説明

車載用スピーカ装置

【課題】複合スピーカのアクチュエータ部から発生する振動を内装材に効率的に伝達することができる車載用スピーカ装置を提供する。
【解決手段】本装置は、車両の内装材(天井基材20)に取り付けられる車載用スピーカ装置11であって、中高音域の音を出力するための中高音域用スピーカ部12と低音域の音を出力するための平板状のアクチュエータ部13とを有する複合スピーカ14と、アクチュエータ部と内装材との間に配置されてアクチュエータ部の振動を内装材に伝達する伝達部材15と、を備え、複合スピーカは、中高音域用スピーカ部が車室内側に配置され、且つアクチュエータ部が車室外側に配置されていることを特徴とする。また、アクチュエータ部は、内装材の車室外側に配置されており、伝達部材は、内装材の車室外側であって、且つ内装材とアクチュエータ部との間に配置されていることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用スピーカ装置に関し、更に詳しくは、複合スピーカのアクチュエータ部から発生する振動を内装材に効率的に伝達することができる車載用スピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車載用スピーカ装置として、天井等の車両の内装材にスピーカを取り付けてなるものが一般に知られている(例えば、特許文献1参照)。
上記特許文献1には、中高音域の音と低音域の音とを出力可能な複合スピーカを用いた車載用音響装置が開示されている。この車載用音響装置では、複合スピーカから発生する低音域の音を天井に伝搬させ、天井を振動させることにより低音の音声を再生するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−166515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の内装材(例えば、天井基材、ドアトリム等)を振動板として利用して低音域の音を出力する場合には、スピーカから発生する振動を内装材に効率的に伝える必要がある。しかしながら、上記特許文献1には、複合スピーカから発生する振動を天井に効率的に伝えるための具体的な構成は提案されていない。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、複合スピーカのアクチュエータ部から発生する振動を内装材に効率的に伝達することができる車載用スピーカ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両の内装材に取り付けられる車載用スピーカ装置であって、中高音域の音を出力するための中高音域用スピーカ部と低音域の音を出力するための平板状のアクチュエータ部とを有する複合スピーカと、前記アクチュエータ部と前記内装材との間に配置されて前記アクチュエータ部の振動を前記内装材に伝達する伝達部材と、を備え、前記複合スピーカは、前記中高音域用スピーカ部が車室内側に配置され、且つ前記アクチュエータ部が車室外側に配置されていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記内装材の車室内側の表面側に配置されるスピーカグリルを更に備え、前記内装材及び前記伝達部材は、前記アクチュエータ部と前記スピーカグリルとの間に配置されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記内装材の車室内側の表面側に配置されるスピーカグリルを更に備え、前記内装材及び前記伝達部材は、前記アクチュエータ部と前記スピーカグリルとの間に配置されていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記内装材及び前記伝達部材は、前記アクチュエータ部と前記スピーカグリルとが直接連結されていることにより前記アクチュエータ部と前記スピーカグリルとの間に挟持されていることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4において、前記スピーカグリルは前記内装材に押圧された状態となっていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車載用スピーカ装置によると、中高音域の音を出力するための中高音域用スピーカ部と低音域の音を出力するための平板状のアクチュエータ部とを有する複合スピーカと、アクチュエータ部と内装材との間に配置されてアクチュエータ部の振動を内装材に伝達する伝達部材と、を備えている。そして、複合スピーカは、中高音域用スピーカが車室内側に配置され、且つアクチュエータ部が車室外側に配置されている。これにより、中高音域の音は中高音域用スピーカ部から車室内へ直接出力することができるとともに、低音域の音は、アクチュエータ部から発生する振動を内装材に伝達させることにより、内装材を介して間接的に車室内へ出力することができる。また、アクチュエータ部の振動を内装材に伝達する伝達部材を備えているので、複合スピーカのアクチュエータ部の振動を内装材に効率的に伝達することができる。
また、前記アクチュエータ部は、前記内装材の車室外側に配置されており、前記伝達部材は、前記内装材の車室外側であって、且つ前記内装材と前記アクチュエータ部との間に配置されている場合は、複合スピーカの車室内側への突出量を小さくすることができ、内装材の車室内側(意匠面側)の意匠性を向上させることができる。
更に、前記内装材の車室内側の表面側に配置されるスピーカグリルを更に備え、前記内装材及び前記伝達部材は、前記アクチュエータ部と前記スピーカグリルとの間に配置されている場合は、スピーカグリルにより複合スピーカを保護することができるとともに、内装材の車室内側の意匠性を向上させることができる。
また、前記内装材及び前記伝達部材は、前記アクチュエータ部と前記スピーカグリルとが直接連結されていることにより前記アクチュエータ部と前記スピーカグリルとの間に挟持されている場合は、スピーカ装置を取り付けるためのブラケット等を別に設ける場合と比較して、部品点数の少ない車載用スピーカ装置を実現できる。
更に、前記スピーカグリルは前記内装材に押圧された状態となっている場合は、より効率的に複合スピーカのアクチュエータ部の振動を内装材に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】車載用スピーカを備える車両の模式図である。
【図2】実施例に係る車載用スピーカ装置の斜視図である。
【図3】実施例に係る車載用スピーカ装置の分解斜視図である。
【図4】図2のI−I線断面図である。
【図5】図2のII−II線断面図である。
【図6】実施例に係る複合スピーカの端面図である。
【図7】上記複合スピーカの分解斜視図である。
【図8】上記複合スピーカの縦断面図である。
【図9】図8の振動板を取り外した状態でのVII矢視図である。
【図10】他の実施形態に係る内装材の斜視図である。
【図11】他の実施形態に係る車載用スピーカ装置の平面図である。
【図12】図11のIII−III線断面図である。
【図13】他の実施形態に係る内装材の斜視図である。
【図14】他の実施形態に係る車載用スピーカ装置の平面図である。
【図15】図14のIV−IV線断面図である。
【図16】図14のV−V線断面図である。
【図17】他の実施形態に係る伝達部材の斜視図である。
【図18】他の実施形態に係る伝達部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0010】
1.車載用スピーカ装置
本実施形態1.に係る車載用スピーカ装置は、車両の内装材に取り付けられる車載用スピーカ装置であって、以下に述べる複合スピーカと伝達部材とを備えている(例えば、図4等参照)。
【0011】
上記「複合スピーカ」は、中高音域の音を出力するための中高音域用スピーカ部(スピーカ部)と低音域の音を出力するための平板状のアクチュエータ部とを有する限り、その構成、大きさ等は特に問わない。上記複合スピーカの配置形態としては、例えば、スピーカ部が車室内側を向くように位置するとともに、アクチュエータ部が車室外側を向くように位置する向きで配置される形態であることができる(例えば、図4、5等参照)。これにより、スピーカ部から発生する中高音を効果的に車室内に出力することができる。
【0012】
上記「伝達部材」は、上記アクチュエータ部と上記内装材との間に配置されてアクチュエータ部の振動を内装材に伝達する限り、その形状、大きさ、材質、個数等は特に問わない。この伝達部材の平面形状としては、例えば、略矩形状(例えば、図3、10、13等参照)、略U字形状(例えば、図17等参照)、長尺棒状(例えば、図18等参照)等を挙げることができる。この伝達部材には、例えば、上記スピーカ部が貫通する貫通孔が形成されていることができる(例えば、図3、4等参照)。
【0013】
本実施形態1.の車載用スピーカ装置は、例えば、上記内装材の車室内側の表面側に配置されるスピーカグリルを更に備え、上記内装材及び上記伝達部材は、上記アクチュエータ部と上記スピーカグリルとの間に配置されていることができる(例えば、図4、5等参照)。
【0014】
ここで、上記車載用スピーカ装置としては、例えば、上記内装材及び上記伝達部材は、上記アクチュエータ部と上記スピーカグリルとが直接連結されていることによりアクチュエータ部とスピーカグリルとの間に挟持されている形態であることができる(例えば、図4、5等参照)。上記アクチュエータ部と上記スピーカ部との連結は、例えば、ネジ止め(例えば、図4、15等参照)、ビス止め、弾性フック、接着等を用いた連結であることができる。また、上記アクチュエータ部と上記スピーカ部との連結は、これらのうちの2種以上の組合せであってもよい。
【0015】
アクチュエータ部とスピーカグリルとが直接連結されている形態としては、例えば、スピーカグリルの車室外側の面から車室外側に延びる複数のボスが設けられており、このボスとアクチュエータ部とが連結されている形態を挙げることができる(例えば、図4、15等参照)。この場合、上記内装材及び上記伝達部材には、ボスが貫通する貫通孔が形成されていることができる(例えば、図3、4等参照)。このボスの形状としては、例えば、略円柱状(例えば、図3等参照)、略矩形柱状等であることができる。
【0016】
ここで、例えば、上記内装材には、内装材によって仕切られる車室内側の空間と車室外側の空間とを連通する連通孔が形成されていることができる(例えば、図3、10、13等参照)。この場合、上記複合スピーカの配置形態としては、例えば、(1)上記スピーカ部の少なくとも一部がこの連通孔内の空間に位置するように配置されている形態(例えば、図4、5等参照)、(2)上記スピーカ部が、連通孔を平面投影した時に、その投影範囲に収まる位置に配置されている形態等を挙げることができる。これらの配置形態において、上記複合スピーカは、上記スピーカ部の車室内側の端面が内装材の車室内側の端面(意匠面)よりも車室外側に位置するように配置されている形態であることが好ましい。複合スピーカを内装材の車室内側の端面から車室内側に突出させずに配置でき、内装材の車室内側(意匠面側)の意匠性を向上させることができるからである。なお、この連通孔と上述のボスが貫通する貫通孔とは共通の孔であってもよいし、それぞれ別々に形成された孔であってもよい。
【0017】
ここで、例えば、上記スピーカグリルは上記内装材に押圧された状態となっていることができる(例えば、図4、5等参照)。スピーカグリルが内装材に押圧された状態となる形態としては、例えば、スピーカグリルを固定するための固定手段を利用して押圧する形態を挙げることができる。特に、アクチュエータ部とスピーカグリルとを直接連結する場合には、この連結により、アクチュエータ部とスピーカグリルとの間に介在する内装材及び伝達部材を挟み込むことにより押圧する形態(共締め)であることができる。
【0018】
本実施形態1.の車載用スピーカ装置としては、例えば、上記複合スピーカは、スピーカ部が上記内装材の上記連通孔内の空間に配置されているとともに、上記スピーカグリルの上記ボスが上記連通孔を貫通して上記アクチュエータ部に直接連結されていることができる(例えば、図4等参照)。この場合、上記連通孔の平面形状は特に問わないが、例えば、(1)略矩形状(例えば、図3等参照)、(2)スピーカ部の平面形状に対応した略矩形状であるとともに、各ボスを貫通させるためにその内壁が平面方向外側に陥没した凹状部が形成されている形状(例えば、図13等参照)等であることができる。上記(2)の場合、上記(1)と比較して連通孔の内壁をスピーカ部に近づけて設けることができる。これにより、スピーカ部の側方周辺の空間を埋めることができる。また、上記(1)と比較して、内装材と伝達部材との接触面積をより大きくすることができる。
【0019】
更に、本実施形態1.の車載用スピーカ装置としては、例えば、上記複合スピーカは、スピーカ部が上記内装材の上記連通孔内の空間に配置されているとともに、上記スピーカグリルの上記ボスが上記連通孔の周囲に形成された貫通孔を貫通して上記アクチュエータ部に直接連結されていることができる(例えば、図13、15等参照)。この場合、スピーカ部の側方周辺の空間をより小さくできるとともに、内装材と伝達部材との接触面積をより大きくすることができる。
【0020】
本実施形態1.の車載用スピーカ装置としては、例えば、上記複合スピーカは、隣り合う2つの磁極が互いに反対になるように一列に配設された一群の磁石と、一群の磁石の一方の磁極に相対するように配設された平板状の振動板と、磁石の配列方向に沿って配列されているとともに、振動板の磁極に相対する側の面に、隣り合う磁石間ならびに磁石とヨークとの間に生じる磁束と鎖交するように形成された複数のボイスコイルと、磁石における一対の磁極の他方に当接するとともに、磁石の配列方向に沿った1対の側縁部が振動板に向かう方向に屈曲されたヨークと、振動板の周縁部において振動板を支持するとともに、磁石およびヨークを収容するフレームと、フレームが固定されるアクチュエータ部と、アクチュエータ部とヨークとの問に設けられた弾性部材と、を備え、上記スピーカ部は、上記一群の磁石、振動板及びボイスコイルにより構成される形態(例えば、図6等参照)を挙げることができる。
【0021】
上記複合スピーカによると、磁石は、ヨーク及び弾性部材を介してアクチュエータ部に取り付けられているから、電気信号を入力することによってボイスコイルに生じる変動磁界と磁石の磁界との相互作用によって振動板と磁石とが振動し、これによって電気信号が音に変換される。ここで、磁石で生じた振動のうち、高周波数のものは弾性部材によって吸収されるが、低周波数のものは弾性部材を介してアクチュエータ部に伝達される。また振動板に生じた振動においても低周波数のものはフレームを介してアクチュエータ部に伝達される。これによって、中高音域の音は、スピーカ部を構成する振動板から前方に向かって出力され、低音域の音は、アクチュエータ部を介して出力される。
【0022】
上記弾性部材は、例えば、熱可塑性エラストマ、加硫ゴム、および軟質樹脂から選択される弾性材料を成形した弾性材料成形体、弾性材料を発泡させた弾性材料発泡体、並びに板バネから選択されることができる。これにより、磁石に生じた振動のうち、高周波数のものは、特に効果的に弾性部材によって吸収され、低周波数のものは、弾性部材によって効率良くアクチュエータ部に伝達される。
【0023】
上記振動板及び上記フレームのそれぞれは、例えば、アルミニウム合金から形成されていることができる。これにより、ボイスコイルに音信号を入力して生じた熱は、ボイスコイルから振動板へ、振動板からフレームへと伝達されて放散される。
【0024】
上記ボイスコイルとしては、例えば、(1)磁石毎に形成されている形態、(2)磁石2個毎に形成されている形態等を挙げることができる。上記(1)形態によると、高音域の音質に優れる。また、上記(2)形態によると、簡易且つ安価なものとすることができる。
【0025】
本実施形態1.の車載用スピーカ装置としては、例えば、上記アクチュエータ部は、スピーカ部を構成する平板状の振動板に対して対向するように並設される平板部を有し、且つ、アクチュエータ部の一面が伝達部材の平面部に接触するように振動板に取り付けられていることができる。これにより、複合スピーカのアクチュエータ部の振動を伝達部材に更に効率的に伝達することができる。
【実施例】
【0026】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「車載用スピーカ装置」として、図1に示すように、車両のルーフパネル9の車室内側に対向して配置される天井基材20(本発明に係る「内装材」として例示する。)に取り付けられる車載用スピーカ装置を例示する。
【0027】
(1)車載用スピーカ装置の構成
本実施例に係る車載用スピーカ装置11は、図2〜図5に示すように、中高音域の音を出力するための中高音域用スピーカ部12(以下、単にスピーカ部12という)及び低音域の音を出力するためのアクチュエータ部13を有する複合スピーカ14と、アクチュエータ部13と天井基材20との間に配置されてアクチュエータ部13の振動を天井基材20に伝達する樹脂製の伝達部材15と、天井基材20の車室内側R1の表面側に配置されるスピーカグリル16と、を備えている。
【0028】
図2及び図3に示すように、複合スピーカ14は、スピーカ部12が車室内側R1に位置し、アクチュエータ部13が車室外側R2位置する向きで、天井基材20の車室外側R2の表面側に配置される。複合スピーカ14のアクチュエータ部13は、その一面が伝達部材15の一面に接触している。また、図3に示すように、アクチュエータ部13は略矩形平板状であり、その長辺方向に沿って複数の貫通孔13Aが形成されている。
【0029】
図3に示すように、天井基材20には平面形状が略矩形状の連通孔20Aが形成されている。本実施例において、スピーカ部12は、図4及び図5に示すように、この連通孔20A内に配置される。即ち、複合スピーカ14は、伝達部材15を介して天井基材20に取り付けた状態において、スピーカ部12が、天井基材20に形成された連通孔20A内に位置するようになっている。なお、本実施例では、天井基材20として、樹脂シート、樹脂発泡体、又は繊維材、及びそれらの複合体を用いてなり、その車室内側の表面側に表皮材18が積層されてなるものを採用するものとする。
【0030】
伝達部材15は、図2及び図3に示すように、平面形状が略矩形状となっている。この伝達部材15は、アクチュエータ部13に接触している一面に対向する側の面において、天井基材20の車室外側R2の表面に接触している。これにより、伝達部材15は、アクチュエータ部13の振動を天井基材20に伝達可能となっている。また、図3に示すように、伝達部材15には平面形状が略矩形状の貫通孔15Aが形成されており、貫通孔15Aの周囲には貫通孔15Bが形成されている。貫通孔15A内の空間には、複合スピーカ14のスピーカ部12が配置される。貫通孔15Bには、後述するスピーカグリル16のボスが貫通する。
【0031】
スピーカグリル16は、図2及び図3に示すように、天井基材20に形成された連通孔20Aを覆うように、天井基材20の車室内側R1の表面側に取り付けられる。図3に示すように、スピーカグリル16には、その天井基材20の表面側に対応する面側に、複数のボス16Aが設けられている。ボス16Aは、スピーカグリル16を天井基材20に取り付けた状態において、連通孔20Aと、伝達部材15に形成された貫通孔15Aと、を貫通して、その端部が複合スピーカ14のアクチュエータ部13に接触するようになっている。
【0032】
また、ボス16Aの内面には雌ねじが形成されており、アクチュエータ部13に形成された貫通孔13Aから挿通されるネジ17と螺合している。これにより、アクチュエータ部13とスピーカグリル16とが直接連結され、それらの間に天井基材20と伝達部材15とが挟持される共締め構造となっている。また、本実施例では、ネジ17によりアクチュエータ部13とスピーカグリル16とを直接連結して天井基材20と伝達部材15とを共締めすることにより、スピーカグリル16が天井基材20側に押圧された状態となっている。
【0033】
上記複合スピーカ14は、図6〜図9に示すように、長辺が後述する磁石2の配列方向に沿った長方形の平面形状を有するシート状の振動板1と、磁極2S、2Nが振動板1の一方の面に相対するとともに、隣り合う2つの磁極2S、2Nが互いに反対となるように、一列に配設された一群の磁石2と、磁石2の配列方向に沿って配列されているとともに、S極の磁極2Sが振動板1側を向いている磁石2に相対向するように、換言すれば1個おきの磁石2に相対向するように、振動板1の磁極2Sに相対する側の面に設けられたボイスコイル3と、磁石2における振動板1に相対向していない側の磁極2N(2S)に当接するように配設されたヨーク4と、振動板1の周縁部において振動板1を支持するとともに、磁石2およびヨーク4を収容するフレーム5と、フレーム5が固定される平板状のアクチュエータ部13とを有する。このヨーク4とアクチュエータ部13との問には、弾性部材7が介装されている。なお、本実施例では、上記スピーカ部12は、上記磁石2、振動板1、ボイスコイル3等によって構成されている。
【0034】
上記磁石2のうち、磁極2Sが振動板1に相対向しているもの、換言すればボイスコイル3に相対向しているものについては、ヨーク4との間に鉄板8が挿入されて嵩上げされている。
【0035】
上記ヨーク4は、強磁性体から形成されているとともに、両側縁4Aが振動板1に向かって屈曲し、磁石2を収容する樋状の形態を有する。また、ヨーク4および磁石2とボイスコイル3との問には、磁石2および振動板1が振動したときに磁石2の磁極2S(2N)がボイスコイル3に直接当たらないように、不織布10が挿入されている。
【0036】
上記アクチュエータ部13は、スピーカ部12を構成する平板状の振動板1に対して対向して並設されるように平板状に形成されている。このアクチュエータ部13は、その一面が伝達部材15の平面部に接触して伝達部材15に取り付けられている。また、上記スピーカグリル16には、音を放出するための複数の貫通孔16Bが形成されている。
【0037】
(2)車載用スピーカ装置の作用
次に、上記構成の車載用スピーカ装置11の作用について説明する。上述の複合スピーカ14によると、ボイスコイル3に電気信号が入力されると、ボイスコイル3に変動磁界が生じ、この変動磁界が磁石2の磁界と相互作用して振動板1が振動する。ここで、磁石2もアクチュエータ部13に直接固定されてなく、弾性部材7を介して取り付けられているから、振動板1が振動すると同時に磁石2も振動する。これによって電気信号は音に変換される。
【0038】
上記振動板1で発生した音のうち、中高音域の音は、図6において矢印Aに示すように、前方、言い換えれば図6における上方(車室内側R1)に直接伝搬される。そして、複合スピーカ14のスピーカ部12から中高音域の音が車室内に出力される。一方、振動板1で発生した音のうち、低音域の音は同図において矢印Bに示すようにフレーム5を通してアクチュエータ部13に伝搬される。また、磁石2の振動のうち、高周波のものは弾性部材7で吸収されてアクチュエータ部13には伝わらないが、低周波のものは、同図において矢印Cに示すように、後方、言い換えれば同図における下方(車室外側R2)に向かって、弾性部材7を介してアクチュエータ部13に伝搬されてアクチュエータ部13が振動する。そして、このアクチュエータ部13の振動は、伝達部材15で増幅されつつ天井基材20に伝達されて天井基材20の振動により低音域の音が車室内に出力される。
【0039】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例の車載用スピーカ装置11によると、中高音域の音を出力するための中高音域用スピーカ部12と低音域の音を出力するための平板状のアクチュエータ部13とを有する複合スピーカ14と、アクチュエータ部13と天井基材20との間に配置されてアクチュエータ部13の振動を天井基材20に伝達する伝達部材15と、を備えている。これにより、複合スピーカ14のアクチュエータ部13の振動を天井基材20に効率的に伝達することができる。また、複合スピーカ14は、スピーカ部12が車室内側R1に位置し、アクチュエータ部13が車室外側R2位置する向きで配置されているので、複合スピーカ14のスピーカ部12から中高音域の音が車室内に出力されるとともに、複合スピーカ14のアクチュエータ部13の振動は、伝達部材15で増幅されてから天井基材20に伝達され、天井基材20の振動により低音域の音が車室内に出力される。これにより、複合スピーカ14を用いて良質な音を出力させることができる。また、複合スピーカ14は、1台で高音も低音も忠実に再生できるから、ウーハなどの低音再生用のスピーカを別に設ける必要がない。また、振動板1は平板状であってコーン状ではないから、コーン型スピーカと比較して遥かに薄くできる。
【0040】
また、本実施例では、天井基材20の車室内側R1の表面側に配置されるスピーカグリル16を更に備え、天井基材20及び伝達部材15は、アクチュエータ部13とスピーカグリル16との間に配置されているので、スピーカグリル16により複合スピーカ14を保護することができるとともに、天井基材20の車室内側R1の意匠性を向上させることができる。
【0041】
更に、本実施例では、天井基材20及び伝達部材15は、アクチュエータ部13とスピーカグリル16とが直接連結されていることによりアクチュエータ部13とスピーカグリル16との間に挟持されているので、スピーカ装置を取り付けるためのブラケット等を別に設ける場合と比較して、部品点数の少ない車載用スピーカ装置11を実現できる。
【0042】
また、本実施例では、スピーカグリル16は天井基材20に押圧された状態となっているので、より効率的に複合スピーカ14のアクチュエータ部13の振動を天井基材20に伝達することができる。
【0043】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例では、天井基材20に平面形状が略矩形状の連通孔20Aを形成し、この連通孔20Aにスピーカグリル16のボス16Aを貫通させるとともにスピーカ部12を配置した車載用スピーカ装置11を例示したが、これに限定されず、例えば、図10及び図11に示すように、連通孔20Aと比較して幅狭な略矩形状の連通孔30Aを形成するとともに、各ボス16Aを貫通させるために、連通孔30Aの内壁を平面方向外側に陥没させた凹状部30Bを形成した天井基材30を用いた車載用スピーカ装置31としてもよい。
【0044】
即ち、連通孔30Aは、その内壁が各ボス16Aの間に進入するように内側に突出しているとともに、各ボス16Aの中心を結んだ直線よりも内側に突出するように形成されていることができる。これにより、図12に示すように、連通孔30Aの内壁をスピーカ部12側に近づけて設けることができ、スピーカ部12の側方周辺の空間を埋めることができる。その結果、スピーカ部12から発生する中高音域の音が上記空間内に回り込んでしまうことを防止でき、中高音域の音の音質を向上させることができる。また、このような連通孔30Aとすることにより、天井基材30と伝達部材15との接触面積を上記実施例と比較して大きくすることができる。これにより、複合スピーカ14のアクチュエータ部13の振動を天井基材30により効率的に伝達することができる。
【0045】
また、図13及び図14に示すように、内装材としての天井基材40に、スピーカ部12を配置するための連通孔40Aと、ボス16Aを貫通させるための貫通孔40Bと、をそれぞれ形成した車載用スピーカ装置41としてもよい。これにより、図15及び図16に示すように、スピーカ部12の側方全体にわたってその周辺の空間を更に埋めることができ、中高音域の音の音質を更に向上させることができる。また、天井基材40と伝達部材15との接触面積を上記実施例と比較して更に大きくすることができるので、複合スピーカ14のアクチュエータ部13の振動を天井基材40により一層効率的に伝達することができる。
【0046】
更に、上記実施例では、平面形状が略矩形状であり、スピーカ部12が貫通する平面形状が略矩形状の貫通孔15Aが形成された伝達部材15を例示したが、これに限定されず、例えば、図17に示すように、平面形状が略U字形状の伝達部材25としてもよい。また、図18に示すように、分割された2つの長尺棒状の伝達部材35としてもよい。これにより、簡易に製造可能な伝達部材とすることができる。
【0047】
また、上記実施例では、樹脂製の伝達部材15を例示したが、これに限定されず、例えば、金属製や非金属製であってもよい。
【0048】
更に、上記実施例では、天井基材20に取り付けられる車載用スピーカ装置11を例示したが、これに限定されず、例えば、ドアトリム、フロアトリム、インストルメントパネル、コンソールボックス、ピラー、サンバイザ等に取り付けられる車載用スピーカ装置としてもよい。
【0049】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0050】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
乗用車、バス、トラック等の他、列車、汽車等の鉄道車両、建設車両、農業車両、産業車両などの車両の内装材に取り付けられる車載用スピーカ装置に関する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0052】
1;振動板、2;磁石、2N;磁極、2S;磁極、3;ボイスコイル、4;ヨーク、5;フレーム、7;弾性部材、8;鉄板、9;ルーフパネル、10;不織布、11,31,41;車載用スピーカ装置、12;中高音域用スピーカ部(スピーカ部)、13;アクチュエータ部、13A;貫通孔、14;複合スピーカ、15,25,35;伝達部材、15A;貫通孔、15B;貫通孔、16;スピーカグリル、16A;ボス、16B;貫通孔、17;ネジ、18;表皮材、20,30,40;天井基材、20A,30A、40A;連通孔、30B;凹状部、40B;貫通孔、R1;車室内側、R2;車室外側。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内装材に取り付けられる車載用スピーカ装置であって、
中高音域の音を出力するための中高音域用スピーカ部と低音域の音を出力するための平板状のアクチュエータ部とを有する複合スピーカと、
前記アクチュエータ部と前記内装材との間に配置されて前記アクチュエータ部の振動を前記内装材に伝達する伝達部材と、を備え、
前記複合スピーカは、前記中高音域用スピーカ部が車室内側に配置され、且つ前記アクチュエータ部が車室外側に配置されていることを特徴とする車載用スピーカ装置。
【請求項2】
前記アクチュエータ部は、前記内装材の車室外側に配置されており、
前記伝達部材は、前記内装材の車室外側であって、且つ前記内装材と前記アクチュエータ部との間に配置されている請求項1記載の車載用スピーカ装置。
【請求項3】
前記内装材の車室内側の表面側に配置されるスピーカグリルを更に備え、
前記内装材及び前記伝達部材は、前記アクチュエータ部と前記スピーカグリルとの間に配置されている請求項1又は2記載の車載用スピーカ装置。
【請求項4】
前記内装材及び前記伝達部材は、前記アクチュエータ部と前記スピーカグリルとが直接連結されていることにより前記アクチュエータ部と前記スピーカグリルとの間に挟持されている請求項3記載の車載用スピーカ装置。
【請求項5】
前記スピーカグリルは前記内装材に押圧された状態となっている請求項3又は4記載の車載用スピーカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−114664(P2012−114664A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261715(P2010−261715)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】