Zに含まれる抵抗成分Rおよびリアクタンス成分XL(XC)の周波数特性が図14に示されている。図14において、リアクタンス成分が正の領域ではインダクタンス成分20Lの影響がキャパシタンス成分20Cよりも大きく(誘導性リアクタンスXLとして機能する。)、リアクタンス成分が負の領域ではインダクタンス成分20Lの影響がキャパシタンス成分20Cよりも小さい(容量性リアクタンスXCとして機能する。)。また、リアクタンス成分が0になる周波数f0が共振点であり、共振点のインピーダンスZは抵抗成分20Rの影響だけを含む。また、リアクタンス成分XLと抵抗成分Rの大きさが一致するクロスポイントの周波数fcは、リング型フェライトコア20の磁性材料としての固有の特性を表している。なお、クロスポイントの周波数fcは、「実数部透磁率μ’」の影響と「磁性損失項μ”」の影響とが一致するクロスポイントの周波数とほぼ一致する。
【0059】
本実施形態では、クロスポイントの周波数fcよりも高く、共振点の周波数f0よりも低い周波数の範囲内で特にリング型フェライトコア20の特性を利用している。つまり、リング型フェライトコア20の影響によるインピーダンスZに関しては、前記第(3)式で示すように、抵抗成分20Rとインダクタンス成分20Lによるリアクタンス成分との影響を受ける。また、EMIノイズの抑制に効果があるのは抵抗成分20Rであると言える。
【0060】
上述のように負荷と電源とを接続する電源ライン上の一区間にノイズフィルタ10Bを挿入した状態で、電源から負荷に電力を供給し負荷を駆動する。このように、電源、負荷、線状導電体13、第1のコンデンサ14、第2のコンデンサ15、アース電極16、リング型フェライトコア20を含む回路によって駆動回路を構成する。
【0061】
(第3実施形態)
ところで、例えばリアデフォッガーの電源ラインにノイズフィルタを挿入しようとする場合には、この負荷(熱線)に非常に大きな電流が流れるので太い電線(例えば断面積が3mm2の電線)を用いる必要がある。このような太い電線でフィルタ用のコイルを形成するのは難しい。また、第2実施形態のノイズフィルタ10Bのようにリング型フェライトコア20によってインダクタンス成分を形成する構成であっても、そのリング型フェライトコア20の大きさの分、ノイズフィルタ10Bの大型化が避けられない。そこで、第3実施形態のノイズフィルタ10Cでは、リング型フェライトコア20の貫通孔20aに電線を通すだけで実質的にインダクタンス成分を含む回路素子を電源ラインの途中に挿入できる点に着目し、ノイズフィルタ10Cの構成にリング型フェライトコア20を含めない形態について説明する。第3実施形態のノイズフィルタ10Cの構成(結線図)が図6に示されている。なお、図6において第2実施形態と対応する構成要素は同一の符号を付けて示してある。
【0062】
図6に示すノイズフィルタ10Cは、線状導電体13、第1のコンデンサ14、および第2のコンデンサ15を備えている。
【0063】
図6に示すように、電源ラインの上流側端子11と下流側端子12との間は、線状導電体13、すなわち電線を介して電気的に接続されている。この線状導電体13の周囲を囲むようにリング型フェライトコア20Bが配置されている。線状導電体13にリング型フェライトコア20Bを組み付けるにあたっては、例えば、線状導電体13を、線状導電体13、第1のコンデンサ14、および第2のコンデンサ15を内部に収容するノイズフィルタ10Cのケースから一部露出させておき、この露出した一部に対して2つの半割体に分割されたリング型フェライトコア20Bを、リング型フェライトコア20Bの貫通孔20aに線状導電体13を通すようにして組み付ける、ことが考えられる。
【0064】
このリング型フェライトコア20Bは図5に示すようにリング状に形成されており、その中央部に形成された貫通孔20aを線状導電体13が貫通するように構成されている。なお、図6においてリング型フェライトコア20Bはその断面が示されている。
【0065】
図6に示すようにノイズフィルタ10Cの場合には、作業性を良くするために、予め複数の部位に分割された材料を組み合わせて図5のような形状のリング型フェライトコア20Bを構成することが好ましい。但し、その場合には分割された部材同士の接合面の面精度を高めて透磁率μの劣化を防止しないと電磁ノイズの抑制能力も低下してしまう。
【0066】
図6に示すように、第1のコンデンサ14は、一端が線状導電体13上の第1接続点P1に接続され、他端が車上電源のアース電極16と接続されている。第2のコンデンサ15は、一端が線状導電体13上の第2接続点P2に接続され、他端が車上電源のアース電極16と接続されている。このとき、第1のコンデンサ14、および第2のコンデンサ15は、別々のアース電極に接続するようにしてもよい。
【0067】
第1接続点P1と第2接続点P2との間は十分な距離Lxが確保されるように間隔をあけてある。距離Lxの具体例としては、55mmや、110mmが想定される。第1接続点P1と第2接続点P2との間に十分な間隔をあけることにより、この間にリング型フェライトコア20Bを配置するための空間を確保できる。
【0068】
第1のコンデンサ14は、自己共振型のフィルタとして利用できる。すなわち、図4の等価回路中に示すように(第2実施形態と第3実施形態において等価回路は共通。)、第1のコンデンサ14はキャパシタ14aとインダクタ14bとを直列に接続したのと等価な電気的特性を有している。従って、キャパシタ14aとインダクタ14bの特性により定まる周波数で共振し、共振点近傍の周波数においてインピーダンスが非常に小さくなる。これにより、共振点近傍の周波数帯において、電磁ノイズを減衰させることができる。
【0069】
図6に示す構成例では、ラジオの中波放送の周波数帯(520kHz〜1650kHz)で電磁ノイズを減衰させるために、第1のコンデンサ14として2.0μFの静電容量を有する部品を利用している。尚、ラジオの中波放送の周波数帯での電磁ノイズを減衰させるにあたって、第1のコンデンサ14のリードの長さによっても静電容量を調整することができることから、第1のコンデンサ14の静電容量は、2.0μFに限られるものではない。第1接続点P1から第1のコンデンサ14を経由しアース電極16に至る区間において、所定の周波数帯での電磁ノイズを減衰させられればよい。
【0070】
また第2のコンデンサ15も、自己共振型のフィルタとして利用できる。すなわち、図4の等価回路中に示すように、第2のコンデンサ15はキャパシタ15aと第2のコンデンサ15bとを直列に接続したのと等価な電気的特性を有している。従って、キャパシタ15aとインダクタ15bの特性により定まる周波数で共振し、共振点近傍の周波数においてインピーダンスが非常に小さくなる。これにより、共振点近傍の周波数帯において、電磁ノイズを減衰させることができる。
【0071】
図6に示す構成例では、ラジオのFM放送の周波数帯とアナログテレビ放送の下位バンドとを含む範囲(76MHz〜108MHz)の周波数帯で電磁ノイズを減衰させるために、第2のコンデンサ15として、220pFの静電容量を有する部品を利用している。尚、ラジオのFM放送の周波数帯とアナログテレビ放送の下位バンドとを含む周波数帯での電磁ノイズを減衰させるにあたって、第2のコンデンサ15のリードの長さによっても静電容量を調整することができることから、第2のコンデンサ15の静電容量は、220pFに限られるものではない。第2接続点P2から第2のコンデンサ15を経由しアース電極16に至る区間において、所定の周波数帯での電磁ノイズを減衰させられればよい。
【0072】
図6に示すリング型フェライトコア20Bの影響については、図4に示すように、抵抗成分20Rと、インダクタンス成分20Lと、キャパシタンス成分20Cとを含む並列共振回路と等価な回路として扱うことができる。
【0073】
以上、本実施形態のノイズフィルタ10Cによれば、その構成にリング型フェライトコア20Bを含ませない分、ノイズフィルタ10Cの小型化を実現することができる。
【0074】
次に、前述のノイズフィルタ10、10Bの具体的な特性について説明する。尚、ノイズフィルタ10Cの特性は、ノイズフィルタ10Bと同様であるため説明を省略する。
4種類のノイズフィルタのそれぞれの減衰量に関する周波数特性が図7に示されている。図7に示す特性カーブCV1およびCV2は、それぞれ図8および図10に示したノイズフィルタの特性を表している。また、図7に示す特性カーブCV3およびCV4は、それぞれノイズフィルタ10および10Bの特性を表している。図8に示したノイズフィルタは単一の自己共振型コンデンサで構成してある。また、図10に示したノイズフィルタは、単一の自己共振型コンデンサとこれよりも負荷側の電源ラインを囲むように配置したフェライトコアFCとで構成してある。
【0075】
また、ノイズフィルタ10単独の減衰量に関する周波数特性が図12に示されている。また、ノイズフィルタ10B単独の減衰量に関する周波数特性が図13に示されている。
【0076】
なお、図7、図12、図13に示した各ノイズフィルタの特性に関しては、図11に示した構成の測定回路を用いて測定した結果を表している。図11の測定回路においては、各ノイズフィルタに相当する試料回路の入力側に50Ωの入力抵抗と疑似ノイズ源とを接続し、出力側に負荷に相当する50Ωの抵抗を接続して終端してある。つまり、各ノイズフィルタの入力側と出力側との間でノイズのレベルがどれだけ減衰するのかを周波数毎に測定している。
【0077】
図7に示すように、従来のノイズフィルタの特性カーブCV1では、ラジオの中波放送の周波数帯(520kHz〜1650kHz)に相当する比較的低い周波数帯では十分に大きい減衰量が得られているが、FM放送やアナログテレビ放送の低域周波数帯に相当する高域の周波数帯(76MHz〜108MHz)では10dB程度の減衰量しか得られない。また、フェライトコアFCを用いたノイズフィルタの特性カーブCV2では、高域の周波数帯(76MHz〜108MHz)における減衰量が20dB程度に増大しているがこの程度では不十分である。
【0078】
一方、図7に示すノイズフィルタ10の特性カーブCV3では、低域の周波数帯以外に、100MHz近傍の周波数に共振点があり、この共振点の近傍で大きな減衰量が得られている。従って、FM放送やアナログテレビ放送の低域周波数帯に影響を及ぼす高域の周波数帯(76MHz〜108MHz)で電磁ノイズをかなり抑制することができる。
【0079】
但し、図7に示すノイズフィルタ10の特性カーブCV3では、40MHzの近傍に反共振点が現れているため、この影響を受けて80MHz以下の周波数帯では減衰量が25dB以下にとどまっている。一方、図7に示すノイズフィルタ10Bの特性カーブCV4では、CV3における反共振点の発生が解消されており、広い周波数範囲に渡って、特にFM放送やアナログテレビ放送の低域周波数帯に影響を及ぼす高域の周波数帯(76MHz〜108MHz)で大きな減衰量が得られている。
【0080】
一方、ノイズフィルタ10の特性を表す図12の特性カーブCV3と、ノイズフィルタ10Bの特性を表す図13の特性カーブCV4とを対比すると次のような違いが分かる。すなわち、特性カーブCV3に現れる反共振点(40MHz近傍の減衰量の急激な減少)の影響が特性カーブCV4ではほぼ解消されている。従って、ラジオの中波放送の周波数帯(520kHz〜1650kHz)だけでなく、FM放送やアナログテレビ放送の低域周波数帯に影響を及ぼす高域の周波数帯(76MHz〜108MHz)の全体についても、電磁ノイズを十分に減衰させることができる。
【0081】
なお、ノイズフィルタ10、10B、10Cを構成する第1のコンデンサ14の静電容量や、第2のコンデンサ15の静電容量や、距離Lxなどの具体的な数値については、必要とされるフィルタの減衰量−周波数特性に合わせて適宜変更できる。
【0082】
以上のように、本発明の車載機器用高周波ノイズフィルタは、車両上で電磁ノイズを輻射するリアデフォッガーやハイマウントストップランプなどの機器の電源ラインに挿入して使用することが想定される。本発明の実施により、ラジオの中波放送の周波数帯(520kHz〜1650kHz)だけでなく、FM放送やアナログテレビ放送の低域周波数帯に影響を及ぼす高域の周波数帯(76MHz〜108MHz)の全体についても、電磁ノイズを十分に減衰させることができるので、ハイブリッドカーなどに搭載して使用することが想定される。
【符号の説明】
【0083】
10,10B,10C ノイズフィルタ
11 上流側端子
12 下流側端子
13 線状導電体
14 第1のコンデンサ
15 第2のコンデンサ
14a,15a キャパシタ
14b,15b インダクタ
16 アース電極
20,20B リング型フェライトコア
20a 貫通孔
P1 第1接続点
P2 第2接続点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の静電容量と自己インダクタンスを等価的に含む自己共振型のコンデンサを備える車載機器用高周波ノイズフィルタであって、
電源と負荷の間の一区間に位置し、前記電源と前記負荷とを電気的に接続する電気導体と、
前記自己共振型のコンデンサで構成され、一端が前記電気導体上の第1接続点と電気的に接続され、他端が接地可能な第1のコンデンサと、
前記第1のコンデンサとは静電容量が異なる自己共振型のコンデンサで構成され、一端が前記電気導体上の第2接続点と電気的に接続され、他端が接地可能な第2のコンデンサと
を備えることを特徴とする車載機器用高周波ノイズフィルタ。
【請求項2】
前記電気導体上の前記第1接続点から第2接続点までの範囲内に対向する位置に配置され、磁性損失を発生する機能を有する磁性材料を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の車載機器用高周波ノイズフィルタ。
【請求項3】
前記磁性材料としてフェライトコアを用いたことを特徴とする請求項2に記載の車載機器用高周波ノイズフィルタ。
【請求項4】
前記フェライトコアはリング状に形成され、前記電気導体は前記フェライトコアのリングの中央部を貫通するように配置されたことを特徴とする請求項3に記載の車載機器用高周波ノイズフィルタ。
【請求項5】
前記電気導体の前記第1接続点から第2接続点までの範囲には、リング状に形成されたフェライトコアを、その中央部が該電気導体によって貫通されるように配置可能であることを特徴とする請求項1に記載の車載機器用高周波ノイズフィルタ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の車載機器用高周波ノイズフィルタを備えるワイヤハーネスであって、
前記電気導体は、該ワイヤハーネスを構成する電線のうちの一部の電線の芯線によって構成され、
前記芯線は、該芯線上の第1接続点にて前記第1のコンデンサの一端に電気的に接続され、該芯線上の第2接続点にて前記第2のコンデンサの一端に電気的に接続される、
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項7】
所定の静電容量と自己インダクタンスを等価的に含む自己共振型のコンデンサを備えるノイズフィルタを回路構成に含む駆動回路であって、
電源と、
負荷と、
前記電源と前記負荷とを電気的に接続する電気導体と、
前記自己共振型のコンデンサで構成され、一端が前記電気導体上の第1接続点と電気的に接続される第1のコンデンサと、
前記第1のコンデンサとは静電容量が異なる自己共振型のコンデンサで構成され、一端が前記電気導体上の第2接続点と電気的に接続される第2のコンデンサと、
前記第1のコンデンサの他端に接続される第1のグランドと、
前記第2のコンデンサの他端に接続される第2のグランドと、
を備えることを特徴とするノイズフィルタ回路。
【請求項1】
所定の静電容量と自己インダクタンスを等価的に含む自己共振型のコンデンサを備える車載機器用高周波ノイズフィルタであって、
電源と負荷の間の一区間に位置し、前記電源と前記負荷とを電気的に接続する電気導体と、
前記自己共振型のコンデンサで構成され、一端が前記電気導体上の第1接続点と電気的に接続され、他端が接地可能な第1のコンデンサと、
前記第1のコンデンサとは静電容量が異なる自己共振型のコンデンサで構成され、一端が前記電気導体上の第2接続点と電気的に接続され、他端が接地可能な第2のコンデンサと
を備えることを特徴とする車載機器用高周波ノイズフィルタ。
【請求項2】
前記電気導体上の前記第1接続点から第2接続点までの範囲内に対向する位置に配置され、磁性損失を発生する機能を有する磁性材料を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の車載機器用高周波ノイズフィルタ。
【請求項3】
前記磁性材料としてフェライトコアを用いたことを特徴とする請求項2に記載の車載機器用高周波ノイズフィルタ。
【請求項4】
前記フェライトコアはリング状に形成され、前記電気導体は前記フェライトコアのリングの中央部を貫通するように配置されたことを特徴とする請求項3に記載の車載機器用高周波ノイズフィルタ。
【請求項5】
前記電気導体の前記第1接続点から第2接続点までの範囲には、リング状に形成されたフェライトコアを、その中央部が該電気導体によって貫通されるように配置可能であることを特徴とする請求項1に記載の車載機器用高周波ノイズフィルタ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の車載機器用高周波ノイズフィルタを備えるワイヤハーネスであって、
前記電気導体は、該ワイヤハーネスを構成する電線のうちの一部の電線の芯線によって構成され、
前記芯線は、該芯線上の第1接続点にて前記第1のコンデンサの一端に電気的に接続され、該芯線上の第2接続点にて前記第2のコンデンサの一端に電気的に接続される、
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項7】
所定の静電容量と自己インダクタンスを等価的に含む自己共振型のコンデンサを備えるノイズフィルタを回路構成に含む駆動回路であって、
電源と、
負荷と、
前記電源と前記負荷とを電気的に接続する電気導体と、
前記自己共振型のコンデンサで構成され、一端が前記電気導体上の第1接続点と電気的に接続される第1のコンデンサと、
前記第1のコンデンサとは静電容量が異なる自己共振型のコンデンサで構成され、一端が前記電気導体上の第2接続点と電気的に接続される第2のコンデンサと、
前記第1のコンデンサの他端に接続される第1のグランドと、
前記第2のコンデンサの他端に接続される第2のグランドと、
を備えることを特徴とするノイズフィルタ回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−129631(P2012−129631A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277266(P2010−277266)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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