説明

車載表示装置とサーバとシステム

【課題】装置メーカ以外の者がメータデザインを設計でき、車両の利用者が多様なメータデザインのなかから選択できるシステムを提供する。
【解決手段】装置メーカが運用するコンピュータ装置とメータデザイン設計者が運用するコンピュータ装置と車載コンピュータ装置が通信網を介して接続されているシステムを構築し、装置メーカのコンピュータ装置からメータデザイン設計者のコンピュータ装置に、メータデザイン設計に必要な電子情報を送信し、メータデザイン設計者のコンピュータ装置から装置メーカのコンピュータ装置に、作成したメータデザインファイルを送信し、装置メーカのコンピュータ装置に、装置メーカが承認したメータデザインファイルをアップロードし、装置メーカが運用するコンピュータ装置から車載コンピュータ装置に、車両側で選択した種類のメータデザインファイルを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、車速やエンジン回転数や燃料残量などの車両データを表示する車載表示装置を開示する。本明細書でいう車両は、エンジンで走行する自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車、オートバイ、電動アシスト自転車などをいう。
【背景技術】
【0002】
車載表示装置に表示して利用者に案内するデータ種類が増加している。車速やエンジン回転数や燃料残量などの基本データの他に、燃費データ、残燃料で走行可能な距離のデータ等を表示する表示装置が開発されている。ハイブリッド自動車や電気自動車には、バッテリ残量や、力行運転中か回生運転中かを示すデータなど、エンジン自動車とは全く異なる種類のデータを表示して利用者に案内する必要がある。
【0003】
現状では、装置メーカが提供するメータ上に上記データを表示している。装置メーカが提供するメータデザインは固定されており、万人にとって見やすいメータとはいえない。そこで、利用者がメータデザインを設計する技術が提案され、特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1の技術では、車内のインパネにキーボードを接続するコネクタを設ける。利用者は、そのキーボードを利用してメータデザインを設計する。例えば、車載されているメータ画像表示装置のどこにどの大きさで速度計を配置するのか、その速度計のデザインをどうするか等を設計する。タコメータ、燃料残量計、方向指示器の状態表示ランプ等についても同様に設計する。あるいは、携帯型コンピュータ装置でメータデザインを設計することもできる。この場合には、携帯コンピュータと車載コンピュータを接続し、携帯コンピュータから車載コンピュータにメータデザインファイルを転送する。
車載コンピュータには、複数種類のメータデザインファイルを記憶しておくことが可能である。例えば、車両データをデジタル表示するメータデザインファイルと、車両データを高齢者向けに表示するメータデザインファイル等を記憶しておき、そのうちの一種類のメータデザインファイルを読み出してメータ画像表示装置に表示させることができる。
【0005】
特許文献1の技術によると、利用者がメータ画像表示装置に表示させるメータデザインを設計することができる。また複数種類のメータデザインを記憶しておき、そのなかから選択したメータデザインを表示することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−297319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術によって、車両の利用者が、メータ画像表示装置に表示させるメータデザインを設計することができる。
最近のメータは表示項目が多く、満足のいくメータデザインを設計するためには時間を要する。時間がなくて設計できない、あるいは、設計が面倒または難しいという問題がある。装置メーカが提供する単一デザインでは不満であるが、さりとて自分で設計するのにも問題があるという利用者が多い。
本明細書では、装置メーカが提供する単一デザインでは不満であるが、自分で設計するのにも問題があるという利用者の不満を解消する技術を提供する。
【0008】
特許文献1の技術によって、メータデザインを切換えることができる。例えば、デジタル表示するメータデザインから高齢者向けに表示するメータデザインに切換えるといったことが可能となる。
メータデザインには特性があり、市街地を走行するのに適したメータデザインもあれば、高速道を走行するのに適したメータデザインもある。特許文献1の場合、メータデザインと特性の関係を考慮していない。高速道走行用メータデザインを選択すると、市街地走行中であっても高速道走行用メータデザインに切り換わってしまう。その逆の現象も生じる。本明細書では、適切なメータデザインを選択して表示する技術を開示する。
【0009】
ここで、本明細書で用いる用語の意味を整理しておく。
・メータ画像表示装置:車両の利用者が視認できる位置に車載されている画像表示装置。通常はインパネに組み込まれている。液晶ディスプレイあるいはプラズマディスプレイ等のように、電子情報に従って表示画像を自在に変える。
・メータデザイン:データ表示の背景となる画像。例えば速度計であれば、速度を示す針の画像以外の画像、すなわち時計の文字盤に相当する部分の画像をいう。方向指示器に連動するインディケータであれば、矢印の位置と大きさを示す画像をいう。
・メータデザインファイル:メータデザインを記述する電子化された情報。
・メータ画像:メータデザインにデータ表示を重ねた表示をいう。メータ画像表示装置に表示される。例えば走行速度が50km/hであれば、メータデザインが記述する文字盤の表示に、50km/hの位置を指し示す針の画像を合成した表示を言う。
・メータ画像制御装置:メータデザインファイルが記述するメータデザインにデータ表示画像を合成してメータ画像データを作成し、作成したメータ画像をメータ画像表示装置に表示させる装置。車載されている。
設計:メータデザインを設計することをいう。
設計者:メータデザインを設計する個人または団体をいう。
装置メーカ:メータデザインファイル記憶装置と車両データ出力装置とメータ画像制御装置とメータ画像表示装置の全部または一部の開発・設計あるいは製造を担当したものをいう。完成車メーカに限定されず、部品メーカであることもある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書では、メータデザインファイル記憶装置と、車両データ出力装置と、メータ画像制御装置と、メータ画像表示装置を備えている車載表示装置を提案する。
メータデザインファイル記憶装置は、複数種類のメータデザインファイルを記憶することができる。メータ画像制御装置は、メータデザインファイル記憶装置が記憶している複数種類のメータデザインファイルなかから選択したメータデザインファイルが記述するメータデザイン上に、車両データ出力装置が出力するデータを表示するメータ画像を合成する処理を実施する。メータ画像表示装置は、メータ画像制御装置が合成したメータ画像を表示する。
メータデザインファイル記憶装置とメータ画像制御装置の少なくとも一方は、装置メーカが承認したことを示すデータ(以下では承認データまたは承認コードという)を含んでいるメータデザインファイルのみを選択して処理する。メータデザインファイル記憶装置が選択処理を実施する場合には、承認データが付記されているメータデザインファイルのみがメータデザインファイル記憶装置に記憶される。この場合、承認データが付記されていることを確認してからメータデザインファイルを記憶するものであれば足り、承認データまで含めて記憶するものでなくてもよい。メータ画像制御装置が選択処理を実施する場合には、メータデザインファイル記憶装置が、承認データが付記されていないメータデザインファイルを記憶している可能性がある。ただし、承認データが付記されているメータデザインファイルも記憶されており、その場合、メータデザインファイル記憶装置は承認データまで含めて記憶している。メータ画像制御装置は、承認データを含むメータデザインファイルのみを選択してメータ画像データを合成する。
【0011】
上記によると、車両の利用者がメータデザインファイル記憶装置に記憶しておくメータデザインファイルを選択することで、使用するメータデザインを選択することができる。装置メーカが提供する単一デザインでは不満な利用者は、自己の必要性または好みに対応するメータデザインを選択することができる。その一方において、メータ画像表示装置に表示されるメータ画像は、装置メーカが承認したメータデザインに依るものあって、安心して利用できるメータデザインであることが保証されている。利用者は、信頼のおけるメータデザインのなかから選択して使用することができる。
【0012】
メータデザインファイル記憶装置は、少なくとも標準メータデザインファイルを記憶していることが好ましい。またメータ画像制御装置は、何らかの不調発生時に、標準メータデザインファイルを選択することが好ましい。
この場合、何らかの不調が発生した場合には、信頼性の高い標準メータデザインが表示される。メータデザインの選択の自由を確保することによって信頼性が低下することがない。
【0013】
利用者が切換え操作部を操作してメータデザインを切換える場合、不適切なメータデザインが選択されることがある。例えば、低速走行中であるにも係わらず高速走行用メータデザインを選択する操作をすることがあり得る。あるいは、市街地走行中にサーキット走行用メータデザインを選択する操作をすることがあり得る。そこで、選択したメータデザインがそのときの走行条件等の下で適切な選択か不適切な選択かを判別し、適切な選択であれば選択したメータデザインに切換え、不適切な選択であればメータデザインを切換えないことが好ましい。
そのために、メータデザインファイル記憶装置が、メータデザインファイルに対応付けて使用条件を記憶していることが好ましい。また、利用者がメータデザインの切換え時に操作する切換え操作装置と、利用者が切換え操作装置を操作して選択したメータデザインが使用条件に適合しているか否かを判別し、使用条件に適合しているときに選択したメータデザインへの切換えを実行する切換え制御部装置が付加されていることが好ましい。
【0014】
利用者が切換え操作装置を操作してメータデザインを切換える方式に代えて、利用者が予めメータデザインの切換え条件を設定しておくこともできる。例えば、90Km/h以上の車速が一定時間以上継続した場合に、高速走行用メータデザインに切換えるといった条件を予め設定しておく方式である。
この場合、利用者がメータデザインの切換え条件を入力する切換え条件入力装置と、切換え条件を記憶しておく切換え条件記憶装置と、利用者が切換え条件入力装置を使って入力した切換え条件が使用条件に適合しているか否かを判別し、条件に適合しているときに切換え条件入力装置を使って入力した切換え条件を切換え条件記憶装置に記憶するとともに、切換え条件が満たされたときに切換え条件記憶装置に記憶されている切換えを実行する条件対応切換え制御装置を備えていることが好ましい。
この場合、メータデザインの切換え条件記憶装置に、適切な切換え条件のみが記憶されており、メータデザインが適切に切換えられる。
【0015】
サーバと通信してメータデザインファイルをメータデザインファイル記憶装置にダウンロードする通信装置は、一時的(例えば車両の販売店訪問時)にメータデザインファイル記憶装置等に接続される機器であってもよいが、車載しておいてもよい。
【0016】
本システムで利用するサーバ自体も新規である。そのサーバには、装置メーカが承認したことを示すデータを含んでいるメータデザインファイルの複数種類がアップロードされている。そのサーバは、サーバにアップロードされているメータデザインファイルを通信装置を介して車載されているメータデザインファイル記憶装置にダウンロードする機能を備えている。
【0017】
サーバが、アップロードされているメータデザインファイルに対応付けて、そのメータデザインファイルの使用条件を記憶していることが好ましい。
【0018】
本明細書で開示するシステムでは、装置メーカが運用するコンピュータ装置と、メータデザイン設計者が運用するコンピュータ装置と、車載コンピュータ装置が、通信網を介して接続されている。そのシステムでは、装置メーカのコンピュータ装置からメータデザイン設計者のコンピュータ装置に、1)メータデザインの設計に必要な電子情報を送信し、2)設計したメータデザインの適否を判定する電子情報を送信し、メータデザイン設計者のコンピュータ装置から装置メーカのコンピュータ装置に、3)作成したメータデザインファイルを送信し、装置メーカのコンピュータ装置に、4)装置メーカが承認したメータデザインファイルをアップロードし、装置メーカが運用するコンピュータ装置から車載コンピュータ装置に、5)車両側で選択した種類のメータデザインファイルを送信する。
【発明の効果】
【0019】
本明細書に記載の車載表示装置によると、車両の利用者がメータデザインを選択することができる。装置メーカが提供する単一デザインでは不満な利用者は、自己の必要性または好みに対応するメータデザインを選択することができる。同時に、表示可能なメータデザインは、装置メーカが承認したメータデザインに限定されており、信頼のおけるメータデザインに限定されている。車両の特性等から見て不適切なメータデザインを選択してしまうことがない。
メータデザインファイルに対応付けて使用条件を記憶していれば、走行状態等との関係で不適切なメータデザインが表示されることがない。適切なメータデザインの中から選択されて表示される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】車両メーカとメータデザイン設計者が実施する工程の連鎖を示す。
【図2】車両メーカのサーバと、車載表示装置の全体構成を示す。
【図3】サーバにメータデザインファイルをアップロードするまでの処理手順を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
下記に示す実施例の主要な特徴を列記する。
(特徴1)車載のメータデザインファイル記憶装置に記憶したメータデザインファイルを他の車両に搭載されているメータデザインファイル記憶装置にコピーすることが禁止されている。
(特徴2)車両データ出力装置は、車速とエンジン回転数と燃料残量といった基本データの他に、市街地走行中か、高速道走行中か、サーキット内を走行中かを示すデータを出力する。
【実施例】
【0022】
図1は、車両メーカとメータデザイン設計者が実施する工程の連鎖を示している。ステップS2では、車両メーカが、図2に示す表示装置20を搭載した車両を製造して販売する。車載表示装置20は、車両メーカが承認したメータデザインファイルのみを記憶するメータデザインファイル40を備えている。メータデザインファイル記憶装置40は、メータデザインファイルであっても車両メーカが承認していないファイルは記憶することができない。
ステップS4では、車両メーカが、メータデザイン設計者に、メータデザイン設計用のツール(メータデザイン設計用ソフトウエア)と、メータデザイン設計時に遵守するべき技術情報(仕様情報)と、作成したメータデザインが法規等によって要請される仕様を満たしているか否かをテストできる適否判定ツール(適否判定用ソフトウエア)を提供する。ステップS4は、予め登録されたメータデザイン設計者にのみ提供する方法を取ってもよい。情報等の提供の対価を課金してもよい。
ステップS6では、メータデザイン設計者がメータデザインファイルを作成し、適否判定ツールで適否を判定する。
ステップS8では、メータデザイン設計者が車両メーカに、メータデザインファイルを送る。この際には、適否判定ツールで適と判定されたメータデザインファイルのみが車両メーカに送られる。
以上までの工程によって、車両メーカ以外の者がメータデザインを設計することが可能となっており、多様なメータデザインが作成される。
【0023】
ステップS10では、ステップS6でメータデザイン設計者が設計したメータデザインファイルであって、ステップS8で車両メーカに送られたメータデザインファイルが記述するメータデザインを、車両メーカが評価して採否を決定する。この評価の過程では、車両データを示す画像を合成してメータ画像としたときの動作確認、車両の性格・特性に対応したメータデザインか否か等を評価する。評価の際に、車両メーカは、メータデザインに使用条件があるか否かを検討し、使用条件があれば、メータデザインファイルと使用条件を対応付けて記憶する。例えば、高速走行時に適したメータデザインであって低速走行には不向きなメータデザインには、「高速走行」という条件を付する。あるいは、サーキット走行用メータデザインには、「サーキット走行」という条件を付する。燃費に関する指標を強調表示するメータデザインには、「エコモード選択時」といった条件を付する。
車両メーカの評価によって採用することを決定したメータデザインファイルには、車両メーカが承認したことを示すデータを付記する。車両メーカが採用することを決定したメータデザインファイル(承認したことを示すデータが付記されている)は、車両メーカが運用するサーバにアップロードされる。使用条件が設定されていれば、その使用条件もアップロードされる。
【0024】
メータデザイン設計者が作成したメータデザインファイルの他に、車両メーカが作成した標準メータデザインファイルもサーバにアップロードされている。標準メータデザインファイルには、使用条件の制約が付されていない。いかなる状況でも利用できる標準メータデザインが用意されている。
【0025】
図2の参照番号10は、車両メーカが運用するサーバを示し、メータデザインファイルと使用条件と承認コード(車両メーカが承認したことを示すデータ)が対応付けて記憶されている。図2の場合、メータデザインファイルAと、その使用条件A1と、承認コードA2が対応付けて記憶されていることを示している。メータデザインファイルの種類数は多く、多様なメータデザインを提供する能力を備えている。車両メーカが運用するサーバ10は、通信装置12を使って、車載の表示装置20に、メータデザインファイルとその使用条件と承認コードを送信する。
【0026】
車載の表示装置20は、図2に示す装置を備えている。通信装置22は、通信装置12を介してサーバ10とデータ通信する。通信装置22には、第1制御装置24と操作装置26が接続されており、操作装置26を使用して車両の利用者が選択した種類のメータデザインファイルが、サーバ10から通信装置22に送られる。通信装置22に送られたメータデザインファイルは、メータデザインファイル記憶装置40に記憶される。
第1制御装置24は、通信装置22が受信したメータデザインファイルに付記されている承認コードを参照し、それが車両メーカによって承認されたことを示すデータか否かを判別する。メータデザインファイル記憶装置40には、車両メーカによって承認されたメータデザインファイルのみが記憶される。図2の場合、利用者がファイルAとDとG等を選択してメータデザインファイル記憶装置40にダウンロードしたことを例示している。
【0027】
メータデザインファイル記憶装置40には、メータデザインファイルに対応付けて使用条件が記憶される。ただし、メータデザインファイル記憶装置40には、承認コードは記憶されない。そのために、メータデザインファイル記憶装置40に記憶されているメータデザインファイルを、他の車両に搭載されている表示装置20にコピーする行為を実施すると、他車の第1制御装置24によって適正承認コードが記憶されていると判別されないために、他車のメータデザインファイル記憶装置40にコピ―することができない。個々の車両毎に、サーバ10からメータデザインファイル記憶装置40にダウンロードする必要がある。メータデザインファイル記憶装置40にダウンロードするときに、メータデザインの使用料を徴収することが可能となっている。それによって、メータデザイン設計者が、設計の対価を回収することが可能となっている。
【0028】
車両メーカが承認したことを示す承認コードは、各種の暗号化技術によって生成することができる。サーバ10と車載表示装置20にキーを付与しておき、そのキーによって解読したデータが特定の情報を示すときに、適正な承認コードが付与されていると判別する手法などが取りえる。電子認証の方式で承認コードを生成してもよい。
【0029】
メータ画像制御装置42は、メータデザインファイルの選択装置44と、合成装置46を備えている。メータデザインファイルの選択装置44は、メータデザインファイル記憶装置40に記憶されている複数種類のメータデザインファイルの中から1種類のメータデザインファイルを選択する。合成装置46には、車両データ出力装置38が接続されており、メータデザインファイル選択装置44が選択したメータデザインに、車両データ出力装置38が出力するデータを示す表示を合成してメータ画像を作成する。例えばエンジン回転数が3000rpmであれば、回転計の文字盤(メータデザイン)に、3000rpmの位置を指し示す針の表示(データを示す表示)を合成して、メータ画像表示装置48で表示するメータ画像を記述するデータを作成する。
【0030】
車載表示装置20には、車両の利用者がメータデザインの切換えのために操作する切換え操作装置28と、第2制御装置30が設けられている。例えば、利用者が切換え操作装置28を操作するたびに、メータデザインファイル記憶装置40にダウンロードされているメータデザインファイルが順に選択される。図2の場合、利用者が切換え操作装置28を操作するたびに、A,D,G,Aの順にメータデザインファイルが選択されていく。
【0031】
第2制御装置30は、車両の利用者が切換え操作装置28を操作して選択したメータデザインファイルの種類と、使用条件と、車両データ出力装置38の出力を比較し、選択されたメータデザインファイルの使用条件が満たされているか否かを判別する。例えば高速走行時に適したメータデザインを表示するファイルAが選択されたときに車両が低速走行していれば、使用条件を満たさないメータデザインファイルが選択されたことを表示し、メータデザインを切換えない。低速走行用のメータデザインを継続して表示する。メータデザインファイルAが選択されたときに車両が高速走行していれば、使用条件を満たすメータデザインファイルが選択されたことから、利用者が選択したメータデザインAに切換える。第2制御装置30は、切換え制御装置に対応する。
【0032】
車載表示装置20には、車両の利用者が操作して切換え条件を入力する切換え条件入力装置32と、第3制御装置34と、切換え条件記憶装置36が設けられている。例えば、利用者は、サーキットを走行時には、サーキット走行用メータデザインを表示するファイルGを選択するという条件を設定することができる。第3制御装置34は、車両の利用者が切換え条件入力装置32を操作して入力した切換え条件と、使用条件を比較し、入力した切換え条件が使用条件を満たしているか否かを判別する。例えば、サーキットを走行時にサーキット走行用メータデザインGを選択するという切換え条件は、使用条件を満たしているので、切換え条件記憶装置36に入力する。第3制御装置34は、車両の走行中に切換え条件記憶装置36に記憶されている条件と、車両データ出力装置38が出力するデータを比較し、切換え条件が満たされたか否かを監視する。例えば、車載のGPS装置がサーキット内を走行していることを示すデータを出力すれば、サーキット走行用のメータデザインファイルGに切換える条件が成立したとしてサーキット走行用のメータデザインファイルGに切換える。第3制御装置34は、条件対応切換え制御装置に対応する。
【0033】
図3は、車両メーカでサーバにアップロードするまでの手順を示す。ステップS12では、メータデザインファイル設計者から送られたメータファイルを車両メーカの基準で評価し、採用するか採用しないかを判別する。
採用すると決定したメータデザインファイルについては、使用条件が限定されているか否かを判別し、限定されていれば使用条件を設定する(ステップS14)。
ステップS16では、車両メーカが送信するデータであることを保証する署名文(承認コード)を作成する。
ステップS18では、車両メーカが採用すると決定したメータデザインファイルと、使用条件と、署名文(承認コード)をサーバにアップロードする。
以上の処理の終了後に、車載コンピュータからサーバにアクセスがあるのを待つ。
【0034】
車両の利用者は、通信装置22を使ってサーバ10にアクセスする。通信装置22を車両の販売店に用意しておき、来店時に限ってメータデザインファイルをダウンロードするようにしてもよい。あるいは、通信装置22を車載しておき、車両の利用者がメータデザインファイルをダウンロードできるようにしてよい。あるいは、車両の利用者がダウンロードできる内容を限定してもよい。例えば、ダウンロード済のメータデザインファイルの更新版については車両の利用者自身でダウンロードできるようにしてもよい。
【0035】
車載コンピュータは、ステップS16で作成した署名文(承認コード)を解析し、車両メーカが送信したメータデザインファイルであることが認証されたときにのみ、メータデザインファイル記憶装置40に記憶する処理がプログラムされている。出所不明なメータデザインファイルはメータデザインファイル記憶装置40にダウンロードされない。利用者は、安心してメータデザインファイルをダウンロードして利用することができる。
【0036】
上記のシステムの運用に際しては、料金を課金してもよい。
例えば、図1のステップS2の段階で、メータデザイン設計者から車両メーカに対価を支払う。図1のステップS10で車両メーカが実施する評価に対して、メータデザイン設計者から車両メーカに対価を支払う。図1のステップS10で車両メーカがサーバへアップロードした段階で、車両メーカからメータデザイン設計者に対価を支払う。あるいは、車両の利用者がメータデザインファイル記憶装置40にダウンロードした段階で、利用者が車両メーカ及び/又はメータデザイン設計者に対価を支払う。あるいは車両の利用者がメータデザインファイル記憶装置40から選択した段階で、利用者が車両メーカ及び/又はメータデザイン設計者に対価を支払う。こうした課金をしながらシステムを運用してもよい。
【0037】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0038】
例えば上記実施例では、車両メーカがサーバやシステムを運用するが、表示装置の開発・設計あるいは製造を担当する部品メーカが運用してもよい。車両メーカと部品メーカが共同して運用してもよい。これらの装置メーカであれば、利用者が安心して利用できるメータデザインか否かを評価することができる。
また、上記実施例では、承認コードのあるもののみをメータデザインファイル記憶装置40に記憶する。それに代えて、メータ画像制御装置42で処理する段階で、承認コードのあるもののみを選択するようにしてもよい。
また、メータ画像制御装置42でメータデザインファイルを選択する際に、2以上のメータデザインファイルを選択することがありえる。例えば、エンジンの運転情報を示すメータデザインを記述するファイルと、変速段の状態を示すメータデザインを記述するファイルと、電流の流れを示すメータデザインを記述するファイルを選択し、それらを合成してメータデザインを完成するものであってもよい。
【0039】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0040】
10:サーバ
12:通信装置
20:車載表示装置
22:通信装置
24:第1制御装置
26:操作装置
28:切換え操作装置
30:第2制御装置:切換え制御装置
32:切換え条件入力装置
34:第3制御装置:条件対応切換え制御装置
36:切換え条件記憶装置
38:車両データ出力装置
40:メータデザインファイル記憶装置
42:メータ画像制御装置
44:メータデザインファイル選択装置
46:合成装置
48:メータ画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載されている表示装置であり、
メータデザインファイル記憶装置と、車両データ出力装置と、メータ画像制御装置と、メータ画像表示装置を備えており、
メータデザインファイル記憶装置は、複数種類のメータデザインファイルを記憶することが可能であり、
メータ画像制御装置は、メータデザインファイル記憶装置が記憶している複数種類のメータデザインファイルなかから選択したメータデザインファイルが記述するメータデザイン上に、車両データ出力装置が出力するデータを表示したメータ画像を合成する処理を実施し、
メータ画像表示装置は、メータ画像制御装置が合成したメータ画像を表示し、
メータデザインファイル記憶装置とメータ画像制御装置の少なくとも一方が、装置メーカが承認したことを示すデータを含んでいるメータデザインファイルのみを選択して処理することを特徴とする車載表示装置。
【請求項2】
メータデザインファイル記憶装置は、少なくとも標準メータデザインファイルを記憶しており、
メータ画像制御装置は、不調発生時に、標準メータデザインファイルを選択することを特徴とする請求項1に記載の車載表示装置。
【請求項3】
メータデザインファイル記憶装置は、メータデザインファイルに対応付けて使用条件を記憶しており、
利用者がメータデザインの切換え時に操作する切換え操作装置と、
利用者が切換え操作装置を操作して選択したメータデザインが使用条件に適合しているか否かを判別し、使用条件に適合しているときに選択したメータデザインへの切換えを実行する切換え制御装置、
が付加されている請求項2に記載の車載表示装置。
【請求項4】
メータデザインファイル記憶装置は、メータデザインファイルに対応付けて使用条件を記憶しており、
利用者がメータデザインの切換え条件を入力する切換え条件入力装置と、
切換え条件を記憶しておく切換え条件記憶装置と、
利用者が切換え条件入力装置を使って入力した切換え条件が使用条件に適合しているか否かを判別し、条件に適合しているときに切換え条件入力装置を使って入力した切換え条件を切換え条件記憶装置に記憶するとともに、切換え条件が満たされたときに切換え条件記憶装置に記憶されている切換えを実行する条件対応切換え制御装置、
が付加されている請求項2に記載の車載表示装置。
【請求項5】
サーバと通信してメータデザインファイルをメータデザインファイル記憶装置にダウンロードする通信装置が付加されている請求項2に記載の車載表示装置。
【請求項6】
装置メーカが運用するサーバであり、
装置メーカが承認したことを示すデータを含んでいるメータデザインファイルの複数種類がアップロードされており、
サーバにアップロードされているメータデザインファイルを、通信装置を介して、車載されているメータデザインファイル記憶装置にダウンロードするサーバ。
【請求項7】
アップロードされているメータデザインファイルに対応付けて、そのメータデザインファイルの使用条件を記憶していることを特徴とする請求項6に記載のサーバ。
【請求項8】
装置メーカが運用するコンピュータ装置と、メータデザイン設計者が運用するコンピュータ装置と、車載コンピュータ装置が、通信網を介して接続されているシステムであり、
装置メーカのコンピュータ装置からメータデザイン設計者のコンピュータ装置に、
1)メータデザイン設計に必要な電子情報と、
2)設計したメータデザインの適否を判定する電子情報を送信し、
メータデザイン設計者のコンピュータ装置から装置メーカのコンピュータ装置に、
3)作成したメータデザインファイルを送信し、
装置メーカのコンピュータ装置に、
4)装置メーカが承認したメータデザインファイルをアップロードし、
装置メーカが運用するコンピュータ装置から車載コンピュータ装置に、
5)車両側で選択した種類のメータデザインファイルを送信する、
ことを特徴するシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−95268(P2013−95268A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239935(P2011−239935)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】