説明

車載用ミラー

【課題】組立て作業工程の簡素化を図るようにした車載用ミラーを提供する。
【解決手段】車載用ミラー1において、ミラー板10に樹脂製のミラー本体14を採用することで、ミラー板10の軽量化を図ることができ、しかも溶着によってミラーホルダ11にミラー板10を固定させているので、両面テープや接着剤を利用しなくてもよく、組立て作業工程が煩雑になり難く、製造コストの低減が図られる。さらに、ミラーホルダ11に対してミラー板10が強く圧着されていなくても、ミラーホルダ11にミラー板10をしっかりと強固に固定させることができるので、ミラーホルダ11やミラー板10に無理な負荷をかけることがなく、しかも、製造時において、ミラーホルダ11の縁部11Bやミラー板10の周縁10aにおける寸法の多少のばらつきをも許容し易くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルームミラー、ドアミラー、リアミラーなどに利用される車載用ミラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2008−132875号公報がある。この公報に記載された車載用ミラーは、ドアミラーボディに装着された反射ミラーを備え、この反射ミラーは、電動アクチュエータによって上下左右に傾き調整が可能である。このような反射ミラーは、透明なガラス板(ミラー本体)の裏面に反射膜が蒸着されてなるミラー板と、ミラー板の裏面側でミラー板に固定されるミラーホルダからなる。そして、ガラス板の周縁を露出させないために、ガラス板の周縁はミラーホルダの縁部によって覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−132875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の車載用ミラーのミラー板は、ミラーホルダの弾性力を利用して、ミラーホルダの縁部に嵌め込まれた状態で保持され、ミラー板のビビリやガタツキを抑える方策としては、ミラー板をミラーホルダに両面テープや接着剤で固定させるのが一般的である。しかしながら、両面テープや接着剤を利用すると、組立て作業工程を煩雑にし、製造コストのアップを招来する。
【0005】
本発明は、組立て作業工程の簡素化を図るようにした車載用ミラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ミラーホルダによってミラー板を保持した構成を有する反射ミラーが設けられた車載用ミラーにおいて、
ミラー板は、透明な樹脂からなるミラー本体と、ミラー本体に形成された反射部とからなり、ミラーホルダとミラー本体とが当接した部分が溶着されることにより、ミラーホルダにミラー板が固定されることを特徴とする。
【0007】
この車載用ミラーにおいて、ミラー板に樹脂製のミラー本体を採用することで、ミラー板の軽量化を図ることができ、しかも溶着によってミラーホルダにミラー板を固定させているので、両面テープや接着剤を利用しなくてもよく、組立て作業工程が煩雑になり難く、製造コストの低減が図られる。さらに、ミラーホルダに対してミラー板が強く圧着されていなくても、ミラーホルダにミラー板をしっかりと強固に固定させることができるので、ミラーホルダやミラー板に無理な負荷をかけることがなく、しかも、ミラーホルダとミラー本体との当接部分の寸法精度の低下をも許容し得る。
【0008】
また、ミラーホルダは、レーザ吸収を可能にした樹脂材料からなると共に、ミラー板の周縁に当接する縁部を有し、ミラー板のミラー本体を通過したレーザ光が縁部の内壁面に照射されることで縁部の内壁面が溶融されてなる溶融部によって、ミラーホルダがミラー板に固定されていると好適である。
透明な樹脂からなるミラー本体内にレーザ光を通すことで、ミラー板の周縁によって隠されているミラーホルダの縁部の内壁面にレーザ光を照射することができる。このことは、ミラーホルダの外表面にレーザ痕が出に難く、反射ミラーの外観を良好にすることができる。さらには、ミラーホルダとミラー板とが樹脂同士の溶着によって接合されるので、ミラーホルダにミラー板を強固に固定させることができる。
【0009】
また、溶融部は、ミラー板の反射部を反射させた後に縁部の内壁面に達するレーザ光によって形成されていると好適である。
透明なミラー本体をレーザ光が通過する際、このレーザ光を、反射部で一旦反射させるようにして、ミラーホルダの縁部に照射させると、レーザ光をミラー板の上方からミラー板に入射させ易くなるので、レーザ光の入射範囲を容易に広げることができ、作業性が良好になる。つまり、反射ミラーが本来もっている反射部を有効活用して、レーザ溶着を図ったのが本発明である。
【0010】
また、溶融部は、ミラーホルダの縁部に形成された開口部を通過した後にミラー本体に入射させられて縁部の内壁面に達するレーザ光によって形成されていると好適である。
ミラーホルダの縁部に開口部を形成することで、ミラーホルダ側からミラーホルダの縁部の内壁面に向けてレーザ光を的確に照射することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、組立て作業工程の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る車載用ミラーの第1実施形態を示す部分断面図である。
【図2】図1の車載用ミラーに適用される反射ミラーを示す斜視図である。
【図3】レーザ光による反射ミラーの第1の固定例を示す断面図である。
【図4】レーザ光による反射ミラーの第2の固定例を示す断面図である。
【図5】レーザ光による反射ミラーの第3の固定例を示す断面図である。
【図6】本発明に係る車載用ミラーの第2実施形態に適用される反射ミラーを示す斜視図である。
【図7】レーザ光による反射ミラーの第4の固定例を示す断面図である。
【図8】振動溶着を可能にする反射ミラーの断面図である。
【図9】振動溶着を可能にする他の反射ミラーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る車載用ミラーの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、車載用ミラーとしては、ルームミラー、ドアミラー、リアミラーなど様々なものがあるが、車両の前ドアに固定されるドアミラーを例にとって説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1に示すように、ドアミラー1は、アーム部を介して前側のドアパネルに固定される椀形状をした樹脂製のドアミラーボディ2を備え、このドアミラーボディ2は、車両の後部側に向けて開放された開口部を有するケーシング3と、ケーシング3の開口部に嵌め込むようにしてケーシング3に固定されたカップ状の仕切板4とからなる。
【0015】
ドアミラー1には、仕切板4に設けられた凹部4aを塞ぐように反射ミラー5が配置され、反射ミラー5は、ピボットプレート7に対して着脱自在に装着されている。このピボットプレート7は、反射ミラー5の裏面が当接する円板部7aと、この円板部7aの外周部分で等間隔に配置された四個の掛け止め部(図示せず)とを有する。
【0016】
各掛け止め部には、反射ミラー5の裏面に設けられた樹脂製の四個の爪片が引っ掛けられる。従って、反射ミラー5はピボットプレート7に対して着脱自在であり、反射ミラー5を手前に強く引くことによって、反射ミラー5をピボットプレート7から容易に取り外すことができる。
【0017】
さらに、ピボットプレート7の裏面側には2カ所に球状の凹部(図示せず)が形成され、それぞれの凹部には、アジャスターナット(図示せず)の頭部に設けられたボール部(図示せず)が、ボールジョイント構造によって連結されている。各アジャスターナットは、カップ状のホルダ9に立設された2本のアジャスターボルト(図示せず)にそれぞれ螺合すると共に、モータとギアとが組合わされたアクチュエータ(図示せず)によって自転しながらそれぞれ独立して軸方向に可動する。そして、アジャスターナットのそれぞれ独立した移動量の変化によって、ピボットプレート7の傾き角度を変化させることができ、それに伴って、反射ミラー5を所定の鏡面角度に変化させることができる。
【0018】
このように構成された電動式ドアミラー1に適用される反射ミラー5は、図2に示すように、ミラー板10に固定される樹脂製のミラーホルダ11を有し、ミラーホルダ11は、ミラー板10の裏面に沿って延在する平板部11Aと、この平板部11Aの端部に設けられて、ミラー板10の周縁10Aに当接する縁部11Bとが設けられている。そして、平板部11Aには、ミラー板10の裏面に当接してミラー板10を裏面側から支持する凸部11aが形成されている。
【0019】
図3に示すように、ミラーホルダ11の縁部11Bは、ミラー板10の端面10aに当接すると共に、ミラー板10の全周に渡って延在する側縁部12と、側縁部12の端部から突出してミラー板10の表面10aに当接する上縁部13とからなる。
【0020】
ミラー板10は、透明な樹脂(例えば、アクリル、ポリカーボネイト)からなる平板状のミラー本体14と、ミラー本体14の裏面に形成された反射部15とからなり、これは、所謂「裏面鏡」と呼ばれている。これに対して、ミラーホルダ11は、レーザ吸収を可能にした黒色の樹脂材料(例えば、ポリプロピレン)によって形成されている。そして、ミラーホルダ11とミラー本体14とが当接した部分が溶着されることにより、ミラーホルダ11にミラー板10が固定される。
【0021】
(第1の固定例)
ミラーホルダ11にミラー板10を固定するにあたって、ミラー本体14の表面14a側からレーザ光を入射させ、ミラー本体14を通過したレーザ光を、ミラー板10の反射部15で一旦反射させた後に、レーザ光をミラーホルダ11の上縁部13の内壁面13aに入射させる。これにより、ミラーホルダ11の上縁部13の内壁面13aに溶融部Aが形成され、この溶融部Aによって樹脂製のミラー本体14がミラーホルダ11に接合される。
【0022】
(第2の固定例)
図4に示すように、ミラーホルダ11にミラー板10を固定するにあたって、ミラー本体14の表面側からレーザ光を入射させ、ミラー本体14を通過したレーザ光を、ミラー板10の反射部15で一旦反射させた後に、レーザ光をミラーホルダ11の側縁部12の内壁面12aに入射させる。これにより、ミラーホルダ11の側縁部12の内壁面12aに溶融部Aが形成され、この溶融部Aによって樹脂製のミラー本体14がミラーホルダ11に接合される。
【0023】
(第3の固定例)
図5に示すように、ミラーホルダ11にミラー板10を固定するにあたって、ミラー本体14の表面14a側からレーザ光を入射させ、ミラー本体14を通過したレーザ光を、ミラーホルダ11の側縁部12の内壁面12aに直接入射させる。これにより、ミラーホルダ11の側縁部12の内壁面12aに溶融部Aが形成され、この溶融部Aによって樹脂製のミラー本体14がミラーホルダ11に接合される。
【0024】
このような車載用ミラー1において、ミラー板10に樹脂製のミラー本体14を採用することで、ミラー板10の軽量化を図ることができ、しかも溶着によってミラーホルダ11にミラー板10を固定させているので、両面テープや接着剤を利用しなくてもよく、組立て作業工程が煩雑になり難く、製造コストの低減が図られる。さらに、ミラーホルダ11に対してミラー板10が強く圧着されていなくても、ミラーホルダ11にミラー板10をしっかりと強固に固定させることができるので、ミラーホルダ11やミラー板10に無理な負荷をかけることがなく、しかも、製造時において、ミラーホルダ11の縁部11Bやミラー板10の周縁10における寸法の多少のばらつきをも許容し易くなる。
【0025】
透明な樹脂からなるミラー本体14内にレーザ光を通すことで、ミラー板10の周縁10Aによって隠されている側縁部12の内壁面12a及び/又は上縁部13の内壁面13aにレーザ光を照射することができる。このことは、ミラーホルダ11の外表面にレーザ痕が出に難く、反射ミラー5の外観を良好にすることができる。さらには、ミラーホルダ11とミラー板10とが樹脂同士の溶着によって接合されているので、ミラーホルダ11にミラー板10を強固に固定させることができ、ミラー板10のガタツキ防止に高い効果を期待でき、温度変化に対しても強い。
【0026】
また、第1及び第2の固定例からも分かるように、透明なミラー本体14をレーザ光が通過する際、このレーザ光を、反射部15で一旦反射させるようにして、ミラーホルダ11の縁部11Bに照射させると、レーザ光をミラー板10の上方から入射させ易いので、レーザ光の入射範囲を容易に広げることができ、作業性が良好になる。つまり、反射ミラー5が本来もっている反射部15を有効活用して、レーザ溶着を図ったのが第1及び第2の固定例である。
【0027】
(第2の実施形態)
図6に示すように、第2の実施形態に係る車載用ミラーに適用される反射ミラー25には、ミラーホルダ21の縁部21Bにおいて、その側縁部22にレーザ通過用の開口部23が形成されている。他の構成は、第1の実施形態に係る車載用ミラー1に適用される反射ミラー5と同じであるので、同一構成には同一符号を付して、重複する説明は省略する。
【0028】
図7に示すように、レーザ光は、ミラーホルダ21の側縁部22に形成された開口部23を通過させ、その後、ミラー本体14の端面14bから入射させられてミラーホルダ21の上縁部24の内壁面24aに達する。そして、このレーザ光によって、上縁部24の内壁面24aに溶融部Aが形成され、これによって、ミラーホルダ21にミラー板10が固定される。このように、ミラーホルダ21の縁部21Bに開口部23を形成することで、ミラーホルダ21側からミラーホルダ21の上縁部24の内壁面24aに向けてレーザ光を的確に照射することができる。
【0029】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0030】
例えば、図8に示すように、他の例に係る反射ミラー35のミラー板30において、透明な樹脂からなるミラー本体34の端面34aには、三角錐形状で突出する多数の凸部31がミラー板30の全周に渡って一体成形され、各凸部31の先端がミラーホルダ11の側縁部12の内壁面12aに圧着されている。そして、超音波や微細振動によって凸部31を溶融させ、ミラーホルダ11にミラー板30を固定させてもよい。
【0031】
図9に示すように、さらに他の例に係る反射ミラー45のミラー板40において、透明な樹脂からなるミラー本体44の表面44aにおける周縁には、三角錐形状で突出する多数の凸部41がミラー板40の全周に渡って一体成形され、この凸部41の先端がミラーホルダ11の上縁部13の内壁面13aに圧着されている。そして、超音波や微細振動によって凸部41を溶融させ、ミラーホルダ11にミラー板40を固定させてもよい。
【0032】
本発明に係る車載用ミラーは、ルームミラー、ドアミラー、リアミラーなど、様々な部品に適用可能である。
【0033】
本発明に係る車載用ミラーに適用される反射ミラーとしては、図示しないが、透明な樹脂からなるミラー本体の表面側に反射部が設けられた所謂「表面鏡」も利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…(ドアミラー)車載用ミラー、5,25,35,45…反射ミラー、10,30…ミラー板、10A…ミラー板の周縁、11,21…ミラーホルダ、11B,12,13,21B,24…ミラーホルダの縁部、12a,13a,24a…縁部の内壁面、14…ミラー本体、15…反射部、23…開口部、A…溶融部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーホルダによってミラー板を保持した構成を有する反射ミラーが設けられた車載用ミラーにおいて、
前記ミラー板は、透明な樹脂からなるミラー本体と、前記ミラー本体に形成された反射部とからなり、前記ミラーホルダと前記ミラー本体とが当接した部分が溶着されることにより、前記ミラーホルダに前記ミラー板が固定されることを特徴とする車載用ミラー。
【請求項2】
前記ミラーホルダは、レーザ吸収を可能にした樹脂材料からなると共に、前記ミラー板の周縁に当接する縁部を有し、
前記ミラー板の前記ミラー本体を通過したレーザ光が前記縁部の内壁面に照射されることで前記縁部の前記内壁面が溶融されてなる溶融部によって、前記ミラーホルダが前記ミラー板に固定されていることを特徴とする請求項1記載の車載用ミラー。
【請求項3】
前記溶融部は、前記ミラー板の前記反射部を反射させた後に前記縁部の前記内壁面に達する前記レーザ光によって形成されていることを特徴とする請求項2記載の車載用ミラー。
【請求項4】
前記溶融部は、前記ミラーホルダの前記縁部に形成された開口部を通過した後に前記ミラー本体に入射させられて前記縁部の前記内壁面に達する前記レーザ光によって形成されていることを特徴とする請求項2記載の車載用ミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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