説明

車載音楽生成装置及び車載エンタテイメントシステム

【課題】運転中において、運転に支障を来すことなく、運転者自らが能動的且つ創作的に音楽を楽しむことを可能にする。
【解決手段】 自動車内の各部からの情報に基づいて、音楽を作成するための複数のパラメータを発生する情報収集・加工手段2と、前記情報収集・加工手段からの複数のパラメータに基づいて楽譜データを生成する譜面自動生成手段6と、自動車内に車載され、前記譜面自動生成手段が生成した楽譜データを音信号に変換して音信号再生装置に与える音源7とを具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音楽の再生出力が可能なオーディオシステムを車載した自動車等に好適な車載音楽生成装置及び車載エンタテイメントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車には車載ラジオやCD等のオーディオシステムが搭載されている。また、近年では、テレビジョン受像機を内蔵したカーナビゲーションシステムも普及しており、車内においてテレビ番組の視聴等を楽しむこともできるようになっている。
【特許文献1】特開2003−5756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車載されたエンタテイメントシステムでは、車載ラジオやカーステレオ等のように、ユーザが受動的に楽しむための装置が採用されている。これに対し、一般的なエンタテイメントシステムでは、ユーザが能動的に或いは創造的に楽しむための装置も多い。
【0004】
例えば、特許文献1においては、音楽ファイルデータの再生時に、ユーザの曲調の好みに応じて選曲順を示すリストを自動生成することで、所望の選曲順での再生が可能な自動選曲システムが提案されている。
【0005】
しかしながら、車載用としては、車内の限られた空間、限られた環境の元でエンタテイメントシステムを構築する必要があり、娯楽的要素が比較的小さい。特に、運転者は、運転に専念する必要があることから、自動車に搭載されたエンタテイメントシステムを利用したとしても、主に受動的に楽しむことしかできない。例えば、同乗者は自動車の走行中であってもテレビゲームを楽しむことができる可能性はあるが、運転者は自動車の走行中にテレビゲームをすることはできない。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、運転者自らが能動的に且つ創作的に音楽を楽しむことを可能にすることができる車載音楽生成装置及び車載エンタテイメントシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車載音楽生成装置は、自動車内の各部からの情報に基づいて、音楽を作成するためのパラメータを発生する情報収集・加工手段と、前記情報収集・加工手段からのパラメータに基づいて、楽譜データを生成することで作曲を行う譜面自動生成手段とを具備したものであり、
本発明に係る車載エンタテイメントシステムは、自動車内の各部からの情報に基づいて、音楽を作成するためのパラメータを発生する情報収集・加工手段と、前記情報収集・加工手段からのパラメータに基づいて、楽譜データを生成することで作曲を行う譜面自動生成手段と、自動車内に車載され、前記譜面自動生成手段が生成した楽譜データを音信号に変換して音信号再生装置に与える音源とを具備したものである。
【0008】
本発明において、自動車内の各部から情報が収集され、情報収集・加工手段は、収集した情報に基づいて音楽を作成するためのパラメータを発生する。例えば、車速の情報に基づいて、曲のテンポを決定するパラメータが得られる。譜面自動生成手段は、発生したパラメータに基づいて楽譜データを生成する。これにより、生成された楽譜データは、自動車内の各部からの情報、例えば、運転操作に基づくものとなる。音源を用いることで、楽譜データは音に変換されて音響出力される。この音楽は、例えば、運転者の運転操作に応じてリアルタイムに変化することになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、運転者自らが能動的に且つ創作的に音楽を楽しむことを可能にすることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る車載エンタテイメントシステムを示すブロック図である。
【0011】
本実施の形態は自動車から得られる種々の情報に基づいてリアルタイムに作曲を行い、作曲した曲を車内で演奏させるようにすることで、例えば運転に対応した演奏をリアルタイムに音響出力することを可能にしたものである。
【0012】
図示しない自動車には、各種センサ及びカーナビゲーションシステム等が搭載されており、これらの車内の機器からは、運転情報、車両情報及びナビゲーション情報等が出力可能となっている。運転情報収集・加工装置2は、自動車内の各種装置1から運転情報、車両情報、ナビゲーション情報(以下、運転情報等という)を取得するようになっている。なお、ナビゲーション情報は位置情報及び交通情報を含む。
【0013】
運転情報収集・加工装置2は、譜面用データテーブル群3を有している。譜面用データテーブル群3は、入力された運転情報等と音楽生成に必要な各パラメータとの対応を示す複数のテーブルを有しており、運転情報中の各情報に基づいて各パラメータの値を出力するようになっている。
【0014】
また、運転情報収集・加工装置2は、乱数発生部4を有している。乱数発生部4は、運転情報等に応じたパラメータに適宜のゆらぎを与えるために用いられる。即ち、乱数発生部4は、入力された運転情報等について各情報毎の乱数レンジが指定されて、運転情報等に所定のゆらぎを付与するための乱数値を発生して係数設定部5に与える。係数設定部5は、入力された各情報毎の乱数値を譜面用データテーブル群3に与えるようになっている。譜面用データテーブル群3は、各テーブルの出力に各情報に対応した係数を付与して出力する。これにより、同一運転情報であっても、運転情報収集・加工装置2から出力されるパラメータ値が変化するようになっており、ドライブ毎に異なる音楽生成が行われることを可能にする。
【0015】
譜面用データテーブル群3は、例えば、テンポを決定するためのbpmテーブル、リズムを決定するためのリズムテーブル、音色を決定するための音色テーブル、例えばコードテーブル等の曲調を決定するための曲調テーブル、エフェクトを決定するための各種エフェクトテーブル、ステレオ出力時の定位を調整するコントロールチェンジ情報であるパンの値を決定するためのパンテーブル、音量を決定するための音量テーブル、音程を決定するための音程テーブル等を有している。
【0016】
なお、エフェクトテーブルとしては、エコー、リバーブ、コーラス等を制御する時間系エフェクトテーブル、イコライザ、ワウ等を制御する周波数系エフェクトテーブル、リミッタ、コンプレッサ等のレベル系エフェクトテーブル、ディストーション等のディストーション系エフェクトテーブル及びエキサイター等の複合系エフェクトテーブルを含む。なお、パンテーブルは、レベル系エフェクトテーブルに含まれる。また、エフェクトを決定するパラメータには、エフェクト処理前の元の音(Dry音)とエフェクト処理された音(Wet音)との比(Dry/Wet比)、即ち、エフェクトとのかかり具合の情報も含まれる。
【0017】
図2は入力される情報と譜面用データテーブル中の適用するテーブルとの対応を示す説明図である。図3は図1中の運転情報収集・加工装置2の譜面用データテーブル群3中のbpmテーブルに記憶されているパラメータの一例を示すグラフである。図3のパラメータは音楽のテンポを決定するbpm(Beat per Minute:1分間あたりの拍数)値を示している。
【0018】
運転情報収集・加工装置2は、図2に従って、譜面用データテーブル群3中のいずれのテーブルを用いるかを判定する。図2では、例えば、自動車のスピードの情報によって、bpm値及びドラムパターンを制御するためのパラメータ値を出力するテーブルを選択することを示している。また、例えば、自動車のハンドルの操作情報に基づいて、パンの値を制御するためのパラメータ値を出力するテーブルを選択することを示している。
【0019】
図3はbpmテーブルに記述された情報、即ち、入力された車速の情報と出力するbpmパラメータとの関係を示している。図3の例では、bpmテーブルは3種類の入出力特性を有し、運転情報収集・加工装置2は、システムで予め定められた設定に基づいて、或いはユーザの選択操作に基づいて、これらの3つの特性のうちのいずれの特性を用いるかを指定することができるようになっている。
【0020】
例えば、運転情報収集・加工装置2が図3のC特性に従って、bpmを出力するものとする。この場合には、車速が大きくなるほど、小さくなるbpmが出力される。即ち、この場合には、比較的低い車速時には作成する曲のテンポとして比較的早いテンポが設定され、比較的速い車速時には作成する曲のテンポとして比較的遅いテンポが設定される。なお、係数設定部5は、出力パラメータに乱数に基づく係数を付与するものとして説明したが、乱数発生部4からの乱数に従って、各テーブルの各特性の傾きを変化させるものであってもよい。
【0021】
譜面用データテーブル群3内の各テーブルは、bpmテーブルと同様に、いずれも複数の特性を有しており、運転情報収集・加工装置2は、システムで予め定められた設定に基づいて、或いはユーザの趣味嗜好に応じた選択操作に基づいて、各テーブルの所望の特性を選択することができるようになっている。
【0022】
例えば、ユーザ(運転者)は、予め自分の趣味嗜好を設定することができる。運転情報収集・加工装置2の特性設定部10は、ユーザーが指定した趣味嗜好情報に基づいて、複数のテーブルの特性を関連づけて選択することができる。例えば、ユーザの好きな音楽のジャンルが趣味嗜好の情報として指定された場合には、このジャンルの曲を作成するために、リズムパターン及び曲調等のテーブルの特性を関連づけて設定する。
【0023】
また、特性設定部10は、ユーザーの趣味嗜好情報に応じて、各テーブルの特性を単独に選択することができる。例えば、ユーザの好きな音色に応じて、使用音色を決定する音色テーブルの特性を選択することができる。同様に、ユーザは、エフェクトの種類やかかり具合、曲の早さ、明るい、暗い、激しい等の曲調、フレーズの繰り返しの仕方や展開の仕方等の楽曲の形式及び構成等を指定することができ、特性設定部10はこの指定に応じて、各テーブルの特性を単独又は相互に関連付けて、選択することができるようになっている。
【0024】
このようなユーザの趣味嗜好に応じた各テーブルの特性の選択方法は、図示しないメモリ等に記憶させておくことができ、ユーザが趣味嗜好を適宜の入力装置を用いて入力することで、特性設定部10は、メモリの読出しによって、簡単にユーザの趣味嗜好に応じた作曲のために、各テーブルの特性の選択が可能である。
【0025】
運転情報収集・加工装置2からの各パラメータ値の情報は、譜面自動生成装置6に与えられるようになっている。譜面自動生成装置6は、運転情報収集・加工装置2からの各パラメータ値の情報に基づいて、楽譜データを生成し、作曲、創作を行う。即ち、譜面自動生成装置6は、入力されたbpmに基づいて曲のテンポを決定する。同様に、譜面自動生成装置6は、入力された各パラメータによって、リズムパターン、使用音色、曲調、エフェクトパラメータ等を決定して、楽譜データを生成する。
【0026】
なお、テンポやリズム等の各種パラメータに基づいて楽譜データを作成する手法としては、公知の種々の手法を採用することができる。例えば、市販されている各種自動作曲ソフトと同様の手法を利用することができる。
【0027】
なお、楽譜データとしては、例えば、MIDI規格のデータが考えられる。更に、市販音楽ソフト等に採用されている音データと楽譜データとが融合した形式のデータを採用することもできる。
【0028】
これらの運転情報収集・加工装置2及び譜面自動生成装置6によって車載音楽生成装置が構成される。
【0029】
本実施の形態においては、自動車内に音源7を搭載することで、作成した楽譜データに基づく音楽をリアルタイムに音響出力することを可能にする。即ち、譜面自動生成装置6が作成した楽譜データは音源7に与えられる。音源7はMIDI規格やその他の規格に基づいたデータを音信号に変換する。この音信号はエフェクタ8を介して音信号再生装置9に供給されるようになっている。なお、音源7としては、ハードウェアで構成したものを採用してもよく、また、ソフトウェア音源を用いてもよい。
【0030】
エフェクタ8は、譜面自動生成装置6からエフェクタ操作パラメータが与えられており、音源7からの音情報に対してエフェクト処理を施して音信号生成装置9に出力する。エフェクタ8としては、音楽製作者が扱う独立した機器としてのエフェクタ(コーラス、エコー、ディストーション、フランジャー等)の他に、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)音源モジュールに搭載されているエフェクタ部や、ソフトウェア処理によるエフェクタも含む。また、楽曲全体に効果を及ぼすエフェクタの他、MIDIチャンネル毎に独立してかけるエフェクトも含む。
【0031】
例えば、エフェクタ8は、時間系エフェクト処理、周波数系エフェクト処理、レベル系エフェクト処理、ディストーション系エフェクト処理及び複合系エフェクト処理が可能である。例えば、エフェクタ8によって、反射音を付加するエコー処理、もとの信号にない成分を加減して信号を変質させるディストーション処理、元の波形を時間的・周波数的にずらして音を厚く聞こえさせるコーラス処理、音声信号を意識的に遅らせて元の音とミックスすることで音が回ったような効果を得るフランジャー処理等の各種のエフェクト処理が可能である。
【0032】
音信号再生装置9は、図示しないアンプ及びスピーカ等によって構成されており、入力された音信号を音響出力する。
【0033】
図4は図1の車載音楽生成装置を採用した自動車の車載エンタテインメントシステムのシステム構成を示す説明図である。
【0034】
図4の車載エンタテインメントシステム中の運転情報収集・加工装置17及び譜面自動生成装置18は夫々図1中の運転情報収集・加工装置2及び譜面自動生成装置6に相当する。
【0035】
自動車内の運転席13には運転者14が座っている。運転者14はハンドル15の操舵を行うと共に、アクセル、ブレーキ及びクラッチ等の操作ペダル16により、走行速度等の制御を行う。ハンドル15に対する操舵量及び操作ペダル16に対する操作量は、操作情報として運転情報収集・加工装置17に供給される。なお、操作情報としては、ワイパースイッチの操作や、方向指示器の操作等の自動車の操作に関する全ての情報を含む。
【0036】
カーナビゲーションシステム等11からは、自動車の位置情報及び交通情報等が運転情報収集・加工装置17に供給される。また、各種のセンサ類12からは、自動車の状態を示す車両情報が運転情報収集・加工装置17に供給される。
【0037】
運転情報収集・加工装置17は入力された各種情報に基づいて、作成する音楽の各種パラメータを生成する。例えば、交通情報を用いることで、混雑した道路の走行時には、作成する曲のテンポを比較的遅くすることで、比較的ゆったりとした楽曲を生成して音響出力させることも可能である。また、方向指示器の操作情報を利用することで、例えば、方向指示中には他の期間とは異なる音色、音量等で曲を出力させるようにすることも可能である。
【0038】
運転情報収集・加工装置17は、入力された各種情報に基づいて、楽曲生成のためのパラメータを発生して出力する。また、譜面自動生成装置18は運転情報収集・加工装置17からのパラメータに基づいて楽譜データを生成する。
【0039】
譜面自動生成装置18からの楽譜データは音源19に与えられる。図4の音源19,20は、夫々、図1の音源7及びエフェクタ8に相当し、音階発生部、エフェクタ部として機能する。音源19,20は一体化されて構成されることもある。また、ソフトウェア音源を採用することも可能である。例えば、通常のMIDI音源にはエフェクタ部が内蔵されているが、市販されている単体のエフェククを使用することも可能である。音源20からの音声信号は図1の音信号再生装置9を構成するスピーカ21に与えられ、スピーカ21によって音響出力されるようになっている。
【0040】
次に、このように構成された実施の形態の動作について図5を参照して説明する。図5は音楽生成及び出力処理を説明するためのフローチャートである。
【0041】
ステップS1において、ユーザ(運転者)は趣味嗜好を入力する。この趣味嗜好の情報に基づいて、テーブルに設定された複数の特性の1つが選択されるようになっている。なお、ユーザは運転中において、趣味嗜好の情報を変更することができ、これにより、テーブルの特性がリアルタイムに変更されるようになっている。
【0042】
なお、複数の趣味嗜好情報を図示しないメモリにプリセットとして登録しておき、ユーザの希望に応じてプリセットの選択を変更することによって、簡単に趣味嗜好に応じたテーブル特性の設定の変更を行うことも可能である。
【0043】
ユーザが自動車の運転を開始するものとする。自動車の運転操作及び運行状況等に応じて、自動車内各種装置1から種々の情報が運転情報収集・加工装置2に供給される。運転情報収集・加工装置2は、情報の種類に応じたテーブルを選択し(ステップS3)、各テーブルから情報に応じたパラメータ値を出力する(ステップS4)。この場合には、乱数発生部4が指定されたレンジ内で発生する乱数に基づいて、係数設定部5からパラメータ値に付与する係数が出力される。係数が付与されることで、運転情報と楽譜情報を1対1に対応付けずに、ある程度のゆらぎを持たせることができ、演奏の唯一無二性を向上させることができる。これにより、自動生成される楽譜データは常に異なるようになり、飽きの来ない音楽を楽しむことができる。例えば、自宅から会社までの通勤時のように同一経路を走行するドライブであっても、ドライブ毎に異なる音楽の作成を可能にする。
【0044】
なお、乱数発生部4は、車両の操作情報や、車両情報、さらにナビゲーション情報(現在値等)に応じて値を変化させるようにしてもよい。
【0045】
運転情報等に応じて、音楽を作成するためのパラメータを変更させており、運転操作や自動車の状態等に応じた音楽が生成される。例えば、運転者がハンドルを切ることで、パン(音の定位)が変化する。また、車速と曲の速さを連動変化させることもできる。また、クラッチ踏込み量(クラッチ開度)とエフェクトのかかり方(Dry/Wet比)を連動変化させることもできる。また、ナビゲーション情報によって、走っている地域に関連性をもたせたアレンジにすることもできる。例えば、群馬県及びその近郊の走行中には、音色が八木節に用いられる太鼓と笛の音色となるように設定することもできる。
【0046】
また、運転情報収集・加工装置2の各テーブルからのパラメータの読出しに際しては、ユーザの趣味嗜好に基づいた特性が選択される。例えば、運転情報収集・加工装置2によって選択可能な趣味嗜好が項目毎に表示されており、ユーザは項目を選択することで自分の趣味嗜好を設定することができる。ユーザが選択可能な趣味嗜好としては、譜面用データテーブル群3に格納されたパラメータの調整によって表現の変更が可能なものに限られる。例えば、ユーザは、自分の趣味嗜好としてハイテンポで、どこかダークな雰囲気のロックの曲を作成することを指定することができる。更に、特にドラムの凝ったフィルインや、ギターやベースのソロ回しのような、技巧的な駆け引きを好むこと等も指定することができる。
【0047】
運転情報収集・加工装置2から出力された各パラメータは譜面自動生成装置6に供給される。譜面自動生成装置6は、入力された各パラメータに基づいて、テンポ、リズム、音色等を決定して、楽譜データを生成する(ステップS5)。こうして、譜面自動生成装置6は、ユーザの趣味嗜好に応じたアレンジで、運転操作等に応じた曲の楽譜データを自動生成する。
【0048】
例えば、運転者の趣味・嗜好情報を元に、bpmを180〜210(ハイテンポ)にし、マイナーコードを設定し(ダークな感じを与え)、ロックのリズムパターンを使用することでロック調の音楽の楽譜を作成することができる。また、例えば、技巧的な駆け引きが好きな運転者に合わせて、ウインカーを出した時やコーナーを曲がった時には、運転操作に合わせて、曲の切れ間となるドラムの派手なフィルインを挿入した曲を作成することもできる。また、アクセルの踏み方によって、ギターのエフェクトのかかり方を変え、曲の表情を変化させることもできる。また、ナビゲーションシステムの信号を読み取り、現在トンネルの中にいることが確認されると、エフェクタの設定を変更して、主旋律へのエコーのかかり方を強化することもできる。また、トンネルを抜けて隣の県に入ると、曲調を変化させることもできる。例えば、群馬県に入ったら、ドラム音色・パターンを八木節特有の「樽を叩いたような乾いたアレンジ」にすることもできる。
【0049】
また、天気の情報を用いて、曇りの日には、スローテンポでアルペジオパターンの曲を作成させることも可能である。
【0050】
譜面自動生成装置6において生成された楽譜データは音源7に供給される。音源7は入力された楽譜データを音信号に変換する(ステップS6)。この音信号は、エフェクタ8において、譜面自動生成装置6からのエフェクタ操作パラメータに従ってエフェクト処理されて(ステップS7)音信号生成装置9に供給される。こうして、音信号生成装置9からは、ユーザの運転操作等に応じて生成された音楽がリアルタイムに音響出力される(ステップS8)。
【0051】
なお、図5に示すフローチャートは、基本的な処理を示すものであり、ステップS2による運転情報取得は一定周期毎にポーリングされ、曲に反映される。即ち、ステップS2からステップ8は曲が続いている間はループさせる構成とし、更には、曲の構成要素(メインフレーズ、リズムパート、ベースパート、MIDIチャネル等のような区分)毎に処理を行い、トータルとして音楽を構成する構成にすることも可能である。
【0052】
譜面自動生成装置6に供給されるパラメータは、運転者の操作等によってリアルタイムに変化し、音信号再生装置9からは運転者の操作等に応じて変化する音楽が出力される。従って、運転者はあたかも音楽に介入しているかのように感じることができる。例えば、運転操作とエフェクタ操作とが連動しているかのように感じることもできる。エフェクタ8を経由させることで、音楽に表情(コーラス、エコー、ディストーション等)を付けることができる。
【0053】
このように、本実施の形態においては、事前に設定されたユーザの嗜好情報に基づくアレンジで、運転情報等に応じたパラメータを用いて、楽譜を自動生成する。そして、自動車にMIDI規格等の楽譜データに基づく音信号を出力可能な音源を車載し、自動生成された楽譜を音源に与えることで生成された音楽をリアルタイムに音響出力する。例えば、ユーザの趣味嗜好に応じたエフェクト処理を施すことができる。更に、このエフェクト処理は、車両情報、運転情報、ナビゲーション情報等に応じて、リアルタイムに変化させることができる。
【0054】
即ち、運転者は自動車の運転操作だけに専念しながら、所謂、ながら運転をすることなく、あたかも音楽に介入しているかのように、擬似演奏感を味わうことができる。しかも、運転操作の微妙なニュアンスや、走行地の違い、乱数の効果等によって、出力される音楽は唯一無二のものとなる。なお、録音機能を付加することによって、音信号再生装置の出力、即ち、運転者のオリジナル演奏を後で楽しむことも可能である。しかも、運転者はあくまで、自動車の操作のみに専念することができることから、操作の複雑化による安全面への悪影響も無い。
【0055】
図6は本発明の第2の実施の形態に係る車載エンタテイメントシステムを示すブロック図である。図6において図1と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。第1の実施の形態においては、楽譜データを何も無いところから、即ち、初めら作曲する例を示したが、本実施の形態は外部から入力された音楽に対して、ユーザの趣味嗜好及び自動車の運転情報等に基づいて、演奏をリアルタイムに変化させて音響出力する場合の例に適用したものである。
【0056】
運転情報収集・加工装置22は、譜面データテーブル群3に代えて譜面データテーブル群23を採用した点が図1の運転情報収集・加工装置2と異なる。譜面データテーブル群23は、譜面データテーブル群3の各テーブルのうちエフェクト処理に関するテーブルのみを備えたものである。即ち、運転情報・収集加工装置2は、ユーザの趣味嗜好及び自動車から得られる各種情報に基づいて、エフェクト処理に関するパラメータを生成する。出力するパラメータは係数設定部5によって係数が付与される点も運転情報収集・加工装置2と同様である。
【0057】
エフェクトパラメータ生成部24は、入力されたパラメータに基づいてエフェクタ8を制御するエフェクタ操作パラメータを生成する。エフェクタ8は音源から入力された音信号に対して、エフェクタ操作パラメータに基づくエフェクト処理を施して出力する。
【0058】
楽譜データ入力部25は外部から楽譜データを取込む。例えば、楽譜データ入力部25はMIDIデータだけでなく、wave形式の楽譜データを取込むことができる。音源7は入力された楽譜データを音信号に変換してエフェクタ8に与える。
【0059】
なお、本実施の形態は、外部から楽譜データを取込む例について説明したが、外部から音信号を取込むようにしてもよいことは明らかである。この場合には、音源は省略可能である。
【0060】
このように構成された実施の形態においては、外部から入力された音楽に対して、ユーザの趣味嗜好に応じたエフェクト処理が行われる。また、このエフェクト処理は、運転者の運転操作等に基づいてリアルタイムに変更される。
【0061】
こうして、本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0062】
なお、上記各実施の形態においては、運転情報収集・加工装置及び譜面自動生成装置は車載されているものとして説明したが、これらの装置に対して運転席だけでなく、助手席からも各種入力操作を可能にすることができることは明らかである。更に、自動車に組み込まれたネットワークに接続された外部のネットワークを経由して、自動車外から、各種入力操作を可能にするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る車載エンタテイメントシステムを示すブロック図。
【図2】入力される情報と譜面用データテーブル中の適用するテーブルとの対応を示す説明図。
【図3】図1中の運転情報収集・加工装置2の譜面用データテーブル群3中のbpmテーブルに記憶されているパラメータの一例を示すグラフ。
【図4】図1の車載音楽生成装置を採用した自動車の車載エンタテインメントシステムのシステム構成を示す説明図。
【図5】音楽生成及び出力処理を説明するためのフローチャート。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る車載エンタテイメントシステムを示すブロック図。
【符号の説明】
【0064】
1…自動車内各種装置、2…運転情報収集・加工装置、3…譜面データテーブル群、4…乱数発生部、5…係数設定部、6…譜面自動生成装置、7…音源、8…エフェクタ、9…音信号再生装置、10…特性設定部。
代理人 弁理士 伊 藤 進

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車内の各部からの情報に基づいて、音楽を作成するためのパラメータを発生する情報収集・加工手段と、
前記情報収集・加工手段からのパラメータに基づいて、楽譜データを生成することで作曲を行う譜面自動生成手段とを具備したことを特徴とする車載音楽生成装置。
【請求項2】
前記情報収集・加工手段は、前記自動車内の各部からの情報と前記音楽を作成するためのパラメータとの関係を夫々記述した複数のテーブルを備えたことを特徴とする請求項1に記載の車載音楽生成装置。
【請求項3】
前記情報収集・加工手段は、前記複数のテーブルからの前記パラメータに乱数に基づく係数を付与して出力することを特徴とする請求項2に記載の車載音楽生成装置。
【請求項4】
前記複数のテーブルは、夫々1つ以上の特性を有し、
前記情報収集・加工手段は、前記複数のテーブルからの前記パラメータの読出しに際して、前記複数のテーブルの特性を設定する特性設定手段を更に具備したことを特徴とする請求項2又は3のいずれか一方に記載の車載音楽生成装置。
【請求項5】
前記特性設定手段は、ユーザ操作に基づいて、前記複数のテーブルの特性を設定することを特徴とする請求項4に記載の車載音楽生成装置。
【請求項6】
前記複数のテーブルのうちの少なくとも1つは、エフェクト処理のためのパラメータを出力することを特徴とする請求項1に記載の車載音楽生成装置。
【請求項7】
自動車内の各部からの情報に基づいて、音楽を作成するためのパラメータを発生する情報収集・加工手段と、
前記情報収集・加工手段からのパラメータに基づいて、楽譜データを生成することで作曲を行う譜面自動生成手段と、
自動車内に車載され、前記譜面自動生成手段が生成した楽譜データを音信号に変換して音信号再生装置に与える音源とを具備したことを特徴とする車載エンタテイメントシステム。
【請求項8】
自動車内に車載され、前記音源からの音信号にエフェクト処理を施すエフェクタを更に具備したことを特徴とする請求項7に記載の車載エンタテイメントシステム。
【請求項9】
自動車内の各部からの情報に基づいて、音楽を変更するためのパラメータを発生する情報収集・加工手段と、
自動車内に車載され、外部から入力された曲データに基づく音響を出力するものであって、前記情報収集・加工手段からのパラメータに基づいて出力する音響を制御する音響出力手段とを具備したことを特徴とする車載エンタテイメントシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−69288(P2006−69288A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252782(P2004−252782)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】